中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)3

中国が外貨準備が3兆ドル割れに危機感を抱いているのは、対外債務1兆ドルあるのでこれ以上外貨準備が減ると対外債務1兆ドルの支払がどうなる?と言う論調が普通です。
この結果・・これ以上外貨準備を減らせないと言われていて昨年末から急遽外貨両替の規制が厳しくするなどなりふり構わない姿勢に転じたのですが、この流れ自体が不思議ではないでしょうか?
昨日紹介したように公表数字では差引対外純債権が192兆円もあるならば、(例えば2千兆円の対外債権と1808兆円の債務で差額約192兆円のプラスとすれば(1兆ドル=約110兆円あまりの債務全部の支払時期が同時に来る訳でもないので、)2千兆円の対外債権や株式の一部を売却すれば足りる筈・・・・何故1兆ドルの支払の心配が一般化しているのか分りません。
対外資産は直ぐには売れないからと言う説明ですが、同じことは中国の対外債務にも言えるので、例えばトヨタ日産などの対中投資企業がイキナリ全資本引き揚げを出来る訳ではありません。
純債権国かどうかの議論と3兆ドルの外貨準備割れを危機ラインとする一般的意見・・中国もそれを事実上認めて必至の対応中であることを組み合わせると、本当は1兆ドルの純債務国ではないか・・それを大手メデイアは言えないでそれとなく矛盾をほのめかしているのかも知れません。
今朝の日経新聞朝刊1面では、中国政府がこれまでの外為管理の手法を改めて前日の終値を参考にしないと言う発表が出ています。
重大過ぎるからでしょうが、第一面に出てます。
元々中国の資本出入りは、ホットマネーの流入を許さないなどの規制がある上に、通貨相場も市場で100%決まるのではなく政府が毎日基準値を決めて上下2%内での変動を認めると言うものですから、相場変動幅は1日4%だけ→言わば96%管理相場です。
96%の管理相場でも、前日終わり値を「参考に」(するだけでそのとおりにするのではないのですが・・)翌日の、基準値を決める制度運用でしたが、今朝の報道では、前日終値を「参考にすらしない?」と言う発表をしたと言う衝撃です。
中国はいくら法治国家ではないと言っても何らかの基準がないと引き現場は混乱しますが、新たな基準値産出方法は市場参加者に通知が始まっているらしいですが、日経新聞の記事では米国の次の利上げが目前に迫って来た(6月利上げ説が一般的です)→このときに人民元急落(暴落・収拾がつかなくなるの)を防ぐための布石ではないかと言う解説です。
96%の管理相場とは言え、前日終値が下限に張り付いた場合、それを参考にして翌日基準値を下げると分っている・・急落の連鎖になるのが怖いからでしょう。
為替相場や株式相場の大幅変動に対する規制は、突発的なパニック的誤った急落や急上昇が起きたときに沈静化を図るために認められていることですが、(この名目で中国は上下2%しか変動を認めないと言う制度採用をしていた筈です)が、今朝の報道は一時的下落ではない・・連続的下落・・本来の実力にあわせた下落が迫っていることを自白したようなものです。
ところで市場そのもの規制強化策は、15年夏の上海株式市場急落時の取引規制・・「これでは株式市場とは言えないのではないか」と言う一般的評価でしたがこれと同じことを先手を打って始めたことになります。
中国の場合にはドル金利が上がるのを放置しているともっと人民元が急落するの怖い・・対外債務支払に困難を来たすので防衛上金利を追随して上げるしかありません。
下がる前に早めに$を手当てしておけば良いと言うのが普通の行動→余計にドル両替需要が増える・・外貨準備が減る一方になり、政府がこれに耐えられなくなってこの動きに待ったを掛けて来たのが昨年末までの次々の規制強化策でした。
今年始めまでに資本流出強化が完成してこれ以上の規制強化が出来なくなったので、年末から金利上げ金融引き締めに入るしかなくなったのですが、アメリカの金利上げに備えて中国政府が通貨防衛・為替市場介入に必死なのは、際限ない追随金利上げを続けるには国内景気上無理がある・・・体力的について行けないので一種の資本鎖国政策に逆戻りを始めるしかなくなったことを表しています。
