高齢化と社会保険の赤字9(矛盾報道の害)

新薬や高額機器に対する保険適用が増えて来た結果コストが上がり、あるいは一定額以上は無料にしたり、貧困者の負担を軽くするなどを決めれば、その分それに対応して一般の保険料を上げるべきであって、これが政治的に無理ならば・・国民が同意していないと言うことですから、シビアーに言うと国民意思に反した決定をしていることになります。
「保険料値上げはイヤだが税金で賄うなら良い」と言う意見が論理的にあり得るのかも知れませんが、負担名目が違うだけで最終的には国民負担になる点は同じです。
税なら法人税、固定資産税その他が含まれるから自分の負担率が低くて得だと言うのでしょうが、(可哀相な人を救うのはいいが自分が負担するのはイヤと言う気持ちが背景にあります)結果的に公的施設・文化振興などの整備に回る費用がその分減少するので、国民が薄く広く負担する点は同じです。
ただ、朝三暮四の故事と同じで、目の前で自分のお金が出て行かなければ良いという気持ちもあるのでしょうか?
とは言うものの高額医療に対する保険適用を認めて行きあるいは、可哀相だからと免除対象を増やして行くと、増やした分だけ保険料を上げない限り保険は赤字になるしかありません。
かと言って赤字だから明日から保険給付出来ませんとは言えないので、赤字分は踏み倒せないし、実際に踏み倒していませんので、国税で補填しているので赤字とは言うもの収支は均衡している筈です。
赤字、赤字といつも騒ぐので大変なことになっている印象ですが、経理的に収支均衡しているに決まっているので、収入源が保険掛け金だけか国税によるかの違いです。
国税からの収入分を赤字と騒いでいることになります。
保険赤字が如何にも悪いことのように言う意見は、保険は保険収入だけ賄うべきと言うに等しい論理です。
民間ならば当然条件ですが、公的保険の場合、保険料が保障額比例ではなく収入差による掛け金設計ですから、収入の基礎からして経済合理性を無視しています。
支出の方も掛け金に関係のない病種によって、負担率の差を付けるなど、その他各種優遇措置の積み重ねですから、収支計算のときだけ保険論理を持って来て均衡させろと言うのは無理があります。
赤字と言っても実際には収支均衡していて、収入が保険料だけで賄っていない=不足分=税投入と言うだけですから、不足の原因が社会福祉政策によるならば、その分に税を投入するのが何故赤字と言い、悪いことのように言うのか分りません。
公立小中学校の経営を独立採算にして、税を投入しているから赤字を何とかしなくてはならないと言っても笑い物です。
元々税で負担すべきものは税で負担するのが当たり前のことでこれを赤字とは言わないでしょう。
赤字のうち保険制度に関係ない、福祉政策分は税で見るべきですから「赤字」の中身の分析が必要でしょう。
赤字のうち,保険料をアップすべきものをしない分は保険設計者の怠慢・ミスですし、政治決定で貧者の保険料を下げたり高額医療費の自己負担を下げているならばその分は税で見るべきです。
税で見るべき保険赤字=税投入であるとすれば、これを何とかする必要があると言う意見は、税投入をなくせと言うに等しいでしょう。
何かあると可哀相だと言う報道ばかりで誰も反対出来ない状態・・やっと保険適用が認められたと言う・・如何にもこれまで適用が認められなかったのが遅れた状態であるかのような報道を繰り返していながら、他方で保険赤字を批判する矛盾したマスコミ論調は、子供のわがままを大人が言っているような姿となります。
マスコミは中立であるべきですから、相対立する主張を併記しても良いのですが、併記ではなくある場面では患者家族の苦労を報道してやっと高額医療に保険適用が認められて良かったと言う前向き記事ばかり連載しておいて、かなり経過してから、赤字論を展開する・・このときは社会保険庁の役人がだらしないと言うイメージ記事中心になっていて政治的決定による本来の赤字の原因を全く書かない・・これでは両論併記ではないでしょう。
中立→併記するならば、高額医療の自己負担減額を認めるかどうかのときに「これを認めると国民負担が年間これだけ増える」と言う紹介こそが必要でしょう。
