米国の高家賃5とホームレス(IT化)1

ここでいよいよホームレス問題に入ります。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/6755によれば以下の通りです。

ホームレス大国アメリカ」の現実 世界覇権どころではない国内の疲弊
国際2018年1月20日
賃金は減り 住宅価格は暴騰

㊤路上で寝るホームレス(ニューヨーク)、㊦行政が設置したシェルターベッド。入居待ちが続いている(2017年、ロサンゼルス)

・・・西海岸を代表する都市ロサンゼルスは・・・前年比で20%増加した(支援機関「LAHSA」調査)。18歳から24歳までの若年層ホームレスは64%も上昇しており、「ロサンゼルス短大地区の学生の5人に1人はホームレス」という調査結果(ウィスコンシン大学)もある。
・・・昨年11月、シカゴ大学が発表した報告書では、ホームレス状態にある学生が全米で少なくとも420万人にのぼり、そのうち13~17歳は70万人、18~25歳が350万人という衝撃的な数値が物議を醸した。
また、約46万人の学生を擁するカリフォルニア州立大学(全米最大)が委託した調査によると、同大学では10人に1人にあたる約5万人の学生が特定の住所を持たないホームレス状態にあり、さらに5~4人に1人にあたる10万人が食べ物の確保ができていない。

1大学だけで学生5万人もホームレスとは、日本では想像もつかない現状です。
ハングリー精神から新規イノベーションが生まれるとは言われますが・・・???。

・・・ホームレス増加の主な理由は、工業の機械化による解雇や病気による失業の増加、実質賃金は増えず家計収入は減っているのに進む物価上昇、とくにリーマン・ショック以来続く住宅価格と賃貸料の異常な高騰である。
・・・(金融大規模緩和・・稲垣注)それによって住宅金利は下がり、住宅への投資を促進したが、余剰マネーがふたたび不動産市場に投機する流れをつくり、不動産価格はリーマン・ショック以前をしのぐ天井知らずの高騰を見せている。
・・・矛盾が集中したのがIT産業で急成長を遂げたシリコンバレーを抱える西海岸で、全米で進む不動産市場のバブル化に、企業進出や労働人口増加による需要増大という条件が加わり、住宅価格は高いところで年平均20%も上昇。高級住宅に暮らす人人がいる一方で、低価格帯でもワンルームの家賃が3000㌦(約33万円)にもはね上がったため、多くの人人が住居での生活を諦め、路上生活をしながら働いている。
「更新手続きでいきなり家賃が500㌦(5万5000円)も上がった」「年収700万円稼いでも家族を養うのが難しい」というほど異常な高騰が家計を襲い、空き地や川縁にはテント村ができ、道路に連なる宿泊用の車両が急増した。時給15㌦(1650円)程度の所得ではフルタイムで働いても、とても2000~3000㌦もの家賃は支払うことはできない。いまや「ホームレス=失業者」という概念は過去のものとなり、工員やショップ店員、技師、教員までが路上や車上生活をしながら職場に働きに出て、シャワーを浴びるためだけにスポーツジムの会員になっている(AP通信)。

19日にアマゾン第二本社誘致運動を取り上げましたが、以下に続く文章によれば、アマゾンの本拠地では全米最高のホームレス発生という実態が背景にあることが分かり分かります。

グーグルやアップルなどハイテク企業の本社が集中し、国内でもっとも平均収入の高いシリコンバレーの大都市が、米国最大のホームレス地帯となっている。
・・・アマゾンやマイクロソフトが本拠地を置くワシントン州シアトル(人口70万人)では、ホームレスが1万人をこえて過去最大を更新し、ホームレス人口が全米ワースト2位になった2015年には緊急事態宣言を発令した。人口が増えた反面、住宅価格が年平均10%上昇し、賃貸価格も六年間で57%も上昇しており、多くの一般家庭が家を失った。「好景気」によって富が集まり、経済活動が盛んになったのは数%の上流層だけであり、多くの人人は低賃金労働のもとで住む家すら失って社会の枠組みからはじき出されている。

