格差社会に戻りますと個人投資家でも海外債券投資比率の高い人と低い人あるいは内需関連企業とで円安の恩恵が違う・・この分野でも投資先相違による明暗・格差が発生します。
株価好調でも消費がそれほど増えないのは、海外収益中心・投資利益の場合、株価が上がったからと言って、(配当の入る預金残高1500万前後の人が数十万円増えたからと言って)あるいは昨年より配当金が数%増えても喜んで食事に行くような人があまりいないから当たり前です。
サービス業従事者が増えると平均賃金が下がる傾向がありますが、この分野の賃金引き上げには「電気釜や冷蔵庫などの物品よりも、生身の人間のサ−ビスの方が高い」ものだと言う意識変革が必要でしょう。
介護・保育その他各種サービス分野は女性中心職場であったこと・・元々家庭サービスから始まっているので、無償奉仕が前提になっている点が問題です。
このため男性中心職場であった製造業に比べてサービス関連は基礎賃金が低過ぎるのを容認して来たことに対する意識変革が必要です。
それをしないで徒らに製造業の維持拡大・・従事者数の復活を主張しても時代錯誤にしかなりません。
我々弁護士業界ででも、訴訟になれば大金でも払う気がするが、相談するくらいはただという伝統的意識が強く、この払拭に苦労してきました。
せっかくこの数十年の努力である程度の相談料を払う意識が定着したものの、最近若手の経営難の結果、1回目相談無料みたいな広告がはびこるようになってきましたので、元の木阿弥に戻りそうです。
米国と違いヤミクモな訴訟を回避したいのは合理的傾向ですが、その回避や円満解決に重要な役割を果たす相談料が無償または1時間1万円程度では、アマチュアやボランテイアなら別ですが、事務所家賃やスタッフ給与その他のコスト負担のある弁護士の「業」としては成り立ちません。
弁護士業界の経営難が弁護士増員によるだけではなく、訴訟より事前相談比率が多くなっている現状に即した収入形態になっていない点が、大きな原因になっているように思えます。
実際の訴訟数の変化は本日現在の司法統計年報によれば以下の通りです。
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/list?filter%5Btype%5D=3&filter%5ByYear%5D=&filter%5ByCategory%5D=&filter%5BmYear%5D=&filter%5BmMonth%5D=&filter%5BmCategory%5D=1
第1-1 全新受事件の最近5年間の推移
【全裁判所】年 次
全事件 民事・行政事件 刑事事件等 家事事件 少年事件
23年 4 059 782 1 985 305 1 105 826 815 523 153 128
24年 3 798 126 1 707 715 1 098 989 857 237 134 185
25年 3 614 236 1 524 023 1 050 716 916 409 123 088
26年 3 494 100 1 455 716 1 018 673 910 687 109 024
27年 3 529 977 1 432 279 1 032 791 970 018 94 889
上記の通りですが、弁護士の主たる収入源である民事事件数が、この5年間だけでもほぼ25%も減っているのに弁護士数が逆に約2割増えている,・・この10年間で見ると約8割増の矛盾です。
以下は日弁連の発表数字です。http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/1-1-1_danjo_nenrei_suii_2015.pdf
年 正会員総数(内女性数) 女性割合
1994 14,809 (938) 6.3%
1995 15,108 (996) 6.6%
1996 15,456 (1,070) 6.9%
1997 15,866 (1,176) 7.4%
1998 16,305 (1,295) 7.9%
1999 16,731 (1,398) 8.4%
2000 17,126 (1,530) 8.9%
2001 18,243 (1,849) 10.1%
2002 18,838 (2,063) 11.0%
2003 19,508 (2,273) 11.7%
2004 20,224 (2,448) 12.1%
2005 21,185 (2,648) 12.5%
2006 22,021 (2,859) 13.0%
2007 23,119 (3,152) 13.6%
2008 25,041 (3,599) 14.4%
2009 26,930 (4,127) 15.3%
2010 28,789 (4,660) 16.2%
2011 30,485 (5,115) 16.8%
2012 32,088 (5,595) 17.4%
2013 33,624 (5,936) 17.7%
2014 35,045 (6,336) 18.1%
2015 36,415 (6,618) 18.2%
この表を見ると日弁連執行部は女性比率に重大な関心を持っているようですが、弁護士業界にとって焦眉の急・最重要な増加率には全く関心がなさそうな表の作成には驚きます。
刑事少年事件では、当番弁護や被疑者国選がこの5〜10年ほど前から始まっているので私選の刑事事件受任がほぼ壊滅・・ゼロになっていて、言わば弁護士業界の収入源の半分が官業による民業圧迫でなくなっている勘定です。
少年事件もほぼ同様です。
離婚事件等は増えていますが、弁護士に相談する程度で自分で調停などにでかけるのが圧倒的比率です。
このために若手弁護士が生活保護基準すれすれのような低報酬目当てに(昼間だけでは食べて行けないので夜9時ころまで遠くの警察まで接見に行く状態)国選事件や少年事件受任を競っている惨憺たる状態に陥っています。
この結果若手弁護士の多くが年収300万円以下という状態になってきた様子ですので、法科大学院の応募数が激減..ひいては応募者の劣化が始まっていると言われます。
このママでは、司法界崩壊目前ですから、偏った運動ばかりする?弁護士業界潰しの政策意図があるかどうかは別として、国家における司法(判事検事の供給源のあり方を含めて)に関する基本戦略の策定が必要な段階に来ています。
この時にあたり、千葉県弁護士会新会長が4月1日就任直後に従来同様に大量合格を続ける場合、「一定数以上の修習生受け入れ 拒否 も有りうる」という趣旨の通知を発したことが大激震になりました。
(会内的にはしかるべき会内手続きなしに、会長が一方的に対外外通知をして良いのかが5月総会の大テーマになりました)
多くの見方は「一種のフライングである」と言うことでしょうが、時機にあっていた・・放置できない状態・発火点に近づいていたことは相違ないでしょう。
これが逆に判検事と弁護士の別立て試験になっていくリスクを開いた結果になった・・単なる暴発の結果になるかは別ですが・・。