消費者信用の拡大1(商法の消滅?)

中国や米国の車ローンのサブプライム化→節度なく借金にのめり込む状況を見ると国ごとに庶民レベルに大きな差があるように見えます。
新興国・・貧しい環境から脱却できると食べ過ぎて肥満や糖尿病になる人が多いのですが、その場合にもはじめっから自制する人と、一定の経験で学習しますから、肥満比率の上昇がどこまで上がって止まるかは民度次第です。
消費者信用も初めてのときにどの程度まで爆発的に広がるかも民度次第ですが、2回目3回目には学習して広がりが小さくなる傾向も民度次第です。
自然災害でさえ繰り返されたときの対応力はその民度次第です。
消費信用急拡大大傾向を見ておきますと、金融対象変化の側面から見ると、何のために貸すのかと言えば古くから事業資金の不足を補うもの・融資とは実質的に見て投資資金の融通でした。
税や利息の語源から見ても、種モミを貸せば秋には実る前提でその回収をはかる仕組みから始まっていることからもわかります。
株式投資との違いは確定利回りを約束するかどうかの違い(満期に払う能力がなければ結局回収不能になる点は同じ)ですから、投資と金融は(相手の品定めが重要な点でも)元は同根です。
近年では(例えば国債やサブプライムローン販売で知られるように)満期が来る前に換金売りするのが普通ですので、売買価格・市場相場が発行体の信用と金利動向によって変動する結果、確定利回りといっても券面額のない株券と機能的に似て来ました。
金融と証券の分離または融合などとこの数十年騒いでいますが、金融の本質を考えれば本来の業務・・目利き能力が必要になるのは当然のことでしょう。
融資対象の分類では、元々は種もみの貸付から始まった=自営農民が対象であったことからも分かるように従来(戦後だけを見ても)金融を必要とする人・顧客ターゲットは経済合理的に行動する経済人・企業・事業主を主たる対象にしていたものであって、事業主や経営する法人の代表者であっても事業を離れた個人にとっては、銀行はお金を預ける関係であって借りる関係ではありませんでした。
同じお任せでも貸付債権の回収リスクを銀行が負う点で、投資ファンドや保険商品と実は結果がちがっています。
リスクを持ってくれると言っても失敗が多くなって取り付け騒ぎがおきれば預金保険機構ができるまではただになってしまった点では同じです。
(今は1000万円までの保証です)
預金者が銀行の貸付先の信用状態を全く分からないで預ける以上は、銀行にとっては大量の貸付の中から一定率の回収不能債権が発生してもトータルで中和して預金利息以上の利潤をあげれば良い・以下になれば赤字になる関係です。
回収不能・・不良債権率を低く抑えることが銀行にとって生命線ですから、貸付段階の審査能力・目利き能力が最重要です。
リスクの高そうな事業者には銀行が貸せませんが、高度成長期には資金需要が高かったのでグレーゾーンの企業は高利金融業者から借りる(私の弁護士業務での経験では昭和50年始めころには月利5分が標準相場でした)ようになり隆盛を誇りましたが、多くは正規金融機関が相手にしない弱小事業者向けのものでした。
借りる方も事業経営者の場合、それなりの経営能力・自己規制能力を前提としていたし、消費財は買うための資金が溜まってから自己資金で買うのが、原則的生活態度でした。
戦後でも消費者向け融資は例外的で担保のしっかりした住宅ローンのみの時代が続いていました。
その後自動車や耐久消費財の月賦販売が始まってから、耐久消費財と言えない商品購入にまで各種クレジット販売が発達しましたが、いずれも物販の分割払い・・「物(ブツ)」の裏付けを伴うものでした。
純粋に消費目的のクレジット(信販系)や借入・貸付が(以前紹介したように日本でも古くは土倉〜現在の質屋がありましたが)昭和40年ころから徐々に広がり、公然と行われるようになったのは、50年前後頃のいわゆるサラ金の発達以降になります。
大衆社会・・経済主体としての訓練を受けていない一般消費者が経済活動の主役に躍り出た時代の1側面です。
法の世界でも近代法では、商人対象の商法と素人対象の民法の2階層の仕組みでしたが、過去約10数年の法令改正の大筋方向を見ると民商法の垣根を崩していく方向性が顕著です。
