資金環流2とルール変更リスク1

今後日本の対米直接投資が進み他方でアメリカの対外直接投資が日本より少なくなって来ると、多分資本自由化に関するルール変更を仕掛けて来るでしょう。
そこまで行かなくとも・全世界ではアメリカの投資残の方がまだ大きくても、日米だけの所得収支・・日本の対米投資の方が大きくなって日本への収益送金の方が大きくなった場合に直ぐに問題化するでしょう。
トヨタなどが儲けてもその儲けを日本へ送金しないで更に新工場建設など再投資している限り問題化しませんが・・日本も苦しくなって本国送金が増えた場合の話です。
大分前に日本は今後物造り→貿易黒字で稼ぐのではなく、貿易赤字を所得収支で穴埋めする国になって行くとその頃にはルール変更リスクがあることを少し書いたことがあります。
今のところ、日本は貿易収支も黒字ですから、所得収支黒字分は再投資=資本収支が赤字になる仕組みですから、資本還流の方が多ければアメリカは不満がないでしょう。
この何年か国際的テーマになっているタクスヘブン騒動や、法人税減税競争はこのリスクの始まりを表しています。
進出されている国が現地企業利益の本社吸い上げを権力的に妨害をしていませんが、(中国が外貨準備減少に直面して日本企業への送金妨害していると言われていますが・・)アメリカが送金する側に回るとどうなるか分りません。
現在進出されている多くの国は新興国でもと被植民地国が多い・・ナセル中佐によるスエズ運河接収のような力を持っていないのですが、税制その他のソフト面の理由で結果的に現地進出先での儲けが現地滞留している・・本国送金障壁になっている点は同じです。
今後地産地消と言うかけ声・・「地元での儲けは地元で使おう・・還元しましょう」と言う声が高まりこそすれ、縮小することはないでしょう。
アメリカが折角海外で儲けた資金が進出先に滞留したままになっている点を、アメリカで問題にしていることが時おりニュースに出ています。
昨日アメリカの対外投資残が突出して大きいことを紹介しましたが、投資しっぱなしで儲けが送金されないままでは、絵に描いた餅です。
本国送金時に法人税がかかる・・結果、アメリカの世界企業が、儲けの本国送金を先送りする・・儲けを出先現地国で再投資を繰り返す運用になっているらしい報道です。
日本の租税条約や税制を見ても(私の能力では)そう言う条文を探し切れないので引用出来ませんが、(日本ではやっていないアメリカだけの税制かも知れません)もしも条約ではなくアメリカ国内法の問題であれば、不都合ならば勝手に法律改正すれば良いので国際問題化する必要がありません。
これをしないでアメリカが困っている理由が分りません。
ブッシュ政権のときだったかに、期間限定で(例えば200X年までに)国内送金すれば、この期間だけ免税または減税すると言う法律で還流を図って一時的にかなりの資金環流があったと言われています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/eu-39.php
米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。この問題の副次的影響の1つとして、米企業が海外に滞留させている利益を本国に戻す動きが促進されるならば、ドルにとっては一方的なプラス材料になるだろう。
米企業の海外留保利益は、推定で2兆1000億ドルに上る。そして大統領選を争う共和党候補ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏はいずれも、こうした利益の還流を促す措置を打ち出すと公約している。
2005年には当時のジョージ・ブッシュ政権が制定した本国投資法で資金還流への適用税率が大きく引き下げられたため、約3000億ドルの海外留保利益が米国に戻った。この間、資金還流がどの程度為替レートに影響したかについて議論はあるものの、ドルはユーロで10%程度、対円で15%それぞれ上昇した。」
アメリカの税制については、以下の解説が見つかりました。
アメリカの条文に直截当たる能力が私にはありませんので、一応名の知られたプロの解説ですから、正しいものとしてお読み下さい。
https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190
日付:2017/01/24
森信茂樹 東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長
「米国は、全世界所得課税方式をとっており、海外での税引き後利益を配当として米国に還流させると、米国税率との差額を追加的に米国で課税される。このため企業は、米国に還流せず海外の低税率国・タックスヘイブンに利益を留保するという行動に出る。
具体例を見てみよう。昨年末に大きな問題となったのは、アイルランドがアップルに対してほとんど税金を払わなくてよいスキームを用意していたことである。アップルの実質的な法人税税負担率は、2003年に1%、2014年には0.005%に低下しているという。
