中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)2

中国国内事情からすれば金融緩和を続けたいところですが、アメリカが金利を上げれば中国が追随しないと資金流出リスク→人民元の下落・貿易黒字が更に増える・・これ以上の貿易黒字をトランプ政権が容認出来ません。
この3月以降の米国金利と中国の金利の流れは以下のとおりです。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017 年 5 月 9 日 15:27 JST 更新
 FRBは3月FOMCで政策金利の引き上げを決定。米経済が力強さを増す中、FRBが新たな政策局面に入りつつあることを示唆した。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017年3月16日 13:01 JST 更新日時 2017年3月16日 14:50 JST
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中国人民銀、オペ金利とMLF利率引き上げ-米利上げ後
人民銀はこの日、7日物と14日物、28日物リバースレポの利率をそれぞれ10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げた。引き上げ後の利率は7日物が2.45%、14日物が2.6%、28日物が2.75%。2月上旬にも10bpの利率引き上げに踏み切っていた。
 また、人民銀はMLFを通じ期間6カ月と1年の流動性供給も行った。利率はそれぞれ3.05%、3.2%と前回から10bp引き上げられた。」
上記のとおりアメリカ金利政策に追随するしかない中国経済は、一方でマネーサプライを増やして何とか凌ごうとしていますが、それが一方で商品・不動産相場過熱などバブルを煽ることになっています。
一方で紙幣大量発行しても金利引き上げ引き締め政策は、GDP比280%と言われる過剰債務構造を直撃します。
早速中国政府スジからは「金融引き締めはしない・中立だ」と言う発言が4月下旬ころに出たようです。
・・この人が発言した翌日から行方不明と言われてますが・・発言が原因の失脚ではなく、権力争いの彼・・李克強系実務官僚に及んだと言う憶測です・・。
中国としては、バブル崩壊も困るし・・引き締めしないままで資金流出加速も困るし(外貨両替規制の強権だけで凌げるのかの悩み)・・と言う板挟みで揺れ動く金融政策担当者の悩みを表しているのでしょう。
にっちもさっちも行かない・・政治と言うモノは「あちら立てればコチラ立たず」の矛盾関係こそを裁くべきものです。
これが政治の苦しいところですが、ときに引き締めを緩めたり引き締めたり・その合間にマネーサプライを増やしたりの試行錯誤している半年〜1年くらいの間に中国経済がどうなるかです。
すでに今年も5月末になりましたが、5月21日冒頭に書いたように上海デズニーに毎月に100万人も押し掛けているようでは、政府が困っていても個々人末端の懐具合がそんなに悪くなっているようには見えません。
日本の財政赤字と同じで、中国人民は懐に一杯資金を持っているが政府だけが苦しいのかも知れません。
もともと人民にお金がなければ巨額賄賂を出す原資がありません・・政府は税をあまり取れない・官僚の給与も高くない代わりに賄賂で賄って来たことをMarch 30, 2017,「騙しあい社会3(賄賂の基礎2)前後に書きました。
清朝時代には版図が最大であったと言っても支配下に入ったと言う名目だけで、今のようにマトモに税を取れていなかったと言われます。
ちょっと前に税収弾性値のコラムで書いたように、改革開放頃にも前近代のママで超税率がもの凄く低かったのが改革開放後年々徴収率上がっていたのでGDP比税収弾性値が高かったが、この数年は徴収率を上げるのが限界・・今後は今までのよう徴収率を上げられない・だから最近のGDP比弾性値が下がっているとも言われています。
人民はしこたまお金を持っている・・だからこそ人民がお金を持って外国へ逃げたくなる(人民元の外貨両替が多い原因です)し、人民が外貨に変えて逃げないように人民に対して外貨両替規制を厳しくしているのです。
昨年末からの急激な両替規制によって、海外への資金逃げ場失った個々人の資金が国内に出回って・過剰流動性になって、不動産・商品相場バブルを一時引き起こしていると言われました。
日本のいわゆる失われた20年・・・需要不足を下支えするための財政投入・・財政赤字の場合には、その間も国際収支黒字が積み上がり対外純債権額も積み上がるばかりでしたから、エコノミストが騒ぐような赤字国債累積とデフォルトの関連性がない・・と言う私の意見をJanuary 19, 2011,「失われた20年??1」以下で連載しました。
バブルの螺旋状繰り返しがいつまで続くかですが、過剰流動性供給で無駄遣いを続けられるのも国際収支次第ですから、中国の場合も結局のところ国際収支の内実がその限界を分けるでしょう。
中国国際収支の実際はどうでしょうか?
