継続契約保障と社会変化2(借地借家法立法2)

昨日紹介した法改正の議論の結果、平成3年に成立したのが現行借地借家法で、この新法により定期借地や定期借家制度が創設され、さらに定期契約でない場合でも更新拒絶ができるように「正当事由」の条文内容を類型的具体化して使い安く変更されました。

借地借家法(平成3・10・4・法律 90号)
第1章 総 則(第1条-第2条)
第2章 借 地
第1節 借地権の存続期間等(第3条-第9条)
第2節 借地権の効力(第10条-第16条)
第3節 借地条件の変更等(第17条-第21条)
第4節 定期借地権等(第22条-第25条)
第3章 借 家
第1節 建物賃貸借契約の更新等(第26条-第30条)
第2節 建物賃貸借の効力(第31条-第37条)
第3節 定期建物賃貸借等(第38条-第40条)
第4章 借地条件の変更等の裁判手続(第41条-第60条)

(趣旨)
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
(借地契約の更新拒絶の要件)
第6条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

附 則 抄
第四条 この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。
(借地上の建物の朽廃に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。
(借地契約の更新に関する経過措置)
第六条 この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。
(建物の再築による借地権の期間の延長に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の滅失後の建物の築造による借地権の期間の延長に関しては、なお、従前の例による。

平成3年の借地借家法との比較のために旧借家法(わかりやすくするために「旧と書きましたが、実は以下に書く通り現行の借地権の大方は、この法律の規制を受けますので、実務家では廃止された借地法と借家法が日常的アイテムになっています)を紹介します。
そこで、借地法(大正十年法律第四十九号)を紹介したいのですが今のところ、ネット情報では現行法中心で改正前の法令情報が極めて少ないので、ネット検索では借家法しか出てきませんが、更新拒絶要件関連の基本は同じですので、借家法の引用だけしておきます。

大正十年四月八日法律第五十号
〔賃貸借の更新拒絶又は解約申入の制限〕
第一条ノ二
建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス

昨日紹介した大阪市立大学法学部生熊長幸氏の論文のとおり、借地借家法制定立案時に定期借地、定期建物賃貸借制度創設の他に一般(従来型)の借地借家契約でも、更新拒絶自由の合理化を図ったのですが、いわゆる現状維持派・反対勢力の主張が強くて法制定作業が進まないので結果的に当時すでに判例で認められている正当事由を法文化する程度で収まりました。
反対派の動きが強くて借地借家法の制定作業が進まないので催促するかのように、新判例の動きが出てきたとも言われます。
結果的にこの判例を条文化する程度までは仕方がないか!という妥協ができて国会通過になったようです。
最高裁のデータからです。
最判の時期は法制定後の平成6年ですが、高裁事件受理は昭和63年(ということは1審受理はその1〜2年前)で最高裁受理は平成2年の事件ですから、借地借家法制定準備・・審議会等での議論と判例の動きが並行していたことがわかります。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52466

平成2(オ)326事件名 建物収去土地明渡等
裁判年月日 平成6年10月25日
法廷名 最高裁判所第三小法廷裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁  民集 第48巻7号1303頁
原審裁判所名東京高等裁判所原審事件番号 昭和63(ネ)3286
原審裁判年月日 平成元年11月30日
判示事項
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等の提供ないし増額の申出の時期
裁判要旨
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては、原則としてこれを考慮することができる。
参照法条   借地法4条1項,借地法6条2項

判例さえあればいいのか?となるとそこは大違いです。
上記判例があっても、「相応の立退き料を払うので出てもらって跡地にマンションを建てたい、デパート用地に売りたい、工場用地に売りたい」と言う理由では(上記旧法の自己使用その他必要条件にあたらないので)長期裁判を經ないと(上記の通り1審判決から最判まで膨大な時間がかかっています)どうにもならない・・判決時期等が不確定過ぎて計画的進行を重んじる企業用地としては手を出しにくくなります。

