両替制限→過剰流動性・バブル2

中国のバブルは民間が始めたことではなく、政府主導のバブルであるから破裂させるわけに行かない・・当初マンションバブルが広がり「鬼城」があちこちに出来たのでニュースになっていましたが、政府主導で煽っておいて投機家に損をさせたままに出来ないので、次は株式バブルを政府機関紙が煽って大規模ブームを起こしました。
これが15年夏に限界が来た結果、内需主導〜再びマンションバブルとへ再移動していたのですが、アメリカ利上げとトランプの脅しに伴う中国の追随利上げ採用によってマンションバブルを維持出来なくなると、今度は再び株式と商品相場へ誘導していると言われます。
このように政府は次から次へと螺旋状に対象を広げて行く点が諸外国の過去のばブルとの違い・・特異な現象です。
国民の方も例えばマンションバブルが一時的に収束しても、一巡すればマンションにバブルが戻って来る(政府が放っておけないからテコ入れする)に決まっていると言う「政府に対する信頼?」期待があってみんな強気らしいです。
中国破綻論は毎回空振りに終わっている・・嫌中派の議論に過ぎないと言う強気の意見を中国政府が流していますが、バックに巨大政府がついているから一見際限ないバブル循環に見えるだけとも言うのが伝統的意見でしょう。
でも伝統的学問に合わないと言うだけならば、20世紀に入ってからの景気対策としての財政資金投入や金融政策による景気平準化政策も本来はそう言うものですし、日銀や欧米の異次元緩和も似たようなものです。
不景気時に財政投資して穴埋めしていればその内にまた景気が良くなるから・・と言う景気対策も、戦後一時期一時うまく行く時代がありましたが、・・高成長から中〜低成長へ移行する構造不況に突入している場合、財政投入をしても痛みを緩和する(例えば放置すれば失業率10%になるところを8%に抑える)程度の効果しかなく、財政赤字が膨らむばかりでいつまでたっても好景気が来ません。
中国のやり方は一時の不況の穴埋めタイプか、低成長移行への痛みの緩和措置かどうかで結果が変わります。
中国の景気対策は・・内需換気は政府主導バブル・・公共投資だけではなく、「民活・バブル」を組み合わせたもの・・政府自体が次々と対象を変えては仕手相場を煽っているのは、世界史上前例のないことですから、どう言う最後を迎えるつもりか?世界中が固唾をのんでみているところです。
日銀の国債無制限?買い入れも歴史上前例のないことですから、伝統的理解の立場からは、将来どうなるのか?と出口対策を心配する否定的論調・・「一刻も早く脱却すべし論」が一般的ですが、従来の考えに合わないからと批判するの間違いであると17年5月2日「税収弾性値3(国債の合理性1)」以下で貨幣改鋳や金本位制廃止の例を引いて書いて来ました。
中国の際限ない循環的バブル創造も一種の異次元政策だからこそ伝統的考えでは、出口がどうなるかの心配している点では同じですが、もしかして新たな地平を切り開けるのか、あるいは先送りの巨大版に過ぎず破裂の瀬戸際が近づいていると見るべきかのどちらでしょうか。
ただ日経5月6日一面の記事には、国内景気維持とバブルを煽る為の金融装置・過剰流動性供給の結果、・・建設資材・・製鐵その他の資材関連産業活況→資源類の輸入が膨らんでいる・・「経常収支悪化」の小見出しが出ていて国際収支黒字減が始まっているとも書かれています。
この辺は3月26日に私が書いた見通しどおり・「国際収支悪化をどうするのか?」と言う展開になって来ている点を書かざるを得なくなって来たのでしょう。
貯蓄・・外貨準備のあるうちは、輸出縮小→国内生産縮小→失業を内需拡大で穴埋め・先送りして行けますが、資金が尽きるといつか行き詰まります。
日本の国債増発・・引き受け者が日銀であれ外資であれ、国際収支黒字の範囲内である限り問題がないと書いて来ました。
ちなみに昨年度日本の「国際収支黒字はリーマンショック前回復と今日の夕刊に出ています。
経常収支20兆1990億円の黒字(内、海外企業から利子配当が18兆350億円・・円高の結果目減りしているとのことですが・・)です。
赤字国債・・外国から借金で物を買っている状態ではないのです。
中国の16年の経常収支を見ておきましょう。
 https://www.nna.jp アジア経済ニュース2017/04/05(水曜日)                                        16年国際収支、経常収支は1964億ドルの黒字
中国国家外貨管理局は3月30日、2016年の国際収支統計を発表した。経常収支は1,964億米ドル(約21兆6,940億円)の黒字で、国内総生産(GDP)に占める割合は1.8%だった。31日付経済参考報が伝えた。
日本の黒字約20兆円とほとんど変わらなくなっています。
14億の人口と1億あまりの人口比で考えると、あるいは公表されているGDP比黒字比が急減していることが分るでしょう。
