欧米と日本の対応4(欧米の移民受入れ1)

EUの理念が仮に貿易自由化促進だけならば自由貿易連合で足りるのであって、EUを結成努力する必要がないし・・イギリスが出て行っても大騒ぎする必要がない筈です。
今回のイギリス離脱決定に対して「その恩恵がなくなるぞ!」と(EUの意向を受けている?)マスコミがしきりに脅していることからも、グローバル化よりも市場規模強調=域内外の差別化造りを優先して来たことが明らかです。
こうした発想によって、中国巨大人口→将来一人当たりGDP上昇→巨大市場参入の誘惑に目がくらんだEUがAIIBに尻尾を振って参入し、中国の解放以来中国寄り(中国の意を迎えるために反日に陰で協力する)政策を推進して来た原因です。
イギリスのEU離脱論は、金融市場運営で生きて行くのを棄てる訳ではないようですから、EUの外に出ても日本やアメリカがEUと貿易しているように自由貿易協定でEUを含めた世界と交流して行けば良いのじゃないかと言う意見とすれば、グローバリズムに対する反発ではありません。
むしろ、グローバル化進行意見とは関係なく・・貿易自由化・グローバル化推進することと、(出張で人が来るのは構わないが)多民族混在まで強制される必要がないじゃないか・・移民制限論に本質があると言うべきです。
EUを出て行くならば、元々外にいる米日、中韓などより不利に扱うかのような脅かし・・世界混乱を強調するマスコミ報道は、世界正義を標榜するEUにとってマイナスイメージ・・逆効果であることは確かです。
イギリス人にとっては、日米中韓など諸外国と同じ扱いで良いから、日常生活まで大陸諸国の多数決で強制されるよりもマシと考えるのは1つの合理的選択です。
大きな屋敷で肩身の狭い窮屈な生活するよりはアパートの小さな1k〜2DKでも自由な生活をしたい人の方が多いでしょう。
EUやマスコミの興奮を見ると家を出てアパート生活をしたいとオヤに言ったら、二度と実家の敷居をまたがせないとオヤが怒っているような印象です。
氏族共同体〜大家族でないと生きられない社会から、核家族+親戚の緩やかな連帯→少数で生きて行ける社会→単身(もっと弱い身障者も老人)でも不自由なく生きて行ける社会への変化こそが、人としての自由度の尺度ではないでしょうか?
企業も従業員数や売上高、生産力など大きければ良いのではなく、利益率・社会貢献度など内容が問われる時代です。
西欧諸国は2度の世界大戦で疲弊し尽した状況でしたが、このときに急速に力をつけて来た新興の大国・中国アメリカ,ソ連はいずれも従来基準の想定・・西欧近代に相争って来た国家基準を越えた巨大領土・人口の大きさを伴うものでした。
これからは規模の時代・・マンモス・大量生産大量なんとか・・・「大きいとは良いこと」だと言う思想が普遍化したことが分ります。
大きさで対抗しようとする発想に取り憑かれて始めた西欧同盟創設運動時の理念・・70年前の時代遅れの思想のママ、これを(「戦争の災禍をふせぐため」と事実に反した思想にすり替えて美化して)未だにやっているので、ガタが来たのでないでしょうか?
マスコミはきれいごとの理念・戦争の災禍を免れるためにと言うきれいごとを並べますが、第二次世界大戦後西欧内の国と国の戦い(例えばもう一度独仏間で戦ったとしても地域限定紛争でしかなく世界大戦を起こす力など最早ありません・・。
世界平和のために「米ソにやめろ!と脅されると相互の兵を引くしかない弱小国です・・英仏連合軍のスエズ侵攻時にソ連による核攻撃の脅しで英仏両軍は1も2もなく引き下がった例を想起すべきです。
EUの前身・・欧州同盟必要性の思想は、コミンテルン・・ソ連の世界革命戦略・・侵攻される恐怖に対抗するために欧州の団結が必要になったに過ぎません。
アメリカも対ソ戦略上西欧を応援するにしてもバラバラでは小さ過ぎるのでまとまって欲しいでしょうから西欧の希望と相俟ってNATOを結成していたのですkから、ソ連崩壊によって防衛の必要性がなくなった時点で本来お役御免になっても良かった筈です。
ところがソ連崩壊後もNATO軍は拡大の一途です。
これがウクライナ危機を増大させた元凶です。
今なお19世紀型軍事力による世界への影響力行使誘惑(リビア空爆や。シリア内紛激化の後押しなど)を棄て切れない西欧の意識の古さが分ります。
強い国が隣国を侵略したのを防止するために兵を出すならば分りますが、リビアの場合内政問題で一方勢力を支持するためにNATOが空爆するのにどう言う大義があったのか不思議です。
「大きさこそ力」という時代遅れの西欧の発想が今でも中国に対する畏敬の念・・基礎信条に繋がっています。
今では組織の大きい方が組織維持が難しく自己瓦解リスクが高いと思うのが普通です。
同じ素材で同じ太さの鉄骨等を使った2階建てと7階建ての建物があれば、2階建ての方が地震にも強いように、素材や組織管理能力が同じならば、能力比大きな組織や図体の方が脆弱です・・目一杯・最大限大きくした組織の方が変化に弱いのです。
マスコミによる、イギリスEU離脱国民投票結果に対する一致した脅し方を見ると、余程衝撃が大きいのかな?の印象で国民投票直後から書いてきましたが、7月1日あたりからイギリスの株価が急反発始めたことは、マスコミが一致して宣伝すれば何でも出来る訳ではないことが証明されたことになります。
経済分野の場合、市場原理に反した意見をマスコミを通じて垂れ流しても長続きしません。 
この辺は、1昨年に安倍政権が消費税増税延期を決めたときに財務省やマスコミの意を受けた格付け会社が、すかさず日本国債を格下げしてもその逆に国債価格が上がって格付け会社の方が信用を落としたことがありましたが、同じ繰り返しです。

