正社員の定義2

このブログは学者の論文でないのでいつも書くように思いつきですが、正社員か否かの区別は職業柄私の慣れ親しんだ法的視点限定で・・分類すれば、期間の定めのある・更新予定のない雇用か否かの違いのようです。(12月1日にもちょっと書きました)
社会学的関心では、規格社会を前提にしてその社会にもっとも適した働き方をしている人を正社員といい、規格外で働く人を非正規労働者と定義していることになるのでしょうか?
希望の党の公約である正社員就労支援とは「一人でも多く規格人間にします」という規格社会のさらなる拡大を目指す主張になりそうです。
人間に正式の人と正式でない人がいないのと同様に、労働者にも正式の労働者と非正規の労働者(違法就労でない限り)いるハズがないのです。
「規格外」と思われる人を必要以上に差別するから、(このシリーズの最初に書きましたが、パートもバイトも違法労働ではありません)非正規という半端な概念が生まれるしそういう区分けが必要になってくるのでしょう。
政治が目指すべきは「規格外の烙印」を押されると生き難い社会を前提にして規格適合者・正社員適合人材を増やすのでは意味がないでしょう。
結婚していない、子供がいない人も生活が普通にできるし、子供がいたり、障害等で1日に数時間しか働けない人や労働能力が規格外の人間・多様な個性を持つ人材が多様な個性に合わせて多様な生き方のできる社会ではないでしょうか?
従来女性の成功者として出てくる有名人の多くはいわゆる男まさりの猛烈型中心で紹介される傾向があった・・・男性でさえはみ出てしまうことの多い厳格な男性の理想的労働規格に女性が適合できた稀な場合ですから、こういう成功例を煽っても仕方がないという苦言を10年ほど前に書いたことがありました。
最近少し傾向が変わって来た・烈女でない普通に生きている女性が、普通に働けている姿が紹介されるようになりつつあるのは良いことだと思います。
男女や体力、方向性の違いを前提にそれぞれの生き方を尊重する社会であるべきです。
ただし、子育て中は外で働けないのは当たり前だと思考停止すべきではなく、働けるような受け皿整備、保育所の充実や職場のIT化により現場系労働でも腕力不要化し、衛生環境・トイレや更衣室設置など・・向上により女性が働き易くするなどの企業努力も重要です。

素人の私が正規・非正規雇用とは何かの意見を書くばかりではなく、専門家の意見をみておきましょう。
http://www.huffingtonpost.jp/nissei-kisokenkyujyo/temporary-work_b_11190746.htmlには、非正規と正規の定義が出ています。

2016年07月27日 16時17分 JST | 更新 2017年07月27日 18時12分 JST
ニッセイ基礎研究所
非正規雇用労働者の実態を国際比較する際に重要なのが非正規雇用労働者を区分する定義であるものの、その定義は国によって異なっており、必ずしも収斂していない。
まず、日本の労働力調査では、非正規雇用労働者を「労働契約期間、以下、従業上の地位」と「勤め先での呼称、以下、雇用形態」により区分している。http://images.huffingtonpost.com/2016-07-26-1469508110-8404116-letter16071911_2.jpg

私が素人的発想・終身雇用的関係にあるのを正社員という考え方でこれまで書いてきたのは、上記のうち期間制限に着目した分類になりますが、週35時間以上かどうかの形式区別ではなく、(週30時間内労働でも・大学教授など週30時間も拘束されていないでしょう))雇用関係が終身的安定か否かで書いてきました。
労働時間で分けると期間が時間単位〜一日〜週単位〜1ヶ月以上を含まないかなど、基準次第で総数が違ってきます。
一般常識ではパートで働いている人が週35時間超えて働いても非正規就労と思っているでしょうから、水色のグラフは社会イメージに合っていないことがわかります。
また水色の基準区分けで済むならば、社会問題になりません。

責任政党とは?3(正社員の定義1)