これに対しわが国を含む多くの先進国は、「国外所得免除方式」をとっており、子会社が海外で稼ぎその国で税を支払えば、配当としてわが国に還流させても非課税としている。 – See more at: https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190#sthash.Y1qfGmMd.dpuf」
以上によれば、アメリカだけが現地よりアメリカの法人税率が高い場合に、アメリカではその差額を払わせる仕組みになっていることが分ります。
抗すれば、法人税の安い国に逃がしても何にもならないだろう・・と言う小手先の智恵ですが、そうすると資本家は本国へ儲けを持ち帰れらなくなってしまったジレンマです。
この法制度のために資金環流が進まない・・1つには、法人税を下げればそう言う懸念がなくなるので、法人税減税論が解決すべき政治テーマになります。
ブッシュ政権のときの例によれば、法人税の差額を取るのをやめれば解決する・あるいは法人税を新興国同様に低くする競争に参加すれば済むことですが、それをしたくないから相手国への滞留を問題視していることが分ります。
資本や技術のない国は土地を安く提供したり固定資産税を一定期間免除するなど税制面で優遇することによって資本や技術を導入するのが普通ですが、進出企業が儲けた金を権力で没収出来ない代わりに同じく法人税下げで対抗する・・そうすれば先進国資本家は儲けを本国へ持ち帰らずその国での再投資資金に使ってくれます。
腕力で技術者を拉致したり武力で接収する必要のないソフトなやり方です。
法人税下げ競争は、アップル本社誘致のためにアイルランドが無茶安くしていた上記の例を見れば、貿易に関する為替引き下げ競争を資本争奪競争に応用したような・・変形版になります。
タクスヘイブンが何故成り立つかと言えば、どうせ何も来ない寒村よりは設立登記手続その他複雑な帳簿作成事務作業が増える(アップル本社の文書作成コストは半端ではない筈)だけでも、その土地では大きな収入になると言われています。
別にダンピングではない・・ただ見たいな田舎の土地でただみたいなコストであれば・・不当な競争とも言えません。
資金や技術はコストの少ない方に集まる原理をアメリカや先進国が腕力で変えようとするのは無理があります。
国際的法人税減税競争をここで書くつもりがありませんのでこの程度にします。

対外資産の内容(日米比較)1

May 7, 2015,「主要国の金利差と国力差」に書きましたが、ある国の金利水準こそがその国の国際的地位を如実に表す指標です。
この低金利時代に中国が基準金利・4〜5%の高金利を維持せざるを得ないどころか更に金融引き締めるしかなくなったのは、(偉そうなことを言っていても)資金の海外流出が怖いからです。
高金利国はそれに比例した国力の弱さを表しています。
企業で言えば信用力に比例して有利な(低金利)資金調達が出来ますし、信用・・体力がないと他所よりも高金利でも借りるしかありません。
今のところアメリカの金利政策は日本を除く世界中に直接影響しますが、金あまりの日本には全く利きません。
アメリカ・トランプ氏はこれが口惜しい・・自分の方が金利を先に上げると経済論理的には日本は対米貿易黒字国なのに円がもっと安くなってしまっても平然としている→アメリカの貿易赤字が逆に膨らんでしまうのが口惜しいところです。
日本はアメリカ現地工場進出・投資を今後更に促進し黒字分を帳消しにすると言うのが戦略らしいですが、それではアメリカの雇用を守れても日本資本に支配されるばかりで本音では面白い筈がありません。
5月7日の日経新聞朝刊では、日系クルマメーカーのアメリカ国内生産台数が400万台に迫る勢いと出ています。
ところで、いろんなきれいごとを言っても外資に支配されていたい国はありません。
アメリカの本音は・・自分が勝ちたいと言う結果重視が基本です。
スポーツでも顕著でしたが・・日本が勝ち進むと次々とルールを変えることの繰り返しでしたが、挑戦者が日本だけではなくアジア全体のレベルが上がって来たのでこのやり方に無理が来て最近卒業しました。
国力差についてはまだ挑戦者が日本に限られていたので、自分が一強のときには自由競争を主張していましたが、競争に負け始めると何かと理由を付けてはスーパー301条のような法律を作っては日本に対して輸出自主規制を強制しました。
最近では挑戦者が日本だけではなくなって来たので、人種規制・・アラブ系入国禁止を主張したり何かと自分勝手な規制・保護主義に走ります。
今回のイタリアサミットでは、自由貿易の旗印を共同宣言出来ないほど・・アメリカの保護主義が露骨に主張されていました。
アメリカは、自分が資本進出するばかりのときには資本自由化を強調していましたが、今後日本企業に進出されるようになると面白かろう筈がありません。
ただし、今のところアメリカの方が対外債権・投資残が日本と比べて桁違いに大きいし収益構造も日本よりも桁違いに高率らしいです。
以下は、http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/602.htmの一部引用です。
「・・対外債権について。
米国: 2011兆円
イギリス: 945兆円
フランス: 884兆円
