格差とは2(平等化進展)

フラット化は悪いことばかりではありません・・何よりも人権活動家の渇望する平等社会の実現ですから,フラット化に対して何故不満となるのかを考え直す必要があります。
体力差、身長差、不器用さ近視遠視、難聴その他心神のハンデイなどいろんな能力差があってもその差を最小化して同じように仕事をし、楽しめるようにして行くのが近代工業化・・豊かなよい社会の指標であり基礎目標です。
近代工業化の進展とは、これに比例して社会弱者の地位が補強されて男女差や身障者、視力差、高齢者など能力格差を縮小し、(記録媒体も記憶力の補完です)フラット化して行く歴史です。
人権意識さえあれば平等になるのではなく、女性・妊婦や子育て中の人、高齢者や病者・・ガン患者でも働ける医療環境・身障者用の補助具の発達などすべて格差縮小のためにあるといえるでしょう。
クルマ発達は足の早い人遅い人、あるいは荷車引きに必要な人力の格差をなくし・特殊車両・フォークリフトや銃器類の発達も体力格差を軽減したことは明らかです。
ハンドルがパワーステアリングになって、ハンドルサバキが楽になって運転する女性が増えました。
(以前書きましたがコンビニその他あちこちでトイレの設置が進んだことも大きいです)
自動運転技術が進めばもっと年齢差などを補強して行けるでしょう。
人権意識の発達で女性の運転が増えた訳ではありません。
流動食や離乳食や保健食品の発達も消化吸収能力の弱い人と強い人の格差補強であり、リハビリその他ありとあらゆる分野の科学技術の発達は能力格差を補填するものと言えます。
能力格差縮小に起因する平等化進むことと職業分化に目を転じると、重量物取り扱いには腕力不要、製鉄など高熱危険労働も遠隔操作が普通になり、パソコンの発達はそろばん等能力差や筆記能力差をなくし筆跡の上手下手の格差や漢字を読めるが書けない人と書ける人との格差もなくしました。
憲法14条の「平等」とは能力差による結果不平等を認めていると言いますが、他方で出来るだけ各種道具(眼鏡や補聴器あるいは義足の使い勝手の良さ)の工夫によって身体的能力差を克服する試みが推奨され身体能力による待遇格差をなくす方向に進んでいます。
高齢者が移動し易いようにあちこちでエレベーターやエスカレーターや休憩場所を設置しあるいは重い荷物を女性も持てるような補助具・・ロボット系の普及運動もみな同じです。
今流行の在宅勤務も子育てや介護しながら働けるようにする・・いろんなハンデイのある人も働けるようにする・・社会のバリアーフリー化こそが格差縮小の試みの基礎です。
その上工業製品に限らずいろんな分野でのベルトコンベアー方式(精神)の普及によって、事務作業その他の分業化(例えばテレフォンガールの大量雇用など)も進んでいます。
上記のように長い目でみれば、能力格差による結果不平等縮小克服・・スポーツ選手と違い、補聴器をつけていようと眼鏡で視力を補正していようと、薬物療法をしながらでも元気に働いた方が良いルール・・フラット化は抗し切れない趨勢ですし、それが人類の正しい目標と言うべきでしょう。
格差縮小と格差拡大論がここで何故問題になるかのパラドックスですが、フラット化によって、従来20〜40〜70点程度の人が能力格差に応じてピラミッド型の地位・収入を得ていたのに身体能力補完具の発達によって収入差がなくなって来た不満が基礎にあるからです。
10〜20点の人も60〜70点の人と同じ仕事ができるようになったならば60〜70点の賃金にすれば文句なしですが、そうはならないで競合(希少性の軽減)の問題もあって、実際には、みんな平均3〜40ポイントの賃金になってしまうことになり勝ちです。
先進国間の国内競争だけだと一定の閉鎖空間なのでその程度で収まりますが、新興国が参入するようになると国際低賃金競争の煽りで本来の能力水準・・20点の人ができる仕事なら20ポイントの賃金にならざるを得ません。
フラット化される水準が20点〜25〜30〜35〜40点と順次上がって来て従来大卒なら中間層以上・・大丈夫と思われていた人たち(囲碁さえも人工知能に負ける時代です)も単純労働に飲み込まれようとしています。