人手不足で困っていて就職難で困っていない日本で、メデイアの支援を受ける小池氏がなぜ韓国の政策の受け売りをするのか不明です。
小池氏が都知事になってから都政の重要事項について公式会議の手順を踏んで行う方式を無視して密室で決める独断が目立ちますが、そうなるといわゆる14人のブレーンの影響力・彼らの思想根拠が重視されます。
たとえば、築地市場者での座長をしている小島氏の経歴によれば、元々原発反対と築地移転反対論者であったと報じられています。
内部留保課税に関しては、安東氏の言い訳・・・内部留保課税するといえば企業の配当や雇用が増えるからという韓国の経験を下敷きにした意見が出ていますので、彼の意見が参考にされたのでしょう。
日本のメデイアでは、4〜5十年前までには何かあるとテレビ新聞等で「欧米では・・・」と知ったかぶりで講釈する人が多かったのですが、今では韓国事情を紹介する人がメデイア界では幅を利かしているかのような実態が伝わってくる印象です。
11月25日に希望の党のその他の主張?公約の下位に来る具体化主張を紹介しましたが、26日から手元資金問題に流れて期間が空いてしまったのでもう一度再掲します。
特集:2017衆院選

「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。」

というのですが、何となくメデイア受けしそうな流行語を羅列したような印象を受けるのは私だけでしょうか?
上記ダイバーシテイー社会の実現と正社員化応援(正社員を増やしていく政策)とどのように整合するのか全く不明です。
幼稚園児が「おまわりさんになりたい」などいうのは微笑ましいものですが、政党の公約でスローガンだけ掲げて何をどう実現するのか不明では政治になりません。
終身雇用意識全盛の戦後高度成長期でも現場労働者や、小規模商店で働く店員等は身分保障がありませんでした。
終身雇用社会といっても一定の社会状況で中心的雇用形態になっていた、あるいは理想的就職先と観念されていたに過ぎません。
現在〜将来にかけて終身雇用維持どころかこれを拡大させる必要性があるか?という基礎的議論が必要でしょう。
いわば人を商品のごとく働き盛りの男性を規格品とし、それ以外は男性を含めて女性全てを規格外商品・キズ物として必要以上に不利益に扱い、自立しづらい社会・・ギュウギュウ詰めの満員電車その他全て規格適合(48時間戦えますか!)の男性向けにつくられていた社会でした。
人の一生も一定の型が理想とされ、結婚して1人前といい、子供がいないと肩身が狭いなど何もかも画一基準社会でした。
規格にはまった人間以外はダメという社会では期待される能力がオールラウンド型が有利になりがちですが、規格外で良いとなれば、できない部分が多くても部分的に秀でた人が生きやすい社会になります。
ゆとり社会が始まると少しくらい規格外(ハンデイがあっても)でも働ける労働環境が整備され、いまでは女性が外で働くのが普通になり、子育て中でもやめなくてもいいし男女を問わずガン治療中の人でも職場復帰できるようになってきました。
宅配や訪問介護等が介護が充実していけば、子供のいない老後(単身のまま老いて)もそれほど気になりません。
通勤手段もエスカレーターなど整備され歩行弱者も気軽に外出できるようになっています。
非正規労働だけが問題ではなく正社員という「規格」外でも自立して生きていける社会にして行こうとする動きを肯定的に見ていく気持ちがあるか?でしょう。
労働者にとって意味があるのは、正社員・終身雇用(嫌なことがあってもやめられない)そのものに意味があるのではなく、生活の不安定・・病気や何かの事情では働けなくなる時の備えあるいは、きちんとした年金や保険制度加入の恩恵があるかどうか、失業すると再就職困難な社会を前提に終身雇用を理想として来たにすぎません。
「正社員」就労を支援するよりも、事情があって一旦仕事から遠ざかりその後再就職したい場合でもいろんな受け皿のある社会にした方が合理的です。
相応の生活できる見込みさえあれば、大企業の社長等に登り詰める自信がない限りサラリーマンよりは自営業者・脱サラ・独立を夢みる人が多いのと基礎は同じで人は自由を求めているのです。
働き方の違いに応じて年俸ではなく月給になり週休日給になってもいいのですが、それと保険や年金制度から切り離す必要がないということです。
正社員にこだわる意見は正社員?規格適合者とその他条件で働きたい人とで関連条件格差を前提にしています。
保険や年金あるいは日々の収入の確保・・起業・再就職のしやすい社会・・生活の安定をどうやって保障していくかに意味がある・・職を転々しても相応に生活できれば、終身縛られない方がいいと思う人が多いでしょう。
繁華街のように無数の商店があれば、お金さえあれば晩御飯を食べたりもの買ったりするのに困らない・・何もかも数ヶ月分も自宅に備蓄する必要がないし、老後生活も介護関連が充実すればあくまで子世帯と同居する必要がありません。
労働環境も受け皿や社会保障制度の問題であって、再就職環境が整っていて転職者にとって非合理な格差がなければ、終身雇用にこだわる必要がありません。
パート等に対する社会保障等の支援が充実して行けば、さらに正社員希望が減って行くのではないでしょうか?
社会が必要としているのは、正社員就職支援ではなく不定期就労したい(いろんな規格の)人の要望を受け容れながら、必要な待遇改善の問題であることがわかります。
転職した人の年金の継続を図るなど不便さの解消・・目の悪い人や足腰の弱い人の労働能力が健常者(規格人)とに比べて2割劣っていても、給与が2割低いだけの差が合理的であって、1〜2割劣っていると就職できないで無収入になるとか、保険制度に入れないなどの差がつくのは不合理です。
ここの価値としてはその通りですが、商品供給側の企業としては2割の欠陥商品では2割引でも売れません。
個々人を部品のように切り分けられれば、ある人が根気がなくて3時間もするとミスが出るとしたら3時間前に交替させればいいことです。
あるいはABCDの要素・・組み立ては得意だが色つけが下手とすればその工程を別人にやらせたらいいことで、この程度の(蒔絵の工程や浮世絵の版元〜刷り師、絵描きなど)分業は江戸時代からやっています。
これをもっと細分化すれば・耳の悪い人でも手作業に支障がない・絵は描けるなど・・良いことです。何もかも平均的オールラウンド型能力を要求する規格社会(教育制度ではオールラウンド型国立大学出身の支配的社会?)は窮屈すぎるほか、必要以上の偏見を生むようになります。