欧米と日本の対応1(EU→大規模化)

石炭鉄鋼連盟. EC→EECに始まるEU結成は、元はと言えば戦後米国に対する劣勢挽回のために構想されたものですが、先ず資源から入った点が象徴的です。
第1次〜2次世界大戦は資源争奪戦争(日本はABCD包囲網に対して、「油の1滴、血の1滴」と言う状態で戦端を開くしかないところに追いつめられました)でもあったので、資源確保が第一条件だったのでしょう。
第二次世界大戦時には石油の時代に入ってましたが、西欧諸国は石油産出地である植民地を次第に失って行く過程・・たとえば中東での利権が次々とアメリカのゴリ押し・・植民地支配批判の名分の元に?アメリカに奪われ続ける時代が始まっていました。
この最終章で起きた事件が、ナセルのスエズ運河国有化騒動・・英仏進駐事件だったことになります。
現在で言えば、アメリカが裏で反日運動を中韓に唆しているのと同じ状態ですから、ソ連からの英仏に対する強迫に対して当然アメリカは英仏を応援しません・・怒った英仏が自前の核武装をすることになった切っ掛けです。
折よく北海油田が開発されてこれが軌道に乗った80年頃から資源的側面が解決された結果、イギリスは戦後耐乏生活から何とか抜け出せた原因です。
マスコミはサッチャーリズム成功と言いますが、実質は資源特需によるものです。
・・7月2日現在のウイキペデイアによると「サッチャリズム(英: Thatcherism)は、1980年代のイギリスでマーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策である。」と書いていますので時期的にあっています。
(この後に紹介するように北海油田による原油輸出代金収入が軌道に乗ったのは80年代からです)
サッチャリズムは金融ビッグバンもやりましたので、金融取引のウインブルドン現象と言われるようにその収入も増えました。
これまで書いているように製造業復活ではなく金融取引や資源収入による場合、多くの労働力が不要ですので自ずと格差が拡大します。
ナウール共和国の例を引いて、資源収入等が上がるとその分通貨が上がるので、製造業等従来型国内産業にとっては国際競争上不利になる結果却って衰退して行く・・日本が原発停止による原油輸入による大幅赤字が円安を導いて製造業等の競争力が挙がる例としてFebruary 26,2013「原発事故と天佑」で書いたことがあります。
西欧・・得に英国はこの逆に精出して来たトガメが格差拡大を広げ今回の離脱騒ぎの遠因になっていると見るべきです。
上記ウイキペデイアには以下の記述が続きます。
「サッチャーが政権についた時点では、平均所得の60%未満で生活する層は約13%であり、ジニ係数は約25であった[12] 。サッチャーが退任する頃には、平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇した。」

西欧はアメリカの資源力と大規模市場を背景にした19世紀以降の挑戦に対して、資源確保とEU結成による人口では負けないぞ!と大規模市場・・単一市場化で対抗して来たことが分ります。
折角多くの国々が事実上合併・・市場大規模化しても少子高齢化で人口が減って行くのではどうにもならないので移民を入れる・輸血するようになりました。
しかし人口さえ多ければ良いのならば、中国やインドは昔から人口が多かったのです。
EUに関する外務省発表のデータを紹介しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html
欧州連合(EU)平成28年6月1日
総人口(2015年)
 5億820万人(Eurostat、暫定値)(日本の約4倍)
略史
1952年 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立(パリ条約発効)。原加盟国:フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク
1958年 欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)設立(ローマ条約発効)
1967年 3共同体の主要機関統合 1968年 関税同盟完成 1973年 英国、アイルランド、デンマーク加盟
1979年 欧州議会初の直接選挙実施、欧州通貨制度(EMS)導入
 GDP (出典:IMF World Economic Outlook)
16兆2,204億ドル(2015年)
対するアメリカは以下のとおりです。
アメリカ合衆国(United States of America)
                平成28年4月20日
面積 371.8万平方マイル(962.8万平方キロメートル、50州・日本の約25倍)(内水面18.1万平方マイル)
3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
GDP 17兆4,189億ドル(名目、2014年)

