中銀の独立性?3(トランプ政治の正統性?2)

12月20日のパウエル議長記者会見で株価が急落し、年が明けてもさらに下がる展開でした。
トランプ氏によるあまりの恫喝(彼は直接言いませんでしたが更迭論がメデイアを賑わしていました)
これに怯えたのか?年初1月9日に公開した12月の利上げ時のFOMC議事録要旨は、今後の利上げ予定の取りやめに含みを持たせるような内容であったことが議論を呼び、1月10日以来市場安定化・・株価回復に資しているようです。
これを見ると米国新年度予算が成立しないことよりも(予算成立が年を越したどころか、今日現在まだが成立しないままですが、議事録要旨公開だけで持ち直したということは、)金利動向の方が世界経済への影響が大きかったことがわかります。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-10/PL3ULX6KLVRA01
Christopher Condon

2019年1月10日 17:02 JST
FOMC議事要旨と12月のパウエル議長会見、際立つトーンの違い
9日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が市場に安心感をもたらす内容だったことで、投資家の間に新たな疑問が浮上した。それは、昨年12月19日の会合後の声明やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見とはトーンの違いが大きかったためだ。
・・・・
ラインハート氏は、12月19日の声明や議長会見に対する市場の否定的な反応に対応するような形で金融当局者が議事要旨を取りまとめた可能性があると推理。「パウエル議長は会見の冒頭発言と質疑応答でFOMCの認識を正確に伝えたが、あまり歓迎されなかった。その後、議長がもっと強調しておくべきだったと残念に思った部分をもっと気配りして強調することにしたのではないか」と論じた。

米連邦公開市場委員会(FOMC)決定が政治圧力によるかの神学論争は別としても、政治=国民福利を最大にする必要がある点は金融当局も同じであるべきですから、金融当局も国内景気実態を無視できませんし、基軸通貨国としては国際経済への目配りも欠かせません。
日銀が地方を無視して東京の景況感だけを前提に判断するのが許されないのと同じです。
トルコ・エルドアン大統領のような強権支配者は中央銀行の決定に強力な支配力を持つので、国内景気対策の配慮が優先して金利引き上げが先送りになっていた結果、リラが大幅下落し物価大暴走になってきた例を昨日まで紹介しました。
ただし「政権が政策の最終責任者であるべき」という私の意見によれば、独裁の弊害の問題ではなく、エルドアンの判断が間違っていたことになるのか?というだけのことです。
中銀の独立性を強調するのがメデイアの原則ですが、私は独裁権力者が「自己保身のために経済原理に反した」ことをしても国民が苦しむだけということであって、中銀の独立性自体を絶対的なものとは考えていません。
経済「政策」は総合視点でやるべきですから、金融理論ばかりではなくその時の経済体力その他状況に応じた総合判断が必要です。
これを政治判断の利かない金融のプロが最終決断をして良いとは思いません。
10年以上前に専門家の発生→分業の発達について書いたときに、最古の専門職として俗に言われる売春婦次に古い軍人の例を書きました。
軍人の専門性・軍戦術そのものには国王といえども口出しできない専門性がよく言われますが、それでもある国と戦争をすべきかどうかは、政治が決めることです。
保元の乱の左大臣頼長のように夜襲すべきか否かの戦術に口出ししたのは間違いですが、一戦を交えるか交渉で解決するかは政治家が決める分野でしょう。
米国大統領が軍の最高指揮者になっていることを見てもわかります。
日米開戦でも開戦したら展開がどうなるかを聞かれて「1年は持ちこたえましょう」と山本五十六が答えた経緯が有名ですが、軍人があくまで戦術論で素人を寄せつけないというだけのこと・・逆から見れば戦さの専門家から見ればやれば最後は負けると分かっていても出撃を命じられれば出撃し最善をつくしかない・・開戦そのものに反対する権限がないということです。
日露戦争のように国を挙げての資金源の手当・国際金融筋からの借款成功や国際政治工作・・適当な戦果を挙げたところで講和会議を仲介してくれる大国への政治工作の成否などの総合判断はすべて政治家の仕事です。
日米戦争ではそういう国がなかったのに対米抗戦に踏み切ったのは軍部の責任ではなく政治家の無能力というべきでしょう。
山本五十六の開戦時の逸話としては出典が明らかではありませんが、以下の通り一般化されています。https://blog.goo.ne.jp/gb3616125/e/f7f3793a458bb28a87616df241383148

