貿易赤字解消策(保護政策の功罪)2

19世紀型の貿易の場合・・例えば食料品・美味しい果物輸入の場合、大してうまくない果物を米国民だけ高く買うしかないとしても、それだけのことで国内産業競争力に響きませんが、部品輸入の場合に完成品性能に関係するので大変です。
中国が南沙諸島での埋め立てに異を唱えるフィリピンを黙らせるために、バナナ輸入規制しても国民が困らず、フィリッピンが音をあげたのもその一例です。
部品の場合、不良品でなくとも他国よりも25%も高く買うとコストアップになるし、それを嫌って性能の劣る国産部品を仕方なしに使うと品質低下分以上値下げしないと国際競争力を失います。
比喩的に言えば、ある部品が1%性能が劣り2%単価を低くしても、性能の良い部品を使った完成品の単価が2%高くても方が使い勝手が良いと何倍も売れるのが商品というものですから、ちょっとした性能差の為に5〜10%価格を下げないと売れない場合、少し高くても高性能部品を使うのが普通です。
人材で言えば、人種差別意識で有能な社員を採用できないと有能な社員を採用した企業よりも発展性が遅れます。
軍事戦略意図によって、情報収集ソフトが組み込まれるリスクを理由に中国国有企業の中国の華為技術や中興通訊(ZTE)との取引禁止命令(華為技術やは事実上の?)が出たようですが、両企業が世界席巻しているのは、中国政府の後押し的不純原因もあるでしょうが、それ相応の使い勝手の良さがユーザーを引きつけているからでしょう。
4月22日現在の中興通訊(ZTE)に関するウイキペデイアの記事です。

世界合計14ヶ所のR&Dの設備がある。2008年には売上が約443億元(約65億ドル)、利益が約16億6000万元(約2億4300万ドル)に達している[2]。
160カ国、地域でスマートフォンをはじめとする携帯電話端末を発売しており、2016年にはアメリカでのスマートフォンシェアが4位、スペインとロシアで2位、ヨーロッパ全体でシェア4位にランクされるなど、欧米でのスマートフォンの販売台数が増加していた。
2016年3月:アメリカ合衆国商務省が同社及び子会社に対して、2010年にイラン政府系通信会社や北朝鮮に禁輸措置品を納入し、またその事実を隠ぺいしたとして輸出規制措置とした。
2017年3月:上記の措置に関連し、アメリカ合衆国商務省は最高約1,300億円の罰金の支払いと、社内のコンプライアンス教育の徹底、今後6年間にわたり規制を順守したか年次報告を行うことなどの司法取引を行うことで、輸出規制措置を実施しないことで合意した。
2018年4月16日:アメリカ合衆国商務省は、前年の司法取引で合意した内容の一部を同社が実施していなかったことが判明したとして、米国企業に対し同社への製品販売を7年間禁止すると発表した。
・・・同社製品に使用されている米国製品の割合は25-30%に達し、この措置は同社事業に深刻な影響を与えるとみられている。・・・なお、アメリカ国防総省とアメリカ合衆国国土安全保障省にZTEが下請け経由で通信機器を納入していたことも問題となった[11]。
共和党のトム・コットン上院議員とマルコ・ルビオ上院議員は2018年2月7日、米当局者へのスパイ行為に対する懸念を理由に、ファーウェイとZTEの通信機器について、米国政府の購入やリースを禁じる法案を提出した[12]。

ウイキペデイアの華為技術に関する4月22日現在の記事です。

華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ、Huawei Technologies Co. Ltd.)は、中華人民共和国の通信機器メーカーである。スマートフォンにおいては、出荷台数・シェアともに世界3位。米キャリアのAT&Tが、ファーウェイのフラグシップスマートフォン『HUAWEI Mate 10 Pro』を取り扱う予定で、交渉も順調に進んでおり、2018年1月8日にラスベガスで開催されるCESで正式に発表されるはずだったが、直前になってAT&Tが白紙撤回した。白紙撤回の理由は不明だが、安全保障上のリスクを懸念する米国政府からの圧力という説が有力。