希望の党の公約7(正社員を増やす?3)

11月26日以来内部留保・手元資金問題が割り込んでしまいましたが、希望の党の公約である「正社員で働けるように支援する」というテーマに戻ります。
選挙が終わってからこのテーマの連載では、読者によっては気の抜けたテーマと思う方がいるでしょうが、ムードに頼る選挙・実現する気持ちが全くない公約で選挙民のウケを狙う選挙が行われるのでは社会にとって害悪です・・・こういう公約が堂々と発表されるのでは健全な政治議論ができない・日本のために良くないと思うので、(選挙中には自制して書かなかったのですが)以下書き続けます。
政党が公約に掲げる以上は、他の政策と矛盾しないか既存システム改廃の可能性・・利害調整が可能かの実現性有無を吟味した上での意見を言うべきです。
「実現の可能性はないが顧望を言って見るだけ」という無責任な公約では困るからです。
そこで「正社員で働けるように支援する」と言う公約を実現する場合どのような社会を想定しているかを、まず決める必要があります。
正社員の定義がはっきりしない点・終身雇用的理解を21〜23日頃に書いていますが、非正規雇用の拡大・待遇改善が社会的テーマになっている関連で考えれば、正社員とは非正規雇用の対比で使用しているものと考えられ、結果的に雇用期間の定めのない社員を正社員と称するのが常識的用語になっていると思われます。
そうとすれば、「正社員で働けるように支援する」という意味は、期間の定めのある労働比率を下げて正社員比率を上げるという意味になるように思われます。
私は正規と非正規の区分け・「正式の雇用と正式ではない雇用」という二分論自体・・期間も労働内容も無限定な終身的雇用を「正式」それ以外は正式ではない」という社会構造を固定化するのは問題がないか?の視点でこのシリーズで書いてきました。
長期継続を原則とする社会では労働者や生徒あるいは嫁、借家人等々弱者の地位が安定しひいては社会安定にもつながり良い面があることは確かです。
しかし、この仕組みは、先祖代々の職種しかなくひいては世襲の職場以外にない・女性が離婚すると再婚しない限り独立の生活を営めない・学校や就職先でいじめがあったり、自分の適性に合わないからと途中で辞めると同等の受け皿がない等々のりゆうで修正可能性の乏しい社会を前提に出来上がってきたシステムです。
数百年前から続く事業しか世の中にない時代が終わり、新規事業創出に向けた国際競争が熾烈な現在、能力さえあればいろんな分野での活躍チャンスのある社会になると、固定社会を前提とする終身雇用システムは一旦就職したものの途中別のことをやりたい人にとってはむしろ窮屈な社会になり発展阻害によるマイナスの方が大きくなります。
他方企業の方も国内外で日々新規事業分野開拓の競争があるので、雇ってみて外れ人材であっても才能不足・不適合理由では(証明困難で)解雇不能社会では困るし、新規事業分野挑戦目的で採用したものの、事業開始してみると予想が外れて不採算でも配置転換等の努力をした後でないと簡単に解雇・人員整理できないのでは、怖くて採用を最小限に絞る傾向・企業としてはチャレンジ意欲にブレーキがかかります。
被雇用者も就職してみて企業内環境や方向性が自分に合わないと思っても(終身雇用=中途採用市場不足)定年前にやめると再就職先が簡単にみつからないので、不適合のままくすぶった人生を送るしかない不健全なことも起きてきます。
社会構造の変化が激しい時代には、長期変化のない安定社会向け終身雇用・継続関係重視の仕組みは労使共(各種契約当事者)に社会の変化について行けないマイナス面が大きくなります。
全員が全員自由競争をしたい人ばかりではないでしょうから、必要な人から順に自由市場型生活を選べるように社会を柔軟に変えて行く姿勢が必要です。