中国の商品相場高騰に戻りますと、加工輸出用の原材料過剰購入・在庫は、その内出血輸出によってでもハケて行くでしょうが、元々国内マンション等向けどころかマンション向け需要すらオーバーした・・何の需要もないのに素人が商品相場に手を出して・相場高騰に釣られて輸入してしまったものは、引き取り手もありません。
今朝(5月11日)の日経新聞朝刊25pには、中国の港湾在庫が摘み上がってしまい・・「バラ積み用船料急落」の見出しで資源系用船料金がこの1ヶ月で4割も下落していると書かれています。
商品相場・バブルは末端のマンション等の工事需要がなければ在庫増に直結するので短期間に収束して来たと言うことでしょう。
マンションを高値づかみしてバブル崩壊した場合、ババを引いた投機参加者は塩漬けにするしかない(借入金支払に困るでしょうが・・)だけですが、商品相場が過熱して高値づかみして国内在庫になります。
(高値づかみで損をした資金繰りの問題があるのは別として)町外れに作った新興住宅地・鬼城は放っておいても邪魔になりませんが、鉄鉱石など原材料の在庫は倉庫に入ったままになりますので倉庫や物流業者等が困ります。
客のいない鉄道工事なども、従業員を雇っていると困ります。
はたして政府の誘導どおりに商品相場に火がついて、新たなバブルが「螺旋状」に広がっていますが、5月6日の日経朝刊の遠慮ガチな指摘どおり、国内バブル・・商品相場上昇に合わせて資源輸入が増えて行く・・肝腎の貿易黒字が減少して行く・・国際収支赤字化が始まるとどうなるかの瀬戸際が近づいて来ます。
国際収支が赤字になると輸入代金決済資金が必要ですから、国民の外貨交換を制限するだけでは済まなくなります。
ただし、まだ黒字維持出来ているので中期的課題に過ぎないと言えますが・・これが中国の経済破綻を先送りを可能にしている面があるでしょう。
引用している日経5月6日朝刊1面によれば、17年1〜3月の中国政府の1551億元の財政赤字・・19995年以来22年ぶりとのことですし、卸売物価(商品相場です)が前年同期比7、4%アップとなっています。
国内での過剰投資は経常収支悪化と言う副作用をもたらしていると書いています。
鉄鉱石などの輸入が急増して貿易黒字が25%減った結果、1〜3月期のサービス・物の貿易黒字は前年同期比64%減とも書いています。
所得収支赤字は2年連続で、サービス・貿易収支と合わせた経常収支は、16年10〜12月期に前年同期比86%減となっています。
財政赤字が始まり他方で国際収支黒字減少が始っています。

外貨交換=政府不信→(流民化の現在表現)2

国外脱出熱・・これは歴史の似ている韓国でも同じですが、昔は前もって域外の貨幣を入手することは不可能・・金や宝石類しか持ち出せませんでしたが、今は裸官で知られるように人だけがむやみに逃げるのではなく、先ずは(子供を留学させて域外生活力を準備しておいて)資金から先に逃がして行くのが中国・韓国人民のやり方です。
我が国では、国外脱出するよりは国内改革に努力する人がまだ多いと思いますが、地方の郷里を棄てて都市へ移動する点では似たような状況になっています。
その代わり、その分小さなコミュニテイ・ムラ単位〜県単位よりは、日本列島全体への一体感が強まっているとも言えます。
自分の属する共同体意識がムラから出身県〜列島一体感へ変わって来たものの、日本を棄てて外国へ移住したいか?となると古代から違っています。
民族一体教育が明治政府によって始まったと言う印象付け教育がされていますが、これは結果であり原因ではありません。
663年の白村江の敗戦以来列島一体となった防衛意識・民族意識が高まったことは周知のとおりですが、その後民族の危機が来るごとに一体感を自然発生的に強固に発揮して来ました。
蒙古襲来のときがそうですし、幕末異国船〜黒船来航時もそうです。
幕末騒乱はこの民族危機感から生じたものであり、その集大成で成立した明治政府は、民族教育と富国強兵に邁進したのは当然のことです。
我が国では、古代から集落を基本として列島全体の「民族意識」が形成されていたのであり、明治になって急に出来たものではありません。
中韓では日本より早く異国船の到来に遭遇していたのに、危機に際して民族一体で当たると言う意識がなく・せいぜい強い方に着こうと言う程度の選択しかなかった・・これが植民地化を防げなかった原因です。
留学・脱出に戻りますと、我が国では遣唐使の昔から先進国への移住を目的とするものではなく、先進文化を学んで文物を同胞(出身郷里のためではなく列島全体)のために命がけで持ち帰るものでした。
日曜日の日経新聞22pに出ていた世界で活躍しているバイオリン演奏家の記事を読むと・・諏訪内氏の日本民族還元の気持ち・・遣唐使と変わらない意気込みが伝わって来ます。
ソムリエであれ調理師であれ、他国の粋を学んで日本に持ち帰る目的の人が多いのを感じるのは私だけでしょうか?