両社製品が世界を席巻しているのは相応の商品価値があるとした場合、米国企業だけ中国の両企業を使えないと、その分米国企業は損をします。
鉄鋼製品の場合、長期的には米国内生産で日本で作るより25%高コストでも価格競争できるようになるので国内生産に移行する期待があるでしょうが、物品販売の場合価格次第ですぐに輸入先を変えられますが、製品の場合技術水準の問題ですから国内業者に技術がない(から作れないのでしょう!)と、すぐには国内製造に切り替えられません。
この間米国企業だけ低レベル部品利用または高価格品利用になって国際競争力を失って行くのが普通です。
1985〜1990年頃のいわゆる日本叩きの攻勢によって日本の製造業叩きには成功したものの、結果的に米国企業は(日本の高性能部品を割安に利用できる)他国より割高かつ低性能部品を使うしかなくなったので国内産業の国外移転が相次いで国内空洞化・貿易赤字→衰退を早めただけでした。
米国の対中巨大赤字というものの米国企業の逆輸入がその大半とも言われるように(事実かどうか不明ですが)輸入規制すれば米企業自体が海外に出て行って良いものを使うしかなくなります。
以下の引用記事は古い・・対日貿易赤字になっている・・ここ4〜5年は部品の中国国内生産率が向上して対日貿易も黒字が続いているし、外資系企業の貿易黒字に占める比率が高いと書いている点も今は下がっているなど現状そのものではありません。
以上のように10年以上前の論文でかなり古いものの、アップル製品のほぼ全てが中国の工場製であるのが知られているように産業の集積状況など大方の傾向は変わっていませんので、今でも参考価値があると思われるので引用しておきます。

中国の対米巨額貿易黒字の見方

ビジネスレポート
2007年6月26日  馬 成三
米国の対中貿易赤字は米国企業の対中進出とも関係している。
米国系企業が中国で生産した製品の大半は、中国市場で販売されているが、中国での現地生産により、同製品の対中輸出を減少させているのである。また米国の対中投資のうち、付加価値の低い製品を中心に米国に逆輸入しているケースもある。
Made in China」よりも「Made in Asia」が多い中国の対米輸出
中国の対米貿易黒字の拡大は、諸外国・地域、なかでも東アジア諸国・地域の中国大陸への産業移転によるところが大きい。対米輸出を含む中国の輸出を企業主体別にみると、外資系企業の割合が際立って高い。2006年の数字を取ってみると、同年中国の輸出全体に占める外資系企業輸出の比率は約6割、貿易黒字額に占める外資系企業の比率も5割を超えている(表2)。これに対して、国有企業や私営企業を含む中国資本企業の貿易黒字額は貿易黒字全体の半分以下(うち国有企業は赤字)にとどまっているのである。
中国の外国直接投資受入れの7割が、日本、アジアNIES(新興工業国・地域)とASEANを含む東アジア諸国・地域から来ている。長い間、日本、韓国、台湾など東アジア諸国・地域は対米貿易で巨額な黒字を抱えたが、その対米輸出製品の生産を中国大陸にシフトしたことで、中国大陸の対米貿易黒字となったのである。
中国が東アジアにおける加工基地となっている現状を踏まえて、研究者の間では中国の対米輸出製品(組み立て用の部品を含む)を、「Made in China」よりも「Made in Asia」と見なすべきだとの見方もある。
東アジア諸国・地域が生産拠点を中国に移しただけでなく、部品などを中国に輸出し、その加工製品を米国に輸出するといったケースも多くみられる。中国税関統計によると、2006年における中国の対米貿易は1,443億ドルの黒字を出した一方、日本、韓国、台湾との貿易には1,358億ドルの赤字が記録された。