必要を感じる人の自由移動を白い目でみたり嫌がらせ的冷遇(保険や年金制度からはずすなど)をする必要もなければ、逆に特別優遇する必要もない、政治は自然の流れに合わせて従来型労働形態に合わせてできている諸制度のうちで新型労働契約に不合理に不利にできている部分の修正等に努力すべきです。
この点はLGBTであれ、各種障害者や女性や子育てや介護中の人の就労環境であれ同じです。
一般に言われるクオーターのように実力以上に優遇するのは、なぜ優遇しなければならないのか?(たとえば人口比率比例して知的障害者や身体障害者を国会議員や大学教授や企業役員にすべきだ・上場企業の何%を知的障害者をトップにすべきだといえば、おかしい主張だと誰でも思うでしょう。
職業は能力に応じて就職できるべきであって、弱者認定さえあれば、一定率で就任できるものではありません。
クオーター制は実質的不公正を政府が強制する結果、贔屓の引倒し的側面もありうまくいかないでしょう。
必要以上に不利益な制度は改めるべきですが、能力がなくとも一流大学や1流企業の宰予数を同数・・例えば男女同数あるいは各種障害者の人口比率にあわせるべきとなってくるとおかしくなってきます。
最近弱者ビジネスという言葉が流行していますが、一旦被害者の立場になると何をしても要求しても許されるかのような振る舞いをする人・クレーマー・モンスター保護者などが増えています。
希望の党が、「正社員で働けるように支援する」というスローガンを掲げれば正社員が増えるものではないだけではなく、もしも自然の変化を政治が妨害してその流れを止めて正社員比率を引き上げようとするのであれば邪道です。
終身雇用の基礎にある精神・・よほどのことがないと一旦できた関係性を断ち切れない社会構造の典型的場面である借地借家制度や婚姻法制がこの数拾年で大きく変化してきたし、最近では労働契約解雇法制改正(金銭解決)の機運が俎上に上ってきた事情をこれから紹介していきます。
共通項は、長期関係切断による不利益を受ける方(多くは弱者)の期待利益保障が基礎にある点を直視して・・切断を禁止するのではなく、期待利益保障整備の進展具合を総合した雇用や生活保障の問題に移ってきていることがわかります。
離婚に長年抵抗があったのは主として離婚後の生活・・子育てに不都合があるからですが、今は社会の受け皿が揃って来たので(実家の経済力が気にならなくなり)4〜50年前に比べて離婚のハードルが下がっていることを見れば実感できるでしょう。
正社員(毎週約40時間以上働けるか必要に応じて残業ができるか転勤可能等)かどうかで「正式な市民」になれるかどうかが決まるのでは窮屈すぎます。
1日数時間しか働けない人、午前中だけ〜午後だけ働ける人と8時間連日働ける人や、2〜3年で技術を習得したらやめたい人、場合によっては定年までそのまま働いてもいいが、途中4〜5年別のことをしてみたい人・転勤可能な人とそうでない人などの多様な働き方を前提にした社会にした方がいいでしょう。
働き方の違いによって待遇(給与体系等)が変わるのは仕方がないとしても、働き方の違いに比例した合理的待遇差にすべきということではないでしょうか?
実際にこの数年「同一労働・同一賃」政策やパート臨時雇用に対する年金制度の拡大・社会保険制度加入など具体的な変化が進み始めています。
実際にこの数年「同一労働・同一賃」政策やパート臨時雇用に対する年金制度の拡大・社会保険制度加入促進など具体的な整備が進み始めています。
これに対して希望の党が政府と施策とは違う「正社員で働けるように支援する」という公約は何をどうしたいのかまるで見えない・現在の政策方向をどのように変えるという主張なのか不明です。
希望の党は政権交代可能な政党として結党したという大宣伝で売り出した以上は、「正社員で働けるように支援する」公約を希望の党が政権を取った場合にどうやって何をするのかのビジョンとセットでければなりません。

