国内生産過剰6(人口縮小策1)

工業国が製品輸出する能力が落ちると、食糧その他資源を自給できない国は資源輸入代金の支払能力が下がりますので、食糧その他資源等を自給できる限度プラスアルファまで人口を減らして行くか、生活水準を落として行くしかありません。
原油代金支払いに困れば電気ガスの料金値上げ→利用を減らす・・あるいは食糧輸入(高級食材輸入減から始まるでしょう)を減らす・すべての分野で質素倹約しかなくなるでしょう。
適正人口まで縮小する前に単純に輸出を減らして行くと、赤字が膨らんでギリシャ等南欧諸国同様の結果になってしまいます。
輸出不振で生産量が減少し、輸入品に押される国では、国内生産業生産減にあわせて雇用を減らす→失業増大=購買力低下しかありません。
貿易収支の赤字転換が始まると赤字幅拡大は急激ですが、人口は急には減らせないので当面は財政赤字で政府(失業保険や公共工事で)あるいは企業が(社内失業の抱え込みや円安による輸入代金アップを直ぐに価格に反映しないで)負担して、国民にはすぐには直接負担させないでしょうが、いつまでも続きません。
貿易赤字が恒常化すると継続的通貨安になり輸入物価が上がり続けますが、これもすぐに価格転嫁しないで補助金で何とかするのが普通です。
しかし、いつかは財政赤字の穴埋めのために日本のように増税するか、電気代等輸入関連品の値上げ・・収入が増えないで値上げが続けば節電・節約と言う名の窮乏化が始まるしかありません。
7月6日の日経新聞5pダイジェスト欄には、エジプトが財政赤字に耐えられなくなって、ガソリンを78%も値上げする(→消費減退=窮乏化の始まりです)と出ていました。
経済縮小中の国では当初政府や企業が輸入価格アップ分を抱え込んでいても、いつかは増税か価格転嫁しかありません。
収入減少中のときに増税するのは無理があるので、(政府による差額負担金の減少・・ガソリン価格値上げ))物価上昇と言う形で国民に転嫁して行くしかないからでしょう。
企業の場合、社内失業を抱えている帳尻あわせに政府のように強制的に値上げすることも出来ない・・経済縮小中=不景気下で市場原理によれば値上げできないとなれば、最後は解雇するしかなくなってきます。
日本の場合企業に体力があった(海外展開して収益の送金があった)ので約20年間時間稼ぎをしていて、毎年定年で退場して行くのを待っていられた(・・補充を非正規雇用に)し、値上げしなくても何とかなったので幸せでした。
さすがに日本も、政府は増税し民間は徐々に値上げしないと成り立たなくなって来たので、安倍政権は消費税アップと値上げムード醸成に必死になっています。
いわゆる不景気下の物価上昇・・スタグフレーションの始まりですが、安倍政権はこれを誤摩化すために当面は株価上昇から入って行きます。
金融操作によって株が上がろうと上がるまいと、これは飽くまで金融レベルの問題であって、海外進出トレンドによって国内生産が経済縮小過程に入っている点は変わりませんから、今後雇用は減少するし貿易収支は悪化の一途をたどることは間違いがありません。
貿易収支の悪化が続けばトレンドとしては円安になる方向性ですし、輸入物価が上がるトレンドになります。
人件費も上がると言うアナウンスで国民を安心させた上で、輸入物価の上昇・・電気代等を引き上げるもくろみがあるように思いますが、実際には国内生産が減って行き雇用数が減少するしかない以上は、国民の数が同数であれば一人当たり収入が減って行きますので局部的な賃上げは別として日本全体の賃金底上げは難しいでしょう。
マスコミが現場系労務者不足→単価上昇を大宣伝して如何にも賃上げが始まる印象を広めていますが、現場系労働者は日本の局部であって全部ではない・・大多数を占める常用雇用者の賃上げには結びつきません。
常用雇用者の賃上げには国内生産力増強が必須要件であって、株価上昇は関係がありません。

海外進出と国内生産過剰2(人口過剰1)

