暴動と政権維持2(同胞意識3)

強権弾圧政治は、政府軍の武器が民間人の保有武器を天文学的な格差で上回ってる現在、国民の不満がどんなに高まろうとも外国の介入がない限り崩壊することがあり得ません。
国家権力が次第に強化されて来たことについては、非理法天権の法理として、01/21/04「中世から近世へ(国家権力の強化)1」〜01/25/04「江戸時代の相続制度 3(武家)(忠臣蔵の新解釈?)」までのコラムで説明したことがあります。
信長の時代・・戦国武将が強い政権のイメージで想像されていますが、実は今の政府よりも非常に脆弱であったのに対し、今の政府は突出した軍事力の御陰で歴史上比類のない強権政治可能な時代に突入していることになります。
商品知識では専門家に到底及ばない消費者問題がその象徴ですが、(最近では地震や原子力ムラ問題)全ての分野で専門家がその他に比べて格段の突出した能力を蓄えるようになった時代・・専門家以外にはどうにもならない時代に入っています。
01/10/07「世界平和12(戦争の原因6・・武士の戦争6)戦闘員の専門化2」前後の連載で、軍人の専門化が古代から比較的早かったと書きましたが、専門家の力が強くなり過ぎると政治家・権力が恣意的にならないように民主的控制(チェック)が必要になっています。
中国のように独裁体制では、民主的チェックが働かないので権力をもった方がやりたい放題になっても、民衆には前近代のように暴動によって抵抗する物理的方法・・・暴動能力低下・・がなくなった点が問題・悲惨です。
(チベットの場合、対外的に殆ど解放されていないので政府のやりたい放題なっている傾向があります。)
まして旧ソ連や中国のような大国になると外国軍の介入はあり得ませんので、政府には人道に関する意識・自制がない限り(あるいは同胞に対する愛がない限り)何の遠慮もないことになります。
進歩的知識人によるロシアや中国での民主化期待は、実は被統治者の抵抗能力が極小になって物理的歯止めがなくなくなった現在では幻想に過ぎません。
ただ、収容所列島という本を出されてしまったソ連の場合を見ても分るように、政府批判者・暴動頻発→収容所送りをしていれば政権崩壊はないとしても、国民のやる気をなくすので国際競争に負けてしまう点が難点です。
(現在でも北朝鮮の経済停滞を見れば明らかです。)
そこでソ連はゴルバチョフによって、自ら弾圧政治体制を解体してやり直しに方針転換しました。
その結果今でもまだ民主化定着に努力中・・実際には揺り戻しもあってなかなか大変ですが、民主化定着に民族として頑張って欲しいところです。
中国の場合、国際競争力回復・維持のために経済(経済活動の自由化)を開放はするが強権弾圧政治を残すと言う二兎を追う政策を実験中です。
その矛盾が最初に出たのが天安門事件でした。
共産主義政権下でも自由主義経済(先進国の自由主義にはルールがありますが、中国ではルール無視でも手段を問わずに金儲けさえすればいという自由主義)にひた走るという矛盾した体制が共産党独裁下の「自由」経済と言う呼称です。
以前書きましたが、共産主義体制堅持というのは本来は経済体制の意義ですが、中国では単に1党独裁・強権政治体制を維持するための名目を意味しているだけですから、経済体制としては改革開放後は独裁に反しない限度で自由主義体制に移行しています。
西欧の歴史に当てはめれば、絶対王制下の重商主義の焼き直しをしていると言えるでしょうか?
イランのパーレビ王制やフセイン大統領時代のイラクや中南米・リビア(カダフィ政権)等に多かった自由主義経済下での独裁軍事国家と本質は同じです。
しかし、自由主義経済維持に必要なルールと1党独裁体制維持に必要なルールとでは、価値観が対立するので、これを強権的に無理に維持していると価値観の混乱が生じます。

中間層の重要性5(テロ・暴動の基盤3)

中国にとっては持続的外資導入のためには、成長持続が売り物ですから、これまで人口オーナス論に見向きもしなかったし、その意を受けた日本マスコミ・マスコミに出る学者も一言も触れない状態でした。
ところが、中国政府は方針を正反対にしてイキナリ労働力減少数を多めに(労働力人口は従来15〜60歳以下人口統計だったのを59才に引き下げてまで人口減を多めに)発表したので、慌てて1月19日の日経新聞朝刊で報じざるを得なかったように見えます。
翌20日には19日の大きな記事に続けて社説でまで書くようになった慌てぶりは異常です。
中国政府の意を受けて中国市場の際限ない成長を宣伝していた日本マスコミ界にとって、中国政府自身によるこのような発表は日本の頭越しに米中和解したのと同様の衝撃だったでしょう。
労働力人口減のマイナス影響論を逆手に取って従来基準よりもさらに1年分労働期間を減らして計算して減った人口を多めにイキナリ発表した政府の意図は何でしょうか?