・・・多くの海軍上層部の人々は、開戦前から軍が有利な戦いが出来るのは、せいぜい一箇年か一箇年半位であるとの信念を述べておりました。山本元帥でさえ
『最初の一年かそこらはやって行けるが、その後のことは受け合えぬ。』

海軍は開戦阻止できなかったのか?という議論ですが、軍は政治に口出しできない、しないという原理論の発露です。
戦前は軍国主義だったという米占領軍の政治工作・・この教育を受けて育ちましたが、米国より日本の方が好戦的ではありませんでした。
また軍人は軍人として節度を守っていたのです。
アメリカの挑戦に対して政治工作の拙劣さのために「万やむを得ず打って出るしかない」状態に追い詰められただけのことでした。
軍人に限らず金融や会計基準、防災その他〜IT関連に至るまで専門家は増える一方ですしそれぞれ重要ですが、総合判断で何を採用するかは政治家が決めるべきことです。
経済政策であれ、なんであれ評論家と実務担当者とは違うのであって、経済評論家が企業経営したり政治評論家が政治をやれないのと同じです。
もちろん美術評論家が名画を描けるわけもありません。
ラジオ深夜便を聞いていた10数年〜20年ほど前ですが、俳句の先生(今年歌会始の召人になった方です)が添削するのを聞いているとちょっとした字句の入れ替えで目がさめるような決まった俳句になるのに驚いたものですが、その先生が毎回最後に紹介する自作(模範作?)を聞いているとまるでスピリッツのない駄作ばかりなのに感心していたものです。
創作能力と教える能力とはまるで違うんだな!として聞いていました。

欧米離れとトルコ危機?3

トルコに関する昨日引用グラフの続きです。
https://diamond.jp/articles/-/1843022018.11.6

2018.11.6

西濵 徹:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

トルコ、消費者物価上昇率の推移

アルバイラク財務相は年末までを期限に、民間企業に対して10%の値引きを要請する事実上の強制値引きキャンペーンを発表したが、この効果については未知数なところが多い。
なお、これら以上に懸念されるのが、9月の発表直後に消費者物価上昇率が予想外に上振れしたことを理由に責任者の国家統計機構(TUIK)の副局長が突如更迭され、アルバイラク財務相の腹心とされる人物が後任に当たったとされることである。
仮にこの動きによって物価統計が操作される事態となれば、アルゼンチンのクリスティーナ前政権下で行われたことと同じであり、足下のアルゼンチン経済が置かれている状況をみれば、同じ道を辿るリスクも高まる。

10月の消費者上昇率は以下の通りです。
“https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-05/PHPOQB6TTDS201”

2018年11月5日 17:48 JST

10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比25.2%上昇。9月の上昇率は24.5%だった

約25%の物価上昇では、国民はまともな生活を送れません。
企業も投資意欲が減退します。

参考までにアルゼンチンの物価上昇率は以下の通りです。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38927770U8A211C1000000/

アルゼンチン、11月のインフレ率年48% ペースは鈍化 中南米
2018/12/14 5:49
サンパウロ=外山尚之】アルゼンチン政府は13日、11月の消費者物価上昇率が前年同月比48.5%だったと発表した。前月比では3.2%で、単月の上昇率は10月から2ポイント以上下落した。足元の通貨ペソは下落が一段落し小康状態にあり、物価上昇のペースは落ち着きつつある。

