内務留保の重要性と流動資金の関係1

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。
その他発行済社債の満期決済用準備金や新規投資案件用の準備資金・・トヨタがEV化に乗り遅れないように数日前にもどこかの企業に何百億円出資したと最近報道されているように、近年では機動的出資資金の用意も必要ですし、急激な環境変化に対する予備資金も必須です。
任天堂やソニーが長期の赤字に耐えて見事に復活できたのは、豊富な蓄積があったからです。
利益を毎年残さず全部吐き出して蓄積ゼロでは、リーマンショックのようなことがあると国中の企業がほとんど全部倒産する事態になります。
トヨタでさえもショック前に比べて約3割売り上げ減のまま低迷していたことが分かりますが、一般に売り上げの5%前後しか純利益がないとすれば、3年以上も3割減のままであれば、巨大な赤字決算が続いてた可能性があります。
少し前年比プラスに回復を始めたところで、トドメを刺すように米国ではトヨタパッシングが起きてこれが12年のマイナスになったのでしょうか?
時期的にいつだったかを見ると以下の通りです。
http://uskeizai.com/article/156383418.html

2010年07月15日
2009年から今年のはじめまで、世間を騒がしたトヨタのリコール問題。覚えていますか?
2010年2月28日 トヨタリコール問題 アメリカの国策的日本いじめ
あれの騒ぎから半年が経とうとしていますが、自動車道路交通安全局(NHTSA)は、第三者機関によるトヨタ不具合の調査結果が報道されていました。ウォールストリートジャーナルによると、NHTSAがうけたトヨタ車の不具合報告は、3000件以上。このうち、93人が亡くなった死亡事故が75件ありました。
ここでクイズです。
このトヨタ車の不具合報告を受けた死亡事故のうち、トヨタ側の欠陥によって起きた死亡事故は、75件中何件だったのでしょうか?
答え 1件
2009年8月28日、サンディエゴのフリーウェイで3人を乗せたレクサス車は、アクセルがブレーキマットにはさまり車が加速して事故となりました。この1件です。
あとの74件は「運転ミス」だったとか。
トヨタ問題で火がついているときは、「ブレーキだけの問題なのか」「電気系統に不具合があったのではないか」などいろいろなことが政治家、メディアで騒がれました。
■ ラフォード運輸長官は、「トヨタ車を運転しないほうがいい」と発言。
メディアで騒がれていた後に、ブレーキが踏まれた形跡も電気系統が誤作動した痕跡もなく、結局ウソだということは分かった。この運転手は自己破産寸前で、訴訟を目的に騒ぎをおこしたのではないかともいわれています。
さんざん政治家から、メディア、そしてアメリカ人が騒ぎ立てた挙句、問題のほとんどが「運転ミス」だったとは。
トヨタは世界中の車で800万台のアクセルペダルとブレーキマットをリコールしました。
いったい、このトヨタリコール問題は、なんだったのでしょうか?」

やり方は違っても結果から見ると中国の反日暴動〜焼き討ちと同じです。
個別企業で見ると松下電器に対する中国での暴動などが起きると一定期間の損金計上に耐えられる予備資金がないとすぐに倒産危機で(株暴落)海外企業に安く買収されてしまいます。
あるいは地震による操業停止など大規模損害はいつ起きるかしれません。
個人の場合で言えば、物損被害背保険あG出ればなんとかなりますが、(勤務先が潰れない限り収入は以前同様ですから)企業の場合、工場が破壊される物損の保険では補填できない・・半年から1年以上操業できない(人件費等の固定経費はかかります)損失・・この間顧客が競合他社に逃げて顧客を失うなど)損害が巨大です。
今回の神戸製鋼に始まる日産等の検査不祥事でもすぐに経営危機にならないのは手厚い予備資金・・長年の利益蓄積があるからです。
危機対応能力を磨いておくべきだとか、不祥事を起こさない体質にすることこそが優先課題という反論があるでしょうが、それは次元の違ったすり替え議論です。
世界展開に合わせてあちこち網ののように広がったあちこちの出先で日々の支払いが必要ですので手元流動資金が増えて行くのは当然です。
個人でも同じで一定の年齢になれば、収入全部を毎年使いきっている人・病気したらすぐに生活保護申請という人は滅多にいないし賞賛される生き方ではありませんし、中小企業でも同じです。
メデイアが内部留保拡大を問題視して繰り替えし報道するならば、ここ約10年の企業規模の変化率及び、個々の企業にとっては近々満期のくる社債決済資金の積立や企業買収資金を準備するなどのいろんな事情を総合してもおおすぎるかどうかの個別判断を示すべきでしょう。
産業界全体で見れば一定額が溜まっていても、個々の企業別に見れば配当や納税予定資金や大型社債等決済時期の違いに合わせてそれぞれの企業が準備金を保有している違いがあります。
大口決済期が過ぎたり買収案件が一段落すれば、その企業では保有現預金が激減していても、産業界全体ではいつも大きな資金が滞留しているのは当然です。
結局産業界の規模拡大に合わせて資金が動くようになれば、1国の産業界全体の滞留(準備)資金が大きくなるのは当然です。
この種のデータの推移を見ながら、議論をしないと意味がありません。
日経新聞の大機少機に書いている200兆円という現預金の計算方法が書いていませんが、「16年度末」とだけあるので、仮に上場企業の決算期末残高を単純合計したとすれば、3月末決算企業だけの合計でしょうか?
全上場企業合計とすれば、それぞれ決算期が違うので3月末の基準日で(決算書もなしに)どうやって集計したのか不明です。
しかも、企業は決算確定後に納税や配当等を実施するのですから、決算直後の資金準備が必要でこの段階の数字の場合もあります。
企業によっては4半期ごとの速報をしていますが、4半期の開始時期が企業によって違うと時期的な食い違いがおきます。
参考までにトヨタの第2四半期の(売り上げとキャッシュフロー関係の)データを見ると以下の通りです。http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/library/negotiable/2017_9/business.pdf

