希望の党の公約6(正社員を増やす?2)

従来型の正社員で就労したい人の就労を支援する→大企業のトータル採用を増やすという意味であれば、容量の拡大・経済規模拡大しかないのですから幼稚園児の夢ではなく政党の公約である以上、どのようにして活性化を図るかのビジョンを示す必要があるでしょう。
内部留保課税で活性化するという程度の意見では、重税課になるのみならず、投資済み資金の引き上げを強制することになるので経済縮小路線です。
現預金だけに課税するとすれば、決済用資金すら持ってはいけないとなって取り付け騒ぎが起きて大混乱になるでしょう。
もしも経済活性化と関係なく・すなわちトータル採用数が同じでも支援するというならば、就活支援業者を増やすという程度でしょうか?
今後産業界はロボット化や自動化する一方で単純作業が減っていくだけではなく、一般事務職程度の事務職も減って行きます。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-15/ORKAID6JIJUO010

17年6月15日 17:22 J
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった。超低金利の環境下で収益性が低下する中、金融と情報技術(IT)を融合したフィンテックで業務合理化を進め、店舗の閉鎖や軽量化などによって余剰人員削減につなげる方針。MUFGの社員数は世界で約14万7000人おり、約7%の人員カットとなる。
・・・・フィンテックの進展や店舗政策の見直しによる人員削減は三井住友フィナンシャルグループも取り組んでいる。5月に公表した3カ年の新中期経営計画で、店舗のデジタル化や事業の効率化などで人員削減効果を約4000人とし・・・。

IT〜AI化によって一定の頭脳職種(弁護士で言えばある事件についてどの方向(論点)の判例を検索すれば良いかの選択を若手弁護士が担当している場合に、この種作業をAIが代用する時代が来るかも?)でさえ減って行く趨勢は如何ともし難いので、経済活性化による事業規模拡大に成功しても必ずしも正社員増加を図れるわけではありません。
上記新時代に対応できる人材が不足するとせっかく規模拡大した大手企業は、AI操作に優れた外国人に頼らざるを得ないので(優秀な外国人の国内雇用を制限して職場を守ろうとすれば、企業は人材の揃った外国にその部門を移していかないと国際競争に負けるので国内空洞化になり正社員を増やすどころではありません。
過去約20年あまり国際競争に勝ち抜くために人件費の安い中国.新興国等へ工場を移転したように、今後はIT〜AIを駆使できる人材が揃っている割に人件費の安い地域へ事務部門を含めて拠点を移動していく時代がきます。
正社員就労を増やすというより、大幅減にならないようにするには、新時代の雇用が海外に逃げないように国民の絶えざるスキルアップが必須です。
関税で守られていた企業が徐々に国際競争に直接曝されるようになった時代から、企業の保護幕が取り払われて個々人がストレートに国際競争にさらされる時代が始まっています。
今後IT化・技術陳腐化の早い時代に、これまでの正社員・終身雇用中心を前提にした国民教育システムで対応できるのか?むしろ多様な就労形態に軸足を置いて人生の途中で再度新技術を身につける方式にした方が良いのではないか・それにはどうするかのテーマを解決して行く必要があるでしょう。
人材育成は文科省の専門分野か?というとそうではなく、就労形態に関する価値観の柔軟性・インフラ次第で必要とする人材の方向性も変わってくるのを重視すべきです。
公約で「正社員で働くことを支援する」と言うだけでは、仮に政権担当者になればどんな労働観〜人生観を提示しどう言う人間を育てるための政治をしたいのか不明です・・。
日本の将来像をきっちり認識して何を具体的にするのかをはっきりさせないと、政党の公約としては意味不明となります。
希望の党の公約には、一見して「正社員が理想でありその比率をふやして行くべき」という政治姿勢・・社会のあり方として期間や時間の定めのある契約等多様な雇用・働き方をへらしていく、単線・画一的雇用社会になるのを「希望」するというアナウンス効果を狙った公約でしょうか?
ところが一方では、小池氏はダイバーシテイ化を進めるといっていたように思います。
http://www.asahi.com/articles/ASKB632GWKB6UTFK002.html

別宮潤一 2017年10月6日12時48分
「希望の党代表の小池百合子・東京都知事は6日午前、衆院選公約と新党の政策集を発表した。「タブーに挑戦する気持ちで思い切った案を公約に盛り込んだ」と説明。公約に9本の柱を盛り込み、このうち「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正論議を進める」ことを主要な「3本柱」とし、政策集では原発ゼロについて「憲法への明記を目指す」とした。
特集:2017衆院選
「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。」

