基軸通貨とは6(通貨安競争1)

アメリカへの資金環流が止まるときが来ても日銀の国債引き受けのように、アメリカ連銀が引き受けて際限なくドル発行を続ければデフォルトは起きませんが、仮に貿易赤字分そっくり紙幣の増刷を続ければ、アメリカの赤字は巨額ですので大変なドル下落に見舞われます。
通貨安はジリジリと少しずつ下がるときには貿易競争上有利ですが、急激に下がる・・暴落になると外貨建て対外債務国は、ヘンサイ債務がその比率で上がってしまうので借金返済のために働く債務奴隷のようになってしまいます。
これが昨年来の韓国ウオン激安による韓国経済の行き詰まりの原理です。
日本の場合債権国(海外投資の方が大きい国)なので、円が仮に下がっても返してもらえる債権・元本回収が増えるだけですが、対外債務国の通貨が下がると貿易上有利になる代わりに、過去の債務返済額が上がってしまうデメリットも大きくなります。
通貨安による貿易黒字は、言うまでもなく国民の時間給あるいは美術品などを外国人に限定して値引きしてやる・・海外へは割安で売ってやる・・国民には割高で売ることであって、決して得なことではありません。
誰でも自分の働きを割高に評価して欲しいものではありませんか?
それでも失業しているよりは良いので、ダンピングしてでもフル操業したい面とのバランスの問題です。
小刻みな通貨切り下げの国内波及効果は細かいので目に見え難いですが、大幅切り下げでも小幅切り下げでも本質的効果は同じです。
国内競争で言えばコスト割れの値引き競争をしているのと似ていますが、国内競争の場合、コスト割れの値引き競争は利潤率の切り下げないしは赤字販売(コストを下げられないのに販売単価引き下げ)ですから経営者が参ってしまいますが、通貨切り下げ競争の場合は利潤率・コストがそのままですので経営側には売上が増えれば増えるほど利潤が多く残ります。
これに対して経営コストを支える賃金や仕入れ業者のその負担も切り下げた直後には名目給与や仕入れ価格が変わらないので変化がありませんが、時間の経過で輸入品等の価格が通貨切り下げによって上がるので結果的に目に見えない程度ですが物価上昇になります。
インフレになれば賃上げ要求が激しくなりますが、年間0、0何%ずつ輸入物価が上がって行く場合分り難くて物価上昇を理由にする賃上げ要求運動は起こりませんので、賃金や下請け納入業者に取っては実質手取りがホンの僅かずつ目減りして行く関係です。
こうしたじり安状態を何十年もやって行くといつの間にか過去30年間で3割も通貨安になっているという結果になりますが、国民の方は知らぬ間に賃金を3割も下げられていた状態に気づかないことになります。
急激に1〜2割も切り下がって物価が上がると国民も気づき易いのですが、長期間経過でジリジリと切り下がって行く場合ジリジリと国民の手取りが減り輸出業者・・主として大手企業に切り下げの利益が集積されて行く関係ですが分り難いので抵抗が少ないのですが、ジリジリと国民の窮乏化が進みます。
言わば国民の犠牲で輸出を増やしていく関係です。
為替が切り上がるとき・・デフレ経済(物価下落局面)では、人件費の引き下げが難しいので輸出企業が苦しく、国民がその分の利益を手にし、(これがバブル崩壊後の日本の現状です)通貨の切り下げ物価上昇ないしインフレによる変化は企業がその利益を得て国民がその分だけ損をする関係(ここ2〜30年間通貨切り下げで貿易競争上有利な立場にあった韓国の現状)であると言えます。
通貨切り下げは輸出企業に取っては有利な仕組みですが、これが行き過ぎて通貨が急激に何割と下がって来ると、急激なインフレになって生活苦になって来て国民もこのカラクリに気がつくこととなって国民の我慢の限界を超えて来るので国内大問題に発展します。
リーマンショックとこれに連なるギリシャ危機によって、ここ2〜3年では韓国のウオンが暴落に近い下げを記録しているので、長年のウオン安政策によって疲弊し切っている韓国国民の不満が頂点に達しつつあって、与党支持率急落になっているのは、この構図によるものです。