当第2四半期連結累計期間の業績については、次のとおりです。
・・・・売上高は7,688億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて2,360億円 (44.3%)
の増収となり、営業利益は364億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて92億円 (34.0%) の増益となりました。
2017年8月 マツダ(株)と業務資本提携
売上高 14兆1,912億円 ( 前年同期比増減 1兆1,206億円 ( 8.6%) )
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は2兆8,143億円と、前連結会計年度末に比べて1,807億円 (6.0%) の減少となりました。・・・・

トヨタの第二4半期速報によると同社のキャッシュフローはこれまで書いてきた通り、概ね月商の1〜2ヶ月以内でむしろ少なめで売り上げ相応の必要資金・2〜3兆円前後で推移していることがわかります。
特に過剰な(無駄な)キャッシュフローを有しているわけではなさそうです。
内部留保とは、納税後かつ配当後の残高の過去数十年以上の積算合計ですから、即応決済用(納税・配当時期直前には納税・配当資金を準備し大型工事竣工予定で支払いの直前など)のキャッシュフローとは基礎数字が違います。
内部留保とは言っても「工場などの資産になっているのが普通」という反論がある時に、内部留保中に現預金が200兆円もあるとは書いていないものの、なんら限定なしに企業に現預金が200兆円もあるから、「これを投資に回すべき」という意見を書くと、内部留保の一部か?と誤解する人が出るでしょう。
ロッキード事件で500万円もらった人について当時メデイアでは「庶民感覚では途方もない巨額」と報道し、街の声として「我々庶民には・という「怒りの」声を報道していました。
希望の党の結党に当たって数十億円単位の資金が必要なことが合流の資金的背景と書いてきましたが、個々人がレストラン等で消費するのとは違った規模の資金が政治家のボスには必要であり(個人の懐に入れるお金ではありません)、必要なので個人の金銭感覚と比較しても意味のないことです。
同様にメデイアは200兆円という巨大な数字を上げて鬼面人を驚かすような書き方ですが、日本の経済規模を土台にして200兆円が多すぎるかどうかを論じないと合理的でありません。
大機小機欄は、データ根拠まで書けない小欄ですが、誤解を招かないような書き方が必要です。
内部留保の一部とは書いていないのに誤解するとは思わなかったということでしょうが・・ちょっと立ち読み的に読んだ人は「なんだ現預金が200兆円もあるのか?」と驚き誤解しがちです。
内部留保と言ってもそれは「現金ではな工場等の資産になっている」と一般に反論されている時に、関係のない記事でそれとなく「現預金が200兆円以上もある(利用されないで眠っているかのような書き方)のは問題」という書き方をしていると国民を誤解させる効果が大きいでしょう。
日本全体で見れば決済用資金としてみれば200兆円規模が必要か否かは個別企業の決算内容を精査しないと不明なことですが、このチェックがなく一方的に手元流動資金が増え続けている(企業規模拡大すれば比例して増えるのはあたりまえです)という垂れ流しでは、企業が無駄に資金を溜め込んでいるかのようなイメージ刷り込みになります。

※ 11年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」には、「山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いていて、同じ日経新聞が「日本企業の現預金11月21日に200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円という約半分の数字を基礎に議論を進めていることがわかりました。
同一新聞でありながら大幅にに違う数字を上げている点については26日に追記・再論として掲載しましたのでこのコラムの続きとしてお読みください。

ゼロ金利下で企業が資金を有効運用しないで無駄に寝かしていると株主にまともな配当をできないし、多くの企業は銀行からの借り入れや社債発行等で有利子債務負担をしているので、(優良企業のトヨタでもしょっちゅう社債発行しています)使用目的もない資金を社内に寝かしておく余裕がないのが普通です。
企業性悪説のようなムード報道ばかりしないで企業が無駄に資金を持っているというならば、その根拠を企業別に具体的に示すべきでしょう。
ゼロ金利下で利用目的もなく資金が社内に本当に無駄に寝かしているのならば、そもそも株主利益に敏感なアナリストや機関投資家・株主が承知しないでしょう。
内部留保や手元流動性が多すぎるかどうかは、本来は個別帳簿を日々精査チェックしているアナリスト等の評価・・これを反映した市場の評価に委ねるべき分野であって、素人のメデイアがつまみ食い的に世論を煽るべき分野ではありません。
言論の自由・批判が必要とは言えその分野の専門家がいるのですから、専門家の市場意見・彼らの意見総合によって相場が動いている点ををまず尊重すべきでしょう。