日本は長年国内需要の何倍も作って輸出して外貨を稼いで蓄積して来たのですが、国際化の進展で現地生産に切り替わる時代が来た以上は、国内にこだわって現地生産に切り替えて行かないと将来的にはジリ貧になります。
現地進出競争が盛んですから、行く行くは世界中で普及品に関してはどこでも似たようなものを作れる時代が来ます。
高級特殊部材はどこでも作れないので輸出・・貿易対象に残って行くでしょうが、この種生産に携われる人口は僅かですし、数量価格的にも国の人口を支えるほどの輸出代金を稼げません。
輸出品が限定されて行くと、輸出代金では食糧や資源輸入代金全部を賄えなくなるので、過剰人口が解消されるまでは不足分は過去の蓄積食いつぶしと海外工場からの利益送金で賄うようにして行くしかありません。
国内雇用を守るためと言って進出を怠っていると、競合国に市場をさらわれてしまい、海外足場を失うリスクの方が大きいので、現地化競争に遅れを取る訳に行きません。
7月1日の日経新聞朝刊経済教室に出ていましたが、日本企業の自動車生産数は世界で2500万台にのぼっていますが、国内生産に限ると1990年から13年までの間に日本は1356万台から963万台へ30%減少し、同じ期間ドイツは国内生産15%、米国は14%、韓国は89%増となっているとのことです。
これらは円高に対する各通貨安によるもので、(グラフがついています)ドイツは単体ならばマルク高になるべきところEU全体の不景気によるユーロ通貨安によって交易条件が有利になっていることによるようです。
要するにユーロ経済システムは比較優位のドイツ一国に有利になる一方でその他は割を食う関係・・格差が広がるばかりです。
今や安倍政権による円安リベンジが始まっていますが、通貨安(の効能は頓服のような一時的効果しかなく)に頼っていると通貨安の恩恵がなくなったときにイキナリ海外進出しようとしても、先行進出企業にがっちり市場支配されているとそこヘ後から食い込むのは大変なことになります。
この意味では、日本が先駆けて世界へ打って出ていたのは(今は苦しいけれども)後で効果が利いて来ると思います。
ただし、この切り替え中のミスマッチで生産力過剰・雇用減に苦しんでいるのは、店舗建て替え中の収入減と同じです。
不景気の場合循環するので、受注が減ってもすぐに解雇しないで余剰人員を抱え込んで次の波を待てば良いのですが、海外進出による輸出用国内生産縮小の場合、循環性がないのでじっと待っていても国内生産回復は見込めません。
何しろ進出先の競争相手が自社の子会社ですから、同一製品で競争すること自体が許されないので挽回の余地がありません。
この間に部品供給等でお茶を濁していましたが、時間の経過で部品も現地調達率が上がる一方ですからこれもいつまでも続きません。
まだ海外進出していない高級分野での技術力を磨いて新たな製品を創出(企業自体変身)して輸出に活路を見出すしかなかったのがこの20年でした。
この大変身に成功して来たのが日立(インフラへ)や東芝(原発)でありトーレ(炭素繊維)やクラレであり、キャノンやオリンパス(内視鏡)等の精密分野でしょうし、同一製品の技術力アップで現地生産で作れないようなものを従来どおり輸出して稼ぐ・・国内雇用維持をして来たのがトヨタであったと言えるでしょうか。
ソニー・パナソニックその他家電業界は技術力アップして海外展開工場や現地企業と差異化しても、コモデテイー化が早過ぎてすぐに追いつかれるので、現地で成長した現地企業・・ニーズの先取りには現地企業が優れています・・に遅れをとってしまったのです。
(真偽不明ですが良く言われているように、サムスンのように技術者を引き抜いて真似をする後発の方が、巨額研究開発費を負担しない分有利でした・・しかも研究開発に注ぐエネルギーをニーズに応じた開発をする方に注力する意味でも有利でした)
世界中どこでも似たようなものを作れる時代に入ると、ニーズを逸早くつかんだ方が勝ちです。