遣唐使廃止後も文物の流入が途絶えたのではなく官費によらない個人の努力でこの種の貢献者が引きも切らない・・その結果、日本列島にはその時代時代の世界最先端、世界中の最高の「粋」が集まりこれを和魂で吸収して(和製英語を含め?)高度な社会を築いて来たのです。
戦後貧しくとも世界トップクラスのブランドは日本で良く売れたこと分るように、遣唐使廃止以降でも優れたモノがあると、直ぐ日本に導入して来ました。
西洋の文物も良いとなれば「種子島」〜蘭学をはじめドンドン入れることを厭いませんでした。
明治維新の留学生は、日本に西洋の文物を紹介することが目的であって、自分が西洋人のマネをして西洋で生活をすることではありませんでした。
遣唐使は阿倍仲麻呂や鑑真和上の例を見るまでもなく、当時の航海は難破率の高い危険なものでしたが、それでもみんな命がけで帰ろうとしていたのです。
民族のために文物を持ち帰るのが留学が目的だったので、遣唐使派遣のメリットが薄らぐと直ちに廃止になった理由です。
現在の日本若者の留学熱が冷めて来たのはこれと軌を一にしています・・。
今は企業の海外進出のために相手国を知る必要と言う功利目的でインドね示唆後を学ぶなどでであって、先進文化を学ぶための留学が減って来たのは当然でしょう。
国を良くするために努力するよりは、世のよりよい環境にただ乗りしたい・・これが中韓人民の流が苦熱の招待ですが、中韓的信条に共感している文化人は、日本の若者は元気がないと心配しますが・・逃げたい人が増えている国とは基本が違っています。
自分の属する共同体を大切にする気持ち・・これが政府不信任・・政権交代や政治改革にエネルギーが向かうのですが、人民の弱い中国や韓国では、これに向かわないで、先ずは裸官・留学等で国外脱出を目指すし、「命の次に大切な貨幣」交換要求になって出て来たことになります。
金融のプロの行動ならば分りますが、かりに円安が見込まれるからと言って日本人がドル買いに殺到するでしょうか?
日本人は対米戦争で敗色濃厚となっても最後の最後まで、お国のためにお寺の鐘まで供出していた国民です。
敗戦のどん底に喘いでいるときに国を棄てるどころかいそいでみんな国に帰って来た民族です。
中国の場合、一般人民が自国政府発行貨幣よりも外貨の方が良い・信用出来ると言う意思表示・・ドル交換を求めて銀行窓口に殺到?すると言うことは、政府不信の意思表示そのものです。
韓国でも移民願望が半端でないことを以前紹介したことがありますが最近の動向は以下のとおりです。
http://news.livedoor.com/article/detail/11999108
2016年9月9日 22時0分
日刊サイゾー
「20~30代の「国外脱出願望」は80%超! 韓国の若者たちが海外を目指すワケ」
詳細を省略しますが、今も変わらないと言うことです。
自分の国や社会意識・・共同体を大事にしようとする意識が育っていない憐れな民族です。
この基礎意識がない分、自衛のために反日とか、愛国ぶる行動が逆に高まっていると見るべきでしょう。
日本人は愛国心を聞かれても「?」となるし、宗教を聞かれても無神論者かな?と迷う人の方が多いのですが、心底は日本教になり切っているので、普段意識する必要すらなくなっている状態です。
外国へ行って何かを学んで国に持ち帰ろうと言う人はいても、国から逃げるために留学する人は滅多にいないでしょう。
人民の国外脱出の動きに政府がどうするかですが、人民が古代からの伝統的な政権抵抗手段・・流民化に先立つ外貨資金の準備を始めると政府も負けてられない・・外貨交換枠の締め付けに走ります。
いわば歴代王朝が農民の流民化を防ぐために農民移動を厳しく制限していたことを今風に資金の流出防止に切り変えただけ・・紙幣の外貨との交換禁止で再開したことになります。
人が出て行くのは自由だが、お金を持って出る自由を制限すると言うことでしょう。
持ち出す外貨をお金を制限されれば、事実上移民が出来なくなります。
今の中国政府は人民がお金を置いて出て行ってくれるならば、国外逃亡・・移民を奨励している国ですが、政府権力者もお金第一ですから、お金を持って出て行くのは許せないと言うことでしょう。
人民の方もお金を逃がすのが大事であって、命よりも?お金が大事の民族性です。
そこで人民元が国外でどの程度流通で来ているか・・ているか・人民元が簡単にドルや円に替えられない点がネックになります。