内務留保の重要性と流動資金の関係3(メデイアと用語統一必要性)

昨日紹介した解説でも「手元資金」には「流動性の高い資金の総称」とあって現預金に限らないことが示され、短期有価証券を含むことが多いとなっています。
そもそも言葉の意味から考えても「現預金」の表現は現金と預金等の個別分類を表していますし、手元資金とか決済用資金・流動性資金等の使用目的による表現よりは範囲が狭いことが明らかで、下位概念の現預金の方が手元資金よりも多いとは(経済知識のない私のようなものでも)常識的に想定できません。
手元資金等はすぐに現預金化できる資産を含む=手元資金の方が現預金よりも多いことが経済用語としても明らかですが、日経新聞記事ではなぜ逆転した書き方になっているのか不思議ですが、私のような素人が食事や仕事に出る合間にちょっと読む程度の人間には思いがけない深い意味がこめられていのかもしれません。
仮に日経新聞で論説を書く人の経済用語理解が間違っているとした場合、日経新聞の21日記事と25日記事両方とも間違っていることってあるの?という疑問です。
仮に別の人が書いているとすれば2人とも逆に理解していることになるほか、両記事ともに内容からして情報収集して歩く新米記者が書ける執筆ではなく、ベテランのエコノミストによるものと思われますが、プロが2人も揃って経済用語の基礎知識を間違って逆に書くようなことがあるのでしょうか?
仮に執筆者が同じとしても・校正等の事務局が充実しているはずの大手新聞社の語句チェックが機能せずに2回も通っていることになりますが、(現預金が200兆円で手元資金117兆円と出れば普通は?おかしいぞ!と気がつくものです)2回目の記事では1回目と大幅な数字違いがあるのでこの時点で「どうして大きな数字違いがあるのか?」に気がついて見直せば、どちらかが間違っていることがすぐ分かる筈ですが、2回ともスルーしているとすれば関連部局のチェック能力に疑いが起きます。
事務局能力の名誉のために邪推?すると関連部局ではわかっていたが、世論誘導のために?意図的にスルーさせて逆の意味で書く必要があると判断したのでしょうか?
もしも世間常識と違う意味で熟語を意図的に使う場合には、誤解を招かないように「ここではこういう意味で書いています」と「断り書き」を入れるのが公平な立場でしょう。
ちなみに資金滞留批判のトーンは21日の「大機小機」に続いて24日の日経新聞の第1面に「最高益の実相」欄として大きく出ていて(1面の左約半分の大きさ)その続きで今問題にしている25日3pの記事になっていることがわかります。
今朝の日経第一面では「利益剰余金56%が最高」の大見出しでいかにも巨大な剰余金を溜め込んでいるかのようなイメージ強調の連載は終わっていません。
内容を見ると、設備投資の動きが紹介されていますが、以下の通りあくまで部分の紹介で全体の動きを期待するかのような書きぶりです。

