格差とは2(平等化進展)

フラット化は悪いことばかりではありません・・何よりも人権活動家の渇望する平等社会の実現ですから,フラット化に対して何故不満となるのかを考え直す必要があります。
体力差、身長差、不器用さ近視遠視、難聴その他心神のハンデイなどいろんな能力差があってもその差を最小化して同じように仕事をし、楽しめるようにして行くのが近代工業化・・豊かなよい社会の指標であり基礎目標です。
近代工業化の進展とは、これに比例して社会弱者の地位が補強されて男女差や身障者、視力差、高齢者など能力格差を縮小し、(記録媒体も記憶力の補完です)フラット化して行く歴史です。
人権意識さえあれば平等になるのではなく、女性・妊婦や子育て中の人、高齢者や病者・・ガン患者でも働ける医療環境・身障者用の補助具の発達などすべて格差縮小のためにあるといえるでしょう。
クルマ発達は足の早い人遅い人、あるいは荷車引きに必要な人力の格差をなくし・特殊車両・フォークリフトや銃器類の発達も体力格差を軽減したことは明らかです。
ハンドルがパワーステアリングになって、ハンドルサバキが楽になって運転する女性が増えました。
(以前書きましたがコンビニその他あちこちでトイレの設置が進んだことも大きいです)
自動運転技術が進めばもっと年齢差などを補強して行けるでしょう。
人権意識の発達で女性の運転が増えた訳ではありません。
流動食や離乳食や保健食品の発達も消化吸収能力の弱い人と強い人の格差補強であり、リハビリその他ありとあらゆる分野の科学技術の発達は能力格差を補填するものと言えます。
能力格差縮小に起因する平等化進むことと職業分化に目を転じると、重量物取り扱いには腕力不要、製鉄など高熱危険労働も遠隔操作が普通になり、パソコンの発達はそろばん等能力差や筆記能力差をなくし筆跡の上手下手の格差や漢字を読めるが書けない人と書ける人との格差もなくしました。
憲法14条の「平等」とは能力差による結果不平等を認めていると言いますが、他方で出来るだけ各種道具(眼鏡や補聴器あるいは義足の使い勝手の良さ)の工夫によって身体的能力差を克服する試みが推奨され身体能力による待遇格差をなくす方向に進んでいます。
高齢者が移動し易いようにあちこちでエレベーターやエスカレーターや休憩場所を設置しあるいは重い荷物を女性も持てるような補助具・・ロボット系の普及運動もみな同じです。
今流行の在宅勤務も子育てや介護しながら働けるようにする・・いろんなハンデイのある人も働けるようにする・・社会のバリアーフリー化こそが格差縮小の試みの基礎です。
その上工業製品に限らずいろんな分野でのベルトコンベアー方式(精神)の普及によって、事務作業その他の分業化(例えばテレフォンガールの大量雇用など)も進んでいます。
上記のように長い目でみれば、能力格差による結果不平等縮小克服・・スポーツ選手と違い、補聴器をつけていようと眼鏡で視力を補正していようと、薬物療法をしながらでも元気に働いた方が良いルール・・フラット化は抗し切れない趨勢ですし、それが人類の正しい目標と言うべきでしょう。
格差縮小と格差拡大論がここで何故問題になるかのパラドックスですが、フラット化によって、従来20〜40〜70点程度の人が能力格差に応じてピラミッド型の地位・収入を得ていたのに身体能力補完具の発達によって収入差がなくなって来た不満が基礎にあるからです。
10〜20点の人も60〜70点の人と同じ仕事ができるようになったならば60〜70点の賃金にすれば文句なしですが、そうはならないで競合(希少性の軽減)の問題もあって、実際には、みんな平均3〜40ポイントの賃金になってしまうことになり勝ちです。
先進国間の国内競争だけだと一定の閉鎖空間なのでその程度で収まりますが、新興国が参入するようになると国際低賃金競争の煽りで本来の能力水準・・20点の人ができる仕事なら20ポイントの賃金にならざるを得ません。