基軸通貨とは1

日銀の国債引き受けに関連して金利動向・貨幣の強弱に関心を持った方が多かったと思います。
世界の金利分布を見ると、豊富な資金を有する国には資金需要が少ないことから需給の関係で最低金利を維持しているので資金不足国は低金利資金に頼る構図ですから、経済の世界では最大の資金国が基本的な力を持つことになり、資金不足国はその動き・・金利動向に従うしかない現実を表しています。
中国は豊富な外貨準備があっても、まだ世界中から企業誘致・投資資金を導入し続けないと経済が回って行かない国です。
公表されていないものの実際には昨年あたりからバブル崩壊・・それも日本の崩壊よりは激しい崩壊が始まっていることは明らかですが、それでも金利を下げられない状態です。
以下は日本と中国の金利差です。
今は公定歩合と言わずに政策金利と言っていますが・・日銀が銀行に貸し出す基準金利と思えば良いでしょう。
http://www.gaitame.com/market/japan.htmlからの引用です。
国 名   政策金利名      値       増減幅 発表日    前回値
日本O/N Call Rate Target 0.00%~0.10%  -  2012/3/13  0.00%~0.10%
Basic Loan Rate       0.30%      -   2009/1/22    0.30%

O/N Call Rate Target・・・無担保コールレート(オーバーナイト物)
Basic Loan Rate・・・基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)

www.chinawork.co.jp/e-kinyu/2-b-b-kinri.htm – よりの引用です。

人民元金利

人民元預金金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目 金利調整前 金利調整後
普通預金 0.50 0.50
定期預金 満期型
3カ月 2.85 3.10(+0.25)
半年 3.05 3.30(+0.25)
1年 3.25 3.50(+0.25)
2年 4.15 4.40(+0.25)
3年 4.75 5.00(+0.25)
5年 5.25 5.50(+0.25)
総合型
(普通・定期兼用型) 1年定期満期型に準拠。
同ランク金利の6割で金利を計上
出所:中国人民銀行

人民元貸出金利 (2011年7月7日より)

単位:年利%
項  目      期  間      調整前       調整後
流動資金貸出 6カ月(6ヵ月含む)     5.85       6.10(+0.25)
1年(1年含む)            6.31      6.56(+0.25)
固定資産貸出 1-3年(3年含む)    6.40      6.65(+0.25)
3-5年(5年含む)           6.65      6.90(+0.25)
5年以上                6.80      7.05(+0.25)
出所:中国人民銀行
注:貸出の条件①資本金が払い込み済み②信用ランク査定2Aまたは3A

以上の比較によれば日中の(公定歩合)金利差は約6%になります。
日本は潤沢な資金を前提に世界最低金利を提供出来る・・商品で言えば激安・最低価格提供ですから、日本の円は世界を席巻していることが分ります。
安い商品の場合、品質が落ちることがありますが、紙幣の場合品質差がないので利用コストは金利次第です。
中国は外貨準備が世界1としても、上記のとおりの高金利でないと資金を提供出来ないのですから、紙幣供給に関する国際競争力の差は明らかです。
対外純債権額では日本が世界一で中国がまだまだ遠く及ばないのは、中国の保有する外貨の内実は日本その他先進国が中国で投資した資金がドル外貨に変換されている部分が多いことを物語っています。
日本の場合外資導入によって経済発展・貿易黒字になったのではなく自前の資本で貿易黒字を稼いで来たのですが、中国の場合日本その他の外資が奔流のように流れ込んで、これが現地で全部中国人民元に両替しますので、中国政府はドルを大量に手に入れています。
トヨタやセブンイレブンが中国進出するときに日本国内で0%で借金して得た円・・例えば1000億円をドルに替えて、そのドルを中国に持ち込んで人民元に替えて中国の工場用地・店舗工事資金などを手当てします。
中国は入手したドルを市場で売ると元が上がって困るので、アメリカの国債を買うしかないのでアメリカ国債の保有が増える仕組みです。
一旦中国から外資引き上げが起きるとこの逆回転になります。
ギリシャ危機で欧米からの資金流入が細っただけで、昨年元が弱含みになったのはこの仕組みによるものです。
元は恒常的外資流入によって成り立っているとすら言えるでしょう。
ギリシャ危機で、中国はギリシャの救世主のごとく資金投入を一旦ほのめかしましたが・・あるいは人民元の内容を知らないマスコミの勝手な願望だったかも知れません。

