国際運動の功罪1

朝日新聞の世界に向けた慰安婦報道は(ねつ造の意識がなかったとしても)、日本社会発展のためにどう言う効果があると思ってやっていたのか全く不明です。
国連に出掛けて行ってまで、日本にはアイヌと言う少数民族問題があることを訴えたり、慰安婦問題その他を訴えて人権勧告などを取得することがはやっていましたが、これが日本民族発展のためにどう言うメリットがあると考えているのか、必ずしも明らかではありません。
言論の自由は以前書いたとおり、自民族社会の発展に資することがあるから重視されているに過ぎず、外国へ行って自国の悪口を言って自国の国際的地位を貶めるためにあるものではありません。
言論の活発なアメリカ人や組織が日本に来て黒人問題や格差問題を大々的宣伝しに来たり、国連で主張をしているのを聞いたことがないでしょう。
言論の自由のない国では、自国を良くしたいと思っても自由に発言・発表出来ないから外国へ逃れて自国の民主化のために発言する(亡命政府はその代表的事例です)のは自国を良くしたい愛国心によると言えます。
しかし民主国家で何でも自由に発言・発表出来るし、ましてマスコミ・・言論界を支配している勢力が何で外国まで行って日本の悪口を言いふらす必要があるかの疑問があります。
言論の自由のある民主国家では、正しいと思う意見を国内で発表して、言論市場で勝ち負けを決めるべきです。
自分の意見がとおらないからと言って、(後記のとおりマスコミから報酬をもらわない多くの国民としては、裸の王様は裸の王様としか認識しません)外国で日本の悪口を言うことが、どう言う点で日本のために役立つと思っているのかの説明責任があるでしょう。
まして日本の支配的地位にある大手マスコミが大々的に宣伝していても、国民が応じないと国連など国際機関に働きかけてその日本批判のお墨付きを利用して自説の下支えにするのは狡いやり方です。
国際機関と言ってもいろんな機関に日本は官僚を派遣しているので、日本の駐在員が日本向けリポートを作成するのが常套手段ですから、財務省はIMF派遣官僚を通じて「IMF高官が増税を求めた」としきりにマスコミが報じますし、民間の格付け会社が財務省の意向を受けて増税延期決定に対してすかさず格下げ発表しています。
しかし経済実態に反した格付け引き下げをしても、(延期しない方が経済実態が悪化していたことは市場参加者の9割以上が認めざるを得ない状態でした)市場は全く反応しなかったどころか、延期決定を好感して逆に株価が上昇したことを見ても、財務省との連係プレーぶりを白日の下に曝しただけです。
実際に、ここ数日の原油・資源値下がりで資源国通貨が売り浴びせを受けて大変なことになってきましたが、経済危機になると日本円が安全通貨として逆に買われて円が上がる展開になっています。
かれら御用経済学者の言うとおりに、もしも財政赤字が日本売りになるならば経済危機になると真っ先に円が売られる筈ですが、増税延期したばかり格下げされたばかりの円が何故逆に買われるのかの説明が必要でしょう。
いつも書いているように、日本の財政赤字と日本経済の信任は関係がない・・財務省の勝手な言い分・・裸の王様の主張に過ぎず、財務省の威力の届かない国際市場では、誰も相手にしていないことが明らかになっています。
言わば恥さらし・・政府に頼まれて言われるままに格下げするなんて市場ウオッチャーとしては自殺行為ですから、格下げを発表した企業は業界の信用を完全に失ったと思われます。
朝日新聞でいえばニューヨークタイムズのアジア部門責任者を派遣していて、その人が対日報道編集責任者であると言われています。
朝日新聞が事実無根であったと慰安婦問題で謝罪しても、彼は朝日新聞の(真)意を受けて、ニューヨークタイムズは慰安婦問題の本質は軍の関与ではなく実質的強制にあると論点すり替えの記事を載せて飽くまで日本批判を展開していたと言われました。(ニュースの受け売り噂であって原文は知りません)
アメリカ人が、そこまで偏った意見なのかと怒った日本人が多かったと思いますが、実は日本関係の記事論文は日本人の良心?が主導していたと言われます。