ドイツ: 625兆円
香港: 310兆円
中国: 265兆円
日本: 519兆円」
日本の対外資産は香港の1.6倍くらいであり、大雑把にえばイギリスの約半分、米国の4分の1である。日本は決して世界に冠たる対外資産国ではないのだ。」
ここで関心のある資本支配のテーマでは、対外資産内で直接投資残高が重要です。
日本の場合、民間部門の対外資産は、
・直接投資が、 → 『39兆円』
・株式投資が、 → 『38兆円』
・債券投資が、 → 『171兆円』
であり、・・アメリカの場合は、
・直接投資が、 → 『32900億ドル』
・株式投資が、 → 『25000億ドル』
・債券投資が、 → 『9000億ドル』
となっており債券投資が半分以上を占めている、日本とは異なり、アメリカの債券投資は、『1割未満』の水準になっている。
直接投資の比率が、日本では→『8.9%』に過ぎないのに対し、アメリカでは→『ほぼ3分の1』に達している。もちろん、株式投資の比率も投資先進国アメリカでは、『4割程度』を占めております。」
上記は出典を書いていないので、いつの統計か数字の正確性も不明ですが、参考までに上げると上記のとおりです。
債権投資・・米国財務省証券のように実際には売らせない・・イザとなればイラン禁輸のように対日・対中規制で凍結出来ますので、米国にとっては貰ったも同然の資金です。
イザとなれば、これは踏み倒せば終わりで簡単ですが、直接投資の方は、企業支配・・事実上自国民が支配企業の指導に従うしかない・・事実上の支配力を行使出来ます。
トランプ政権の副大統領ペンス氏はトヨタなど日系アメリカ工場所在地の元知事で親日家であることを期待する声が大きいですが、あまり直線的にうまく行くのはリスクがあります・・。
日本式経営・文化に現地人が同化して行く方向・・これが広がり過ぎると長期的には日系企業の集積していない地域では、反日気運が盛り上がらない保障はありません・・心すべきことです。
明治維新以降、外国資本支配を防ぐために必死になって民族企業を育成して来たのですが、中国の場合宗族優先で民族意識が元々ないので、アヘンでも何でも儲かりさえすればその手先になって売りさばく傾向がありました・・中国企業家を「買弁資本家」と歴史で習って来たところです。
これは5月24日まで書いたとおり、民族意識より宗族利益重視の性質がそうさせるのです
「買弁資本家」を検索すると意外に私の過去のコラムJanuary 13, 2012「海外投資家比率(国民の利益)1」その他が出て来ましたが、私の若い頃に仕入れた過去の知識がどのように変わっているかを他人の意見で見ておきましょう。
echon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131129/319482/
中国社会の9階層(2)経済発展で消えた「買弁」
今月取り上げているのは『中国社会各階層分析』。中国社会を9階層に分け、それぞれについて解説した書籍である。
・・・本書で扱っている中産階級はこの記述よりもやや狭く、「資本家にはなれていないがまずまず豊かな層」程度の定義づけである。本書では、資本家は、1978年の改革開放政策の開始直後の、法や社会的ルールが未整備な状態で富を得た層の2代目という取り方をしている。それに比べ中産階級は比較的新しい階層で、自分の代で豊かになったものを指すのだという。
 それゆえ入れ替わりも激しく、中産階級層からは多くの破産者が出る一方で新しく中産階級層に入ってくるもの多い。また、他国の中産階級の人々は自分たちがこの後「資産家」になれる可能性は低いと考えているが、中国の中産階級はまだ今後自分たちも資産家になれると考えているそうである。」
しかし、この記述は1997年現在のものであるため、現在でもこのような分析が適当かどうかは再度考察すべきであろう。このように本書が最初に書かれた時点ではまだ中国社会も高度成長の初期であり(WTO加盟が2001年)、10数年後にGDP(国内総生産)で世界2位になるということを実感として予測していた人も少なかったのではないか。
・・・毛沢東の言う「買弁」は「外国人の手先となって国の利益を脅かすもの」という見方であったが、本書ではその見方は採らない。外国人の代理となって働く彼らがいたからこそ、外国資本などを受け入れ発展することができたと考えているからだ。」
・・・中国が計画経済から現在のような経済体制へと移行していく間にさまざまな業種などが消えていったが、買弁というのもそのような端境期の一種のあだ花であったのだろう」

中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)1

話題が民族国家→民族文化の重要性にそれましたが、アメリカの金融政策の中国への波及効果に戻ります。
アメリカの金融政策から中国の受ける影響・・図体が大きくとも社会経済的には新興国の仲間である点は厳然たる事実ですから、アメリカの金利上げによって資金がアメリカに吸い寄せられる磁力に逆らえません。
・・日本は元々アメリカよりも金利が低い状態でここ20年あまりやって来ましたのでアメリカが少しくらい上げても日本には関係がありません。
