総選挙と民度2(民進党支持率低下1)

いわゆる森友・加計問題に限らずこの数年の民進党の国会活動は、陸自レポート問題その他揚げ足取り的追求ばかりで、その先、政策にどう結びつけようとしているのか見えない・・国民は飽き飽きしている状態が、支持率低下にあらわれているとみるべきでしょう。
国会審議の中心テーマとしてこういう揚げ足取り国会戦術を選択をすること自体に党代表/執行部の責任が一定程度あるとしても、民進党自体の政策立案・政治能力・姿勢が問われているのですから、「代表・看板さえすげ変えればいい」という安直な姿勢では党再生は無理でしょう。
この点は希望の党への全面合流という名目での看板書き替え戦略が選挙で通用せずに失敗に終わったこととも共通しています。
希望への合流といえば希望の党に吸収合併されるかのような響きですが、希望の党には現役議員がいるとしてもそのほとんど全部が民進党から離党し早めに移籍した議員が中心ですし、立ち上げて数日しかないのですからまともな事務局体制もないので事務部門を含めて実質的には民進党が希望の党を飲み込んでしまうものの「代表だけを小池氏に据え置く」だけのカラクリ・・看板付け替えの一種です。
解散前民進党支持率に戻しますと、前原代表執行部成立後幹事長に内定していた「日本死ね」で知られる山尾志桜里氏の不倫騒動は「山尾志桜里」で出るウィキペデイアの記事によれば以下の通りです。

「2017年民進党代表選挙にて代表に就任した前原の下、一時は幹事長に内定し本人も受諾したが、起用は取りやめとなった[15]。その一因として、党内からの経験不足との批判に加えて、2017年9月7日発売の週刊文春が弁護士の倉持麟太郎との交際疑惑を報道したことが影響したとされる[16][15][17][18][16][19]。幹事長には大島敦が就任し執行部入りは見送られた[20]。また、山尾は疑惑を否定した[21]。過去に自民党の宮崎謙介が不倫騒動を引き起こした際にテレビ番組で批判していたことも顰蹙を買う要因に繋がった(宮崎は後に議員辞職)。
一方で、「党や支援者に迷惑をかけることになると判断した」等と述べて同日、離党届を大島に提出した[22]。民進党はこの離党届けを翌8日に受理した[23]。」

船出したばかりの民進党前原執行部にとって山尾氏の離党騒動のダメージは計り知れないものがありました。
これを受けた後の世論調査は以下の通りです。
http://www.sankei.com/politics/news/170918/plt1709180014-n2.html

2017.9.18 11:36更新
産経・FNN合同世論調査】
自民党を除く政党支持率は、民進党が6・4%で0・5%下落した。以下、共産党4・5%、公明党3・6%、日本維新の会2・6%と続いた

この状態で9月中旬頃には、安倍総理による臨時国会冒頭・28日解散が急浮上して民進党は大慌てになりました。
前回(平成26年11月解散で出てくるウィキペデイアによると「民主党は元職や元参議院議員を当選させ73議席を獲得し、党勢を若干回復させた。」とあります)民進党当選者が73名でその後日本維新との合併を経て・・維新系の一部は大阪維新の会に移るなどしていたので、衆議院定数465名中民進党議員は今年始め頃には約80名あまりの記憶ではっきりしませんが、(泥舟から逃げて予定されている小池新党結成創立に関わろうとする離党者が続々出ていたので、どの時点を抑えるかで数字も変わりますが)とすれば、わずか6〜7%の支持では、大幅減が避けられない情勢でした。
慌てたのは来年の総選挙を前提に新党立候補者を決めてから新党を立ち上げて内部組織や全国組織の準備して国政に打って出ようとしていた小池氏も同じです。
10月27日日経新聞長朝刊4p「小池劇場の議員心理」には以下の通り記載されています。
記事では曖昧に支持率1桁台(2〜3%も9%台もある幅の広い書き方です)と書いていますが、その前数ヶ月ほど繰り返された世論調査では上記の通り7%以下で沈んでいたので、これを精一杯膨らませた新聞の書き方です。

「・・泥舟から降りて救命ボートに乗りたいーこれに民進党議員が飛びつかない選択肢はなかった。報道各社の世論調査で民進党の支持率が1桁台。惨敗した7月都議選に続き『このままではジリ貧』との悲鳴が上がったが・・・小池氏の登場で期待に変わった」「選挙を前に離党した前議員が続出。・・相次ぐ離党者を受けて民進党前原誠司代表は9月28日の両院議員総会で希望への合流方針を1任を取り付ける形で決定。1時間足らずの会合で理念や政策はほとんど議論されず前原氏が『全員が立候補できるよう全力を尽くす』と述べると拍手で了承した」
「だがほどなくしてその方針が小池氏によってほごにされる。・・リベラル系らを念頭に『排除する』と明言」・・・「不思議にも議員からの反発の声は限定的だった」・・「自分は排除されるのだろうか」と「多くの議員はみづからの処遇を心配するのが精一杯」・・・『立憲民主を立ち上げた枝野氏でさえ相当悩んでいた』と枝野氏に近い議員もこう明かす」