フラット化される水準が20点〜25〜30〜35〜40点と順次上がって来て従来大卒なら中間層以上・・大丈夫と思われていた人たち(囲碁さえも人工知能に負ける時代です)も単純労働に飲み込まれようとしています。
今や大卒の現場系が増えて来て、エリートだけがフラット化・低賃金化から逃れられている状態ですから、大変なことはそのとおりですが、これを格差反対と言ってレバ済むかかは別問題です。
人間の能力構成は富士山の裾野のような分布のママですが、比喩的に言えば従来5〜60点の人は5〜6合目あたりまで登って能力相応の景色を見られたのですが、現在ではそう言う人もみんな1〜2合目の裾野あたりまで行くと、その次が絶壁になっていて自分の能力を発揮出来るもっと高い場所まで上がれないで景色の見えない裾野付近で単純労働者の仕事しかなくて低迷している状態です。
これはどこの国でも同じですから、格差問題を主張する以上は30〜40〜50〜60点の人にはその点数どおりの展望を開けるような社会・・少しずつの能力差に応じた処遇が用意されないと・・2〜30点の次は80点以上の人しか仕事がないと言われると向上努力する意欲を失う人が多くなります。
なだらかな上り坂ならば2000メートルの頂上付近まで時間をかけて登れますが、500メートルまで登ってみるとイキナリ1000メートルの絶壁があるとそこですくんでしまいます。
かと言って格差をなくすためにエベレスト登頂能力のある人の登山を禁止する・・高度な研究や便利な道具を考案したり新たな事業モデルを考え出すのを禁止するのでは人類のよりよき生活が保障されません。
高度研究者やジョブズ氏や野球のイチローのような特定の成功者・・比喩的言えば80点以上の人の給与・報酬が高すぎないかの批判が格差問題です。
画一的事業化によって、4〜5〜6〜70点の人に払っていた賃金を一律20ポイント前後に落とした差額巨額収入・・考案者利益→知財収入と事業化した資本家の利益→金融関係の高額報酬と一般労働者との格差が目立ち過ぎるようになりました。
ノーベル賞受賞者への賞讃気分でも分るように、研究開発や新規事業モデル開発成功による利益はまだ納得出来るが、この成功者に群がる周辺人そ・・秘書や幹部社員・・金融関係者の報酬が高過ぎる批判がこれの表現です。
格差反対論とは、フラット化とセットになった80〜99点台の高収入者との格差を言うとすれば、有能者がより良いものを造って行こうとする行為を批判出来ない「成功するな」【努力するな」とは言えないとすれば、せいぜいその周辺で働く人を批判するだけとすれば、無理があります。
天才的創業者や発明家がいても、一人では何も出来ないのでその周辺人材が必須でこれをなくす訳には行きません・・真田幸村には十勇士がいた・・勇将の下に弱卒無しと言われるように、これを非難していても解決出来ません・・何となくやっかみの域を出ない印象です。
反対論の中核は中間層が単純労働者化・底辺労働者化して行くことに対する不安・不満でしょうが、庶民や子供が不安・不満の表明なら分りますが、解決すべき役割の政治運動家が不安を煽っても何の解決にもなりません。

格差とは?1

「格差反対」と言うスローガンを掲げてデモをしているだけでは何も解決出来ません。
解決出来ない不満を移民反対論にすり替えていると思わます。
その意味では私の言う移民増加反対論とは目的が違います。
私の移民反対論はクルマの自動運転化その他ロボット化進展によって、単純労働人口が過剰になる一方だから国民レベル底上げが必要・これに苦労する筈なのにあえて移民・底辺労働中心の移民を積極的(受入れ用に税を使ってまで実習)に入れるのは間違い(自然に来るのを排斥しろと言うのではありません)と言うに過ぎません。
これまで何回も書いていますが、格差反対論を唱えるならば巨大な比率を占める格差反対論の中核である「元」中間層の雇用をどうやって創出するかの提案が必要です。