ソ連が、レーガンの挑戦に応じた軍拡競争について行けずに崩壊してしまった例を参考にしているのでしょう。
軍拡の方は市場のように直ぐに効果が出ないのでまだ拡大中ですが、市場相場は直ぐに結果が出るのでそうはいきません・・そこで事実上市場機能を空洞化して行く方向に邁進するしかないのです。
中国のGDP発表が電力・輸送統計問わないと指摘されるとその統計発表をやめてしまう・時間をかけて政府発表に合うように統計を作り替えて行く・・新幹線が事故を起こすと現場で土に埋めてしまうなどの報道が世界を賑わしましたが、体温計に当たる市場規制強化をドンドン強めると中国経済の体温を不明にするメリット・・逆から言えば、政府に取っても本当の国力が不明になります・これがソ連崩壊の基礎的事情でした。
入院患者の毎日の検温や脈拍数などを誤摩化しているようなものです。
話題が変わりますが、自由な取引が出来ない通貨を国際通貨・・SDRに採用したIMFの政治的偏りが明らかで、中国が将来覇権国の地位を確立すれば中国の地位向上に貢献した功労者としてラガルド専務理事は評価されるでしょうが・中国がここで失速・・デフォルト気味になって世界が大混乱した場合、IMFはどう言う存在なのか?政治責任問題になって来るでしょう。
昨日紹介した中国の所得収支から見ると、「貰う利息より払う利息の方が多い」と言うことは結果だけ見れば、正常債権だけで収支を合わせれば中国が純債務国かもしれません。
他方日本の場合以下の通り、所得収支だけで18兆円も稼いでいます・・海外投資は相応の利潤を生んでいると言うことでしょう。
https://mainichi.jp/articles/20170511/k00/00e/020/308000c
毎日新聞2017年5月11日
財務省が11日発表した2016年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支は前年度比13.1%増の20兆1990億円の黒字となった。
・・・16年度の第1次所得収支の黒字は、18兆356億円と07年度当時を約1.5兆円上回っている。」
中国の利回りが悪過ぎるのは、ベネズエラ〜アフリカ等の破綻国家?に対する投資を対外債権に計上しているからではないでしょうか?
ところで、貿易黒字と同額のドルだけ買えばトントンの筈ですが、それ以上に(貿易に有利)人民元相場を下げたい+表面上の外貨準備を大きくし国威発揚・・アメリカに対する発言力保持のために多めにドル買いをする・・結果的にドル建て外貨準備が膨らみます。
中国の外貨準備は上記のような演出の結果、内容実質が過去の貿易黒字の累積と大きくかけ離れていたと思われます。
貿易黒字額も相手国の赤字額と合わないなど以前から信用性がないことが指摘されていました・・ホットマネー・資本規制をくぐるために、輸出取引仮装による(貿易黒字の実質仮装取引がかなり含まれていた)資金流入が噂されていました。
今この隠れたホットマネーが輸入代金仮装した逆張りでこの数年逃げ始めたことになります。
昨年1年間の人民元防衛相場によって、こうしたメッキが剥げて来た(中国の外貨準備は張り子の虎であった)のが中国外貨準備急減の顛末でしょう。

民族文化の有無3(宗族血縁組織)

韓国の血族支配の財閥が勢威を振るっているのを近代的企業統治精神?を基準に批判する論調が普通ですが、血族・宗族発展のエネルギーを無視した意見では的外れな意見だと思われます。
韓国の財閥組織形態は戦前日本の財閥をモデルにしたものですが、日本の場合、三井,三菱、住友その他財閥見ても分るように直ぐに血族支配から脱皮していたのですが、韓国の場合いつまでたっても客観組織に変貌出来ないのは意識が遅れていると言うよりは、中韓では宗族血縁重視・地域社会・「公」の意識が育っていないと言うか元々存在しない・・価値観が違う・・民族国家その他の地域社会・共同体意識のない社会?であることを直視する必要があります。
周回遅れをバカにしていても良いですが、もしかしたらグローバル化に最も適しているのが宗族血縁意識民族かも知れません。
地域社会・・面としての固まりでないと生きて行けない組織体行動原理の場合、進出先で面としての地域支配権獲得が必須・・ですが、ツタやカヅラのような生き方ですと行く先の支配者が誰でも良い・・どこでも隙間があれば入り込みそこで根をはれます。