いわゆる満場一致採択でしたが、理念の違う保守系の支持で成立している小池新党への合流に対する疑念は一切出なかった様子です。
わずか7%前後の支持率では465人の衆議院定数のうち民進党系議員が80人前後も占めていること自体が国民意思を反映していません。
「安保法制反対・・大多数の国民意思を無視するな!」と主張する張本人・運動体の主力政党が国民の6〜7%しか支持されていないのですから、いわばギャグみたいな主張です。
しかも小選挙区では理論的には最多得票でない限り当選できないのですから、7〜8%の支持率では壊滅的でしょうから、十数人あるかないかの党幹部等の大物(前回選挙では菅元総理や海江田党代表が小選挙区で落選しているくらいです)以外にはせいぜい比例代表でしか生き残れない見込みでした。
比例代表が仮に支持率をそのまま反映してもタカが知れています。
ウィキペデイアによれば、26年の第47回選挙での民主党の当選者数と内容は以下の通りです。

小選挙区
g      得票数       得票率      議席   議席率    合計議席  議席率
民主党  11,916,849.274        22.51%        38     12.88%
比例区
民主党  9,775,991        18.33%            35     19.44%          73    15.37%

上記の通り個人要因を除いた比例・・党の支持率約18%の得票率で議席35ですから、6〜7%の支持で選挙に臨めば比例当選者が3分の1前後になります。
上記日経新聞の記事では民進党の看板を希望の党に付け替えることによって一人でも多くの議員が生き残る方法を模索していた状態が炙りだされています。
あとで「排除」されそうになってから立憲民主党を立ち上げたグループも、小池氏に「排除」さえされなければ合流するつもりであったことが上記記事の経過で明らかです。
今になって合流を提案した前原代表を難詰するのは(全員が「渡りに船」とばかり諸手を挙げて賛成していたのに)自分勝手です。
前原氏が小池氏の真意を読み違えた(騙された)というより民進党全員が、臨時に雇われマダム・小池氏を看板にして選挙時だけ支持率を上げてから「希望の党を乗っ取ればいい」と安易に考えて、その場合世論がどう反応するかを読み違えた点では同罪です。
立憲民主を結成したグループは「節を曲げなかった人の集まり」というイメージ戦略に成功していますが、実態は希望の党への入党を拒否されそうになって慌てて立ち上げたと見るのが実態でしょう。
立憲民主党のことは別に論じるとして「民進党が希望の党へ合流」という名目での看板付け替え戦略の左翼系のメリットは以下の通り推測されました。
左翼系政党全体で見れば、人気のある小池新党に合流して同党の公認とすれば、小池氏支持層である保守系あるいは浮動票が大きく取り込めるので当選率が上がるメリットがありました。
大量落選の予想に怯えていた(上記引用の通り前回選挙では18%の支持でも元総理や現職の党代表まで落選しました)大多数の民進党議員は、・・小池新党の政治理念の吟味をあえてせずに・うやむやにして恥も外聞もなく満場一致でこれを歓迎した背景でした。

賄賂社会と道徳意識(中国5)

地位維持に汲々とする党幹部や高官だけでなく人民の方も競争相手がルールを守っていないのに自分だけ守っていたら競争に負けるが、真似して違法操業すると摘発されるのが怖いので日頃から党幹部や摘発機関への付け届けを怠れません。
また、環境規制等日常全般に違反状態で許認可を通して貰い、摘発を免れるには賄賂が必要になる関係になっています。
競合相手より上位の人間に・・課長クラス一人に渡すだけより幅広く且つ部長クラス〜局長クラスにも渡しておいた方がより効果がありますが、そのためにはより大きな賄賂を出せる人に限られる・結果的に学校の成績評価も何もかも全て金次第の社会となっています。
中国では付け届けを渡すのは古来からの慣習で違法(モラル違反)というよりは、税金の自発的上乗せ納税(もともと徴税能力不足が原因?)かのように考えている節があります。
ただ公式納税の場合には納税の多寡によって電車に優先的に乗れるわけではないし、一流大学に優先的に入れるわけでもなく公平ですが、賄賂の場合この秩序が乱される点が大違いです。
日本の場合公平性が徹底していて金持ちも貧乏人も・・生命維持の基礎である医療現場で端的に現れていますが、生活保護による無料医療を受ける人も金持ちも申し込み時間順の順番待ちし、3分医療も同じですし貧乏人か金持ちかによって薬のレベルや品質が変わることもないし、受ける治療・レベルの高い手技の医師に手術を受けられるどうかもすべて機械的決定です。
(いつも書くようここは大方の社会の仕組みを書いているのであって総理その他の場合特別な割り込みの仕組みがあるのですが、ごく少数の例外を書いていません)
アメリカの場合、公的サービス提供に賄賂で割込めない点では日本同様に公平ですが、その代わり公的サービスレベルが公教育であれ医療その他何であれ日本に比べて低すぎる点(その分私立が発達している)に問題があります。
それが生命に関わる分野で端的に知られているのが、オバマケアで知られる医療場面です。
アメリカの自治体結成動機をこのあとで再開・書いていきますが、州政府の提供するサービスレベルが低すぎるので自分たちでお金を出し合って道路や学校を作りたいとか水道、警察を持ちたいという時にそれぞれの目的限定の自治体を結成します。
自治体にまでいかなくとも、昔から一定のお持ちのクラブ(飲み屋やレストランやゴルフクラブホテルなどいろんな分野でフリーの客を入れない閉鎖社会を作っていくのがアメリカ式社会・・地中海式都市国家の流れの残滓というべきものかもしれません。
閉鎖的都市国家形態を取らない社会は日本と東南アジア諸国だけですから、いろんな価値観で現在主流の世界の異端「変わってる!」になるのです。
大型マンション内部にプライベート公園を作ったり、プライベートビーチなどすべて同様の流れによります。
税金の代わりに払えるものが自発的に払うという点で賄賂はアメリカで発達している寄付文化に似ていますが、寄付者は寄付金の使途に色付けできるだけでルールを曲げようとするものではない点で、似て非なる方向性です。
日本でも一定のお金持ちしかグリーン車やファーストクラスに乗れないお金がないとお芝居も見られないという程度の差がありますが、賄賂と違って一定のお金を払えば(チケット買うのに身分さがなく、裏金が要りません)、公平に同様のサービスを受けられる点が違います。
中国社会のように賄賂を道徳違反の問題ではなく自発的納税または必要経費として考えれば、規制クリアーのために公害防除設備をつけたままにして生産するコストよりも、要路への賄賂提供の方が安ければ日本から輸入時にくっついてくる公害防除設備を取り外す方になびく・国民の健康がどうなるかの視点が全くない国民性・・中国の場合「人民」がいるが国民がいないと言われている所以です。
まして、規制にあうように技術アップに努力するコストを考える(金をかけてもうまく行くとは限らない)と賄賂や剽窃でクリアーした方が確実(100人のスパイを放ってその内一人でも持ち帰りに成功すればコスト的に計算可能)で安上がりですし、海外企業との競争のためには成功するかどうか不明の技術アップの努力・・例えば巨額投資の必要な医薬品開発よりは盗むほうに金をかける方が合理的となるのでしょう。
いくら企業秘密を盗んでも国内にいる限り処罰されないのでは、関係者は道徳の痛みを全く感じない・・コスト計算の問題でしかありません。
http://gigazine.net/news/20170608-high-school-exam-cheating-devices/によれば以下の実態がでています。