上記のとおり保険の赤字とは殆どが国税注入の言い換えですから、保険の経済原理を離れた社会保障コスト(生活保護者の無料化や障碍者の無料化などなど・・透析コスト)は税で負担すべきであるとすれば、赤字批判=税投入批判ですから、一方で税投入するしかない免除決定に賛同しておきながら、赤字解消=税投入反対の議論自体が矛盾です。
赤字論は透析などの高額医療に保険適用を認めるかどうかの議論のときに紹介すべきです。
赤字分がよくないと言うことは税投入が良くないと言う言い換えですから、収入源のうち税投入をやめるならば、保険料の増額しかないし、これもイヤならば、支出を抑える・・高度医療の適用を否定し高額医療の負担減免措置等をやめるか縮小するのどちらかはっきりした両論併記すべきです。
今の赤字論は、・・「可哀相だ」と言いながら、自分がお金を負担することを嫌がって「赤字,赤字(税投入いや)」と言っているに過ぎません。
マスコミは国民がわがままなので仕方なしにそのとおり矛盾した報道をしていると言うのかも知れませんが、それならば、同時に矛盾記事を載せるべきです・・そうすれば国民はどちらが良いか合理的判断をすることが出来ます。
これをしないのは、マスコミが中立義務を放棄して一方(可哀相論)への肩入れをしているからではないでしょうか?
「高額医療の免除を認めるとその穴埋めがどうなる」と言う子供でも分る論理を報道しない・・見ないことにしていても支出が増える一方ですから、赤字が累積して行くのは当然です・・。
その辻褄合わせに「高齢化が原因だ」とすり替え合唱している姿になります。
マスコミが合唱していて異論が全くないときには、大方怪しいのが普通です。

高齢化と社会保険の赤字5(透析の場合1)

話を1月24日まで書いて来た保険財政に戻しますと、保険医療費の増加・赤字化は高齢化だけが原因ではなく、医療サービスが充実したことが結果的に利用者急増・・医療の充実→長寿化を招いたのであり目出たいことです。
人命尊重で金に糸目を付けなかったことが国民の生命を救い寿命を延ばしたのであってそのために医療費が膨らんだのは当然です。
最近では、ちょっとした腰の痛みでも、(もしかして脊椎狭窄症かな?)と昔なかったMRIやCTスキャンなどを気楽に使うようになっています。
念のために検査をしておくことが1000人に1件の確率でも重大な原因を検出出来るメリットがありますが、そうした検査数の増加に比例して医療費が上がっている面を否定出来ないでしょう。
要は千人〜万人に一人の助かる人を救うためと医学データ蓄積のためには、残りの万人に無駄な高額医療機器利用を進めた方が良いかの政策判断です。
「国民の命を守るために金に糸目を付けない」と決めるのも、政府・国民・・一家で言えば家族価値観・・1つの立派な態度です。
金に糸目を付けずに医療費を使うと決めた以上は、相応の自己資金投入→その他出費抑制・・保険や社会保障の場合、掛け金増額か税金投入しありません。
障害で生まれた子が昔10日くらいの寿命だったのが数年さらには10年に伸び、あるいは、4〜5年しか生きられなかった難病者が15〜20歳まで生きていて医療や各種療養施設利用期間が長引くとこの期間延長に比例して莫大な医療費や社会保障費がかかります。
社会保険・保証費の増加要因には、生まれつきの障害児や若いときの糖尿病や心臓発作その他昔はすぐに死亡していた多くの病気でも助かるようになって、その後定期的に何回も医療機関を利用するなど(透析患者の場合が典型です)あるいは延命装置が発達して最後の医療を受ける期間が長くなったとか、あるいは高額医療が増えているなどのいろんな要因が考えられますので、これらを分類して国民に示すべきでしょう。
例えば従来4〜5歳での死亡だったのが高度医療の発達で20歳まで生き延びるようになり、5〜60台から10年前後透析を続けていると医療費が巨額であるばかりか、社会全体の平均高齢化アップになりますが、この種医療費は高齢者が使っている結果ではないのですから、高齢化による医療費増・・「老人が一杯医療費を使って赤字になっている」かのようなイメージ宣伝とズレていませんか?と言う問題提起です。