結局は自国通貨の大幅下落が原因です。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-30/PEA49R6TTDSM01

ペソが最安値更新、アルゼンチン中銀は政策金利を60%に引き上げ
Carolina Millan、Patrick Gillespie、Ignacio Olivera Doll
2018年8月31日 0:24 JST 更新日時 2018年8月31日 7:34 JST
利上げ後もペソの下げ続く-下落率は一時20%に近づく
マクリ大統領は29日にIMFに融資実行の前倒しを要請していた

アルゼンチン中銀が主要政策金利を45%から世界最高水準の60%に引き上げた後も、通貨ペソの下げは続いた。利上げは今月に入り2回目で、通貨下落に歯止めをかけるのが狙いだった。ペソは年初来で50%余り下げている。
Rout Deepens

Argentine peso worst performer versus dollar this year among emerging-market peers
によると対ドル下落率の大きい国の順位は以下の通りです。

アルゼンチン →  53、9%
トルコ    →  43、5%
ブラジル   →  20、2%
南ア     →  16、1
ロシア    →  15、6%
インド    →   9、7%
チリ     →   9、3%

以下省略

通貨下落率53、9%のアルゼンチンが金利を60%にしないと通貨下落を止められないという実態を見るとトルコもロシアも大変です。

アメリカンファーストと国際協調3(崩壊?)