以上によれば、ピッツバーグ等製造工場の盛んであった地域衰退・・ラストベルト地帯ばかりメデイアが取り上げていますが、もっと問題なのは高度成長している成功地域でホームレスがどんどん生み出されている状況です。
昔のラッダイト運動の場合、製造業の発展で農奴に近い小作人が中間層に脱皮できて収束できたのは、先進国がこの技術を囲い込み世界の工場として世界中から富を収奪できていたからです。
先進国がマルクスの御託宣のとおり矛盾激化しないで後発国ロシアや中国で矛盾劇化して共産革命や動乱が起きたのは輸出受け入れ国の地位になっていたからであって偶然ではありません。
先進工業国は、先進技術独占による高賃金・中間層の厚み構築・社会の安定・未来への希望社会を作り上げていたのですが、これが後進国を市場とのみ位置付けてきた収奪の仕組みによっていたにすぎません。

米国の高家賃4と路上生活者激増1

ここまで先走った意見を書いてきましたが、いよいよ本題の住宅価格上昇と家賃上昇のカラクリに入っていきます。
“https://gentosha-go.com/articles/-/3293”>https://gentosha-go.com/articles/-/3293によると以下の通りです。
国債金利と価格との差を説明した論説ですが、関心のある結論部分のみの引用です。

2019.2.12
全米アパート市場の特徴&米国国債と不動産の関係とは?
小川 謙治2016.6.1
サンフランシスコ・ベイエリアの家賃価格が上昇を続ける理由
小川 謙治2015.12.15
雇用成長はアパート賃貸マーケットに大きく影響を与えています。
日本ではごく一部のサブマーケットでしか経験できない家賃上昇について、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、米国不動産投資を語る場合、家賃上昇がキャピタルゲインの一部をなしていると言えるでしょう。つまり、経済成長率以上の家賃上昇があれば常に不動産価値が上昇し、さらに不動産価値上昇率は常に家賃上昇率を上回ることになるのです。
上記の通り、価格アップが賃料値上げに波及し、賃料上げが住宅価格上昇に跳ね返る悪(資本家にとっては好)循環が起きているようです。

花見酒の経済のようにキャッチボールを繰り返して一握りの高額所得者しか買えない天井に行き着くまで不動産相場を吊り上げて行くつもりなのでしょうか?
ここ数ヶ月の株式相場変調でも不動産リート系が底堅いといわれる根拠かもしれません。
住宅価格→家賃高騰によって路上生活者に転落したアメリカの労働者がなけなしの金で不動産系ファンドに投資して利回りアップを期待しているとしたら漫画のようです。
賃料値上げに対する歯止め制度が整備されていないこと(部分的値上げ規制があっても日本のように基礎法での整備不足)によるのではないか?というのがここ数日の意見です。
この結果、同じ地域に住むものでもシリコンバレーのように超高額所得者と普通の人が混在しています。
地域格差ではなく、同じ地域内格差が大きいと正社員でさえ家に住めない・・ホームレスがうまれ始めているようです。
地域格差・・モザイク国家どころか、砂つぶ社会・・合衆国社会の問題が噴出している様子です。
まず高額家賃の実情から見ていきます。
ちょっと古いですが、米国の家賃事情はhttp://www.apalog.com/maxre/archive/91によると以下の通りです。

米国の主要都市アパート家賃相場  2012/10/17 11:10
レントコントロールの無いアパートは1~2年置きに家賃が値上がり、お給料は上がらない、物価は上がるで、別のエリアへの引っ越しや、アパートのシェアをしている人達も多くいます。家賃はどこまで上がり続けるのでしょうか、TimeOut New Yorkに、家賃相場の記事が出ていたので抜粋しました。

スタジオタイプは、一つの部屋の中にキッチン、リビング、寝室が一緒になったワンルームマンションの様な部屋。 1ベッドルームは、寝室とリビングが別にあり、キッチンも別に付いているケースが多いと思います。 探せば、この相場よりも安いアパートもあるでしょうが、マンハッタンで一人暮らしをしようと思うと、最低でも2000㌦近く必要!? 普通に生活するには、収入の3分の1を家賃を当てるのがバランスが良いといいますが、こんなルールは全く適用できないことになります。

http://www.apalog.com/maxre/img/91/g1iDToOKgVuDk4NWg4eDYapngWkyMDEyLTEwLTE2IDYuMzguMzYgUE2Bamp-.png

上の表は、米国の主要都市の1ベッドルームの家賃相場をリストしたものですが、トップはニューヨークで、主要都市ベースでみると、ブルックリンが2番目に家賃が高いエリアという事になります。人気のブルックリンもどんどん家賃が高騰している様です。
こんなに高いと普通の正規社員でもちょっとしたことで路上生活者・ホームレスに転落し・路上から出勤という姿があるようです。