失業増大による社会不安拡大の憶測否定・・「職場が減っても人口がこんなに減っているから大丈夫」というアナウンスがその目的でしょう。
そこまでしなければならないほど、対日暴動時点よりも更に失業増大が進んで余程追いつめられていると見るべきです。
習近平氏がトップ就任最初の訪問地に広東や深圳方面を選んだことをもって、日本マスコミは鄧小平の南方講話を引いて路線継続意思表示と賛美していましたが、実は当地では工場閉鎖続出で大変なことになっていたからではないでしょうか?
19日の報道ではこの1年で365万人程労働人口が減ったと言うのですが、確かに5000人規模の(日本では)大規模工場が10個や20〜30個バタバタと閉鎖してもそれだけ労働者が減っていれば数字上では関係ないと言えば言えます。
しかし、まだまだ工場労働に押し寄せる貧窮農民層からの圧力が毎年何千万とある状態ですから、全国で労働力人口が数字上300万や400万人減ってもその圧力が減った訳ではありません。
まして20日にテロや暴動の供給源について書いたように、もともとの農民が苦しくなっても食えなくなるまで命を捨ててまでテロや暴動に参加しません。
(新規参入者である農民工が雇ってくれなければ田舎で従来どおり貧しく生活しているだけでテロリストにはなりません)
ところが、一旦都会に出てしまった労働者が職を失うと帰る家もなく(19日に書いたとおり郷里には受け皿がありません)先進国のようにセーフティーネットの未成熟な中国ではマトモに食いはぐれます。
毎年何千万と発生していた新規参入者が365万へったと言うだけで、既存労働者の50万〜100万単位の失業がそのままになっているのでは大変です。
中国の場合新規参入仕損ないも実は大変なことです。
・・田舎からギリギリの仕送りで卒業した大卒が就職出来なくとも郷里に帰れないのは同じで、ネズミ族、あり族になっているのが有名です。
日本で言えば、仮に50万人失業者を出すにしても中高年者を失業させると影響が大ききいので、新規参入を抑える(新卒の就職難)政策をずっと採用してきました。
日本では親世代が豊かなので就職出来ない新卒・若者は親の家にとどまることが多いので、親に寄生している限り社会不安が起きません(草食化するばかりです)が、中国では深圳特区等早くから開けた工業地域に多い既存労働者(中高年齢層)の失業や大卒の就職率低下は、その受け皿がない分深刻な社会問題になっている筈です。
中国では親世代が貧窮状態ですから、中高年齢層が失業したり田舎から出て来た大卒が就職出来ないときに今更極貧の郷里に帰れませんので、砂漠で路頭に迷っているテロリスト供給源と同じ状態に陥りますので、(根なし草としては砂漠の民と同じです)数字のゴロ合わせでは解決しない社会不安・・暴動予備軍が生じます。
北アフリカ諸国では、近代化以前の裸足で槍をもって獲物を追っていた生活に戻れないので、失業or就職難→テロリスト供給源・予備軍になり勝ちなのと同じです。
新興国や産油国では半端な近代化が、もともとの原始生活に後戻り出来なくしてしまったから、成人しても職がなかったり一旦職を失うと命がけにならざるを得なくなっているのです。
中国の若者が高度産業の受け皿もないのに大量に高学歴化してしまい、行く場所を失ってアリ族に転落している・・今更内陸の農家に戻れないのも同じ構図です。
GDP統計同様に数字発表の操作が中国では大好きですが、失業による困窮度は国民が肌で知っていることですから、この発表が外国(中国べったりの日本向け)メディア対策にはなっても、現実に失業している国民の不満がなくなる訳ではありません。
折しもネット上では、中国のあちこちで大型商店の突然の廃業・閉店がニュースで流れていますが、失業増大で消費が落ち込み始めたことが分ります。
中国政府は本当は困っているのでしょうが、実態に合っていなくとも政府に都合の良い数字を発表しておくしかなくなったのでしょう。
ソ連時代もそうでしたが、共産党政権では、実態にあっていようがいまいが、計画経済・官僚の書面上の辻褄だけが尊重される伝統が開放・自由主義経済化?した現在でもそのまま踏襲されています。
情報規制しているから、裸の王様の寓話が(国民は信じていなくとも)そのまま、まかり通っていることになっているのでしょう。
(したたかな中国国民は信じていないので)虚偽宣伝報道がそのまま、まかり通ってるのは、これをそのまま有り難がって報道してくれる・・洗脳される日本人だけかも知れません・・。

最先端社会に生きる3