逆に昨年1年間中国の対日資金「潜入」が増えていることを、「中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ」のテ−マで5月15日にに紹介しました。
中国は、これまで紹介して来たように長期にわたる構造改革中でその痛みに耐えるためには財政投資(内需拡大)や金融緩和を続ける必要がありますが、アメリカが金融引き締めに入ると中国独自に緩和を続けることが出来ない・アメリカの政策に追随せざるを得ない点は新興国同様です。
軍事力で周辺を威嚇していても、アメリカ軍が中国の領有主張している海域でアメリカが航行を開始すると追いかけて追い払う訳に行かない・・小さくなっているしかないのと同じで実は独立性がありません。
最近の北朝鮮有事・・米空母打撃群が2グループもやって来て日本海で大規模演習をしても中国は北朝鮮のために抗議1つ出来ないどころか、北朝鮮封じ込めに協力すると言わざるを得ない・・経済封鎖に加担実行開始するしかない状態です。
血盟を誇っていた北朝鮮を守れないどころかアメリカに従って北朝鮮包囲網に参加する意思表示に追い込まれているのですから、これほど頼りにならない同盟国・・屈辱的なことはないでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO16534010X10C17A5EA1000
北朝鮮包囲網ほぼ完成か 米、ミサイル300発で圧力    
真相深層 2017/5/18付日本経済新聞 朝刊
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる米朝の対立が膠着するなかで、米国は北朝鮮の軍事的な包囲網をほぼ整えた。朝鮮半島近海に米国の空母や原潜を展開。北朝鮮が「レッドライン(軍事行動を起こす基準となる行為)」を越えれば即応できるように、推定で300発の巡航ミサイルが北朝鮮の地下施設などに照準を合わせている。北朝鮮の譲歩を引き出す圧力は確実に高まっている。」
toyokeizai.net/articles/-/159314 5月21日
中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止
輸入禁止措置は19日から今年いっぱい [上海/ワシントン 18日 ロイター] – 中国商務省は18日、北朝鮮からの石炭輸入を全面的に停止するとの通達をウェブサイト上で発表した。北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁を強化する狙いがある。輸入禁止措置は19日から今年いっぱいとなる。北朝鮮は12日に弾道ミサイルの発射実験を行った。中国は昨年4月、国連の制裁を受けて北朝鮮からの石炭輸入を停止する方針を示したが、核やミサイル開発に関係せず人道上不可欠な場合は除くとしていた。」
5月22日の午前のMSNニュースです。
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/北朝鮮対応「100日猶予を」
-中国・習主席、米に要求/ar-BBBm7Hq北朝鮮対応「100日猶予を」 中国・習主席、米に要求 朝日新聞デジタル のロゴ朝日新聞デジタル8 時間前
「 北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が4月初旬のトランプ米大統領との会談で、米国が北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求めていたことがわかった。この会談で合意した両国の貿易不均衡是正についての100日計画と並行し、安全保障分野でも同じ期限を設定した格好。ただ北朝鮮は21日も弾道ミサイル発射を強行しており、どこまで効果が出ているか不透明だ。」
「関係筋によると、会談で両首脳は、北朝鮮による新たな核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を阻止することで一致。北朝鮮による「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意した。習氏は、中国国内の企業からの北朝鮮への送金規制や北朝鮮向けの石油の輸出規制などの独自制裁を検討していることも示唆したという。」
アメリカの金融緩和開始の憶測だけで16年中に中国から資金が逃げ続けて行き、4兆ドルに迫っていた外貨準備が1年間で3兆ドルを割るまでになりました。
中国の場合、新興国から逃げる一般的な資金逃避傾向と中国自身の内需拡大政策・・景気対策につぎ込むための資金浪費?懸念の両面から為替下落圧力がかかったことが、巨大な外貨流出を招いたことになります。
結果的に自慢の外貨準備も一時3兆ドルを割ってしまい、貿易量から見て安定的保有資産として必要な最低限・・危機的ラインに近づいて来ました。
そこで中国政府は昨年末から急激な外資流出制限を掛けているのですが、これで何とかなるかがこの半年〜1年の結果によります。