正社員の定義2

このブログは学者の論文でないのでいつも書くように思いつきですが、正社員か否かの区別は職業柄私の慣れ親しんだ法的視点限定で・・分類すれば、期間の定めのある・更新予定のない雇用か否かの違いのようです。(12月1日にもちょっと書きました)
社会学的関心では、規格社会を前提にしてその社会にもっとも適した働き方をしている人を正社員といい、規格外で働く人を非正規労働者と定義していることになるのでしょうか?
希望の党の公約である正社員就労支援とは「一人でも多く規格人間にします」という規格社会のさらなる拡大を目指す主張になりそうです。
人間に正式の人と正式でない人がいないのと同様に、労働者にも正式の労働者と非正規の労働者(違法就労でない限り)いるハズがないのです。
「規格外」と思われる人を必要以上に差別するから、(このシリーズの最初に書きましたが、パートもバイトも違法労働ではありません)非正規という半端な概念が生まれるしそういう区分けが必要になってくるのでしょう。
政治が目指すべきは「規格外の烙印」を押されると生き難い社会を前提にして規格適合者・正社員適合人材を増やすのでは意味がないでしょう。
結婚していない、子供がいない人も生活が普通にできるし、子供がいたり、障害等で1日に数時間しか働けない人や労働能力が規格外の人間・多様な個性を持つ人材が多様な個性に合わせて多様な生き方のできる社会ではないでしょうか?
従来女性の成功者として出てくる有名人の多くはいわゆる男まさりの猛烈型中心で紹介される傾向があった・・・男性でさえはみ出てしまうことの多い厳格な男性の理想的労働規格に女性が適合できた稀な場合ですから、こういう成功例を煽っても仕方がないという苦言を10年ほど前に書いたことがありました。
最近少し傾向が変わって来た・烈女でない普通に生きている女性が、普通に働けている姿が紹介されるようになりつつあるのは良いことだと思います。
男女や体力、方向性の違いを前提にそれぞれの生き方を尊重する社会であるべきです。
ただし、子育て中は外で働けないのは当たり前だと思考停止すべきではなく、働けるような受け皿整備、保育所の充実や職場のIT化により現場系労働でも腕力不要化し、衛生環境・トイレや更衣室設置など・・向上により女性が働き易くするなどの企業努力も重要です。

素人の私が正規・非正規雇用とは何かの意見を書くばかりではなく、専門家の意見をみておきましょう。
http://www.huffingtonpost.jp/nissei-kisokenkyujyo/temporary-work_b_11190746.htmlには、非正規と正規の定義が出ています。

2016年07月27日 16時17分 JST | 更新 2017年07月27日 18時12分 JST
ニッセイ基礎研究所
非正規雇用労働者の実態を国際比較する際に重要なのが非正規雇用労働者を区分する定義であるものの、その定義は国によって異なっており、必ずしも収斂していない。
まず、日本の労働力調査では、非正規雇用労働者を「労働契約期間、以下、従業上の地位」と「勤め先での呼称、以下、雇用形態」により区分している。http://images.huffingtonpost.com/2016-07-26-1469508110-8404116-letter16071911_2.jpg

私が素人的発想・終身雇用的関係にあるのを正社員という考え方でこれまで書いてきたのは、上記のうち期間制限に着目した分類になりますが、週35時間以上かどうかの形式区別ではなく、(週30時間内労働でも・大学教授など週30時間も拘束されていないでしょう))雇用関係が終身的安定か否かで書いてきました。
労働時間で分けると期間が時間単位〜一日〜週単位〜1ヶ月以上を含まないかなど、基準次第で総数が違ってきます。
一般常識ではパートで働いている人が週35時間超えて働いても非正規就労と思っているでしょうから、水色のグラフは社会イメージに合っていないことがわかります。
また水色の基準区分けで済むならば、社会問題になりません。

責任政党とは?2

政治権力ではどうにもならない分野で政治が公約に掲げても、正規社員総数が同じ場合、塾業者が儲かり、難関突破で正式社員になれた人のエリート意識をいや増し、国民間の格差拡大を助長するだけです。
韓国の就職塾盛況状況は以下の通りです。
http://toyokeizai.net/articles/-/178127