日本列島では千年単位で真に階級差別のない平等意識(幼い子供どころか一緒にいる動物すらも我が子と同じ目線で慈しむ基本的意識の社会)同胞意識が定着しているのでいつもみんなで力を合わせてやって来ました。
士農工商の枠組みを欧米基準で日本にも階級社会があったとして学校で習いますが、実際に内実を見ると一応の区分があっただけで西洋の階級制度とはまるで違いました。
武士をやめる人もいましたし、才能があると士分に取り立てられることもあり、あるいは家の格によって就任出来ない職務には猶子制度によって自由に身分を上下出来ましたし、(像でさえ位を貰って参内したくらいです)士農工商の枠組みを越えた養子縁組でさえ自由でしたから、西洋の階級制度とはまるで違います。
大老の家柄の大名の次男であった酒井抱一が武士をやめて浮世絵師になり、松尾芭蕉も武士から俳人になっています。
幕末で言えば勝海舟は旗本でさえない御家人・・これも所謂金上サムライ・・親の代で御家人株を金で買ってサムライになったに過ぎません。
吉田松陰も、伯父の養子になって出仕したものですし、桂小五郎も養子で格を上げたものでした。
目の前の子育てすら、鞭で打って脅かすなど優しく育てられない欧米人が頭でっかちに口先だけで児童保護や人権や動物愛護を叫ぶ欧米のレベルとは、何周回も(千年万年単位で)先を行っているのが我が国社会です。
(最近まで犬や猫を食べていた中国や韓国に比べれば進んでいたでしょうが・・・)
わが国は愛情意識に始まって千年万年単位で欧米や中国の先を進んでいると何回も書いて来た所以です。
日本人社会では、犬まで子供同様に可愛がるような世界最先端社会が縄文の昔・・何千年も前から出来上がっているのですから、19世紀になって始めて啓蒙思想家が口先で平等や博愛を主張し始めたに過ぎない社会とは根底・意識水準が違います。
欧米から先行事例を見いだすことが価値基準になっている学者・知識人のレベル(こんな時代はとうの昔に終わっていることを何回も書いてきました・・若手が留学したがらなくなった基礎です)では、欧米に先行事例がないのでどうして良いか分らずに、欧米の基準を持って来て「失われた20年」などと言って政治家を批判して自慢しているのでは、困ったものです。
欧米はタマタマ産業革命成功によって一時期進んだ科学技術を利用して生活様式・・これに関連した価値観の転換で先頭を走っていたに過ぎません。
タマタマ産業革命で取得した科学技術分野で世界最先端になったのでこの技術を利用した生活スタイルと、これによる生き方・考え方の変化に限って、世界の指導的役割を果たすことが出来たのです。
たとえば、個人主義に基づくいろんな思潮も、村落共同体での共同作業〜大家族の集団的労働(・・一族意識の重要性)から工場労働の発達によって、大家族どころか夫婦でさえ個々人が別々に働くようになったことによる結果に負うところが大きいことを07/09/03「婚姻制度 (皇室典範7)21(実質的意味の憲法)」その他で書いたことがあります。
もともと相互助け合い精神その他のモラル・社会意識・レベルでは、日本とは千年万年単位で遅れていたのが、産業革命に伴う生活様式の変化に関してのみ一日の長を獲得していたに過ぎません。
欧米がせっかく優位性を獲得した科学技術分野で日本が追いつき追い越した結果、産業革命と関係のなかった社会意識の差・・レベル差(清潔好きや道徳心の高さなど・・)が表面に出るようになって来ました。
繰り返しこのコラムで書いていますが、日本は今や世界最上の生活水準を確保しているのであって、それ以上に高度成長を必要とはしていません。

公約3

個人の場合、映画が好き、本を読むのも好き、旅行も野球も好きというのは勝手ですが、二者択一の場合どうするかの質問・・あるいは優先順位付けこそ公約には重要です。
輸出産業の苦境打開、TPP、農家保護、増税反対、財政再建、福祉充実等々それぞれが矛盾している場合があるので、政党としての優先順位こそ公約で書くべきです。
例えば拉致被害者奪回、靖国参拝の実行・竹島記念日の国家行事化、慰安婦問題の政府意見の見直し、あるいは尖閣諸島に常駐するという自民党の公約でしたが、一見選挙運動段階ではこれによる不都合を全く無視して実行するかのような公約でした。
ところが政権を取ってみると「そんな子供みたいなことは出来ないでしょう・・」とばかりに竹島記念日の国家行事化実施をさっさと見送りを決めて、逆に中韓両国に対して真っ先に関係修復のための特使派遣発表となりました。
それならそうと公約段階で言うべきではないでしょうか?