移民排斥は一見労働者が減る方法→単純労働の低賃金化防止になりそうですが、経済原理に反した高賃金政策(中国が強制的に最低賃金引き上げた結果、工場が東南アジアに逃げて行ったのと同じです)は企業が国外に逃げてしまうので結局雇用が守れなくなります。
上記の結果、仮に移民排除してもアメリカやイギリス白人の賃金が上がるとは思えませんが・・。
賃金増狙いではなく職を奪われていると言うならば、移民同様の低賃金でもあるいはきつい職場でも働く意欲があるかどうかにかかってきます・・同等の条件で働く意欲があるならば、企業は言葉も習慣も通じる元々の地元民を優先的に雇うでしょう。
従って「職を奪う」と言うスローガンは自分達の労働意欲が低いことを自己証明していることになります。
わが国の場合介護士でなんであれ鳴り物入りで外国人労働者を受けれいても日本人労働意欲の高さが・・介護士不足が喧伝されていますが実際には、なる人が増えて来たので外国人労働力定着の事実上の排除原因になっています。
補助金を使って誘致しているのに?外国人が定着しないのは受けれ体制の不備だとマスコミが主張していますが、競争力がない以上は定着出来ないのは当たり前です。
この辺は外資が日本に定着し難いのと根は同じです。
先進国では移民に対する差別賃金が許されませんので、他所から来て言語その他職場習慣に慣れていない・総合競争力で不利な外国人の方が、同一賃金を払っても元々の地元民よりも良い労働力になること自体・・余程地元民のレベルが低い・能力以上の賃金を払って来たことの証明です。
西欧では実力上の賃金を得て来た・植民地時代の遺産でやって来たからこそ同一賃金でも移民に負けてしまうのです。
ハンデイのある外資や外国人労働者に負けること自体が自国民との、能力格差が半端でないことが証明されます。
西欧の問題点は何回か書いていると思いますが,労働=奴隷と言う観念が強く出来るだけ遊んで暮らしたい・・日本人のように「元気なうちは死ぬまで働きたい」のとは違い、「早く年金生活に入り遊んで暮らしたい」と言う【日本人からミレバ)倒錯した願望が強く、植民地支配時代に中流層まで貴族のような生活をしてしまった点にあります。
このような価値観の違いがあるののに、マスコミが頻りに欧米基準の「65歳以上人口何人」の高齢化率を繰り返すのは日本には当てはまらないと言う意見を繰り返し書いてきました。
世の中は比喩的に言えば、能力90〜100点クラスと80点台クラス、70〜60〜50点と段階的能力に応じた居場所・職業や収入が決まっているものでしたが、大量生産社会が始まったことから、様相が変わってきました。
事務系で言えば、新人→主事→主任→係長課長補佐など、現場系でも、職長その他古参順に尊敬される社会ですが、大量生産現場で何千人と並んで働くようになるとそこで働く限り基礎能力差に関係なく収入は労働時間に比例しみんな同じ(平等の理想郷出現?)になります。
50年ほど前に私が若い頃に「大衆社会状況」「自己疎外」社会になると言う社会分析が流行しましたが、これが今になって「格差社会」の現実になって来たのです。
等しく貧しく疎外されるのが大衆社会化の想定でしたが、中には健闘して一定数の巨額収入を得る成功者が出て来たので「一握りの大もうけする人とその他大勢」の「格差社会」になったのです。
ベルトコンベア−式組み立て工程の場合、未熟練労働者の役割増加・・熟練度に応じた仕事がなくなって行く・流通系では間で口銭をとる問屋系が姿を消し、パソコン等の発達によって事務系でも何もかもフラット化して来て,中間管理職不要・・あらゆる分野で、言わば30点〜70点あたりまでの才能の人も10〜25点の人と同じ仕事しかなくなって来ました。
先進国は長年の蓄積があったり、産業革命の恩恵を受けない地域に対する搾取?によって、単純労働(2〜30点の人ができる仕事を5〜60点の人にさせていてもなお従来どおり5〜60点の人に払っていた給与をそのまま払えていました。