2017/04/30「中国やりくりの限界(税収弾性値1)3」の続きになります。
http://biz.searchina.net/id/1610739?page=1
日本は世界一の債権国!しかも25年連続、中国とは「資産の質が違う」中国メディアの騰訊は「日本の対外純資産残高が5年ぶりの減少となった」としながらも、日本国内の見方を引用し、外国人投資家が保有する日本の株式の価格上昇によって対外負債残高が増加したことが対外純資産残高が減少した理由と伝えた。
記事は、日本の対外資産残高は前年比0.7%増となり、7年連続で増加し、過去最高となったと伝え、日本企業の国外での買収や直接投資が増えたことが理由と紹介。
さらに、主要国の15年末における対外純資産は2位がドイツで、3位が中国だったとしながらも、中国は192兆3700億円と、日本の56%の水準にとどまっていることを伝えた。
中国は約2兆ドルもの対外純資産を有しているが、14年の経常収支における所得収支は298億ドルのマイナスだった。
これだけ巨額の対外純資産を持ちながら投資収益率がマイナスであることが「中国の資産管理における最大の問題」という見方もある。
日本の場合は対外純資産を通じて莫大な利益を獲得しており、中国と日本の対外純資産は「質」が大きく異なることが分かる。」
サーチナによれば上記のとおりですが、一般的に考えれば純債権国は利子・配当を受け取る方が多いの普通です。
例えば500万借りている人が800万投資している場合、受取利息配当の方が多いのが普通の資金運用と言うべきですが、中国の場合何故か収支マイナスと言うのですから不思議です。
借りるときは高い利息で貸すときは安い利息・・運用が下手と言わんかのような説明ですが、本当でしょうか?
最貧国等への投資の場合ハイリスクハイリターン・・利回りが高いのが原則です。
焦げ付き債権を損切りしないで持っているだけではないでしょうか?
元々中国の場合公表数字が当てにならないので、純債権国とは見せかけだけで純債権国の触れ込みが怪しいのですが、もしも数字が正しいとすれば、・・不良債権を消却しないで債権に含めているとすれば・・実質は純債務国かも知れません。

ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)2

資金力だけでも、美術品のまとめ買いやスパイを使って最先端軍事科学や技術を真似出来るし買えますが、自前の文化を一挙に育むには無理があります。
似た水準にあれば勉強になりますが、全く素地のないところで他国文化財をまとめ買いして持ち帰って真似しても?焼き直しでしかなく、自国文化が生まれませんし、産業分野でも巨費を投じてスパイするほどのメリットのない民生分野ではスパイに馴染みません。
中国やロシアが宇宙にロケットを飛ばせてもマトモな電気釜やウオッシュレット・化粧品1つ作れない・・これが訪日中国人の爆買いの原因です。
中国は重工業あるいは代表的家電製造技術を充分学んだので最早日本に用がないと誤解して反日暴動を仕掛けたのですが、人民の生活水準が上がって来るともっと裾野の技術が必要と漸く分って来たようです。
そこで、もう一度日本へのすり寄りが始まったのですが、工場誘致して現場で学ばない限り作れないのを理解していることは、中国は工場誘致に必死になっているのを見れば分ります・・民生分野の底上げをするにはまさに民度レベルにかかっています。
軽工業から重工業へと言う産業進化を学校では習いましたが、スパイ国家では重工業や宇宙産業が先に開発され、民生用軽工業は後回しになります。
中国の場合、国がロケットなどの超高度技術をスパイが入手している関係で、民間も知財や産業秘密剽窃になんら罪の意識が育たないようになっている様子ですが、具体的現場技術は、民生用工場や環境保護用の工場誘致によって、実地で学ばない限り身に付きません・・そこで工場誘致に必死になって自国民がどの程度まで作れるようになるかの挑戦に今や必死です。
ところで、技術だけはある程度のものを作れても最後は文化発進力の有無が決め手になりますから、中国が現在的な独自文化発信国になれるかどうかが重要です。
