19〜20世紀型価値観の揺らぎと英国EU離脱

19〜20世紀型価値観の揺らぎ・・パラダイム変更の動きに戻ります。
2016年アメリカ大統領選でトランプ旋風によりトランプ氏が当選して翌17年から大統領になると旧習・前例無視の政治が始まり、ほぼ同時に英国では国民投票でEU離脱方針が決まりました。
その後米中高関税課税競争など20世紀に確立した国際関係のあり方に対する異議申し立て・変化を求める動きがあちこちで表面化してきました。
イギリスのEU離脱協議がどうなるか不明ですが、トランプ氏の予測不可能性・・異例の行動は個別問題の単発的行動中心ですが、イギリスの場合は自国の国家体制自体の変革ではないものの、EU参加によって事実上主権の多くが制限されていた状態の回復を目指すものですから国のあり方・一種の国体変更を目指すものでしょう。
トランプ氏のように単体ごとの既存ルール無視の積み重ねではなく、EUとの間で築きあげた濃密な関係の同時瞬間的ぶち切りと再構築作業ですので、国家枠組み革命的変更に近いやり方です。
いわば夫婦関係をいきなり解体すればそれまでの多方面の関係がブチ切れるのと似ていますが、夫婦関係の場合、縁が切れればその後の生活に関係がなくなるので新たな交際方法を決める必要が滅多に(子供の養育関連を除けば)ないのが普通ですが、経済共同体の場合、いわゆるサプライチェーンが網の目(毛細血管)のように構築されているので、簡単にぶち切って再構築するのは容易ではありません。
英国民の意思表示は、特にどこかと喧嘩したわけでもないのに離婚で言えば「性格の不一致」をいうだけです。
20世紀価値観で作られたEUの枠組自体に拒否感を示したいと言う感情論?です。
深く複雑な関係解消による大混乱を予測しながらもEUから飛び出したいと言うのですから、半端でない不満・・合理的説明ができないだけで皮膚感覚的に何かが合わないのでしょう。離婚同様に嫌なものはイヤッ!と言うべき皮膚感の違い・・・我慢できなくなった・・不満がたまり過ぎて後先見ずに爆発したということでしょうか。
国家と国家の間に障壁のある近所付き合いをこえて障壁のない濃密な付き合いになると、まさ憶測でしかないですが、大陸系と海洋系の生活気質の本質的違いに我慢できなくなったのかもしれません。
米国でも大陸系気質のドイツ系移民と海洋系の英国系移民とではまるで気質が違う・・こういうことを論じるのはアメリカでは合衆国の一枚岩維持の理念に水を差すのでこの種の表面化はタブーらしく、そう言う意見は外国に出てきませんが、何かのテーマで南部系と北部系が議論するとすぐにつかみ合いの喧嘩でもしそうなくらいの険悪関係になりやすいようです。
故なくヒスパニック系を揶揄し蔑む傾向があるのは、南北戦争で英国系をうち負かしたものの本家英国系を侮蔑することができないし、これをすると南北分裂になるので、代償作用・ともかく海洋系をバカにしたい持ちの発露・印象を受けます。
国際的常識?一般的になっているドイツ人気質とフロリダ等の南部アメリカ人のヤンキーなイメージとを比較想像すれば、民族性気質の違いは明らかでしょう。
嗜好で言えばデズニーの分布で見れば、南部にあっても北部にはないのでないでしょうか?