法人税軽減の主張をしながら、納税後余っている帳簿上の資産・・内部留保課税→結果的に法人税加重方向を主張する不思議さと同じちぐはぐさがここにも出てきます。
ダイバーシテイ化を目指す政策と「正社員で働くことを支援する」政策とは両立できるのでしょうか?
07/03/03(2003年)「超高齢化社会の生き方5(多様な生き方を保障する社会1)」前後で、高齢化社会向けに書いたことがありますが、要はいろんな(LGBTを含めて)生き方ができる社会にすべきだという意見ですが、この4〜5年では(小池氏がダイバーシテイ化をトレンドとして採用するほど)社会的合意が出来て来たと思われます。
働き方〜生き方が千差万別・多様化していく方が労使双方にとって行きやすい社会であるという意見が、今では日本社会で受け入れられているとすれば、「正社員として働けるように支援する」という公約とどのように整合するのか不明です。
AI~IT化が進展する今後の社会では、終身雇用〜正社員意識・それ以外の働き方を異端(イレギュラー)と決めつける社会が成り立たなくなる・・とりわけIT化に背を向ける姿勢と思われます。
もともと終身雇用を正社員と言い、それ以外を非正規(イレギュラー)と区別する固定意識社会は、上司〜同僚と折り合いが悪いその他嫌なことがあってもやめると生活できないから嫌々ながら従属するしかない窮屈な社会・イジメがあってもやめられない人権侵害の温床になる社会ではないでしょうか?
やめる自由がない・失業→生活展望がない社会では必死になって一旦得た地位にしがみつきますし、学校でいじめられても容易に辞められない意識が子供を自殺にまで追い込むインフラになっています。
いじめ事件が起きると先生ばかり批判していますが、多様な育ち方が認められていない・受け皿不足社会だから繰り返し起きるのです。
被雇用者その他弱者が逃げる選択肢がない状態で意見が合わないという理由で経営者が簡単に解雇したり、校風にあわないと退学処分できると、解雇や放校、離婚された方は死活問題ですから、雇用者や学校あるいは婚家の方でもよほどのことがない限り関係切断できない社会になって行った・主流雇用形態が社会意識の基幹・・多様な影響を及ぼすので、社会のあり方を代表して終身雇用的社会というものです。
ですから雇用のあり方をどうするかは社会意識のあり方を規定する重要な指標です。

総選挙と民度6(合流の奇策→愚策5)

第二部(国政に関する)記者会見が始まると小池知事からこの同じ記者を自ら指名した上で、小池知事からすすんでこのテーマでの意見を開陳したい意欲が表明されて「さらさらない」というおまけまで自分から言い出したやり取りも出ていた記憶(別のネット記事だったかアエラだったか不明?)ですが、なぜか本日現在の引用記事では出ていません。
小池知事の記者会見のやり方は自分が指名した記者しか質問させない独裁者スタイルらしいですから、(このためにこの記者は遠慮なく突っ込んでくるので半年も干されていたと言うのです)嫌な質問だったならば同じ記者が第二部で手をあげても指名しなければよかったのですが、自分の方から先ほどの質問ですが・・というような言い方で話題を向けていったらしいのですから、異例でした。
小池氏が民進党の候補者と資金を必要としていたものの、一方で野合批判も恐れて民進党ともすり合わせの上で両党揃って進んでアッピールする必要に迫られていた流れは以下の通りです。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170930/ddm/003/010/105000c

希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は民進党からの合流について基本政策が一致しない場合は「排除する」と明言した。新党に民進党色がつき、清新さが薄れるのを嫌ったためだが、選別しすぎれば候補者が不足するジレンマもある。民進党内には安全保障政策などを理由に選別を進める「排除の論理」への反発が広がっている。
「私どもの政策に合致するのかどうか、さまざまな観点から絞り込みをしていきたい。全員を受け入れるということはさらさらない」
29日午前、東京・新宿のホテルで民進党の前原誠司代表との会談を終えた小池氏は民進党の候補者の受け入れについて、記者団にこう述べた。小池氏側は前原氏から前日の28日、希望の党からの立候補を望む前職、元職、新人のリストを受け取っていたが、小池氏は安全保障法制や憲法改正などへの賛同など、一定の条件を満たした候補者のみ合流を認める「排除の論理」を強調した。
・・希望の党には排除の論理だけを貫けない事情もある。基本的に候補者数が不足しているためだ。小池氏は「突然の選挙で候補予定の方が、特に新人がなかなか(集まらず)現実の壁になっている」と話す
民進党の候補予定者全員を受け入れれば衆院定数の過半数となる233人以上の擁立も容易になる。豊富な資金と候補予定者を抱える民進党との合流は、小池氏にとっては助け舟だった側面もある。
それでも「排除の論理」を強調するのは、与党からの「野合」批判を懸念しているためだ。候補者不足を補うためには、できるだけ多くの民進党候補者を取り入れたいのが本音だが、かといって「民進党色」が強まればイメージダウンになるジレンマを抱える。
・・・ 小池氏は29日、菅、野田両氏の排除について「一つの考え方だ」と否定しなかった。旧民主党政権を担った民進党の「象徴」の参加を拒絶することで、「小池氏主導で厳しく選別した」とアピールする狙いがある。