今や大卒の現場系が増えて来て、エリートだけがフラット化・低賃金化から逃れられている状態ですから、大変なことはそのとおりですが、これを格差反対と言ってレバ済むかかは別問題です。
人間の能力構成は富士山の裾野のような分布のママですが、比喩的に言えば従来5〜60点の人は5〜6合目あたりまで登って能力相応の景色を見られたのですが、現在ではそう言う人もみんな1〜2合目の裾野あたりまで行くと、その次が絶壁になっていて自分の能力を発揮出来るもっと高い場所まで上がれないで景色の見えない裾野付近で単純労働者の仕事しかなくて低迷している状態です。
これはどこの国でも同じですから、格差問題を主張する以上は30〜40〜50〜60点の人にはその点数どおりの展望を開けるような社会・・少しずつの能力差に応じた処遇が用意されないと・・2〜30点の次は80点以上の人しか仕事がないと言われると向上努力する意欲を失う人が多くなります。
なだらかな上り坂ならば2000メートルの頂上付近まで時間をかけて登れますが、500メートルまで登ってみるとイキナリ1000メートルの絶壁があるとそこですくんでしまいます。
かと言って格差をなくすためにエベレスト登頂能力のある人の登山を禁止する・・高度な研究や便利な道具を考案したり新たな事業モデルを考え出すのを禁止するのでは人類のよりよき生活が保障されません。
高度研究者やジョブズ氏や野球のイチローのような特定の成功者・・比喩的言えば80点以上の人の給与・報酬が高すぎないかの批判が格差問題です。
画一的事業化によって、4〜5〜6〜70点の人に払っていた賃金を一律20ポイント前後に落とした差額巨額収入・・考案者利益→知財収入と事業化した資本家の利益→金融関係の高額報酬と一般労働者との格差が目立ち過ぎるようになりました。
ノーベル賞受賞者への賞讃気分でも分るように、研究開発や新規事業モデル開発成功による利益はまだ納得出来るが、この成功者に群がる周辺人そ・・秘書や幹部社員・・金融関係者の報酬が高過ぎる批判がこれの表現です。
格差反対論とは、フラット化とセットになった80〜99点台の高収入者との格差を言うとすれば、有能者がより良いものを造って行こうとする行為を批判出来ない「成功するな」【努力するな」とは言えないとすれば、せいぜいその周辺で働く人を批判するだけとすれば、無理があります。
天才的創業者や発明家がいても、一人では何も出来ないのでその周辺人材が必須でこれをなくす訳には行きません・・真田幸村には十勇士がいた・・勇将の下に弱卒無しと言われるように、これを非難していても解決出来ません・・何となくやっかみの域を出ない印象です。
反対論の中核は中間層が単純労働者化・底辺労働者化して行くことに対する不安・不満でしょうが、庶民や子供が不安・不満の表明なら分りますが、解決すべき役割の政治運動家が不安を煽っても何の解決にもなりません。

アメリカの軍事費分担要求

軍事費分担問題に戻りますと、トランプ氏の要求は選挙用に単純化して基地維持費の負担増を主張しているだけであって、問題は日本駐留の軍事基地コスト分担だけの問題ではありません。
仮に沖縄からグアムに移転しても南シナ海等のシーレーンを守って欲しいならば、シーレーン防衛分担金を払う必要がある点は変わりません。
(ソマリア沖の海賊対策に、日本も既に自衛隊を出しています)
自分のムラでの犯罪ではなくとも隣村の捜査に協力するように、世界の安全は相互作用で成り立っています。
日常経費である基地維持費の分担金比率上げの外に、有事の出動費はその地域で全額持てと言う時代が来るのでしょう。
西太平洋全域の防衛能力をグアムが持つようになると、当然グアム島だけを守るのに必要な防衛力の何十倍もの軍事力になります。
警察署は自分の建物に対する泥棒除け以上の防衛力を持っているので警察署への強盗がはいらないのと同じです。