上記は2007年の論文なので実情が様変わりですが、日米韓やアジア諸国の対中投資拡大が中国の対米黒字の大きな原因になってきたことは確かでしょう。

資源下落とロシア経済2

昨日見た久保庭眞彰氏論文では、ロシアの対外強硬姿勢は苦し紛れの真逆で2000年代に入ってからの油価高騰によって、ソ連時代の債務を返し国内再構築や軍の近代化(サイバー攻撃能力が飛躍的にアップしているのはその象徴?)が進み余力が出たことによるという趣旨のようです。
そう言われれば、その間のGDPが約2倍になっているということは国力2倍ですから、ソ連崩壊後失っていた自身を取り戻したい気持ちもわかります。
もともと西欧と仲良くやる予定ならば、ウクライナ侵攻もクリミヤ併合などを起こす必要がなかった・・もともと関係悪化を承知の行動だったという意見のようです。
ロシアはソ連崩壊後の混乱を収拾しようやく体力がついたので、民主化や人権重視方向にかじを切るのではなくその自信が強権支配や周辺侵攻.旧ソ連圏諸侯の盟主としての地位復活方向へとなったという解釈のようです。
言われてみると、中国も同様で豊かになれば欧米型人道主義・穏健な話し合い解決社会になるという期待が外れ、逆に中華の栄光復活を唱え内政的には強権支配補強・対外的には膨張主義満足のために豊かさを餌・・周辺国への開発資金の大判振る舞いをして浸透していく方向へ突き進んでいます。
豊かになった分を国民配分しないでで国民が納得するのか?いうことですが、10の儲けのうち1〜2割しか国民分配しなくとも解放前に比べれば国民は豊かになったことを実感できるのでしょうし、残り資金を権力周辺支持基盤に手厚く配り、国民監視のためや周辺国威嚇の軍事費に使っても国威発揚・・ロシアがソ連崩壊の惨めな記憶払拭に必死なのと同様に中国はアヘン戦争以来の屈辱の歴史を挽回するためにお金を使う事には国民同意があると言えます。
先進自由主義諸国では、分配が足りないという絶えざる批判にさらされているので労働分配率が上がる一方で、メデイアの煽る要求に応えるための各種施策・保育所増設・職業訓練など資金需要が増える一方ですが、他方で増税拒否キャンペインですから、概ね財政赤字に困る社会ですが、強権支配社会ではそのような不満を煽る仕組みがないので分配の不公平について権力者は気にする必要がほとんどありません。
民主国家でメデイアが国民不満を煽るのを前提に、メデイアの自由がない中露も同じ結果になると考えるのは間違っています。
全体成長を引き下げても、平等が主眼である筈の共産主義国家で極端な内部格差が当然視されているのは、パラドックスですが、そんな事は気にしない掛け声だけの主義主張の象徴です。
「共産主義・計画経済→国家意思貫徹=独裁政治必須社会のように見えますが、ロシア革命後約100年の歴史を結果から見れば、「共産主義だから自由のない強権政治になる」というよりは「強権政治をしたいがために共産主義が便利だからイデオロギーを借用して来た」だけのように見えます。
上記久保庭論文の意見は一般と違った角度からの分析で個別事象については傾聴に値しますが、グラフを見るとGDP成長率も少ししか下がっていませんが、原油価格が半分になってGDP・すなわち国力も半分になったというのが、一般的理解ではないでしょうか?
こうなると専門家の作ったグラフなのに昨日まで紹介した意見や明日紹介するグラフと違いすぎてどちらを信用して良いのか分からなくなります。
そこで上記著者が何となく偏ったロシアひいき専門家の疑いがありそうなので経歴を見ておきました。
久保庭氏の論説がネット評論家の元外交官馬淵氏のように何があっても「ロシア良い式」の意見開陳者の経済学者版かな?と見えるので、その故郷・出自を探ってみました。
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.html

久保庭 眞彰自己紹介
1972年
横浜国立大学経済学部卒
博士(経済学,第166号) 一橋大学
名誉博士(Dr.h.c.) ロシア科学アカデミー中央数理経済研究所
1987年
ソ連科学アカデミー中央数理経済研究所客員研究員
1990-91年
カリフォルニア大学バークレー校・ハーバード大学客員研究員
2005-2006年
レオンチェフセンター客員研究員
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~kuboniwa/about.htmlによる自己紹介です。
研究歴
大学院時代は、ソビエト数理経済学の理論的調査や分権的最適計画メカニズムに関する数理経済学的研究を行いました。
一橋大学着任後は、時代の変化と研究リソース環境の変化に対応して、理論的最適化モデルの性能を計算機シミュレーションによって確かめる作業や、産業連関表を利用したソ連・東欧の静学的・動学的多部門実証分析を行うことに重点を移しました。
ソ連崩壊後から現在にいたるまで、市場経済への移行に直目して、
(1) ロシアや新興国諸国の経済成長と国際石油価格・交易条件・交易利得・エネルギー効率の変動の関係についての現代的時系列解析、
(2) 産業連関表等を利用した新生ロシアや中央アジアの経済・産業構造分析、
(3) 新興国とBRICsの比較経済研究、
(4) ロシアの財政連邦主義や金融・証券制度に関する統計的・制度的分析、
(5) EU・アジア・BRICs国際産業連関表を利用した各国間経済リンケージの分析、
(6) ロシア・中国・中央アジアの鉱工業生産、GDPの歴史的遡及統計推計、
(7) 環境経済
に関する教育・研究を試みております。