これだけ民族性が違うのです。
こういうドイツ系(といってもいろんな民族を含むようですが要は大陸系)と海洋国英国やイタリア等の海岸線出身系との気質の違いを論じるのはアメリカ分裂につながるので大手メデイアや、正統教育では表面に出ていないようですが、民族別に見ると民族ヘゲモニー争いに決着をつけた内戦がアメリカの南北戦争の精神的側面であり、この内戦にドイツ系(大陸系移民)が全面勝利した側面がありそうです。
この戦争の結果、真の米国統一が完成したようです。
日本人にはピンときませんが、南北戦争はアメリカは対英独立戦争を戦いとったのちの国内統一戦争の掉尾を飾った聖戦?になるようです。
だから、南北戦争の背景にある民族対立を持ち出すと国家分裂につながるのでこの点はタブーになっているのでしょう。
南北戦争は、我が国で言えば古代の壬申の乱のようなエポックになる戦いだったようですが、我が国では壬申の乱の敗者と勝者の怨恨が地域の怨念として残っていない・文字通りの日本国が建国され、列島民の一体感が始まったのは、民族別に別れた戦いではなかったからでしょう。
南北戦争はアメリカとっては国家統一の重要な決戦でしたが、負けた方の南部諸州の住民はいつかはリベンジ戦をしたい屈辱として記憶し続けているようですが、今や南部の復権が囁かれているようです。
南部が経済的に自信を持つようになったので、昔の恨み・南部諸州と北部に住むドイツ系/大陸系とは気が合わないのだというような気分が表に出てくるようになったのではないでしょうか?
トランプ氏はドイツ系なのに一見ドイツに厳しいようなイメージですが、実は今回の貿易戦争では製造業の復活スローガン=北部工業地帯の復興=製造業の保護貿易主義であり、この点ではドイツを筆頭とする欧州や中国など工業製品輸出国と表面上対立しますが、その代償として農業系諸州→中南部諸州の農業輸出を犠牲にする構図です。
すでに中国からの報復関税で南部諸州の農業系が打撃を受けている構図が明白です。
エアバスの輸出で対立する欧州とも高関税競争に入りそうですが、欧州も農産物輸入規制の報復に動くでしょう。
南北戦争の経済利害の背景は独立後勃興したしたばかりの米国製造業がまだ欧州との競争では負けていたので、輸入制限して北米地域の工業製品市場を独占したい北部諸州の保護貿易政策と、奴隷労働による安価な綿花大量輸出で潤っていた南部が関税競争→欧州の報復関税→綿花輸出できなくなる危機感を背景にしていたのと経済関係は同じです。
日本では農業票=保護主義ですので、ついうっかりしますが、米国農業は初めから輸出産業・自由貿易主義であり今も同じです。
習近平氏の過去の栄華をもう一度という夢同様に、トランプ氏も(無意識かもしれませんが)南部経済を犠牲にして北部工業地帯(ラストベルトはドイツ系移民中心でしょうか?)が勃興して経済大国に踊り出た歴史を再現したいのでしょう。
今回は製造業勃興期ではなく衰退を止めるだけのステージですので、高関税やファーウエイ等中国製品に対する輸入禁止等の保護主義政策(過去の日本叩きの焼き直し)では北部諸州の製造等を守り、育てられません。

サイレントマジョリティ20(投票率9)

昔から「鼓腹撃壌」を理想社会と言うように、争点があって百万人単位のデモ行動が連日のように起きて、大騒ぎになっている社会で投票率90%になるような政治・社会は実は理想ではありません・・みんなが自分の選んだ代表を信用しているから、お任せと言うのが平和で良い社会です。
左翼が勢力を伸ばすと対抗的に右翼が台頭するのが普通で、「対立が激化すればするほど政治意識の高い優れた社会だ」と賞讃するのは◯◯カブレの「知識人」だけです。
何事にも対立が激しく・・その結果政治関心が高まって投票率の高い社会は、逆に政治がうまく行っていない社会です。
重要なことは、多くの人がいつでも参加したければ大した負担なしに出来るように、投票制度が開かれていることかどうかです。
そのためには投票することが負担にならないように、休日に設定するとか、出先・・どこでも出来るようにする・・いろんな障壁をなくして行く必要がありますが、簡単な電子投票制度が普及すれば、(病人も足腰の悪い人も簡単投票出来ます)棄権率がかなり減るでしょうし、それでも棄権する人は分らないか、関心がないのだから政治は関心のある人で運営すればいいとも言えます。