共同体意識の萌芽1(アマゾン第二本社誘致拒否)

私のような考え・何のための企業誘致か・現在の住民にとってメリットがあるか?の意見が出てきたのが、アマゾンの第二本社移転誘致反対騒動です。
新住民移入企業誘致に異を唱えた(人が入れ替わるのでは住民にとってなんのメリットもない)のがニューヨークへのアマゾンの第二本社誘致反対運動で、反対運動の盛り上がりによって、アマゾンはニューヨークの第二本社設置計画を撤回しました。
https://wired.jp/2019/02/16/amazon-wont-build-hq2-new-york-city/

アマゾンがニューヨークの第2本社を断念したことで、浮き彫りになった「不都合な真実」

アマゾンがニューヨーク市に設置を決めていた「第2本社」の計画を撤回した。30億ドルにも上る税控除や優遇措置が地元住民の不利益になると主張してきた反対派の動きを受け入れたかたちだが、そこからは企業進出にまつわる「不都合な真実」も浮き彫りになる。

https://wired.jp/2018/02/04/amazon-hq2-newark/
2018.02.04 SUN 08:00

貧困都市ニューアークが、「アマゾン第2本社」の最終候補地に残った理由
・・・失業率の高い貧困都市は、いかにアマゾンの興味を引き、“決勝戦”へと勝ち進んだのか。
・・・人口約28万人のニューアークは失業率7.9パーセントで、ほかの19都市の平均の約2倍にもなる。貧困率も最も高く、全人口の3分の1近くが貧困ライン以下にある。ニューアークを含むエセックス郡は、ニュージャージー州で最もホームレスが多い。つまり、アマゾンが約束している経済発展の恩恵を最も多く得ることができるのは、ニューアークかもしれないということだ。
同時に、アマゾンに差し出そうとしているものも最も多い。最高70億ドル(約7,710億円)に上る州税と地方税の優遇措置だ。20都市が公表している金銭的インセンティヴのなかで最も規模が大きく、アマゾンが投資を約束している50億ドル(約5,510億円)をも上回る。
70億ドルの減税と引き換えに雇用促進を期待
雇用が奪われ、住宅が高騰するリスク
ニューアーク市民、特に低所得者や失業者といった貧困層が、アマゾンから恩恵を得られるのかを疑問視する声もある。
ニュージャージー反貧困ネットワークのエグゼクティヴディレクター、レニー・コウビアディスは「アマゾンがやって来たら住居費が急騰し、低所得者は転居を余儀なくされるでしょう」と指摘する。
テック企業が集まるサンフランシスコなどの都市では、すでに同じことが起きている

大企業本社や億万長者の誘致に成功すれば逆に新住民(本社勤務のエリートサラリーマンが)我が物顔に振る舞い、高家賃でも払えるでしょうが、技能レベルで対応できない旧住民多数が底辺層に没落していく→高騰する家賃を払えずにホームレス化していくのが普通です。
アマゾン第二本社誘致すれば地元に25000人の雇用が生まれるという試算ですが、どの階層の雇用が生まれるかが重要です。
ハイテク関連で地元対応可能人員が仮に50人しかいない場合、残りが他所からやってくれば住宅高騰〜物価は上がりますが他方で地元民が働ける仕事は従来通りの下層労働しかないと悲惨です。
街は繁栄しますが、繁栄を謳歌できる(高額家賃に耐えられ、高級レストランや高額エンターテイメントを楽しめる)のは高額所得の新住民であり宅配配送運転手や皿洗いなどをする旧住民ではなく弱い順にホームレス転落です。
住民のための政治か都市繁栄のための政治か?の選択です。
私はこのコラム開始以来移民受け入れ反対論を書いてきました。
先端技術受け入れのための移民であっても、それは明治維新当時のように短期間で欧州に帰ってもらった御雇外国人制度の知恵に学ぶべきです。
ゴーン氏のように居座って支配者になったような態度を取られる・課長以上全てよそ者社会では、日本人は納得しないでしょう。
香港、シンガポールや米国諸都市は、住民がそっくり入れ変わっても都市が繁栄すれば良いという思想で動いているようですが、こういう政治って国民や住民のための政治と言えるのかの疑問が噴出して、ニューヨークで反発を受けるようになったので大ニュースになったのです。
移民で成り立っている米国でさえニューカマー拒否のエポックになるでしょうか?
豪州では、一定額以上の資産を有する中国人を「いいわいいわ」で受け入れて来た結果家賃が高騰し住みづらくなってその反動が起きているようです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28500370T20C18A3000000/