海外進出と国内生産過剰1

グローバル化=企業の海外工場立地加速によって、工場進出=現地生産分輸出市場が縮小するので輸出で稼いでいた国では、国内生産能力が縮小して行くのが原則です。
中国その他後進国進出の場合、現地政府は輸出産業の進出を求めるのが普通ですので、進出先へそれまで輸出していた分の輸出がなくなる外に周辺国への輸出も失います。
東南アジアの雁行的発展時に日本からアメリカへの輸出代替基地(対米巨額黒字削減による対日批判鎮静化効果が期待されていた)になっていたことが知られています。
タイ王国を例にすれば、車など同国から周辺国への輸出基地になっています。
国内に残った工場の競争力を高めても進出先子会社の工場と顧客奪い合いをして、進出した工場をつぶすわけには行かない・・むしろ進出したばかりの工場を成功させないとならない立場ですから、部品供給をしたり未進出先の新規顧客開拓くらいしか出来ません。
進出先は概ね過去に輸出市場として大きい・・成功している顧客ニーズの確かな地域から始まるので、母国としては大口・優良輸出先を失うような結果になります。
この辺が出張所を営業所にして更に顧客が増えると格上げして、現地法人を設けて行くパターンの商社やサービス系・・成功すればもっと他店舗展開すれば良いコンビニ等との違いです。
トヨタの例で言えば、海外立地・進出を続けていますが、上記パターンで考えれば、(完成品輸出に比べて部品輸出では比率が下がりますので)国内生産を大幅に落とさねばならないのですが、国内空洞化を避けるために国内生産能力を落とさないと言う姿勢で頑張っています。
トヨタほどではないにしても、例えば海外に年産100の工場を立てると、国内生産能力をすぐに100全部縮小するような企業は皆無に近いでしょう。
国内雇用維持等のために海外生産増加=国内生産縮小の何割ずつ程度しか徐々に縮小して行けないとすれば、(1割ずつ人員削減の場合10年間)その差額分の何割かは海外工場に移管していない高級機種への転換・・アフリカ等まだ工場進出していない地域での新規販売拡大に振り向け、それでも補充しきれない分を企業が毎年社内失業者として負担し続け、雇用維持し続けて来たことになります。
この間に内需が縮小するどころか、逆に膨らんで来たとすれば社会全体で大変な負担があったことになります。
この負担分(公共工事に限らず新たな介護関連分野の需要掘り起こしや社内失業を抱え込む企業には雇用助成金が支給されていましたし失業保険や職業訓練など)が財政赤字として蓄積されて来たのです。
財政赤字を減らせと言う論は、言わば「政府や社会全体の負担を減らして経済原理どおり失業者は食うに困っていれば良い・・仕事がないなら仕方ないでしょう」と言う結果主張をしているのと同じです。
日本は長期間儲けた蓄積があるのですから、このような社会システムの変換期にこそイザというときのための蓄えを使うべきです。
システム変換と言えばその最たるものは少子高齢化社会への変換でしょう。
国際平準化によって現地生産化が進むと長期的には輸出産業は縮小して行くしかないのですから、自給自足で足りない分の輸入代金・・海外収益による送金で国民の食糧や燃料その他資源輸入をするには、養う国民が少ない方が良いに決まっています。
海外から送金額が100単位であって国民が100人ならば一人1単位しか使えませんが、国民が30人になれば一人3、3単位使えます。
将来海外からの送金に頼る時代が来れば養う人口が減っていた方が有利に決まっています。
この辺の仕組みは親の遺産が一定のときには、子供の数が少ない方が一人当たり相続額が大きいのと同じです。
この辺は財政赤字で負債を子孫に残すのか?と言うキャンペインに対して、国債発行残高よりも多い個人金融資産を子供が減って少人数で相続すると、却って得する関係になると書いたことがあります。
相続前には、親の介護をするには子供の数が多い方が良いのですが、この過渡期にあって苦しんでいるのが日本ですが、この過渡期にこそ過去の蓄積を使えば良いと言う意見を以前から書いています。
こう言うときに使うために貯蓄して来たのですから、一定期間の財政赤字は当然のことで(親が入退院を繰り返せばお金がかかりますがその内巨額相続が出来ます)これを大騒ぎしているのはおかしい(約30年間経過で多過ぎる老人が退出して人口構成が完成して安定した社会に落ち着くのを待つのが正しい)と言う意見を大分前から何回か書いたことがあります。
自宅や店舗の建て替えのときには、その日その日の稼ぎで足りないし売上減になるのは当然で、こう言うときにこそ長年の蓄積を使って凌いで行くべきです。