社会変化反対運動と功罪2

以前紹介したことがありますが、成田空港反対・公害反対や高速道路が千葉に来るのに反対と言ういろんな運動が盛んなときに私は修習生〜弁護士になりましたが、この頃革新系政党に公然と所属している弁護士から参加を誘われたことがあります。
アメリカの原水爆実験に反対しているのに、中国やソ連の原水爆実験には反対しない・・日本より酷い中ソのモクモクたる黒煙の煙突群・・公害の状態には何も言わないで中ソの発展が素晴らしいと賞讃していたりするのに、何故日本の空港や高速道路普及だけに反対するのか、国際競争に遅れるじゃないかと言う心配をしたので疑問をぶっつけたことがあります。
今でもマスコミの報道を見ると、日本の津波による原発事故・放射能汚染が発生すると鬼のクビでもとったように大騒ぎで世界発信しますが、中国で繰り返されている核実験によるもっと酷い恒常的放射能汚染には全く触れません。
日本に比べて技術力の全く違う韓国や中国の原子力発電自体の大小の事故がしょっ中あってかなり悲惨な状態らしいですが、(新幹線事故は公衆に触れることから隠せませんが、それでもすぐに埋めようとしていたことがバレて世界の笑い物にされましたが、中国とはこういう国です。・・原発事故は極秘情報隔離された敷地内の不具合ですので、一般に出て来ません)秘匿されたままで全く報道されていません。
ただし、日本の原発津波被害後、マスコミが騒いだ結果全国の放射能データがネットで公表されるようになっていますが、この結果、マスコミが中韓の不都合を報道しなくとも、福島原発に関係のない中韓に近い日本海側の九州や山陰地方の方が放射能濃度が濃いことが一般に知られるようになっています。
以下、12月13日現在の東京都のデータと山陰地方のデータ比較を紹介しておきましょう。
(ご覧になりたい方は毎日10分ごとにネット公開していますので見て下さい)

新・全国の放射能情報一覧
各都道府県の4179地点の放射線量グラフを公開しています。
2014/12/13 12:50 時点の最新放射線量データです。(10分毎更新)

東京都の計5地点の放射線量グラフを公開しています。
2014/12/13 12:50 時点の最新放射線量データです。(10分毎更新)
現時点の圏内最大地点は <0.05 0.043μSv/h 東京都足立区 舎人公園 です。

鳥取県の計7地点の放射線量グラフを公開しています。
2014/12/13 12:40 時点の最新放射線量データです。(10分毎更新)
現時点の圏内最大地点は <0.1 0.077μSv/h 鳥取県琴浦町 赤碕ふれあい交流会館 です。
2014/12/13 12:40 時点の最新放射線量データです。(10分毎更新)
現時点の圏内最大地点は <0.1 0.06μSv/h 福岡県北九州市八幡西区 八幡総合庁舎 です。

こによると東京の0、5台に比べて山陰地方は軒並み1、0台ですから、山陰地方の方が、約2倍の濃度です。
この因果関係をマスコミは全く報じないで、柏市など東京に比べて濃度の濃いスポットがあることばかり大々的に報道しています。
北京での米国大使館敷地内での大気測定が有名ですが、国民の健康を守るためならば、日本の方が米国の核実験場よりも近くてしかも偏西風の影響を直に受けるのですから、日本も大使館内でこの程度のことをやるべきですが、こういうことを一切やっていません。
アメリカやフランスの原水爆実験には、昔から猛烈に反対して教科書にまで福竜丸の写真を乗せる熱心ぶりですが、中国の核実験の場合、日本に近くてしかも日本が風下にあって影響が大きいのに報道すらありません。
昔から、ビキニ環礁の核実験を大騒ぎしているし、教科書に写真などで強調されるので誰もが知っていると思いますが、場所的に見ると日本の数千km彼方の東南方海上・・太平洋のど真ん中)の実験ですから、・・日本に放射能が被害があると言う点で強調するならば、日本にもっと近くしかも西風(地球の自転によるジェット気流は西風です)に乗ってすぐに飛来する中国やソ連・シベリアの核実験の方が日本にとって被害が直接的ですから、こちらの方こそその都度外出注意などの警戒を呼びかけて騒ぐべきです。
(核実験そのものに意味があるのではなく、日本漁船が被害を受けたと言う意味で騒ぐならば意味が分かりますが・・・。)
中国では大変な健康被害が生じていて、ガン村と言われる地域が発生しているとのネット報道もありますが、これらは全てマイナー系や独立系のジャーナリストが自分で取材して来たものばかりであって、大手マスコミとマスコミに出たい文化人は一切触れません。
以下はネット情報の一例です。