「スバルの・・社長は・・・『次元が変わる技術進化に備えこれまでできなかった設備投資や研究開発を増やす』と話す。溜め込んだお金をどう使うか一層のの説明を求められる」

と思わせぶりに書いています。
「思わせぶり」だけでカチッとした事実がないといえば、朝日新聞の記事の多くにその傾向が強くて歯ごたえがないので20年以上前に朝日新聞から日経新聞に変えて満足していたのですが、日経も最近ではムード報道中心になって来たのでしょうか?
事実の裏取り必要性といえば、最近では週刊文春の山尾志桜里氏の不倫騒動で見ても分かるように、(経済報道のように難しいことではなくスキャンダル的事実中心ですが・・)裏取り能力の高さに驚きます。
こうした手を変え品を変えての日経新聞報道の流れ(内部留保悪玉説の浸透努力?)を見ると、21日「大機小機」で小さく出して置いて(その間小刻みに何かを書いていたのかも知れませんが、私は気づきませんでした)24日は第1面大見出しと格上げして25日には3pで大きな記事にしてきた流れを見ると「大機小機」掲載時点から、社あげての目標設定によるシリーズ連載企画・・執筆者の個人プレーではなかったように見えます。
新聞社組織あげて(世論誘導したい)企画でありながら、この程度の基礎概念を押さえる必要性スラ認識できない組織レベルなの?という疑問です。
日経新聞の「経済欄はまるで議論の対象にならない・しっかりしているのは文化欄だけ」という口の悪い人の意見がネット上で流れていますが、以上を見ると驚くような低レベル組織になっているとの誹謗?もムベなるかな!という印象・誤解?(私の読み方が間違っているのかも知れませんが)を受けました。
もしも単語表記の単純ミス・現預金が117兆円で手元資金200兆円が正しいとすれば、(6ヶ月の誤差がありますが、10月末時点の現預金が私には不明なので)仮に同時期として計算すると200−118=82兆円が短期有価証券等保有であり、現預金ではなかったことになります。
世界企業で言えば、現預金は世界中に散らばった事業現場で日々支払いできる資金・現金払いの場合、預金払い戻し時間が必要ですが、大口支払いは振込等の操作で済むので時間誤差がほとんどありませんが、有価証券の場合どの銘柄をいくら売却して資金化するかの判断時間(売却優先順位を決めておくことでこの時間は短縮できます)が必要な他に売却指示後現金化できるまでの決済時間・・最短で5〜6日の誤差があります。
このために約1週間〜10日程度のタイムラグに耐えられる・+アフリカ現地で不足した場合に外貨両替して送金する時間差(為替リスクも考えある程度余裕を持った現地通貨保有)程度の現預金が現地出張所等に必要となっています。
短期処分可能な有価証券の利用とは、通常決済には十分であるが九州の震災等のような突発事態への二次的備えとして、預金よりマシな国債等への一時預けにしている数字が短期保有有価証券ですが、これは4〜5ヶ月先に予定されている大口決済資金(例えば配当までのプールとか工場用地取得契約や企業買収がまとまりそうな場合とか、本社ビル完成引渡し予定数ヶ月先にある)などがこの種の資金になってプールされます。
企業が必要もないのにゼロ金利下で不要な資金を現預金で持っていたくない点については意見相違がない(無駄に持っている方が良いという人は滅多にいない)のは明らかですから、新聞・言論機関が不要資金プールするのが合理的か否かを議論する必要はありません。
ある企業の保有資金が「過剰・無駄」かどうかこそが議論の対象ですが、それは個別企業の事情分析によるべきで抽象論で煽るのは間違いです。
希望の党の公約の一つ「不要不急のインフラ整備をやめる」という点についてこの後で書いて行く予定ですが、「不要不急の公共工事をした方が良い」という政党はありませんので「何が不要不急かの選択」を示さない公約ではどういう政治をする約束なのか意味不明なのと同様です。
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性がある・・
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性があります。
今朝の日経朝刊で紹介されていたスバルのように、この1〜2年好業績を背景に単なる増産投資ではなく、「次元が変わる技術進化に備えこれでまでできなかった設備投資や研究開発を増やす」ために準備している企業もあるのです。
・・本当に不要な資金なのか、近日中に大口決済が待っているか、配当支払い資金や設備投資計画の有無等の個別事情によりますから、個別企業の実情無視の日本全体の一般論に意味があるとは考えられません。