内部留保課税論(法人税軽減の逆張り2)

希望の党の公約では内部留保課税だけではなく法人税軽減も主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。
法人税の国際比較です。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm

 法人実効税率の国際比較

国・地方合わせた法人税率の国際比較

(注)
法人所得に対する税率(国税・地方税)。地方税は、日本は標準税率、アメリカはカリフォルニア州、ドイツは全国平均、カナダはオンタリオ州。なお、法人所得に対する税負担の一部が損金算入される場合は、その調整後の税率を表示。
OECD、各国政府資料等

しかも企業蓄積を吐き出させたとしてもその入金は一時的入金でしかないので、恒常的社会保障経費を賄うのは無理があります。
韓国の例を20日に見たように内部留保課税をやって見たものの大した効果がないと見ると、文政権は法人税増税を発表しているのは、内部留保が大きすぎる論の本籍・大企業性悪説の一環である本来的性格を示しています。
希望の党が法人税軽減と内部留保課税という矛盾する税制のセット主張するからには、よほど巧妙なカラクリが必要・例えば内部留保課税を骨抜きにするなど複雑な仕組みが必要、・・骨抜きにすると税収が上がらないので希望の党の消費費税不要の主張根拠と矛盾してしまうので言えなかった?・・これと一体の説明が伝わって来ないところを見るとメデイア受けする口あたりのいいことを主張しているだけだったように見えます。
矛盾することも知らないと思えないのですが国民には分からないから宣伝しまくれば良いと思ったのでしょうか?
内部留保課税をすればその結果日本がどうなるかではなく「テレビが言っているから良いのジャないか」と思ってメデイアの作り上げる風に乗ってくる・誘導通りになっている国民が多いと思った小池氏の選挙戦略だったのでしょう。
私の周りでも(来客等に)それとなく聞いてみるとメデイアによる長期的刷り込みが奏功していて、「内部留保=悪」でこれを庶民に分配すべきだが、(庶民が飢えてるのに悪徳業者・地主が土蔵にコメなどを隠しているという戦後はやった支配者=悪の図式的漫画のイメージ)これが実施されないのは「しがらみ」によるという刷り込みが成功しているらしく「しがらみをリセット」するという「小池さんの発信力はすごい」と陶酔気味の人が結構いました。
メデイアの宣伝にそのまま乗る人はそれが正しいと信じているからではなく、自分が社会での敗者(エリート層でもその中の敗者)意識が強く、成功者・金持ちに対するやっかみがあって心情的に受け容れられている・・偶然ブームになったのでこの機会に鬱憤を晴らしたいと便乗している印象です。
災害等で混乱が起きると日頃不満に思っているグループが、その機会に略奪等に参加する(略奪が「正しい」と思ってやっていることではなく、何かを持って帰ることにそれほどの意味がなく)のと似ています。
人種差別の潜在意識が底辺労働者層に多く何かあるとそれをきっかけに爆発するように見えるのと基礎が同じです。
21日の日経新聞朝刊「大機少機」には「16年度末で現預金等が200兆円」に達しているという意見が出ているなどイメージ連載が続いています。
上記は小欄ですので根拠を書かずに意見を端的に書くだけですが、200兆円もの大金がいかにも退蔵されて眠っているような書き方があちこちでチラチラと出てくると影響力が甚大です。
ところで、内部留保中の現預金の殆どは決済用資金であるとこれまで書いてきましたが、最近ではこの批判に対応するためにか?企業の現預金が膨らみ続けているという上記のような報道がチラチラ(具体的データなく)出てきました。
現預金200兆円の報道を見ると内部留保には現預金が多いのだと思うひとが多いでしょう。
ところで、決済用資金資金というものは企業規模に拡大に合わせて膨らんで行くのは当然です。

ロッキード事件の時に誰かが500万円もらった事件で「庶民には目も眩むような大金」という大げさな報道に驚いたことがあります。
今回の総選挙では希望の党の軍資金・何十億も必要な大金をどうするかが大きなポイントであったことを書いてきましたが、今になると立憲民主党立ち上げに枝野氏が1億円の資金をどこから工面したか騒がれているように、政治には巨額の資金がいるのであって個々人がレストラン等で消費するお金の基準とは意味が違います。
トヨタや日産.セブンイレブン等の売上規模が十年前に比べて企業規模が1、5倍になれば、これに比例して決済用資金の必要性も1、5倍になるし、その他企業も同様です。
日本の産業界総体で日々支払いに必要な資金は巨大ですから、これを庶民感情に誘導し煽ること自体不正報道です。
手元決済資金が概ね月商の最低でも1ヶ月必要、優良企業で2ヶ月分前後と言われている一般会計基準を当てはめると、トヨタの場合ここ数年年間売上高が27〜8兆円ですから、トヨタ1社だけで常時3〜4兆円前後の手元流動資金が必要になっています。
http://www.nippon-num.com/corporation/car/toyota.htmlによると以下の通りの推移です。(18年3月期は予想?)