2017年06月08日 21時00分00秒
中国の試験で発見されたカンニング用ガジェットの数々が公開される
中国では2017年6月7日から9日にかけて全国大学統一入試「高考(gao kao)」が行われています。「世界で最も難しい試験」と言われる高考ではカンニングが多発しており、カンニングを防ぐために念入りなボディチェックが行われたり、受験生に「ワイヤレス端末が仕込まれている可能性があるためワイヤー入りのブラジャーをしないように」という指示が出されたこともあったとのこと。では実際にどのような方法でカンニングが行われているのか?ということで、中国・山西省の太原市が、ここ数年で実際に使われたカンニングデバイスを公開しました。

High-tech devices used to cheat China’s exams | Reuters.com
http://www.reuters.com/news/picture/high-tech-devices-used-to-cheat-chinas-e?articleId=USRTX39AF6
例えば以下の写真に写っているのは一見すると何の変哲もないベルトですが、実はワイヤレス通信を行うデバイス。太原市ではここ数年の高考で使われたカンニング道具がメディアに向けて公表されたとのこと。(以下写真部分引用省略)
以下も消しゴムに偽造したワイヤレス端末。受信した答えをディスプレイに表示するのでしょうか。
時計のように見えるワイヤレス端末に……
耳につけて外部との通信を図るイヤーピースと端末。
イヤーピースはこんな感じです。(以上写真部分引用省略)
上記のようなデバイスを用いたカンニングが増えているため、試験の最中は監視員がワイヤレス端末の活動を調べているそうです。」

中国以外の国々では、自分が努力しないで他人の努力の成果を盗むのは古代から確立したとてつもない犯罪行為というモラル意識ですが、中国ではいろんな受験時に電子機器を使って外部交信によってカンニングする方法が流行っていたのを見れば、カンニングすること自体が能力次第であるし、商取引の一態様という意識のように見えます。
裏切ることも騙すことも、騙されたり盗まれたりする方が弱いだけ・騙し陥れる方が、能力が高いと評価される社会です。
モラルの問題ではなさそうな社会です。
中国ではモラルよりは全て金次第、金の亡者のように外部から見えるのは、すべての分野で賄賂金額を基準に動く社会になっている結果によります。
今回の党大会で宣言された習近平の「世界強国」が実現する世界では、新たな中国式価値観がルールとして強制され、これが道徳として教育されるのでしょう。
「付け届けをしない」方がモラル意識が低いと批判される社会でしょうか?
忠臣蔵の原因ですが、当時何かを教えてもらうには授業料を払うルールが未発達であったのでその代わりにお世話になりますという付け届けが必須であったことが背景にあります。
粛清政治→恐怖の弊害は直接的には権力闘争の結果・・権力周辺の問題でしかありませんが、政府高官がしょっちゅう粛清されるようになると、次の地位(局長クラス)の高官も間接的に粛清政治の対象になり、どんどん下位公務員に及んで行き、最後は公務員でない民間人も反党分子という名目でどんどん処罰されるようになっていたのがソ連の「収容所列島」の実態でした。
これを免れるためには、じっこんにする相手を特定高官に限定するとその高官(例えば薄熙来)が失脚すると却って危ないので、できるだけ賄賂の網を幅広くしておく必要に迫られるようになります。
賄賂がないと何もしてくれない社会になっていても景気が良くて末端まで一定の資金が回っていれば問題がありません。