これが、華僑が世界中へ進出を容易にして来た生活習慣と言うか価値観です。
その内に最先頭の社会になる可能性もあります・・蔓草はミミズのように途中で断ち切られてもその先で根おろして更に発展して行ける・・テロによる交通切断などに強い組織です。
いわゆるグローバリズムの基礎ですが、つる草のようにお互い絡み合ってぐちゃぐちゃに棲息する社会が後1世紀もすると普遍化し、「民族国家?そんなもの昔あったな!」と言う時代になるかも知れません。
本国を必要としない点ではユダヤ系と似ていますが、華僑の場合宗族間の強固な互助組織・意識が特徴でその地の支配者になる必要がない(大きな樹木にならず地を這い樹木(権力)に絡み付くだけのツタの特性で)点で政敵を作り難い点が有利です。
世界が資源や量に頼る時代に終わりを告げようとしていると言う意見で書いていますが・・アメリカの動きを見ると中国のバイタリティーに比べると未だに量で勝負する・・移民受け入れ(人口量)や資源に頼る習慣が抜けないような印象を受けます。
欧米の影響を受けているメデイアも如何に多くの移民を受入れて労働力=人口を増やすかの宣伝ばかりで一人当たりの豊かさ追及にはとんと関心がない印象です。
アメリカの復権と言っても結局はシェールオイル等の資源産業の復活でしかないことを大分前に書きました。
中国が省力化投資に邁進してどこまで日本に肉薄出来るか、人口の1〜2割でも近代化に成功すれば日本の人口の1〜2倍ですから、組織体の競争・・国対国では日本より国力が上になるでしょうが、残り8割の底辺層を抱えたままである分が不利です。
人口の巨大さ、国土の広さが不利になる時代です。
とは言え、「よそ者がそんなことで国がどうなるの?」と心配してやる必要張りありません。
異民族支配が多かった関係で、中国人(と言うよりもこの地域の諸民族)の心底の意識は「国なんかでどうでも良い・・自分・一族だけ成功して世界につる草のように伸びて行けば良い」ということでしょうから、そんなことは気にしない・・一人でも多くの成功者を出す方が先決と言うことでしょう。
成功する順にドンドン国を出て行き「カス」だけ残る・これが中国地域になりそうです。
天の原フリサケミレバ・・と故国をしのんだ阿倍仲麻呂のように「何が何でも故国に帰りたい」と言う心情は稀ではないでしょうか?
とは言えまだ民族?国家が幅を利かす時代ですから、国家として世界の指導的地位を得るのは重要です・・そのためには最後に重要なのは世界に通用する独自文化が生まれている民族かどうかに掛かるでしょう。
他所の文化のパクリや単に遅れてダサイ・粗暴なだけの独自性では相手にされません。
独自文化発進力もなく他所の名画や彫刻を金の力で買い集めるだけのロシアやアメリカに先があるの?と言う疑問です。
3〜4ヶ月ほど前にプライスコレクションで知られるプライス氏が日経新聞に「私の履歴書」を書いていましたが、彼は財力と鑑識眼によって若冲その他の日本絵画のコレクションしたのは個人の業績としては立派ですが、ここのテーマは、自民族の文化は?と言う疑問です。
大原美術館など見ると自己満足自慢のためではなく、洋行出来ない美術学徒が日本にいながら西欧の最新潮流に触れられるようにと言う心意気で出来たことが分ります。
ブリヂストン美術館に行ってみると、専門家ではなく「一般のサラリーマンが仕事帰りや休憩時間にちょっと立ち寄って芸術に触れられるようにしたい」と言うみんなのための美術館創設を目指したことも分ります。
日本人の多くは自己満足のためにあるいは自慢するためにコレクションしたのではありません。
古くは弘法大師その他の留学僧は唐の先進分物を持ち帰り、自国普及に努力しましたし、誰とも分らないほど多くの人の努力で漢文をそのまま日本語に読み下す技術が考案されてみんながそのまま漢文を読める社会にしてしまいました。
明治維新時にも洋行帰りが西洋知識を独占せずに直ぐに大量に翻訳して国民への西洋知識の普及に努めましたし、対応日本語のない場合多くの新造語も作りました。
プライス氏の集めた若冲のコレクションがアメリカ人の美術レベルに何ほどか影響を与えることがあったのでしょうか?