選挙結果で見れば、小池氏立候補当初から行動を共にしてきた現職衆議院議員(元自民党員)であった若狭氏を自分が衆議院議員当時の地盤であった選挙区で立候補させたのにその本拠地でさえ彼が落選し、いわゆる小池チルドレンが比例以外には一人も当選できない惨憺たる結果を見れば、小池フィーバーの支持基盤がもともと何系だったかがわかります。
架空の想定ですが、自民党有力者が何名かのグループを伴って脱党して民進党党首に担がれた・・あるいは民進党と新党結成したような結果になれば、左右の票の足し算にならず元々の支持者すら離れるのが普通です。
小池氏が都知事選に出たことによって、小池氏の地盤を受け継いだ若狭氏すら落選ですから、もしかして小池氏本人が立候補していても自民党を裏切って民進党のための立候補と分かれば、落ちていた可能性があります。
西欧では領主の宗派が変わると領民も皆同じ宗派に変わるしくみだった結果、宗教戦争が苛烈になったのですが、日本の場合領主や代議士は地元民の意向によって動くのであって、代議士の行く方に地元民が動くのではありません。

http://www.tokyo-np.co.jp/senkyo/shuin2017/kaihyo/touha.htmlによれば以下の通り小選挙区での新人当選が全国で一人だけです。

小選挙区          合計    前    元    新
希 望           18      14    3    1

選挙結果を見れば、小池フィーバーによる浮動票のほとんどが投票時には逃げてしまっていたことがわかります。
解散直後は、いかにして逃げ始めた浮動層を引きとめるかについて多分裏で前原氏(バックの民進党重鎮を含め)や小池氏との緊急すり合わせの結果、小池氏らは「反安保法制・憲法改正反対の人は公認しない」といわゆる「排除の論理」を表明するしかなくなった・・この時点で追い詰められてしまったものと見えます。
今になると小池氏の「排除の論理がきつ過ぎた」とマスメデイアは一斉に批判していますが、民進党系の合流担当者(前原氏や細野氏や民進党の窓口玄葉氏など)と小池側でこの程度まではっきり言わないと逃げ始めた保守票・浮動票の動きがとまらないと見た合意の上でしょう。
上記発言は前原氏らとの会談直後に待ち構えていた記者団への発表が始まりですから、慎重にすり合わせの結果発表と見るべきです。
その証拠にこの「排除論理」表明直後にこの解釈をするためにか「少なくとも3権の長経験者には遠慮していただく必要がある」という細野氏だったかが民進党の希望の党への合流担当幹部だったか忘れましたが、解説意見が出ています。
大物が大挙して入ると新党運営が牛耳られてしまうという浮動票の危惧に対する回答(大物さえ入らなければいいというう甘い考え?・せっかく先発参入で地位を得ているのに後から来た大物に遠慮するのは困る?)というべきです。
この合流基準原則表明によって凝り固まった10数人程度の護憲勢力と元総理や党代表を入れて浮動票をそっくり失うより(それだと民進党支持者からの票しかないので)は彼らを切り捨てても、小池人気を利用してそれ以上の保守系の浮動票を取り込んだ方がトータルプラスと見たのでしょう。
前原氏のグループとすれば民主党以来対立してきた左翼系をこの機会に切り捨てて、右寄りスタンスをはっきりした方が得策とみたとのは、もともと前原氏は左翼ガチガチを切り捨てないとまともな党運営ができないと考えていた節があります。
保守系の票を小池新党に何割か取り込んで切り捨てた中核護憲派以上の当選を見込めればお釣りがくるし、自民党当選者がその分減り・自民党政権が続くとしても安倍氏退陣・政変に繋がるという読みだったと思われます。
小池氏とすれば、当面の目的・最大野党になれれば、保守票の分裂で自民党の得票を減らし与党過半数割れあるいは過半数ギリギリになれば、安倍政権退陣→保守連立政権に入ってあわよくば細川氏のように「総理になる夢がないわけではない」というメデイアの景気の良い予想が飛び交っていました。
そのためには保守系でないと石破氏らとの連携作戦が不可能ですから小池氏は保守系の看板を下ろすわけにはいかなかったでしょうから左派だけでも「切り捨てる」と言わせてくれという立場で妥協したのでしょう。