1党独裁と汚職3(中国2)

昨日紹介した弁護士の記事によると立件基準も公開されており先進国と変わらない透明性が公開されています。
膨大な日常業務でいつもチップみたいに(裁判官からまで要求される日常)賄賂を要求されている中で、どういう場合に実際に基準通りに事件扱いになるか?にかかっている・これが人治主義と言われる根拠なのでしょう。
何もかも賄賂・袖の下次第の社会に進出する日本企業/関係者も大変です。
http://biz-journal.jp/2013/09/post_2944.htmlによると以下引用の通り日本企業の悩みが伝わります。

「尖閣諸島問題が勃発して以降、日本からの製品輸入と現地日系工場からの製品輸出に対して、税関等での手続きや検査、監督省庁からの許認可などが、日系企業を狙い撃ちするように厳しくされたのだ。「ともかく許可が下りるまでの時間が異常に長くなった」と話す物流会社の幹部によると、その背景はこうだ。
あるアパレルメーカーは、中国の現地工場で製造した製品を日本に輸入しているが、「賄賂を渡さないと税関を通してもらえない」(社長)のが実態だ。この会社では、現地の中国系物流会社に通関業務を委託して税関と折衝させている。
「きちんと税関を通して、こちらに商品が届いた時点で代金は支払う旨を伝えて、中国人同士で話をつけさせている」(同)。このアパレルメーカーの場合、賄賂という形式で金銭を渡してはいない。だが、物流会社から同社への請求額に、実際には賄賂に該当する金額が含まれている可能性もある。
賄賂が渡されるまでのステップは、例えばこんな流れだ。日系企業が中国で、所轄の地方政府当局に許認可などの手続きに訪問すると、幹部が「こういう良い会社があるから取引を検討してみたらどうか」と物流会社や投資会社などを紹介してくる。
その多くは幹部の親族などが経営する会社で、日系企業と取引しながら、裏では現地当局との交渉役を担っている。相場より高い金額を請求され、その過大な分が賄賂等に相当し、その取引先から政府幹部に賄賂が渡されていくケースが多くあるという。」

ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2013/09/post_2944.htmlによると以下の通りです。
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「賄賂が渡されるまでのステップは、例えばこんな流れだ。日系企業が中国で、所轄の地方政府当局に許認可などの手続きに訪問すると、幹部が「こういう良い会社があるから取引を検討してみたらどうか」と物流会社や投資会社などを紹介してくる。
その多くは幹部の親族などが経営する会社で、日系企業と取引しながら、裏では現地当局との交渉役を担っている。相場より高い金額を請求され、その過大な分が賄賂等に相当し、その取引先から政府幹部に賄賂が渡されていくケースが多くあるという。
恫喝まがいの賄賂で知られるのは、中国の大手テレビ局である。このテレビ局は、消費者の声を紹介する番組で、商品の性能などを紹介しているが、日系の大手企業に対して「商品へのクレームが多いので、番組で取り上げる予定だ」と連絡をした上で、番組へのスポンサー協力などを「よかったら検討してください」と“お願い”する。
もし要求を拒否したら、どうなるのだろうか? 日系の家電メーカー販社幹部は「このテレビ局は専用のクレーマーグループを雇っていて、そのクレームがテレビで報道されてしまう」と実態を説明する。」

独裁社会では賄賂がなぜ必然化するかですが、民度レベルが先進国に遠く及ばない・・穏健な話し合い解決不能な実態があって、独裁〜強権政治しかない社会では、やむなく形式的民主制を導入し委員会(の全会一致)で民主的に何ごとも決めているかのような真似事だけ民主的にやっている実態があります。
環境〜衛生〜建築〜品質規制その他の多くの分野で先進国並みの規制を格好付けだけ制定するとどうなるか?
国家の基本である意思決定・骨格システム自体が実質を伴わない形式的制度である結果、末端人民に対する法令も条文だけは先進国並みの先端的環境法や知財保護法その他整備していると自慢しているだけになっているのは自然です。
民度(国内技術水準)上無理な制度ですから、国民は誰も守らなくともお目こぼしにしている・政敵や関係悪化した国の外資だけ狙い撃ちできる法令になっています。
サード配備に不快感を示すために韓国ロッテの消防設備にケチをつけて以来、ほぼ全店規模で操業停止が半年以上?続いている事実がその一例です。
この2週間ほど前から大問題になっている神戸製鋼の品質改ざん問題・中国に進出していないから良いようなものの、もしも中国工場で起きていればすぐに操業停止→多分倒産でしょう。
狙い撃ちされないまでも外資系(飲食業その他全て)は法令通りやるしかないので、民族系に比べてコスト高になっていて事実上外資妨害になっています。
以上紹介してきた通り贈賄提供自体をみんながするしかない社会ですが、習近平が権力を握ったのちにこれを利用してその摘発を始めると、その対象設定が恣意的・江沢民系や胡錦濤系に集中している・・政敵粛清に利用されてきたことが象徴的です。
政敵粛清目的が概ね達成されたらしく、この半年くらいでは習近平系?内の後継候補と言われていた者に対する粛清が始まっています。
http://www.sankei.com/world/news/170901/wor1709010037-n1.html