沖縄基地が、周辺海域全部の防衛を兼ねている以上は、沖縄(あるいは日本列島全域)防衛に必要以上の軍事力ですから沖縄を攻撃するのには、周辺海域全部と戦う以上の攻撃力が必要になります。
沖縄を狙う勢力にとっては沖縄駐留米軍を一日も早くグアムへ移転させたいのは当然です。
ある家に強盗に入ろうとする場合,隣近所にある警察署がなくなる方が便利です。
米軍がグアムへ行ってもイザとなれば応援に来れれば同じことですが、その場にいるのとワザワザ遠くから出て来るには相応の決断がいるので、実戦的には大きな違いです。
国や地域全体では守備隊がいた方が安心ですが、基地や警察を狙うテロが頻発すると近くに基地があると逆に危険感が増しますし、テロ被害がなくともジェット機の発達で騒音被害などが生じます。
このように経費負担しても良いから来て欲しい・・警察署や軍事基地が近い方が良いのか遠い方が良いのかは、国民の価値観によりますし、時代状況にもよるでしょう。
アメリカは世界の警察官役(軍事的睨み)をやっている結果,(日本など基地所在国に相応の分担をさせて)自国防衛に必要以上の巨大軍事力を維持出来ている・・世界先端兵器の開発や維持が出来ているのですから、世界の警察官(軍事解決)役を単純放棄すると、自国だけの防衛能力維持すらも怪しくなって行きます。
ですから、トランプ氏が大統領になっても誰がなってもアメリカ自身の国際競争力の低下→経済力縮小に応じて徐々に軍事力削減して行く方向は変わらないと思われますが、強大な軍事力を背景とするいろんな利権(軍需産業だけではなく派生する波及効果)と結びついているので軍事力削減は単純ではありません。
そこで守って欲しいならば、分担金を払えと行って、よその国の経費で一定の軍事力維持を図っていく方向になります。
アメリカは日本や独逸に物造りでは負け始めて久しいですが、今残っているアメリカの強みはユダヤ系の得意な金融の外、知財関係ですが知財は高度な軍需産業の存在と密接に関連しています。
軍需産業を縮小すると知財の足腰が弱ってきます。
経済活動の大方が物造りに関連しているので、金融や軍需産業とその関連で派生する知財産業の優位性だけでアメリカの巨大な人口を養うには無理がありますし、多くの人に職場提供することも出来ませんので知財や金融に特化すればするほど大きな人口は無駄=マイナス要因になります。
世上人口ボーナス、オーナス論が盛んで(私はこれに基本的反対であることはあちこちに書いてきました)これにそってアメリカもEUも移民を増やして来ました。
移民の大多数は底辺労働者=平均賃金以下ですから、アメリカや欧州が移民を入れれば入れるほど金融・知財収入で養う人口が増える・・負担が増える一方になります。
知財(アップルの大成功で労働者が増えたのは低賃金工場のある中国であってアメリカでは殆ど雇用に役立っていません)や金融に頼る社会は、一握りの億万長者と無職失業・低賃金労働者の2極分化社会ですから、当然格差社会化が進みます。
イギリスはアメリカよりも1世代以上早く製造業で負けてしまい金融に特化して来たので、格差が顕著になって来た・・これがEU離脱を勢いづかせている基礎的経済背景です。
EU離脱論は憂さ晴らし的に難民流入が行けないと言うスローガンに飛びついていますが、社会構造が中間層不要・・未熟練動労働者=非正規・移民で充分の状態が背景にあります。
マスコミは、「移民反対と言うけれどもこの地域の農業は移民が過酷な労働に耐えているから成り立っている現実がある」と言うイギリス農業の紹介が時々出ます。
工場の低賃金労働も移民が働いているから成り立っている現実→これがまた移民が職を奪うと言う主張と重なっていますが・・・。
アメリカの工賃が中国に負けないくらいに下がっていることをアメリカが豪語し国内製造業回帰を宣伝出来るのは、低賃金労働を厭わない移民増加の御陰でしょうが、裏から言えばその分低賃金層増加・格差拡大に繋がっています。
アメリカの移民排斥を主張するトランプ氏の本音は格差拡大の不満を移民排斥論にすり替えている点ではイギリスのEU離脱論と同じでしょう。