中国ガン村の惨状 あるボランティア女性の報告 – (大紀元)
www.epochtimes.jp/jp/2011/08/html/d63430.html
【大紀元日本8月6日】マレーシア在住の中国系女性・唐米豌さんは2002年からの7 年間、中国のガン村で患者を支援するボランティア活動を続けてきた。2009年、彼女がガン村の惨状をまとめた文章を発表して以来、中国政府のブラックリストに載せられて、 …

ただし、ガン村は水質汚濁によるものと言う発表です・・核実験関連は当然のことながら軍事機密ですから、フリーのジャーナリストも放射能測定したり報道出来ません。
もしも強行すればすぐに拘束されてヤミに葬られる仕組みでしょう。
チベット民族やウイグル族の苦しみは、弱小民族居住地域に核実験場が集中にいる被害の面が大きいのですが、こうした具体的被害の点には一切触れないのがマスコミです。
40年以上前の話題に戻しますと、当時なぜ空港や高速道路に反対するかについても「飛行機や高速道路を使うのは金持ちだけで、貧乏人は騒音被害を受けるだけだ」と言う説明を聞いたことがあります。
勿論大工場反対も(中ソの場合には、資本家の搾取がないが)日本では資本家が儲けるだけ・・と言う説明でした。

社会変化反対運動と功罪1

私の場合、このコラムは全て素人的・・思いつき的意見ですので、専門的に研究している人にとっては、共謀罪が成立するとどのように証拠法を改正しても危険が残る・・これがテロ不安・社会不安防止と引き換えに出来ないほど大きなマイナス点だと言う指摘もあり得るでしょう。
専門家として反対運動している組織が、そこを具体的に主張してくれれば私のような物わかりの悪い弁護士も納得し易いですが、反対を既定方針としたスローガンばかり聞かされていると、特定政治利益実現のために運動しているのかな?と変な疑問を世間から抱かれてしまわないか心配です。
私のような「意識の低い?』低レベル会員のために、共謀罪や秘密保護法に反対運動しているグループは、反対内容に自信があるならば、具体的に噛み砕いた説明をする手間を惜しむべきではありません。
弁護士に対する説明さえ億劫がっていて、全く法律を知らない一般国民にどのように説明するつもりなのでしょうか?
素人には分らないから近代法の精神に違反すると訴えれば、「近代法」と言うブランドで目がくらんでしまうだろうと考えているのでしょうか?
防犯カメラの設置に対して、監視社会になると批判する人が多いのですが、防犯カメラの御陰でかなりの事件ですぐにも犯罪者の足取りがつかめて重宝していることも確かです。
逆に防犯カメラの分析の結果えん罪も解消されていますし、数日前に書いたように個人のビデオらしいですが、ニューヨーク市警の黒人殺害事件でも威力を発揮しています。
オレオレ(振り込め)詐欺等では、預金払い戻しの時間場所が払い戻し機のデータで特定されるようになっていて、しかも、その時間帯の監視カメラの映像があって犯人割り出しに威力を発揮しています。
モノゴトは社会の安全装置としての役割とプライバシー侵害との兼ね合いでしょうし、公道や大規模商店内での写真撮影から守られねばならないプライバシー性は、そんなに高いとは思えません。
立ち小便しているのを写されるのが恥ずかしいと言うような人・・あるいは何か後ろめたいことをしている人の秘密・プライバシー権?を保護するために防犯・社会の安全・あるいは自白偏重軽減のメリットと引き換えにするべき議論でしょうか?
防犯カメラ反対論者は、「自白に頼るな、客観証拠によれ」と主張するグループでもありますが、客観証拠になりそうな技術革新が進むと、それに反対するような政治運動に精出すのが不思議です。
大分前に在日韓国人擁護のためにか指紋押捺が犯罪者扱いだと言う反対運動がありましたが、今では銀行へ行っても指紋認証の出来る機械が普通ですし、自ら進んで指紋認証を求める時代です。
私の持っているアイパドは、指紋登録で起動しています。
政治運動には相応の利害集団が必ず背後にいるとすれば、客観証拠になりそうな新技術と言うよりもいろんな分野で技術革新があると片っ端から反対する運動家は、誰のどう言うグループの利益を求めて反対運動しているのでしょうか?
防犯カメラで言えば、人に知られたくないことばかりしている集団の利益擁護が、そんなに必要かの疑問です。
「近代刑法の精神」はまさに19世紀=「近代の精神」であって、21世紀に生きる現在の精神ではありません。
現在には近代とは違う現在の精神が生まれていることを、繰り返し書いてきましたが、この現世に生きている限り知らない筈がありません。
何か新技術が出るとすぐに反対するには、近代刑法の原理に反すると言うお題目でなく、何故反対するのか説明が必要でしょう。
近代工業の発達に労働現場が失われると言って、反対したラッダイト運動が知られていますが、何で反対集団は特定犯罪集団の応援をしているのではなく、自分たちが近代刑法しか知らないから、現在技術を取り入れて新しい法理論が出来るのは困るのでしょうか?
(私などはもう歳ですから、その仲間かも知れませんが・・・私は自分がついて行けないからと反対するつもりはありません。)
現在のことなら国民皆が、平等に経験して知っていますが、水戸黄門の印籠をかざすように「近代法の原理・精神に反する・・これがブランドだ」と強調すれば、(お前ら知らないだろう!と)優位に立てるからでしょうか?