1例として透析患者のコストを紹介しておきます。
以下はhttp://www.zjk.or.jp/kidney-disease/expense/dialysis/からの引用です。
「透析治療にかかる費用
透析を受けた場合の費用負担
1ヶ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円、腹膜透析(CAPD)では30~50万円程度が必要といわれています。このように透析治療の医療費は高額ですが、患者の経済的な負担が軽減されるように医療費の公的助成制度が確立しています。透析患者は、必要な手続きをすることで次のような制度を利用することができます。
医療保険の長期高額疾病(特定疾病)
高額療養費の特例として(一般の高額療養費とは異なる)により保険給付され、透析治療の自己負担は1か月1万円が上限となります。
(一定以上の所得のある人は2万円が上限になります。外来・入院・薬局等、それぞれでの負担となります。また、入院時の食事代は自己負担です。)
透析患者さんの平均年齢は、前年67.2歳から0.3歳上昇し67.5歳、導入患者さんは前年とほぼかわらず、69歳でした。
以下はhttp://www.qlife.jp/square/healthcare/story50267.htmlからのいんようです。
日本透析医学会発表 日本の透析患者数は約320,000人(速報値)[ヘルスケアニュース] 2015/07/10[金]

以上による透析患者は、年間500万円前後の医療費を使っていても自己負担は12万から24万に押さえられている状態です。
32万×500万=1兆6000億の巨額負担です。
いろんな高額医療費に対して、患者が1万か2万しか、負担しないと決めた場合、その分を、保険掛け金を引き上げないと赤字になるのは当然であって、高齢化が原因ではありません。
透析の一例を挙げましたが、高額医療は透析に限らず各種難病等でゴマンとあるので、難病等の多くは患者負担が低額に抑えられている以上は、保険掛金を上げないで、ドンドン難病認定→負担低減化して行けば、保険財政が赤字になるのは当然であって、これを高齢化原因と誤摩化しているのではないかと言う疑問を書いています。

消費税増税延期と国債信任(マスコミ報道の中立性)1

マスコミによる失われた20年論の外に、慰安婦問題で如何に日本評価を貶めるかに腐心していたことが明るみに出ましたが、昨年末から問題になっているNGOによる日本の児童買春が如何に酷いかの世界拡散努力などで、あらゆる分野で日本が如何に道徳的に劣っているかや、もう日本は駄目だと国際的に悪宣伝している様子です。
1連のマスコミ世論によると、イザ国際経済危機が来ると、危機時に世界一脆弱な日本円が暴落しなければ辻褄が合わないのですが、「危機時の円高になる「珍?」現象をマスコミが隠すことも説明することも出来ません。
日本マスコミが世界のマスコミを籠絡して日本駄目論を如何に展開しようとも、(自分の意見を世界に拡散しておいて、これを引用する世界のマスコミや国連報告を再引用して、国連でこう言われていると自分の意見の正統性を確保するやり方)為替市場を見れば、事実に基づかない限り裸の王様のようなものです。
裸の王様がくしゃみをしているのに、なお裸であることを認めない・・イソップ童話の先を行っている状態ですが、市場の判定を無視して・・日本株安=アベノミクスの失政と批判するばかりです。
(経済現象の見方は、多種多様にあるべきなのに、そろって「失われた20年論=日本駄目論」を私はこのコラムで孤立無援?でこれを繰り替えし批判して来ましたが・・日本は大変だ大変だと煽る論調に対する迎合論文ばかりで異論が1つも出ないこと自体が学問の世界として異様で、信用出来ません。
マスコミに採用して欲しいエコノミストは・・中韓で流布している日本沈没論的論調・・に合わせない限りマスコミに採用されないから自己正当化のために自分の内心の考えまでそれに合わせてしまう・・仮面化・迎合するしかない状態に陥っているのでしょうか?