結局何も出来ないで終わっているのは、欧州への資金拠出どころか自分の足下に火が着いていて、欧州からの資金引き上げにびくびくしている状態でしたから当然です。

上記のように中国では既にバブルが崩壊している状況にも拘らず金利引き下げに踏み切れないのは、海外からの投資資金の引き上げを恐れている状態を表しています。

財政収支と国際収支1

前回まで書いたように現在の日本の経済状態では、紙幣発行量や金利の上下では景気を良くすることもインフレにすることも出来ません。
国債発行残高の問題は、財政赤字あるいは国内総生産との比率の問題ではなく、対外的に日本経済が赤字体質に陥るかどうかだけが論点であるべきです。
財政赤字がいくらあろうとも経常収支黒字または対外債権残高の範囲内である限り内部の分配問題に過ぎず何ら問題がありません。
今朝の日経朝刊25ページ(約1ページ全部に近い大きな論文です)にも、経常収支黒字が後何年かで消滅して行くので、この対策として財政赤字の改革・解消・・国債残高の縮小→増税が焦眉の急であると経済専門家が書いていますが、経常収支黒字が消滅して赤字になった後に税収だけ上げても経常収支赤字が続いたのでは、日本経済が大変なことになる点は同じです。
日本経済が大変なことになるかどうかは税収と政府支出の問題ではなく、国際収支赤字になっても日本人がごっつく稼いでいたころの贅沢をやめられないかどうかにかかっているのです。
国際収支赤字が続いて生活水準を下げる必要があるならば、このときに税収を上げても仕方がないどころか、逆に税収も下げて行くしかありません。
税の基本が所得再分配(現金の分配だけではなく公共工事も地域格差をなくすなどその一環です)のためにあるとすれば、再分配基準を上げるためには政府収入を増税または国債で増やすしかありませんし、経常収支赤字をなくすために生活水準を下げて行くときには、・・即ち生活水準を下げて行くときには政府収入・支出も減らして行く・・減税ないし国債発行額の縮小であるべきです。
税収を増やしても国際収支が好転する訳がない・・むしろ法人税その他負担が重くなると国際競争力が逆に低下するでしょう。
日本や世界の学者が日本の国際収支の悪化が迫っていることを理由にして財政赤字の解消・増税すべきだという主張を何故こぞってするのか意味不明です。
私のように財政赤字と国際収支は関係がないという意見を見たことがありません。
日本経済が大変なことになるかどうかは国際収支次第とすれば、国債で資金を吸収するか税で吸収するかの経済効果の違いこそ論じるべきでしょう。
同じ資金を市中から吸い上げる場合、税で取る方が経済発展を阻害する効果が大きいのは明らかです。
国債は元々使い道のない余剰資金が預金に滞留しているのを吸収してこれを政府が有効活用することですが、増税の場合企業その他の有効投資・使い道のある資金まで含めて強制的に取り上げるので、経済萎縮効果が大きいのは明らかです。
国際企業立地競争の面で見ても、法人税その他の負担を重くすれば海外に逃げるリスクがあるだけで、高率の税を求めて日本に来たい企業は万に1つもない筈です。
これまで日本は欧米の増税要求(論説)に応じないで、国債で対応して来たのは正しい政策だったことになります。
日本の高度成長以来、日本を叩きつぶすのが究極の目標で来た欧米は陰に陽に如何に日本をつぶすかの研究に余念がなくいろんな要求してきますが、欧米の手先のような日本国内学者(これが殆どです)をこの際一掃すべきです。
国債も税も国内でやり取りしている限り資金循環では本質的な違いがないことをこれまで書いてきましたが、トータルで赤字になって来て海外から資金導入しないと国債を維持出来なくなれば問題です。
(ただしこれに見合う対外債権があれば別ですから結局は対外純債務国に転落するかどうかが岐路になります)
私は長年日本人は刻苦勉励して黒字を貯めて来たので、この辺で少し放出し(フローの収支を少し赤字にしてでも)て所得再分配資金を作り豊かな生活をした方が良いという意見を2012/03/19/「税収2と国債1」で書いてから、このシリーズを始めました。
とは言え、一旦贅沢すると簡単に生活水準を下げられないのが普通です。
経常収支赤字になった後さらには対外純債務国になっても、なお日本人はアメリカのように贅沢し続けるのか、実力相応に生活水準を引き下げられるのか念のために心配しておきましょう。
アメリカは貿易赤字転落後でもなお豊かな生活を維持するために貿易赤字を継続し、結果的に対外純債務国に転落してもまだ貿易赤字を続けています。
我が国でも経常収支が赤字に転落してでも、なお国債増発あるいは増税を繰り返し国民にお金を配って借金で贅沢を続けることがあり得るかに日本民族の命運がかかっています。
私がこのシリーズ(税と国債)を始めるにあたって、Mar 19, 2012 「税収2と国債1」で書いたことですが、過去に儲けても儲けてもその多くを貯蓄し続けて来た我が国民は、この際少し豊かな生活をするために税で所得の再分配すべきだし、増税が出来ないならば、「税の代わりに国債で資金回収して再分配してもいいのではないか」とする趣旨を書いたことに繋がります。
苦労して稼いだ果実を取るべき時期が来ている・・フローの収入以上の生活をある程度しても良いじゃないか・・・とする意見です。
この意見は、対外純債権の範囲で豊かになることであって、過去の蓄積を使い尽くした後でもなお借金してまで豊かな生活を維持すべきだと言うのではありません。
問題はその時点で生活水準を落とせない可能性が高いことです。
サラ金相談でもそうですが、苦しいからと言って生活水準を落とすのはかなり難しいのが現実です。
アメリカが対外純債務国に転落したのが1980年代ですが、その後30年前後もアメリカは貿易赤字の垂れ流しを続けています。
赤字を続けているということは、家計に置き換えれば収入以上の生活を維持しているということでしょう。