公約を実行するかどうかは、「万般の諸要素次第であって、直ぐにやる訳ではない」ということですから、公約は何の意味もなかったことになります。
(予算が許せば、という条件付きで)政権を取れば生活保護費を10倍に引き上げます、大学まで授業料全額免除します。国民全員に世界旅行券を配ります、税を半減します。・・・と言う公約をしたとすれば、意味がないでしょう。
自民党の勇ましい公約と中韓両国との関係正常化とどのように折り合いを付けるのか、どのようなタイミングでやるのか、何を何に優先させるのかが政権獲得後の今でさえまるで分っていません。
政党や政治家の公約は(自民党に限らず)国民の多くが支持しそうな項目別に迎合して意見を言っているだけで各項目を同時に実施したら矛盾関係になることが多いのですが、最終的にその政治家や政党がどちらを選ぶのかはまるで分っていないのが現状です。
状況に応じていつかやりたいというだけならば、(個人の願望でしかなく)公約とは言えないでしょう。
安倍自民党は具体的な金融緩和・円安政策論を選挙で全面に押し出しましたが、これは現状・・貿易赤字定着によって円安に振れる状況下で、現状に併せて言ったに過ぎず、本来政治で決められる性質のものではありません。
為替相場や金利動向などは4年間の任期中に経済ファンダメンタルズ次第でくるくると変わるべきものですから、前もって政治で決めて行けません。
円相場に関して言えば、長期的には経常収支の赤字が続くか黒字が続くかによって決まって来るのであって、政治家の公約や決断だけでどうなるものでもありません。
やる気にさえなれば出来ることは、(ランクを上げるのではなく下げる・無駄遣いして赤字にするのは怠けて贅沢していれば良いので努力しなくとも誰でも出来ますから)、長期的に貿易赤字を続けることくらいです。
成績10番の生徒が来年4番に上げるというのは努力目標に過ぎず、実現出来るかどうかは分りませんが、10番の子が来年ビリになるのは怠けていれば良いので簡単に実現出来ます。
円安=貿易赤字の長期化政策は、国民が国際競争に邁進せずに怠けていてドンドン消費拡大していれば良いだけですから、簡単に実行出来ますから、本気で政治の力で長期的円安を実現しようとしているとしたら、国民に怠けてお金を使え言っているとしか考えられません。
実際無制限な財政出動や日銀紙幣増刷っぽいことも主張しているのですが、これは言い換えれば国民の働き以上の支出をするべしと言う主張ですから、働き以上の支出をすれば貿易赤字になるのは決まっていますし(家計でも企業でも収入以上の経費をかければ赤字になりますし、その企業の株式相場も下がります)、結果的に国力低下=円安になるのは必然ですから、この点は公約どおり実現可能なのでしょう。
国民の働き以上の生活をさせて貿易赤字が定着するのを政治目標・国家経営を主張するのって、正気の沙汰でしょうか?