【紅い権力闘争(上)】「ポスト習近平は習近平だけ」次々後継者潰し「あと30年やるつもりだ」 写真あり; 中国陸軍の李作成司令官、参謀長に昇進…「習近平派」か · 人民日報、胡春華氏の寄稿文掲載 習近平氏を称賛、絶対服従をアピール 写真 …

http://biz-journal.jp/2017/07/post_19981.html

中国の権力闘争が激化している。秋には5年に1度の中国共産党全国代表大会が開かれるが、これに向けて党内の粛清合戦が始まっているのだ。
7月に入り、習近平国家主席の後継候補と目されていた政治局員の孫政才氏が「重大な規律違反」で調査されることが決まった。孫氏は重慶市のトップにあたる党委員会書記を務めており、党大会で政治局常務委員入りの可能性も取り沙汰されていたが、事実上の失脚だ。
習政権になってから、現職の政治局員が摘発されるのは初のケースだ。さらに、孫氏の後任には習主席の側近である陳敏爾氏が起用されたことも波紋を呼んだ。

汚職摘発名目の粛清に辣腕を振るった王岐山氏が不文律の「定年」超え留任が注目されていましたが、無理をしないで終わるようです。
1週間ほど前から無理しない観測が出ていましたが、今日23日の日経新聞にも(公式に?)この報道が出ています。
1説には秘密を握りすぎ・力を持ちすぎたので敬遠された・・やりすぎたので政敵の怨嗟をかわす狙いその他の憶測がネット上?言われていますが、真相は不明です。
今回の党大会の動きでは、権力闘争の第一段階が終わり自分の次を窺うものの存在を許さない段階に入ったように見えます。
党大会は25日に終わる予定ですし経過は新聞で次々と出ていますが、習近平政権の終身化方向(先ずは2期10年定年のルールを変える方向?)へ向けて動いているようです。
スターリン粛清もトロツキーなど公然たる政敵の粛清が終わると次の標的として内部粛清に移って行った例を参考にすれば分かり良いでしょうか?
図式的にいえば半径5キロの外周人物粛清から順次半径4キロ〜3キロ〜2〜1と順次・・内周に入って行き最後には半径数メートルの最側近が次々と失脚する時期が続いた例・スターリンが倒れても誰も手を出さず見守っていただけ・と言われるほど、恐るべき極限の不信関係になっていた例をなぞっていくのを防ぎたいでしょう。
皇帝制にすれば終身どころか子孫まで安泰ですが、共産主義主張と矛盾し王朝制復活は無理なのでロシアの真似をして選挙による大統領制に変更するチャンスを狙っているとも言われます。
大統領制にすれば突然の側近クーデターでは政権を取れないので、少なくとも任期中は安泰・・猜疑心にかられて夜も寝られないという苦しみから逃れられます。
しかも世界中で民選の儀式を経ていない・経ることすらできない国は、今や北朝鮮と中国しかないという実態に内心自尊心がいたく傷ついているはずですが、この屈辱感から解放されます。

1党独裁3と汚職2

日本では、事件が少ないだけではなく賄賂と言っても数万円のゴルフバッグをもらったり、数万円の飲食接待を受けたなどが多いので基礎数字が違います。
中国の場合、正式摘発だけでこれですから、細かな日常的汚職・・公務員だけでなく・・民間は「汚職」とは言いませんが・・医師にかかるにも何をするにも「袖の下」が必須な社会ですから、文字通り裏金まみれの社会です。
http://blogos.com/article/56237/
記事笹川陽平 2013年02月15日 08:38

「ニューヨータイムスは温家宝首相の一族が合計で27億ドル(約2150億円)を保有すると報じ話題になった。又、失脚して話題になった薄熙来氏の妻・谷開来は、殺人罪で起訴されて無期懲役が確定したが、裁判では60億元(約738億円)もの海外財産が発覚した。
いまや中国の人民が、「中国の局長クラス以上の幹部に全部死刑判決を言い渡したら冤罪の人が出てくる。半分にしたら漏れが出る」、「腐敗を取り締まらないと亡国になる。腐敗を取り締まると亡党となる」と揶揄するほど腐敗が蔓延している。」

具体性になると賄賂社会の実態は性質上表に出せない話が多いので、ニュース元の信用性不明ですが一応紹介すると以下の通りです。
https://matome.naver.jp/odai/2140650132500021201によれば以下の通りです。更新日: 2014年08月03日

「タオバオに出品しているスポーツ靴販売店の話。同店が販売しているあるシューズは閲覧回数が1万3000回あまりなのに、2万6000足も売れている。そのページを閲覧した人は全員2足ずつ購入している計算だ。閲覧回数あたりの販売数(コンバージョン)は5%に達すれば上々と言われる。同店はどのようなマジックを使っているのか……。

出典中国ネットモール最大手タオバオをむしばむ腐敗=プラットフォーム企業と公共性 : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)