その他海外歴がありますが、レオンチェフセンターレオンチェフセンター自体が、「レオンチェフが幼少期から大学卒業まで(1906~1925年)を過ごした故郷サンクト・ペテルスブルグ(旧ペトログラード・レニングラード)に,改革派の拠点の1つとして1991年に設立された研究機関・・)学問の故郷・郷愁が旧ソ連圏にあるような印象です。

安保理拒否権行使3とロシアの孤立)2

ロシアは安保理での拒否権を盾にして(それがあることが自慢の種でしょうか?)アンチョコな拒否権行使で交渉時間を自らつぶしてしまい、その先どうなるかを読めなかったのでしょうか?
米英仏連合軍も明確な化学兵器使用の直接証拠「物」を入手できていない(シリア政府軍制圧地内なので)点に弱点があるようですが、数々の現地映像や報告の間接証拠がある以上は、調査拒否する以上は仕方ないと言う論理でしょう。
これが国際世論です。
数日前の日経朝刊によれば、米英仏のシリア空爆を侵略戦争だというロシア提出非難決議案が、15理事国中、賛成はロシア、中国、ボリビアの3カ国だけだったと報じられています。
国際世論の理解を得られていない・日本の旧社会党のように恥をかくのを知らずに?ただ否決されるのを承知でアリバイ作りのために?問責決議案を出す・・ただやっているだけの政治同様で・いわば外交能力がない国です。
日本メデイアは日経新聞も昨日か1昨日の記事では朝日新聞同様にロシアや中国への親近感が強いからか?化学兵器仕様による悲惨さ・人道問題を一切論じないで米英の他国主権侵害の「正当化」について論証されていない点を大きな見出しで取り扱っています。
この見出しを見ると、そもそも米英仏の空爆は不当行為をしている前提で正当化の主張責任があるかのような書き方です。
強盗や殺傷現場を見たら他人の家でも飛び込んでいってこれを抑止するのは正当な行為として、刑法では違法性阻却事由になっていますが、国際法では整備されていないから、正当化の主張立証責任が米英仏側にあるという形式論によっているのでしょう。
国際法上正当防衛等の法整備がないだけであって、前提になる化学兵器使用によって、一般市民が泡を吹いて倒れている状態を不問にしたこういう形式論がメデイアで主流になっているのには驚きます。
本質的に必要な議論は形式論ではなく本当に化学兵器による殺傷が行われていたか否かでしょう。
こういうメデイアは日本政府批判のためには、森かけや財務次官のパワハラにしろ、疑惑だけ大騒ぎし疑惑がない証明をしろと騒いでいますし・・日頃から人権人権と騒いでいるのですから、片手落ちというか御都合主義です。

刑法
(正当防衛)
第三六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第三七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

トランプ氏もプーチン以上に内政で追い詰められている・中間選挙の展望がひらけない・・目くらまし的不純動機が指摘されるようですし、英(EU離脱交渉のもたつきによる求心力低下)仏(新大統領としてのEUヘゲモニーの見せ場)もそれぞれ内政上の思惑一致らしいですが、ここでは政治背景の分析が目的ではなく、「ロシアは伝統的に軍事力をひけらかすことしか能がない」という点を書いています。
幕末にロシア軍艦が、対馬に実力上陸して英国の勧告があるまで退去しなかった事件をSep 20, 2017前後「ロシアの脅威」シリーズで紹介したこととがありますが、ロシアは伝統的に交渉よりは実力行使が先立つ国です。
ヤクザは警察が来るまで威張れるように、威嚇力をひけらかす事しか存在感を示せない国では、自分より強い国が出て来たら黙ってスゴスゴ?しかありません。
ロシアが得意分野への投資→国力不相当に軍事力強化に精出す・・その分民生部門への投資が減る→社会発展がさらに遅れる悪循環→国民不満の高まり→ガス抜き→対外プレゼンスを高めるための武力威嚇を繰り返す危険性が高まります。
2014年のクリミヤ併合やウクライナ侵攻は、色々な理由をつければつけられますが、大局から見れば、中国による資源爆買い縮小による資源価格下落による国内経済困窮の限界(資源価格高騰時の蓄えがあるので)下落による資金枯渇までに数年かかります)が近づいたので、なりふり構わず対外冒険主義に出たと見るのが妥当でしょう。
東洋経済からの記事です。
https://toyokeizai.net/articles/-/180689