狼やその他集団で狩りをし、あるいは、穀物収穫でさえも稲作のように集団行為がひつようですし、販路を求めるにも相応の供給組織(社会連携)が必須です。
今では三内丸山古墳で知られるように石器時代の黒曜石等の単品的交易にとどまらず縄文時代でもいろんな物品について広範な物品の交易をおこなっていたことが知られています。
工業生産になると(例えばある製品部品が100個あるとすれば、その数だけの関連サプライチェーンが必須となり、その部品(例えばタイヤ)を作るのにさらに50個の部品が必要であれば、その先に50倍のサプライチェーンが必須です。
芸術家のように、創造力・個性重視の職業でさえも、顔料その他材料収集と発表の場を求めたりその購買者に至る連鎖の輪に関係しないと自己ファアースとでは成り立ちません。
原始的に見ても馬や象や鳥や魚類のように集団で生活しているのは生命の危険を防ぐ知恵によることは明らかです。
地球最強になった人類は、今では人間による攻撃が最も怖いようになり、暗闇で一人歩くのは怖いという意味の集団行動が暗黙のうちに要請されるようになっています。
白昼公然の違法行為には、誰かの通報によってすぐに警察が来て検挙してくれますが、国家間の暴力(侵略)行為を防止する方法がないので、覇権国が「パックス〇〇」(パックスアメリカーナなど)の平和を脅かす行為に対して制裁することで秩序を保っていた(覇権国の権威を守ってきた)のがこれまでのやり方でした。
パックスアメリカーナと言われてきた所以です。
今年の正月元旦に1年の期間が古代と今では違っていたのではないかの意見?(個人想像)の例で、臥薪嘗胆や春秋時代の覇者になった文公(重耳)の例を書きましたが、覇者になるには武力だけではなく、相応の人望・が必須です。
覇権国とは相対的強者のことですから、人望がないと同調する与国がなくなり私戦禁止令の効力がなくなります。
ロシアが強盗のように公然とクリミヤを併呑しても制裁はせいぜい、自国の影響力の及ぶ範囲の経済制裁程度です。
ロシア制裁は欧米と日本その他の多くが従っていますが、イラン制裁再開に関しては意思統一がないままのトランプ氏にちゃぶ台返し・・独断専行ですので、日本や韓国中国、EU諸国は渋々・・アメリカ国内法違反企業としてアメリカ国内で活動するEUや日本企業が制裁されるのを恐れた仕方なしの同調に過ぎず同一価値観による同調ではありません。
イラン合意に参画した多くの国が「イラン制裁再開すべきと思っていない」以上その規制を守ろうという意識が低くなるのは仕方がないというべきで、ファーウエーが制裁違反行為をしていることを理由に副会長をカナダで逮捕したのは、(課徴金等で締め上げるのはまだしも)世界をびっくりさせました。
一方で覇権挑戦国の中国が公海の一部に埋め立てを始めて軍事基地を作る工事をしてもこれを禁止せずに、自由航行作戦といって軍艦をその付近に航行させる程度でお茶を濁し事実上の黙認です。
中国への弱腰批判に答えたつもりでしょうが、埋め立て工事に直接答えるべきで、こんな方角違いでは「政治プロの行為と言えない」というべきか米国は正面切って中国に何も言えないことを証明しています。
中国歴代王朝が崩壊した原因を見ると強敵が現れた場合は少なく、あちこちに農民暴動が頻発するようになり、鎮圧軍の抑えが効かなくなって最後は、軍閥に乗っ取られてしまう繰り返しの方が多いのです。
オバマが「世界の警察官をやってられない」ということは、王朝時代で言えば「野盗や暴動軍は好きにせよ!自分は首都に引きこもる」と宣言するのに等しいでしょう。
政府が治安責任を負わないと宣言する・・テロや暴動を鎮圧しないで放置するのであれば、全土の支配権放棄と同じです。
ただ、オバマの場合にはこれからの成長予定地であるアジア重視を示し、利害輻輳している中東からの関与縮小を明示していただけですが、トランプ氏の場合それすらもはっきりしません。
そもそも自国だけでのワンマン的世界切り盛りが無理になれば一足飛びに覇権放棄ではなく、有力支持者の協力を得ての覇権維持が普通の方向性です。
ところがトランプ氏は高関税対象を信頼関係のある同盟国にまで矛先をむけ始めたので、同盟と非同盟の意味がぐらついてしまいました。
自国の利益のために構想したTPP脱退を決めたのを手始めに文字通りの地盤である北米地域のNAFTAの改定・・喧嘩を始めたのには、世界中が驚きました。
続いて日本を含めた西側諸国にも高関税攻勢しながら過去の協定等の改定を強要する方向ですが、時間経過でトランプ氏のワンマンぶりには世界がある程度なれたとはいえ、慣れた度合いに応じて世界中のアメリカに対する信頼は同率で低下しているはずです。
同盟国がいつ梯子を外されるか不明では、アメリカに気持ちよく協力ばかりしていられない・中国にも保険をかけておく必要があるので、協力国の協力度合いが低下する一方でしょう。
経済制裁は圧倒的な制裁力があってこそ効力が強いのですが、いまは、世界のかなりの国で対中貿易と対米貿易量が拮抗している・対中貿易の方が多い国が増えています。
特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件ど対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。
それでも経済制裁が相応の効果があるのは、(対中貿易が30%で対米貿易20%の場合でも)その他の日欧が米国の制裁に大方強調することで、世界貿易量では圧倒的多数を占める制裁を受けるから威力があるのです。
米国が世界貿易の過半を占めているときにはその威力が絶対でしたが、上記のように比重が下がってきた上に中国が対米対抗意識を燃やし始めると、ロシアのように中国が原油を買ってくれれば問題がないという国が出てきます。
ロシア原油その他ロシア製品全量買う国力が中国にあるとしても、中国に生命線を握られるのは怖いのでできれば避けたいでしょうが、緊急的でみればなんとかなる強みです。
もっと小国では、中国が「引き受けた」と言ってくれれば、中国の方が米国より怖くてもその場は助かるようになってきました。
今のイランの強気もそこにあります。
世界中で対米貿易の比率が下がっている以上は、経済制裁をしても協力国の数の多さがその決め手になるのですが、同盟国・・すぐに追随してくれる国の協力意欲を減退させる方向の政治ばかりではアメリカの威信は下がる一方です。
トランプ氏が力めば力むほどその威令・信用低下が進んでいる・/ひいては協力度合いが下がっていくのに気がつかないのでしょうか?
例えば秀吉が天下人になった以降に惣無事令で私戦禁止したのに反して、北条氏が(上野国の沼田)真田領を攻めたことで小田原攻めに発展したものです。
真田昌幸と幸村の父子が、この恩義・豊臣政権の威令が行き届いたことに感じた・恩義に報いないのは武士道に反するという美学によって、最後まで豊臣家のために奮闘したのです。
今日現在のウイキペデイアによると以下の通りです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%A3%E7%84%A1%E4%BA%8B%E4%BB%A4