国債無制限発行2(ロンバート型融資システム1)

日本より高金利国の投資家が、日本国債を買うと逆ざやですから金利差目的では購入動機がありません。
海外の資金を呼び込みたい国では他所より金利を高くしないと導入出来ませんが、日本の場合国内に(長年の貿易黒字の蓄積で)資金がだぶついているので世界最低金利のままで何十年もやって来られました。
外国人による国債購入動機については、10/30/08「円高相場と国債1」のコラムで紹介したとおり、為替相場の見通しと金利差がすべてです。
再論すれば国際金融危機などのときに超短期資金の行き場をなくして逃避先として最も安全な円に交換するしかない・・円値上がり期待で円を購入すると購入した円の保管場所に困ります。
機関投資家の場合個人と違って購入した円をタンス預金しておけないので、どこかに預けるしかありません。
零%近くの金利で銀行に預けるよりは国債を買っておけばホンの少しでも(1%前後)上乗せ金利を稼げる超短期運用先・・逃げ場としての利用しかないのが現状です。
昨年のギリシャ危機以来の超円高局面では、資金の逃避先として円が上がったのですが、そのときに彼らは円の仮置き場としてさしあたり少しでも金利のつく国債を大量購入したので昨年末の日本国債の外国人保有比率が数%も急上昇しています。
(リーマンショック時にも円が上がると同時に国債保有比率が上がりました)
このように我が国の国債は低利過ぎて外国人投資家には円相場急騰期以外には購入動機が限られていることから、仮に際限なく発行量を増やしても平常時には5%前後の保有比率(日本の国際貿易量の大きさ見てこの程度の保有は一定の国際貿易等の決済資金用として必要です)以上に上がることはないでしょう。
ちなみに賃貸用ビルやホテル稼働率あるいは失業率も移転誤差用として、いつでも5%前後の余裕・ゆるみが必要です。
とすれば、日本国債はもともと外国人投資家による引き受けを予定していないのですから、外国人投資家の引き受け拒否による国債引き受け不能・デフォルトあるいは大暴落になる心配がありません。
国債の増発がなく書き換え債の発行だけならば、民間金融機関の余剰資金が同じである限り書き換え用国債の引き受け資金が不足することはありません。
景気が良くなって預金の融資先が増えると国債引き受け資金がその分不足することがありますし、個人金融資産が徐々に減って来ると銀行等の融資用利用額が同じでも引き受け資金・余力が細くなります。
景気が良くなって民間資金利用が増えて国債引き受け資金不足時には、その分民間需要が盛り上がっているので政府が需要喚起のために国債で市中から資金を引き上げて使う必要がなくなるので、国債発行自体を減らして行くべきでしょう。
とは言え、満期が来る分の償還資金を政府が用意していないのが普通ですから、(どこの企業でも書き換えによる償還資金手当を前提に運用していることを書きました)実際には直ぐに不足分の資金を手当て出来ません。
景気が悪いままなのに個人金融資産が減ってしまい国債引き受け用資金が銀行等から縮小して行く場合(・・今後高齢化が進むとこのパターンが予想されます)も同じく資金不足になります。
これらの場合、償還予定額と同じ額の国債残高を維持するためには、紙幣増発しかないのでいわゆるロンバート型融資によって穴埋めする必要に迫られます。
ロンバート型融資+銀行による国債引き受けの仕組みについては、03/19/08「サブプライム問題と世界経済6(円の大量供給の功罪2)」のコラムで紹介しましたが、ロンバート式融資の場合、日銀が直接引き受けしなくとも既発行国債を担保に新規の国債引き受け資金を借りられるので既発行債の借り換えに関しては(担保の掛け目にもよりますが・・)銀行がほぼ際限なく引き受け可能です。
たとえば担保掛け目を9割に設定していれば、既発行債の借り換え資金として新たな民間からの引き受け資金としては、差額の1割だけで済みます。
例えば借り換え用の額面100億の新発国債をロンバート型融資で引き受ける場合を例にしてみましょう。
100億の既発行国債を担保に90億の日銀融資を受けて差額10億を金融機関の自己資金=預金等で賄っても、その数日後〜1日後あるいは即日(1時間後あるいは数秒後)に担保にした既発行国債が額面通り100億で償還されるので、資金的には殆どリスクがありません。
(数時間後あるいは数分・数秒後の償還金入金の場合、帳簿の書き換えに過ぎません)
この繰り返しで行けば、政府にとってはその時点までの既発行債残高の償還資金の準備資金が限りなくゼロに近づくので、ロンバート型融資を始めた時点で存在していた発行残高(その時点で800兆円の残があったとすれば・・)がゼロになってしまったような経済効果があります。
ロンバート型融資による銀行引き受けが行われるようになると、間に藁人形としての銀行をカマしているだけで事実上日銀直接引き受けと同じことになるので、上記ロンバート型融資のコラムでも書きましたが中央銀行の独立性を学者や関係者が何故今でも主張しているのかが疑問となります。