民法では特約しない限り無償が原則ですが、今どき他人にタダで物事を頼むことなど想定すらできませんから、今はみんな商法(商行為法)の世界に生きています。
今国会で成立した民法大改正でも時効や金利制度を民商法で共通にするなど垣根をなくす方向が顕著ですから(最近の15年前後では商法から会社法や保険法が抜けてしまうなど空洞化が進んでいます)「商法」という大法典の存在意義がそのうち無くなるように思います。
私のような関心を持った研究論文がすでに2008年に発表されています。
http://wwr8.ucom.ne.jp/sh02/pdf/shiryou0601.pdf
[商行為法WG最終報告書]
商行為法に関する論点整理
(第504条~第558条,第593条~第596条)
2008年3月31日
商行為法WG
(東京大学 山下友信 京都大学 洲崎博史 東京大学 藤田友敬 学習院大学 後藤 元)
【前注】
(1)以下の検討は,民法(債権法)の想定される改正に際して商行為法の規定についていかなる調整が必要かという観点から行ったものであり,商行為法ないし商法全体の立法論的あり方について根本的に検討しているわけではない。例えば,商法の適用範囲を画する基本概念である商人および商行為の概念自体については,根本的な検討が必要であり,その結果如何では,以下の検討結果にも影響が及ぶことがありうる。・・・・
(2)以下において「一般法化」とは,商人・商行為という要件をはずして規定を民法に
移すこと,「統合」とは,何らかの要件(商人性・事業者性・有償性等)を付加した上で民法に組み入れることをいうものとする。
・・以下面白そうですが、長くなり過ぎるので省略します。
このように民=一般人と商人の区別がなくなりつつある社会では、社会の一体化が進んでいるかと言うと逆で、格差社会と言われるように消費者と供給者・企業という隔絶した社会構造になっています。
いわば民商の2階層の社会から消費費者保護法が成立していることが象徴的ですが、フラットな消費者・大衆と事業者の2元社会・・中間の市民がいなくなりつつある社会です。
消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)
  第一章 総則
(目的) 
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)1

鄧小平が「クロ猫でもシロ猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言ったと言われるのは,本質を突いています。
閉鎖社会では分配の論理が重要ですが,外から稼いで来る人を悪役に仕立てても解決になりません。
ジニ係数基準を騒ぐ人は,「等しく貧しい方が良い」と言うやっかみの論理支持者でしょうか?
  「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」
私の若い頃には,左翼系全盛時代でしたから上記のような標語が一般に流布していました・・。
こんな変な理屈で左翼文化人マスコミは,「格差があるよりは貧しい方がマシだ」とソ連の計画経済の失政による窮乏の進行を正当化していたのです。
政治的にしょっちゅう福祉の増大・・保育所の充実や生活保護費アップその他を主張しているのが彼らですが、その財源を誰が出すのでしょうか?
お金持ちの多い町あるいは大企業城下町・・他所で稼いだ金が入るので,(自分の町だけの売上に頼るスーパーよりも他府県全国展開で稼いだ儲けを本社所在地に還付している方が)中間層は納税負担が少ない割に立派なインフラが整備される恩恵を受けるのが普通です。
昔からウチの町は大手企業や金持ちが多いから市民税などが安い割に図書館等が整備され充実している・・とメリットを自慢する人が多かったのですが,最近ジニ係数で不満をあおる風潮では,こう言う町はジニ係数の大きな町として住み難い・・不満が大きくなっているのでしょうか?
やはり周辺にお金持ちが多い方が立派な図書館が整備され、公園整備や道路掃除も行き届き割安の美術館や公共機関を利用できる・得な感じをする方が自然ではないでしょうか?
格差がイヤだと言ってお金持ち・・せっかくお祭り等で大金を寄付してくれる人や多額納税者を追い出したり潰したりしてどうするつもりでしょうか?