これが中国の改革開放によって極端に人件費の安い(約20〜30分の1)新興国の参入が始まるとどこで作っても同じような汎用品については国際競争力がなくなり、先進国も25点の人ができる仕事をしてる元60点の人に従来どおり60点の高収入を払えなくなりました。
この結果目に見える形で中間層の没落が始まり一方で孫正義のような成功者・・1強(と言うのは極端ですが上記例で言えば7〜80点以上の強者)の外は皆敗者・底辺労働者になるしかない社会到来です。
フラット社会の到来が明白になったことを格差社会と言っているに過ぎません。
元々10〜20点レベルで低迷していた底辺層や身障者や高齢者にとっては、格差を感じるのは元々であって、怒ることすら出来ない状態・収入が少なくて生活保護などみんなの世話になっていると言う負い目の方を多く感じる関係で不満を言いませんでした。
汎用品製造工程・・大量生産現場と能力格差の関係で比喩的に言えば、25点以上の能力さえあれば、30点も40〜45〜50点の人も皆同じ仕事しか出来ない・・給与も同じ社会・言わば労働の場での格差をなくす平等化の試みと言えます。
上記フラット化の結果、給与が平均の35点になってしまうと元々20点の人には朗報ですが、45点の人似とっては地位の低下ですし、25点の人と同じ仕事しか出来ない・給与も下がる不満を格差社会と言っているに過ぎません。
45点の能力があっても25点の仕事しかない場合本来仕事以上10ポイントも余計給与をもらって得している筈ですが、元の給与から比較すると10ポイント給与が下がったのが不満なのですが、別の角度から言えば能力発揮出来る場がないことを言っているに過ぎません。
そろばんのプロが計算機の発達で一般事務員と同じ仕事しか出来なくなったやり場のない不満のようなものです。
足の強い人も足の弱い人も同じエレベーターに乗れば同時に10階に着くのが不公平と怒っているようなものです。
足が自慢ならばエレベータに乗らないで歩いて上がったら良いでしょうし、流れ作業がイヤなら自分一人で全部完成したら!と言われるのと同じです。
流れ作業よりも良い製品を完成出来るならば、(エレベーターより自分の足で速く登れるならばエレベーターを使わないなど)それをやれば良いのですが、そう言う能力もないからやり場のない不満を持っているのです。

世界ルールの必要性1

国内外で警察・・秩序維持が必要と言うことはネット空間利用のルールや知財剽窃やサイバーテロ行為等に関するルール造り・処罰の方法・裁判手続の合意が前提として必要となります。
その意味では中国外しかどうかは別にしてこれから必要な知財等紛争処理のルール(裁判手続まで)を決めたTPP合意成立は(批准出来るかどうかは別として)重要な一里塚になったでしょう。
高度な貿易・資本自由化や知財処理手続の合意では、中国にはレベルが高過ぎる(まだ完全自由化には無理がある)から中国には参加不可能→中国外しのシステム構築と言われています。
もっと自由に泥棒を続けたい者がその取締対策会議に参加してそれを守る約束をするのはイヤ・・意味がないのは当然です。
元々中国のレベルがまだ低過ぎてTPPレベルの規制は意味がないことは、承知の上でTPP交渉が始まっていました。
例えば東大の合格ラインを5点引き上げてもっと高度な大学を作ろうと言う場合、もともと4〜5流の私立大にも合格出来そうもない受験生には関係がないのと同じです。
TPPが成立すると、資本自由化の徹底その他知財等の高度なルールを守る気のない中国が除け者・・国際社会の落第生のイメージが明からさまになってメンツ丸つぶれになるので、TPPの成立をいやがっている中国を気にして韓国は不参加を表明していたのは当然と言えば当然です。
オバマの「世界の警察官をやれない」と言う意味は、国内だけルールがあれば良い、対外関係は弱肉強食で勝った方が相手を支配し奴隷化しても良いと言う西欧近代のやって来たルールに戻すべきと言うのでしょうか?