他の新興国と違い貿易黒字を維持したままですから、資金流出・・人民のパニック売りさえ防げれば、貿易決済に支障が出ることは本来ありません。
ここまで自腹(虎の子の外貨準備に手を付けても)を痛めても国民を失業させない(政権維持の自己目的とは言え)心意気は結果として大したものです。
ただ、対日資本流入が16年1年間では増えていることから考えると、イチガイにパニック売りばかりとは言えない・・投資価値の低いアメリから逃げて先進国企業買収による技術移転を狙った民間による合理的投資もかなりある筈です。
民間の方は、政府が資金不足になろうが、デフォルトしようが構わない・・自企業の利益のために行動しているとすればそれもあるような民族性です。
政府としては、外貨準備が減るのを惜しんで内乱になるともっと困るので、二者択一判断で外貨準備取り崩し・内需拡大策が結果を先送り出来るし、もしかして何とかなる可能性があるのでこれを選んだのでしょう。
昨年末まで頑張って来たものの外貨準備が3兆ドルを一旦割ってしまい、経済規模からしてギリギリになって来たのでこれ以上の買い支え=外貨準備取り崩しは出来ない状態です。
そこで昨年末頃から海外投資を規制したり短期金利を上げたりして打つべき手を打った挙げ句にFRBの金利上げですから、国内景気失速が心配などと言ってられなくなって・追随して金融引き締めに入りました。
・・FRBの金利上げが今後連続した場合、その都度追随して中国も金利を上げ・金融引き締めするしかなくなった場合には、国内景気に大きな影響を及ぼすのは必至です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14873520U7A400C1FF2000中国、引き締め政策で金融市場が動揺 社債の発行停滞 2017/4/4 1:42
日本経済新聞 電子版
【上海=張勇祥】金融政策を引き締め気味に変更した中国で金融市場が動揺している。社債の発行延期、取りやめが相次いでいるほか、3月下旬には銀行間市場で債務不履行が生じたとの観測が浮上した。短期金利も乱高下している。金融政策の転換は不動産バブルや金融リスクの抑制が狙いだが、過度な引き締めは景気の失速を招きかねず、金融当局は難しいかじ取りを迫られている。」
http://tokua.wpblog.jp/2017/04/06/
【香港=粟井康夫】中国で金融引き締めへの警戒感が高まっている。日本経済新聞社と日経QUICKニュースが5日まとめた中国エコノミスト調査では、中国経済の先行きのリスクとして、金融当局による金融政策の引き締めをあげる回答が増えた。中国人民銀行(中央銀行)は資本の流出や不動産バブルを抑えるため短期金利を高めに誘導しているが、2017年下半期以降に中国景気の下押しに働くとの見方が強まっている。」
多くのエコノミストの見方は(貿易黒字を減らしますと言うトランプ習近平会談での対米約束)もあって、「金融引き締めするしかない」→そうすれば景気下押し圧力になると言う意見が多いことを上記記事は表しています。

ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)1

話題がズレますが、もう少しロシアの(独自文化のない)民族意識・・とは何か?という疑問について書いて行きます。
エルミタージュ美術館はドイツ諸候の娘であったエカテリーナ2世が(1700年代後半から、ナポレン戦争終わりまでの治世)ころにドイツ〜フランス、イギリスその他の収集家の持っていた「所蔵品をまとめ買い」する方法で蒐集を始めたことに始まります。
映画を見ていると成金になって文化も身につけようとしても自分で選別する能力がないので?、自慢の作品の多くは西欧の有名所蔵家の所蔵品を金にアカしてまとめ買いした印象です。自国文化の紹介でないのはもしかしたらイギリスまたはアメリカ系映画だったからかも知れません。
何を見に行くかを知らないまま、妻に連れて行かれる習慣なのでどこの映画会社だったかを見損なってしまいましたが・・字幕に頼ってみていますが、聞こえてくる発音は英語だったようでした。
エカテリーナ2世はトルコと戦いクリミヤを奪いウクライナの大半を領有し、スウエーデンと戦いバルト三国を吸収したり・ポーランド分割を主導するなど大活躍です。
シベリアでいつから金が産出されるようになったかネット検索には出て来ませんので根拠がありませんが、その資金背景を想像すると、約100年前のピョートル大帝がシベリアに版図を拡大した効果が現れている・資源獲得・・金産出によるバブルがあったからではないでしょうか。
金回りの良さが相次ぐ対外戦争を可能にし地位相応の立派な宮殿やこれを飾る絵画・彫刻などの文化導入の欲求となり、国内改革も進めていわゆる啓蒙的専制君主・トキのリーダーの一人に数えられるようなりましたが、アレクサンダー大王や漢の武帝など外征を積極化した王朝はその後兵役に徴用される庶民の発言力の高まりや不満が蓄積し財政的にも負の遺産を受けつぐのが普通です。
エカテリーナ2世は、「どうせ先のこと」だという気安さから、啓蒙的人気取り・・人民に期待をいd化せるなどキレイごとを言い過ぎたので、農奴たちも期待してしまい後継者が苦しんだと原因を作ったのではないでしょうか?