あるいは、幕末からアメリカのコレクターが、金に飽かして(両替の不正があったこともあります)日本美術品が多量に多数コレクトされて今は、メトロポリタン美術館に収蔵されていますが、アメリカ人の創造力に何か影響を与えたのか不明です。
23日まで、日経新聞最終ページにイギリス貴族の館・カントリーハウスの連載をしていましたが、エエカテリーナ2世同様に個人的蒐集・自慢の域を出ないレベルを表しています・・イギリスは世界の覇者になって経済力にあかして世界中から文物を集めても、先進文化を参考にして自国文化を発展させるほどの文化土壌がなかったからでしょう。
我が国は幕末から明治開国後「洋画」「洋楽」を学びましたが、遠近法や新しい絵の具などが入れば直ぐにこれを応用出来る下地があってのこと・・飽くまで日本画、日本音楽を棄てていません。
料理も西洋の良いところを取り入れても和食自体発展するばかりです。
和魂洋才・・こうした外国文化の受容方式は遣唐使の昔から変わりません。
東博(東京国立博物館)にある法隆寺館の仏像群や東洋館にある北魏時代等の仏教伝来初期の石像群を見ると、日頃我々が知っている仏像と表情がまるで違うのに驚きます。
漢詩が入っても万葉に代表される我が国古来からの「歌詠みの心」を基礎にしてこれを受容し取り入れて来たことが分りますし、政治制度的に律令制を受入れても直ぐにわが国風に変えて来ました。
洋画がいくら立派だと解説されても日本人が自己資金で買うのは殆ど日本画でしょう。
東山魁夷が洋画を志したときに親から洋画では食べて行けないから「日本画に」と言われたと言われますが、実業家の親は学校教育でいくら洋画を褒めようとも、国民の心は違う・・・需要者の気持ちを良く知っていたのです。
日本発で今や世界を風靡し始めたアニメも、他所からの借り物ではなく、鳥獣戯画の昔から動物を擬人化して遊ぶ日本古来からの風俗が源流です。
アメリカが大きな顔を出来たのは資源があるからダと言う意見・・最近ではJuly 2, 2016,「欧米と日本の対応1(EU→大規模化)」で書きました。
産業革命以降20世紀までは、資源の時代・・戦争も資源を巡るものであったと言えます。
世界の覇者になったアメリカも資源に基礎を置くので、独自文化らしきものがなく、ジーンズやハンバーガー、コーラくらいしか残せない印象です。
そこで現在アート創造に必死ですが、私のようなド素人から見ればどれも思いつき的域を出ない・・素人にはあまり魅力を感じないのが難点です。

社会保障や国債と世代間損得論3

国債の日銀引き受けは、満期が来ても日銀がまた引き受ければ良い・・永久に返済不用の国債ですから、債権の株式化の一歩です。
実は・・企業の社債も満期借換債発行の繰り返しで、事実上元本返済をし予定していない点は同じ・・国家破綻しない限り過去の旧発国債保有者は無期限保有出来るようになったと見るべきではないでしょうか?
日銀引き受けは事実上無期限国債と同じですから、政府にとって将来何のリスクもありません。
私の上記理解が正しいと断定する自信がありませんが、今の学問では分らないからと言って何でも反対するのって、責任がある立場の人としては仕方がない(何とかなるのじゃないの!とは言えない)とは言え、発展性がない印象です。
日本の消費税論議の1つの論点でもありますが、景気に硬直的な消費税が占める比重が上がると、景気変動に税収が左右されない・・税収弾性値が低いので財政の安定性を求める財務省が、景気変動に関係の少ない消費税にこだわる傾向があります。
逆から言えば不景気で国民・経済界の所得が減っても、税だけ多く取られるシステムはおかしい・・不景気で収入の減ったときには消費材の価格も下げて欲しいのが普通の景気対策ですが、付加される税率がそのままと言うのは納得出来ないと言う反論も然りです。
財政の立場から言えば不景気のときこそ財政出動のために財源が必要・税収を上げねばならないと言うことでしょうが、民間からすれば不景気で収入減でも税が変わらないのでは変な気持ちがします。
トランプ氏の法人税減税や大規模インフラ投資の選挙公約の財源をどうするのかと言う説明がない点で、実現性が危ぶまれているのも同じ原理です。
財源手当てないまま減税すれば、政府機関の支払不能・政府機関の閉鎖になり兼ねません。
この辺は、消費税でない所得税や法人税でも同じ・・財政政策の財源を税収に基礎を置く限り、景気が良くなれば税収が上がるから消費増税する必要がないと言う意見でも無理がある点は同じです。
不景気が永久に来ないと言う前提ならば分りますが、「景気を良くすれば税収が上がるから消費税を上げる必要がない」と言う意見によれば不景気が来たときに(不景気で税収が下がるから元々の固定経費にも足りなくなる外に不景気対策の財政投入資金が必要でダブルで資金不足になってこの穴埋めのために)大幅増税するのか?と言う矛盾があります。
「消費税を上げて景気を失速させて税収を減らしたら元も子もない」・・「角を矯めて牛を殺すな」と言う程度の意味では正しい意見ですが、いつかは不景気が来るのですから、それに対する備えとしては論理が破綻します。
ここでは、政府対国民の被害者意識で書いているのではなく、経済原理から言っても多分この素人的感覚・・「税金で何もかも賄う発想」そのものに無理があると言う感覚が重要でしょう。