為替相場というものは市場の需給で決まるので、短期的には政治力・為替介入で行き過ぎ調整は出来ますが、(囲碁の例で言えば置き石の数が実力以上に多いとなれば市場反応を待たずに先取りでハンデイを下げる程度)経常的に赤字の垂れ流し国が一時的に為替市場で買い支えをしても長続きはしませんし、逆に長期的な黒字国でドンドン外貨が流入している国で、為替介入をしても一時的にはサヤ稼ぎのプロがこれに驚いて買い進みが一服する程度であって、長期的相場を押し下げることは出来ません。
貿易黒字のママで円が安くなればこんなうまい話はありませんが、それは一時的な介入効果にとどまり1〜2週間もすれば元に戻ってしまうのが普通です。
1〜2週間程度の短期的円安ですと、輸出業者にとっては今現在の取引の決済は何ヶ月か先の納品後が普通ですので、何の意味もないことです。
安倍政権の公約であった円安効果定着を本当に意のままに実現するには、貿易赤字にとどまらず経常収支でも長期的に赤字継続しなければならない・・ずっと怠けて贅沢しているしかない・・言わば亡国を期待する論理に外なりません。
インフレ・円安期待論は、亡国期待論に他ならないことについては、February 21, 2012「為替相場と物価変動2(金融政策の限界1)」前後とAugust 17, 2012「健全財政論11(貨幣価値の維持5)」で書きました。
しかも半年以上円安が続くと輸入物資・原材料費/コストが同じ比率で上昇する効果が出て来るので企業にとって差し引き貿易上の有利性は左程変わらなくなるので、結局は消費者物価の上昇分だけ国民生活を窮乏に陥れる結果になっておしまいです。
それでは困るので更なる円安を求めるとすれば、半年後には更なる消費者物価上昇になって国民生活の窮乏化が更に進みます。
韓国がウオン安策によって企業は儲かっているものの、韓国国民の窮乏化が進んでいるのはこの結果です。
このように自国通貨安は経済原理上自国の国力低下に比例して起きるものであることから、結果的に国民が窮乏化するのが一般的です。
こうした効果を期待するのって、一国の指導者のするべきことでしょうか?
どこの国でもその国の通貨価値の相場・トレンドはその国の国力の上下動に長期的には比例していますし、この経済原理から逃れることは出来ません。
長期的円安を期待するグループは、日本の長期的国力低下・国際的地位低下を期待しているとしか考えられません。
囲碁でも相手よりも強いから置き石で対戦し、将棋で言えば飛車角や桂馬落ちで勝負したりしますし、若者が入学試験の難しいところを受けたがるのは、より向上したい意欲があるからです。
置き石の数を5〜4〜3個と順次減らして、相手に勝ってみて・これが楽だと安住しているのでは実力が下がる一方です。
ただ実力以上の置き石で負け続けているならば実力相応に置き石を減らすことが臨時に必要ですが、それ以上の為替政策は論理的ではあり得ません。
入学試験のレベルの低い所に合格して楽勝だと威張っていても将来性が知れています。
出世したら大変だから昇進したくないと、グータラを決めているようでは将来が案じられます。
実力以上の円安誘導をして輸出競争に勝って貿易黒字が復活出来れば、その比率に応じて円が再び上がるしかないのですから、円安になって1年経っても2年経っても円安で楽だからと努力しないで更に競争で負け続けて貿易黒字転換を避け続ける=貿易赤字を期待しているのでは、最後は今のギリシャのようになるのを期待しているのと同じです。
レベルの低い学校に入ったらその分頑張って成績上位者になろう(貿易黒字を復活)とするのではなく、低位校にいれば勉強が楽だから、そこでもさぼって中位者のままの安住を夢見ているようなものです。

 政権担当能力3

参院選挙後なお安倍政権がアメリカに譲る気配がない・・意外に手強いとなれば、再び政権担当能力批判の展開・・他所のヤクザ・・中国をけしかけて領海侵犯をエスカレートさせるなどして揺さぶり、他方でマスコミに安倍氏の無能ぶりを大々的に報道させて再び政権転覆を仕掛けるのでしょうか?