タオバオ従業員による、販売数の水増し表示が行われているそうです。ワイロを渡せば検索順位も操作できるとか。
北京の有名病院で幹部を務めたこともある匿名の医師(50)は、収入の8割が賄賂によるものだったと打ち明ける。賄賂がなければ月収は600ドルにも満たず、給料だけではやっていけない状態だったという。

出典アングル:賄賂が病院経営の「生命線」、中国の医療制度に矛盾 | Reuters
車の教習所でも賄賂が必要。貧乏な人は免許もとれないらしい・・・

中国では自動車免許を取得するのに、表面上、最低4000元(64000円)ほど必要なようです。しかし、先生への賄賂も必要なため、実際はもっとお金がかかります。
黄さんは、申し込みに4500元。2段階目の試験に通らず補習代に300元。毎回車の練習に1時間10元の練習場代。そして、マンツーマンの費用として1000元。
その上、先生への謝礼金とタバコ代で3段階目の試験が終わるまでにすでに1万元近く払ったというのです。

出典中国では車の教習所でも賄賂が必須。貧乏は免許さえ取れない実情。 | お金に関する海外の反応【お金の学校】

教習所の先生に謝礼を渡さないと相手にしてくれないそうです。1万元は日本円で168000円くらいです。結局、日本の教習所と同じくらいの金額が必要なんでは?
ワイロを使って試験をパス。お金持ちの免許取得はスムーズに済みそう。
金まみれの中国の大学・高校・中学・・・我欲強すぎ。
親は自分の子供の成績が少しでも上がるように、先生に賄賂を贈って特別に面倒をみてもらうように頼む。現金を贈るケースもあるが、車を運転する先生であれば、ガソリンのチケットを贈るケースもある。無論、これは一例に過ぎない。親から金品をもらった教師は特別にその子供の面倒をみる。

出典賄賂・不正所得・・・・金まみれの中国の大学・高校・中学 – バンクーバー風車小屋便り・全カナダ「ちびまる子ちゃん」愛好会 – Yahoo!ブログ

貧乏な家の子供は先生から相手にされないようです。
中国の大学では、単位が足りなかったり卒論が合格しなかったりすると、留年になる。本来、留年は教育の品質管理の有効な手段であるが、中国の大学の卒業生を見ると、明らかに真面目に勉強していない学生も卒業している。実は、成績の悪い学生は先生に賄賂を贈ることで単位をもらうのだ。その賄賂は金品とは限らず、女子学生の場合、体を贈ることもあると言われている。

出典賄賂・不正所得・・・・金まみれの中国の大学・高校・中学 – バンクーバー風車小屋便り・全カナダ「ちびまる子ちゃん」愛好会 – Yahoo!ブログ

試験の点数も賄賂で買えるそうです。
そして、官僚の腐敗。悪党どもが多すぎる。
中国、腐敗官僚5万人超を13年に立件 汚職構造の深刻さ示す

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140310/chn14031018590008-n1.htm

中国では、ほぼ毎年4万人以上の官僚が汚職で立件されます。それも近年、増加傾向にあるそうです。
報告によると、立件された閣僚級は8人で、局長級は253人。100万元(約1680万円)以上の汚職は2581件だった。
出典中国、腐敗官僚5万人超を13年に立件 汚職構造の深刻さ示す

大手企業でさえ賄賂要求に応じざるを得ない実態については、https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#では、もうちょっと格式のありそうな報道です。(執筆者:弁護士 東城 聡)

1.中国の法律を確認
「2013年9月11日、自動車マフラーなどの部品大手のフタバ産業の元役員が外国公務員への贈賄罪違反容疑で日本の愛知県警に逮捕されました。中国広東省の地方政府役人に対して、工場設備の届け出違反を見逃してもらう見返りに、3万香港ドル(45万円相当)と15万円相当の女性用バックを渡したのが逮捕にかかる被疑事実とのことです。」
上記は日本の不正競争防止法に基づいた逮捕ですが、中国の法律はどのようになっているのでしょうか。
「不正な利益をはかるために、国の職員に対して財物を供与した者は、贈賄罪とする。」(刑法389条)
2.立件の基準は公開されている
3.中国司法業界の贈賄の実情
もっとも、上海の高等裁判所にあたる高級人民法院の裁判官4名が、ある事件の当事者から女性をあてがわれて性的なサービス接待を受けていた疑惑が一部ビデオ付きで報道されており、例外的なケースが残念ながらまだ残っているという点も否定できません。
なお私の親しいある中国弁護士は日系企業の弁護をしていたところ、和解の際に裁判官に賄賂を直接的に要求されたようです。しかし日系企業のクライアントはコンプライアンス上この要望をきっぱり断ったところ、和解内容は特に不利な内容にはならなかったそうです。」

以上によれば立件基準も公開されており先進国と変わらない透明な運用基準が公開されています。
膨大な日常業務でいつもチップみたいに賄賂を要求されている中で、どういう場合に立件されるか?にかかっている・これが人治主義と言われる根拠なのでしょう。
裁判途中で裁判官から賄賂を要求されるというのですから驚くべき実態です。

政争と粛清3(大躍進政策・モンゴル人等の大虐殺)