恥ずかしいことです。
日本マスコミを震源とする世界の一致した日本低評価論にまんまと引っかかった中韓が、日本を見くびって反日で中韓急接近したのですが、今回の波乱局面では日本の実力が明らかになって、日韓スワップ協定再開の必要性を実感していますが、今更日本の援助を頼み難くて困っています・・自業自得です。
日本マスコミは、反日だと言う意見が多いですが、外敵に日本を見くびらせて陥れる遠大な策略を弄していた本当の愛国組織だったと言う評価が後世でて来る可能性があります。
人民元下落の危機で世界が大混乱に陥っているのに、信用下落の震源地になっている人民元とのスワップで何を保障してもらおうとしているのか?子供にも分ることですが、韓国はマスコミ報道をそのまま信用したのか?反日に猛進して日本との協定を放置して中韓スワップ協定で安全と妄信してしまったのですから喜劇です。
企業信用で言えば、金持ちとの相互保障ならば、信用力が高まりますが、倒産直前企業同士で相互保障しても意味がないのは当然です。
だからこそ、個人でも金持ちや有力者と親しいのが自慢になるし、貧困者と親しいと自慢する人はいません。
世界中が日本を頼りにしている・・、TPPに限らず、今や日本の信用を抜きにしてアメリカは指導力を発揮出来ない状態が起きています・・この辺は、日本の補完作用として昨年から、連載中でしたが、そのうちそのテーマに戻ります。
こう言う主張は私の個人意見でしかありませんでしたが、今回アメリカの金利上げに伴う動乱に際して日本円だけが上がる実態から日本の実力が(縁故や政治工作によらない)市場で証明されました。
未だにマスコミは世界に流布させて来た日本経済破綻論・・もう日本は駄目だ・・先がないと言う日本の評価を下げる方向で頑張っています・・。
この説明のために株価が下がったじゃないかと言い、格差拡大・・生活保護受給者が増加していることを傍証にしたいのか?・・・・地方や弱者に好景気が波及していないと言うお決まりの批判です。
好景気は時流を先取り出来た(技術革新に成功したり経営手法革新)企業群から始まり、これに適応して製品対応出来る下請け企業関連から始まるのは当然であって、旧態然とした企業の多い地方に即時に波及するのでは、逆に技術革新に遅れたゾンビ企業の温存になって日本の将来にマイナスです。
コンビニのような身近現象を見ても、都会から始まり地方へ順次波及して行くのには何十年もかかっています。
好景気になってから半年〜1年経過で地方に波及していないないと言う批判は、外国に出掛けて1年後に帰ったお父さんが妻に対して「家を出るとき10歳だった子供がまだ20歳の働き手になっていないじゃないか」と批判しているような議論でしかありません。
モノゴトには一定の時間が必要なことを無視した議論です。
好景気と言うが実質賃金が下がっていると言うマスコミ論調が続いたときに、批判意見を書きましたが、多忙になると、正規雇用をすぐに増やさずに非正規から臨時採用が始まるので、労働者全体の平均賃金が逆に下がることを書きました・・最近私の批判が効いたのか?「実質賃金が・・」と言う誤ったマスコミ・エコノミスト主張が急激に減りました。
無職の人が働けるようになった・・既存末端パート・アルバイトの労働時間が増えることから始まると言うことは、弱者から先に恩恵が広がっていることを表しています。
マスコミはこの実態を逆に平均賃金が下がったと繰り返し主張していたのですが、私の批判によれば、最低弱者の収入底上げが進んでいることが裏付けられますが、未だにアメリカに存在する格差問題が日本でも広がっている・・自分で社会実態を見る能力がなく・・欧米の意見をそのまま主張すれば良いと言う戦後思想の姿勢?で格差社会の旗を掲げたままです。
このようにマスコミは特定立場で?いつも日本を悪く書けば良いと言う基礎的姿勢があります。
国際格付け会社が、1昨年の安倍政権の消費税アップ先送り決定時に日本の財務省やこれを応援するエコノミストの意見に副うように、日本国債の格付けをイキナリ引き下げましたが、その直後に増税先送りを好感した債権市場で日本国債の人気が上がり実効金利が下がってしまいました。