日本でもかなりの人数が非課税階層ですが,それでも高度な社会保障・インフラを利用出来ているのは,高額所得者や海外からの収益を含めた企業利益の投入があるからです。
この流れを維持するには正当に税を納める愛国心・郷土愛が必要です。
この数年・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たのは,こうした流れの帰結です。
還元してくれない資本家では意味がない・・国籍意識のないユダヤ系に対する批判が急速に盛り上がって来た根拠です。
グローバリズム反対と言うよりは、資本家の民族への還元意識厚薄の問題です。
我が国でこう言う反対論がそれほど盛り上がらないのは、日本企業は資本家のためではなく従業員のためにあると言う意識・・トヨタその他みんな民族意識が濃厚だからです。
日本企業は元々民を如何にして養うか発想から始まっているので、利益率・株主への還元・配当率の低さが欧米基準によって批判されてきました。
ただし、この20年ばかり、国際展開する関係で・例えばニューヨーク株式市場に上場するには、欧米基準を無視できないことや東証でも外国人投資家比率が上がってきたことからかなり配当率が上がっています・・国際社会の一員としてある程度の付き合いも必要ですから仕方がないと思いますが・・。
低所得者定義にはいろいろあると思いますが,非課税世帯数でサーチすると掲載年月が古いですが、以下のとおりです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1286124377 2012/4/2314:58:05
現在、住民税非課税世帯が3100万人、年収200万以下のワーキングプア1100万人と合わせ4200万人と今後も増加する。 失業者150万人、生活保護者250万人。
基礎控除その他いろいろな条件があって,全部紹介すると複雑過ぎますが,上記集計数の根拠不明で信用性がはっきりしませんが、当時では約3100万世帯(1世帯平均2人としても人口の約半分?)も非課税だと言うのです。
納税している人でも、ホンの数万円など雀の涙程度しか納税していない人も多いでしょう。
保育所不足を非難する風潮が盛んですが、保育所で保育する幼児一人当たりに要する公的負担は半端ではありません。
利用者にも高額所得者がたまにはいるとしても、多分利用者の母親の平均給与の何倍ものコストがかかっているはずですし、納税額で比較したら、もしかしたら数百倍以上もかかっているかも知れません。
こうした経費・・児童手当や学校の維持経費,道路など補修負担をしているか?となりますが,給与所得者で言えば,課税対象の中間層の負担が増える一方になっているのは分りますが、中間層が減って非課税層が増えているのでそれだけでは到底足りません。
日本を含めて先進国は,資本所得・・主として海外利益送金がないと成り立たない社会になっていることが分ります。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08H5H_Y7A200C1000000/
財務省が8日発表した2016年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆6496億円の黒字だった。原油安で貿易収支が大幅に黒字転換したことが寄与し、前年から4兆2370億円黒字幅を拡大した。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2016cy.htmによれば、
「第一次所得収支:18兆1,360億円の黒字(前年比▲2兆5,166億円 黒字幅縮小)(うち再投資収益は3兆9,014億円の黒字)」
となっています。
日本の場合、上記のとおり約18兆円もの大金が毎年のように海外から収益として入っているのですからこの資金によって、補填されていることが分ります。
アメリカも世界からの資金還流で成り立っていますから、例えばアップル製品を国内工場で作れ・海外製品に45%関税をかければ、国民は中国やバングラデッシュ等で作ったものを利用する他国よりも割高なもの使うしかなくなり,国内消費激減・・生活水準がそれだけ下がり・・同時にアメリカ企業アップル等グローバル企業の利益・・アメリカ国内送金も急減します。
資本家の利益が税や寄付その他で国内還流してフードスタンプ配給資金や実際労働以上の高賃金や、公共インフラ資金にもなっているのですから,これをなくすとその分減った資金をどうするか?