格差拡大反対だとスケープゴートを仕立て上げ難い・精々金融機関が儲け過ぎと言う程度ですが、移民反対の方が標的を作り上げ易い・・大衆をあおり易いからです。

国際政治力学の流動化7(FTA→TPPヘ2)

日本は農産物さえ守ればやって行ける国でないことが明白なのに、農産物保護を頑に主張して貿易自由化に何でも反対する政治家は内実は反日的・・「日本死ね!」と内心叫んでいた政治家だったのでしょうか・・。
最初ブルネイやニュージーランドなどの関税同盟が出来ても大したことがないと静観していた(農産物の関税撤廃は日本にとってマイナスが大きい割合に同国への工業製品の輸出量は大したことがないなど)ところまでの反対は合理的でした。
しかし、アメリカやカナダの外日本の主要輸出先の東南アジア諸国がドンドンドン参加して行くイキオイが出ているときに、、アメリカから日本も参加して新しい貿易秩序をを作って行かないか?と根回し・勧誘を受けても,農産物保護を主たる理由(そのたアメリカで裁判されるとか保険制度を守れとかいろんな理由は勿論ありますが・・)に参加反対を主張し続ける政治家は国家の存立にどう言う意見を持っていたのでしょうか?
民主党政権はアメリカの作る新秩序・知財等の保護強化策に逆らっても中国と仲良くさえしていれば何とかなると言う意見だったのでしょうか?
韓国は露骨にこれを事実上表明していました・・それでも対米FTAと言う保険をかけていたのですが、日本にはそれもありません。
日本が東南アジアとの海外進出先へ部品輸出が出来なくなると死活問題になりますが、これを悟られないようにアメリカが最後まで参加する本音を隠していたのか、この時点になっても民主党政権が大変なことになると言う現状認識がなかったのか?危機感があっても国民に言わなかったのかどちらでしょうか?
東電の原子炉炉心溶融公表遅れに関する調査報告書が数日前に出ましたが、これによると政府からの指示で公表を出来なかったと言う報告が出ています。
当時の政府=民主党管政権ですが、重要な危機事実を国民に伏せる体質が出ています。
TPP交渉では後発参入の場合、合理的根拠の有無にかかわらず既存メンバー全員の同意が必須=拒否権が設けられ、しかも後からの参加国はそれまで決まった内容に異議を言えない仕組みを設けておくなど、(無条件降伏的参加しかない)後からの日本参入を困難化する制度設計までしています。
参加表明が遅れれば遅れるほど日本ハム条件咲かし出来ない不利な状態になりますが、もしも日本不参加のままでまとまっていた場合(現在はまとまっていて各国の批准を待つだけです)、日本が東南アジア等進出先との貿易を遮断されるリスク..恐るべき結果を予定していたことがわかります。
日本は現地生産化しながらも貿易黒字を稼げているのは、日本からの基幹部品輸出出来ているからです。
日本は食糧(工業輸出を犠牲にして国内農業を守っていても輸入しなれば不足する点は変わりません)・原油その他原材料・生活必需品の輸入代金を賄うために輸出代金を得て成り立っています。
TPP成立によって100%(まではいかないまでも)部品まで現地生産するしかなくなると輸出代金激減し、食糧その他の輸入代金をどうするかの問題に直面します。
海外進出している企業の純利益だけで国民を養える訳がない・・仮に資本収益でやって行けるとしても、国内産業がなくなると長期的に見れば、海外進出企業もジリ貧でしょうし、もしも国内線生産が国内消費分だけになってしまい、今の国内生産量が激減して行くと国民の足腰が弱り、日本経済・勤勉性が衰亡し国家民族の破滅です。
国民が長年働かないでいるとどうなるかの例としてナウール共和国の例を紹介したことがあります。
部品輸出閉め出しを受けてしまう直前、首の皮1枚の際どいところでイキナリ日本参加可能になり、日本も参加意欲を示すようになったのは、日本の政権交代が大きな転換点だったように見えます。
アメリカが国際政治上欧州との関係が悪くなり、自由競争では相容れない点に目をつぶり、日本外しの方針を転換したことが重要ですが、これは自然になったのではなくアメリカがそうするしかないようにして行った日本人の長年の努力(アメリカ進出企業の現地同化努力)や外交努力によるところが大きいと思われます。