未成熟社会4(ロシア原油下落)

未成熟社会4(ロシア原油下落)

今後中国の高度成長が低下し賄賂を出せなくなる・・いわゆる都市戸籍と農民戸籍の差別〜一人っ子政策に反しているために生じた無戸籍者など日常的に人間扱いされていなかった層・数億人?にとって、医療その他生活の最低サービスすら賄賂を出せないと受けられなくなるなど大変な状態になると思われます。
結局は、公的サービス水準をどこに置くかによってくるでしょう。
10月19日にロシアの平均年齢のグラフで見たように恐怖政治をやめて国民生活の自由化を進めると却って混乱する社会であることから、エリツインからプーチン(第一次大統領就任・2000年〜2008年)の一強独裁的強面(コワモテ)政治に戻り、治安悪化を止める方向に舵を切って成功しました。
プーチン氏は大統領職連続任期2回限定の憲法を守るため、2008年任期満了とともに部下のメドベージェフ氏に次期大統領を譲り、(その間自分は首相になって事実上実務の全権を握って)同氏の任期満了を待って再び大統領に返り咲き12年から第二次大統領就任〜現在に至っています。
プーチン氏の強権的政策開始と同時頃に運が良くちょうど原油価格の上昇トレンドが始まりと重なったことが彼の強運で長期政権を維持出来ている基礎原因になります。
ちなみにエリツイン氏は、ソ連崩壊後の大混乱を乗り切る最も大変な矢先にアジア通貨危機)98〜99年)の大波乱と原油その他資源安をまともにかぶったことが不運でした。
19日に紹介したソ連平均寿命の最低期は1994〜5年ですが、下記原油相場グラフを見れば底値の頃が、エリ ツインの任期とほぼ重なっています。
本日のウィキペデアによれば以下の通りです。

「ボリス・ニコラエヴィチ・エリツィンロシア語: Борис Николаевич Ельцин、1931年2月1日 2007年4月23日)は、ロシア連邦政治家で、同国の初代大統領(在任: 1991年 1999年)である。ロシア連邦閣僚会議議長(首相)も歴任した。大統領在任中にソ連8月クーデターに対する抵抗を呼びかけロシア連邦の民主化を主導した評価と共に、急速な市場経済移行に伴う市民生活の困窮、ロシアの国際的地位の低下、チェチェン紛争の泥沼化、強権・縁故政治への批判もあった。」

この15年以上のロシアの復活はプーチン氏の手腕のように見えて実は原油その他資源価格トレンドによるとした場合、下記グラフの通り、2013〜4年に原油価格がピークを打って急激に下がり始めたのがプーチンには痛手です。
平均寿命が急落するような大混乱を収拾して欲しい国民の当面の願望に合わせた強面(コワモテ政治)で成功したのであって、プーチンは・複雑な利害調整で成功した経験がありません。
治安回復後急激な原油価格上昇による豊かさ到来に助けられてきたメッキが剥がれる局面が始まっています。
この数年で頼みの原油価格下落によって、やむなく?国民不満をそらすために?無用なシリア介入やクリミア併合・ロシア伝統の外延政治に戻って行かざるを得なくなった懐具合が見え見えです。
原油価格の推移はhttp://ecodb.net/pcp/imf_group_oil.htmlによれば以下の通りです。

この15年以上のロシア経済の復活はプーチン氏の手腕のように見えて実は原油その他資源価格トレンドによるとした場合、上記グラフの通り、13〜4年に原油価格がピークを打って急激に下がり始めたのが痛手です。
平均寿命が急落するような大混乱を収拾して欲しい国民の当面の願望に合わせて登場したプーチン氏が強面で成功したのであって、プーチンは複雑な利害調整で成功した経験がありません。
治安回復後急激な原油価格上昇による豊かさ到来に助けられてきたメッキが剥がれる局面です。
この数年で頼みの原油価格下落によって、やむなく?国民不満をそらすためにロシア伝統の無用なシリア介入やクリミア併合・外延政治に戻って行かざるを得なくなった懐具合・内政困難度合いが見えます。
http://toyokeizai.net/articles/-/180689によれば原油価格とロシア経済との関係は以下の通りです。
ケネス・ロゴフ : ハーバード大学教授
2017年07月27日

「ロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が、司法などの制度が脆弱なままでは、資源輸出依存のロシア経済が変わる望みはないと主張していた。あまりに多くの決定が1人の人間によって行われていたからだ。同じ会議で私は、大規模な改革が行われないかぎり、エネルギー価格の急落は深刻な問題を引き起こすことになると力説した。
かくして、原油価格は暴落した。現在の市況(7月上旬時点で50ドル以下)ですら、2011〜2012年ピークの半分に届かない。輸出の大半を石油と天然ガスに頼っている国にとっては大打撃だ。
ロシア規模の不況が民主主義の西側諸国で起きたとすれば、政治的に乗り切るのは極めて困難だったろう。だが、プーチン氏の権力は、まるで揺らいでいない。
国営メディアは失政を覆い隠すために、西側からの経済制裁を非難したり、クリミア併合やシリアへの軍事介入への支持をあおっている。たいていのロシア人は、学校教育や国営メディアによって、西側諸国のほうがひどい状況にあると信じ込まされている。残念ながら、そのような情報操作は改革への処方箋とはなりえない。」

こんな苦しい時になぜウクライナ紛争を起こし、クリミヤ併合するのか(純粋経済的に見ても軍事行動は巨額経済負担です)というと、この紛争で愛国・民族主義を煽て目を外に向けるだけではなく、クリミア併合に対する欧米による不当な経済制裁という問題設定をして苦しいのは「欧米の不当制裁」という悲憤慷慨を煽る仕組みに利用しているのです。
・・北朝鮮も不当な経済制裁を煽っていますので、経済制裁ではどうなるものでもありません。

中国の脅威6(影響力の膨張)