やっかみによって、巨額所得者や、資本収益を敵視して追い出していくと、中高給与所得者の税を引き上げるしかなくなる・・これでは何とか生き残っている中間層が余計苦しくなります。
このやり方はトランプ氏の創意によるものではなく、フランスがフロマンまたはフロランジュ法とか言う法律を作って既にアルミタール鉄鋼の工場移転に対して政府が介入をしています。
「ルノーに対する政府介入権を日産に及ぼさない」と言う取り決めが昨年頃決着がついたのが記憶に新しいところです。
日産・ルノーへの介入問題についてはJune 20, 2017,「最低賃金制度(非正規)」のコラムで紹介しました。

格差社会4(サービス無償意識1)

格差社会に戻りますと個人投資家でも海外債券投資比率の高い人と低い人あるいは内需関連企業とで円安の恩恵が違う・・この分野でも投資先相違による明暗・格差が発生します。
株価好調でも消費がそれほど増えないのは、海外収益中心・投資利益の場合、株価が上がったからと言って、(配当の入る預金残高1500万前後の人が数十万円増えたからと言って)あるいは昨年より配当金が数%増えても喜んで食事に行くような人があまりいないから当たり前です。
サービス業従事者が増えると平均賃金が下がる傾向がありますが、この分野の賃金引き上げには「電気釜や冷蔵庫などの物品よりも、生身の人間のサ−ビスの方が高い」ものだと言う意識変革が必要でしょう。
介護・保育その他各種サービス分野は女性中心職場であったこと・・元々家庭サービスから始まっているので、無償奉仕が前提になっている点が問題です。
このため男性中心職場であった製造業に比べてサービス関連は基礎賃金が低過ぎるのを容認して来たことに対する意識変革が必要です。
それをしないで徒らに製造業の維持拡大・・従事者数の復活を主張しても時代錯誤にしかなりません。
我々弁護士業界ででも、訴訟になれば大金でも払う気がするが、相談するくらいはただという伝統的意識が強く、この払拭に苦労してきました。
せっかくこの数十年の努力である程度の相談料を払う意識が定着したものの、最近若手の経営難の結果、1回目相談無料みたいな広告がはびこるようになってきましたので、元の木阿弥に戻りそうです。
米国と違いヤミクモな訴訟を回避したいのは合理的傾向ですが、その回避や円満解決に重要な役割を果たす相談料が無償または1時間1万円程度では、アマチュアやボランテイアなら別ですが、事務所家賃やスタッフ給与その他のコスト負担のある弁護士の「業」としては成り立ちません。
弁護士業界の経営難が弁護士増員によるだけではなく、訴訟より事前相談比率が多くなっている現状に即した収入形態になっていない点が、大きな原因になっているように思えます。
実際の訴訟数の変化は本日現在の司法統計年報によれば以下の通りです。
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/list?filter%5Btype%5D=3&filter%5ByYear%5D=&filter%5ByCategory%5D=&filter%5BmYear%5D=&filter%5BmMonth%5D=&filter%5BmCategory%5D=1
第1-1 全新受事件の最近5年間の推移
【全裁判所】年 次
     全事件 民事・行政事件 刑事事件等 家事事件 少年事件
23年 4 059 782 1 985 305   1 105 826  815 523 153 128
24年 3 798 126 1 707 715   1 098 989  857 237 134 185
25年 3 614 236 1 524 023   1 050 716  916 409 123 088
26年 3 494 100 1 455 716   1 018 673  910 687 109 024
27年 3 529 977 1 432 279   1 032 791  970 018 94 889
上記の通りですが、弁護士の主たる収入源である民事事件数が、この5年間だけでもほぼ25%も減っているのに弁護士数が逆に約2割増えている,・・この10年間で見ると約8割増の矛盾です。
以下は日弁連の発表数字です。http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2015/1-1-1_danjo_nenrei_suii_2015.pdf
 年   正会員総数(内女性数)   女性割合
1994   14,809 (938)      6.3%     