要は関心を持った人が簡単に参加出来るシステムかどうかです。
開かれた社会を前提にすると投票率が下がる程、関心事項の多くない社会はもめ事の少ない安心社会・住みよい社会になります。
普通のゴミ保管場所に大した関心がないのに、放射性廃棄物の保管場所だから千葉に来るのはイヤとなるのであって、・・関心の高い事項と言うのは、あまり有り難くないことが多いのです。
関心があれば参加率が上がることを前提に、株主総会や取締役会、マンション管理組合その他殆どの組織での決議要件は、原則として株主や構成会員の何%を基準にするのではなく、何割以上の定足数や出席者の過半数による決議とか、何割以上と決めているのが普通です。
マンション建て替えや、旭化成による杭打ち不正によるテーマなどになれば、そのマンション住民の集会参加率が上がるでしょうし、何もないありきたりの決算報告集会程度になると(監査法人などプロのチェックに任せておいて良い)殆どの人が欠席してしまいます。
国民や会員はそのときどきのテーマの重要性に応じて出欠態度を決めているのですから、一律に投票率や出席率が低いと・・政治意識が低いと言うものではありません。
もしも全株主の過半数の賛成決議がないとすべて無効(不信任)と言い出したら、どこの会社も運営出来なくなります。
これは日本特有の決議要件ではなく、世界標準です。
有権者の数に関係なく、得票数の多い方を当選者とする現行選挙法は、現在世界中の組織運営の原理から言えば、出席しない人は出席者の多数意見に一任する意思表示と解釈するのが合理的であると言う国民あるいは世界中の合意を前提にしていると解すべきです。
選挙に参加した人の中で多くの信任を得た人が投票しなかった国民を含めた信任を得たことになるのは不思議でも何でもありません・・合理的制度です。
これを逆に(関心があればいつでも参加出来る組織の場合)不信任と評価するのは世界のあらゆる組織運営原理を根本から否定するものであって、余程合理的実証研究の結果でないと、学者としての公式発表で軽々しく言うべきではありません。
繰り返しお断りしているように仕事外で、個人的思いつきを書いているこのコラムとは、訳が違います。
ただし、反対運動に反対することが出来ない閉鎖的集団の各種反対運動の場合は参加者の数が重要です。
ゴミ処分場その他公聴会に熱心に参加するのは反対派の人だけであって、どうでも良い・・・あるいは自宅の近くに来るのはイヤだが、だからと言ってどこかで引き受けるしかないとすれば、反対していいのかよく分らない人などお任せ系の人は元々参加しません。
(へりくだって?)分らないと言うと「バカ」扱いして「遅れているから教育してやる」と言うのが左翼系文化人の発想ですが、簡単に意思表示しない人こそ思慮深い態度と言うべきでしょう。
・・・杉並ゴミ戦争の例を見れば分るように「エゴ」ばかり主張する人が進んだ?立派な人ではありません・・。

中国の過大投資調整20と個人の弱さ5

値下がりマンション等のローン支払限度が来るまで社会は何とかなります・・そこで庶民に負担を押しつければ企業と違って先送り出来ますが、一定期間経過で庶民も限界がきます。
この救済も兼ねて株で儲けて下さいとやったのが株式相場の煽り政策だった・・この売却益でマンション購入者の多くが救済された筈です。
今朝の日経朝刊4pには、編集委員名で中国政府が、投資に偏っている経済構造から消費社会に移行させようとしたが、消費するには庶民に金がないので、庶民に豊かになってもらうために政府が株式購入を勧めたに過ぎない・・人民元切り下げ同様に裏目に出て気の毒だと言う例の中国政府擁護の論文が出ています。
しかし、庶民同士が資金を出しあって、金儲けした気持ちになってもその論文で書いているとおり、溺れかけているときに自分の髪の毛を自分で引っ張り上げているようなもので、金持ちから庶民に金が回ることはあり得ない・・逆に困っている中間層や資本家に庶民から金を回す政策・・この論文は無理なこじ付けです。
