紙幣供給量増大と減価3(新興国への影響1)

2、19, 2013「グローバル化以降のゼロ金利政策2」前後でも書きましたが、ある貧困国・新興国が貿易赤字解消や物価急上昇回避のために高金利、金融引き締め政策を採用していたとしても、国内業者が日本から円キャリーで運んで来た安い資金を元手に無茶安い資金貸し付けの商売したら、金融引き締めのしり抜け・貸し出し競争に勝ってしまいます。
高金利に対しては利息制限法等で規制出来ますが、安い金利での貸し出しを禁止する法律制定は不能でしょうから、貧困国・資金不足国では国際収支赤字累積を防ぐために金融引き締めをしたくとも、安い金利で外国から資金が入って来るとこれが不可能になっています。
その結果、貧困国の国民が(余程の自制心がないと・・我が国でもちょっと補助金がついたり金利がちょっと下がるとローンを組んだりして消費をそのまま盛り上げるのが庶民です・・金持ちは少しくらいのおまけにつられて物を買ったりしません)借金でドンドン物を買ってしまう・・ひいては貿易赤字が増大していきます。
これを防いでいるのが、中国の資本自由化拒否戦略・・主として短期資金流入禁止政策です。
長期資金=工場新設等の資金流入ならば、簡単に引き上げられる心配がないし,庶民の消費増には関係がないからこれは歓迎どころか勧誘していますが、昨年からの日中紛争以来投資資金流入が低迷して中国は今では困っています。
中国の豊富な外貨準備と言っても日本等からの巨額資金の流入によるところが大きいので実際にお金持ちかどうかは実は怪しいのです。
日本で国内需要もないのにゼロ金利にするだけではなく、量的緩和をすると国内で使い道がないので余剰資金・紙幣が世界中に流出して行く経済現象が起きます。
工業製品でも中国など出生産過剰になって国内でだぶつくと、海外に投げ売り的輸出が増えるのと同じ原理が紙幣という商品にも当てはまります。
ひいては世界中で(日本で国内資金需要以上に余剰に印刷した紙幣の量に応じた)紙幣過剰になって行きます。
(火元の日本では逆に余剰分を海外に押し出して行ける・・円=商品としての国際競争力は抜群ですので,過剰紙幣問題は解消されます・・即ち紙幣増発=国内インフレになるという意見は杞憂で,むしろ海外でインフレを起こします)
円紙幣の強さ・・何かのリスク・・欧州危機再燃・キプロス危機・北朝鮮危機等々があると資金逃避先として円が直ぐに高くなる傾向があるのは、世界中の日本に対する信頼・認識を示しています・・。
マスコミ・エコノミストが口を揃えて「失われた20年」などと言って、如何に「日本が駄目だ駄目だ」とこき下ろそうとも、この20年の間に世界の信頼が日本に集まっていることは確かでしょう。
この辺の意見もJanuary 16, 2013「最先端社会に生きる5」その他で繰り返し書いてきましたので、再論しません。
(・・マスコミは政治問題でも何でも日本は「如何に周辺国に対して悪いことをして来たか、もう駄目な国」かを宣伝したい傾向があって、これを私のコラムでは何回も批判してきました・・)
日本が世界一金あまり国・豊かで安定した国ですので、経済論理的に世界一安い金利になるのが自然の理に叶っていますし,低金利競争では理論的に日本が最強です。
貧困国や新興国ほど資金需要が高く,高金利にならざるを得ませんから、金利差の圧力が余計働き、低金利資金の流入リスク・・国内消費過熱リスクが高まります。
ただし、工業製品(車や携帯,パンパ−ス等)はいくらでも増産可能ですので消費が盛り上がっても殆ど値上がりしませんが、(その分輸入が増えます)増産可能性の少ない資源や不動産の値上がりが起き易くなります。
最近あちこちの新興国で(特に中国で)不動産バブル現象が多くなっているのは,消費材に占める工業製品比重が増えていることや食料品でさえ輸入が可能になったために消費材の価格上昇は大規模には起こりえなくなったので供給限界のある不動産や資源に紙幣が集中するためです。
紙幣増加による国内消費者物価の直接的上昇インフレ期待論は、社会システム変化を見ない旧来理論によるものです。

中国の国際協調能力2(虚偽教育による道徳低下2)