ロシアの経済危機はかなり深刻なはずだ
プーチン大統領によって隠されているが・・・
ハーバード大学教授2017年07月27日
原油価格はピーク時から急落
・・・・ロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が、司法などの制度が脆弱なままでは、資源輸出依存のロシア経済が変わる望みはないと主張していた。
あまりに多くの決定が1人の人間によって行われていたからだ。同じ会議で私は、大規模な改革が行われないかぎり、エネルギー価格の急落は深刻な問題を引き起こすことになると力説した。
かくして、原油価格は暴落した。現在の市況(7月上旬時点で50ドル以下)ですら、2011〜2012年ピークの半分に届かない。
輸出の大半を石油と天然ガスに頼っている国にとっては大打撃だ。
ロシアが財政危機を免れていること自体、驚くべきことである。これには、ロシア連邦中央銀行が果たしている役割が大きい。だが、そのしわ寄せの大部分は消費者に降りかかっている。
通貨ルーブルの価値は米ドルに対して5割も減少。実質賃金と消費はともに急落した。以前は1000ルーブルを持ってスーパーに行けば2袋分の買い物ができたが、今や1袋分だと、あるロシア人が言っていた。
プーチンの失策を隠す国営メディア
ロシア規模の不況が民主主義の西側諸国で起きたとすれば、政治的に乗り切るのは極めて困難だったろう。だが、プーチン氏の権力は、まるで揺らいでいない。
国営メディアは失政を覆い隠すために、西側からの経済制裁を非難したり、クリミア併合やシリアへの軍事介入への支持をあおっている。
たいていのロシア人は、学校教育や国営メディアによって、西側諸国のほうがひどい状況にあると信じ込まされている。残念ながら、そのような情報操作は改革への処方箋とはなりえない。

改革の処方箋にならないとしても北朝鮮同様に閉鎖強権支配社会では、経済失策による飢え死にが、仮に何千万と出ても(スターリンによる穀物の飢餓輸出や毛沢東の大躍進政策の失敗でそれぞれ何千万単位の餓死者が出ていますが)政権危機にならない・・ことが歴史の鉄則です。
相手を弱体化するには、経済制裁ではなく豊かな生活をさせて(国民に豊かな生活の味を占めさせて抵抗力を削ぐ方が現実的です。
三国志演義で有名な曹操が劉備を籠絡するために贅沢させる・・「髀肉の嘆」あるいは孫権が劉備を招いて贅沢させる政策です。
一般的に豊かな地域の兵の方が貧しい地域の兵より弱いのが原則です。

 安保理拒否権行使2とロシアの孤立1

話題をロシアに戻しますと、ロシアの方ではアメリカの空爆事件に巻き込まれても何も反撃できないと却って面目を失うので、プーチンの政権維持にマイナスになるので、困ってしまう関係でしょう。
そのつもりで(ロシアの客観状況がどうなっているかを)ネットを見ると以下の記事が出てきました。
以下に紹介するのは今年2月の事件ですが、自国民兵が米軍の攻撃で約200人も死亡していても5人だけとしか発表できないのがコワモテロシアの現実です。
中国でどのような大騒乱や災害が起きても発表できる死傷者数の最大人数が「35人」に限定されているから、それ以上の大災害が発生することはないと言われている・もちろん根拠ない憶測ですが・・のと似た感じで、居丈高の割には自分より強い米軍の前では、縮こまっていることを国民に知られたくないからでしょう。
https://matome.naver.jp/odai/2142319664095117501