その内外貨規制が厳しくなる一方となれば、人民はその前に駆け込みで少しでも早くドルに替えておこうとなります。
これが昨年1年間で中国の外貨準備が1兆ドルも減少した背景です。

中国バラまき投資の限界2(ベネズエラ危機3)

5日に紹介したデフォルト直前のベネズエラに対して中国は多額の債権を有していて、最早回収を諦めていると言われています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4752   2017年5月5日(金)
中国「ばらまき外交」の限界 経済悪化が深刻なベネズエラを教訓に 岡崎研究所
「フィナンシャルタイムズ紙は1月25日付社説で、長年にわたる誤った経済政策運営によりベネズエラの経済・社会は深刻な代償を払っているが、同国の最大の債権国である中国も、法外で甘い条件での貸し付けが大きな問題を生むことを学んでいる、と指摘しています。」
「ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は緊急資金援助を求め中国とサウジアラビアを訪問したが、明らかに何の成果もなかった。投資家たちは、ベネズエラのベンチマーク国債を「デフォルトの危険あり」のレベルまで落とした。」
「ベネズエラ最大の債権国である中国にとって、これは重大なことである。この状況は、中国が続けてきた、ほとんど条件もなく、透明性のないままに、多くの場合は資源を対価に多額のローンを提供するという形の対政府資金援助の実情を中国に付きている。」
「中国は新興国に対し気前よく大金を貸しており、ここでベネズエラでの経験から貸出条件を厳しくすると国際的な開発環境に大きな影響を与える可能性がある。しかし、中国が「底なしの貸し出し外交」(open-wallet diplomacy)に制約を加え始めたのはベネズエラだけではない。ジンバブエは、昨年100億ドルの救済パッケージを断られ、約束された20億ドル貸付には具体的な石炭鉱山のプロジェクトおよび将来の採掘による税収が担保とされた。中国は、世界銀行やIMF、アジア開発銀行といった多国間機関が貸し付けに厳しい条件をつけるにはそれなりの理由がある、ということを学んでいる、と指摘しています。」
AIIBにこぞって参加した後進国は中国の(慎重な融資審査しない)乱暴な融資決定を期待していたでしょうが、イザ始まると意外に中国も厳しい審査をする可能性があります。
後進国相手のインフラ受注では、中韓は無茶に有利過ぎる(ほぼ出世払い?)支払条件で日本等先進国から受注を奪って来ましたが、上記のとおりの結果が出て来ました。
インドネシアの新幹線受注も支払い条件が無茶過ぎて日本が土壇場で奪われたことが知られていますが、経済原理無視の無茶な受注で表向きの受注実績だけ拡大しても先がないことが分らないのです。
これが民営ではなく国有企業だから出来る(出血輸出が続けられるのも原理が同じです)ことですが、経済原理に反した投資をしていれば、時間の経過・結果的に国家経済を蝕んで行きます。
インフラ工事代金支払いが出世払いのような契約では、さすがに中国政府の資金が続きません・・あちこちで受注だけして放りっぱなしの工事が一杯あると言われています。
こんな無茶な受注が出来ていたのは、中国の将来性を囃し立てて外資がドンドン流入していたので、その資金転用が出来ていていたからに過ぎません。
中国の民度限界が見えて来て外資が引き上げ始める・・あるいは新規投資が減り始めるとこれまでの大判振る舞いの支出(軍事費だけではなくいろんな分野の支出)を絞るしかありませんが、一旦広げてしまうとこれが難しいのです。
特に、アフリカ等へ使ってしまった資金をどうするかで困り始めます。
中国の3兆ドルの外貨準備と言っても日米欧に対するものは公表額面どおりの価値があるでしょうが、中国の場合公表数字自体が当てにならない上に、その他の構成比が不明・・額面どおりの価値があるかどうか不明と言われる所以です。
対日投資の増減発表でもルクセンブルク経由など複雑化していて、その多くは中国スジの資金として推測されているだけです・・敢えて不透明化を狙っているのでしょう
内容がはっきりすると困ると言うことは本当は?と誰もが憶測を逞しくしたくなります。
外貨準備3兆ドルと言っても中身が薄いのを世界中が知っているから、中国がある日決済資金不足でデフォルト直前になってしまわないか?中国リスクを世界中が気にしています。