その点はどうか疑問がありますが、中国はアメリカと違い正面から挑戦・努力する意欲があるだけマシでしょう。
22日の日経新聞朝刊3pで工作機械大手ヤマザキマザック社長のインタビューが記事になっていて、中国向け工作機械は省力化投資に躍起の状態で受注が伸びているが、アメリカではこの2年工作機械受注が低迷していると出ていましたし、今朝の日経朝刊15pでは、日本の工作機械の中国からの受注は今年4月には前年同月比2、4倍と言う猛烈拡大になっているようです。
両記事を読んでいると中国は省力化投資について行けず淘汰される旧式設備企業や人材が余ってもそれはそれとして、兎も角近代化出来る工場から近代化させたい・・深圳特区同様に「やれるところからやって行く」前向き姿勢・・意欲が高い印象を受けます。
人口が多いから成功する企業が少しでも出れば、長期的に社会全体のレベルを引き上げられると言う姿勢のようです。
つぶれたり、失業するのは自己責任・・そんなことにお構いなし・・気にしていると国際競争に負けてしまう・・勝てる産業を1つでも二つでも先ず育てるのが先決と言う姿勢が垣間見えます。
これが中国産業のバイタリティーでしょう。
この結果国が分裂して別の国になるかどうなるかには全く関心がない・・元々国家・社会・「公」・の意識が育っていない宗族・血族意識が基礎になっている中国人には元々関心のないことです。

アメリカの傲慢と中国の適応力2

5月19〜20日に書いたように中国は(国内向けに劣等感の裏返しで)格好付けのためにする対外強硬意見ばかり日本で報道されますが、国内ではしこしこと公害であれ礼儀であれ謙虚に学んでいるように見えます。
他方でアメリカは超大国の威信にこだわり何も学ばない・日本に対して理不尽な要求を押しつけてくるばかりですから、長期的に見て学んだ国と学ばない国との違いが出て来る筈です。
米中共に今はローエンド製品向け民度中心であり、人口大国で(広大な領土保有)共通しています・・ハイエンド技術に上がれる人は限られるので、その他の巨大人口をどうするかの問題に直面することは同じです。
同じならば、学ぶ意欲のある中国の方が、(まして、製造現場が微細技術中心になると、欧米人よりアジア人の方が基本的に器用です)アメリカよりも適応力がある・・民度が伸びる可能性があると言う意見になります。
5月20日の日経新聞朝刊では、上海デズニーランドの入園者が、開園10ヶ月で1000万人突破・・予定どおりで順調と出ています。
開園直後で批判の多かった入園者のマナーも批判を受けて良くなっていると出ています。
また日本国内経済に目を向けると5月20日日経朝刊では、国境をまたいだ通販の発達で訪日観光客が帰国後資生堂などのリピーターになっている状態が報道されています。
帰国後リピータ買い増加の結果、化粧品の輸出が過去3年で倍増し、化粧品だけの貿易収支では、史上初(今までは西欧ブランド品の輸入額の方が多かった)・・・輸出が輸入を上回るようになり、資生堂などは国内工場の増産投資をすると出ています。
その他省力化投資が盛んで、ロボット製造大国の日本企業が潤っている経済ニュースが従来から出ています。
「財政投入で持ちこたえているだけだから資金切れになれば直ぐに行き詰まる筈」と言う批判論ばかり見ていると中国の企業は気息奄々で、従業員もいつ解雇されるか心配している筈ですが、そのような説明では末端消費の力強さと矛盾します。
財投で景気の下支えをしながら着々と省力化投資に邁進している様子が、対日発注の変化から見て取れます。
海外観光客数や国内自動車購買数その他・・末端消費の実数をみると、それだけの消費者が育っていることは確かです。
クルマの年間販売が数年前には2000万台規模だったのがいつの間にか2800万台前後で安定するようになっています。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2016
2016年の中国新車販売は前年比13.7%増の2,803万台
中国汽車工業協会は12日、2016年通年の自動車生産・販売台数がともに過去最高を更新したと発表した。
・2016年通年の生産台数は前年比14.5%増の2,811.9万台、販売台数は13.7%増の2,802.8万台。伸び率は2015年と比べ生産が11.2ポイント、販売が9.0ポイント上昇した。