※2003年まで日本会計基準。※2004年から米国会計基準。※売上の単位は億円
売上の単位は億円。 決算期売上高増減率

決算期 売上高 増減率
2018/03 285,000 +3.3%
2017/03 275,971 -2.8%
2016/03 284,031 +4.3%
2015/03 272,345 +6.0%
2014/03 256,919 +16.4%
2013/03 220,641 +18.7%
2012/03 185,836 -2.2%
2011/03 189,936 +0.2%
2010/03 189,509 -7.7%
2009/03 205,295 -21.9%
2008/03 262,892 +9.8%
2007/03 239,480 +13.8%
2006/03 210,369 +13.4%
2005/03 185,515 +7.3%
2003/03 160,542 +6.3%
2002/03 151,062 +12.5%
2001/03 134,244

※トヨタ自動車の有価証券報告書のデータを基に作成

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。

希望の党の公約等2(内部留保課税2)

法人税大幅減税によってアメリカへの企業回帰を促すのがトランプ大統領の立候補時の最重要公約の一つでもあり、就任後その実現ができるかが彼の支持維持のために重要課題になっていることは周知の通りです。
このように国際政治の重要テーマになっている法人税軽減(裏から言えば企業誘致のための優遇)競争の時代にあって、日本の法人税がアメリカに次ぐ2番目に高い方になっているのをどうするかが日本でも重要課題になっている現在、小池氏が国の方向性として世界潮流に反して二重課税・法人税の実質アップに舵を切る主張をする以上は、日本経済にどういう影響を及ぼしそれをどうやってフォローするかについて相応の説明が必要です。
法人税支払い後に残っている内部留保について二重課税する場合の法的・経済的諸問題について、これを推進する流合理性・・法的・経済学説があって、これまで丁々発止と議論されてきたのならば、公約に掲げるについて特段の説明がなくとも一方の説を採用するというだけで足ります。
これまでに「内部留保課税しても問題がない」という意見を寡聞にして聞いたことがありません。
もしも内部留保課税賛成論があれば、メデイアが盛んに煽っているスローガンですから、新聞等に出ない筈がないのですが・・。
希望の党はこれを言いっぱなしであるとことから見ると、内部留保課税をすれば、どうなるかの総合的検討を一切せずに・・・多分何もわからないままメデイアのおすすめ通りのメニューをパフォーマンスとして掲げただけ・・という印象を受けたのは私だけではないでしょう。
こんな突拍子も無い内部留保に着目するようになったのは、民主党政権獲得時の埋蔵金論と根っこが同じような印象です。
我が国で内部留保課税発想が動きだした経緯は以下の通りです。
http://www.sankei.com/west/news/140828/wst1408280034-n2.html

2014.8.28 02:00
賃上げへ、大企業「内部留保」課税に踏み切る韓国強権政策で韓国経済はどうなるか…日本では禁忌、正反対の経済政策の明暗は
大企業への内部留保課税をめぐっては、日本では平成22年の民主党政権下で、浮上したことがあった。
当時の鳩山由紀夫首相が同年2月、日本共産党の志位和夫委員長と会談。志位氏から「過剰とされる大企業の内部留保に課税し、雇用拡大や中小企業に還元するべきだ」と促され、「検討してみましょう」と応じたのだ。
日本商工会議所からも「(首相発言は)真意を測りかねるが、企業の国際競争力の観点から不適切だ」(岡村正会頭)と批判があがったほか、当時の平野博文官房長官が慎重な姿勢を示すなど政府内からも懸念が広がった。結局は、菅直人副総理が国会で「特に検討することは考えていない」と明言。内部留保課税について「首相からの検討の指示もないし、私自身考えいない」と述べ“騒動”を1週間ほどで収めた過去がある。
そんな日本では曰く付きの政策が、奇しくも韓国で実行されようとしているのだ。
・・・

民主党政権は素人政権という評価の一端がここにも出てきました。
今でも素人的共産党の関心を小池氏やメデイアは引きずっているようです
上記だけでは韓国で実際に実行されているのか不明ですが、以下によると既に実施されているようです。
https://zuuonline.com/archives/181140

企業の内部留保課税」に批判が相次ぐのはなぜか
石谷彰彦2017/11/10
海外の事例で言うと、韓国は大手企業の内部留保吐き出しを目的とした留保金課税を2015年から導入している。年間所得から設備投資・人件費増加・投資家への配当を除外した金額に対して10%の税率で課税している。
人件費増加・投資・配当を行えば課税所得が下がるが、あくまでも単年度の所得に対する課税であり、こちらも積み上げた利益の総額に課税されるものではない。
・・・韓国における留保金課税導入の結果として、配当の増加には回ったものの賃上げには結びつかなかったとされている。
・・・賃上げを促進する税制や助成金であれば、すでに法人税における「所得拡大促進税制」や雇用関係助成金(例えば「キャリアアップ助成金・賃金規定等改定コース」)があり、効果の疑わしい制度を新設する必要性は乏しいと考えられる。(石谷彰彦、ファイナンシャルプランナー)