中国で事故が起きた際、死亡者の上限が35人となっているのはご存じだろうか? その理由や原因まとめ
更新日: 2015年08月25日
“『ビートたけしのTVタックル』の中で中国で大勢の犠牲者が出る事故が起こると、なぜか毎回のように「死者は35人」と発表される理由について解説された。”
“「中国は大事故が多いので、数週間に1度はそういう事故が発生している。最初に最少人数を発表し、あとから数字を修正することも多い」と、あくまでも「35人」という数字に深い意味はないことを説明した。”
過去に起きた事件の死亡者数を見てみると確かに数多くの死亡者数が35人以下になっているのがわかる
2003年貴州省 ガス爆発事故 :35人
2009年 河南省 平頂山炭鉱事故 :35人
昨年の大みそか、30万人が駆け付けた上海のカウントダウンイベントで転倒事故が発生。発表によると、35人が死亡、48人が負傷という大事故となった。
997年5月深センの飛行機事故、2008年11月雲南省の土砂崩れ、
2011年7月高速鉄道の事故、
2013年11月山東省の石油パイプライン大爆発など、
日本でも報道された大事故において「死者35人」という不可解な数字が何度も発表されている。
<過去に起きた事件 死亡者が35人以下のもの>
以下多数事例省略

以下紹介する今年2月の事件は不思議にもロシア民兵と称する軍団が、最強を誇る米軍基地攻撃を計画して撃退されてほぼ壊滅した事件らしいです。
ロシアとしては、自国兵が米軍基地を正面から攻撃したとは言えないので、自国関与を否定するのは当然としても、死傷者数くらいまともに認めても良さそうですが、それが出来ない様子です。
この後で書きますが、米軍基地をロシア民兵と名乗って正面から攻撃する図太さ・・オバマが「世界の警察官をやれない発言」以来、世界中の無法者が我が物顔に羽を広げている状態がわかります。
こんなことをされているのでは、ロシア疑惑を書き立てられているトランプ氏が国内政治対策上も放置できなかったでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-13/P43FS16K50XT01

シリアのアサド政権を支持するロシア人を中心とする雇い兵部隊がデリゾール県で先週、米軍と有志連合が拠点とする基地に攻撃を仕掛けて失敗し、200人以上の兵士が死亡した。米当局者1人と事情に詳しいロシア人3人の情報で明らかになった。
かつての冷戦で対立した両国にとり、これまでにない数の犠牲者が出たもよう。
ロシア軍はこの攻撃には一切関与していないと表明。米軍もロシア軍の主張に異議を唱えていない。

https://www.cnn.co.jp/world/35115132.html

ロシア、「多数の」自国民死傷認める 米軍によるシリア空爆で
2018.02.22 Thu posted at 19:33 JST
(CNN) ロシア外務省は22日までに、シリア北部デリゾール近くで今月初旬、アサド政権支持の武装勢力が米軍支援の「シリア民主軍(SDF)」に攻撃を仕掛けた際、米軍による空爆の反撃で多数のロシア人が死傷したことを初めて認めた。
負傷者数は「数十人規模」としたが、死者数には触れなかった。
ロシア政府はこれまで多くのロシア人が死亡したとの一部報道を否定、死者については最大5人としていた。
戦闘にロシア軍兵士は関与していないとも主張。死亡したロシア人の遺族は、ロシアの民間軍事企業「ワグネル」に所属していたことを明らかにしていた。
マティス米国防長官はこれら雇い兵とは関係がないとするロシア政府の主張を疑問視する見方を示していた。
記者団に先週末、「257人の武装勢力が自らの判断で敵対勢力の領地に進攻し、砲撃や戦車の攻撃を実施したとは思えない」と疑問視していた。

上記のようにロシアは自国兵または民兵の被害を認めても、米軍へ報復できないから政権の威信に関わるから政府と関係ない民兵だといい、しかもわずか5人という発表しかできない状態です。
これではウクライナに展開している偽装?民兵が、米軍の空爆を受けても文句言わないのかな?
このような弱腰状態のロシアが、拒否権行使の結果米英仏のシリア空爆で自国兵が被害を受けたと主張して対米報復戦・・戦線の拡大などする勇気はないでしょう。
ということは、拒否権行使は政治的失敗だったことになります。
合同調査団派遣に同意していれば、空爆を先送りできたしその調査方法や結果に対する評価など色々交渉の余地があるのですから、これを頭から拒否した外交能力の拙劣さが際立ちます。
平昌五輪をチャンスに北朝鮮がギリギリのところで交渉に応じる姿勢を見せたのは、米軍の単独武力行使威嚇に対して、中国もロシアもせいぜい武力行使は遺憾の意を表する程度で具体的に動いてくれない・・「北朝鮮が自力で米軍に対抗出来るか否か」だけと見極めたからでしょう。
自分がある程度対抗できると思っても米国がそうは思わないで突っ込んでくるとなれば、大変です。
北朝鮮とすれば、交渉に入って仮に決裂してもその期間(平昌五輪から見れば約半年前後は時間を稼げるでしょう)だけ稼いで先送りできるメリット(半年あまりの違いでもっと核兵器運用準備が進む?)だけです。
・・この間に中韓を取り込める・・引きのばし交渉に米国が怒っても交渉うち切りは乱暴だなどと主張すると、その程度のことならばもうちょっと譲歩しても良いかなどの立場の違いを利用して欧米諸国分断チャンスもあります。