えん罪と証拠開示1

大阪地検の証拠改ざん事件は、検事のシナリオが客観証拠にあわないことが分ったこと・・その証拠を実は被告人側が握っていたことが重要です。
大阪地検の証拠改ざん事件の歴史的意義は、供述・自白よりも客観証拠で勝負が決まる・・しかもその証拠共有の重要性が明らかになったことではないでしょうか?
えん罪事件の多くが被告人に有利な証拠が再審事件開始まで提出されないで倉庫に眠っていた事例が多いのですが、その視点で見ればその悪弊が露骨に出て来たに過ぎません。
大阪地検の場合、被告人に有利な証拠を隠匿していたのではなく無罪になる証拠を有罪にするために積極的改ざんまでしたことが、国民にショックを与えたに過ぎません。
元々被告人保有証拠であり、しかも本人が頭脳明晰だったことから、これがタマタマ証明されてしまったのですが、被告人を有罪にするには矛盾する証拠があるのに被告人が知らないことを良いことにしてこれを開示しないで、頰っ被りしたまま裁判を続けて有罪判決を獲得して来たことも犯罪的である点では本質的には同じです。
長年の証拠隠匿行為(証明されていませんがこの体質)の弊害が積もり積もって、検察の正義感を蝕んでしまった結果証拠改ざんまでやってしまったと評価すべきでしょう。
だから大ニュースになったのですが、上記のとおり被告人に有利な証拠があるのを知りながらこれを倉庫に眠らせておくのも根っこは同じではないでしょうか?
この種不正を正すことがこの事件の教訓であるべきですから、取り調べを可視化しても客観証拠になるべき帳簿やデータの改ざんを防げません。
この事件の事後処理として、取り調べの録音録画が中心テーマ(マスコミ報道だけかも知れませんが・・)になっているのが不思議です。
証拠改ざん行為の再発防止に必要な議論は、証拠管理等の厳密化・改ざんを防ぐためには押収と同時にコピーを被疑者関係者や弁護人に交付するなどの早期の証拠開示ではないでしょうか?
現在押収品目録が交付されますが、その中身はいろいろですから(例えば日記帳10冊と書いてあってもその内容が不明ですし書いた本人でもきっちり4〜5年分記憶していることは稀です)目録だけでは内容の改ざんを防げません。
この事件で直視し議論すべきは、有罪にするには矛盾する証拠があるのにこれを改ざんしてまで事件を押し進めようとした・・無罪と分っている被疑者を無理に勾留し続けて人権侵害を続けていて無理に犯罪者に仕立てようとしていた検察庁全体の不正義・犯罪的体質です。
従来のえん罪の議論は捜査機関も無実を有罪と誤解して起訴していたことを前提にしていますが、大阪地検の改ざん事件は無罪になる証拠をねつ造して有罪にしてしまおうとした事件です。
(改ざんしなくとも)少なくとも不利な証拠があることが分った時点から、逮捕監禁継続自体が違法であったことになり、重大な事件です。