豊臣平和令のうち、大名間の私的な領土紛争を禁止するものが惣無事令とされる。つまり、領土紛争においては、全て豊臣政権がその最高処理機関として処理にあたり、これに違反する大名には厳しい処分を下すという法令である。また、秀吉は関白の立場を明確に示す形で、あくまでも天皇の命令(勅定)によって私闘禁止(天下静謐)を指令するという立場を掲げた。[2]
惣無事令は、1585年(天正13年10月)に九州地方、1587年(天正15年12月)に関東・奥羽地方に向けて制定された。惣無事令の発令は、九州征伐や小田原征伐の大義名分を与えた。特に真田氏を侵略した後北条氏は討伐され北条氏政の切腹に至り、また伊達政宗、南部信直、最上義光らを帰順させる事に繋がった(奥州仕置)とされる。この惣無事令によって、天正十六年の後陽成天皇の聚楽第御幸の際など、参集した全国の諸大名から関白である秀吉への絶対服従を確約する誓紙を納めさせ、その違背に対して軍を動員した包囲攻撃のみならず、一族皆殺しを含む死罪・所領没収ないし減封・転封といった厳罰を与えた。いわば、天下統一は惣無事令で成り立ち、豊臣政権の支配原理となったのである。[3]

韓国・中進国の罠3(企業と国民の出国熱1)

外資を含めた韓国内自動車工場全体の今年9ヶ月の販売数の動きです。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191001005100882

韓国完成車5社の9月販売 2.2%減少=1~9月も4%減
1月から9月までの累計では5社の世界販売台数が581万623台で前年同期比4.0%減少した。メーカー別でも5社全てが減少し、現代は3.9%減、起亜は1.5%減、韓国GMは9.5%減、ルノーサムスンは24.4%減、双竜2.4%減となった。代表的業種である自動車の韓国国内生産が減ってきました。
中国経済縮小の影響による減少か?というと以下の通り表題だけ見ておきますと、日本のメーカーの場合そうでもありません。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_prod/productionfig_japan_2019
日本の乗用車メーカー8社、9月の自動車生産は3.1%増、輸出は2.6%増

韓国では企業の国外脱出が続いていますが、これは11月6日まで見てきたように米国や日本の大企業も早くから同様の動きでしたが、どう違うのでしょうか?
https://diamond.jp/articles/-/206617