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

民間企業は経済変動や社会変化への対応・・構造転換コストなどに備えるための予備資金を持っているのであって、この決断は配当を受けるべき株主の承諾によるものです。
本来株主は(株主総会・株価変動を通じて)税引後利益全部を配当して貰う権利行使を我慢して一定額企業に保留してこの資金で再投資などするのを許容しているのであって、企業が予備資金を持っているからと政府がとりあげられる・どうせ取られるならばと結果的に利益100%社外に流出させるのでは、経済変動に耐える力が削がれてしまいます。
個々人が数万円前後多く配当してもらうよりは、これを企業が安定資金として持っているか、まとめて将来のための研究資金に使うとか、増産投資立ち上げや企業買収資金等に使うかを個々の株主が決めるのが資本主義経済の醍醐味ですから、その選択(配当を多くもらって友人との食事等に使うか、企業に使い道を委ねて大きく使ってもらうかは市場経済・個々の株主の判断に委ねるべきです。
政府が増税の脅迫で個人還元を強制するべきではありません。
ただし、資本家が大金を溜め込んでいるというやっかみ的批判・・感情論による制裁的内部留保吐き出し要求ではなく、株主の多くが本当に将来のために内部留保する意思があるのか?単なる擬制ではないか?という視点からの再チェックは必要です。
このためには・・投資意識確認と税金納付という意味で、税引き後利益は実際に配当しなくともこの時点で配当を 受けたものとみなして源泉徴収してしまう方法も検討の余地がありますし、株主意思の再確認のためには少なくとも税引き後利益のうち50〜80%(2〜30%は予備費)までを実際の配当を義務付け、企業買収や新規投資金が必要ならばその旨明示して市場から再募集する・増資で対応するのが合理的という政策選択肢は将来あり得るでしょう。
韓国文政権も日本の革新系政権も同じですが、口先では人権重視と言いますが個人の決めるべき領域に国家が踏み込みすぎる傾向があります。
内部留保課税は法人税の2重取りですが、小池氏は一方で法人税減税も求めているのですから(法人を痛めつける気持ちはないという意思表示でしょうが・・)おかしな主張です。
19日引用した続きです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