違法な監禁を続けることが許されるならば暴力団の監禁事件と本質が変わりません・・。
権力犯罪の巣窟が体質改善しないままで、巨悪を追及している組織と言うのでは、ギャグみたいになりませんか?
最も重要な検察の体質改善がどうなったのかについて、マスコミが報じないで(少しは報じているかも知れませんが、連続しての掘り下げ記事がないしオザナリです)どこまで録画するかなどの可視化議論ばかりにマスコミ報道が矮小化されているのが不思議です。
ただし、私はもう歳(トシ)なので、公判前整理手続に関与していませんので詳しくは分りませんが、マスコミが報じないだけで、実際には、裁判員裁判手続の開始に関連して公判前整理手続が充実して、従来に比べて証拠開示がかなり進展して来ていることは確かです。
刑事裁判の公正化は、証拠開示次第にかかっているといえます。
ローラー作戦と言う言葉がありますが、大事件があると捜査機関は網羅的にダンボール箱でごっそり持って行ってしまう状態のニュースを見聞きした人が多いでしょう。
誘拐その他の一般事件でも事件発生後の周辺聞き込み、その他の捜査情報は人海戦術で大量に集められます。
この中から、検事に都合の良い証拠だけで裁判するのでは、被告人に有利なデータが提出された証拠に偶然紛れ込んでいたときに、その矛盾を追及するような例外的場合しか戦えません。
仮に周辺聞き込み情報や押収した資料全部弁護側に開示されるようになっても、そもそも倉庫一杯の資料を「勝手に見てくれ」と言われても、弁護側には人手も時間もなくシラミつぶしに見る時間がないのが普通です。
録画・録音全部・たとえば合計500〜600時間分開示されると却って困ってしまうのと同じです。
情報過多はないに等しい・・昔から「過ぎたるはお及ばざるがごとし」と言います。
捜査機関は最初に資料を根こそぎ捜査機関が持って行き、大量の人員を投入して綿密にチェック出来るのに対して、弁護人は、多くて2〜3人で共同弁護するくらいが関の山ですから、有利な証拠を見いだすのは至難の業です。
この格差をどうするかが重要ですが、私自身今のところ、こうすれば良いと言う「解」を持ち合わせていません。
さしあたり考えられるのは、科学捜査を進めて本当の意味での立証責任の転換が必要ではないかと言うことです。
痴漢事件で言えば、被告人が被害者周辺で手の届くところにいた5〜6人の一人だと言うことと、被害者がこの人に違いないと言う程度ではなく、夢かも知れませんが、触ったらどう言う痕跡が手指に残るなどの科学の発達を期待したいものです。
無実の推定があるとは言うものの、実務では検事によるある程度の立証で事実上立証責任が転換されてしまって、被告人が弁解しなければならない状態に追い込まれているのが普通です。
その一つ1つには相応に理由があるのですが、その基準線をホンのちょっとずらすだけでも大分変わって来るでしょう。

証拠法則と科学技術5(自白重視5)