頭のいい人・秀才から見れば訳のわからない?人を抹殺しないで、グダグダした言い分を根気よく聞いて「納得」の上で進めないと内政はうまく行きません。
民進党の野田元総理が堅い支持基盤を持っているのは見るかに愚直・言葉にならない気持ちを近いしてくれそうな風貌(具体的に知らない大多数にとっては内容もそうだろうという安心感)によるでしょう。
私の持論ですが、秀才が政治運営するのは無理があります。
秀才?理念先行の集団が政権を取ると面倒な利害調整を端折って党内抗争で勝った方が独裁→計画経済=国民に対する問答無用の強制→抵抗勢力・集団・少数民族に対してはまとめてシベリヤへ強制移住・権力内部では猜疑心の再生産になって終わりのない個別政敵粛清に行き着いたものです。
ポルポト政権の大虐殺も中華人民共和国政府がモンゴル族や満州族、チベット族を大量抹殺したのも説得の手間を省く同じ流れでしょう。
チベット族の民族抹殺政策はインドに亡命したダライ・ラマの抵抗によって世界に知られていて、以下紹介する大躍進政策失敗に関するウィキペデイアの解説にもチベット族関係が出ていますが、モンゴル・満州族等に関しては記述がありません・・外部に逃亡しようのない内陸部の満州族やモンゴル族の大量虐殺はもっとひどかったのにまだ一般化していませんが、そのうち一般化して来るでしょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/によると以下の通り(引用文献名が地道な調査報告でない点が実態そのものか単なる主張に類するものかどうか頼りないですが、)人口の6割も被害を受けていると書かれています。
(追記10月19日日経朝刊6pの中外時報欄に「楊海英静岡大学教授らの研究によれば内モンゴルで文革中に『モンゴル人のジェノサイド』が起きた。ただその実情を伝える情報は中国の内側では封印されている」してとさりげなく触れているように徐々に大手新聞も扱うようになってきました。)

「内モンゴル人民革命党粛清事件(うちモンゴル-じんみんかくめいとう-しゅくせいじけん)とは、1966年から1976年にかけて、モンゴル人数十万人が中国共産党によって粛清された事件[1
1949年に中華人民共和国が建国されると、内モンゴル自治区には漢民族の大量移住が行われ自治区内におけるモンゴル人の人口比率は大幅に減少した。1960年代になり中ソ対立が顕在化すると「内外モンゴルの統一」を口実にソ連の介入を招きかねない内モンゴルの自治は徹底的な弾圧を受けることとなる。1966年に開始された文化大革命で内モンゴルへの中央からの介入がより強化され、7月12日、鄧小平は内モンゴル自治区主席であったウランフを呼び出し[2]、「内外モンゴル統一を企む民族分裂主義者」「現代の王公となって独立王国を築こうとしている」などと攻撃して失脚させた。内モンゴルでは内人党分子とされたモンゴル人が弾圧された。
こうした混乱は続き1969年には内モンゴル自治区に軍政施行、内モンゴル生産建設兵団が組織的に送り込まれ、1970年には内モンゴル自治区は廃止され周辺各省により分割された。
1966年から1976年にかけて中国政府は内モンゴル自治区(南モンゴル)、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)、青海省(チベット)、甘粛省、東北三省(満洲)に先住していたモンゴル人に対して「分裂主義者」「地域国粋主義者」などの罪名のもとで70万から80万人を投獄し、5万人から十数万人を殺害した[1][3][4]。これは当時の内モンゴル自治区の人口の6割以上を占める[4]。」

内政を底上げするには根気よく民度をあげるしかない・「急がば回れ」の諺通りですが、民度アップは強制・恐怖政治では無理ですし・・平和な社会でしか民度が上がりませんから(現在のシリアのように日々生命の危険にさらされていると大人も自己啓発できないだけでなく、次世代の教育すらできません)、暴動や革命による社会の混乱は生活水準・民度アップの目的には反したマイナスの結果を生みます。
受け皿になる社会実態の変化がない以上社会を権力で変えようがないのですから、中国のように何回王朝が倒れても同じ政治形態をとってきたのは実態に即した知恵だったのです。
あたらしいスローガンで政権奪取しても、社会がその段階にない場合や社会が新しいステージに入っていても政治運営経験や能力がなくてその実現能力がない場合には、手っ取り早い政権維持のためにクロムウエルやジャコバンのようにエネルギーを政敵を粛清したり政敵駆逐が片付いて独裁体制が固まると今度はナポレンのように外延拡大に向けることになることを書いてきました。
イワン雷帝以来ロシアは外延拡張政策に突っ走ってきて、民生向上に向けるべき資源を民生に向けられなかったので西欧諸国と生活水準で大きな格差が生じていたことが革命を必要とする原動力であった筈ですが、ロシア革命後利害調整の必要な民政能力のない悲しさで、(レーニンも新経済政策・ネップをやったもののうまく行かず、「1歩前進二歩後退」などと失敗をごまかしていましたが)結果的に後継者は外延重視政策に切り替わって行くしかなかったと思われます。
その結果数千万の餓死者を出しながら穀物輸出をつづけ〜国民不満を抑えるためのスターリンの大粛清政治となり、国内では粛清が怖くて批判できず、民生は縮小均衡の螺旋状態に陥っていました。
この辺は毛沢東の何千万の餓死者を出したと言われる大躍進政策(政権奪取→毛沢東の党内基盤確立後民生向上に踏み出した点は正しかったのですが)とこれに続く文化大革命も同じです。
ウィキペデアによる本日現在の大躍進政策の記事です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/