中国の国内外に対する脅迫・威嚇政治の広がりに戻ります。
中国国内でいくら恐怖政治をしようとも外国に関係なければいいのですが、そうはいかないのが不気味です。
日本や西欧にまで巨大市場の吸引力を背景にして諸外国に中国に都合の悪いことを自由に発言させないことによって、いかに中国が偉大であるかと中国人民の自尊心をくすぐり国内言論弾圧の補償作用に使っています。
一方で統計数字をごまかして実態の数倍以上の赫赫タル成長=国力を宣伝する・・国威発揚で自己満足している姿は、実際に自慢するほどの経済力がないのにあるかのように振る舞う結果、国内経済に無理が来る・・・・裸の王様のようでいつか風邪を引き肺炎になる事態も想定されます。
風邪を引かないための風邪薬?・・軍事や国内監視要員・治安警察費に入れ込んで近隣威嚇や日米等での細胞浸透や工作資金を使う・国内では治安警察で国民監視ばかりしていると長期的には、人材.資源の無駄使いの結果国力が低下する一方でソ連崩壊の二の舞になる事態が想定されます。
国民不満を空母や戦闘機で抑えることはできません。
ただし、中国は人民を無理に抱え込まない・・「政府に不満なら過酷な弾圧をする・・国外に逃げて行くのは構わない」(国内にいなくなれば、刑務所に入れる手間が省けるし反対勢力がいなくなる効果はシベリア流刑ど同じということでしょうか)というのがこれまでの政策であったと書いてきましたが、それでは優秀な順に国外移住していき全般的民度が下がる一方になるでしょう。
ただし、国外移住者のうち経済活動や学問その他で成功した(かつ反政府活動しない)人材だけを破格の金額で呼び戻す方が経済的という政策です。
ちょうど数百回数千回の実験失敗の結果ようやく開発成功した新薬その他を成功後にサイバーテロで剽窃したり合法的に買収するのと同じ発想です。
一流大学でも生徒みんなを大科学者に育てられるのではなく、そのうち一粒の人材だけが大きく育つのですが、中国は育てる苦労をしない・無駄玉を打たないでうまく育った人材だけ引き抜けば良いという発想です。
クズの人材は中国で責任を取らずにそのまま移住先のアメリカ等先進国で刑務所に入れられたり、生活保護などを引き受けてもらえば良いのです。
この点がソ連・スターリンの収容所列島政策と違います。
習近平氏が、今は権力確立期の非常時なので自分に「楯突くとどんな目にあう分からないぞ!」という勢力誇示のためにやっているだけであれば、権力が確立すれば国家長期発展のために粛清を緩めて行くことを期待できますが・・。
歴史を見ればどこの国でも政権樹立当初は武力が必須ですが、落ち着けば文治政治に移っていくのが普通です。
中国の場合そのような変化ができるかです。
猜疑心の強い個人資質による粛清の場合には、スターリンのように絶対支配を確立したのちも、権力の基礎が粛清にある以上余計猜疑心の塊になって行く・・この種のことをやりだすと報復が怖くてやめられないのが普通です。
そうなるとソ連型の国家社会の崩壊まで突っ走るしかないでしょうが、フルシチョフやゴルバチョフのような勇気のある人材がでないと簡単に百年単位で専制・恐怖支配が続くだけではなく、北朝鮮と違って国が大きい分周辺諸国まで巻き添えを食う可能性があります。
現在すでに中国市場に参加したいならば、「知財や技術移転しろ」と中国市場参加者限定ですが強要が始まっています。
北朝鮮のような小国でさえ核兵器を持っているとどうにもならないのですから、中国がもっと強くなって、中国市場に参加したくない企業や国に対しても「お前のものは俺のもの式」の強要を始めるようになると世界は大変です。
中国に行った人がスパイ容疑で検挙され始めましたが、この程度の脅しでは収まらず、日本国内にいる日本人にまで中国国内法違反の犯罪容疑をでっち上げて、日本に来た中国軍人や治安要員が我が物顔に闊歩し、白昼公然拉致していく社会の出現になると大変です。
実際に今の香港では、これが公然と行われています。
香港の中国支配のあり方を批判する本を出版していた書店主が次々と失踪した事件です。
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/hongkong_b_10607462.html
2016年06月23日 00時58分 JST | 更新 2017年06月22日 18時12分 JST 新潮社フォーサイト
香港でまた「1国2制度」に対する香港人の「信頼」を揺るがす問題が起きている。香港の書店「銅鑼灣書店」の関係者5人が失踪し、中国国内で長期拘束されていることが明らかになった問題で、釈放されて香港に戻った同店店主の林栄基さん(61)が6月14日、公の場に姿を現して記者会見に応じ、赤裸々に拘束をめぐる実態を語った。
拘束された5人のうち、出版社オーナーの桂敏海さんを除く3人は林さんより先に香港に戻っているが、彼らは口を閉ざして実情を明らかにすることを拒んできたので、当事者の証言は初めてとなる。拘束中に中国のテレビで流された「告白」のビデオの内容は、「脚本があり、監督もいた」として、事実ではなく、強制された演技だったとも語った。」
中国は属国と見なせば、遠慮会釈なく実力行使に入る歴史があります
李氏朝鮮末期には、政治の黒幕であった大院君が清朝の軍閥に拉致されたことを紹介したことがあります。
壬午事変(じんごじへん)1882年7月23日明治15年に関する以下の記事からの引用です。
http://hinode.8718.jp/korea_chronology.html
「興宣大院君らの煽動を受けて、朝鮮の漢城(ソウル)で大規模な兵士の反乱が起こり、政権を担当していた閔妃一族の政府高官や、日本人軍事顧問、日本公使館員らが殺害され、日本公使館が襲撃を受けている。
反乱軍の標的は閔妃に向けられていたが、閔妃は官女に変装し官女に紛れて逃げきり山奥に隠れた。
閔妃は高宗に、国王の名を以て宗主国である清国に軍乱の鎮圧を目的として清国軍の派兵を要請させた。閔妃は権力奪還・大院君にたいする復讐の為に他国の軍隊を国内に招き入れてしまうという、大きな間違いを犯してします。亡国へと導く悪女と言われても仕方がない行為である。
清国の李鴻章により袁世凱が援軍として派遣され、反乱軍は鎮圧された。大院君は清に連行され李鴻章による査問会の後、天津に幽閉され、反乱が失敗に終わる。」
李氏朝鮮の場合にはみづから清朝の介入を求めたからですが、元々属国として身長の事実上にの支配下にあったからこういうことになるのです。
事実上支配下に入ると国内に中国の息のかかった細胞がいっぱい入り組んでいるのが普通ですから、李氏朝鮮の閔妃のように中国軍を導入しようとする勢力が育っているのが普通です。
以下対中関係を背景にした・・工作浸透原発稼働停止運動と地域エゴに戻ります。
9月5日「地域エゴと民族一体感の相反性1」〜9月10日「先住民権運動の背景3(ロシアの領土欲1)」等の続きです。
原発誘致に際しての反対運動もこの種の地域エゴが含まれていましたが(原発事故の頃に連載しました)一応被害を負担してもらう意味で一定の国民理解がありました。
各種交付金はそのための前金でもあったわけですが、福島と違い新潟ではまだ事故も起きていないのに、相手が巨額投資してしまっている段階で「不安だから」と稼働停止を求めるならば、不安を理由に前もってもらっている前金を返すべきではないかという意見も出てきます。
不安料とすれば今も不安がある・福島事故によって安全神話が崩れた・・不安がより一層強まったという論理とすれば、返す必要がないとも言えます。
それならば、・「不安解消策を講じろ・不安料金をもっと上げろ」それまで稼働に反対するのはルール違反ではないという論理でしょう。
そうはいっても、ある程度の危険承知で一旦巨額資金をもらっている以上はある程度の不安はもともと予定していたことじゃないのか?ある程度我慢すべきでないかと思いたい人も多いでしょう。
政府や東電完全安全」と言っていたしそれを信じていたのに・・と言うならば、そもそも不安料の支払い不要だったことになります。