この心配が中国からの資本流出の動きを加速します。
外資のうち工場設備等に投資した資金は簡単に逃げられませんから中国は「釣った魚に餌をやらない」と言う露骨な政策で強気ですが、何やかやと言いがかりをつけては支払を遅らせるので、新たな外資も警戒して入るのが減って来ます。
国民の方も輸入代金を簡単に支払わせてくれないと「そんなに苦しいのか?」となって、疑心暗鬼が募りいわゆる隠れたホットマネーの流出と国民の海外資金逃避が始まるとどうにもなりません。
外資とのせめぎ合いだけならば、純債権国かどうかが大きなポイントですが、人民からの外貨両替要求になって来ると外貨準備がいくらあっても間に合わなくなります。
まさか国内流通紙幣を全部ドルで買い上げるのは不可能ですから、国民が国内流通紙幣を次々とドル交換に持ち込むようになると際限がない・・底抜け状態になります。
銀行の信用不安→我先に預金払い戻しを要求すれば、取り付け騒ぎになりますが、この場合中央銀行が紙幣満載のトラックを乗り付ければ騒ぎが収まります。
しかし、外貨であるドル交換要求殺到の場合人民銀行がドル紙幣を無制限印刷して供給するわけには行きませんからこの手は使えません。
外貨への交換制限しかないでしょう。
物資不足による配給制度を貨幣に応用したことになります。
外貨不足の最貧国では臨時に外貨割当制が取られることはありますが、・・IMFで昨年秋にSDRに採用されたばかりの中国が、これをしなければないとはこれほどの屈辱的なことがあるでしょうか?
中国の外貨危機・交換制限は外資による売り浴びせによるばかりではなく、国民の政府不信によるとすれば世界史上初めて新手の金融危機の始まりです。
今はその取り付け騒ぎの一歩手前・・人民が外貨準備攻防の主役であるからこそ、昨年から国民の外貨交換条件をドンドン厳しくしているのは恥も外聞もなくした政府としては正しい政策でしょう。外貨両替制限の内容を以下に紹介しますが・やり過ぎっぽい印象です。
ここまでやると人民は余計政府を信用しなくなり・・いよいよ売り抜けに工夫を凝らすようになるでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-03/OJ6XGS6S972D012017年1月3日 15:34
資本流出リスクを警戒する中国当局は、新年を迎えるに当たって個人による人民元の外貨への交換について要件を追加した。」
詳細紹介を省略しますが、知りたい方は上記にアクセスしてご自分で入って下さい。
要点は誓約書に違反すれば3年間外貨両替出来なくなる外、マネーロンダリング調査対象・・ブラックリストに入ると言うことで、正規ルート利用者は震え上がってしまい・1年分枠を一度に使い切れなくなりました。
その頃に日経新聞に解説が出ていましたが、正月明けに1年分の限度額一杯の両替請求がドット出ると投機筋が見て空売りを膨らませていたのですが、政府はその裏をかいて(上記具体的使い道の誓約書記載義務)成功したことになります。

中国バラまき投資の限界1(ベネズエラ危機2)

中国が逆ざやのアメリカ国債を買わされるのは不満ですが、買わないで貿易黒字だけを積み上げるのではアメリカが怒るし・・かと言って、資本流出に直面していて人民元を買い支えるしかない・大暴落では現在のベネズエラのような事態が待っています。
逆ざやにならないように自国金利を日本のようにアメリカ以下に下げられれば良いのですが、金利を下げると資本がさらに逃げて行くのでそれが出来ないので「どうにもならない状態です。
中国は仕方なしにアメリカの顔色を窺っていたのですが、この1〜2年資本流出が激しいことから、人民元防衛のためには背に腹は代えられない・人民元の買い支え用資金としてアメリカ国債をドンドン売ってしまい、今では日本よりも少なくなってしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6565.php
「米国債最大保有国が中国から日本に、元安防衛で外貨崩し」
2016年12月17日(土)20時37分
中国が世界最大の米国債保有国の座を日本に明け渡した。下落が続く人民元を支えるために外貨準備を取り崩しているからで、円安が進むのを好ましく思っている日本と正反対の事情が背景にある。
投資家は中国の米国債保有動向から目が離せない。もしも大規模な売りがあれば、ただでさえ上がっている米金利に一段の上昇圧力が加わり、それがドル高/人民元安の加速をもたらしかねないからだ。」