韓国では各年度の税引き後利益から、配当・賃上げや工場等に投資しなかった分にだけ10%課税する・・過去の蓄積分には課税しないという程度らしいです。
過去の蓄積にいきなり課税される・税引き後の利益で入手した工場や自宅を売れと言われるような政治ではたまったものではありませんから、いくら強権政治の韓国でもこれはできなかったようです。
このように常識的結果・・次年度からの剰余金にしか課税しない(しかも設備投資などを除くので、何かに換金してれば良い・・例えば出店予定地/社員の独身寮用にマンションを買ったと言えばいいのかな?何か買っていれば大方控除になるでしょう)となれば実際の課税対象は微々たるものになるでしょう。
他国にも実施例があると内部留保課税を擁護する意見(希望の党の言い分?)もあるようですが、もしも韓国の例によるならば、内部留保課税は未投資の現金剰余分だけに課税する・・実際の課税段階で投資済み分を除くのであれば、せっかく企業買収したのを内部留保だから売却しろと言われるバカなことがない・実害がないかも知れませんが、その代わり喧伝されているほどの税収増にはなりません。
当初から書いてきたように大手企業は社債発行による巨額借金をして投資しているのが普通で、無駄な現金をほとんど抱えていないのが普通です。
投資済みには課税しない→決済用に保有している現預金部分にしか課税しないとなれば課税対象は微々たるものになります。
しかも過去の累積剰余金には課税しないでその年の剰余金だけというのです。
これでは、数十年以上かけてたまった累積剰余金=内部留保蓄積が3百兆円・これに対する数%の課税でも莫大な税収というメデイアの触れ込み宣伝は、いいとこ取りの使い分け・・何の関係もない実質的デマ報道だったことになります。
希望の党の説明は以下の通りらしいです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

希望の党は選挙公約で消費税増税を凍結し、その代替財源として内部留保課税を打ち出した。増税の実施を掲げた自公両党に対抗するためとはいえ、「(大企業が抱える300兆円の内部留保に)2%の税金をかければ、増税凍結分は浮く」という課税案は経済界を驚かせた。この案を主導したのも、希望の党を率いた小池百合子東京都知事のブレーンを務める投資ファンド経営者のようだ。

上記の説明によれば、300兆円に課税する予定の数字ですから、韓国で実施されている内部留保課税のように現金部分だけの課税を前提としているとすれば、300兆円に2%かけるというメデイア宣伝は辻褄が合わなくなります。
だから希望の党では、韓国でやっているが問題が起きていないとはっきり言えなかったのでしょうか?

都民ファーストの実態4(離党議員の主張2)

昨日引用のhttps://thepage.jp/tokyo/detail/20171005-00000013-wordleafからの続きです。

音喜多氏が離党を決意した経緯
私が離党を決断した理由は大きく3つございます。1つ目は、都民ファーストの会のガバナンス、とりわけ情報公開の不徹底です。そして2つ目は国政政党・希望の党への抵抗感、そして3つ目が小池都知事の都政に対する姿勢への疑問です。それぞれ、ご説明をさせていただきたいと思います。
1つ目のまず都民ファーストの会の運営方針。とりわけ公約の一丁目一番地である情報公開が極めて不徹底な状態にあることでございます。もちろんそれぞれの職責のある方々、とりわけ都議会議員の皆さまが十分頑張っていらっしゃることは、私はよく存じております。しかしながら数度にわたる代表交代の際に象徴されるように、55人もの都議会議員がいながら、この代表人事は密室でたった3名、数名の役員によって行われ、われわれには一切の理由、その過程が知らされることはありませんでした。これでは、いつ、どこで、誰が、何を決めているのか、さっぱり分からない。ブラックボックスそのものではないのか。われわれが非難をしてきた、まさにそのブラックボックスを、今度は私たち自身がつくり出しているのではないか。そのように率直に感じています。
これは情報公開、そして民主的なプロセスという観点からも極めて重大な問題です。議員によって程度の差はあったようですが、少なくとも言論統制、取材規制、こういったものも行われておりました。私に関して言えば、ほとんどのメディアに出ることは事実上、禁じられ、議員個人の自由な意見を述べることはできませんでした。議員が自分の考えを外部に伝えるのは、民主主義の極めて重要な役割の1つです。これを制限されれば都民、有権者に十分な情報を伝えることはできません。政党としてやってはいけない、致命的な、ガバナンスの欠如ではないかと思います。
こうしたことを許す党規約自体も、代表や一部幹部による独裁とも言えるものが可能となっているもので、早急に改善が必要であると考えています。新人が多く、まだ未熟な組織であるから、制約が必要であるということも一定数、理解はいたします。しかしながら、まだまだこのように、公約にあった情報公開、これが不十分なうちに国政政党の選挙に力を尽くすような状態は、私は順番が逆であると思います。
2点目は国政政党・希望の党への抵抗感です。小池百合子知事が代表として発足した希望の党にはまだ詳細な公約も発表されないうちから、右から左まで思想も政策も理念も異なる政治家たちが200名近く集まっておられます。私にはどうしてもこれは選挙目当ての野合のようにしか思えません。仮に私が都民ファーストの会にこのまま残れば姉妹政党として、この希望の党を無条件で応援しなければならなくなる。それは私は政治家としての許容範囲を越えていると、そのように判断をいたしました。
3点目は、以上の2点も含めまして小池知事の政治姿勢に、残念ながら私自身が疑念を持ってしまったことです。国政政党の代表と東京都知事。二足のわらじが悪いというわけでは必ずしもありません。しかしながら今の東京都には豊洲市場の移転問題、オリンピック・パラリンピック、さまざまな課題が山積しています。この状態で国政進出に手を伸ばすことが果たして正しいのでしょうか。そして何より都知事自身が都議選の直後、都民ファーストの会の代表を都知事職に専念するからと言って突然、退任をされました。そういった理由であるからということで私自身も、急な発表ではあったものの自分自身を納得させてここまでやってまいりました。しかしそこから期間を待たずして国政政党を立ち上げて自らその代表に就任される。これはどうしても私は受け止めきることができません。」