この隘路を打開するために不景気のときに経済にカツを入れるための出費は、税で市場から資金を吸い上げるのでは余計不景気になるので、赤字国債で賄うという現実的発想が生まれて来たのです。
そして好景気のときのその穴埋めをしないなままにすると国債残高が膨らむ一方になります。
学校秀才・既存学習論理から言えば政府財政赤字=大変なことになると言う赤字国債・紙幣大量発行は鬼っ子ですから、経済官僚とその意を受けたエコノミスト総出で「異次元緩和」を批判している構図です。
アメリカ連銀もこの妥協を迫られて一刻も早い異次元緩和の脱却に追われています。
ベネズエラ危機が起きたのは、政府の負債が大きいからではなく、ベネズエラの国家・社会の購買力を負債が超過した・・購買力がなくなったことによります。
現在のハイパーインフレとは、購買力がないから他国が売ってくれない・その国の通貨ではどこも両替してくれない・取引してくれない・・物資不足でいくら国内紙幣を印刷してもその紙幣の国際的信用がなく・・ドルや円などの国際通貨でないと売ってくれないのですが、その外貨を手当てする資金がない・・国内紙幣を印刷しても食料品を生み出すわけではない状態を言います。
政府は社会構成の1主体に過ぎませんから、政府発行の国債残高の絶対額やGDP比には意味がなく、デフォルト危機・ハイパーインフレリスクは、民族国家全体の経済力・・国際収支上の対外債務が支払えないときに起こるもので国債の発行残高とは何の関係もありません。
我が国は世界1の純債権大国です。
ネット空間でも既存論理を前提に現状批判している評論が多いのですが、国債悪玉論だけはなく対中、対韓批判であれ何であれ既存論理煮しがみついている限り無理っぽい印象です。
旧来理論・スキームによる理解では中国の国有企業への財政投入の仕方では、・その内破綻すると言う論調が多いのですが、世の中はいつも動いてるのですから、新しいスキームで考えてどうなるかのかの検証・・意見が必要です。
中国が、赤字輸出の継続や無駄な投資が続く・・続けられているのは、中国大企業の多くが国有企業なので豊富な外貨準備の取り崩しによる下支え効果・ゾンビ企業温存策の結果と一般的に見られています。
ゾンビ企業温存・倒産先送りだからその内行き詰まると言っても、そのような先送りは先進国でもしょっ中やってきたことです。
好不況の波があるので、不況時に公共工事等に財政投資して需要の下支えをして倒産を防いでいるうちに次の好景気が来るのを待つ方式です。
いわゆるケインズ式需要喚起策と金融緩和の組み合わせで世界中がこれの採用で大規模不況や長期化を防いで来ました。
構造不況・・その業界の競争力がない場合には、一時的に輸入制限などで保護している間に構造改革しない限り破綻の先送りでしかなく税金の無駄遣いで意味がありません。
・これこそがゾンビ企業温存策で、アメリカの電気・鉄鋼業などが日本企業叩きで輸入制限してもその間に構造改革努力をしなかったので結局どうにもならなかった例です。
中国の場合、下支えているうちに構造改革に成功する努力があるか否かの検証をしてから未来があるかどうかの議論すべきです。
この努力をしないで「下支えだから直ぐに行き詰まる」とは言い切れません。
中国の将来は出血輸出その他死に物狂いで倒産先送りしている間に(低賃金に頼るこ企業モデルを中進国並みの高賃金?に耐えられるように)構造改革が出来るかによるのですが、日本からロボット購入額がうなぎ上りなっているのを見ると輸入制限で安心してしまったアメリカと違い意外に健闘している様子です。
数日前に中国資本が買収した「ボルボ」の例を紹介しましたが、したたかに高度技術吸収にどん欲な様子が見て取れます。
高度技術が身に付くまでの資金繰りのためには赤字輸出しかないなど・・無茶な行動が世界に迷惑を及ぼしていることは確かです。
中国に取って必要なこととしても、鉄鋼に限らず色んな分野で不当廉売輩出源となって、世界の経済を蝕むマイナス面も考慮すべきです。
中国は、世界に迷惑をかけないで構造改革をする大人の対応が求められていますが、中国は地域大国の歴史しかないので、国内政治の経験しかありません。
まだ世界でスマートな振る舞いをすることに慣れていない・・その結果として出血輸出が目立ちましたが、排出源と言えば、公害出し放題で金儲けさえすれば良いと言う態度とも共通しますが、近隣国は迷惑です。

中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ

ところで、日本では中国スジ保有の日本社債や株式が16年も大幅買い越しになっているようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYDMR6KLVRD01
中国の対日債券投資、再び増える公算-16年の買越額は記録更新か      2017年1月18日 12:27 JS
「中国による日本の債券購入は2015年と16年1-6月(上期)に記録的規模に達したが、その後は一服していた。だが日米の金利差拡大が日本国債の魅力を再び高めることから、中国による買い入れがまた活発化しそうだ。」
中国が米国債を売り、韓国への投資を引き上げて利子配当利回りの低い日本企業へ投資する魅力・必要性は何でしょうか?