韓国の若者がこぞって「公務員」を目指す事
「希望」を失いつつある若者世代の閉塞感午前中の授業が終わると、塾の建物から生徒がどっとあふれ出てきた。韓国で通称「公試族」と呼ばれる、公務員試験を目指す受験生(公務員試験準備生)たちだ。
「族」という言葉が表すように公務員人気は絶大だ。2016年の韓国の就業準備生(65万8000人)のうち一般職公務員を目指す受験生は、全体の39.3%(25万6200人)にも上る(韓国・統計庁のデータ)。
韓国新政権は、深刻な就職難を変えられるか
文在寅大統領も力を入れるのがこの若年層における就職難の解決で、5月10日に就任して早々、矢継ぎ早に政策を繰り出している。
就任初日に真っ先に指示したのも「働き口委員会」の設置で、これは公約の第1号である公共部門での「81万個の働き口創出」に基づくもの。その後の5月末にも、警察官や消防員などの分野での公務員採用枠を今年の下半期(7月)から合わせて1万2000人増やすと発表した。
続いて6月末には、公務員試験では2005年から導入されている採用試験での「ブラインド採用」(面接試験で年齢、出身、学歴などを記載しない)について、電力公社や鉄道公社などの公共企業でも下半期から始めることを決定し、さらには、公共企業で働く非正規職員をすべて正職員にする「非正規ゼロ」を宣言。公共企業を突破口にして、雇用状態の改善を一般企業にも広げていく狙いがあるとみられている。

希望の党の公約を見ると韓国の切迫した就職状況・公務員を増やすしかない状況を日本社会にそのまま持ってきてそのまま日本語に翻訳して公約にしたイメージが広がります。
内部留保課税に関して11月30日に韓国経済と日本経済をごっちゃにしているのじゃやないか?と書きましが、希望の党がメデイア受けするように「正社員就労支援」を打ち出す知恵袋?メデイア系ブレーンは正規雇用を増やすには、韓国文大統領的解決・・「公務員採用を増やせば正規雇用が増える」と言う発想の受け売りをしたのかもしれません。
希望の党のブレーン・・築地移転問題も小池氏の都政は官僚機構の公式協議を経ないで独裁的に決めていく・・ブレーンとの協議で決めていく密室政治と言われています。
https://mainichi.jp/articles/20170805/k00/00m/010/137000c

毎日新聞2017年8月5日 07時00分(最終更新 8月5日 15時49分)
東京都の市場移転問題で、小池百合子知事が公表した豊洲市場(江東区)と築地市場(中央区)の双方に機能を残す「豊洲移転・築地再開発」の方針について、財源や運営費などを検討した記録が残っていないことが、毎日新聞の情報公開請求で判明した。都職員は「知事が外部有識者でブレーンの都顧問らと協議をしたため記録がない」と説明。数千億円規模の巨大プロジェクトの最終判断が「密室」で下され、その資料も存在していないという。知事が改革の「一丁目一番地」とする情報公開も軽視された形だ。

http://blogos.com/article/244468/

やながせ裕文 東京都議会議員
2017年09月06日 08:35
小池知事は語らず。都議会は追及せず。市場問題はカオスに。
本日(9月5日)、都議会の臨時会が終了しました。この臨時会は、豊洲移転の準備経費、築地再開発の調査費用を盛り込んだ補正予算を審議するために招集されたもの。都議会議員選挙後、初めて質疑のできる場であり、謎が謎をよんでいた「豊洲は活かす、築地は守る」という知事の基本方針の詳細(内実)が明らかになるはずでした。しかし、どれだけ質疑を重ねても、「豊洲に移転する」ことは理解できたのですが、「築地をどう守るのか?」は全く明らかにされず。小池知事は基本方針を策定するにあたって、何を検証したのか?これが謎なんです。決断したのは知事ですから、「なぜ決断にいたったのか」その経緯・思い・構想を都民に語る責務があります。しかし、残念ながら、なにひとつ明らかにされなかった。これでは「ブラックボックス」の都政を継続していくと宣言しているようなものです。

記者会見で豊洲と築地双方利用の決定理由を聞かれても、AIで決めたとバカにしたような回答だったと報道されています。
都議会で多数派を握った途端に密室独裁的政治を実行している小池氏が政府の透明性を求めて国政進出するというのではギャグそのものです.
元のテーマ・・正規雇用を重視し大手への就職競争をあおりすぎると振り落とされた方の劣等感・敗北感がどうなるか?と言うテーマに戻ります。
japanese.joins.com/article/820/223820.html

2016年12月22日10時32分
[ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版]
韓経:「サムスン班」「現代車班」…韓国の青年、就活塾にまで