・乗用車の2016年通年の生産台数は15.5%増の2,442.1万台、販売台数は14.9%増の2,437.7万台となり、伸び率は自動車全体と比較すると生産が1.0ポイント、販売が1.3ポイント上回っている。」
以下はアメリカです。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2016米新車販売、2016年通年は0.4%増の1,755万台で過去最高
「オートデータが4日に発表した12月の米国新車販売台数は、前年同月比3.1%増の169万429台となった。12月の季節調整済み年率換算(SAAR)は1,843万台/年だった。
・1-12月の米国市場の累計販売は1,755万351台で前年同期比0.4%増となり、これまで過去最高であった2015年の1,747万9,469台を上回り、記録を更新した。
・12月の販売は営業日が1日少なかったが、週末が5回あったこともあって前年同月比で3.1%増となった。」
中国では景気対策のために、小型車の減税があったと言え、その程度の臨時優遇策・・(アメリカでは、ガソリン値下がりで良く売れたと言われます)駆け込み需要はどこの国でもあることですから、全体的に2500万台以上の安定した消費力があることが重要です。
また伸び率で見てもアメリカが金融緩和出口戦略で「景気が最高潮」と言うにしては、アメリカ3%に対して不景気な筈の中国が13%増と大幅な違いです。
まだクルマが十分普及していないことから、伸びシロが大きい点があるとしても、絶対数で見てもアメリカの年間1775万台ベースと2800万台を比較すると(事業用も含むので個人保有とは限りませんが一応の目安です)クルマ購入層の人口がアメリカの約1、6倍もいることになります。
人口比の普及率の比較を書いているのではなく、中国の景況がどうかの基準で言えば、着実に安定成長している傾向が見えます。
上記のとおり中国は中国なりにキャッチアップに努力していることが分りますが、さしあたりアメリカの金利上げに追随するしかない点をどうするかが当面の難所
です。
3月15日発表のFRBの金利0、25%上げ・・今後金利上げが引き続く場合・・中国に最後のとどめを刺す始まりになるかはこれからの展開次第です。
EU危機で南欧諸国は不景気でもも独自の金融緩和・金利下げ出来ない難点が世界で認識されましたが、世界経済が一体化しているので、アメリカの金利上げに世界中が影響を受ける点では似たようなものです。
経済力の弱い純に金利を少しでも高くしないと金利の高い国に資金が逃げられてしまう・・たちどころに資金不足に喘いでしまいます・・資金不足・・不景気対策に金融緩和・主権国家だから紙幣をいくらでも増発出来ると言っても、為替相場がそれに比例して下がるので、輸入に必要な外貨を入手出来ない点では同じです。
これが現在進行中のベネズエラ危機・・国民が食糧難に喘いでハイパーインフレになっている通貨的側面です。
アメリカの金融政策の影響がないのは、多分世界最強経済・・最大純債権国の日本くらいでしょう・・。
日本は約20年ほど前から事実上世界基軸通貨国・・世界最低のゼロ金利政策を採用していても資金が集まる有事の「円」と言われる国になっています。
これこそが基軸通貨国の基準です。
表向き言えませんが・・既に日本は事実上世界の基軸通貨国になっていると言うのが私の意見です。軍事力・・物理的強制力がない程度であって、文化発進力でも腕力や宣伝によらずに事実上世界の底辺層に至るまで日本的生き方が世界標準になりつつあります。
文化発信国家と言う基準では、ちょうどエルミタージュ美術館に関する宣伝?映画が千葉劇場(私の事務所の2階にあります)にかかっていましたのでみて来ましたが、西欧の明がなどの紹介ばかり・・文化受容を自慢していることが中心で自国芸術が全く出て来ないのには驚きました。
もしかして独自文化のない民族って?悲しいものだな・・と言う感想を抱きました。
日本の国立博物館・美術館に行って、日本人の芸術品が1つもなくて海外の名作の所蔵ばかりが自慢はでは悲しくないですか?
今のプーチン・ロシアでは民族主義の固まりみたいに見えますが、自国民族の精神の固まりであるべき自国文化を主張しない民族主義って?ロシアって何のための民族国家なのかさっぱり分らない気がして帰って来ました。

社会保障や国債と世代間損得論2

話題が国債日銀引き受けからハイパーインフレの原因・金利競走に飛びましたが、国債に戻ります。
内部的リスク・・喩えば、国債に頼るとデフォルトの危険・収入以上に無駄遣いしてしまう・・債務膨張するかのような議論もあります。
これもベネズエラの例を見れば分るように債務超過国の例を超優良資産家・・喩えば、百億前後の資産家が、5〜10万円程度の日用生活品をカードで購入すると知らず知らずの間に無駄な買い物をして借金が膨らんで危険だと議論しているようなもので・・当面と言うか中期的には全く意味のない議論です。
今のところ、赤字国債発行が危険だと大騒ぎすること自体が何とかして日本の内政混乱させたいと言う?「ためにする議論の疑い・・」ではないかの疑いがあります。
官僚の立場を勘ぐれば、古代から続く徴税仕組みを守りたいと言う郷愁が、官僚を奮い立たせているだけではないでしょうか?
強制徴収の税の比率をドンドン下げて税の比重を最低限にして行き、何かのプロジェクトごと・・補助金ごとに国債で賄う比率を上げて行く・・特定目的の国債発行で信を問う方が納税者の意見反映が容易で合理的ではないかの意識でこのシリーズを書いています。
プロジェクトごとの国債が各分野に広がると社会保障税も出来るだけ民営化して行く・・民間保険に委ねる方向に繋がるでしょう。
飛行機にエコノミーからビジネス、ファーストクラスがあるように、保険加入レベルに応じたサービスがあってもいいように思えます。
強制徴収による公営保険は最低限の医療や介護を保障するもので良い・・最高レベルの医療まで含めるのは社会保障の枠組みを越えています。
国債の場合、払いたい人に払ってもらう・・その代わりいつでも返す・・市中売却による回収仕組み・・評判が悪いと市中売却値が下がる・この評価システムが何故悪いのか不思議です。
官僚や為政者にとっては税の強制徴収・税率さえ決めてしまえば、税の場合何に使おうと事実上勝手です。
(国会審議が間接的にあるだけ・保険で言えば、給与天引きの保険料率さえ決めればその先何を保険適用にするかは審議会で決める・・国民の直接意見は無視出来ます)
強制出来る税や保険方式の場合、個別政策に対する市場評価を無視出来る便利な点が好ましいのでしょうか?
5月4日の日経新聞5p「中外時報」で地方自治70年のテーマの記載を読むと、大規模施設建設などの場合に住民投票制度創設案を総務省が作ったが自治体首長の反対で立ち消えになっている例が出ています。
(博物館・美術館学校設備ではリターンは無理がありますので、十字軍遠征のファンドやスエズ運河開設のように目的別国債と言うわけにはいかないでしょうが、非営利分野は神社仏閣の新造営のために行なわれてきた「勧進」のように篤志家の寄付で良いのではないでしょうか?
寄付や国債の任意購入に頼るには、所得税を安くして寄付出来る程度の資金余力を国民が持てるようにする必要があります。
町内会館の建設資金や、近所の私鉄駅の改造請願のために私も微力ながら応分の寄付をしましたが、全て税で賄うよりは出したい人が出す・・合理的です。
株式や社債を買いたい人に買って貰う・・途中換金したければ市場で売って回収出来る・・政府の国債も企業同様に政策に信用があれば優良株式同様に買って貰えるし、売買の対象になるべきでしょう。
社債発行するとその企業に借金が残り将来が危険と言う人がいないのに、(社債集めた資金で何に投資するかが重要であって社債の規模そのもを「悪」とは言いません)国債を社債と何故違った目で見るのかの問題です。
市場評価を経ていない税よりは・・将来の心配・・社債・国債のリスクは買った人の自己責任の問題です。
まして全量日銀引き受けになって行けば、民間の購入者がいないので暴落による損が起きません・・結局は日本の円通貨の信用性問題に帰して行くでしょう。
通貨の信用性は国際収支の長期的結果によるのであって、国債発行残額によるものではありません。
財務官僚が将来が心配・・と必死になるのは、税で取る方が便利で民間に頭を下げる必要がない・・と言うに帰するように見えます。
税金の場合には、過去にいくら多額納税していても何の実績にもならない・コマたっときにその一割も還付してくれるわけではありませんが、軍功があれば子孫まで領地保障してもらえたようなギブアンドテイクがありません。
国債購入で貢献しておけば豊かなときにはそのまま保有していて、イザとなれば子孫の代でも売却回収して生かせるメリットがあります。
寄付した人には応分の名誉が刻まれる・その程度で良いのです。
良い政治をしていれば、投資した国債をお金にして欲しいと言う人もいても、もっと買いたいと言う人の方が増える・・株式相場と同じで何の心配もない筈です。
政治に緊張感を持たせるには国債相場で使い道を監視するのが合理的です。
日銀の国債引き受けは相場の影響を受けない・・民意無視出来る点が、これまで書いて来た効用とは違って来ます。
日銀引き受けが常態化し、且つ新規発行国債だけはなく既発国債の市中売買にもアタマを突っ込むようになると、市場評価・市場性が完全になくなります。
満期が来てもその借換債を際限なく日銀が引き受けるようになると、政府としては有期限の国債を無期限化した・・政府が紙幣発行権を取得したのと同じです。
紙幣発行権を乱用することがあるとハイパーインフレになると言う心配が旧来理論ですが、私はそうは思っていません。
何回も書いて来ましたが、供給不足の場合に紙幣発行を2倍にすると価格が2倍になる論理ですが、供給過剰下では紙幣だけ増やしてもより多く買いたい人は滅多にいない・・どこの社会にも貧しい人がいますので、少しは購入量が増えますが、先進国ではその程度では工場増産+輸入の容易な現在では増産処理で間に合ってしまいます。
だからいくら紙幣発行しても豊かな社会では物価は上がらない・・その紙幣は円キャリー取引(日本は世界最低金利ですから日本で借りて海外運用したら利ざや分だけ簡単に儲けられる)によって、国外に流出して行きます。
これが資本収支上「円」の流出を通じて円独歩高を防いでいる仕組みですし、アメリカの貿易赤字によって流出したドルがアメリカ国債購入を通じて還流・ファイナンスされている関係です。
中国の場合、自国の経済力を反映して当然アメリカ国債より国内金利が高いのですから、アメリカ国債を買うのは逆ザヤですが政治力学上+人民元を割安にするために無理して買っていた損な関係になることも大分前に紹介しました.。
以下は16年10月までのデータですが、アメリカは0、5%中国は4、35%で約4%以上の逆ざやです。
国債や銀行金利と基準金利とは同じではありませんが、ほぼ比例して行くとすれば、仮にアメリカ国債を1兆ドル保有するだけでも年間400億ドルずつ利息で損をする関係です。
chuugokuhahttps://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「アメリカの政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月   2月   3月    4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月   11月   12月
2016年  0.5   0.5   0.5   0.5   0.5    0.5   0.5   0.5    0.5   0.5
2015年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.5
2014年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25  0.25

中国の政策金利の推移


中国の政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月     2月   3月   4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月
2016年  4.35    4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35  4.35   4.35
2015年  5.6     5.6   5.35   5.35   5.1   4.85   4.85   4.6  4.6    4.35   4.35  4.35
2014年  6     6     6    6     6    6    6    6    6    6   5.6   5.6

民度を上げる→外貨準備減少2

高度成長期以降の地価高騰で潤った千葉の近郊農家の結果を見ると(全部を知っているわけではありません知っている人だけのことです)多くの農家では一時的に羽振りが良かっただけで元の木阿弥になっている印象です・・。
地方に大手工場などが進出した場合、その中で技術を磨いて地元で創業出来る人がいるかと言うとなかなかそうは行きません。
とは言え、日本のゴールドラッシュ時代の安土桃山時代・・今考えると金の大流出・・貿易大赤字時代があってこそ、絢爛豪華な時代の幕が開いたのですが、みんながみんな等伯や永徳、宗達のような芸術家になったのではなく、裾野が広がった結果とすれば、傑物はひと握りで良いのです。
消費生活向上・・遊びの中から、工夫や新しい芸術や新製品が生まれる関連があることは確かでしょう。
日本の現在の世界的評価は、安土桃山の後を受けた江戸時代に庶民の消費生活が世界に先駆けて充実していた結果によると思われます。
消費経験が将来の民度にどう言う影響が出るかは別として、(私なりに最大限中国寄りの意見を書くとすれば)兎も角外貨準備が底をつくまで歯を食いしばってでも人民に消費経験させない限り前に進まないと覚悟を決めたのが中国ではないでしょうか?
雄安新区建設の新バブル構想が今朝の日経新聞にも出るようになりましたが、箱物や土木工事で貴重な資金を使い、人民も金儲け・投機的売買にうつつを抜かしていて健全な消費者が育つかの疑問がありますが、日本でも豪壮な城郭建築が豪華なふすま絵を誘発した例があります。
ところで北京に関しては私は元々北方民族・・女真族が南下したときに侵入した入口に当たる場所・北京を首都としたのは合理的だったでしょう。(北条氏が関東へ進出したときに入口の小田原を本拠地にしたのと同じ)
しかも清朝の支配は、遠くの異民族が服属意思表明していただけで直截支配していなかったので全体の端っこに首都があっても間に合っていました・・。
対外経済中心時代で且つ直截支配下に置く現在国家の首都としては、北京は地理的に偏り過ぎている外、国際交易にも不便・・このママでは無理があると言う意見を元々持っていました。
習近平は鄧小平の深圳特区・江沢民の上海特区の向こうを張って、これに負けないレガシーを残すために雄安親区を計画したもので、(ネット報道だけではなく日経新聞がが報道するようになった以上は)早速権力に媚びる多くの関係者が動き出した模様です。
深圳特区や上海開発は相応の地の利を踏まえて開放政策にマッチしたので成功したものですが、新首都?雄安親区は北京から更に内陸に入っていますから、経済原理からして・・今時可能なの?と言う第一印象を抱くのは私だけでしょうか?