実際には、人は弱い者で、いろんな状況下で刑事に迎合してやってもいないことを言えば、刑が軽くなるかと思ったりして妥協してしまう傾向があります。
平成26年12月6日の日経朝刊第一面の春秋欄には、この機微を書いています。
曰く、江戸時代、辣腕の吟味与力がある日、自分の下男に言いがかりで罪をなすり付けて試してみたところ、下男は最初否認していたがその内に罪を認めてしまったのにショックを受けて、辞職し隠居したと言う話が書かれています。
(国立公文書館で開催中の「罪と罰展」で「知った」と書いていますが、何を読んだのか出典を書いていないので、どう言う公式記録にあったのか、誰かのフィクション・・解説だったのか明らかではありません。)
良く知られているところでは、痴漢疑いで逮捕されたサラリーマンが半年近く拘束されて裁判で争っていると会社に知られてクビになってしまうことから、認めれば罰金程度ですぐに出られると言われると刑事に迎合して認めてしまうリスクがあります。
多くのえん罪事件は「素直に認めれば大した結果にならないから・・」と言う刑事の誘導に負けてしまい、やってもいない自白(刑事の描くストーリーにあわせて述べる・・自白をしてしまうことが圧倒的に多いのです。
補強証拠さえあれば良いと言う近代法の証拠法則では、この種のえん罪を防げません。
歴史と同様に事実はいろんな矛盾証拠(事実)その他で成り立っていますから、論者に都合の良い事実だけ拾い出せば一応一貫した筋立てにあう証拠もそろっています。
刑事の想定するスジ建てにあう事実・証拠だけ開示し提出すれば、矛盾はなくなりますし、裁判所は「自白が一貫していて補強証拠とも合うし自白が信用出来るとなってしまいます。
問題は大阪地検の証拠改ざん事件は、矛盾・両立しない証拠があったことから、検事がデータを改ざんしたい誘惑に駆られた結果の事件です。
パソコンなどを駆使した事件の場合、自分の作った物ですから、ここにこう言う記録をしてあった筈などと覚えています・・これが検事による改ざんがバレる原因となり、検事の命取りになりました。
従来型型実務では、矛盾証拠が滅多にある訳がありません。
満員電車内での痴漢事件のように、被害者の背後にいた5〜6人が全員痴漢する可能性があって、誰もが矛盾証拠を出せない場合が殆どです。
ところが残り全員がその場を離れていて最早特定出来ない状態で、タマタマ一人だけ標的にされてアリバイや絶対出来なかった位置関係など矛盾証拠を出せと言われても偶然背が高過ぎたり・・右手不自由だったりなどの特殊事情がない限り・・中肉中背の平均的な人の場合、反論しようがないのが普通です。
こう言う場合、裁判所は補強証拠がないと言うのではなく、(被害者が「この人に違いない」と断言する程度で?)被害者があえて噓を言う必要性がないなどと言う変な論理で有罪と認めてしまうのですから怖いものです。
こう言う運用が「やっていなくとも早く認めて罰金にして貰おう」とする自白者が輩出する土壌です。
話を戻しますと、数年前に発生した大阪地検特捜部の記録改ざん事件以来、捜査手続改革に関して流行になっている取り調べ可視化問題は、証拠としての自白の重要性を前提に自白取得過程を録音録画しよう(「しゃべらないといつまでも出られないようにしてやるからな!」とかの脅しや拷問がなかった証拠のために)と言うだけです。
全面可視化は望ましい事は確かですが、何人もの刑事が交代で調べた延べ何百時間に及ぶ取り調べ過程全般を仮に録画しているとした場合、その同じ時間弁護士は録画をチェックしなければならない、1回見るだけでも取り調べに要したのと同じ時間かかります。
ビデオ録画は書物のように斜め読みのように早送りしていたのでは、ビデオが警察に都合良く編集しているのかどうかを見破ることは出来ません。
まして気になるところを巻き戻して(他の供述や帳簿等と付き合わせてみるには)何回も見直したりすれば、取り調べ時間の何倍も時間を取られます。
録画を見たり聞いたするのが、弁護業務の全てではなく、その他膨大な資料の読み込み証拠のチェックや面会に行っての打ち合わせ時間などを考えれば、天文学的時間を要することになります。

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