しかし、今やアメリカ企業も海外取り引きをしないで引きこもり・自国市場だけではやって行けません。
海外取引に際して相手のルール違反行為、あるいは海外からのサイバー攻撃で企業秘密を盗む勢力に対して国外の犯罪は関係ないと言い切れる時代ではありません。
モンロー主義時代のように太平洋や大西洋を隔てた遠くの大陸と言う特別な関係はありません。
結局は自国・アメリカ企業を守るためにも,1国主義は無理・・国際ルール造り・その裁定基盤(司法機関設置)が不可欠です。
国際ルールを作る以上は、これを守るようにする仕組みが欠かせません。
TPPが発効すると知財や資本規制関係の損害賠償事件はアメリカの裁判所に握られてしまうと言う反対論が多いですが、ルールを作る以上司法基盤のそろっているどこかで裁判して決着付けるしかない(・・今もいろんな国際司法決着はスイスやオランダなど欧州に集中しているのは基盤が充実しているからです)のは当然です。
この決着ルールがないから、アメリカが(国際合意手続を経ない)国内法を作って(・・最近では、対日関係では、不公正為替操作指定国認定の脅しが始まっています)イラクなど気に入らない国を指定して資金凍結したりするしかない・・乱暴なやり方になっている・・他方で中国の場合いくら違法行為をしていても相手が大き過ぎて全面資金凍結などの制裁を中国には出来ない・・中国がやりたい放題になっているのです。
TPP発効で個別案件ごとに賠償請求して行く・・これのやり方をデュープロセス・・国際合意に乗せるのは良いことです・・アメリカも独善的と言う国際批判に対する緩和材料になります。
警察官をやれないと言う意味は軍事力と切り離した警察力・司法機関不要までは意味しないし、警察や裁判制度維持資金を一人で出せないと言う程度の意味でしかありません。
アメリカは軍事力を背景にある程度強引なことをやって来たのですが、実はこう言うやり方は総合収支で見ると損をしているのが普通です。
だからこそ資金力のある期間(小さな同業組合の場合事務局を自企業の事務所で無償運営するなど)しか、昔からヘゲモニーを握れません。
いろんな同業組織の会長企業も、情報が早く入るなど少しは良い面もありますがトータルでは事務局負担など持ち出しが普通です。
ムラの有力者もお祭りで良い席に座れるものの、それ以上に多くの寄付をしたり会合場所を貸したりするのが普通です。
あるいは有力者が1つの方向を決めて組織を引っ張って行こうとする場合、先ず自ら(損な役回りを引き受けて)率先実行するしかないのが普通です。
日本で言えば、大平総理の急死の後を受けて鈴木善幸氏が総理になったとトキに、国鉄の赤字累積の解決が大騒ぎになっていて赤字の元凶である過疎地路線の切り離しが対症療法として俎上に登っていました。
鈴木善幸氏が自分の地盤である三陸鉄道だったか民営化・第三セクター化を率先して引き受けたことがあります。
蜥蜴のしっぽ切りでは間に合わないことから、次の中曽根総理のときに国鉄本体の民営化が断行されたのですが・・。
日本では世話役が先ず損な役割引き受けられるほどの度量と言うか力・(不利な役割を引き受けても地元が文句を言わない程度の信頼力)余裕を持っていないと前に進みません。
幕末会津藩も、幕末に京へ2000人規模の兵を進駐していたのですからもの凄い財政負担でしたが、それでも領民が一揆を起こさない信頼関係があったことが重要です。
佐倉藩堀田家は代々老中を出す家柄であった関係で田沼時代などに印旛沼干拓など幕府・公共事業を次々と引っ張り出すことに成功しています・・どれも洪水などで失敗に終わりましたが・・他方で佐倉宗吾郎の一揆事件が起きたのは、代々幕府役職に就くことによる自己負担が大き過ぎた割に・・領地替えがあったなどで地盤培養関係が弱かったことに遠因があります。
中国は自分がAIIBで主役を張りながら、自分の持ち出し以上に我田引水しようとするから無理があるのです。