人民元切り下げは、IMFの要請に従っただけだが、タマタマ株暴落と一緒になったので、世界に誤解されて気の毒だったとか政府による株投機勧誘の言い訳と言い、無理な中国政府擁護論ですが、この株上昇期待に庶民が殺到して爆買いし、(庶民が買った分誰かが売れているのです)これに対して売り逃げ出来た階層がある事実は変わりません。
いつも書くことですが、中国政府はいつも一石二鳥を狙って自己満足しているのですが、(独裁政権下の国民は「大したものだ」と賞讃するしかありませんが・)世界はその本音の部分を嗅ぎ取ってしまうだけのことです。
この錬金術も終わり次の転嫁先がなくなっている・・庶民の懐まで食い尽くしたら最後でしょう・・のが現在ですが、大勢が失業したりする大企業や中堅企業の倒産とは違いますが、社会全体の活力にじんわりと利いてきます・・これが韓国バブル崩壊後の内需貧困・消費減退・売春婦輸出大国になった原因と思われます。
中国の場合、韓国とは違い、・・9月25日書いたように「あんたの言う通りにしたのだから、結果責任をとってもらおうじゃないか」と言う行動に出られる点が違います。
2014年8月28日に紹介したように人民の方も政府を信用していない・韓国に比べて目先が利きますから、政府が開発業者に融資して在庫一掃を目指していて「夢よもう一度!」と煽っていても、買い手が減って来て在庫が膨らんでいる様子です。
中国も韓国に習って個人に少しでも多く売ってしまえば、それだけ企業の破綻が少額になり、派手なバブル崩壊(企業倒産の連鎖→金融機関破綻)は防げます。
中国としては、日韓の例を充分勉強しているので、日本のように下手なことはしない・・(最後は庶民に付け回して)うまくソフトランデイングできると言う自信があるかのように宣伝していました・・日本のマスコミやエコノミストがそう言っているだけだったのかな?
私の方は中国語の報道を読めませんので・・・
25日に書いたように独裁政権は権力・強制力の強さに比例して民意に敏感であるべきですが、危機的状況になって来るとそんな余裕がありません。
開き直って行くしかないので、体制強化・・軍事公安に力を入れることが先決です。
独裁政権の特徴は、苦しくなれば開き直り・・政権内の粛清・・国民に対しては弾圧強化、海外には強面等が普通の行動パターンなる点でしょうか?
外交交渉もロシアの例を見れば分るように国際的に孤立していて苦しくて日本との友好関係樹立が喉から手が出るほど必要になっているのですが、そうなると却って北方領土で挑発行為をしたり、領海侵犯等の挑発行為が激しくなるのですが、韓国も中国も似ています。
中国も困れば困るほど尖閣諸島で強硬に出て来るし、韓国も困っているからこそ日本攻撃をより激しく繰り返しているのです。
数日前には、高校教科書に慰安婦問題を書くように強制することになったと報道されています・・日本人の感覚では、こうなると日本を頼るしかなくなっているのに、何をやっているんだ!と言うところですが、彼らは日本に頼るしかないとなれば余計激しく攻撃して来る政府です。
「つべこべ言うな」「俺に任せておけ」と威張っていると困ったときに本音で相談出来なくるのが普通で、国内向けにはいつも大成功している姿しか見せられず、(でっち上げ統計発表を繰り返すのも国内向けに必須で)空威張りするしかなくなるのです。

独裁と結果責任主義2

結果責任主義の場合、成長を続けていれば被支配者には文句ないのですが、成長が鈍化して来るとこのやり方では無理が出て来ます。
世上中国にとっては、7%成長が政権維持の最低ラインと言われていた所以です。
これは古代から全ての階級社会共通の現象です。
この数年実質的にはこの成長を維持出来ていないので、国民不満が徐々に強まっていて(外国向け統計は誤摩化せても実際に生きている庶民の懐具合が悪くなっている不満を統計で誤摩化してどうなるものでもありません・・)その影響で先ず支配階層内部できしみが生じてきました。
この辺は昨日25日に書いたとおりで、独裁政権では100%お任せの代わりに結果責任を厳しく問う社会ですから、逆説的ですが民意に敏感です。