1957年11月6日、ソ連共産党第一書記ニキータ・フルシチョフは、ソ連が工業生産(鉄鋼・石油・セメント)および農業生産において15年以内にアメリカを追い越せるだろうと宣言した。毛沢東共産党主席はこれに触発され、1958年の第二次五ヵ年計画において中国共産党指導部は、当時世界第2位の経済大国であったイギリスをこれらの農工業の生産指標において15年で追い越す(後に「3年」に「修正」)という、壮大な計画を立案した
しかし、市場原理を無視して、一部の農工業生産指標のみにおいて3年間で米英を追い越すほどのノルマを人民に課し、ずさんな管理の元でこれらの農工業製品のみに対して無理な増産を指示したため却って生産力低下をもたらした。
1959年の7月から8月にかけて、江西省の廬山における会議(廬山会議)において、共産党の要人・国防大臣彭徳懐元帥が大躍進政策の問題点を諫めた。この指摘に対して毛沢東は、労働者を搾取する制度を正当化する観点が含まれているとして、社会主義への裏切りであると拒否。彭徳懐は失脚させられた。この結果、同政策に意見するものがいなくなるとともに、一層無理なノルマが課されるようになり、ノルマを達成できなかった現場指導者たちは水増しした成果を報告した。そして、その報告を受け取った毛沢東は実態を把握しないまま更なる増産を命令するという悪循環に陥っていったのである。
また、需要や流通、輸出入やインフラストラクチャーなどを含めたマクロ経済やミクロ経済のメカニズムのみならず、生態系全体のシステムをも完全に無視し、単に数字上の生産目標達成のみを目的とした、単純かつ一面的な計画を押し付けたことも甚大な被害を招いた。経済のシステムや自然はごく単純な合理思考で改造、操作できると考えてしまったのである。
大躍進政策によるチベットの惨状について
パンチェン・ラマは周恩来首相に改善を求めている[3]。
チベットの多くの地域で、民衆が餓死している。地域によっては、民衆が全滅してしまった所もあり、死亡率は恐ろしく高い。過去においてはチベットは、暗く野蛮な封建社会であった。しかし、このような食料不足を経験したことは無かった。特に仏教が広まってからは、そうであった。チベット地区の民衆は、極端な貧しさの中に生きており、老いも若きも殆どが餓死寸前である。あるいは非常に衰弱し、病気に抵抗できなくて死んでいる[3]
また、公共食堂での食事を義務づけられた際、チベット民衆は1日当たり180グラムの、草や葉っぱや木の皮などが混じった小麦が配給されるのみで[3]、パンチェンラマは次のように書いている[3]。
この恐るべき配給は、命を支えるのに充分でなく、民衆は飢餓の恐ろしい苦痛に苛まれている。チベットの歴史において、こんなことは起きたことがない。民衆は夢の中でも、こんな恐ろしい飢餓を想像することはなかった。地域によっては、1人が風邪を引くとそれが数百人に伝染し、それによって多数の人が死んで行く。(中略)チベットでは1959年から1961年までの2年間、牧畜と農業は殆ど完全に停止させられた。遊牧民は食べる穀物が無く、農民は食べる肉もバターも塩も無かった。いかなる食料も材料も、輸送することが禁じられた。それだけでなく民衆は出歩くことを禁止され、携帯用のツァンパ(麦焦がし)袋も没収され、多くの人々がそれに抵抗してあちこちで抗争が起こった
政策の結末
毛沢東の主導による大増産キャンペーンが全国で行なわれた結果、生産量を増大させた地方・地区がより「革命的」であり、その地区の共産党幹部がより有能で、昇進が約束される風潮が蔓延した。そして各地の共産党幹部は目先の功を争い、毎年中央に「党の指導で、前年より更にこれだけ飛躍的に生産を拡大させた」と報告し、現実の生産量を過剰申告したり、地区中の作物を一区画の畑に集めて写真を撮り虚偽宣伝する事例が中国全土で横行した。ある地区で農作物の生産量が増大したと宣伝された場合、隣接地区の幹部も対抗上、生産量が増大したと虚偽報告するしかなく、中央への申告と実際の生産量とのギャップは年々広がる一方であった。そして中央政府は、地方から報告された生産量を前提に、輸出などに回す穀物の供出を地方政府に命じた。
「地方幹部は生産量を過剰申告したとも言えず、一度『増えた』生産量を減らすわけにもいかず、辻褄あわせに農村から食糧を洗いざらい徴発した。その結果引き起こされたのが、広範囲の農村で餓死者続出の大飢饉だった」と周恩来に近かった関係者は証言する。飢餓の最悪期にも中国はソ連からの借款の返済に農作物を輸出していた。また都市部の倉庫は穀物で一杯だったという証言が残されている[8]
結局、大躍進政策は数千万人の餓死者を出す、惨憺たる大失敗に終わった。1959年、毛沢東は政策失敗を認めて国家主席を辞任し、実質的な権力を失う。あるデータでは大躍進政策による餓死者数は3,635万人であったという[9]。1962年1月の中央工作会議(七千人大会)で、劉少奇国家主席は「三分の天災、七分の人災」と大躍進の原因を評価した。

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