上田、音喜多両氏の離党理由を見ると、小池氏が都知事選に立候補した時に応援してくれた大切な当初支持者を大事にしなかった実態・しかも都民ファーストが、都議選で50名だったか?大きくなった結果当初支持者が隅に?追いやられるようになっていった流れや、内部にいたことから、小池氏のグループ統率の仕方が如実に伝わってきます。
http://otokitashun.com/blog/togikai/12196/からの引用です。

通例であれば都議会議長や各会派の代表者が参列する登庁セレモニーになんと、通例であれば都議会議長や各会派の代表者が参列する登庁セレモニーに軒並み都議会議員たちが欠席し、出席したのはかがやけTokyo3人のみ

上記の通り上田議員や音喜多議員は、小池フィーバーによって急浮上した新人ではなく、小池立候補を担ぎ上げたたった数人の都議3人の内の2人であったようです。
文字通り最も大切にすべき股肱の仲間です。
都議選の結果50名もの都民ファーストの議員が当選したことで彼らがはずされ始めたようです。
都議選が終わって9月都議会が始まるとほとんどが新人中心の都民ファーストの会派では、それまでの都の懸案も具体的実情も不明で、どこでどの程度の発言をしてよいか不明・・結果的に都知事の都政方針を黙って聞いて拍手するだけの翼賛機関化している・・議会の意味は何か?という遠慮がちな批判報道が出ていました。
何のための知事と議会との二元代表制か?小池知事前よりも双方の緊張関係がなくなっている批判です。
この辺が議員内閣制の国会との違いです。
国会議員の中から総理が選任されていますが、二元代表制と言われる都知事の場合、与党議員から選任される選任関係がありません。
与党とは言っても公約や思想方向を支持するというだけの関係ですから、行政府の政策は与党意見が政府意見になるのではなくまず行政府内で作りあげた政策に、議会側としてはこれを承認するかという順序の違いがあります。
与党でも議会は議会の職務として、知事とは別個独立して首長をチェックする職務があります。
アメリカのトランプ大統領と共和党の関係は文字通りそういう緊張関係で運営しています。
メデイア情報によれば新人が多いなら当面そういうものだろうと思っていましたが、上記議員を当初都議団幹事長にしていたものの、公的資料要求をしてはならない→議会側の独自政策提言や議員の対外発言禁止しをしていたというのですから驚きです。
(当面野党であっても)所属議員に対外外発言を禁じていたとは国政の一端を担うべき政党の運営方法としては驚きです。
「党ができて間がないので個々の議員が好き勝手な意見を言われては困る」という仕方のない面もあったでしょうが・・。
それは禁止によるのではなく、「発言には気をつけてください」という指導の問題でしょうし、その前提として党内意思統一に努める努力・成果があってのことでしょう。
離党した両都議にとっては政治の「透明化」がキーワードであったようですが、小池氏が都知事になってからの政治手法が真逆だったというのが彼らの主張で、そうなると彼らの政治理念に基づく政治発言は、都知事当選=都議会戦後の小池氏周辺に集まる多数派と相容れない結果あつれきを生み発言禁止となっていったのでしょうか。
ちょっと読むと物言う政治家は邪魔・議会多数を握るコマでさえあれば良いと言わんばかりの小池氏の独善的党運営のイメージですが、小池氏の政治手法がメデイアパフォーマス中心である以上は、小池氏の直感的発言に頼る→意見を積み上げる政治向きではない面もあるだろうなとは思います。
小池フィーバー失速前から内部では都知事選で応援した小グループの政治集団の人材を次々と弾き出している・あるいは遠心力が強まっている基礎構造が出てきましたが、音喜多氏らの所属していたみんなの党といえば渡辺喜美氏の創設した国政政党の流れを組む地域政党でしょうか?
あながち大量得票には右翼や左翼の両端が邪魔になったというばかりではなさそうです・独裁運営するには経験のある政治家あるいは「独自の理想を主張する政治家はいらない」点に共通項がありそうな印象が出てきました。
簡単に言えば自分一人に焦点が当たれば良いパターンでナンバー2は不要というよりも邪魔なタイプです。