1995   15,108 (996)      6.6%
1996   15,456 (1,070)     6.9%
1997   15,866 (1,176)     7.4%
1998   16,305 (1,295)     7.9%
1999   16,731 (1,398)     8.4%
2000   17,126 (1,530)     8.9%
2001   18,243 (1,849)     10.1%
2002   18,838 (2,063)     11.0%
2003   19,508 (2,273)     11.7%
2004   20,224 (2,448)     12.1%
2005   21,185 (2,648)     12.5%
2006   22,021 (2,859)     13.0%
2007   23,119 (3,152)     13.6%
2008   25,041 (3,599)     14.4%
2009   26,930 (4,127)     15.3%
2010   28,789 (4,660)     16.2%
2011   30,485 (5,115)     16.8%
2012 32,088 (5,595)     17.4%
2013  33,624 (5,936)     17.7%
2014  35,045 (6,336)     18.1%
2015  36,415 (6,618)     18.2%
この表を見ると日弁連執行部は女性比率に重大な関心を持っているようですが、弁護士業界にとって焦眉の急・最重要な増加率には全く関心がなさそうな表の作成には驚きます。
刑事少年事件では、当番弁護や被疑者国選がこの5〜10年ほど前から始まっているので私選の刑事事件受任がほぼ壊滅・・ゼロになっていて、言わば弁護士業界の収入源の半分が官業による民業圧迫でなくなっている勘定です。
少年事件もほぼ同様です。
離婚事件等は増えていますが、弁護士に相談する程度で自分で調停などにでかけるのが圧倒的比率です。
このために若手弁護士が生活保護基準すれすれのような低報酬目当てに(昼間だけでは食べて行けないので夜9時ころまで遠くの警察まで接見に行く状態)国選事件や少年事件受任を競っている惨憺たる状態に陥っています。
この結果若手弁護士の多くが年収300万円以下という状態になってきた様子ですので、法科大学院の応募数が激減..ひいては応募者の劣化が始まっていると言われます。
このママでは、司法界崩壊目前ですから、偏った運動ばかりする?弁護士業界潰しの政策意図があるかどうかは別として、国家における司法(判事検事の供給源のあり方を含めて)に関する基本戦略の策定が必要な段階に来ています。
この時にあたり、千葉県弁護士会新会長が4月1日就任直後に従来同様に大量合格を続ける場合、「一定数以上の修習生受け入れ 拒否 も有りうる」という趣旨の通知を発したことが大激震になりました。
(会内的にはしかるべき会内手続きなしに、会長が一方的に対外外通知をして良いのかが5月総会の大テーマになりました)
多くの見方は「一種のフライングである」と言うことでしょうが、時機にあっていた・・放置できない状態・発火点に近づいていたことは相違ないでしょう。
これが逆に判検事と弁護士の別立て試験になっていくリスクを開いた結果になった・・単なる暴発の結果になるかは別ですが・・。

格差社会1(業種内格差)

勝ち組負け組と比較されて勝ち組に入っているようなイメージの金融業ですが、内部では負け組みの方が多いでしょう。
中小地場産業の衰退により金融業で多くを占める従来型の預金を集めて融資する程度の地銀や信金業態では低金利下では負け組です。
グローバル化について行けない旧来型金融事業者では、地域密着とか言っていますが、結局は小口金融→消費者金融(住宅ローンとカードローン)に活路を見出すしかない状態です。
サラ金に対する総量規制の穴埋め的特需で広がっていた銀行系カードローンも過熱気味=限界になって来ましたし、相続税対策などの勧誘によるアパート建築や住宅ローンの限界がくると金融機関淘汰が始まるでしょう。
格差社会の象徴として反感を持たれているのはグローバル化に成功しているファンドマネージャ−や為替のプロその他の一握りであって地銀や信金等とはまるで違う世界の業種です。
弁護士業界で言えば国際化・・M&Aその他で今風にごっつく稼ぐグループと、これについて行けないその他大勢・法テラス相談→受任や国選事件等の割当を中心としている弱者救済?グル−プに2極化して来ました。