超格差社会の実態についてはいろいろな記事が出ていますが、下記は具体的で参考になりますが長文ですので引用を控えますが、関心のある方は以下に入ってください。
https://books.google.co.jp/books?id=-_EkDwAAQBAJ&pg=PT37&lpg=PT37&dq=韓国就職塾 超格差社会&source=bl&ots=269lZ-7oXa&sig=pbSzjzp0URp4mbI4WSLjAEwbkYc&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjQs
サムスン等のエリート社員になり損ねた学生の多くを海外就職による国外脱出を政府が応援して国内不満のガス抜きを図っているのが韓国の現状です。
最近韓国外務省による日本企業に対する就職依頼が話題になっていますが(11月30日に紹介しました)、以下によると4〜5年前からこういう政策が進んでいたようです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20140318/261352/によると以下の通りです

韓国政府が若者の海外就職を積極支援
20~30代の7割以上が海外就職に興味あり
2014年3月19日(水)
韓国の場合、語学研修のような短期留学を含めると、約24万人の大学生が海外留学している(韓国統計庁、2012年時点)。この統計庁の資料によると、留学目的で6カ月以上海外に滞在している小中高校生も約1万3000人いる。これは、親と一緒に生活するため海外に行った生徒・学生を除いた数字だ。
青年委員会は19~39歳を青年と定義し、青年が望むことを国家政策に反映するために活動する委員会である。青年委員会は青年の雇用促進を重視していて、海外就職の拡大にも力を入れている。2014年から駐日韓国大使館と協力し、韓国の若者がより多く日本企業に就職できるよう後押している。

内務留保の重要性と流動資金の関係2

内務留保の重要性と流動資金の関係2

11月22日に日経新聞21日大機小機掲載の「現預金200兆円あまり」の記事についてその数字が正しい前提で「200兆円もあるからいかにも無駄に保有しているかのように・・ひいては内部留保課税が正しいかのようなイメージを振りまくのは不合理な意見であるという意見を22〜23日に連載して一旦終わりにしていました。
ところが驚いたことに、17年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」欄には、「投資抑制で山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いています。
24日から日本の雇用形態がどうなっていくべきかのテーマで連載中ですが、ここで大きな数字の違いが昨日の新聞で出てきたので内部留保→流動性資金について改めて見直す必要を感じたので本日は流動性資金等について急遽再論・追記の割り込みをすることにしました。
25日の記事も21日の記事同様で、企業がせっかくの好業績によって得た資金を再投資しないで死蔵しているのでもっと投資させるべき・・そのためには内部留保課税で事実上投資を誘導する方向性を議論すべきだというイメージ植え付け方向では同じですが、日経新聞が11月21日に「日本企業の現預金200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円と、約半分あまりの数字に引き下げて議論を進めていることの違和感です。
大きな数字変化の意味はなんでしょうか?
手元資金と現預金の表現差にどのような違いがあるのでしょうか?
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc210.htmlによると以下の通りです。

金融経済用語
手元資金は、貸借対照表の現預金(現金、預金)と短期保有の有価証券を合わせたものをいいます。これは、企業が比較的自由に使える資産と位置づけられ、その額が有利子負債を上回っている場合を「実質無借金」と言い、そのような状況の企業を「実質無借金企業」と言います。
・・・・・・
※2008年-2009年の金融危機では、日本の企業は資金調達が難しくなった経験から、手元資金の重要性を認識させられ、その後、自己防衛として手元資金を積み上げるようになった。

上記によると11月21日の大機小機記載の「現預金」の単語と25日記載の「手元資金」との違いは企業保有の短期有価証券等を含めるかどうかの違いらしいです。
そうとすると、もしもこの間の基礎数字の激変がない限り・・あるいは同時期であれば手元資金の方が、現預金合計よりも大きいはずです。
16年度末(3月末?)からわずか(直近とは10月末?)6〜7ヶ月経過で現預金だけではなく、好業績発表の続いている経済状況下で有価証券保有を含めても4割も減ったとは想定できません。
しかも同記事には「過去最高」とも書いていますので、その間に減ったとは考えられないのでどちらかが間違っていることになりそうです。
21〜23日に書いていた時には新聞記事の事実記載についてはこれを信用して200兆円が正しい前提で「意見」相違を書いていたのですが、同一新聞社の記事にこれほど矛盾がある?大幅に違っていると議論の前提である200兆円の数字が誤りなのか、それとも「現預金」の熟語表記があやまりなのかを明らかにする必要があります。
そこで前提数字自体を見てみる必要を感じて検索してみると以下の資料が出てきました。http://www.murc.jp/thinktank/economy/overall/japan_reg/watch_1703.pdfによると以下の通りです。
三菱UFJリサーチ&コンサルテイング2017年3月17日