贅沢するとその後が大変なように、お金だけはなく人民を兵士等として贅沢に使い過ぎた・負の遺産を残したことになります。
イギリスが対日戦に協力させる為インドのグルカ兵に独立させるような甘言を弄して期待させたことが大戦終了後の独立運動の元になり、ユダヤ人に建国を約束したことが戦後アラブ対イスラエルの紛争の原因になったのと同じです。
上皇や藤原氏が武士をいいように使っている内に武士の発言力が高まって行ったのと同じで、人をタダでは使えないと言う当たり前の結果です。
ロシアもその後長期的に農奴らの地位向上慾をかき立てて・・欲求不満が高まるし・他方戦争ばかりで財政危機に見舞われるようになった・・エカテリーナ2世死亡後の19世紀後半以降は国内不満が渦巻きその矛盾解決(農奴解放しようとすると大貴族が反対するなど)に苦しんだ挙げ句に解決能力がないまま、ロシア革命に突入してしまいます。
政治と言うモノは矛盾した主張をどうするかの調整能力次第ですが、これがない民度だと暴発になります。
ロシア革命が一朝にして起きたのではなく、長期間の矛盾蓄積によるもの・・その十数年前の日露戦争当時にもその前兆の反乱があって(第一次ロシア革命とも言います)、止むなくロシアが対日講和に応じざるを得なかった経緯を見れば明らかです。
http://www.y-history.net/appendix/wh1401-114.htmlによれば、戦艦ポチョムキンの乱は以下のとおりです。
「1905年、血の日曜日事件で民衆を弾圧し、日露戦争を継続するツァーリ政府に対する不満は兵士の間にも広まった。5月には日本海海戦でバルチック艦隊が全滅し、大きなショックとなった。そのような中で6月、ロシア海軍の黒海艦隊の戦艦ポチョムキンの乗組員が反乱を起こして艦を乗っ取るという事件が起こった。」
日露戦争では初戦では連勝していましたが、既に継戦能力のなかった日本はこれで救われたのです。
日米戦争は途中で終わるために・・仲介してくれる国が想定出来なかったので、無理を言われても隠忍自重して来たのですが、最後に自重し切れずに開戦に踏み切った結果、最後まで戦うしかなくなったので完敗してしまいました。
戦を始めるときは双方ににらみの利く大国・上位機関がタオルを投げてくれる準備が必要です。
信長も都合が悪くなると、足利義昭や朝廷を動かして和議を成立させて時間を稼ぐのが普通でした。
話題がズレましたが、ロシアを見ると独自文化のない国が資源収入による成金→軍事力を持ったと同時に世界中から美術品を買い集めただけのような民族では先がありません。
現在もロシアは原油が安くなると途端に苦しくなる資源頼みの国です。
以下15年と16年で見ておきましょう。
(1)・・15年分では前年比35/7%減の速報ですhttps://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_russia_2015
販売台数速報 2015年
ロシア新車販売、12月は45.7%減、通年は35.7%減の160万台
・欧州ビジネス協会(AEB)が14日に発表した2015年12月のロシア国内新車販売台数(小型商用車を含む)は、前年同月比45.7%減の14万6,963台となった。通年では前年比35.7%減の160万1,216台となり、3年連続でマイナスとなった。
(2)16年分では11%減の速報です。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_russia_2016
ロシア新車販売、12月は1.0%減の14.6万台、2016年通年は11.0%減の142.6万台
・欧州ビジネス協会(AEB)が12日に発表した12月のロシア国内新車販売台数(小型商用車を含む)は、前年同月比1.0%減の14万5,668台となった。2016年通年の累計販売台数は前年比11.0%減の142万5,791台                       
中国が苦しいと言っても昨日紹介したように昨年は14%増以上ですし、アメリカも3%増(日本は飽和状態ですから更新需要しかありません)です。
ロシアは農業国家ですから、資源が下がってもベネズエラのように食うに困ることはないにしてもクルマの更新需要ほど庶民生活を正確に表す指標がないと思われます。