この結果、・・・「格付け会社って誰に頼まれてやっているんだ!」と評判になりました。
リーマンショックのときにその原因企業が直前まで高格付けだったことが問題になっていましたが、顧客の注文どおりの意見を書く、格付け会社が何のためにあるのか不明と言う状況になっています。
格付け会社よりは、今ではCDS実効金利(保障金利)相場が実際の市場格付けになっているでしょう。
不動産鑑定が実勢相場を表さないことは常識で、融資や企画立案の実際には行員の市場調査によっているのですが、イザ稟議になると役員の責任回避のために無駄な不動産鑑定を経由するのが普通です・・。
今の格付け会社は財務省やマスコミの・・顧客の意を受けた、不動産鑑定書のような形式的役割でしかないのでしょう。
中国のAIIBが国際格付けを得られないと言われていますが、これは国債金融市場を牛耳っているアメリカの圧力によるところが大きいだけで、中国とアメリカの結託・・裏取引次第でどうにでもなるもので(アメリカは基本的に親中ですからいつでも、今タマタマ喧嘩しているだけで、すぐに裏で手を組みますから)安心は出来ません。
真実の債権価値は、金融市場で決まる時代になっていますが、AIIB発足にあたってはなお形式的格付け必要性が残っているので、(企業で言えば実勢価格と関係がないが鑑定士意見書がないと役員会決裁出来ないような矛盾で)中国が苦しんでいるだけのことですから、国際格付けを得られないことばかり大きく評価し溜飲を下げているのは間違いです。

アメリカ金利上げと円高(基軸通貨とは?)1

アメリカ発の金利変動の場合、世界規模で始まるのですから大変な事態です。
ついでに、10年ほど前からこのコラムで書いているように、日本は約20年間以上も最低金利国ですから、実は日本が経済連鎖の頂点に立って久しいのです。
(大きな声では言えませんが,アメリカは実は2位です)頂点の日本が,中国が偉そうなこと言うならば、金利を少し挙げたら、すぐに参ってまう仕組みです。
日本に原爆がなくとも、金利さえ上げれば(表向き威張っていても中国を含めた本来の)弱小国はひとたまりもないことが明らかです。
中国が参ってしまうと影響が大きくて大変だからと、(大き過ぎて潰せないだろうと言う聞き旧した中国の開き直り論で)アメリカが猶予して来たのですが、中国が実力もないのに世界支配意欲を引っ込めないことから、遂に満を持してアメリカは昨年12月に金利引き上げ断行しました・・。
それでも世界に対する影響を考慮して1回に予定どおりに大きく上げずに來年内に4回に分けて行なうと言うものでしたが、それでも中国にとって劇薬のようでした。
中国はすぐに始まったドル流出に耐えきれなくなって、(12月だけで1000億ドル超の流出と言う公式発表・・1説には1900億ドルとも?・・・実態はもっと多いでしょう・・ですから大変です)年明け以降中国発の経済危機が始まりました。
この危機勃発によって・世界中から連鎖的資金流出→アメリカへの資金還流が始まった=ドル高ですが、(ユーロも近日中の金利下げ発表で、ユーロ切り下げが始まっています)日本円だけが逆に円高基調になっています。
この円高とはドルに対する円高ですから、アメリカが金利を上げても元々アメリカより金利の安かった日本の円保有の方がまだ有利であると市場が判断していることを表していますし、危機混乱時の世界の資金の逃げ場として絶大な信用があると評価されていることが分ります。
アメリカの方が日本より信用があれば、(経済状態がよければ・・)日本より元々金利の高かったアメリカに資金が逃げれば安全な上に高い金利をもらえて有利です。
言わば(こんなことを言うとアメリカににらまれるので大きな声で言えませんが、波乱になるとアメリカより金利の安い日本に資金が逃げて来る事態は、経済実態から見ると)世界の基軸通貨の地位が日本に移動したかのような現象です。