上記は出所も計算方法も明記していて信用性の高そうなものですが、これによると16年度末200兆円という数字自体は大方あっていてこれを現預金ではなく手元流動資金と分類していますが、21日新聞記事では、この数字を「現預金」と表記したことが間違っていた可能性があります。
不思議なことに25日記事では手元資金が117兆円という表示ですが、これは逆に現預金のこととすれば上記グラフと辻褄が合いますが、25日の記事で用語訂正のつもりであれば、25日記事で「現預金117兆円」とすべきだったように思えます。
そうすれば「あゝ21日の現預金の表示が間違っていたと気づいたのかな?」と素直に理解可能ですが、25日表記が逆に「手元資金117兆円」(双方の用語利用が正しいものとして理解するには、「手元資金の方が現預金より少ない」と読まないと混乱します)と書いているのが不思議です。
上記金融経済用語の解説が間違っているのでしょうか?
念のために別の用語解説ものぞいて見ました。
https://kotobank.jp/word/%E6%89%8B%E5%85%83%E8%B3%87%E9%87%91-668563

デジタル大辞泉の解説
てもと‐しきん【手元資金】
代金の支払いなどにいつでも使用できる、流動性の高い資金の総称。現金や普通預金が代表的だが、満期が3か月以内の有価証券・定期預金等を加える場合もある。手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かないため、必要以上の確保は資金効率の面で望ましくないとされる。

上記によっても手元資金の方が現預金よりよりも大きいことが明らかで、日経新聞が独自の用語利用していることがわかります。

希望の党の公約6(正社員を増やす?2)

従来型の正社員で就労したい人の就労を支援する→大企業のトータル採用を増やすという意味であれば、容量の拡大・経済規模拡大しかないのですから幼稚園児の夢ではなく政党の公約である以上、どのようにして活性化を図るかのビジョンを示す必要があるでしょう。
内部留保課税で活性化するという程度の意見では、重税課になるのみならず、投資済み資金の引き上げを強制することになるので経済縮小路線です。
現預金だけに課税するとすれば、決済用資金すら持ってはいけないとなって取り付け騒ぎが起きて大混乱になるでしょう。
もしも経済活性化と関係なく・すなわちトータル採用数が同じでも支援するというならば、就活支援業者を増やすという程度でしょうか?
今後産業界はロボット化や自動化する一方で単純作業が減っていくだけではなく、一般事務職程度の事務職も減って行きます。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-15/ORKAID6JIJUO010

17年6月15日 17:22 J
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった。超低金利の環境下で収益性が低下する中、金融と情報技術(IT)を融合したフィンテックで業務合理化を進め、店舗の閉鎖や軽量化などによって余剰人員削減につなげる方針。MUFGの社員数は世界で約14万7000人おり、約7%の人員カットとなる。
・・・・フィンテックの進展や店舗政策の見直しによる人員削減は三井住友フィナンシャルグループも取り組んでいる。5月に公表した3カ年の新中期経営計画で、店舗のデジタル化や事業の効率化などで人員削減効果を約4000人とし・・・。

IT〜AI化によって一定の頭脳職種(弁護士で言えばある事件についてどの方向(論点)の判例を検索すれば良いかの選択を若手弁護士が担当している場合に、この種作業をAIが代用する時代が来るかも?)でさえ減って行く趨勢は如何ともし難いので、経済活性化による事業規模拡大に成功しても必ずしも正社員増加を図れるわけではありません。
上記新時代に対応できる人材が不足するとせっかく規模拡大した大手企業は、AI操作に優れた外国人に頼らざるを得ないので(優秀な外国人の国内雇用を制限して職場を守ろうとすれば、企業は人材の揃った外国にその部門を移していかないと国際競争に負けるので国内空洞化になり正社員を増やすどころではありません。
過去約20年あまり国際競争に勝ち抜くために人件費の安い中国.新興国等へ工場を移転したように、今後はIT〜AIを駆使できる人材が揃っている割に人件費の安い地域へ事務部門を含めて拠点を移動していく時代がきます。
正社員就労を増やすというより、大幅減にならないようにするには、新時代の雇用が海外に逃げないように国民の絶えざるスキルアップが必須です。
関税で守られていた企業が徐々に国際競争に直接曝されるようになった時代から、企業の保護幕が取り払われて個々人がストレートに国際競争にさらされる時代が始まっています。
今後IT化・技術陳腐化の早い時代に、これまでの正社員・終身雇用中心を前提にした国民教育システムで対応できるのか?むしろ多様な就労形態に軸足を置いて人生の途中で再度新技術を身につける方式にした方が良いのではないか・それにはどうするかのテーマを解決して行く必要があるでしょう。
人材育成は文科省の専門分野か?というとそうではなく、就労形態に関する価値観の柔軟性・インフラ次第で必要とする人材の方向性も変わってくるのを重視すべきです。
公約で「正社員で働くことを支援する」と言うだけでは、仮に政権担当者になればどんな労働観〜人生観を提示しどう言う人間を育てるための政治をしたいのか不明です・・。
日本の将来像をきっちり認識して何を具体的にするのかをはっきりさせないと、政党の公約としては意味不明となります。
希望の党の公約には、一見して「正社員が理想でありその比率をふやして行くべき」という政治姿勢・・社会のあり方として期間や時間の定めのある契約等多様な雇用・働き方をへらしていく、単線・画一的雇用社会になるのを「希望」するというアナウンス効果を狙った公約でしょうか?
ところが一方では、小池氏はダイバーシテイ化を進めるといっていたように思います。
http://www.asahi.com/articles/ASKB632GWKB6UTFK002.html