ちなみに10年もの国債の日米金利差はhttp://lets-gold.net/chart_gallery/chart_gb_yield_ja-us.phpによると以下のとおりです。
日米10年債金利の推移チャート

日米10年債金利の推移

上記のとおりの金利差があって、今後米国金利上げが始まる・・更に差が開くのに、金利の安い日本の債券を何故中国が買うかです。
その理由は以下のとおりらしいです。
MIZUHO CHINA MONTHLYみずほチャイナマンスリー2017年3月号
中国アドバイザリーの現場から
「中国企業による『Made in Japan for Chinese』の動き」
みずほの解説記事引用を省略しますが、これを読むと、中国は中間品の自製・産業構造を高度化するためには単純な日本企業の中国進出・誘致策の限界が来ている状況が論じられています。
すなわち・・最終製品が日本企業名でも中国国内生産品では消費者が買わなくなっている・・どこで作ったかが重要・・消費レベルが上がって本当の品質重視になって来たことが窺われます。
日系企業名だけでは現地企業製と大差ないと言う認識・・日本企業進出による現地生産が限界に来ているようです。
これが訪日観光客の爆買いの基礎です。
それだけ中国民族企業のレベルが上がったと言うことでしょうし、日本人が食品や衣類等を国産でければイヤと言う意味・・見た目が同じでもちょっと違うど・・その違いが中国人にも分るようになったと言うことです。
そこで、・・単純な日本企業誘致や企業買収策から、中国資本によるOEMや業務提携など日本国内生産「made in jyapan for Chinese」のブランドをつけて逆輸入政策になって来ているとなっています。
消費材・・健康食品ベビー食品や医薬品・・肌に触れる衣類や漢方薬などでは顕著らしいですが、中国企業が日本で製造することによって中国(資本)企業でありながらメイドインジャパンを名乗れるメリットに傾斜していることが、日本への投資・・日本は資本完全自由化していますのでスキなように市場で株や債券を買えます・・株主や債権を入手して徐々に企業買収のチャンスを狙っている段階です。
そのためには日本人の嫌中意識・対中アレルギーを薄めるしかありません・これが対日強硬意見が減って来た背景でしょう。
親台湾国民感情に目を付けて?台湾資本であるものの、中国政府の息のかかったホンハイによるシャープ買収はこの流れの一環でしょう。
中国としては資本流出危機があるとは言え、環境技術その他まだまだ必要とされる高度技術部品だけではなく消費者の要望を汲み取ると、身体に直に触れる・・ソフト面に広がる日本の高度技術吸収に努めるしかない実態が見て取れます。
中国政府の国際政治上の意図は別としても政府がいくら反日教育をしても、人民の日本製品に対する信用が高い・・評価力・・消費者の目が上がっていることを表しています。
消費者の目次第で中国の企業製品も向上します。
こんなわけで、資本流出危機がありながらもここ数年中国資本の日本流入・・日本の不振企業に目を付けて企業買収の前段階である資本注入に熱心になっている原因らしいですが、日本とすれば、余計な資本が入って来る分円相場が上がってしまうデメリットがあります。
企業にとっては株が上がって嬉しいでしょうが、(裏返せば公然たる「いつでも回収出来る」賄賂みたいなもので保有比率が上がると反中的言動すると、売り浴びせられると怖いので親中的になって行かざるを得ません・・)金あまりの日本全体としては、事実上の賄賂の役割を果たす外資が入って来るメリットはありません。
ただ、ホンハイによるシャープの黒字化や日産傘下(ゴーン流経営革新)に入ることによって、三菱自動車の再生が軌道に乗って来たように、「現在流御雇外国人・・違った血を入れる)違った目での運営によって生き返る・・従業員が職場を失わないで済むメリットがあります。
中国向け輸出に特化する場合、日本資本のママであっても現地責任者を中国人にするだけではなく経営トップも日本人経営者よりは中国人にした方が合理的かもしません。
国内工場・・生産維持のためには、輸出先の資本・経営者の方がニーズをつかむのに長けているので、合理的でしょう。