10年ほど前のコラムで国の力は金利動向で現れる・・日本より金利を低く出来る国はない・・もしも日本が金利を上げて日本より金利の低い国になったら、世界中のどこの国の経済も持たないだろうと言う趣旨を書いたことがあります。
そのころから、既に日本は実質世界一の強国・・押しも押されもせぬ世界支配者になっていたと言う意味でかきました。
基軸通貨とは、中国のように?自己宣言・・威張ったり(昨年秋にIMFの公式通貨に採用されましたが・・)政治工作さえすればなれるものではなく、世界の通貨市場で最も信用のある通貨と認めて成立するものです。
市場評価・・これはどんなにマスコミが一致してデマを流しても市場は自分のお金がかかっているので義理や政治力・・デマに従いません。
日本マスコミが如何に日本が駄目だ「失われた20年」と事実に反した宣伝し,世界のメデイアがこれにに協力して一致した言論を展開していても(違う意見をマスコミのせない)事実に反している限り、イザとなれば投資家は損してまでこれに合わせた動きをしません。
マスコミ・エコノミストの一致した意見に反して、逆にこの20年間で日本が世界における盤石の経済的地位を確立していたことが市場の動きから読み取れます。
東京株式市場では、株式が乱世の円高想定の結果下がっていますが、日本・日本企業の評価が下がってのことではなく、逆にイザとなれば頼りになる・・日本に対する高評価による現象です。
株式下落の結果だけ見て日本のエコノミストやマスコミが「それ見たことか!」と騒ぐのでは、「ミソも糞も一緒にする」と言う無知蒙昧な人間のようです。
株価下落には、経済基礎が駄目でドンドン資金が逃げて行く倒産危機の下落と、日本のように危機時の緊急避難先として資金が集まる結果、円高になって株価が下落する場合の2通りがあります。
円が対ドルでⅠ割上がると外資にとっては株価が1割下がって、手取りドル評価がトントンです。
もしも東京市場の株価がそのままだとドル表示で1割暴騰したことになるので,「今のうちに」と利益確定売りが出て均衡点に落ち着きます・・これが株価下落の原理です。
これに対してブラジルのように通貨が3割下がって株価が同じか下がった場合、投資家にとってはダブルパンチ・悲劇的結果になるので、売り逃げに殺到して収拾がつかなくなり大混乱になります。
上海市場で年明け早々、売りが殺到してサーキットブレーカーが連続したのはこの原理によります。
日本の株価下落と中国のように人民元買い支えに必死の株価下落とは意味・原因が違います。
リーマンショックでも日本の被害が一番少なかったのですが、資金避難先として円高になった結果、日本企業が苦しみましたが、将来の見込みなくて下がったのとは違うので、約7年経過してみるとやはり緊急避難先としては世界で最も頼りになる国だったとして今回も選ばれています。
「イザというときの友こそ真のともだち」と言われるように、危機に際して頼られる国が本当の実力者です。
反日暴動以来、日本が急速に投資引き揚げをした結果、今では日本の対中貿易比率はGDP比2、44〜3%未満(いろんな数字が出ていますがこんなところです)に下がっていて、日本が貿易比率を下げた後で、中国に深入りした韓国(貿易比率30%台?)、ドイツ、欧州諸国や豪州その他新興国の被害(デフォルトになっていませんが、急速な貿易縮小による被害)は計り知れません。
この煽りで原油その他資源が暴落に近いほどの下落に見舞われ、資源国は通貨下落・・軒並み経済危機直前状態になっています。
(韓国も大変な事態でしょう)
勿論回り回って貿易縮小の被害を日本も受けますが、直截被害を受けた国とは桁違いの軽微さです。
リーマンショック〜中国危機など世界危機が起きるたびに日本の実力はいやが上に増して行く・・傷が浅くて資金を持っている「日本に頼るしかない」と言う認識を世界中が新たにするより外ありません。

高齢化と社会保険の赤字3(感謝する心1)