政策批判ではなく政権担当能力批判で良いとなれば、言わば揚げ足取りをしていれば良いのでマスコミにとって政権転覆操作は簡単です。
マスコミにとってはゴシップ探しも要らない・・無数にある映像の中で歪んだ口周辺の露出・前後の文脈を無視して一部だけ取り出して報道するなど、頼りなさそうに演出することはいとも簡単です。
(今回は今のところ笑顔の良い顔ばかり報道されていますが、麻生元総理の場合は当時ことさらに口周辺が歪んだ映像ばかり報道されていました・・このようにマスコミの方向性次第でいろんなイメージが簡単に作り上げられます)
本当は国民に人気がなくても韓流が如何にも良いものかのように大々的に演出した場合・・例えば事実に反して視聴率8割と虚偽報道しても、身近な多くの知り合いが誰も見ていないと化けの皮が直ぐにはがれますが、総理や大臣の頼りないイメージ作出の場合、国民は彼らを直接知らないのでいろんな表情や言い回しの中でそう言う写真や音声ばかり切り取って報道し続ければマスコミのイメージ造りが簡単に一人歩きします。
政策ではなく、担当能力と言うイメージで政権批判する風潮は困ったものです。
尖閣諸島の挑発が続いてもアメリカの応援が期待出来ないとなると、日本では米軍基地の存在を意味がないと思う人が増えるでしょうが、アメリカとしては日米同盟を破棄して戦前のように孤立化に走る勇気がないと見越しての米中の連携プレー的な嫌がらせです。
安倍さんの年来の主張・戦後体制・・極東軍事裁判の虚構性の見直しなどとても出来る情勢ではありません。
安倍政権が本気で国益を守るつもりならば、アメリカの意向によって動くマスコミとの対決を辞さない覚悟・備えがいります。
これをしないで密室で大幅譲歩して・国民の犠牲で政権維持するようでは、国民が困ります。
マスコミ批判が強くなれば、安倍氏が意外に対米交渉で頑張っていることになり、政権維持のために密室交渉で赫々たる成果を得たと報道される場合、逆に裏で大きな譲歩をした可能性が高まります。
アメリカと仲良くやるのは良いのですが、正々堂々とアメリカの要求とこれに従うときに我が国の損失・・その犠牲を払っても同盟を強化して尖閣諸島を維持する必要があるかどうかを国民に開示して国民議論でこれを決めるべきです。
重要なことに限って民意を問わずに選挙後にやる・・密室で政治家個人の利益と引き換えに取り決めるのは民主主義の原理に反します。
アメリカの嫌がらせが続けばいくら鈍い日本人でも、アメリカの言うとおりにしないと大変なことになると気がつく・・口惜しいかどうかの次元ではありません・・何かを譲るしかない・・そこまで言うなら中国側に着いた方がマシかという国民判断が出てきます。
アメリカからの脅迫と中国からの脅迫があって、どちらに屈した方が得かの国策判断です。
ところで、安倍政権は選挙の争点にはしないで、選挙後にTPPの決断をすると今から匂わせています。
何の決断もしないでズルズル行けば自然消滅ですから、敢えて参加しない決断をしなくとも良いのですから、参院選挙後に決断をするということは参加表明すると言う意味でしょうか?
野田政権の消費税増税に始まり重要な政治決断は国民の信を問わなくても良いという政治スタイルが定着して行くと、いよいよ政治不信が高まるのが心配です。
そもそもTPPが日本にとって項目別に何が有利で何が不利かの一覧表を何故かマスコミが提示しないので、どの項目にどう言う理由で反対していてどの項目にどの理由で賛成する人がいるのか国民にはまるで分りません。
最近ネットで少し出るようになってきましたが、それも一方的なので聞いているとおかしいなと思う主張が多くあっても、それに対する反論→再反論がないままですから、十分納得出来ない半端な状態です。
これも繰り返すうちにもっと説明が緻密になって行くのでしょうが、今のところ何故双方が必死になっているのかがはっきりしません。
双方共に具体化しないママ争っているのを見ると、実は選挙後に野田政権のやった消費税増税のようにイキナリ参加表明したら、そのとき反対していたことを忘れたフリして支持する思惑があるのでしょうか?
安倍政権支持層に連なる論客の多くは、昨年末の総選挙直前ころから「増税では産業が萎縮するだけだから、それよりは財政出動・景気対策だ」と口を揃えて言っていましたが、じゃ、消費税増税法案のときに何故反対しなかった(党議に反対しなかった)のか(それどころか推進していたのか)について口を拭って知らん顔です。
消費税増税法案に反対して民主党が大きく割れたのは僅か数カ月前のことですが、自民党で今の政権中枢に入った人々・誰一人として造反していたとは聞きません。
こんなに短期間で著名な政治家や経済評論家が党利党略で真反対に豹変しています。
消費税法案に関する与野党合意は民主党を分裂させるための罠だったとしか考えられません。

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