個人事業主の減少によりこれらを顧客にする中間層の弁護士が細ってきたのです。
世上中間層の激減というとホワイトカラーのみ注目されますが、個人商店がスーパーやコンビニに押されてほぼ消滅→その他事業も大手の子会社ばかりで独立系の事業者が減って来たことも重要です。
地域の個人事業者の激減が、中小企業・・中間層を顧客にしてきた地銀・信金の経営基盤が崩壊して困っているように、中小企業とは言っても実は世界中で大手系子会社しか滅多に事業展開出来ない社会になってきたことが、格差・2極化を進めた原因です。
同様に弁護士の政治色激化は、個人事業主系・中間層系の顧客大幅消滅が大きな影響を与えているように見えます。
今や信金並みに地域密着・弱者に優しい視点で生き残るしかないグループが弁護士会の大多数を占める状況で、格差反対・・正義を標榜するしかない結果どんどん先鋭化して行きそうな雰囲気です。
地域的に見ると東京都心からの距離・時間に比例して不動産価格が安い結果、この時間距離に居住者・事業レベルも比例して行く→これらを顧客にする各種の事業内容もこれに制約される傾向があります。
弁護士業務も地域事業者や居住者を顧客とする以上は、地域の顧客分布から逃れることは出来ません・・この結果、若手を中心に弁護士業務も法テラス経由に頼る傾向が出てきました。
我々世代も、最初のうちは、公共団体の法律相談や国選事件等で腕を磨いてから個人事業主等を顧客にするようになって一人前になって独立したものでしたが、今は個人事業主や零細企業が地域からどんどん減って行く結果、法テラス相談から脱皮出来ない若手が多くなって来たようです。
個人事業主を主要顧客とする我々世代が引退すると弁護士業界も2極化(格差拡大)が進むでしょう。
急激な増員の結果、経験10数年前後未満の弁護士が6~7割を占める状況ですから、会内で格差に苦しむ人の比率が急速に高まっています。
生活保護申請を援助しながら明日は自分かも?という危機感がある・・人ごとではなく自分自身の問題になっているのです。
世間では弁護士が偏った政治意見で行動しているという意見が強いようですが、過去10年以上も日弁連会長選挙のたびにより急進的意見を唱える候補者の得票率が埼玉と千葉弁護士会で圧倒的に高い傾向が続いていたのは、都心を軸にした同心円的分布で同じ顧客地盤で働いていることによります。
6月26日日経新聞朝刊13pには、森・浜田松本法律事務所の弁護士がFT弁護士表彰 で部門賞を受賞したと出ています。
VB向けの資金調達方法・・新株発行条件の工夫をした点・・事業が軌道に乗ったら優先株に変換できるアイデア?・・が評価されたようです。
もしかして、この法律事務所内でも下積み的にデータ収集や分析作業に特化している弁護士の方が多数になっている・・同一事務所内格差が大きいかも知れません。
森・浜田松本法律事務所の本日現在のホームページによると以下の通りです。
パートナー(外国法パートナー1名を含む):101名
アソシエイト:233名
客員弁護士等:29名
外国法弁護士等(外国法事務弁護士3名を含む):29名
外国法研究員:1名
この事務所の評判ではなく一般論ですが、大手事務所は毎年大量採用しているにも関わらずそのまま人員増加数にならないのは、(サムスン同様に)その大方が5〜10年以内で(パートナーに昇格出来そうもない人が)吐き出されてしまうからであると言われています。
http://blog.livedoor.jp/kawailawjapan/archives/7733404.htmlによれば15年1月現在の採用数と現事務所在籍数は以下の通りです
順位(昨年順位)          (2015年)   (2014年)
1(1) 西村あさひ法律事務所   34人/501人  (25人/473人)
2(2) 森・濱田松本法律事務所  27人/359人  (32人/342人)
3(3)長島・大野・常松法律事務所 30人/321人  (19人/325人)
4(5) TMI総合法律事務所   27人/320人  (26人/294人)
5(4)アンダーソン・毛利・友常法律  22人/310人 (14人/310人)
6(6) シティユーワ法律事務所   6人/128人  ( 3人/126
このように弁護士という專門職業分野でさえも(同一事務所内でも)最先端で活躍するグループとその他に大きな分化が始まっています。 
大手事務所から吐き出されたり初めっから挑戦すら出来ない人は不満でしょうから「格差反対」に走りやすいですが、社会全体で見ればせっかく伸びる分野を叩く必要がありません。