ロシアは日本の2倍以上の人口を抱えて年間需要が140万台規模で日本の年間販売台数の3分の1でしかなく、これから新規需要が増える途上国であるにも関わらず、15年は前年比35%も減り、原油相場が持ち直した16年でもなお11%も減少するとは異常です。
食品は10日も食わずに先送り出来ませんが、クルマの買い替え需要は、生活が苦しくなれば、6年に1回買い替えていた人が1〜2年先送りすることは平気ですし、この先自分も欲しいな・・と思っていた人が新規購入をためらう・・・・この結果売れ行きが落ちる・・新規需要による前年比増どころか、更新需要の多くが先送りされることほど景況感を良く表す指標はありません。
ベネズエラほどではないにしても、原油価格の上下に連動してロシアのクルマ販売の落ち込みが激しい・・ロシアは資源国家経済の比重が高い点に注意すべきでしょう。
独自文化のない国の将来は限られます。

アメリカの傲慢(半導体交渉)と中国の適応力1

商品の代わりに人間で言えば難民を送り出すクニがあると、送り出される方の治安や経済情勢が悪化します。
窮乏を基礎にした対外転嫁や先送りはいつか破綻すると言うのが定説ですが・・北朝鮮の例で分るように窮乏化競争では、より貧しい方が競争力があるのが普通です。
中国国内だけ見ると倒産先送り・国内雇用維持になっている代わりに、ダンピング輸出を受ける方にとってはその分国内生産が減る・・失業を輸出されているのと同じ効果になります。
中国人個人で見ても、世界中で世界標準の礼儀作法を守らないで汚しまくる・・大声で騒ぎ顰蹙を買う・・企業では知財の剽窃などルール破りが目立ちましたが、控えめに言って分る相手ではない・トランプ式恫喝が必要だと思う人も結構います。
そうは言っても中国の場合、国際ルールを知らないことに反省している気配が見えて、最近で大分礼儀正しくなっています。
企業行動でも低賃金・人海戦術は先がないとなれば、速やかに省力化投資に精出している様子がこの数年目立っています。
こう言う謙虚な精神がないのがアメリカで、熟練技術者不足となればレベルアップ努力するよりは作業工程を分解して流れ作業方式を編み出して未熟練者の大量採用で対抗する・粗放・大量生産の極大化を押し進めて来ました。
この一態様・・移民受入れ政策で・・要は労働者「数」で勝負する思想です。
粗放・大量生産方式に対して、日本のきめ細かい技術による対抗を受けて、これに再対抗出来ないとなると、先ず第二次世界大戦で一旦叩き潰し、戦後直ぐに再挑戦して来ると世界大国になった傲慢さから工夫するよりは開き直りに徹して来ました。
日本はhもう一度戦争になるとと大変なので、何を言われても「御無理御尤も」の精神で対応して来ました。
日本に追われるようになった繊維〜電気〜鉄鋼〜半導体〜クルマなど(腕力に任せて)日本に負けると次々と輸入制限しただけで安心し、国内での構造改革努力をせずにそれでも日本に負ける分野では海外進出して対抗する・スポーツも負け始めるとルール変更したり、低賃金競争に負けると移民で人口を増やす努力・・国民レベル引き上げの必要性に目をつぶり、その努力しなかったのが、戦後アメリカ政治でした。
いわゆる成功体験が新しい時代への適応を誤らせる好事例です。
日米経済戦争が次々と起きて来る中で最後の半導体では、・・アメリカの粗放生産向きの国民レベルでは、電子機器・・半導体工場等の微細工程をこなすには自国民には無理と諦めたのでしょう・・保護主義だけでは無理となって日本パッシングの道具・対抗馬として韓国企業を育てる方向へアメリカは舵を切りました。
https://matome.naver.jp/odai/2145459542538851901
卑劣 日米半導体協定 ⇒ 日本半導体産業崩壊
更新日: 2016年02月05日
日本は技術・経営で勝利したが,政治で敗北
概略
日本半導体研究開発成功 (大容量DRAM, 技術標準化)
 ⇒【技術的勝利】世界のシェアを奪う
  ⇒【政治的敗北】米国との協定により日本の半導体産業崩壊
   ⇒ 現在,米国と韓国が半導体のシェアを確保」
米国の政治的攻撃:日米半導体協定という不平等条約 (1986~1996年)