韓国企業が自国から相次いで「海外脱出」している理由
真壁昭夫:法政大学大学院教授 2019.6.25 5:00
韓国企業の海外脱出が加速化
ここへきて、韓国企業の海外脱出が加速化している。
それを如実に示すデータが韓国政府から発表された。企画財政部の発表によると、今年1~3月期、韓国の企業は141億ドルの海外直接投資を行った。これは過去最高だ。産業別にみると製造業の割合が高い。
「国内脱出」を図る韓国企業
1~3月期、韓国経済の“成長のエンジン”というべき製造業の海外直接投資は、前年同期比で140%も増加した。
それは、輸出主導型の韓国経済が、大きな変化に直面していることを意味する。
韓国は資材などを海外から調達(輸入)し、それを国内で加工・生産し、完成品を輸出することで成長してきた。
こうした経済の運営は徐々に難しくなってきた。
その要因の1つには、中国が国家主導で半導体産業の育成などを進めたことがある。中国企業などの技術面でのキャッチアップに直面し、韓国企業は徐々に海外に進出した。その主な目的は、国内生産を海外に移管し、コストを低減することにある。
韓国経済の“地盤沈下”
韓国経済は、サムスン電子を筆頭とする財閥企業の業績に大きく依存している。財閥企業が海外進出を強化するのに従い、韓国の中小企業も生産拠点をベトナムなどに移している。
これまで国内経済を支えてきた産業の基盤が、そのまま海外に移管されているといえる。その分、国内の雇用機会は減少してしまう。
より高い付加価値を生み出す産業を育成できなければ、韓国国内における投資(民間企業による設備投資)も減少するはずだ。
韓国は目立ったイノベーションを発揮することができていない。韓国企業は、半導体市場では存在感を示してきた。ただ、それは完成品の需要に左右される。
自動車の分野で韓国企業は世界的なSUVブームに乗り遅れた。米国によるファーウェイへの制裁はサムスン電子にとってはチャンスだが、開発を急ぎすぎたこともあり折り畳み型スマホの発売が遅れている。加えて、海外進出を進めたにもかかわらず、同社の売り上げは減少している。
自動車や造船業界では、文政権の支持基盤である労働組合がストライキを起こし経営再建がままならない。韓国では財閥企業創業家や労組といった一握りの既得権益層に富が集中してしまっている。この中で、より効率的な資源の再配分を目指すことは難しい。韓国経済は長期低迷に向かっているように見える。

国内高度化脱皮努力するより低賃金国へ生産移管しか打開策がないのでは将来性がないという点は、韓国ケミカル業界が大量生産方式から脱皮できていないと10月16日末尾に書いた私の思いつき意見と同じです。
https://japanese.joins.com/JArticle/254844?servcode=300§code=300

海外に「逃避」する企業…「脱韓国」投資が増加
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.06.26 0
「メード・イン・コリア」が魅力を失っている。企業の脱韓国ペースも加速している。
慢性的な韓国の高コスト構造、週52時間勤務制度、最低賃金引き上げなどコスト競争力の低下と革新成長を妨げる規制も企業の背中を海外に強く押す原因だ。
今年1-3月期の韓国大企業の海外直接投資(ODI)規模は102億ドルと過去最高となった。製造業の海外直接投資(57億9000万ドル)は前年同期比140.2%も増えた。一方、今年1-3月期の外国人直接投資(FDI)は前年同期比35.7%(申告基準)も減少した。

サムスンなど大手が国外移転あるいは進出すると関連業界もベトナム等へついていきますが、雇用はそのままついていけないので、人の方は国内に居残って失業に苦しむか、個々人の能力に応じて国外脱出を図るしかないのでしょう。
この先駆現象が雁パパの出現だったでしょう。

高齢者は85歳から3(長期支配の弊害2)