専制国家では、庶民は唯々諾々と従うだけで思考する訓練が出来ていませんが、権力階層内では、権力交代予備軍が必要ですから、支配階層は自己判断の訓練を受けているので、成果が上がらなくなくなって来ると現権力者の政治に対する不満が出て来ます・・。
これに対する対応が、習近平政権成立直後から始まった粛清の嵐に繋がっていると見るべきでしょう。
ソ連も、経済政策失敗でうまく行かなくなるとスターリンによる粛清が始まり以後4〜5十年間何も言えない状態が続き、収容所列島と言われていました。
庶民自体指示を待っている状態に訓練されている状態では、被支配層に言論の自由がなくとも不満が起きませんが、(むしろ果敢な支持・命令をくれないと不満が起きます・・スポーツその他現場指揮官は果敢な、分り易い指示を出すことが重要です)逆に支配グループ内である程度多様な意見交換がないと政権が脆くなって行きます。
ソ連は対外的には、カクカクたる成果ばかり強調していましたが、虚偽発表の限界がきて遂にソ連崩壊となり、結局自由主義国の進歩に大幅に遅れてしまいました。
余裕があれば政権に遠い庶民も大事ですが、近衛兵のクーデターがいつあるかと言う段階になって来ると関心が権力周辺組織固めに集中しますから、側近層幹部の利権を守り政敵の利権殺ぐのに精一杯で遠くの庶民の面倒はあと回しになります。
逆に庶民から資金を吸い上げて側近幹部クラス関与企業等の保全や延命を計りたくなるのでしょう。
マンションなどを庶民に高値でつかませてしまってから値下がりして庶民がいくら困っても長期的にボデイーに利いて来る程度ですから、目先の政権維持に必死の政権は超短期的政策として庶民救済を重視しません。
目先の共産党幹部間の権力争いに有利かどうかで政策判断をして行くしかない状態に陥っているのが習近平政権ではないでしょうか?
粛清し放題で向かう所敵なしと言う面を外部あるいは政権内部から見れば最強政権とも言えますが、政権全体では硬直性が進み危機状態が極まっている結果の現れとも言えます。
経済政策では、国民全部底上げは無理になって来た現実を踏まえて、権力に近い幹部の関与する国有企業の経営権維持が先ず第1の目標になります。
昨年来の政策を見てると、時々政府資金投入でバブル再燃させることによって、投機心の高い個人にまだもっと儲けられると期待させて、在庫(マンションや株式)の多くを末端個々人に売り抜けさせる目的のように見えます。
実際に今年前半には値上がりした株を元手に多くの不良企業が持ち直して不良債権が減少して金融機関の業績が急上昇している・・助かっています。
不振企業も相場上昇前提に新株発行によって巨大な資金を手に入れたようです・・この分、庶民から企業への所得移転が進んだことになります。
この逆で6月以降の株価下落で新株発行(資金吸い上げ)はぴたりと止まっている外、大半の株が売買禁止状態ですから、資金流通が阻害されています。
「売買禁止とは荒っぽ過ぎるやり方ですが、株式市場が何のためにあるか、資本取引の場である以上これが戒厳令のような命令で取引停止にするとその影響が(高速道路の通行禁止のように)目に見えないだけあって尋常ではない筈です。
株価上昇で一息ついていた企業が今後酸素・血液不足になって来るでしょう。

独裁と結果責任主義1

中国では、底堅いと言われていた上海でもマンション価格が昨年秋頃には下がり始めたことに危機感を抱いていました。
マンション価格下落が全国的に進行している現状に打つ手がなくなってしまい、国有大手企業ばかりではなく中小企業も放置出来なくなって来たことと、ローン金利引き下げや2戸目購入に対する規制緩和するなどによって何とかマンション購入意欲を引き上げに誘導したい意図が見え見えです・・バブル破裂の先送りを策していると見られています。
この辺は昨年夏から秋に書いておいた原稿ですが、その後の経過はこのシリーズで書いているように、今年5月までの短期間に3回も次々と金利引き下げ・・6月以降の株価下落では、各種金融緩和をするしかないほど追いつめられています。
投資家・投機家?とすれば、困って来れば政府が次々と手を打ってくれるので、その間に儲けられると思って、再参入する人が増える・・景況感悪化が報道されると却って政府のテコ入れ期待でマンション購入が増えたり株が上がったりする国民性です。