日本企業が中国の解放後中国へ進出したときには、日本向け野菜・餃子あるいは縫製工場等でしたが、日本市場向けである以上日本の市場動向・嗜好に詳しい日本人が行って指導した方が売り易いに決まっています。
パリでファッション製品を売るならば、パリの事情に通じた人・・パリ人を現地人の目利きによる商品を送った方が普通は良いでしょう。
中国資本による支配?を不愉快に思う人がいるかも知れませんが、それの逆張り・・中国向けに特化するならば、中国向け製品を作るのに何百人の日本人がうまく中国人をトップに使って作ると思えば良いでしょう。
源氏や平氏の貴種を地元武士団が棟梁に担いだり、親王を総大将に担ぐのと同じことです。
サッカー等で外人を監督にし、フィギアースケート等で外人コーチを頼むのと同じです。
高校野球でも関係者全員が、甲子園に出たいのであって、地元出身監督で県内のリーグ戦で負けてしまうよりは、監督が県外から来ても地元チームが甲子園まで勝ち進めた方が良いに決まっています・・武士団としてもその合戦に勝って生き残ることが先決であって、団結して勝てる旗印になるならば、お飾りの総大将など見たこともない親王サマでもは誰でも?どこから来ても良いのです。
日産や三菱自動車の例を見ても、従業員を養ってくれるならば外資でも社長が外人でも良いのです。

中国バラまき投資の限界2(ベネズエラ危機3)

5日に紹介したデフォルト直前のベネズエラに対して中国は多額の債権を有していて、最早回収を諦めていると言われています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4752   2017年5月5日(金)
中国「ばらまき外交」の限界 経済悪化が深刻なベネズエラを教訓に 岡崎研究所
「フィナンシャルタイムズ紙は1月25日付社説で、長年にわたる誤った経済政策運営によりベネズエラの経済・社会は深刻な代償を払っているが、同国の最大の債権国である中国も、法外で甘い条件での貸し付けが大きな問題を生むことを学んでいる、と指摘しています。」
「ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は緊急資金援助を求め中国とサウジアラビアを訪問したが、明らかに何の成果もなかった。投資家たちは、ベネズエラのベンチマーク国債を「デフォルトの危険あり」のレベルまで落とした。」
「ベネズエラ最大の債権国である中国にとって、これは重大なことである。この状況は、中国が続けてきた、ほとんど条件もなく、透明性のないままに、多くの場合は資源を対価に多額のローンを提供するという形の対政府資金援助の実情を中国に付きている。」
「中国は新興国に対し気前よく大金を貸しており、ここでベネズエラでの経験から貸出条件を厳しくすると国際的な開発環境に大きな影響を与える可能性がある。しかし、中国が「底なしの貸し出し外交」(open-wallet diplomacy)に制約を加え始めたのはベネズエラだけではない。ジンバブエは、昨年100億ドルの救済パッケージを断られ、約束された20億ドル貸付には具体的な石炭鉱山のプロジェクトおよび将来の採掘による税収が担保とされた。中国は、世界銀行やIMF、アジア開発銀行といった多国間機関が貸し付けに厳しい条件をつけるにはそれなりの理由がある、ということを学んでいる、と指摘しています。」
AIIBにこぞって参加した後進国は中国の(慎重な融資審査しない)乱暴な融資決定を期待していたでしょうが、イザ始まると意外に中国も厳しい審査をする可能性があります。
後進国相手のインフラ受注では、中韓は無茶に有利過ぎる(ほぼ出世払い?)支払条件で日本等先進国から受注を奪って来ましたが、上記のとおりの結果が出て来ました。
インドネシアの新幹線受注も支払い条件が無茶過ぎて日本が土壇場で奪われたことが知られていますが、経済原理無視の無茶な受注で表向きの受注実績だけ拡大しても先がないことが分らないのです。
これが民営ではなく国有企業だから出来る(出血輸出が続けられるのも原理が同じです)ことですが、経済原理に反した投資をしていれば、時間の経過・結果的に国家経済を蝕んで行きます。
インフラ工事代金支払いが出世払いのような契約では、さすがに中国政府の資金が続きません・・あちこちで受注だけして放りっぱなしの工事が一杯あると言われています。