シンガポールのフォーキャストPteのエコノミスト、チェスター・リャウ氏は「中国は人民元相場維持のためにドル(資産)を売っているが、日本は円安を喜んで放置している」と指摘した。
人民元の対ドル相場は15日、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げと来年の想定利上げ回数の上方修正を受け、8年ぶり余りの安値に沈んだ。」
中国としては南シナ海問題で中国の主張を認めないアメリカに対する意趣返しもあったでしょうが、アメリカ国債をドンドン売られるとアメリカは黙っていられない・・「黒字だけのいいとこ取りは許さない」(「黒字を減らすかアメリカ国債を買いますか!いやなら関税45%」)と言うトランプ氏の強烈な対中批判になって来たことになります。
中国はオバマの弱腰を前提に南シナ海で中国批判するならば・と言う脅し?でドル売りを仕掛けて見た積もりだったでしょうが、トランプに一喝されてみると、中国としては年間6000億ドルも黒字を稼ぐアメリカ市場を無視出来ないので・・引き下がるしかありません。
しかしアメリカ国債を売らなければ資金繰りがつかないし、輸出を減らすわけにも行かない・・どちらも出来ず進退窮まっていたのですが、北朝鮮情勢緊迫化を利用してアメリカの言うことを聞くカードを切れたことによって、為替操作国認定を避けるのに成功しました。
経済原理に基づく解決の道を探せなかったので、政治の場での譲歩・・・南シナ海の譲歩よりは傷の浅い北朝鮮を渋々切り捨てたことになります。
遂に切り捨てられた北朝鮮が正面から中国批判を始めたことがこの数日出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170504-OYT1T50079.html       
圧力強める中国に北朝鮮の不満爆発…対立激化2017年05月04日 23時08分
【ソウル=中川孝之】北朝鮮の朝鮮中央通信が3日、中国の政治家らが「敵対勢力とぐるになり、残酷な制裁にしがみついている」と異例の名指しでの中国批判を展開したのに対し、中国政府が4日、「我々は公正だ」と反論するなど中朝対立が激化している。 トランプ米政権に同調して圧力を強める中国に対して北朝鮮が不満を爆発させた形だ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7540.php
北朝鮮が初めて中国を名指し批判
5月3日、北朝鮮中央通信社(朝中社)が中国を名指しで批判した。北朝鮮が中国を批判するのは、これで3回目。しかし、名指し批判をしたのは初めてのことだ。
アメリカ景気の底堅さ・失業率改善などを背景にアメリカ連邦準備理事会での金利上げ決定近し・・とマスメデイアが15年来囃し立てていますが、経済原理によれば経済力差に金利が連動すべきであってこれを無視してアメリカ連銀が低金利政策を長期間維持するのは無理なことが下地にあります。
経済力(実際には償還能力)がなくとも旧家・名門であると言うだけで安い金利で借りている旧家のようなものです。
日本の異次元緩和には、アメリカと違って出口戦略がないことを批判するのが一般的論調ですが、日本経済が世界最強経済である以上最低金利しかないと言う根本が無視されています。
・・・もしも逆に世界最強の日本が金利を上げると世界中の資金が(円キャリー取引の逆張り)日本へ吸い寄せられてしまうので世界中がこれに負けずに揚げるしかないので、世界大恐慌が起きてしまいます。
イエレン議長が15年暮れ頃に金利上げ出来ない理由として「今上げると中国経済が持たないと言う説明していましたが、日銀の金利政策が世界の中央銀行の役割になっているのですが、これを誰も(政治的配慮で?)言いません。
2番手経済のアメリカが金利を上げる気配だけでもこの1〜2年世界中が右往左往しているのですが、日本が仮にアメリカの金利よりも挙げると言い出したらどうなるかちょっと考えただけでも分るでしょう。
償還能力・・信用に反比例して金利が安くなっているのが経済原理ですから、この20年あまり日本が世界最低金利になっているのは日本の信用力がそれだけ高まっていることを表しているのであって・有事のドルから有事の円に変わっていることもこれを示してています・・日本の不景気とは関係がありません。