豪州の投資家向け移民制度は米国に比べ緩い。12年には連邦債などに約5億円を投資すれば永住権の申請資格を与える制度を導入した。取得者の87%が中国人だ。足元で加速するヒトの流入は地域社会にも波紋を呼ぶ。
シドニーの中心部から北へ約10キロメートルのチャッツウッド。中国系住民が34%を占め、中国語の看板を掲げた食品店が並ぶ。中国文化を教える教育機関「孔子学院」があり、中国語のミニコミ誌も5種類を数える。1990年代後半から中国系移民が急増。古くからの住民は「街は急激に変わった。ハリケーン来襲のようだ」と話す。
想定を上回る中国系移民が押し寄せ、古くからの住民との摩擦が強まる豪州。「多文化主義」ゆえのジレンマが強まっている。
(シドニー=高橋香織)

大手新聞ですから、おとなしい書き方ですが・・。
豪州でも新移民(主に中国系)の我が物顔の振る舞いに、不満の動きが始まっています。
トランプ氏や豪州の不満は移民=異民族に向けられていますが、アメリカの場合、国境の壁で解決できない国内移動により新住民に追い出されて次々とホームレスに転落する人の増えるアメリア人の不満はどこに向けていいのか、どの政治家がこれを代弁するのかが見えません。

更新・継続原則社会1(日本)

普通の労働者がホームレスになるようないびつな社会になりつつある原因を法制度の違いで見ておきます。
例えば契約更新を原則としない社会では、2〜3年契約の場合、2〜3年ごとに契約が自動終了しますので、大家にとっては次にもう一度貸すかどうかは大家の気持ち次第・・一方的関係になります。
前の契約が月額5万円であったか10万であったかに関係なく、契約終了後の新規募集価格を「月額13万」とすれば、元借家人かどうかに関係なくそれに申し込まない限り借りられません→契約期間終了すれば契約がない以上(ラーメンを食べ終われば店を出るように)家を出て行くしかありません。
法形式上は新規契約なのでどういう新規提案しようと「契約自由の原則」という論理構造のようですが、この辺は毎回行く店を変えても良いパン屋やラーメン屋が商品値上げ自由なのと本質が違っています。
パン屋やラーメン屋が1ヶ月後200円値上げすると書いてあれば、次から別の店に行くか?など顧客の自由選択ですが、住居や商店の場合「そんなに上がるなら契約したくない」という選択はよほどのことがないと(例えば1000円上がるのが嫌で引越しできるか?)できませんので、大家のいいなりになる傾向が強まります。
この違いに着目して日本では、大正時代から労働契約や賃貸借等の継続性を前提とする分野(講学上「継続的契約関係」と言います)では契約期間が終了しても(正当事由は滅多に認められない・労働分野では解雇権乱用の法理が確立しているので)原則として更新しなければならない制度設計になっていることを13日に紹介しました。
(元請け下請け関係は一見毎回個別の契約のようでありながら継続取引を前提としている関係でよほどのことがないと発注を打ち切れない商道徳関係に縛られます)
契約期間の定めがあっても更新(従前の契約条件がそのまま継承される)することが原則ですから、契約期間終了日が来ても自動的に契約が終了しません。
借家人が同意しなければ、更新しない理由として正当事由があるかどうかを裁判して争う必要があります。
正当事由とは何かですが、その例示として法律に「自己使用の必要性等の外・・」ですから、商業的借家や借地にこういう必要性などあり得ないので訴訟する人が皆無に近くなっています。

借地借家法(平成三年法律第九十号)
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
以前紹介しましたが平成の新法では自己使用等の他に「財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、」決められるようになった分流動化に資するようになっています。
「財産上の給付」申し出とは平たく言えば立退料の提案次第ということです。
参考までに大正10年からの借地法記載の正当事由の記載を紹介しておきます。
第4条
借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス 但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス
平成の大改革といってもこの程度の微温的改正でしたが大騒ぎになったものです。