旧来型商法にこだわっているグループに比べて、リスクを恐れずに新たな分野に挑戦するグループは(失敗して消えていく人の方が多いかも知れませんが)その代わり成功すれば一頭地を抜くのは当たり前です。
格差社会とは、鄧小平が改革開放政策採用に際して言ったことは、平等や格差を気にせずに稼げるものから まず走り出せば良いという意味ですから、格差発生を気にしていたら何も新しいことは生まれません。
人の真似できないことで新機軸を出して成功するのを、非難するのは間違っています。
努力せずに才能もないのに親の7光で格差があるのはおかしいですが、努力が成功した結果の格差発生が悪いことのように非難されるのは不思議です。
実はオートメ化・IT化(ソフト関係者の取り分)、ロボット化、資本家その他いろんな業種内で、勝ち組負け組が起きているので業種別に言えない時代・・業種内競争・・業種内格差拡大時代が来ていると言うべきでしょう。
実は労働者内でも分化がもっと早くから進んでいます。
正規・非正規の分類がその代表ですが、その前から公務員と大手中小従業員の違いホワイトカラーとグレーカラーの違い、サービス業と製造業従事者の違い、専門職でも医師や弁護士等と職人との違いなど色々と分化して来ました。

労働分配率の指標性低下1(省力化投資と海外収益増加)

働き以上の高給取りが100人減れば、その分製品コストが下がり国民全般が物価下落の形で受益し、業種的には利益率が改善される資本家やIT関連やロボットその他の製造装置販売関連が受益していることになります。
資本家や金融のプロ、IT技術者の高額受益は税として還元する・インフラ整備や図書館や文化施設・社会福祉資金になっているのが先進国ですが、生活保護やフードスタンプなど恩恵の配給のレベルアップよりは自分で稼ぎたい人が多いでしょう。
以前から書いていますが、同じく月30万円で生活する場合に、福祉支給によるのではなく、自分の働きで生活したいのは正しい欲求です。
従来同一企業内だけで労働分配率を議論して来たのですが、新たなパラダイム発生により今やサービス業と製造業・IT、ロボット産業・製造装置製造業界・配送関係などの異業種・社会内で調整が行なわれる必要が生じて来たと思われます。
6月24日日経新聞朝刊17p「大機小機」では、従来型分析・・労働分配率低下を重要指標として先進国共通のマイナス動向であるかのように論じています。
これまで書いて来たように、世界の工業基地として国内需要を満たすだけではなく世界への輸出分を含めた生産基地であった先進国では、プラザ合意以降日本を先頭にに東南アジアその他で生産しての迂回輸出が始まり、次いで2000年代にはいると消費現地生産が主流となって来た結果、輸出向け分の生産が縮小して行きその内逆輸入が始まれば、国内生産がジリジリと縮小傾向をたどるようになったのは当然です。
ただし、日本の場合最終品組み立て工程を新興国へ移したのみで部品等を輸出する産業構造に変化した結果、製造業はアメリカほど大きく衰退しませんでした。
それでも、濃く汗院のジリ貧が避けられないのでリーマンショック直前頃・・05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」のコラムで約10年間の国際収支表を紹介したことがありますが、今後キャピタルゲインの時代が来る//当時で年間約18〜19兆円の国際収支黒字の約半分が貿易黒字で残りが所得収支黒字でした。
そして現在では、昨年も約20兆円の黒字でしたが、その殆どが所得収支の黒字であって貿易黒字はあったりなかったりの繰り返しでほぼゼロ→17年5月の発表では貿易赤字でした。
このように国内生産による稼ぎはジリジリと減っている状態です。
2007年5月のコラムで儲けの半分が所得収支(海外からの利子配当所得)になっている以上、プラザ合意以前の輸出(国内生産)だけで稼いでいた時代に比べて、国内生産による儲けが減っているのだから、企業利益に対する国内労働に対する労働分配率が減るのが当たり前・・資本収入が多くを占める時代が来ると言う意見を書いたことがあります。
今年の5月13日にも書いています。
企業も儲けの海外比率が上がれば上がるほど、国内労働の寄与率が減っているのだから、国内労働者に対する企業収益との比較では労働分配率が下がるのは当然です。
比喩的に言えば、海外生産による儲けが1000億円で国内生産の儲けが100万円しかない・・収支トントン・あるいは100億の赤字であるが、過去の蓄積による配当や知財等の収益(営業外利益)及び海外収益の送金で何とかなっている場合、国内労働者に海外儲けの6〜7割も配れないでしょう。