トランプ氏の選挙スローガンは出すものを出さないで自分の言い分だけ通したいと言う子供のような主張・・こう言う主張は大衆受けし易いのは確かかも知れません。
資金分担が減って行けばそれに比例して発言力が下がりますから、それで良いかの覚悟がいるでしょう。
覚悟があろうとなかろうと金ドル交換停止のニクソンショック以降のアメリカは客観的に何でも気前よく自己資金を出せる状態でなくなっていることは確かです。
その意味では、トランプ氏が【現実を見よ!」と国民にその覚悟を問うているのかも知れません。
巨大な軍事力も、借金ではないけれども防衛してやると言う名目で?駐留先に一定の負担をさせて自国経済力で維持出来る以上の軍事力を維持出来て来た点では根本が同じです。
25年も前の湾岸戦争で日本が巨額出資を求められたように、アメリカは国際紛争解決のための資金(軍事力だけではなく警察・裁判システム維持)を自分だけで出し切れなくなって来ていることは確かです。
以下6月18日現在のウイキペデイアの「湾岸戦争」の記事からの引用です。
「湾岸戦争(わんがんせんそう、アラビア語: حرب الخليج الثانية‎)は、1990年8月2日にイラクのクウェート侵攻をきっかけに、国際連合が多国籍軍(連合軍)の派遣を決定し、1991年1月17日にイラクを空爆して始まった戦争である。
アメリカ合衆国議会の計算によると、アメリカ合衆国はこの戦争に611億ドルを費やした[42]。その内約520億ドルは他の諸国より支払われ、クウェート、サウジアラビアを含むペルシア湾岸諸国が360億ドル、日本が130億ドル(紛争周辺3か国に対する20億ドルの経済援助を含む)[43]、ドイツが70億ドルを支払った。サウジアラビアの出資のうち25%は、食糧や輸送といった軍へ用務という形で物納により支払われた[42] 。多国籍軍のうちアメリカ軍部隊はその74%を占め、包括的な出費はより大きくなされた。日本の戦費供出も、当時の自国防衛予算の約3割にあたる多額の支出が行われた。」

国際政治力学の流動化8(TPP漂流1)

TPPは約30年かけて準備して来たアメリカの日本外しの完成・・究極の決め手になる予定であったとすると、日本がTPPに入ってしまうと、これまで営々と構築して来た対日FTA包囲網が意味をなくしてしまいます。
TPPの方が各種FTAよりも数段高度な関税緩和ですから、もしもTPPが発効するとそれまでアメリカと締結して来たFTA国でTPPに入っていない諸国はその差だけ不利になります。
TPP参加国は小国ばかりで主な国は日本だけですから、対米貿易上アメリカは世界主要国で日本だけ優遇する結果になります。
オセロゲームで白黒がひっくり返った状態です。
政治力学変化がそうさせたのですが、自由競争とは競争上優位の国が自由に売りたいからか主張する原理ですから、アメリカは昭和40年代初頭からの日米繊維交渉以来何かとイチャモンをつけて来た流れを見ると、日本との関係では自由競争を回避したいのが本音です。
日本をTPPに入れてしまい対米競争力のある日本と無関税で競争・・アメリカが標榜する自由競争関係になると却って損するので、TPPの発効はアメリカにとって競争的にはマイナスになっているでしょう。
TPPが発効すれば日本も無理してアメリカに工場進出する必要がなくなります。
既にアメリカとNFTAのあるメキシコで生産しても同じと言うことで、この10年ほど自動車産業が猛烈にメキシコへの工場進出ドライブを掛けている→アメリカの空洞化が起きています。
これをトランプ候補が怒ってメキシコを目の敵にしているのですが、これ以上日本まで関税優遇になると、どうして良いか分らなくなるほど苦しくなります・・。
アメリカは今後国際競争力が低下して行く一方ですから、自由貿易主義の堅持は百害あって一利無し・・TPPを批准するメリットがなくなっている判断は、アメリカにとって合理的選択でしょう。
とは言え自由貿易主義こそがアメリカ的正義の唯一の拠り所ですから、(ソ連との冷戦に勝ったのは自由主義の勝利と言います・・当時アメリカは世界最強だったからですが・・))この旗を簡単におろす訳には行きません。
オバマによる世界の警察官をやめる宣言は、次の大統領の時代になれば更に一歩進めて(トランプ風に言えば)エゴ剥き出しで、中国のように(ルール違反も気にせずに)目先の金儲けのためには大っぴらにやりたいと言う意思表示かも知れません。
マスコミ紹介するトランプ氏の風貌からしても、(偏った印象を与えるために歪んだ顔ばかり強調するので信用出来ませんが)アメリカの自由主義とはエゴ剥き出し・・力さえあれば何でも出来る裸の自由主義のような印象です。
アメリカが世界の警察官をやめる場合、西欧支配の18〜19世紀型場面ではロシアや中国の始めた領土紛争の再現・・やり放題ですが、これは従来型強盗殺人等の分野であって今でも一定量発生するのはふせげないので、世界中がすごい経費を掛けて国防軍を備え不足に備えて同盟関係を結んでいます。
戦争は悲惨とは言うもののある程度組み込まれた現実ですので、世界大戦にならない限り世界の発展に実際に大きな影響はありません。
実際に人類の発展に世界的影響を受ける・・現在から将来へ向けて重要な国際ルールを誰も守らなくなればどうなるでしょうか?
今後も生活水準を挙げて行くために新たなルール強化が必要な分野は、資金移動や知財剽窃やサイバーテロによる企業秘密の剽窃等の取締ですが、これについての取締には軍事力までいりません。
こう言う犯罪まで野放しにしろとなるといろんな分野で遵法精神がなくなって行き、世界中でルール違反が横行するようにならないか・・泥棒・人殺しのやり放題の社会になり兼ねません。
軍事力の維持には巨額資金がいるので、アメリカ1国では面倒見切れないと言う論理は分りますが、警察がいらないと言うことにはならないでしょう。
世界の警察官をやれないと言うのは比喩的表現であって、警察力と軍事力とは違います。
海上保安庁の出動と海上自衛隊の出動とでは意味が違うのと同じです。
トランプ氏の自慢する巨額自己資金自体が取引等のルールと警察力があってこそ保持出来て守られているのです。

国際政治力学の流動化1

AIIB参加国は中国の専制運営を承認したことになりますから、今後AIIBが中国の希望どおり国際機関の中枢を占めるようになると世界経済は中国の専制支配下に入ることになります。
国連諸機関が中国マネーによる汚染?で事実上どうにもならない運営になっていることが知られていますが(・・最近問題になっているオリンピック委員会もそうですが・・中国マネーやハニトラがはびこるようになって以来世界中の人が「汚染された方が得」みたいな世界になっています)一応多数決ですから中国マネーの威力が減退すれば正常化する望みがあります。
AIIBの場合制度として中国専決制ですから「それで結構です」として、そこに参加する以上どうにもなりません。
西欧諸国が中国の明からさまな専制支配体制を決めているAIIBの正統性を認めてその傘下に馳せ参じた(ある陣営があるスローガンを掲げて兵を挙げたときにこれに呼応して兵を引き連れて参加したのと同じです)事自体が驚きです。
西欧諸国のAIIB参加行為は米中対立に関して、西欧による中国専制支配でも良いから中国陣営傘下にはいる意思表示であり、民主国家陣営離脱の公式意思表示だったことなります。
ここまでは中国の世界支配に一歩近づいたように見えたので、太平洋2分論を言い出したり、南シナ海や尖閣諸島の領域拡張の実力行使を始めた基礎ですが、モノゴトは「金」次第である点はここでも本質です。
昨年秋に強行し対日戦勝利記念と称する対日宣戦布告に近いような軍事パレードを計画した時には株価暴落前だったので,式典の頃には既に株価暴落して信用がた落ちになっていても今更やめられなかったのでしょうが、この旗揚げ式に参加したのはプーチンとパク大統領とアフリカの独裁者として国際指名手配を受けている大統領の3人・・韓国出身国連事務総長だけだったと言われていました。