日本の半導体の輸出価格をアメリカが決め,日本市場の20%は外国に譲らなければならないという「日米半導体協定」を10年間結ばされ,その間に日本の半導体産業は衰退する。」
アメリカが日本企業の販売価格を勝手に高く決めてしまうことにより、他国と競争出来ないようにしてしまったことになります。
韓国企業を育てる応援を強制されたので?仕方なしに半導体製造装置を輸出せざるを得なくなり、それ以降日本は、いろんな分野で製造装置や部品の輸出で稼ぐ構造になりました。
この辺は逆に今の新たな経済パターンを作り出せて良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
太平洋戦争に引きずり込まれて日本は痛い目にあったので、どんな無茶を言われても柔軟対応に切り替えていることになります。
この辺は逆に今の新たな経済パターンBt0CからBtoB方式にモデルチェンジ出来て良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
戦後70年間・・隠忍自重をやって来たので韓国はアメリカの後押しさえあれば日本は何でも言うことを聞くと思い込んでしまったのです。
詳細を省略しますが、上記のとおりの理解・・占領直後に日本の工業生産を禁止ししていたのと似たような強制が1996年当時もあったのです・・サムスンの躍進はこうした米国の政略の後押しによるものです・・が今の常識でしょう。
アメリカにかかると経済原理・正義の基準も何もあったものではありません。
http://www.seminowa.org/seminowa_archive2014/articl_other/semi_news_V26_2.htm
日米半導体戦争
半導体シニア協会 理事長 牧本次生 
「この歴史を振り返って強く感じることは、首位を転落した後の米国の強烈な巻き返しである。超LSIプロジェクトの方式を「日本株式会社」と非難しながら、これが有効となれば、手のひらを返すような形でSEMATECHを設立。なりふりかまわぬ振る舞いには半導体を国家戦略として位置づける米国のすさまじい執念が感じられる。この当時、政府、産業界、大学、マスコミなど国全体で「米国の盛衰は半導体にあり」という認識が共有されていたのだと思われる。」
この後アメリカの応援を受けた中韓による日本に対する明からさまな敵視政策が顕在化して来ます。
話題を戻しますと、日米半導体戦争の決着以降日米経済戦争はあらかた終わりましたが、・・日本はクルマの製造拠点をアメリカ国内に作ることにしてアメリカの怒りをかわすのに成功したこともあり、他方でアメリカによる戦後台頭して来た対日押さえ込み政策が成功を収めていたことになります。
半導体交渉は、日本の輸出自主規制させておきその間に韓国企業を育てる政策であり、中国進出政策でした。
例えばGMは本拠地のデトロイトでの工員のレベルアップを放棄して、日本に対抗するためには中国で大規模生産して漸く生き残っている状態です。
アメリカ企業は、中国等の低賃金攻勢・・あるいはアジア人の器用さを武器にする攻勢に対して低賃金+器用な国に海外進出してしまい国内企業改革をしなかった・これがアメリカ国内産業空洞化の結果ですが・・他方で安い移民を入れる方に走ってしまったのとは違います。
アメリカ「民族系?」企業は嫌がらせされる心配がないので遠慮なく国外進出してしまう・・あるいはアップルのように99%中国工場で生産して逆輸入する・アメリカの産業空洞化を日系企業が穴埋めする入れ替わり現象が起きています。
この数年トヨタや日産、ホンダ等の日系自動車工場の進出先では、韓国系の慰安婦運動その他の反日運動に対する沈静化の支えになっていると言われますが・・。
中国の大規模なダンピングが世界の迷惑になっているかどうかは別として、中国はさしあたり国有企業温存の結果、国内大量倒産を防ぎ大量失業を発生させないで今のところ、何とかなっている・・見た目には成功しています。
これをどう見るかは立場によって違うでしょうが、イチガイに「ダメ」とは言い切れないように見えます。

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