彼ら中国人にすれば「どうだ!中国に逆らうとこんな酷い目に遭うぞ!と威張っているつもりでしょうが、こうした行動自体が世界中への中国に対する悪宣伝になっていることにまるで気づかないのは、(ヤクザと同じで)レベルの低い話です。
中国の工場は、どこでも作れるような最低レベルの汎用品工場・ローエンド商品が中心ですから、リスクの大きい国となれば、投資が他所へ行ってしまうのは目に見えていますが、それさえ気がつかないほど自信過剰に陥っています。
反日暴動以降中国への海外投資資金流入が急速に細くなり、(工場新設の投資が外国からなければ、まだ中国では輸出産業を自前で作れません)貿易黒字の減少傾向どころか今年の3月には、ついに貿易赤字にさえ突入しました。
レアアース禁輸実施は、中国政府・人民が近代的な貿易社会で一人前のプレーヤーとして行動する資格のないことを満天下に知らしめました。
中国製品が世界の90何%を占めるレアアースの禁輸によって、レアアースを利用する日本の高度製品生産を停止させる、日本を屈服させようとしたのですが、こうした商品を政治上の主張を通すために禁輸するのは、所謂世界貿易ルール上での禁じ手の実行でした。
自分が優位であると錯覚すると、何をしても良いかのようなルール違反をする中国は、まだまだ世界市場で交際を出来るプレーヤーではないことが立証されました。
また虚偽に満ちた統計発表でGDPで日本を追い抜いたと発表した直後から尖閣諸島への準軍事活動を強化し、あるいは南沙諸島など周辺国へ次々と挑戦的行動を始めました。
これに加えて国内では官制の反日暴動を起こすなどを総合して中国は国際社会で大人としての行動のとれない国・・高リスク国であることを自ら証明しています。
国家間のルール遵守能力以前に、知財その他の剽窃はしょっ中ですし末端に至るまで金にさえなれば食品に毒を入れてでも儲けようとする商道徳のなさ・・等々、そのそもそも国民には法を守る意識がない・・政府自身が嘘で塗り固めた教育をしている以上、国民もルール無視になってくるのは当然の結末です。
国民に虚偽教育を繰り返していると国民自身が腐って来る見本が韓国や中国人民の現在の姿ではないでしょうか?
このような国では公共のために生活する意識も育ちませんし、豚の死骸が何万頭も川に流れ着くような快挙?をやって恥じない国民だらけになります。
日常生活のあらゆる分野から腐ってしまっているとしか言いようのない社会を作り出して来たのは虚偽教育の蔓延に基礎があります。
このような国・・道徳というものを根底から無視している国に対して合理的説得によって国際貿易上のルールに従うことを求めても無駄・・国際協調を求めるのは無理があることが誰の目にも明らかです。
食品の中に毒を入れても何でも売れれば良いという商道徳の国・・ルール無視の国に対しては話し合い解決は無理ですから、強制しかない・・1つにはスーパー301条のような不公正貿易国に認定してこちらも(日米欧で協力しないと中国経済が大きくなり過ぎしているので無理でしょう)輸出入制限を掛けるしかないのかも知れません。
不公正貿易国の認定は角が立つからと言って、アメリカも尻込みしているのが現状ですが、今後は(防衛問題同様に)米国一国に任せずに国際協調で対抗して行くのが筋です。