この旧借地法や借家法は平成新法制定前の契約は旧法適用ですので、私も昨年から旧法適用事件で訴訟中です。
ただし判例理論が今の平成の法律とほぼ同じでしたので・いろんな法改正は判例実務の後追いが原則です・・不都合はありません。
14日に法家の思想紹介で書きましたが、日本はいつも法令改正前に実務が先行していく社会です。
社会の変化に法令が合わなくなる・・不都合が発見され、それを判例で修正していく流れで、その判例が世間の支持をうけて定着して行くとそれを新法令に変えていくという流れです。
象牙の塔にこもる研究者が社会の流れを先験的に見通して10年先の社会を前提にした法律案を提案するなど不可能なことですから、法はいつも実務変化の後追い作業になるのは当然です。
また現実に変化の芽も出ていないうちから10年先を見通した法案を提案しても国会での議決は不可能でしょう。
「今起きている変化の芽からこれが大きな潮流になりそうだからこの方向の規制をしたり緩める」というのを否定するのではなく、この変化が先に起きるのは実務界であり既存法令で不都合があるときに法規制の範囲をめぐる係争が増えてくるので半例が先行指標になるという意味です。
借地借家で言えば、時代の変化に合わせることも社会的にある程度(自己使用目的でなくとも都心のビル街で古い瓦屋屋根の家を温存しているのは社会的マイナスです)必要なので立退料支払いでの法の穴を埋めてきた実務慣行(知恵)があったのを法で明記し認証したことなります。
元に戻りますと、日本では期間満了=新契約ではなく・・「前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス」・・ 契約が同一内容のまま継続ですから、家賃を高くするには家賃や地代賃上げ・契約変更の場面になることが重要です。
「契約は守られるべし」というのがローマ法以来の原理ですから、相手が応じない限り裁判所の変更可否の判断手続きが必須です。
(労働法では賃上げ〜賃下げ交渉)
13日に借地借家法で書いたように意見が合わないと契約関係を維持したままの法的争いに移行します。
訴訟手続き等で鑑定等を経て結果的に大家の値上げ要求が正しかったとしても負けた方は差額に利息をつけて払えば良いだけですから、それほどのリスクはありません。
大家の方は、鑑定費用や弁護士費用等を負担するので、日本の場合1〜2万円程度の値上げ目的では裁判で勝っても費用倒れです。
しかも裁判所はいくら土地が急激(個別取引事例ではなく統計的に)年間1割といえばかなりのインフレですが)に上がっていてもそのままの引き上げを認めない運用が定着しているので、この種の争いをする大家や地主がいない・・何十年も同じ家賃のままというのが普通になります。
イギリスのエンクロージャムーブメントで小作人がいとも簡単に追い出されてしまうのを奇異に思うのが日本人です。

統計「不正?』騒ぎと性悪説の法家思想1

従業員500人以上の大企業調査手法の変更は今の内閣が始めたのではなく、04年から東京都調査分からはじまりその後大阪などに広がっているというのですから、現場工夫で合理化していった・・規則あるいは法改正かの必要性に気付かなかった可能性さえあります。
(私が知らないだけか不明ですが)全数調査や訪問方法などの末端ルールが法の定めになっているとは想定しにくいのですが、政令か省令か、あるいは細則?要綱?ガイドラインなのか主務官庁である総務省の通達に反していたのかさえメデイアははっきりさせていませんでしたが、2月14日日経新聞朝刊5p焦点②には、調査方法変更には総務省の承認を求める義務違反でないかの書き方が出てきました。
以下素人意見ですが、元々統計や世論調査はサンプル調査が原則と思われますが、全数調査ルールがいつ決まった手法かの報道がないのですが、例えば地方県で五百人以上の企業が2〜3社しかない場合に1社だけのサンプルで2〜3社平均を出すのでは統計的意味がないので全数調査にした意図がわかります。
例えば銀行とスターバックスの2社の場合、銀行員給与を調べて、スターバックス店員給与を同率で推計計算するのは無理があるでしょう。
ちなみに現時点の500人以上企業数の県別統計をネット検索するとデータが古いですが、以下の統計が出てきます。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/kihon_eikyou/pdf/02_2_chosakai_todoufuken.pdf

図表13都道府県別従業者規模別企業数図表
(備考)総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査(企業等に関する集計産業横断的集計)」より作成。