ロシアの脅威6(多国間交渉のメリット)

日本軍が南方方面へ支配拡大していった現地でも末端兵士にいたるまで無法なことしなかった・・自分が飢えて死のうとも現地食料調達や個人的略奪を一切しなかったのは日本の支配者が民の福利優先政治を実践していたからです。
兵の末端に至るまでみんなが自律的にルールを守っていたのは、日頃から上に大事にされていたので自分が上・支配者に立てばどんな野蛮なことでもできるという夢・・そのような理不尽な被害を普段受けていないからです。
(インパール作戦の失敗・糧食の補給準備がなかったことによると言われていて・・その結果死屍累々・・その多くが餓死者です・・が現地食料調達しなかったのです)
庶民に対する過酷な支配をしている社会では、戦争に勝てば権力層は支配地を増やせるし日頃圧迫されている人民・戦士には恩賞の分配として捕虜や敗者の女性に対して日ごろ自分が受けている非人道的扱いの何倍もの非人道的行為を奨励し鬱憤晴らしに利用する仕組みになります。
ローマでは、戦争に勝てば負けた方の民族を家畜並みの境遇に落とすやり方が普通であったのは、それだけ民族内の上下支配が過酷であったことを表しています。
具体的イメージはアメリカ映画で有名なベンハーの物語でしか知りませんが、アメリカ映画ですからローマ支配のマイナスを強調するために作ったものではないでしょう。
権力さえあればどのようなひどいこともできるという価値観・・国内過酷支配のガス抜きを兼ねた領土拡張戦争の場合には、侵略した場合に人権蹂躙が激しければ激しいほどその目的を満たせます。
中国の歴史では、戦いに勝つと相手武将をトコトンいたぶるのが常態化しているのは、勝てば・権力を握ればどのような非道・残虐なこともできることを配下武将に誇示する意味もあったのでしょう。
日本では天皇制が象徴するように権力を握り権力に近づけば近づくほど「空」に近づくのを理想とする社会ですから根本が違っています。
民間企業でもトップに近づけば近づくほど腰が低くならないとやっていけません。
スポーツであれ戦争であれ、出世競争であれ勝てば勝つ程「上に立つべきものの徳」を示さねばならないのが我が社会です。
ソ連や中国の敗者に対する想像を絶する暴虐の歴史は、日頃理不尽な不利益を受けている弱者には、支配と被支配の入れ替わり願望・貧者に宝くじ願望が強いのが普通ですから、日頃から末端兵士や少数民族の鬱屈支配を前提にして、その解消策に利用していたと見るべきでしょう。
ソ連軍の満州 侵入時で言えば、戦争相手を支配下におけば暴虐行為を出来ることを餌にして下層階級や少数民族を使い捨て要員として戦争に駆り出しているのですから、当たり前の恩賞だったのでしょう。
このように見ていくと大災害や戦乱で警察力のなくなったときの略奪行為の多さやレベルによって、(立派な人権保障制度があるかどうかではなく)その国の下層階層の置かれている社会的地位・・支配層のしている政治レベルが反映されていることが分かります。
ところで、トランプ氏に限らずアメリカが基本的に多角交渉を嫌がることをトランプ氏の取引外交のテーマで書いたことがありますが、多角交渉では複雑な思考力が必要というだけではなく、強者の論理を通しにくくなるからです。
この20年ばかり多国間交渉時代に入って、アメリカがせっかく世界一強なのに強者の論理を貫徹できないことが続いたことに不満を出し始めたと見るべきでしょう。
ロシアの対馬上陸事件で解決をみたのはイギリスのお陰でしたが、江戸幕府は多角交渉の有利さを引き出そう(列強間の条件競争を引き出す)とした・・その成功例と解釈すべきです。
我が国の教育では、江戸幕府の失敗を言いたてたい明治政府の影響で不平等条約ばかりに焦点を当てていますが、その時点では早く条約(領土支配範囲の確定)を結ばないとロシアのように実力占拠のリスクに迫られていた点を重視すべきです。
今のTPP協定の賛否同様で何事も有利な面とマイナス面があるのが当然で、その一部不利な面だけ取り出して批判するのは間違いです・条約や契約は一方にだけ有利な条件はありえない・・相互関係です。