都民ファースト・希望の党の実態2(内容空疎)

独裁・恐怖政治の場合、議員は国会で多数を握るための将棋の駒でしかない・・議員レベル無視で数さえ揃えばいいことになりますが、そこまで力を蓄えるにはまずは政治力・・幹部〜中堅〜末端支持者の養成が必要です。
民進党の場合には、蓮舫代表が原発方針を発表したものの党内の反発で機関決定に持ち込めなかったように党の機関がそれなりの役割を果たしていましたが、希望の党の場合、文字どおり個人商店の域を出ないまま国政担当になろうとするのですから無茶すぎました。
民主党の場合機関決定・相応の衆議をあつめていても政策そのものが現実離れしていた点が命とりになりましたが、小池氏の場合、党内議論をするほどの人材が揃わない点もあるでしょうが・個人の思いつき(学者・ブレーンの意見を参考にしていても現場に基礎のある政治家の意見集約とは現実性が違います)政見ですから民主党政権成立時の公約よりもさらに幼稚すぎる印象でした。
小池氏は投開票日にパリの国際会議に出ましたが、そこでも発言は抽象論ばかりだったと言う・・最初に登壇したパリ女性市長の発言との対比が11月8日のmsnに出ています。
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/

パリで見た「首相になりたい女」小池百合子氏の「限界」
文春オンライン 広岡 裕児7 時間前
・・・聞き手のケネディ前駐日大使は、前夜の選挙で野党第2党になったなど小池氏の「ナショナル・ポリティシャン」の役割も紹介しつつ「今日は時間もないのでメイヤー(市長)としての共通の問題にフォーカスしたい」と小池氏を紹介する。そして小池氏の登場である。
「東京は世界の中の大都市の1つです。2020年にはオリンピック・パラリンピックを開催し、2024年にはパリへバトンタッチします。(中略)東京がリーダーシップをとり、これからも世界中の方々に色々な知恵、テクノロジー、マインドセットの3つを提供したいと思っています」。出だしは快調だ。
だが、「あなたはC40ミーティングに来ていますが、東京は新しいテロリズムやパンデミックという問題にどう取り組むのでしょうか」という質問に対し「日本は島国なので……」といった建前論ばかり。
小池氏は、日本人記者向けに日本語で話すので、だんだん小池氏の遊説を聞いているような気分になってくる。ケネディ氏が「女性がもっとリーダーシップをとれるポジションに就かなければならない」と述べたときには、待ってましたとばかり、「日本の女性の活躍ランキングは、世界経済フォーラムで、144か国中何位だと思いますか?」とケネディ氏に逆質問。ケネディ氏がモゴモゴと答えた後、すかざず「111位です!」と言い放ったときには、まさに選挙カーから聴衆に向かって話す姿そのものだった。
この流れの中で、「都知事に当選してガラスの天井を1つ破った。都議選でもパーフェクトな戦いをしてガラスの天井を破ったかなと思ったけど、今回の総選挙で鉄の天井があるということを改めて知った」という「鉄の天井」発言が飛び出したのだった。
対照的に具体的な発言をしていたのは、その直前に登場したパリのアンヌ・イダルゴ市長(現・C40議長)。市長たるもの「『複雑な問題だ』『明日はよくなる』で終わってはならない。すぐ市民から要求が出ます。それに答えなければならない」と語り、小池氏がまさに悪い見本のようだった。イダルゴ市長はこの場でも、また記者会見でも2024年の五輪にこだわらず、インフラ整備まで含めた総合的で持続的な具体策・ビジョンを語っていた。」

物分かりの悪い私には見出し通りの結論.評価になるのか上記記事だけではただちにはピンときませんので、こんな記事評価が出るようになっていると言う程度の紹介ですが、ムードだけを日本メデイアが煽ってきた問題点がここに出ていますし、私が思っていたよりフランス国民の政治家選択眼が高いことがわかりました。
この裏返しで、日本に対する評価・・こんなムードレベルの意見しか国際会議で言えない人が都知事になれる程度の国か?と言う大恥をかくために行ったような印象でしたが、一方で会議直前に選挙結果が出ていたので、この国際会議参加者も日本民度を単純評価するにはためらったでしょう。
日本国民が「メデイアの作り出す風」に惑わされなかった10月22日の選挙結果によって、徳俵で踏みとどまった・国際的マイナス評価を若干修正させた面があります。
このほかに、以下は10月18日の記事ですから投票日前ですが、風だけ頼りに組織・人材充実をおろそかにしている小池氏と地道に自分の組織を作り上げてきた仏マクロン大統領との比較記事が出ていますのでこれを紹介します。
http://bunshun.jp/articles/-/4554?utm_source=msn.com&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink

小池百合子が仏マリーヌ・ル・ペンとそっくりな理由とは?
genre : ニュース, 政治, 国際広岡 裕児2017/10/18
小池都知事とマクロン大統領は正反対
・・・・小池氏は、単に「風」が吹いて勝ってきただけだ。そして、東京都議会選挙では公明党に乗っかり、今回の総選挙では民進党を乗っ取った。思わせぶりと権謀術数で政界を揺さぶっている。マクロン氏は、たしかに既成政党には頼らなかったが、自分の支持母体「前進!」をしっかり作っていた。美辞麗句に踊らされるのではなく熟慮して彼の思想・政策に共鳴した支持者の地道な草の根運動が花開き、さまざまな幸運が積み重なったため道が開けた。けっして「風」が吹いたわけではない。ちなみに、マクロン氏はわずか半年で、20万人の組織を作りあげたが、マスコミを利用したわけではない。ITと現実をうまく組み合わせ、人々の自主性を尊重した成果だ。マクロン氏は我が道をゆく。左の社会党に所属する政治家も右の共和党の政治家も彼らの方から進んでマクロン氏の運動に参加してきた。マクロン氏は労働法改革などの長年温めていた政策を行なうために大統領選に出馬した。そして、支持率の低下など気にせずに、それこそ、大統領就任の当日から実行に移している。
むしろ、小池氏に「そっくり」な政治家は別にいる。
ル・ペン氏は「国政に右派も左派もない、フランス国民を結集する」というスローガンを打ち立てて大統領選に臨んでいたが、彼女の軸足ははっきりと右、「国家主義」である。小池氏も、社会民主主義を「排除」したがっている「右」の女性政治家だ。
まず、この点で小池百合子はマリーヌ・ル・ペンに「そっくり」である。
2人が「そっくり」な理由はそれ以外の部分にある。
第一には、民衆の不満をうまくくみ取り、聴衆を魅了する話術で、人々に熟考させることなく、「理解と納得」を得て「風」をつくる術に長けているという点だ。
・・私は「文藝春秋」(2017年5月号)で、ル・ペン氏へのインタビューを行った。奇しくも同号に、小池百合子都知事が「石原慎太郎の嘘、豊洲移転の判断」という手記を寄せている。これを読んで、「2人は似ている」と思っていた。小池氏の手記は、「文藝春秋」(2017年4月号)に掲載された石原元都知事の手記への反論である。じつに、歯切れがよく、気持ちいい。言っていることはいかにもまっとうである。
小池氏とル・ペン氏はともに、女性が立ち向かっていくというモチーフを活用していた。小池氏が衆議院解散前に立ち上げた「希望の党」は、小池氏を彷彿とさせるミント・グリーンのツーピースを着た後ろ姿の女性が、ベテラン議員らしき男性たちからの罵声をはねのけ、「さらば、しがらみ政治」と声高にマウンドへ上がっていくようなイメージの動画を公開中だ。ル・ペン氏は、「私は女だ」「母親だ」と強調したうえで、行動し、ヨットを操縦して海の上に出て行く姿を、プロモーションビデオのように仕上げていた。
「フランスを立て直す」と「日本をリセット」が重なって見える
こうして2人とも、あっという間に「風」を巻き起こしていった。
ところが、政策を「実行する」ことについては、2人ともに、疑問符を付けざるを得ない。
第二のポイントはここだ。
小池氏は、豊洲移転でもオリンピック会場でも一旦ストップはするものの、その後がなかった。べつに「安心」についても「安全」についてもさしたる変化があったわけではないのに豊洲移転を認め、さらに財政的な裏付けも曖昧なままそのあと築地に戻るという奇妙な案を出した。オリンピック会場も結局、元の木阿弥になった。 また、小池氏は、「希望の党」の結党会見の冒頭あいさつで「日本をリセットするためにこの『希望の党』を立ち上げる。しがらみがないからリセットできる。今、この時期に日本をリセットしなければ、国際間競争、日本の安全保障を十分に守りきれない」などと語っていたが、衆院選がはじまっても、小池氏は漠然とした「希望」を謳い、政権批判を繰り返すだけで具体的な政策は一向に見えてこない。「ワイズスペンディング」で1兆円はすぐ出てくる、などとも言っているが、民主党が政権を取った時の「埋蔵金」とどう違うのか、よくわからない。」

今朝の日経新聞39pには、豊洲移転を昨年6月に延期決定した損失補償額として知事が議会に42億円を予算要求したことが出ていてこの結果延期による合計損失が約90億円になると書いています。
これは都の支出増だけのことですから、関連道路整備・・各種関連工事の遅れによる社会活動の停滞を総合すると莫大な(都民だけでなく)国民の損害です。
本来ならば、知事のチェック機関たると議会がこの損失に見合う延期メリットが何であったのか?など厳しい質問をすべきでしょうが、知事与党多数を頼りに議論なしに乗り切るつもりでしょうか?
「都民ファースト」で当選したので「国全体の迷惑など一切御構い無し」という意味かもしれませんが、僻地離島の港湾や道路整備など地元でもめた結果遅れても地元島民(不利益は自分にくる)への影響だけでしょうが、首都の場合、5輪会場問題一つ取っても多くの県を巻き込んだ騒ぎになったように国家全体への影響の大きい(彼女が都知事としてパリで恥をかくのは日本人の恥です)政策が多いので「よそへの影響は気にしません」というのでは首都の知事として失格ではないでしょうか?

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