我が国では何かありがたいことがあったり成功すると、何となく神様に感謝する気持ちになる人が多いと思いますが、(今ではそんな古い人はいない・・私のような高齢者だけかな?)古来から、やおよろずの神々が空間に満ちあふれていて、神と民族の一体感・・渾然一体で来たので、「御陰さまで・・」と言う民族共同体全体に対する感謝の気持ちと繋がっています。
感謝精神の有無・程度は、何か良いことがあったときに「望外の幸せ」「有り難いこと」と受け止めるか、当然の権利と(冷静に?)受け止めるかの日頃の心構えの違いかも知れません。
以前、権利と恩恵の関係を書いたことがありますが、特定個人から(将来のための先行投資的場合を除いて純粋な)無償サービスを受けるのは100%・拠出者の善意恩恵によることを疑う人はいないでしょう。
ところが組織からの贈与・恩恵になるとルールで決まった以上は、「貰う権利がある」と言う気持ちになる人が出て来ますが、組織構成員全体からの善意や助け合い意識によるものである本質は同じです。
拠出者と目の前で配布している人が別になっていて距離がある場合、ややこしくなるようです。
目の前の担当者を基準にする人は、救援物資が届くとお前に貰っているのではない・・「受け取るのは俺の権利だ」と言う意識が強くなるし、背後にいる多くの人の善意を気にする人は「有り難い」と伏し拝んで受け取る気持ちになるでしょう。
生活保護費の受給や障害者に年金を支給する、高額医療を無償にするなどは法(国会)で決めた以上は、受給資格者にとっては権利です。
この権利は、生活保護担当役人による「お気持ち」で戴くのではなく、もっと上位者(国言えば国会、個人事業で言えばオーナーなどトップ)の決めたことによるのですから、末端担当者に対しては、(路上生活者が「俺はオーナーからただで食って行けば良い」と言われているんだ」と言うのは、権利主張であることは間違いないでしょう。
この場合もオーナーの無償の好意に寄りかかっている大もとは変わりませんので、主人の気持ちが変わればおしまいです。
生活保護等は、国家意思として国会で決めた限度で公務員がこれに従う義務があり、国民は受給資格に該当する限度で(上記例で言えば店員に対するのと同様の)公務員に「請求する権利」があります。
ただし、これを権利と言うのは技術的なものであって、100円のものを売った場合100円の代金請求権があると言う天賦不可譲的な?権利とは、本質が違っています。
生活保護の不正受給批判が高まったことによって、最近窓口規制が厳しくなって来ていると言われます。
他方、本来受給資格があるのに恥ずかしいから・・人の世話になりたくないと受給申請しない人を掘り起こして「権利」だからと生活保護受給申請を応援するかのような動きも目立ってきました。
権利を知らずに眠っている人を掘り起こして救済するのも弁護士の重要な職務と言えばそのとおりですが、権利の成り立ちの違いを違いとして理解した上で権利要求する精神が必要です。
話が飛びますが、図書館に週刊誌も新聞もあるから国民みんなが図書館で無料で読めば良いと言う運動をして、徒歩圏内に図書館設置運動をした場合、出版業界が成り立たずひいては著作者も食べて行けないので知的活動が衰退します。
保険制度も元は・・病院へのアクセスが悪いその他の時代の設計ですから、(保険制度が出来た頃には都市集中が進んでいませんでした)余程のことがないと病院まで行かない前提で設計されていたのですが、人口の都市集中が進み、町中の徒歩圏内に多数のクリニックが出来るなどアクセスが良くなって、健康意識も挙った結果、受診率が挙り、自分で食事を工夫するなどして直せばいい程度の軽い体調不良まで何でも暇つぶしに?病院に行くようになると保険制度の設計で収支計算してしていた前提基礎が狂ってきます。
(クルマや火災保険や生命保険でも、事故発生率を統計的に計算して保険料率を決めて行くものです)
大病院受診は紹介がないと割増料金を取れるようにするなど利用率を減らすように工夫するなど制度設計を見直す必要が出て来ます。

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