国債無制限発行とデフォルトリスク1

日銀の国債引き受け・・極論すれば紙幣の無制限発行に進んだ場合日本経済はどうなるのか心配している方が多いと思います。
今のところ日本は世界一の対外純債権国・・資金のある国ですから外国から資金を導入する必要がない・・儲けが溜まり過ぎているので金あまり・・しかも商品は供給過剰と来ているので銀行からお金を借りたい人が少ない・・・その結果世界最低の金利水準になっています。
バブル崩壊以降(供給過剰社会でありながら)借りたい人がいるとしたら、サラ金の顧客等リスキーな人・儲けるための投資資金ではなく借金返済用の後ろ向き需要が多くなっています。
これでは消費者金融以外の前向き金融の分野では、借りたい人・企業が少なすぎて世界最低の金利にならざるを得ません。
ところで商品は同じ性能であればコストの安い方が競争力があります。
貨幣も交換すべき商品の一種売り買いの対象とすれば、仕入れコストの安い方が競争力・需要があります。
世界での低金利競争では世界最大の純債権国である日本は自然に低金利になりますので金利競争では最強です。
低金利国で資金を入手して高金利国で運用した方が有利です。
もしも日本より資金力のない国が日本よりも金利を安くした場合、その国から資金が日本に逃げ込んでしまいその国にとっては資金不足で大変なことになります。
世界金利秩序は資金の足りない国・経済弱小国を最高金利国として、順次国力に応じて順次金利が下がって行くようになっていて最強経済国の金利が最低金利国になるのが原則です。
ただし、物事には例外があってアメリカの場合貿易赤字国で対外純債務国に80年代ころから転落していますから、本来金利を中国よりも高くしなければないのですが、リーマンショック以降低金利政策を取っているので中国よりかなり低くなってます。
もしかしたら日本の次・世界2番目の低さかも知れません。
巨額貿易赤字国で純債務国に早くから転落しているアメリカが、日本に次ぐ低金利国であるのは上記論理から言えば異例ですが、長期的には無理が来ることについてはこの後に「基軸通貨」のテーマで4月10日以降に書きます。
中国にとっては貿易黒字で稼いだ資金をアメリカ国債ないしアメリカの公的資金で運用するのでは、逆ざやになってしまっています。
この点は中国が経済実態以上に人民元の為替相場を低く抑えようとして経済原理に反した介入を続けていることによる損失ですから、覚悟の上のことと言えるでしょう。
金利運用の逆ざや問題はこの後に書いて行きます。
金利を高くしても客のつかないほど信用のない国では、自国通貨建てでは客がつかないのでドル建てや円建てで債券を発行しています。
これがサムライ債など他国通貨建て債権の存在意義です。
日本の場合、余剰資金国ですから海外でドル建てで起債する必要がないばかりか資金がだぶついているので世界最低金利での国債発行が可能になっています。
世界最低金利の発行でもそれ以下の金利での預金が豊富にあり、あるいはロンバート型で日銀から公定歩合・政策金利で低利融資を受けた資金で買う限り、確実な利ざやを稼げるので国内金融機関は国債を買い続けるので海外から買ってもらう必要すらありません。
純債権国の地位を維持している限り、銀行であろうと日銀引き受けであろうと海外から資金を導入する必要がないので問題がないということでしょう。

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