中国が海外進出すると威張るので嫌われますが、日本企業の場合現地人を大事にするのでそう言う争いは起きません。
アメリカで暴動が起きると真っ先に韓国人がターゲットになると言われています。
日本がTPPに入ると韓国が個別FTAで培って来た優位性が失われるので、今や韓国が焦る番になって参加方向へ方針転換して行く様子が報道されています。

国際政治力学の流動化2

中国の横暴・秩序無視態度に周辺国が弱過ぎてやられっぱなしで不満がたまっていた筈ですが、中国の方は逆に何しても良いような慢心が生じた結果太平洋2分論を繰り返し主張したり、日本に対してもこれをやってしまったことになります。
日本の場合マトモに受けて立って世界外交を展開する力があった・反日行動に対しては東南アジアに新規投資するなど対抗手段がありますので、中国の孤立が始まりました。
中国が尖閣諸島侵犯だけはなく、南シナ海でイキナリアメリカの構築していた海洋秩序に挑戦し始めたのが日本にとって幸いでしたが、これは無抵抗主義の民主党政権を甘く見ていたものの素早く安倍政権に変わってしまい、日本の強力な対抗を受けて中国は格好がつかなくなって方向転換せざるを得なかったことによります。
素人目に考えても尖閣諸島だけで中国領だと言い張って対日紛争に持ち込んだ方が有利なのに、あえて周辺国みんなを敵に回す南シナ海に進出する暴挙に出たのは何故か・その結果公式に米軍が出てくる事態・世界世論(サミット宣言)を敵に回すことになったのですが、戦線を広げて敵を多くするバカな戦略の背景は何でしょうか?
世上言われているように民主党政権から中国へ日本の軍事機密が漏れ出た結果、日本海軍が中国よりも格段に強いことが分ってしまったことにより、武力一辺倒で尖閣諸島占領が無理となったものの、国内的に格好がつかなくなって南シナ海進出を始めるしかなかった・・子供染みた行為(国際政治は単純ではないと思うのが普通ですが・・)に見えます。
中国では裸官で知られるように国益など二の次の体質・・国内政治の延長・・権力闘争に勝ち残るためには、国益など構っていられない体質ではないかと言う見方です。
中国が世界秩序破壊の膨張主義に出て来たので、アメリカも漸く親中・応援路線を修正初めて、(中国にやられっぱなしではなく)逆にイランやベトナム・ミャンマ−、キューバ等への制裁解除(緩和)→中国陣営からの引き剥がしに動き出して、制裁緩和の結果ミャンマーなどの中国離れも加速しているなど世界の合従連衡の再構成が進んできました。
ところで独裁・軍事政権・人権侵害の理由で制裁していたアメリカが、イキナリ制裁緩和を始めたのでは、民主主義・人権擁護の主張を放棄したように見える点では、独裁国家中国になびいてる西欧と似ていますが、これは専制や独裁による人権侵害を応援するのではなく、アメリカの動きは制裁緩和に応じた民主化を漸次進めるように促す方向・・方法論の変更に過ぎません。
独裁強化・・自国内の言論弾圧だけではなく専制支配を更に周辺に広げることを目指す中国をそのままモンク言わずに(AIIB参加)応援する西欧とは方向性が違うように見えます。
民主主義国家であるべき西欧諸国が、中国専制支配を擁護し・香港での非民主化強行などに抗議するどころかAIIBIを通じた専制支配の拡大の後押しをするようになって来たので、この点を捉えて安倍総理がいわゆる【価値観」外交を展開したのは本質をついた良い着眼でした。
アジアで言えば中国の横暴な振る舞いに比例して従来の親中国諸国(韓国も含めて)の中国離れが進んでいます。
北朝鮮は中国支配から逃れたい・・本質は親米で「仲良くして!」と言う愛情表現が核実験やミサイル実験であると見るのが正確でしょう。
中国が、孤立しているロシアの足下を見て横柄な態度(実際には中国には資金がないのに「ない」と言えずに偉そうに格好つけているだけ?)に変化したのでロシアも、どうやって中国に頼らないようにするかの思案中になっています。