幕末に西欧列強との条約交渉中に内容に一部不満があっても当面西欧列強が押し寄せている中でもロシアの強引な実力行動を日本は独力で制御する方法もない状態でした。
対馬でさえ上陸阻止が事実上無理であったのですから、もっと遠隔地で和人のほとんどいない北海道への事実上の侵入・移住を阻止するのは不可能であったでしょう。
日本は白村江敗戦後の北九州への防人動員や中世の元寇防衛戦でもすべて外敵は九州方面からくる前提でした。
日米戦争最後の決戦も5月の沖縄防衛戦から始まっています。
九州には古代から地元武士団が集積していて地元武士団を主力として各地から応援に入る仕組みですし、幕末でも西欧列強が進出してくる正面進路には、薩摩や長州などの強力地元武士団があったなど、歴史的に西南方面での防備経験が豊富です。
しかし、北海道方面からの敵攻撃を古来から全く想定していなかったので防備は手薄どころか、北海道北辺の地理さえまともに理解出来ていない状態(これがのちの間宮林蔵らの活躍になるのです)でまるで備えのない状態でした。
地元で主力になって戦ってくれる勢力のない(当時北海道は農耕地に適さない状態でアイヌ人と言うより人ががまばらにしか住めなかったので知行として石高表示しなかったと言われ、〇〇石待遇という扱いでした。
松前藩の主たる収入はアイヌの漁猟や毛皮等の交易管理による収入だったようです。
ウィキペディアによると以下の通りです。
「江戸時代初期の領地は、現在の北海道南西部。渡島半島の和人地に限られた。残る北海道にあたる蝦夷地は、しだいに松前藩が支配を強めて藩領化した。藩と藩士の財政基盤は蝦夷地のアイヌとの交易独占にあり、農業を基盤にした幕藩体制の統治原則にあてはまらない例外的な存在であった[1]。江戸時代後期からはしばしば幕府に蝦夷地支配をとりあげられた。」
結果的に・・本土の武士・・農地確保に命をかける一所懸命の精神とはおもむきが違っていたのは当然です。
松前藩の業務は交易管理業務中心である結果?松前藩の武力は貧弱で・明治維新後新政権側についたために旧幕府軍・五稜郭軍の攻撃を受けて籠城した兵はわずか60名ですし、松前付近に集中しているので遠隔地の知床方面で、ロシアと戦う主力戦力には到底なりません。
知床周辺に居住するアイヌ人自身が(九州地元民と違い)戦闘的気質の弱い職業集団ですから、(だから松前藩の保護下にあったのです)戦闘要員供給源になり得ません。
幕府としては多国間交渉に持ち込まないでロシアと1対1の領土交渉ではどんどん北海道に上陸して住み着かれるのを実力阻止できないのでどうにもならない・・当時の日本は押しまくられてしまうのは目に見えていました。
そこで先行的にアメリカとの基本的取り決めを原則としてその他諸国がその例に倣う方式を選んだのは、国際情勢を冷静に睨んだ賢明な選択でした。
ちょっとした不平等な取り決めはその後次々と条約改正交渉が成立していきましたが、領土を割譲するような条約を結んでしまってから、平和な交渉で取り返すのほぼ不可能になります。
これが国際関係のゆるがない大原則ですから、税率などは後でどうにでもなるものですから、譲って良いものと譲ってはならないものとは大きな違いがありました。
その時点ごとの優先順位を決めることが肝要です。
関税や裁判権などの修正交渉は一定の期間かかるとしても、国際交易力の実力アップ次第であとででどうにも変更できる項目です、
そもそも・・・交易条件を条約で決めても貿易品は生き物で交易品の優劣がすぐに変わっていくのでこの変化に合わせて修正交渉を行うのが原則です。
その意味では領土保全の緊急性の前に交易条件や一定範囲の治外法権を譲ったことを、あたかも大失敗のように宣伝教育する明治政府系統の学者はフェアーではありません。
この数十年で見ても、毎年のようにWTO交渉〜FTA、EUとのEPA交渉、TPPその他年中行事のように関税(交易条件)交渉をしているのを見れば明らかです。

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