A国よりも信用のない国は不景気でもA国よりも金利を下げられません・逆に高くしないと資金が流出して大変なことになります・・この原理を無視してアメリカは実力以上に安い金利で資金を腕力で還流させているのですから長期的に無理があります。
出血輸出で象徴されるように中国の貿易黒字は次第に縮小に向かっている・・中国投資に妙味を感じなくなった外資が逃げ始めた・・資本流出危機で苦しくなった中国にとっては、逆ざやになっているアメリカ国債を売って資金繰りを何とかしたいのは経済の原理から言って当然でアメリカに「腕力だけで」売るな!と言われても経済原理に反したことに長期間従わせるのは無理があります・・。
ところで、中国の3兆ドルの外貨準備と言っても(仮に公表どおりに外貨準備があるとしても)その内容に疑問符があります。
中韓はアフリカその他後進国への投資・・・政治的思惑から、不採算事業をむやみに受注する傾向→結果的に工事代金が(不良)債権になっている・・高利回り債券保有率が高いと言われていますが、これらの多くは資源下落による悪影響をモロに受けている・最貧国・後進国や新興国中心です。
資源国は資源下落→新興国で経済失速が始まった上に15年以降アメリカの異次元緩和政策からの出口戦略が始まる予測→アメリカの金利が上がれば似たような金利でリスキーな投資する人が減る・・資金引き上げリスクに直面しています。
中国の投資先の多くはアメリカの金利上げ予測による資金引き上げに直面していてデフォルト寸前です。
新興国に対する中国の債券?は額面が大きく表面金利は高いものの、実勢相場が大幅下落していて中国がイザと言うときに換金出来る・・回収すべき債権・・ドル換金出来る資金にはなりません。

国債の合理性2

ちなみに親に遺産がなくて相続放棄した件数は司法統計をちょっと見ただけでは(更に深く入らないと)分り難いのですが、以下の記事によると年間18万件程度らしいです。
https://seniorguide.jp/article/1002122.htmlの記事によれば、2016/5/5 00:00
「裁判所の統計によれば、平成26年度の「相続放棄」の届出数は「182,089件」に達しています。」
ところで、一人の被相続人の相続放棄には、第一次的に平均的に妻子3人がやり、次いで被相続人の兄弟姉妹もする必要があるので、(最近の死亡例では、我々世代以上が中心で兄弟4〜5人が多い)私の事務所で担当する事件では、一人の被相続人のために5〜6人以上が放棄手続するのが普通です・・。
裁判所は申し立て人一人に付き1つの事件番号を振るので、受理件数が18万件の場合、相続放棄される被相続人はその6分の1前後→3万前後しかいないことになります。
ところで26年死亡数は厚労省の統計http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/dl/gaikyou26.pdfによれば、以下のとおりです。
「死亡数は127万3020人で、前年の126万8436人より4584人増加し、死亡率(人口千対)は10.1で、前年と同率であった」
債務の方が多くて死ぬ人・・相続放棄された親の死亡は年間約3万人・・何と約40人に一人と言うことです。
40人中39人の子供らは遺産を受け取る側に回っていることになります。
生活保護受給者でも子供になにがしか残したくてコツコツためている人が多いのには驚きますが、親心とはこういうものです。
メデイアは世代間不公平と言い、如何にも次世代が損をするような宣伝しますが実際に親から受けた恩以上のことをする次世代がそんなにいるとは思えません。
徴税と国債の関係も同じで、政府にとっては国民から必要資金を吸い上げる方法が、強制によるか任意拠出によるかの違いでしかなく無理ありません。
強制的に税でとるより国債を買いたい余裕のある人に進んで買って貰う方が公平です。
資金を持っていても有効利用出来ない資金を不景気のときに政府が国債で吸い上げて有効利用するのは合理的ですが、税の場合有効利用したい・・出来る企業家からまで吸い上げ、強制徴収してしまう弊害があります。
企業家よりは政府の方が資金を使うのが上手だと言うのは、今の時代当たりません。
国債は使い道が分らないで保有している国民の資金を任意吸収する点でも合理的です。
年数千〜数百万円を何十年も納税していても何の恩恵もありませんが、お祭りで沢山寄付する人は上席に座らせてもらえるように、国債購入者は年間一定の利息と言う形の還元がされます。