内需の重要性1

内需の大きい国はそれだけ国民が消費している・・消費力があることですから、国民が豊かな生活をしていることになります。
どんなに外観上多くお金を稼いでいてもお金を生活費に使っていない段階では、その人が何ら良い思いをしていない・・売上収入が半分の人でもお金持ちの2倍使っていればその人の方が贅沢していることになります。
(今では中国のGDP発表を信じている人が少ないでしょうが)仮に政府発表どおり国内総生産がほぼ日本と同じでも日本が中国の約2倍の内需率と言うことは、中国人は日本の半分しか生活費にお金を使えていないことになります。
まして人口が日本の約10倍もあるのですから、一人当たりの消費は・・?と言う水準です。
韓国のGDPは日本の何分の1しかなく、28日に紹介したとおり、韓国の貿易依存度が50%で日本は10何%ですから、人口が仮に半分としても一人当たり消費水準が如何に低いかが分ります。
これらは外資比率(中国の場合共産党幹部の巨額賄賂に化けて裸官と言う形式で海外流出率)が高いことが大きな原因です。
収入(所得)に税をかけるのではなく、お金を使う場面で税をかけるのが合理的で公平だと消費税のコラムで書いたことがあります。
国民の豊かさも同じで、年間どれだけ自分のために消費できるかが基準であるべきでしょう。
Aの10倍収入・売上があっても、消費水準がAの半分しかなければ、生活水準が半分です。
同じ人口の国で比較した場合、Aの国内総生産がBの2倍あっても内需・国内消費が3割以下であれば、B国の内需比率が8割であると内需の大きい国のB国民の方が豊かな生活をしたことになります。
豊かさ指標としてみれば、国内総生産の内で、内需に回した分が一人当たりいくらあったかを見るべきでしょう。
同じ人口の国で比較すると、国内総生産が2倍あってもその内8割を貯蓄してしまい自分で使ったのは2割しかない国と半分の総生産でもその9割を内需に回した国とでは、豊かさが違います。
米を10俵生産しても全部売ってしまい自分はヒエを食べている人と、米を1俵しか作っていなくとも米屋から3俵買って年間4俵食べている人とでは、多く食べている方が生活が豊かです。
真珠や宝石類を作っている人が真珠や宝石類を多く保有しているとは限りません・・全部売ってしまう人と1つも作ってなくとも沢山買って日々豊富に使い回して楽しむ人とどちらが豊かか?ということです。
生産量(GDP)や販売量(貿易黒字)の統計は、生活の豊かさ指数としては意味がありません。
ココ100年前後これが重視されたのは、戦争時にイザとなればどれだけ多くの兵器(「鉄は国家なり」と言われましたが、戦車大砲や軍艦建造能力など全ての基礎になる製鉄能力が重視されたのです)を短期間に補給製造できるかの能力に意味があったことによります。
国民生活水準は、戦闘継続能力の有無・強弱の基準とは関係がありません。
韓国の貿易黒字定着は、国民の(低賃金・社会保障の貧困と国内販売価格アップによる)貧困と引き換えになり立っていると言う批判に繋がるのでしょうか?
実際の数字を見るとhttp://www.wowkorea.jp/news/korea/2014/0525/10125959.html2014年5月の報道では以下のとおりです。

【ソウル聯合ニュース】韓国の有価証券市場に上場している12月決算法人の外国人株主への配当金は4兆6301億ウォン(約4600億円)で、前年比13.9%増加した。 韓国預託決済院が25日に発表した。

4600億円の配当は12月決算法人だけですので、12月決算法人の比率が不明では、1年間の総額が分りません。
昨年の貿易黒字額については、産経ニュースによれば、以下のとおりです。
2014.1.2 15:54 [通商・貿易] 
 
「韓国産業通商資源省は1日、2013年の同国の輸出額(暫定値)が前年比2.2%増の5597億2千万ドル、輸入額が0.8%減の5155億3千万ドルになったと明らかにした。輸出から輸入を差し引いた貿易収支の黒字額は441億9千万ドル。輸出額と貿易黒字額は過去最大規模となった。」