社長の(違法不当な)独走牽制のためには、外部監査〜外部役員の必要性が言われますが、その機能をどうやって発揮するかの具体策が見えません。
外部役員「人物」を当てるしかないのですが、独走したい社長に限って、煙たい人物排除に動く本質があるので、現役の社長会長の関与しない選任システムに変えて行くしないでしょう。
長い人類の知恵では、何期か前のトップ経験者・長老・元老システム・今風に言えば顧問団に期待が集まる以です。
寸秒を惜しみ世界中を駆け巡ってがスピーチしなければならない超繁忙社長を務める体力知力がないとしても、じっくり世の中を見ている時間のある何代か前の社長経験者の意見は相応の重みがあるでしょう。
世界企業クラスの社長経験者であれば、他社の事業に精通していなくとも長期支配のマイナスが出てくるようになれば直感的にわかる面があるでしょう。
年齢だけではなく、長期政権に必然的に生じる歪みを是正する方法がない・・一定のシステムが根付けばそれをかいくぐる裏技も発達しますので、大統領任期制のように、能力如何に関わらず一定期間で自動的に失職する絶対的任期制がスッキリしてわかりよい制度でしょう。
中国やロシアトルコ等民主的制度不十分な国で任期に代わるチェックシステムをつくらないまま任期制撤廃をすること自体が、自己独裁政権の長期化を狙った制度改悪と受け取られます。
我々弁護士会の場合には、会長や副会長を2期も続けてやっていると事務所維持できないので2期続けてやりたい人は滅多に出ませんが、(特に日弁連副会長は各地の選出なので、企業役員のように社長指名によらないので会長の意のままに動く人材ではありません)企業等では社長が取締役候補を事実上指名するのが慣例になっているなど独裁的執行体制になっているのが普通です。
これでは法の予定する取締役会の監視機能が事実上形骸化するのは当然です。
総理の指名する閣僚に総理の監視役を期待しているようなものです。
商法266の3(会社法になってからは429条に条文移動しています)の以下の最高裁判例以来各種判例が蓄積されてきました。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52058

昭和46(オ)673
事件名 損害賠償請求
裁判年月日 昭和48年5月22日
法廷名 最高裁判所第三小法廷

株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有するものと解すべきである。

会社法 (平成十七年法律第八十六号)

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
以下省略

上記判例の結果、何かと言うと取締役の責任追及訴訟が頻発するようになっており、「事実上社長は命令に歯向かえない」という取締役の抗弁を許しません。
「取締役になる以上は職を賭しても社長提案に問題があれば非を鳴らし拒絶すべき」という「きれいごと」正義論で押しきれられていました。
しかし、古来から処罰覚悟で君主に諫言できた忠臣が何人いるでしょうか?
万に一つくらいしか例がないから歴史に残っているのではないでしょうか?

左遷至藍關示姪孫湘
唐 韓愈

一封朝奏九重天
夕貶潮州路八千
欲爲聖明除弊事
肯將衰朽惜殘年。
以下省略

https://kanbun.info/syubu/sasen.html解説です。

元和十四(819)年、唐の憲宗は仏教を厚く信し仏骨を宮中に迎えて三日間の供養をした。韓愈は「仏骨を論ずる表」(論仏骨表)を憲宗に奉って諫言した。その結果、憲宗の怒りを買い、潮州(広東省)刺史に左遷された。

朝に諫言して夕べには左遷されたが、「あえて残りわずかな命を惜まんや!という強りですが・・。
閣僚の場合には自己の政治地盤が別にあるので、石破氏のように自ら入閣要請を拒否したり閣外に去る選択肢もありますが、サラリーマン取締役には固有の地盤がないのでそのような選択肢すらありません。
このように取締役の監視機能には実効性がない実態があるので、外部監査や社外取締役制度が普及して来たのでしょう。
企業活動は一定方向へ舵を切った以上は邁進する必要あり、異論を主張できない雰囲気自体を否定できないので、取締役とはいえ実質は執行役員の機能しか果たせていない現状(江戸時代の番頭の機能)肯定した上で、社外ご意見番の創設になったのでしょう。
戦前の内閣制度は総理に指名罷免権がなかったので閣内不一致を批判されても手の打ちようがなく、軍部の横暴を許したこと・・弱体化の原因になった反省で戦後憲法では、総理の指名・罷免権による内閣一体化を図った閣議決定に署名しない権利→総理は罷免で対抗する・これをしない以上は連帯責任です。
(閣僚は閣議が自己の信念に反すれば署名拒否して閣僚罷免されても地盤があるので政治家の地位を失いません・信念によって行動し地元で総理の方針に反した正当性を訴えて支持を得れば良いことです・・これをしないで署名した以上は連帯責任を免れません)
総理権限強化の代わりに総理自身の選任罷免権は枢密院・天皇による「大命降下」でなく、民意代表の議会が握る・・純粋な議院内閣制になりました。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC