稼働停止/廃炉の影響1(反対運動の論理)

蓮舫氏の国会質問〜フェイクニュースなどが挟まりましたが、原子力発電稼働停止や廃止と地域経済の影響に戻ります。
http://blogos.com/article/93288
記事
宇佐美典也
2014年08月27日 20:35
原発が止まった原発の街「柏崎」の現状
先日とある人のご案内で久しぶりに柏崎に行ってきました。柏崎刈羽原発を見学に行った後に諸々観光地ご案内して、帰ってきたのですが、彼の地の厳しい現状を改めて感じました。
まずは柏崎市の現状についてなのですが、近年なかなか厳しい状況が続いておりまして、1995年の10.1万人をピークに人口は減り続けており2014年7月現在では87928人となっております。タダでさえ苦境が会ったところに柏崎刈羽原発の稼働停止も重なり、人口減少のペースがやや加速しています。では柏崎の産業が原発に依存しているかというと決してそうでは無く、ブルボン(菓子)やリケン(自動車部品)といった全国ブランドの会社が今でも柏崎で活躍しています。原発は稼働してしまうと基本的にはスタンドアローンで稼働し続けるので、直接の恩恵を受けているのは実際に雇用されている職員や、地元の建設・メンテナンスメーカーなど一部に限られています。
柏崎における原発の恩恵の多くは間接的なもので <①原発立地 ➡②立地対策交付金、使用済核燃料税、固定資産税、法人市民税などの税収増 ➡③市民に還元>という具合になっています。
では柏崎の税収のいかほどが原発がらみなのかということで同市の平成26年度の予算を見てみますと、歳入の484億円のうち、原発関連交付金が26.0億円、使用済核燃料税が5.7億円、その他市の固定資産税90億円の内の2/3程度(50億〜60億円程度)は東電からのもの思われ、総計で毎年合計で80億円〜90億円程度と思われます。
そう考えると市税156億円の内の約半分、歳入484億円のうちの約15%弱が原発からの収入ということになります。こうみると「原発無しでも柏崎はやっていける」というのは市の財務面では無茶な主張ではありますが、市民の生活面では十分可能な話なのかもしれません。
実際一般の柏崎の市民の方が「原発再稼働に必死」と感じたことはありません。
なお固定資産税は「原発がいつか稼働する見込み」である限りは、赤字でも当面は入ってくるので柏崎刈羽原発の地震・津波対策が進んだ結果固定資産税は皮肉にも近年は増収しています。本来ならこれにプラスα(5億円〜10億円)の法人市民税が入ることになるわけですが、累損が膨らんだ東電からは当面法人税は期待できないため、短期的には柏崎市に取って原発が稼働しようがしまいが税収は変わらないということになりますが、やはり長期的には稼働してもらわないと100億円近い税収減に見舞われることになります。」
上記記事は当面の税収だけを問題にしていて、労働者がいなくなることによる市内業者の売上減や住民税その他の税収減を書いていません。
原発関連労働者がどれだけいるかですが、原発の場合それがある限り稼働してもしなくともそれほどの差がないようにも見えます。
再稼働に反対しているだけならば、固定資産税等は無くならない上に、維持管理用の労働力投入がなくなりません。
原発の運転自体がほぼ自動操業で多くは計器類の監視業務中心・・稼働停止中も維持管理労力は必要ですから労働者の激減もありません。
一般的製造業の場合仮に全自動化していても製造中には原材料の搬入・製品・廃棄物搬出等の動きがありますが、原発の場合ウランの搬入搬出がしょっちゅう必要がない上に製品は送電線によるので、一般製造業のように生産休止か否かによる活動量の差異は殆どありません。
結果的に一旦稼働してまった原発工場の場合、工場がある限り操業してもしていなくとも地元に落ちる金がほぼ同じ=企業にとって稼働してもしなくともランニングコストがあまり変わらないとなれば、稼働停止だけ続けば地元経済にはほとんどマイナス効果がない・・蛇の生殺しのようで電力業界が維持管理コストとばかりかかって疲弊する一方です。
「稼働に同意してほしいならばもっと好条件を出せ」というヤクザみたいな政治手法が可能になっています。
被害救済と言えば聞こえがいいですが、一種の被害者ビジネス・・ゴネ得(いう表現自体も頭から否定的な表現という批判があるかと思いますが)に徹するとその帳尻は電力料金に反映します。
結果的に電力会社が全部倒産しても良いと言えない結果、回り回って国民全部の負担になります。
廃止に決まっても完全廃止までに数十年かかり、その間に廃止に向けた新規労働力投入が増えて逆に活気が出る(福島原発では事故前よりも多くの労働量が投入されている)ので10〜20年は「地域経済・税収には関係がない」しかも反原発運動をしている方が自治体懐柔のため、あのてこの手の好条件提案を期待でき、政府投資を獲得しやすいという戦略でエゴを煽るポピュリズムが地域政治の世界を制しているのでしょう。
「釣った魚に餌をやらないのはあたり前」という論理で中国が進出企業いじめするのと同じ手法です。
一般製造業の場合には、あまりひどい要求をされれば投資資金を無駄にしても撤退する道がありますが、原発の場合今の技術では「稼働反対ならばすぐに撤退します」と言えない・相手の足元を見た卑劣なやり方です。
廃止を決めたら数年で解体撤去出来て跡形もなくなるような技術革新が進めば、先行投資を捨てる覚悟さえ出来ればいいので、原発立地自治体の無茶な主張はその限度内で治ります。
中国による先進国からの進出企業への(知財解放せよ技術移転せよ等の)一見無茶な要求は、世界企業に撤退決意させない限度内で行われていることになります。
16年の新潟知事選は以下の通りです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101700460/
2016年10月18日(火)
任期満了に伴う新潟県知事選は10月16日投開票され、無所属で新人の米山隆一氏(共産、自由、社民推薦)が前長岡市長の森民夫氏(自民、公明推薦)らを破り、初当選を果たした。
 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が主要争点になったうえ、選挙戦の途中から実質的に与野党対決の構図となっていた。」
新潟県民にとってはすぐに撤退されると困るが、稼働停止だけならば地域経済に与える影響が運転中と殆ど変わらないから加津反対を主張する政治家に票が集まる構図です。
電力会社側から見れば稼働停止が続けば、停止中のコストが稼働中とほとんど変わらないで収入だけゼロですから、現地自治体の(「あれをやれこれをやれ」受入れないと同意しないという)無理難題でも受け容れるしかなくなります。
この結果現地では、現地要望を受け容れるための各種大規模補強工事が花盛り・・結果的に特需景気に沸いていることになります。
沖縄県民が基地反対の大義?によって反対運動が過激化する一方になってきたのは、
「いくら過激な主張をしてもアメリカ軍が撤退出来る訳がない」という思惑で反対運動をしてきた結果→冷戦終結に伴い米軍がフィリピンから完全撤退し、日本でも沖縄基地縮小→グアムへの集約化の方向が出てきたので一時大人しくなっていた印象でした。
2010年頃からこれを引き止めるために?北朝鮮が活発化し、中国による沖縄諸島全体への侵略意図を前提にした尖閣諸島に対する攻勢をかけ始めたことによって、今度は日本政府(日本人全体)が沖縄基地縮小どころではない状態・逆に防衛力強化必須化に追い込まれたことによって、俄然反対運動が勢いを持ってきた印象です。

政党の存在意義(政策論争=対案の重要性)2

ところで、メデイアや文化人は「ドイツの何を見習え」と言うのでしょうか?
そもそも日本は国際送電網に繋がっていないのですから、ドイツのように外国に余剰電力を押し付けることはできません。
独仏等とは基礎条件が違っています。
仮に日本が韓国や台湾、フィリッピンその他アジア諸国と送電線で繋がっていた場合でも、日本が豊富な外貨準備にモノを言わせて?国内需要以上の再生エネルギーをどんどん生産させて高値で買い取って周辺国にダンピング輸出し、周辺国の電力会社をバタバタと倒産させてしまうような悪どいことを政府に求めません。
24日紹介した論文ではドイツ政府負担による「安い電力供給は周辺国には恩恵になっている」という印象の書き方ですが、これは欧米型価値観に毒されている我が国知識層の意見でしかありません。
欧米のアフリカ等への援助は食糧援助などその場限りで大量供給するので(アメリカの過剰農産物の捨て場にして)地元民族の細々と続いていた非効率農業を(意図的だったのかどうか分かりませんが)壊滅させてしまい、最貧国へ落ち込ませてはそこから抜け出せなくしてしまっているのです。
日本人は明治維新以降周辺国(朝鮮や台湾では)の民度引き上げや生産技術指導などに協力してきましたし、戦後もアフリカでは、上総堀という簡易な井戸掘り工法を指導したり漁業の仕方を教え、アフガン等では砂漠の緑化事業を指導したり、中国の植林事業を応援したり地道に農業再建に取り組んできました。
日本人は欧米のように相手をどん底に陥れる‥:生きる自信を徹底的に奪い去り自分が半永久的に勝利者として支配する考え方はありません。
日本は欧米の自分勝手な行動を真似しない方がいいでしょう。
原発問題から横に行きましたが、この辺でメデイアによる洗脳目的のムード報道ではなく、原子力発電に関する事実としての世界の趨勢を見ておきましょう。
世界の原子力発電に対する趨勢は以下の通りです。
http://blogos.com/article/231650/
記事
石川和男
2017年06月29日 11:13
世界全体の原子力 〜 低下傾向が近年反転し、4年連続増加・
World Nuclear Association が今月28日付けで公表した “World Nuclear Performance Report 2017” によると、2011年から2012年にかけて著しく落ち込んだ原子力発電電力量〔Figure 1.〕と原子力発電設備容量〔Figure 2.〕は、2012年以降4年連続で増加傾向となった。
2016年には、9GWeを超える新しい原子力発電所が稼働を開始し、過去25年以上で年間最大の増加率だった。」
2017-8-22「フェイクニュース7(データの正確さ)」に続く蓮舫氏の国会でのデータ?提示問題にもどります。

2017/03/06 に公開
蓮舫氏、鬼門の「原発」で論戦 
ドヤ顔で示したパネルを隠すハメに…
 「参院予算委員会は6日、安倍晋三首相と関係閣僚が出席し、内外の諸情勢などに関する集中審議を実施した。久々に首相との直接対決に臨んだ民進党の蓮舫代表が、論戦の主要テーマに据えたのはエネルギー政策だった。蓮舫氏といえば、検討していた「2030年原発ゼロ」構想が連合や党内の反発で撤回に追い込まれたばかり。「鬼門」の政策課題をあえて選んだ結果はいかに-。(松本学)
「得意げに蓮舫氏が示したパネルには、民主党の野田佳彦政権時代に掲げた「2010(平成22)年の総発電量1・1兆キロワット時を、2030年に0・99兆キロワット時に削減する」という目標が、すでに2015(平成27)年に達成されたとするデータが強調されていた。
「われわれはもっと少なくしていこうとしている。ところが、政府の長期エネルギー需給見通しをみると、むしろ増やしている。これはなぜか」
蓮舫氏はこうたたみかけたが、世耕弘成経済産業相にあっさり反論された。
「(パネルで)2015年実績として使っている数字は、大手電力会社10社の合計値だ。2010年は総発電量だから、再生可能エネルギーも自家発電も入っている。同じベースで比較しないとおかしい。2015年実績を総発電量ベースにすれば1・01兆キロワット時であり、野田政権の目標には達していない」
蓮舫氏は再反論はせず、岡山県真庭市の「バイオマスタウン構想」にさりげなく話題を移した。しかし、問題のパネルは掲げたまま…。世耕氏がその後「パネル下げていただけない? 間違ってますので」と促すと、いつのまにかパネルは姿を消していた。」
上記国会討論を見ると田中角栄元総理が演説でぶち上げて聴衆や座談会相手をケムに巻いていたのに、後でチェックするとほぼ根拠ないデータだったと言われているのと同じやり方です。
メデイアにすれば、民進党党首蓮舫氏が上記内容で政府を追及したとして蓮舫氏の出したデータをそのまま大々的に報道しても虚偽報道ではない・・あるいは、この日の国会質問をどのメデイアも黙殺して報道しないのは編集権の問題だということになるのでしょうが、全体的に見れば民進党の失敗行動を一切報道しないこと自体フェイクニュースの一種でないかの問題点があります。
フェイクとは、ズバリ虚偽ではなくとも編集権を含めて、全体として歪めて報道しているどうかの問題であるべきでしょう。
メデイアは、長年左翼系〜民進党には大甘基準でやってきた結果、(前原氏が過去に偽メール問題で失脚したことがありますが・・)何をしてもバレても元々の雰囲気・・却って鍛えられていない・脇が甘くなっている原因になっている可能性があります。
メデイアの報道姿勢の問題はこの辺にしても一方で民進党の実務能力不足を象徴するようなデータの出し方です。
政治実務というのはデータが正確であれば済むのではなく、将来発生する多様な可能性・・太陽光発電普及のために経済原理無視の高額買取制を実施すればこれによる経済活動の歪みをどう調整するかなど・・を透察した慎重な提案あるいは主張をすべきです。
短期に大変革すると既存電力業界の淘汰が起きる・特に原発施設は過疎地立地が多いのでいきなり廃止すると雇用も含めて地域の大問題です・・。
工場廃止等の場合、企業は転勤等配置転換で雇用を守るのが普通ですが、労働者や納入業者が抜けてしまった地域は(出張族相手の周辺ホテルや地元飲食店や弁当屋さんに始まり現場労働者家族の生活万般のゼロ化・教育その他消費ゼロ)急速な疲弊に見舞われます。
今回の原発ゼロを急速に進める意見が撤回に追い込まれたのは、民進党支持勢力の有力母体である連合内の電力労連の反発によるものですが、メデイアの姿勢はすでに批判したように「世論無視」と言う根拠なき民進党批判ですが、上記のとおり被害を受けるのは(正規」労働者よりは地域経済・・まさに全国各地に展開している「地域世論」です。
レンホー執行部は、「配置転換や手厚い一時金支給などの補償のある正規雇用の労組には関係がない」と言う乱暴な見通しで、地域世論無視の意見を発表してしまったのだと思われます。
ところが全国で多数展開している原発の急速な廃止となれば、配置転換や自然減もそうはうまくいかないので大多数は一時金での解雇になるしかない上に、「地域経済への影響」というと地域限定のような響きですが、急速全廃となれば一箇所ではないので・・配置転換すべき受けザラがないので日本全体としての急激な雇用吸収ができない→社会問題が起きてきます。
原発廃止方向であっても、反原発で当選したばかりのフランスのオランド大統領の「フェッセンハイム原子力発電所を閉鎖する条件として「立地地域の電力供給が保証され、発電所跡地の再転換や雇用が確保される」ことが前提である」という発言を8月24日に紹介しましたが、1箇所の廃止でさえこのような発言をしてこれを受け入れるフランス国民の成熟度・諸外国で原発縮小を長期展望で行なっている理由はここにあります。
左翼系政権でも現実的政治を行う能力のあるフランスと日本野党との違い・これが政権交代を可能にしてきたのでしょう。

独仏の原子力政策と環境条件2

http://www.de-info.net/kiso/atomdata03.html
ドイツのエネルギー関係データ
ドイツの電力輸出入
「柔軟性の低い大型発電所
需要の変動に対応し、再生可能エネルギーによる供給の変動を補完するのは従来型発電であるが、恒常的な需要、いわゆるベースロードをカバーする原子力発電や褐炭・石炭発電は常に一定量の発電を続け、容易に出力を落とせない。
いったん落とせば再稼働のためのウオーミングアップに膨大なコストがかかるからだ。とくに、国産の褐炭による発電は競争力が強く、高水準の発電が続いている。これに対して、臨機応変の稼働が可能なガス発電はコスト的に採算が合わず、設備の増強は進んでいない。
外国に引き取ってもらうことも
この結果、電力供給が国内需要を上回る状態が続いている。電力利用の効率化や景気の不振で需要が低下傾向にあるのも要因だ。
このため、電力取引所における価格は低下をたどっており、2015年はメガワットアワーあたり31.6ユーロとヨーロッパでも2番目に低いレベルにある。そのため、オランダなど価格水準が高い国や供給力が弱い国は有利な価格で調達することができる。
昨日紹介したところによると、最も電力料金の高いドイツが輸出超過国になっているカラクリには、上記事情・・過剰生産(不採算による差額を政府による高額買取制度で))を物ともせずにどんどん再生エネルギー生産をして、その分を市場相場で成り行きによって輸出していることによるようです。
いわば国内需要を超えた過剰生産させて余剰分を輸出に回させる・・その差額損失を政府が持つ(高額買取制度)のですから、中国が国有企業に採算無視の過剰鉄鋼生産させて国際市場にダンピング輸出させる・・企業赤字は国が面倒を見ているダンピング輸出と同じ構図ではないでしょうか?
ドイツでは原子力発電縮小が続いてもうまく行っているという日本の報道そのものはそのとおり・虚偽ではありませんが、近隣国疲弊政策とセットになっている点を合わせて報道すべきでしょう。
その上ドイツはもともと原子力に頼らずとも豊富な褐炭等の国内資源でかなり間に合っていたことを無視できません。
褐炭で間に合ってはいるものの先端技術であり将来の核兵器転用技術を確保しておきたい思惑から原子力にちょっと頭を突っ込んでおこうとしていただけだったから、原子力の将来性がないと分かれば危険を冒してまで研究開発する必要がない・「今後は再生エネルギーだ」と方向を極端に切り替えた単純性のように見えます。
韓国のように戦後はアメリカが覇者とならばアメリカ一辺倒(いきなりキリスト教徒が増えます)、今後は中国となれば、中国一辺倒という乱暴な政治です・・とあっさりと縮小方向へ舵を切ったように見えます。
日本同様の無資源国フランスでは電力用資源の輸入代金負担が大変ですから、日本の事故後でもやはり原子力の方がいいかという点では事故直後でさえ賛否が揺れていたようです。
揺れながら時間をかけて(得心を得て)方向を修正して行く方が社会の安定性があるように見えます。
以下は前オランド政権誕生ころ・約5年前?・・民主党政権が討論型世論調査を実施した時期とだいたい合っている・・かなり古い論文ですが、それでも以下の通りです。
http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/catalog_05_ba_vol6_07.pdfによるとドイツの赤字輸出の構造は以下のとおりです。
「東京電力福島第一原子力発電所の事故から1年経った2012年5月に実施されたフランス大統領選挙では、原子力推進路線を維持することの妥当性を主張する保守政党のサルコジ氏と「減原発」を主張する社会党のオランド氏が争うことになった。
決選投票にもつれ込んだ結果オランド氏が僅差でサルコジ氏を破って大統領に選出されたが、これで原子力政策が抜本的に転換するわけではなさそうだ・・さらに、オランド大統領は原子力政策審議会に先立つ9月14日に、フェッセンハイム原子力発電所を閉鎖する条件として「立地地域の電力供給が保証され、発電所跡地の再転換や雇用が確保される」ことが前提であると述べている。
このような情勢を踏まえると、オランド大統領の在任中に従来からの原子力政策が大きく転換する可能性は低い。
では、フランス国民の原子力に対する意識は変わったのか。環境・持続可能開発・エネルギー省は12年8月に「フランス人とエネルギー」と題するフランスの原子力発電に関する世論調査を発表した。
この調査では「フランスの電源構成の4分の3を原子力が占めていることは、全ての点を考慮して、どちらかと言えば利益か、不都合か」という設問形式となっており、福島原発事故直後の11年7月には、「どちらかと言えば不都合」を選ぶ割合が50%に急上昇したものの、12年1月には再び「どちらかと言えば利益」を選択する割合が47%に上昇した。ここ10年間は「どちらかと言えば利益」とする割合は40%後半から50%前半で推移しており、福島第一原子力発電所事故の心理的な影響は一時的であったことがうかがえる・・・」
国益との兼ね合いで反原発のオランド政権でさえ実務に着くと大幅縮小をできなかったことが紹介されています。
ただしドイツの再生エネルギーの安値攻勢によって電力輸入国に転じた経緯はどう論文の続きによれば、以下の通りです。
「ドイツの脱原発と再エネ増加による影響
「前述の通り、フランスは原子力開発を積極的に進めた結果、英国、ドイツ、イタリアといった周辺国に国際連系線を介して余剰電力を大量に輸出する国となった。しかしながら、ドイツやスペインで風力発電設備等の自然変動電源が大量導入されるようになった00年代以降、国際的な電力輸出入の状況は変わりつつある。
例えば、ドイツの固定価格買取制度では系統運用者が再生可能エネルギーを全量買い取って、電力取引所に安い価格であっても成り行きで売却する。
その結果、需要が少ない夜間・休日には大量の余剰電力がドイツから周辺国に流れ込むことがある。このような場合、フランスでは火力発電に加えて原子力発電までが出力低下運転を行い、周辺国からの再生可能エネルギー電力をフランス国内で消費している。このため、周辺国への輸出電力量は年々減少している状況であった・・・」
上記を日本に当てはめれば、大手電力相場の2倍(分かりよい数字にしているだけで実際に2倍ではありません)の高価格で太陽光電力などを買いとっている場合に、その差額負担を電力会社だけではなく、消費者に求める問題が起きてきていますが、高価格で買い取った電力をドイツは電力会社や国民の電気料金に反映せずに・・日本と違い国際送電網が発達しているので・・市況のまま・・上記例で言えば、買取価格の半額で国外に売っている仕組みです。
「市況で売却する」といえば正常価格のようで聞こえがいいですが、ドイツが成り行きで大量に売れば市況自体が下がります・・中国の鉄鋼ダンピング輸出だって市場相場で売っているのですが、寝さgrウィおものとsメイズに売り込めば正常な市場価格が下がって行きますので世界が困っているのと同じです。
市場原理制度は適正コストまで下がるとそれ以下の売りがなくなる・・短期的には倒産寸での資金欲しさのバッタ売りがあってもそれは続かないのでそのうちに適正相場で落ち着く仕組みです。
中国のようにいくらでも国家資本で補助して際限のない低価格・コスト以下の販売競争を挑んでくると正常企業の方が資金負けしてしまいます。
だからこそ世界中で中国の鉄鋼製品赤字輸出を問題視してきたのです。
これが各国国内法・・独禁法で規制している不当廉売禁止の法原理です。

トランプ(取引)政治の不安定さ2

習近平氏の出方待ちのイメージで就任後抑制していた米海軍の航行の自由作戦を南沙諸島で再開しました。
5月〜7月2日の短期間で連続ですからかなりボルテージが上がってきました。
その上、電話会談予定の数時間前というのですから、これにぶっつけたことは明らかです。
http://www.bbc.com/japanese/40477371 2017年07月3日
「米海軍は2日、南シナ海で中国とベトナム、台湾が領有権をめぐって対立する島々の付近の海域を通過する「航行の自由作戦」を実施した。
米海軍の駆逐艦「ステザム」は西沙(英語名パラセル)諸島のトリトン島から12カイリ以内の海域に入った。
中国はこれを受け、「深刻な政治的かつ軍事的挑発」だと批判し、「国家主権と安全を守るためにあらゆる手段」を取ると述べた。
作戦が実施された数時間後には、事前から準備されていたドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との電話会談が行われた。
トランプ大統領が就任した今年1月以降で、「航行の自由作戦」が実施されるのは2回目。5月には駆逐艦「デューイ」が南沙諸島(英語名スプラトリー)で中国が建設した人工島から12カイリ以内の海域を通過した。
ジェームズ・マティス国防長官は数日後、中国が人工島を軍事化するのを米国は容認しないと述べた。」
トランプ氏は台湾への武器売却もセットで発表しています。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6245219
【ワシントン、北京時事】ロイター通信によると、中国の崔天凱駐米大使は29日、トランプ米政権による台湾への武器売却と、北朝鮮問題で中国企業を制裁対象としたことについて、「そうしたすべての行為、とりわけ台湾への武器売却は、相互の信頼を損ない、(4月に)フロリダ州で行われた中米首脳会談の精神に逆行するものだ」と批判を展開した。(時事通信)
4月の会談で習近平氏は口先だけで何らの内容もなかった点を・・会談直後にトランプ氏は「まだ何も結果を得ていない」(約束だけだ)と繰り返していた記憶です・・「いつまで待たせるのだ!」というトランプ氏の怒りについて習近平は頬っかむりのままです。
最近ではついに中国に対する不公正貿易国認定の調査命令に署名したとも報道されています。https://mainichi.jp/articles/20170813/k00/00m/020/151000c         
   対中制裁へ通商法301条調査 北朝鮮対応迫る
「・・・米企業が保有する知的財産権の侵害や、中国進出時の技術移転の強制について調べ、「不公正行為」があると判断すれば、中国製品に高関税を課すなどの制裁措置を発動する方針。制裁に向けた手続きを進めることで、中国に北朝鮮への圧力強化を迫る狙いもあるとみられる。」
中韓共に約束を守る気持ちなどテンでない民族であることをトランプ氏も知っているから//騙されたことで余計腹が立つのでしょう。
日本にとっては、米中の取引がうまくいっているよりは、関係がギクシャクしている方がありがたいのですが・・。
それにしても、トランプ政権がもうちょっとしっかりしてほしい気持ちの人が多いのではないでしょうか?
トランプ氏の要求は先が見え透いているから分かり良すぎる・却っていつドンデン返しがあるか知れない・・先が読めない不安定さの基礎です。
目先で動く人はその場の損得で動くので中長期的動きを読めない・・幼児のご機嫌をとるのは簡単ですが、その代わり半年先の約束が成り立たないのと同じです。
取引外交では、その場その場での相手との取引で、従来の日本との過去の約束を破っても、目先の取引を進めた方が得と思えば目先の有利な交渉に乗ってしまうとすれば、アメリカとのどんな約束も意味がなくなります。
アメリカにとって日本が何の利用価値もなければ黙って日本にこれと言った要求をせずに、日本素通りの米中結託になりかねないので・・信用がないと言うに帰しますが・・それが一番日本にとって困ったことです。
トランプ氏に対するこのような不安は米国に頼ってきた諸外国が抱いている不安です。
アメリカ相手の外交では強力・無茶な要求があったときには国難と捉えるべきではなく、交渉解決出来るチャンスと見るべきでしょう。
企業で言えば狙い撃ちされたときにこれを後ろ向き・危機と捉えずに,懐に入って成功する事例が多いことも外交の基本として参考になります。
昔からアメリカの鼻息を窺う外交が世界の主流でしたが、今後4年あるいはトランプ氏失脚がない限り鼻息を窺う度合いが高まる・・世界中とアメリカの関係が専制君主に対するような露骨な変な関係になると、中国政治家の方が専制君主に対する対応と権謀術数では経験豊富ですから今後有利になる可能性があります。
現在トランプ政権とロシア関連がメデイアで報道されていますが、メデイアへのロシアの食い込みが半端だから騒がれているだけで中国の方が幅広く浸透している可能性さえあります。
ちなみに戦前戦後を通じてロビー活動(資金をつぎ込んで食い込むアメリカ的表現)等で食い込んで来た結果、(例えば蒋介石の妻宋美齢のルーズベルトとの関係はよく知られている通りです)日本は痛い目に遭いましたが、戦後も成功体験を踏襲しているのが中韓政府です。
近年の慰安婦像設置等宣伝活動資金も(韓国政府自体が資金を出せません・・民間活動だから言論の自由という立場ですから多段階資金洗浄しているでしょうが、実質資金比率は中国系の豊富な裏資金が基礎になっていると言われています・・南京大虐殺などはもちろん中国資金です・・これからは従来以上にもっと中国に有利な時代が来るかも知れません。
何しろトランプ氏には正義の基準がなく、その場その場でより有利な条件を出す方に飛びつく単純論理ですから、勢い裏資金の跋扈が激しくなる宿命です。
日本が愚直に正義の基準だけに頼っているとルーズベルトによって日米戦争に引きずり込まれたように再び大変なことになるリスクがります。
日本はこの点では痛い目にあった経験済みですから、この2の舞だけは避ける知恵・・これが安倍総理がイの一番にトランプ新大統領と面会した動機ですが、企業利益の基準を併せ持つしたたかさが必要です。
上記はアメリカが今後も世界の覇者であり続ける場合のことであって、これまで書いてきたようにトランプ氏の出現はこの地位を転げ落ちるきっかけになる可能性が高い・・アメリカの本来の民度レベルに戻るだけのことですが、・・・過去の実力に見合った格式を維持するのが難しくなったことの始まりでしょう。
トランプ氏就任後半年以上経過で、彼が実現しそうな政策として何が残っているかですが、最大のテーマであったオバマケアの改廃はほとんど絶望的になってきましたし、北朝鮮政策も何を生み出しどう言う結果を導くつもりなのかよくわかりません。
確かにこれまでの微温的政策は北朝鮮を増長させるだけでしたが、それは他に取るべき方法がないからそうなっていたのですから大統領が変わっても取るべき方法がない点が変わることはありません。
日本で言えば、普天間基地移設先は多種多様な選択肢の中からもっとも被害の少ない現実的な場所として決まってきた経緯があるのであって、その対案を示さないまま「少なくとも県外へ!」と言うスローガンで政権を取ってみたら県外移設への下準備もなにもしていなかった・・八ッ場ダム工事中止とその後の撤回も同様です・・いろんな分野で野党時代の主張は根拠のないものであった結果・・ほとんど何も出来なかった鳩山政権と似ています。
この辺は五輪準備を約1年間先送りした結果に終わった小池都知事の築地市場移転見直し騒動も同類に評価されるべきでしょう。
(今はメデイアが小池劇場を煽る方向性が激しいのでその種の批判・マイナス意見は表に出ませんが・・何を報道するかは編集権だというでしょうが・・)

メデイア誘導・フェイクニュースの限界5(NHK報道から2)

ところでこのシリーズに書いているフェイクニュースとは何でしょうか?
日本でのフェイクニュースの元祖として私は田中角栄元総理をまっ先に想起します。
彼は「カンピューター」の異名をとったくらいに数字に明るく?演説会で大量の数字を駆使して大衆を魅了していましたが、後で識者が調べるとほとんどが何の根拠もない数字だったと言われています。
演説会や討論会テレビ座談会等でいきなりデータを出して説明されると根拠ないものとは誰もわからない・・ちょっとおかしいなと思っても誰も反論できずその場の主導権を握れます。
法律家の意見交換には、こうした不意打ち防止のために事前に準備書面を提出しすることが義務付けられ、さらに事実引用の場合にはそのデータ出所を明記し、内容によっては相手方に資料チェックや取り寄せなどの十分な時間を与えるのが普通です。
加計論争を見ていると積極的虚偽はないとしても、前提事実を明らかにしないで、・・例えば「1校限定」は安倍総理の意向で決まったのではなく、新設強硬反対側の獣医師会が認めるしかないとしてもせめて1校に限定してくれという要望で1校限定に妥協で決まっていたこと(8月9日引用しました)をメデイアは全く報じないで、いかにも安倍総理の意向で加計学園1校に絞ったかのような疑惑・ムード主張をしてきました。
加計学園民進党で検索してもまともな主張が出てきません。
http://www.asyura2.com/10/nametoroku6/msg/8409.html
以下内容に入っても総理の出席を求めないと真相がわからないという戦術論しか出てきません。
加計学園疑惑への民進党の主張は ?
安倍首相夫妻「腹心の友」・加計学園に流れた血税440億円
  ・公有地・約17ヘクタール=東京ドーム敷地の約3.5倍 !
「疑惑の主役、総理が出てこないと解明できない」
NHKのまとめを見ても真相究明の関心を煽るばかりで何が問題かを全く書いていません。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/jyuui_gakubu_shinsetsu/
ニュース特設
加計学園 獣医学部新設問題
2017年7月26日更新
この問題の論点は大きく3つ。①「規制緩和に根拠はあるか?」 ②「首相官邸の関与はあったのか?」 ③「実際に行政はゆがめられたのか?」という点です。」
以下は私の感想です。
上記①については、審議会議論や関連省庁等の意見集約等で決まることであって、たまたま友人であるだけを理由にして「疑惑がある」というムード主張だけでいちいちの説明義務があるとは思えません。
審議会の審議過程や議事録を前提にどこに疑惑があるかを疑惑追及側に説明責任があるべきでしょう。
②2つめ友人の学園に決まったというだけの根拠ではなく、相応の事実関係を明らかにするのは疑惑追及側の責任です。③も同様で友人だから疑惑があるというだけではなく、「何がどう歪められた」と事実を出してからその原因として便宜を計ったかのテーマに入るべきですが「歪められた事実」の主張すらないのに何を解明したいのかさっぱり分かりません。
思わせぶりの疑惑ムード作りだけで、「歪められた事実」「不正」すら主張できないままだから、不正も不当も明らかにしないでたまたま「許可になったのが友人だか」らというだけでは、何が何だかわからないは当たり前であって、抽象的に「疑惑疑惑」というばかりで具体性がないことによります。
・・政府答弁に間違いがあるというのですが、それと疑惑や「歪められた事実の特定」とどういう関係があるのかはっきりさせないで「疑惑不深まる」というムード的強調ばかりで、揚げ足取りに終始している状況です。
NHK引用の続きです。
7月24日の具体的記事です。
「閉会中審査 真相解明は道半ば(7月25日)
参議院予算委員会の閉会中審査が開かれ、民進党の蓮舫代表は「加計学園」が獣医学部の新設を申請していることを知ったのは、ことし1月20日だったとする安倍総理大臣の答弁は、これまでの国会答弁と矛盾していると追及しました。これに対して、安倍総理大臣は、答弁に混同があったことはおわびするとした上で、今治市での事業者が加計学園だという報告は受けていなかったと改めて説明しました。」
閣議のテーマでないことを聞いてもしかたのないことです。
上記を見るといかにも不手際があったかのような印象づけ目的?の要約だけで、その日に審査された内容をまともに報じていません。
知った時期が数日あるいは1週間ずれれば、どういう疑惑がはっきりするのか意味不明で、民進党が国会で主張すべき政治意見がないので、時間稼ぎに単なるクリンチ闘争を仕掛けているとしか見えません。
衆議院閉会中審査 明らかになった事実と解明されなかった事実(7月24日)
安倍総理大臣は衆議院予算委員会の閉会中審査で、国家戦略特区での獣医学部新設は、内閣府や文部科学省などが合意して決定したものだと重ねて強調した上で、関係省庁のやりとりをめぐる主張が食い違い、疑念を持たれたことを反省し、政府内の意思決定のプロセスの透明化を進める考えを示しました。
事業者決定前「加計学園に決定」と伝えたとする記録(7月20日)
国家戦略特区に基づく獣医学部新設をめぐり、学校法人「加計学園」が事業者に決まる2か月前の去年11月、山本地方創生担当大臣が日本獣医師会の幹部に対して、加計学園の獣医学部新設を決めたことを伝えたとする内容の面会記録が日本獣医師会に残されていることが分かりました。」
ところで、8月9日にttps://news.nifty.com/article/domestic/society/12180-595462からの引用で紹介したとおり、今治市の特区申請に対して?すでに獣医師会の要望で1校しか認めないという原則が決まっていて今治市の戦略特区指定が決まった経緯があり、しかもNHKの上記記事冒頭に出ている航空写真を見ると大規模な学園用地の買収その他の準備が(・・申請基準に獣医学部である以上牧場も必要でしょう)十分な学園用地を用意できることなどが要件になっているのかな?)必要です。
大規模な土地買収は短期間にできませんから申請書に、許可されたらその後に用地をさがしますというのでは無理があるので、あらかじめの用地確保の準備(巨額先行投資)が必須です。
新設希望者間での事前調整が先行して大学新設の申請に同一市内に競合候補などいるはずがない(2校が申請して5割の確率になると、用地を準備した方に大損害が発生します)のが基本常識でしょう。
今治市を特区指定段階での審議会審議段階時点で10年来の経過で事実上加計学園しか候補がないことが決まっていたことになります。
特区指定=事実上加計学園に決まったという話題が出たこと自体おかしな話ではありません。
こういう事実関係を前提にすれば前川氏の主張による総理の意思忖度でどうなったというよりはそのずっと前に石破氏を含めた大物政治家を通じて決まっていたことの事務処理段階のことでしかなかったとが分かります。
NHKやその他メデイア及び民進党はこのような長いスパーン(加戸(前知事)参考人によると何十年?かけた地元計画だったようです)での事実関係をあえて報道せずに、ほっかむりして「疑惑」という見出しばかりでムード宣伝に徹している印象を受けます。

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