採算割れで海外投げ売りによって企業業績悪化が鮮明になっているのに、景況感悪化の報道があると逆にこれを理由に政府テコ入れ期待で上海株が逆に急上昇する不思議な国です。
原発事故後に整理ポストに入った東電株式など、その段階から大儲けしようとハイエナのように群がるプロ投資家心理が知られていますが、中国では庶民までこれに競って参加する社会です。
欲深と言えばそれまでですが、これまで書いてきたように専制制度の下で2000年も生きて来たので、「権力は何でも出来る」・・権力の崩壊は何百年に一回で・・それは滅多にないので、権力者や君主の顔色を見て先を競って行動していれば自己保身や金儲け・・出世に繋がると言う生き方が骨の髄までしみ通っているからかも知れません。
政府が株式相場を上げようとしていると知れば我先に買いに走る・・大方損はない・・政府が手じまいしようとしているとなれば、我先に売り逃げる・・この辺で政府がテコ入れしそうだとなればまた買いに走る・・こう言う生き方です。
政府の煽りとおりにして来た以上は、結果が悪かったら政府に責任をとってもらいたいという意識が強くなるようですから、独裁政権・強力なリーダほど責任転嫁出来ないので、被支配者の不満に敏感にならざるを得ません。
我が国で言えば消費税増税による景況感悪化に関してはむしろ安倍政権に同情的世論でした・・その違いを見れば明らかです。
民主国家では思うように行かない分政権の責任も軽くなる・・安全弁になると言う実例です。
もちろん・・指導力がなくて何も決まらないとそれはそれで国民不満が生じてきますので、民主国家ではその塩梅が難しいところです。
自己責任の原理は・個人の主体的判断によって生まれて来るものですから、何事も強制による社会では、主体的判断が許されない・・訓練のないところに自己責任の思想は生まれないでしょう。
個人の主体的判断によって行動する社会では、行動の結果は自分で負うしかない・他人の責任に出来ないので政府責任もありませんが、その判断の前提たる情報が判断を左右することから、その加工や隠匿に対する責任追及社会になります。
民主主義・自由主義社会では、情報透明性が重視される所以です。
他方政府の言うとおりで良い社会では、情報の透明性需要がなく、むしろ政策の強制性に頼っている状態ですから、(統計がデタラメでも)何の不満にもなりません・・「言うとおりする代わりに結果責任とってね・・」と言うのですから・・。
スポーツその他強いリーダーシップが要請される分野では、民主国家においても結果責任主義です。
強いリーダーシップを求める社会では、庶民の方は何も考えずに将棋の駒のように動くだけですから気楽と言えば気楽ですし、言わば能力差や階級差の激しい民度の低い社会向きです。
サムスンなどでは、決断が早いと日本マスコミが賞讃しますが、合議する習慣のない社会ではそれで良いのです。
大量生産の1万人単位の大工場の誘致で成長する段階では、この種社会の方が効率が良かったでしょうが、一定以上の賃金になってこの種工場が低賃金国に負けて来ると、次の段階に進むには、個人の工夫能力等が重要になってきます。
日常的に主体的判断している社会かどうかでこの差が出て来ます。
中韓では大規模工場があっても、中小企業の存在感が少ない所以です。
大企業はサイバーテロや技術者招聘・引き抜きなどで、先端技術を導入出来ますが、中小企業の方はこんなコストをかけていては成り立ちません。
旧ソ連では、人工衛星を飛ばせたのに、日常的な製品であるクルマ1つマトモニ作れなかったのはこの原理によりますし、今の中国も同じです。
ただし中国地域では、古代から商業社会・・都市国家製で始まっているDNAがあるので、商業面での個人才能を侮れないことは大分前から書いています。
中国が商業国家から始まっていることについては、12/14/05「海路の発達と中央アジア交易の縮小」前後を参照して下さい

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