そのうえ、収入の多いときに何十年も多額納税していても、事業失敗・倒産等で失業や生活保護に転落しても過去の多額納税分を他の人と別に割り増しで優遇給付を受けられません。
国債の場合後になって困れば売却して必要資金に当てられるし、使わないで終わっても子孫へその権利を引き継げます。
主君へ勲功のあった武士の功績が子孫へ引き継げたのと同じです。
しかも国債はお金があっても買いたくない人は買わなくとも良い任意性ですから、国民の支持が必須・・なおさら公平です。
税の場合、刑罰の強制がある本質があることから分るように選挙の洗礼があるとは言え国民の支持が間接的ですが、国債はイヤな人は買わなくても良い点で民意そのものになります。
地域のお祭りは寄付が集まらないと縮小して行くしかない・・支持が大きくなるとお祭りの規模が大きくなるのと同じで、民意そのものです。
集めてしまった税金の使い道を国会で決めるよりは、何か大きな国家事業の度にその出費目的の国債投資・・ファンドを募れば国民の目も厳しくなり、より民主的になるでしょう。
弁護士会の予算審議でも同じで、既存規定の支出項目のチェックはツイおざなりになりますが、今年この事業を行いたいので、何十年前に決まっている会費とは別に特定事業のために会員一人当たり何千円の拠出を求める場合の方が、会員の質問その他が多くなり関心が高まります。
官僚が任意拠出・・国債を嫌がり既存の法による強制徴収にこだわりたい本音が分るでしょう。
税体系は複雑で過ぎてその税がどの政策目的に使われるかを(揮発油税などを除いて)原則として決めていません・・。
税は国会の議決がないと取れませんが(租税法律主義)、抽象的にある行為・結果に税を課すと言うだけで、その税を何に使うために必要かを国会で議論しない仕組みです。
予算審議もその支出の必要性だけであって、どの税がこの予算支出に使われるかも決めていません。
この結果予算審議と言っても支出の妥当性に関心が集まる傾向・・揚げ足取りに終始するかなくなるように見えます。
まして消費税になると間接的過ぎて目に見え難く何の抵抗もありませんが、その分社会が疲弊する・西欧の高率消費税が社会の活力を蝕んで来た・植民地を失ったことが基礎にあるとしても・・西欧が消費抑制に邁進していることが停滞の大きな原因の1つでしょう・・ことは事実でしょう。
現在社会は消費力こそが基礎ですが、西欧では消費を標的にして来た結果、消費社会の発達が阻害されている結果をメデイアやエコノミストは全く論じていません。
現在社会は消費力の競争であると言うテーマでAugust 16, 2016「消費力アップ4と世界的減税潮流の基礎1」前後で書いてきました。
この考えは、実は全額日銀引き受けになると様相が変わって来ます・・政府は国会さえ通過させれば(民意無視で)何でもやれてしまうようになるのか?これは後で別に書いて行くことにします。
国債による政府資金の手当方法は、国民に買って貰っている限り申し分のない公平な制度ですが、外資が購入者になると外資に支配されてまう・・ここに本質的問題性があるでしょう。
例えば中国が日本の国債の9割を保有していても、日本がその数倍の外債を保有していれば、中国が日本潰しのために売りに掛ければ日本は他の外債を売って買い支えが可能ですから、要は対外純資産国か否かであって国債残高と関係ありません。
中国が4兆ドル近い外貨準備があると豪語していたのに、あっという間に(今年1月末に)3兆ドル割れになったのは、それ以上の対外債務があるか否かによるからです。
上記のとおり、税の強制徴収よりは国債売却による資金吸収の方が、ずっと公平であることを国債と税の違いを以前連載したことがあります。
ついでに年金赤字について書きますと、年金制度をやめたり支給額を減らす・・高齢者の医療保険や介護保険給付を減らすと誰が困るか・・多くは、子供の負担が増える(遺産が減る)関係です。
親と言うものは貧しくとも少ないなりに何らかを子供に残しておきたい親が圧倒的多数です・・(生活保護の場合でもへそくりしてためているのが普通です)。
医療保険の負担率が仮に1割から3割に上がっても、多くの場合高齢者がその分子供に出してくれとは言わない・・生活費を切り詰めるでしょうが、結果的に子供に残す預金が数千万〜数百万円から千数百万円〜百万円前後に減るような関係になります。

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