別宮潤一 2017年10月6日12時48分
「希望の党代表の小池百合子・東京都知事は6日午前、衆院選公約と新党の政策集を発表した。「タブーに挑戦する気持ちで思い切った案を公約に盛り込んだ」と説明。公約に9本の柱を盛り込み、このうち「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正論議を進める」ことを主要な「3本柱」とし、政策集では原発ゼロについて「憲法への明記を目指す」とした。
特集:2017衆院選
「3本柱」のほかの柱は「議員定数・議員報酬の削減」「ポスト・アベノミクスの経済政策」「ダイバーシティー(多様性)社会の実現」など。柱のほかに「『希望への道』しるべ 12のゼロ」をスローガンに掲げ、隠蔽(いんぺい)ゼロ、受動喫煙ゼロ、花粉症ゼロ――などを打ち出した。」

法人税軽減の主張をしながら、納税後余っている帳簿上の資産・・内部留保課税→結果的に法人税加重方向を主張する不思議さと同じちぐはぐさがここにも出てきます。
ダイバーシテイ化を目指す政策と「正社員で働くことを支援する」政策とは両立できるのでしょうか?
07/03/03(2003年)「超高齢化社会の生き方5(多様な生き方を保障する社会1)」前後で、高齢化社会向けに書いたことがありますが、要はいろんな(LGBTを含めて)生き方ができる社会にすべきだという意見ですが、この4〜5年では(小池氏がダイバーシテイ化をトレンドとして採用するほど)社会的合意が出来て来たと思われます。
働き方〜生き方が千差万別・多様化していく方が労使双方にとって行きやすい社会であるという意見が、今では日本社会で受け入れられているとすれば、「正社員として働けるように支援する」という公約とどのように整合するのか不明です。
AI~IT化が進展する今後の社会では、終身雇用〜正社員意識・それ以外の働き方を異端(イレギュラー)と決めつける社会が成り立たなくなる・・とりわけIT化に背を向ける姿勢と思われます。
もともと終身雇用を正社員と言い、それ以外を非正規(イレギュラー)と区別する固定意識社会は、上司〜同僚と折り合いが悪いその他嫌なことがあってもやめると生活できないから嫌々ながら従属するしかない窮屈な社会・イジメがあってもやめられない人権侵害の温床になる社会ではないでしょうか?
やめる自由がない・失業→生活展望がない社会では必死になって一旦得た地位にしがみつきますし、学校でいじめられても容易に辞められない意識が子供を自殺にまで追い込むインフラになっています。
いじめ事件が起きると先生ばかり批判していますが、多様な育ち方が認められていない・受け皿不足社会だから繰り返し起きるのです。
被雇用者その他弱者が逃げる選択肢がない状態で意見が合わないという理由で経営者が簡単に解雇したり、校風にあわないと退学処分できると、解雇や放校、離婚された方は死活問題ですから、雇用者や学校あるいは婚家の方でもよほどのことがない限り関係切断できない社会になって行った・主流雇用形態が社会意識の基幹・・多様な影響を及ぼすので、社会のあり方を代表して終身雇用的社会というものです。
ですから雇用のあり方をどうするかは社会意識のあり方を規定する重要な指標です。

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