この種の意見は、これまでネットでも出ていませんし、日経新聞にも出ていません・・当面世界的な関心は新バブル創出がうまく行くのか?そんなことばかりで中国経済の先行きがどうなるのか?ひいては世界経済に与える影響に関心であって、外野にとっては「地の利がどうの・・」と言う先のことまで心配してやる必要のないことはそのとおりです。
話題を外貨準備減少に戻しますと、日本のゴールドラッシュのような蓄積がないのが中国の苦しいところで、そのために気前よく使い切れない・・その間の人民元防衛策に必死ですが、内需拡大→貿易赤字ですから、人民元は下がるしかない・防衛するのは元々無理があります。
貿易黒字とは何か?ですが、難しい説明は専門家に御任せするとして、あっさり言えば、国内利用以上のもの生産している国と言うことでしょう。
これを売るのに忙しく折角作ったものを自分が充分に消費出来ていない社会とも言えます。
アメリカの場合巨額貿易赤字を続けて来た・・働くより消費優先だからこそアップルその他新しいものが生まれているとも言えるでしょう。
医者の不養生といいますが、他人の医療に忙しくて自分の健康管理する暇がない状態です。
植民地支配経済・・宗主国向け生産をさせるが植民地下の奴隷的労働階層は自分の作っている物を消費する権利がない・・解放当初の中国は日本の植民地ではないのに日本向け輸出製品専用工場を誘致していました。
多くの後進国政府が外資進出許可するときに、「先進国企業が国内市場を席巻してしまうと困る」と言う理由で国内販売を許可しないか、許可するときには外資の比率を半分以下の合弁しか認めないなどと制限して民族資本が学ぶ機会を与えろと言う条件付きで許可しています。
リーマンショック後の中国の内需拡大政策は、今後は自分が作っているものを自分も消費したいと言う意欲表明とすれば合理的です。
中国が内需拡大に舵を切った以上は、黒字が縮小し外貨準備・蓄えが減って行くのは仕方ないと言うか自分で選択したことです。
内需拡大をやめて経済パフォーマンスを良くしない限り奇策や規制では一時しのぎでしかない・・基礎にある人民元安の流れを止めない限り資本流出圧力をいつまでも塞き止めることは出来ません。
ところで以前出血輸出の構造を書いたとおり、出血輸出をるのは仕入れ資源輸入代金を払うしかないので、付加価値をつけた人民の労賃を減らすしかないので出血輸出などしていられません・・内需拡大=人民に豊かな消費をさせる以上は、貿易黒字が減るのは当然の帰結です。
外貨準備の続く間に消費生活を充実させて消費材を作れる民度に引き上げる・・民度レベルアップ・・これが間に合うかのテスト中と言うところでしょうか?
この覚悟をすれば中国の外貨準備急減を騒ぐことではありません。
転売目的のマンションや鉄道ばかり作っていて民度が上がるかの心配があるでしょうが、この後で書くようにこの数年で中国消費者の消費レベルが上がり・・日本国内製品でないと信用出来ない・・と言う選好が増えて来たことから見ると、短期間に民度アップ出来る可能性がないわけではありません。
この間の食いつなぎ・・外貨準備のうちで(ベネズエラ債?のように売るに売れないものが多いので)市場で売れるものから売って換金するしかないと言う姿勢ではないでしょうか?
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170107/Recordchina_20170107010.html
2017年1月4日、韓国金融監督院が発表した統計から、2016年1~11月末に中国人投資家が韓国の株式市場で売却した株式の総額が1兆5000万ウォン(約1500億円)に上ることが明らかになった。環球網が伝えた。」
表向き韓国のサード配備に対する嫌がらせっぽいですが、韓国には義理を欠いても失うものが少ない・・(韓国の中レベル技術移転はほぼマスターした・今後は韓国企業は競争相手でしかないと言うゲンキンな読みで)と言う切り捨て対象にしただけ・5月6日に書いた北朝鮮切り捨て政策と同じ文脈で見るべきでしょう。
中国は民度レベルアップ→内需拡大による貿易黒字減少は仕方がない・この間のつなぎとしては、換金可能で今後技術移転の旨味のない国の外貨から順に売れるものから売りたいだけではないでしょうか。

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