外資導入と特区制度1 

GDP分配論に戻ります。
労働分配率が低く法人の儲けが多いのに、法人税が安く所得税や消費税等労働者個人の納める税の多い国(韓国)では、金融資本を持たない人・階層が痩せる社会になります。
まして外資中心(株式や金融商品保有者が外資中心)社会で法人税や、利子配当課税を安くするのでは、所得の国外移転奨励税制になります。
GDPが一見大きくても、外資が多くてGDPを分配したお金の大半が外国へ逃げて行く社会では国民生活は悲惨です。
豊かさや国力がGDP(国内総生産)だけでは(外資比率を見なければ)計れなくなっているのです。
日本の国力は国内総生産だけではなく、国外を含めた(日本企業の)総生産で計るべき(海外生産比率が5割を超える企業が多くなっています)だと言う意見が最近出ているのはこの意味で正常です。
世界中で法人税が安い国では外資率がドンドン高くなるし、逆から言えば外資比率が一旦高くなるとその影響力が強くなって、利子配当課税や法人税率引き下げ圧力が強くなる一方になります。
外資比率が上がって経済植民地みたいになって良い国・なりたい国はどこにもありません。
それでも後進国では先端技術導入のために、背に腹は代えられないの(鄧小平の言う「韜晦」戦術)で実力を蓄えるまでの間外資導入に躍起になっているに過ぎません。
外資導入必要性がない国では、参入の敷居が高いのは理の当然です。
名刹でも観光で生きて行くためには誰彼なしに「いらっしゃい」と言わねばなりませんが、本業で施設や組織を維持できていれば、敷居(参入障壁)を高くしておいて特定の関係者だけ国宝級の奥の立派な部屋に通してやれば良いのです。
このコラムでは観光立国政策は、本業の衰退を前提にした亡国の第一歩であって望ましいことではないと批判してきました。
我が国の法人税率(敷居)が諸外国に比べて高いのは、世界標準から見て恥ずかしいことではなく、国内資金あまりで外資導入の必要性が低かった・・その上先進技術国ですから、先進国の技術導入の必要性もなかった・・健全な国であった証拠です。
最近の報道では、日本でも外資比率が30%に達したと(もっと比率が上がったら良いと言うような報道ぶりですが・・)言われていますが、今後外資比率が上がればあがる程、法人税減税の要求が強くなり・労働分配率引き下げ要求が強くなって、一種のがん細胞みたいになります。
日本では藩主と領民が一体化して(藩主が自分の懐だけを肥やす目的ではなく)特産品の開発に励んで来た伝統がありますが、外資比率が高まると企業の得た付加価値を労使双方プラス現地社会・地域で共有する社会ではなくなります。
彼ら外資にとっては、生産・物流に必要な道路などのインフラ・・この典型的投資は工場団地造成とそこから港湾等輸出入基地との直結道路整備や外資関係者宿泊用や食事用の大手系列ホテル整備などには関心があるでしょうが、外資に関係のない庶民街の生活道路など裏道の充実などの投資資金や教育投資・保育所補助金、社会保障資金・景観保持コストなどを負担したいインセンチブがありません。
この象徴的施策(進出企業にとっては進出に直結しない周辺地域底上げまで面倒見切れないと言うこと・・)が深圳特区などの特区制度です。
特区制度は古代からの都市国家のやり方・・・進出先では、先ず橋頭堡として城壁でかこって特別地域を作ったことの現在版です。
中国古代は、我が国のように農業集落から始まったのではなく、商業都市国家・・未開地に進出してはそこに橋頭堡として砦を作ったことが始まりであったと書いて来たことがあります。
未開地に進出しては先端部分に砦を作って駐屯地を設け、鶏鳴にあわせて朝城門を開けて夕刻市が閉まれば城門も閉鎖して安全を守るやり方でした。
中国が開放経済化したときに提案した特区制度は、自分の方が日本等に対して未開地・後進国になったこと認めて、進出して来るのは怖いでしょうから特区・・「昔未開地進出用に作っていた昔の砦を自分で用意したので、この中で工場操業してくれたら安全です」と言う逆バージョンを提案したことになります。

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