元々ロシアにとっては長大な国境を脇腹に抱え人口的に絶えざる浸透圧力のかかっている中国は、ロシアの弱み・本質的脅威国です。
プーチンが必死?に対日親和性を強調するのは理にかなっていますし、日本にとっても本拠地の遠いロシアは今の経済力等を綜合すればもはや(明治維新当時とは違い)軍事的脅威にはなりませんので張り合う必要性のない関係です。
現在の中国による反日政策と中国語の自信満々の横暴な振る舞いの原因はアメリカの反日戦後政策・・対抗軸としての中国応援によってのさばり過ぎたと見るべきでしょう。
日米戦争はソモソモアジア人である日本の台頭を叩き潰す目的で日本を戦争に引きずり込んだものですが、折角叩き潰して永久に台頭出来ないように一切の軍備も禁止したし、工業生産も禁止して来たのに、ソ連の挑戦に対応するために仕方なしに日本の再工業国化をアメリカは(臨時に?)許していたに過ぎません。
米ソ対決が終わって、アメリカは当面の敵がなくなったのでもう一度反日政策の再構築に戻ったのですが、理由もないのにもう一度軍事的に焼け野が原にする訳に行かないので、当面日本に対する道義非難を中韓にさせて様子見をしていた・・中韓と日本の反目を画策しているうちにアメリカが直截手を出さずに中国と日本を戦争させる寸前まで進んで来ていたのです。
(反日親中政策に徹したクリントン政権批判論調が我が国では多いですが、個人資質の問題ではありません)
アメリカは世界中を動員した日本叩きに精出した結果、この20年間「失われた20年」と言う対外的低迷期(私の意見では一直線に伸びるばかりでは危ういのでちょうど良い雌伏・内部充実期)に日本がはいっていたのですが、中国や韓国を優遇しているうちに今度は中国が自信を持ってのさばり過ぎたので、アメリカが中国の味方を公式に出来なくなってしまいました。
とは言えアメリカは世界の警察官をやめると公式発言しているのは、アメリカに攻めてさえ来なければ強くなった中国が西太平洋で何をやっても放置する体制・・(手始めに対日戦争準備.尖閣諸島侵略)言い訳準備が出来ていることになります・・。
中国が頻りに太平洋2分論=アメリカには手を出さない約束と自国の「核心的利益」を言うようになったのは・アメリカの核心利益に触れない限り黙認して下さいと言う意味です。
中韓の主張は、実は自分と相手とをすり替えていることが多い一例です。
とは言え、表向き太平洋2分論を認めていないことにしているアメリカにとっては南シナ海で中国が基地を堂々と作っていてこれを放置するとメンツが立たないことから、時々アメリカ艦船が航行しますが何もしない・・放置していることをオバマの弱腰と言いますが、実はアメリカの(核心的利益に反しない限り)世界の警察官をやらない宣言と平仄があっています。
ましてトランプ氏は自国に関係のないことは放っておくべきだと言う態度が露骨ですが、これがアメリカの本音でしょう。

西欧と中国接近の終焉2

中韓と西欧の緊密化の原因をどう見るかは別として、結果的にこの数年ではっきりと日米対中韓+西欧の陣営に分かれて来た・・アメリカと価値観共有していた筈の西欧が中国の人権侵害や国際ルール違反には目をつむり陰に陽に中国応援をするようになっていた事実を直視する必要があります。
中国の開放政策採用以降中国自身も日本の教えを請うばかりの弟分扱いは我慢がならない・・卒業を究極の目標にしていたことは当然ですし、ちょうど欧米による日本台頭阻止の底流と合致していたこともそのとおりです。
韓国は言うまでもなく日本に支配されていたことに対する報復チャンスさえあれば飛びつく関係ですし、日本がいなくなれば韓国の対中貿易が大幅に伸びる関係です。
勿論西欧にとっても韓国が日本の穴を埋め切れない高度製品に関しては、日本の穴埋めを狙えます。
関係者みんな良いこと尽くめの対日包囲網が出来上がっていたのです。
(ただしロシアが何故参加したか不明です・・ただどんなときでも弱っているのがいたら付け込みたい民族性だけでしょうか?)