人民元相場の重要性3

ところで、恒常的赤字国が実力以上に高すぎる為替相場を維持している場合に、その国の通貨下落を狙うには、その国・例えばイギリスポンドの場合、貿易赤字によって流出したその国の通貨・ポンドを大量浴びせ売りすれ(空売りを繰り返せ)ば足ります。
その国は手持ち外貨の限度しか自国通貨の買い支えを出来ないので、継続的赤字国では外貨準備が乏しいので直ぐに参ってしまいます。
これを狙ったジョージソロス氏がポンド相場で成功した論理です。
では、ある国が管理制で自国通貨を安すぎる水準に抑えている場合、貿易赤字国が為替相場の是正を相手国に迫る・・その国の通貨切り上げを迫るにはどんな手段があるでしょうか?
空売りに代わる空買い・・・昔流行った株式の仕手戦のようなことが成り立つのでしょうか?
小国と違い中国等経済規模の大きい国の通貨では仕組みが詳しくは分りませんが、何となく無理っぽい感じですが、(株式の仕手相場も中堅の軽い株式を狙ってやるもので大型株では無理でした)仕掛人としてはアメリカドルの売り浴びせをすれば結果的に日本円や人民元は値上がりします。
しかしこの方法が仮に可能であるとしても、特定国の通貨が切り上がるのではなく、全世界が平均してドルに対して切り上がるだけですから迂遠で薄い効果しかありません。
まして、管理相場制をしいている国・・アメリカドルや日本円下落に合わせて自国通貨両替基準を自由に変えられるので、資本自由化されていない中国には殆ど効果がありません。
市場原理を利用して相手国の通貨切り上げを迫るには、その通貨買いを入れるしかありませんが、相手国は自国通貨を輪転機の続く限り印刷すれば無制限に自国通貨売り出来ますので、市場は相手国の通貨切り上げを強制出来ません。
対象国は輪転機で刷れるだけ刷って買い注文に答えれば巨大な量の紙幣が海外に流出するので長期的には、却ってその国の通貨が下がってしまう結果になります。
為替相場管理制をしいている国が意図的に自国通貨安を決めている場合、市場原理だけでは適正相場まで引き上げさせる方法がないことになります。
一般商品でも同じで、品質よりも高過ぎる場合買い手がつかないことによって、市場は値下げ強制出来ますが、品質の割に安い定価の場合、売れ行きが好調になるだけで、値上げ圧力には必ずしもなりません。
供給に限界がある場合、・・例えば人力に頼っている料理や工芸品の場合、適正能力以上の受注があると次第に品質が落ちて来るので、品質維持のためには受注制限・・引いては買い手の方が多いので単価アップになることがあります。
しかし、工業製品の場合、生産能力以上に売れるときには工場新設・・設備投資して更に多く作れるように出来ますので、この場合規模の利益によって、より低価格で生産出来るようになりかねません。
(値上げ圧力にはなりません)
資本取引の自由化が進めば、その方面からの修正(・・実力以上に自国通貨が安いことによって儲け続けるとその儲けに参加しようとする外資流入が増えますので、結果的に通貨が上がります・・)が起きて来るのでしょうが、今のところ中国の場合、外資の自由参入(短期取引)や無制限自由な両替が認められていない様子ですので、その方面からの圧力も生じません。

アベノミクスとは?3

「必要は発明の母」とも言いますが、需要があってこそ必要な人材が生まれるのであって、先に供給さえすれば、需要が生まれるという倒錯した議論でここ20年ばかりいろんな分野で供給過剰が続いて来た面があります。
金融でも同じで、金あまりで資金需要以上に大量供給さえすれば、需要が生まれると期待するのはおかしなものです。
過剰供給下で生まれる需要は不健全な後ろ向き需要(借金の借り換え等)や不正需要(審査が甘くなれば不正受給が増える)が中心で、健全な成長投資には殆ど結びつきません。
マンション等で言えば建て過ぎれば、売れ残りの叩き売りが増えるので、不要な人でも勝っておこうか?と言う需要が増えるのを期待しているような不健全政策です。
民間で作り過ぎても、最後は売れ残りを叩き売りすれば結果的に売れるからと言う発想で増産する企業は皆無ではないでしょうか?
資金不足時代の延長思考で景気対策には資金供給の増減さえすれば良いという時代遅れの金融政策を資金あまりの先進国では取り続けて来たこと・・資金余剰下では、金融緩和効果がなくなって手詰まりになって来た原因です。
これまでの金融緩和効果がないから「もっと大胆にやれ」と言ってみても、大量資金不足下で資金緩和が少な過ぎて効果がないのではなく、資金が既に余剰で緩和自体に意味がなくなっているのですから、意味のない主張です。
砂糖をいくら入れてもうまくならないときに、更に「大胆に」砂糖をドバーッと足すのではなく、塩や香辛料を加えるなどの変化が必要です。
即ち、資金あまりの日本で如何に金融を緩和しても、企業は内需や輸出需要=売れる以上に国内投資することはありません。
企業は無駄な投資をしていると倒産してしまいますから、国債を買ったり需要のある海外への進出資金等に使ってしまうのが普通です。
1000兆円前後にのぼる国債のうち国内保有率が(数年前には95%でしたがここ1〜2年外国人保有が増えているようです。)約92%ですが、その内企業がどのくらい持っているかです。
銀行、生保等金融関連保有分もその何割かは企業が預けたり、投資した資金でしょうから、実質的には企業がかなりの比率を占めている筈です。
企業保有分(金融資産)は、その企業にとっては本業その他に投資する資金需要がなくて国債を買っている・・これ以上金融緩和しなくとも既に資金余剰ということです。
こう言う企業にとって金融緩和(金利下げ)しても使い道がなく・・・逆に金利下げ分運用益が減少することになります。
国内需要喚起・・車で言えばスピードアップするのは、アクセルを踏む権限のある政府の役割です。
需要が起きたときに資金不足を解消するのは金融緩和・日銀の役割ですが、需要を喚起する仕事は日銀ではありません。
そこで重要なのは第三の矢と言われる成長戦略ですが、これ自体バクとしていて今のところ不明です。
どの政権でも成長させたいのはヤマヤマですから、これまでどの政権(歴代自民党政権も含めて)も約20年来成長戦略を唱えてきました。
どのようにして成長させるかこそが政治家に問われているのですから、これに対する答えとして「成長戦略です」と言うのでは、同義反復にしかなりません。
成長戦略を具体的に言えないで実際には「為替相場が円安になるかどうかに全てかかっている」というだけでは、心もとないことになります。