トヨタなど海外収益の大きい企業の場合国内製造業の単体では、仮に90単位しか賃金を払えないのに海外収益や知財・金融利益などによる穴埋めによって100の賃金を払っているパターンが考えられます。
アメリカではその地域がダメになればゴーストタウンにして移転して行き、職人の技能が引くkレバベルトコンベアー方式で対応する何ごともアンチョクです、新興国の方が人件費が安いとなれば、国内に踏みとどまって何とか生き延びようとするよりは研究開発部門を残すとしても労働現場は人件費の安いところへ移転してしまうドライ・安易な生き方ですから、日本のように部品輸出で生き残るという工夫が乏しかった印象です。
この4〜5日の動きでは、トランプ氏の迫力に脅されて今年1月頃にメキシコへ工場新設中止発表したフォードが小型車フォーカスの生産を今になって中国生産に移管し、より大きな工場新設を発表したことが話題になっています。
今朝の日経新聞1面の春秋欄では、トレンプ氏の威光のかげりを反映しているとも言われていますが・・。
トヨタに代表されるように日本では、国民・同胞の生活維持が第一目標ですから、何が何でも国内工場を温存しながら海外展開する工夫・・これが部品輸出に転機を見いだしたのですが、アメリカでは丸ごと出て行くので、製造業従事者が極端に減ってしまい低賃金のサービス業従事者が増えてしまいました。
企業が(社内失業を)抱え込まない社会・・アメリカでは給与としては生産性以上を払えないが、国全体で見れば放置出来ませんので、後進国から大手企業や金融等の分野で配当金が入って来るのでこれを税金で取って分配する・社会保障資金になっている面があります。
例えばGMが中国で儲けたと言っても国内GM工場労働者に国内生産性以上の給与を払ったり余計な人員を抱え込まない・・失業者がいくら増えても企業利益は税で政府に収めればそれで責任を果たしていると言う考え方でしょう。
こうなると本当に海外収益を国内還流しているか・・法人税の実効性が重要になって来るので、税逃れ・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たと見るべきでしょう。
先進国では多かれ少なかれこう言うパターンになっていますから、企業利益増大に比して労働分配率が下がる一方に決まっている・・労働分配率低下を社会正義に反するかのように主張する論法は経済実態にあっていません。
そもそも、労働分配率の議論は従来の定義では企業の儲けを基準にするのでははなく、国内付加価値.総生産・GDPに対する労賃分配率を言うものですから、海外での儲けが増えていることとは関係がない議論です。
24日日経の「大機小機」は、全体の基調としてアベノミクス以来企業の好況(海外収益を含めた概念)が続いているのに労働分配率が下がっているから消費が盛り上がらないと言う紛らわしい論旨を展開しています。
海外収益増加による好況の場合には国内労働者はその収益に関係していないのですから、企業全体の収益増に対する国内労働者の配分比率が下がるのは当然です。
国内収益100%の企業が10%売り上げ増になれば、その増収増益に寄与する労働者がほぼ10%増えるとすれば比例関係です。
しかしこの後で書くように国内完結企業でも、増収に寄与する労働力量が変わらず最新機械設備やロボット導入あるいは画期的新製品開発による場合もあります。
これらの場合、増収増益による収入の大半は機械設備・発明対価等の代金に消えて行くのであって、機械化等によって現場労働者が逆に2〜3割減ることが多く労働寄与率・分配率は逆に下がります。
消費力のテーマであれば、高齢化が進むと高齢者の労働収入は減っているが、現役時代に蓄えた金融資産による収入・・海外債券を含めた金融収入その他と年金等が収入の大部分を占めているのですから、年金生活者が好景気で月に10万円でも働くようになると、消費力は働く前に比べると大幅増になります・・労働分配率と何の関係があるでしょうか?
企業の好況と個人の消費力を比較するには労賃の増減だけはなく個人金融資産の増加率を含めて比較しないと意味がないでしょう。
多くの若者が少額でも株式等への投資できる制度が出来ていて若者ですら、証券投資している時代です・・そして日本全体では世界中から利子配当等の所得が年間20兆円近くあるのですから、金融資産・知財収入その他を見ないで労賃だけ見ても実態が分りません。

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