ここまではパク大統領はまだ中国べったりでしたが,さすがにまずいと分って来たらしくその直後から中国離れを始めたのは周知のとおりです。
中国が国際金融機関を専制運営する以上は資金もこれに見合った出し手にならないとうまく行きませんが、(金もないの威張るには軍事力・・強盗しかありませんが中国が西欧を脅すには遠過ぎます)昨年夏の上海株価暴落以降・・そもそも中国にAIIB運営資金があるの?と言う疑問・・中国の経済危機リスクが表面化してきました。
今年始めには、2回目の株価暴落があって中国経済力の信頼は地に墜ちました。
世界経済リスクの元凶になりかけている中国自身が資金を出すのを期待するのは無理があり,金がないから国際機関と称して資金を集めるのか?と言う疑念が起きてきました・・これでは中国の資金力を期待して集まった方は溜まりません。
勿論爆買いの威力をちらつかせて無茶をしても周辺国を黙らせていた神通力も利かなくなってきました。
昨年秋も直近のアメリカに於けるイエレン議長の発言でも、利上げ可否判断は、中国が持たない・・中国リスクが最大リスクとして考慮されています・・アメリカのちょっとしたサジ加減次第で中国がでつぶれるかどうかの瀬戸際にさしかかっている弱い国です。
中国は元々世界の除け者になった国々・・北朝鮮、ミャンマー、ラオス、ベトナムやアフリカの独裁虐殺国などへの唯一の援助国としての地歩を固めてきました。
共通するのは現在の国際的的価値観である民主主義的国家運営を採用しない国々・・非民主国家です。
中国自身独裁制+言論弾圧の苛烈な国ですが、アメリカは相手が大き過ぎるからと、黙認どころか対日カードに使うために巨大化するの応援して来たのですから、巨大な独裁・苛烈な人権弾圧国を応援して資金を供給しながら、弱小国を締め付けても(北朝鮮のように)中国の援助でいくらでも生き延びられる・・矛盾した政策を続けて来たことになります。
その結果6カ国協議と言う訳の分らない制度を作って中国の影響力期待・・要は中国の地位を高める政策で一貫してきました。
アメリカの巨大ブラックホール放置の弱い国相手の制裁濫発は、言わば中国の支援をうける国を増やすための政策と同じですから、非制裁国は当然中国に義理が生じ中国派の国々になります。
タイのように歴史的親日国でも軍事政権になったことによる締め付けで中国の支援が必要になったことから、日本対中国の関係では中国に遠慮が生じています。
それだけでなく、この4〜5年は豊富な外貨準備に利用(見せ金)によって西欧衰退企業への資本参加やアフリカ諸国への援助や・資源爆買いを利用して西欧を初め本来欧米派であるべきオーストラリアまで与党に組み入れる(アメリカの軍艦寄港すべき港湾運営権まで中国に与えている)など反中国的動きに豪政府が同意しない動きになっています。
今回の日本の潜水艦の受注がフランスに突如変更になったのも中国の陰が取りざたされています。
中共政権と相いれない筈の台湾でさえも、中国詣で(中国市場参入)に必死で親中の馬英九政権が誕生していました。
元々戦前からアメリカは親中ですかし、日本も田中角栄以来伝統的に親中政権ですから、世界中が親中になっていたことになります。
ただ世界の親中政策はアメリカのバックがあって成り立っているに過ぎない点に中国政府は気が付かなかったのかも知れません。
中韓ともに反日運動や国内教育はアメリカのお墨付きがあって安心してやりたい放題していた筈ですが、自信を持ち過ぎたのか中国が・・アメリカに刃向かう方向へはみ出したのが、そもそもの間違いです。
あまりにも自信を持ち過ぎたのか・内部抗争が激しくて、世界中相手に騒がずにいられなくなったのか?

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