TPP16とアメリカ支配8(参加国と本社機能争奪3)

ちなみにTPP交渉参加国名等は、3月25日現在のウイキペデイアによると以下のとおりです。 

「環太平洋戦略的経済連携協定(かんたいへいようせんりゃくてきけいざいれんけいきょうてい、英語: Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership, TPP,環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋経済連携協定、環太平洋パートナーシップ協定[1])は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である[2]。
2005年6月3日にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間で調印し、2006年5月28日に発効した。2011年現在、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーが加盟交渉国として、原加盟国との拡大交渉会合に加わっている。
2012年11月12日の会合からカナダとメキシコが正式な加盟交渉国に加わった。」

となっています。
幼稚園児の集まりに、イキナリ大男のアメリカが参加してどっかり座り込んでいるような進展です。
これではみんなアメリカの鼻息を窺うしかなくなるのは当然です。
しかし、アメリカは図体が大きいからと言って、中国のようにイキナリ威張る必要がありません。
3月18日に書いたように、参加国の企業にドシドシ頑張ってアメリカに進出してもらっても構わないのです。
アメリカ政府にとっては本社機能や生産機能が事実上アメリカに移ってくれば、どの企業が勝とうと国内企業同士の競争の結果と殆ど変わりがありませんし、雇用も変わりません。
トヨタがアメリカ国内で売れる分を現地生産し、事実上本社機能をアメリカに移してくれば(将来法的本社も移るでしょうし)アメリカ人の本社部門雇用も増える(ソニーの社長がアメリカ人になっていました)し、アメリカ政府にとっては企業の発祥地がどこかなど詮索する必要がありません。
当面フォードなど在来企業が反発するでしょうが、アメリカ政府にとってはアメリカ国内でどこの出身企業が売上を伸ばそうと同じことで、むしろ、より強い企業が生産やサービスを伸ばす方が国益に合致します。
日本の例で言えば、統一国家になった以上は、青森や沖縄発の企業でも大阪、九州発の企業でも、より良い商品・サービス提供して全国ブランドになるのを拒む理由がないのと同じです。
国家間の障壁を低くして行く世界の潮流・各種ルールの世界共通化については、ハーグ条約や金融規制・会計基準の統一化等の例で書いたように、TPPに参加しなくとも拒み切れない大潮流のように思います。
(この点についても論者によっては、そもそもいろんな分野で世界共通化自体必要がないという人もいますので、これを前提にすれば一概に言えませんが・・。)
TPP参加の経済的側面については、個別品目別に論じるデータもないし私の能力に余りますが、(交渉次第の面もあって分り難い)個別品目/産業がTPP参加後もアメリカに対して勝ち残れるかどうかの議論よりも、結果として重要なのは、地域・都市間競争・・本社機能や生産拠点の争奪競争に勝ち残れるか否かにあるように考えられます。

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