表が大きいので引用を省略しますが、東京神奈川大阪愛知福岡等を除くと千葉でも10社しかなく青森は1社しかなくその他は概ね2〜3社しかありません。
ところが経済成長によって世界企業(東京等の大都市集中)が数え切れないほどになっている現在全数調査は物理的に無理になってきたし、対象先が千社以上もあれば業種ごと(同業種の賃金傾向はほぼ横並びです)のサンプルを作れるので偏る不都合はありません。
報道によれば東京都だけで現在約1500企業もあるというのですから、全数や全戸戸別訪問(大手の場合訪問してお願いして(お茶を飲んで)帰るだけでその場で聞き取れる(一定期間経過後もらいに行くのかな?)ものではないし、本社担当者と面談しても、何(雰囲気?)が分かるか不明でその割に手間がかかり過ぎて非効率なのは誰の目にも明らかです。
ここで言いたいのは政争の是非ではなく、昔から日本社会は理念で一刀両断でビシッと末端まで貫徹していく怖い社会はなく、現場の必要に応じて緩やかななし崩し修正していく社会であったということです。
革新系の主張は秦始皇帝に始まる専制支配体制強化に役立った法家の主張のように理論だけで貫徹・解決しようとする傾向があり、(有名学者の動員大好きです)理論どおりでないのはどこかに邪(ヨコシマ)な癒着?「不正」があるはずというスタンスによる政権追求パターンですが、不正を前提にした観念的主張が日本の社会実態にあっていないので国民支持が広がらないのです。
メデイアは頻りに「統計不正は国家根幹の政策を誤らせるから大罪だ」という大上段議論を展開していますが、東京、大阪等のコスト削減策が統計を歪めたのか?の実態議論があまり見えません。
出回っている議論を見た印象では、サンプル調査した以上実数ではないから・・例えば3分の1しか調査しないならば、実数値に直すには3倍する必要があるのにそれを怠っていたから、(大手企業の賃金が高いのに「その人数がすくなく出ていた)平均賃金が実際より下がっていたので統計数値を歪めたということらしいですが、それは東京都が3割のサンプル調査に切り替えるのと同時にその計算方法をセットでしなかったミス(法理論ではミスも違法の一部ですが「不正」とは言いません。
あたかも政治が絡んだ不正であるかのような内閣追及騒ぎですが、どこの政府でも賃金が下がっていると発表したくないのが普通ですから、敢えて時の政権が賃金統計を低く出す奸計をめぐらしたと思う人は皆無に近いのではないでしょうか?
先秦時代の法家の思想・・元々性善説に対する性悪説から始まっているのが法家思想ですから(日本は財布を拾ったらほぼ90%以上の人が届ける性善説の社会とすれば、届けない10%の人ももちろんいます。
懐に入れてしまう少数派の人にとっては「庶民が自由な判断でやって正しいことなどあるはずがない」・「決裁なしにやること自体が不正」という思い込みがあるのは仕方がないのでしょうか?
高学歴の研究者意見に従うべきで現場工夫を敵視する傾向が見えます。
野党や文化人やマスメデイアは「良いことをしても役割外のことをすれば処罰する法家的思想」・・形式論・・その根底に性悪説に基礎を置いている印象です。
彼らは権力批判道具として民主主義や自由を主張しますが、内面では他人の自由を認める懐の深さがない人の集まりではないでしょうか。
中ソ等の専制的独裁制を尊崇する所以です。
米国の場合民主主義というものの、文化の底が浅いというか、エリートや強力なリーダー重視社会で基本的に庶民の知恵を尊重する歴史がありません。
権力構造は国民間の猜疑心・「性悪説」を前提にしていますし、国民も規制に違反さえしなければどんなに家賃を引きげようと金融でいくら儲けようと勝手」(暴利は許されない意識もない)という論理で突き進むようです。
この結果一握りが巨額収入を得て多くの人が路頭に迷おうとそんなことは法に触れない限り気にしない社会になっているようです。
アメリカは民主主義国家を標榜していますが、「人民による人民のための・・・」というリンカーン演説は政治的レトリックに過ぎないとみるべきでしょう。
その結果、ノーベル経済学賞をもらった?金融理論そのまま、シリコンバレー等で高額所得者が高額で住居を購入するとその取引事例を基礎にした高額値上げが従来の居住者に通告され、払いきれない古くからの居住者が路上生活者に転落していく流れが起きているように見えます。
日本のように「そうは言ってもね・・」という修正要素(日本の各種改正が遅々として進まない・民族社会に応じた進歩にはこれが一番必要)が働かない社会です。
私が常々批判している「秀才が国を滅ぼす論」の一場面です。

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