メデイアと学者の煽り8(軍国主義肥大化へ2)

中韓両国の日本批判を見ると両国のレベル・・自国の行動基準を前提にして、「自分のならこういう悪いことする」という自白ではないかと思う人が多いでしょうが、トランプ氏の始めたフェイクニュース批判は自分の選挙戦を自白していると思っている人が多いでしょう。
私がいつも書くように既存メデイアの偏向性(フェイクではなく主張の偏りです)が目に余る不満が先立っていますので、トランプ氏は一応支持・喝采を受けていますが、既存メデイアもたまにヤラセ=フェイクもありますが、総体的に見れば虚偽事実の報道はごく例外であって、国民の多くが不満に思っているのは、実在する例えば100〜200の情報のうちメデイアの気に入った方向の事実のみを拾い出して洪水的に流す偏向報道の問題です。
朝日新聞の慰安婦報道問題も積極的に虚偽報道があったか否かではなくはじめっから「一定の角度」方向にのめり込んでいた点を国民が怒っているのです。
メデイアの偏り是正議論が落ち着いたのちの評価(何十年後?・ネット発達によって情報独占が是正されるようになるでしょう)になれば、虚偽事実に頼る点では、トランプ氏の方がフェイク性が露骨すぎるという落ち着きになるでしょう。
・・・「ベストの日露講和ができたのはアメリカの肩入れのお陰」
3月30日に紹介した通り、(アメリカはロシアがこのまま権益を握っていけばシベリアのような独占支配になってしまうが、日本を応援すれば戦後共同開発に参入のチャンスがあるだろう)という見込みで日本を応援していたのを誰もが知っていたのに、その恩・期待に報いる合理的政治を誰も言い出せなくなっていたことがわかります。
・・「三國干渉」のような露骨な分配要求ではないものの18年3月30日に紹介したアメリカの「門戸開放・均等門戸開放」要求を講和条約後日本は聞く耳を持たなかったのは、一種の背信行為でした。
政治家はみんなこの事情を知っていたのに、・・メデイアの政局への影響力が大きくなり、冷静沈着な国家決定が出来なくなってきたのが、満州への独占的行動開始→国際孤立化の始まりでした。
アメリカのオレンジ計画に関するウイキペデイアの記事からです。

日露戦争が終結すると中国問題が日米間で重要問題化しだし、両国間の緊張が高まりだす。アメリカは日本を仮想敵国とした戦争計画の策定に本腰を入れ始め、一連のカラーコード戦争計画の一つであるオレンジ計画が誕生する。
これら各カラーコード戦争計画は、後のレインボー・プランとは違い基本的に一国対一国の戦争を想定しており、外交関係や集団安全保障に関して考慮されていなかったのだが、オレンジ計画では初期の頃より『日本が先制攻撃により攻勢に出て、消耗戦を経てアメリカが反攻に移り、海上封鎖されて日本は経済破綻して敗北する』という日米戦争のシナリオを描いてシミレーションされ、実際の太平洋戦争もこれに近い経緯を辿っていく。日露戦争の最中、第一次世界大戦といった日本と協調関係にあった時期でも、対日本戦争計画、オレンジ計画は研究され続けていた。