企業に「ため過ぎ」批判 内部留保課税は有効か 論説委員・井伊重之
2017.11.12 09:15
小池氏は東京をアジアにおける国際金融都市とするため、政府に法人税減税を求めている。法人税を下げる一方で、内部留保に課税するのではアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。

内部留保課税は法人税重課政策ですが、法人税軽減化の流れをどう理解するかの問題でしょう。
以下は法人税率をめぐるアメリカの動きと国際比較です。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN28H04_Y7A920C1000000/
米大統領「歴史的な減税」 法人税下げ20%案を発表 2017/9/28 5:48
【ワシントン=河浪武史】「トランプ米大統領は27日、連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表した。」
これがようやくこの11月に下院通過したという報道です。
https://www.iforex.jpn.com/analysis

税制改革法案が米下院を通過-8537
(2017年1月現在)筆者 鳥羽賢 | 11/17/2017 – 09:40
「アメリカで16日に税制改革法案が下院を通過した。上院は別法案を提出トランプ政権の目玉政策である税制改革法案が、16日に米下院を227対205の賛成多数で可決した。この中には法人税減税の2018年実施が盛り込まれている。しかし上院の方は法人税減税を2019年にする別の法案を提出しており、今後は上院と下院で審議がもめることが予想される。この通過を受け、16日のNY株式市場は大幅高となった。」

アメリカで法人税減税法案が下院を通過しただけで株式相場が大幅アップしたことからみて、・・内部留保課税・実質的法人税アップの脅しがあると、この逆張りの効果・・2回税金を取られるよりは配当を増やそうとするので一時的に配当が増えて株主の懐が潤い、一見消費がふえますが・・企業の景気や社会構造変動に対する耐性が落ちることから株式相場で見れば大幅に下げてしまう方向に働くことが明らかです。
目先消費を増やせそうに見えますが、株式の値上がり益による消費拡大とどちらが健全か明らかでしょう。
小口株式保有の一般市民とって小銭が同じ額入るならば、税に取られる前に急いで分配してくれるよりも大幅減税を市場が好感して株式相場が大幅アップしたことによる方が合理的です。
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/によると11月18日現在の東証時価総額は以下の通りです。

東証1部     東証2部   ジャスダック

時価総額(普通株式ベース)   6,597,983億円   106,804億円   105,901億円

東証だけで約680兆円ですから、もしも1%値上がりで6、8兆円2%で13、6兆円の値上がり益・日銀が13、6兆円を市中に資金供給したのと同じだけのインパクトがあります。
外国人投資家の 保有分もありますので、全部が国内で循環する訳ではないとしても大きな経済効果です。
1日で1%の変動が滅多にないとしても1ヶ月単位だとその何倍もの変化があるとした場合、消費拡大・経済活性化に大きな影響があります。
内部留保課税によって企業を痛めつけるのとどちらの方が税収増加/国民の懐を温める効果プラス株価上昇による心理効果が大きいかが明らかです。
ちなみに我が国の最近株価変動のグラフは以下の通りです。
http://ecodb.net/stock/nikkei.html日経平均株価の推移(月次)

ところで、厳しい国際競争下にある現在、世界の法人税の趨勢を無視できません。
現在世界最高税率のアメリカが法人税大幅減税に成功すると、日本が世界最高税率の国になります。
このまま放置すると軍事力背景にトランプ氏のように吠えて回る方法のない日本から、大手世界企業が徐々に日本から逃げていくのをどうするかの大問題・・・トヨタなどの民族愛だけに頼っていつまで持つのか?の心配があります。
いきなり本社移転しないまでもシンガポールなどにアジア統括本社を設けるなどのかたちで徐々に動き始めている現実を無視できません。
この国際情勢下で日本が内部留保=二重課税・法人税増税にひた走るには、ムードだけではなく、かなりの突っ込んだ根拠が必要です。
希望の党の公約では内部留保課税だけではなく、法人税軽減を主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。

 

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