こんな無茶な受注が出来ていたのは、中国の将来性を囃し立てて外資がドンドン流入していたので、その資金転用が出来ていていたからに過ぎません。
中国の民度限界が見えて来て外資が引き上げ始める・・あるいは新規投資が減り始めるとこれまでの大判振る舞いの支出(軍事費だけではなくいろんな分野の支出)を絞るしかありませんが、一旦広げてしまうとこれが難しいのです。
特に、アフリカ等へ使ってしまった資金をどうするかで困り始めます。
中国の3兆ドルの外貨準備と言っても日米欧に対するものは公表額面どおりの価値があるでしょうが、中国の場合公表数字自体が当てにならない上に、その他の構成比が不明・・額面どおりの価値があるかどうか不明と言われる所以です。
対日投資の増減発表でもルクセンブルク経由など複雑化していて、その多くは中国スジの資金として推測されているだけです・・敢えて不透明化を狙っているのでしょう
内容がはっきりすると困ると言うことは本当は?と誰もが憶測を逞しくしたくなります。
外貨準備3兆ドルと言っても中身が薄いのを世界中が知っているから、中国がある日決済資金不足でデフォルト直前になってしまわないか?中国リスクを世界中が気にしています。
この心配が中国からの資本流出の動きを加速します。
外資のうち工場設備等に投資した資金は簡単に逃げられませんから中国は「釣った魚に餌をやらない」と言う露骨な政策で強気ですが、何やかやと言いがかりをつけては支払を遅らせるので、新たな外資も警戒して入るのが減って来ます。
国民の方も輸入代金を簡単に支払わせてくれないと「そんなに苦しいのか?」となって、疑心暗鬼が募りいわゆる隠れたホットマネーの流出と国民の海外資金逃避が始まるとどうにもなりません。
外資とのせめぎ合いだけならば、純債権国かどうかが大きなポイントですが、人民からの外貨両替要求になって来ると外貨準備がいくらあっても間に合わなくなります。
まさか国内流通紙幣を全部ドルで買い上げるのは不可能ですから、国民が国内流通紙幣を次々とドル交換に持ち込むようになると際限がない・・底抜け状態になります。
銀行の信用不安→我先に預金払い戻しを要求すれば、取り付け騒ぎになりますが、この場合中央銀行が紙幣満載のトラックを乗り付ければ騒ぎが収まります。
しかし、外貨であるドル交換要求殺到の場合人民銀行がドル紙幣を無制限印刷して供給するわけには行きませんからこの手は使えません。
外貨への交換制限しかないでしょう。
物資不足による配給制度を貨幣に応用したことになります。
外貨不足の最貧国では臨時に外貨割当制が取られることはありますが、・・IMFで昨年秋にSDRに採用されたばかりの中国が、これをしなければないとはこれほどの屈辱的なことがあるでしょうか?
中国の外貨危機・交換制限は外資による売り浴びせによるばかりではなく、国民の政府不信によるとすれば世界史上初めて新手の金融危機の始まりです。
今はその取り付け騒ぎの一歩手前・・人民が外貨準備攻防の主役であるからこそ、昨年から国民の外貨交換条件をドンドン厳しくしているのは恥も外聞もなくした政府としては正しい政策でしょう。外貨両替制限の内容を以下に紹介しますが・やり過ぎっぽい印象です。
ここまでやると人民は余計政府を信用しなくなり・・いよいよ売り抜けに工夫を凝らすようになるでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-03/OJ6XGS6S972D012017年1月3日 15:34
資本流出リスクを警戒する中国当局は、新年を迎えるに当たって個人による人民元の外貨への交換について要件を追加した。」
詳細紹介を省略しますが、知りたい方は上記にアクセスしてご自分で入って下さい。
要点は誓約書に違反すれば3年間外貨両替出来なくなる外、マネーロンダリング調査対象・・ブラックリストに入ると言うことで、正規ルート利用者は震え上がってしまい・1年分枠を一度に使い切れなくなりました。
その頃に日経新聞に解説が出ていましたが、正月明けに1年分の限度額一杯の両替請求がドット出ると投機筋が見て空売りを膨らませていたのですが、政府はその裏をかいて(上記具体的使い道の誓約書記載義務)成功したことになります。

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