約30年かかって中韓の地力が蓄えられ反日包囲網が完成し、チャンスを待ち構えていたところに親中韓政権が出来、地震が起きた・・未曾有の大チャンスが来たと思ったのでしょう。
中国の西欧や韓国企業優遇については、以下の通り非公式の優遇策が複雑に用意されて来たと思われます。
中国の猛反発にも拘らず、5月27日のサミット宣言になった中国の過剰生産品規制宣言関連記事では、中国では以下の引用のとおり何と鉄鋼だけで44件もの補助金が出ていると報道されています。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20160527.htmlからの引用です。
米国は不退転の決意で臨む補助金で輸出する違法商法
「中国の補助金は、ゾンビ企業を延命させる上で大きな役割を果たしている。この補助金は、国際的に禁じられている輸出補助金となっている。中国の鉄鋼製品では、補助金の種類だけで何と44件にも達するという。」
上記のとおり背に腹を代えられないダンピング認定のための綿密なアメリカの調査力があってこそ、44件もの項妙な補助制度を拾い出せたのでしょうが、西欧や韓国に対する進出優遇策・・土地取得の便宜〜許認可の便宜・・日本企業にはいくらでも手間ひま掛けさせて嫌がらせするなど・・差別化が簡単です。
中国による英独仏等西欧諸国優遇の実態は間接の間接と言う複雑な仕組みにして、簡単には分らなくなっているでしょうが、相当なものがあると想定されます。
お気に入りの国にたいする依怙贔屓的外資優遇策にはダンピング調査の対象にはなりません。
日本企業追い出しのためにサムスンその他韓国企業を複雑な補助政策で応援していた結果、この4〜5年で韓国の対中貿易黒字が巨額に膨らみ,(5月19日に紹介したとおり、12年は628億ドルの黒字=円で約7兆円・・韓国の経済規模にとっては目のくらむような黒字額です)韓国はその圧力で中国の言うとおり・・パク大統領は属国扱いされても恥を忍んで従うしかなくなっていたと想定されます。
折角中国の属国扱いされるほどすり寄っていた韓国に対する中国のご褒美は何だったかとなります。
中国はイザと言うときに北朝鮮に対する何らの影響力も行使出来なかったし、韓国企業と競合が始まると経済原理にそのまま従うだけならばまだしも、逆に韓国が作っている電池だけ優遇から除外するような姑息なやり方で韓国自動車の売上が急減しているなど、韓国に対する露骨な障壁を設けて韓国の対中貿易黒字が急減状態に陥っています。
世話になった日本を足蹴にして追い出したように、中国は自国企業が韓国との競合品を作れるようになると2年ほど前から、(反韓運動をしないだけで邪魔になればこう言う扱いです)韓国企業閉め出しに動き、13年1年間だけで対中貿易が12%もの縮小です。
韓国の対中貿易黒字と減少幅については5月19日に勝又氏の『朝鮮日報』(11月4日付)の引用記事の引用で紹介しましたが一部再録しておきます。
「13年の628億ドルから昨年は552億ドルへと 12%減少したと指摘。今年1~9月の黒字幅も353億ドルで、前年同期(404億ドル)を13%下回っている。」
属国扱いされても我慢して従っていた韓国も遂に堪忍袋の緒が切れた?中国の機嫌を損なわないために長く受入れに承諾してしなかったアメリカのTHAAD・ミサイル迎撃システム受入れに(但し中国のミサイルを探知出来ない方向しか設置させない?条件付き?)舵を切りました。
ドイツの代表企業フォルクスワーゲンが世界販売の4割も中国に頼っているのですから、韓国のような憂き目に遭うのでは死活問題と思われます。
西欧は中国の言いなりになるか、少なくとも積極的に不利な発言を出来ない状態になっていたと思われます。
上記の韓国切り離しの結果、中韓+西欧の事実上の対日包囲網にほころびが出始めました。

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