日本は自国防衛のための緩衝地帯としての朝鮮半島確保の控えめな希望実現を求める限度では欧米の人道主義・アジアの小国(しかもジャポニズム等で好意的紹介されていた文明のある日本が)がどう猛なロシアに脅迫されているのが可哀想的その他価値観的擁護を受けていました。
この前提として義和団事件で遠隔地の欧米部隊の応援が入るまでの籠城戦での日本兵の強さや規律の高さが賞賛されていましたが、この時とばかりに中国東北・・のちの満州方面から南下進出してきたロシア兵の獰猛野蛮さ・終戦直前に満州へ侵入したソ連兵の野蛮さは周知の通りですが、その40年前にロシア兵が中国東北地方で同じことをしていたのです・・が欧米諸国の顰蹙を買っていた経緯もあります。
顰蹙というよりは、もともと侵略されたときのロシア兵の残虐ぶりが中東欧やトルコを含めて周り中で恐れられていた・この辺は今も同じでしょう。
話題が飛びますが、ココ数年のクリミヤ併合やウクライナ侵攻あるいはシリア介入など見ても、ロシアは今も昔も粗暴・恐怖感によって周辺威圧しかできない本質的弱点を持っています。
ロシアとしては本性をむき出しにした・「能ある鷹が隠していた爪を出した」本当は強いんだぞ!と威張っているつもりでしょうが、それしか自慢するものがない・・弱い国という評価を受けていることがわからないのでしょう。
今でも日中韓はロシアの軍事力が怖いのでロシアを気にしているに過ぎませんし、北欧やバルト三国あるいはトルコを含めて皆同じでしょう。
北朝鮮問題でもロシアが関与する場合があるのは、米国が軍事力行使した場合にロシアがどう反応するかに関心があるだけであって、調整能力に関心がある国はありません。
今話題のシリア政府軍の化学兵器使用に対する米軍の制裁?シリア攻撃実施可否に関しても米英仏が軍事行動すればロシアがどう出るか?というだけに理由で世界の注目を集めているだけのことです。
ロシアが正論を吐きそうだから聴いておくというものではありません。
そもそもロシアが混迷するシリアに派兵を始めた意図自体合理的理解困難ですが、人道など言わないでどしどしテロ組織を制圧していき、強力・辣腕ぶりを発揮したのはわかりますが、ヤクザが乱暴して「どうだ!」「俺は強いぞ!」と自慢しているようなものでしかありません。
正規軍や警察は周辺市民への誤爆が心配とか人道がどうのと言って、躊躇しているときに、(ヤクザが暴れているところへ、もっと強いヤクザ・)ならず者がやってきて人道や逮捕時のルール無視で問答無用で叩きのめすのを見ているようなものです。
経済困窮中のロシアにとってシリアが将来安定したとしても、そこに自国の基地を設けて中東に睨みを利かせることに何の意味があるかの問題ですが、国益よりはプーチン個人の支持率維持(人道論や国益抜きに「いい気持ちにさせてくれるだけの指導者を期待する」国民レベルに帰するでしょうが・・)だけのためでしょう。
戦闘機出撃やミサイル1発で巨額コストです。
アメリカのトマホークは一発約1億円と言われています。
ロシアは15年9月に介入したばかりでしたが、短期間で爆撃機だったか戦闘機だったかを引きあげたと報道されていましたが・・出撃コストに耐えられなくなったイメージを受けましたが・・。
https://news.yahoo.co.jp/byline/koizumiyu/20160330-00056007/

ロシア軍のシリア「撤退」から2週間 依然として強力な兵力残すロシア
3月14日にロシアのプーチン大統領がロシア軍のシリア撤退を発表してから2週間が経過した。翌15日は実際に爆撃機の第一陣がシリアのフメイミム空軍基地を離陸し、その後も攻撃機や武装ヘリコプターなどが次々と同基地を離れていく様子が報じられている

上記記事では実態はそれほど変わっていない・むしろ増強されていると報告されています。
シリア政府の化学兵器使用問題では、プーチン・ロシアは拒否権発動で調査団派遣に関する安保理事会決議否決に持ち込みましたが、ロシア軍が駐留していても攻撃をためらわない米国の勢いに困ってしまい、数日前から内々で「調査に応じるから..」という提案をするなど攻撃中止を求める動きが活発になっていましたが、昨日14日のニュースでは米英仏によるシリア空爆開始のニュースが出ています。
http://jp.wsj.com/articles/SB10376223459405434294104584162673842000750

米英仏、シリアの化学兵器関連施設を空爆
ByNancy A. Youssef and Michael C. Bender
2018 年 4 月 14 日 12:21 JST 更新
トランプ米大統領は13日夜、米国、英国、フランスが共同でシリアの化学兵器関連施設への空爆を実施したと発表した。空爆は、市民ら少なくとも43人が死亡、数百人が負傷した先週の化学兵器使用への対抗措置。

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