上記によればGDP規模=市場規模はEUが中東欧諸国編入で拡大し続けた結果、年間約16兆ドル対アメリカが17兆ドル規模でほぼ拮抗していることが分ります。
これを背景にアメリカと対等に渡り合うための共通通貨ユーロも創設しましたが、寄り合い所帯の弱さでユーロは今なお、基軸通貨ドルを脅かすには至っていません。
以下ロイター記述によれば、最盛期でも28%しかなく(イギリス離脱騒ぎ前)の今年4月には、19、91%に下がっています。
以下http://jp.reuters.com/article/forex-reserve-usd-eur-imf-idJPKCN0WX2A5
からの引用です。Business | 2016年 04月 1日 01:45 JST
「第4・四半期のドルの比率は64.06%(4兆3600億ドル)となり、前四半期の63.98%から上昇。 一方、ユーロの比率は19.91%と、前四半期の20.34%から低下した。低下は8四半期連続。ユーロの比率のピークは2009年につけた28%だった。 」

米欧のGDP規模と通貨構成率の相違は何に起因するのでしょうか?
このシリーズは元々消費市場の大きさが実際の国力を分ける・・今や生産力を競う時代ではないと言う関心で5月7日「資源+生産力から消費力アップへ1」以来書いている原点に戻ると分りよいでしょう。
EUが貧乏人の集合体・・とした場合、GDPの割に消費水準が低調・・内需比率の低さが通貨構成比に現れていると言えるかも知れません。
EU内で最大の経済力を誇るドイツの内需比率の低さが有名ですが、ドイツの外需と言っても実はEU域内の内部貿易中心で域外から殆ど購入しないのでは、結果的に経済のEU域外に対する対外的影響力は多寡が知れています。

フラット化対応3(日本の場合1)

EU離脱論に逸れましたが、所得収支大幅黒字下にある日本のフラット化に戻ります。
世界一潤沢な資金を投じて介護や保育所その他の予算を増やす→市場コストより安く利用出来る人が増える=利用者にとっては10万払うべきところを5〜6万円ですめば4〜5万円余計収入があったのと結果同じです。
日本では、社会保障の充実によって所得修正がおこわなれている外、高額所得率も低い・・ソフトバンク社長と副社長の巨額報酬に驚いた人が多いですが、孫氏自身は在日系と言われていますし・生え抜き日本企業ではトヨタ社長でも社長報酬は大したことがありません。
成功者出現を排除しないどころか期待する格差反対論は、論理の行き着くところ従来からの分配率の修正・・成功者の取り分を減らせ→社会保障強化論の焼き直しだったのでしょうか?
日本ではアメリカの真似をして「格差反対」スロ−ガンでは反応する人が殆どいないので民進党の「保育所落ちた、日本死ね!」の主張に落ち着いたのかも知れません。
日本企業の場合事業成功しても、「国民の皆様の応援の御陰さまで・・」と言う精神・・自分一人の働きではないと言う意識ですから報酬取得も程々にとどめますが、(発光ダイオードの中村氏の訴訟が国民支持を受入れられていない原因・・母校に寄付したりいろいろ修正していますが・・)アメリカでは、国民のための企業ではないので経営者は儲ければ儲けの範囲内でいくら報酬をとろうと儲けた人の勝手と言う意識です。
賃金も国際相場との差額を企業が利益を削ってまで支給する発想・・25日まで書いて来た本来の働き以上に上乗せして(例えば10〜20ポイント上乗せ給与を払う気持ち)がありません。
こう言う社会では移民をドンドン入れて結果的に国内賃金水準低下・・国民総体生活水準低下を図って、企業利益最大を図れば経営者報酬が最大化する仕組みですから、従業員や国民全般の生活水準が下がろうともあまり気になりません・・これに対する不満が昨日まで書いて来たEu離脱論の基礎です。
昨年あたりからアメリカが中国工場と国内工場とでは賃金競争力が変わらないと自慢出来るようになった基礎状況ですが、低賃金を自慢されるようでは国民には溜まりません。
アメリカの場合成功も失敗も自己責任を強調する社会のために、いまだに全国民対象とする日本の国民健康保険制度のようなものを作れない状態・・オバマケアーで揉めていることから分るように基本的に社会保障政策は低調です。
自己責任主義の結果、儲けた方はいくら巨額報酬を得ても良いし企業経営者も国際相場以上の上乗せ賃金支給する動機もない結果、格差拡大が半端でなくなりました。
アップルのように大成功する企業あるいは、金融・資源メジャーで大儲けする企業がなければ、格差も生じない普通の低賃金国・・等しく貧しいのですが、なまじ成功者が出る社会だからこそ格差が気になります。
イギリスの場合世界の資本市場として成功したので却って金融関係者との格差が目について不満が噴き出したと言えます。
※イギリスでも金融取引関係者の多いロンドンでは残留派が多かった所以です。
さすがのアメリカも、格差拡大不満・反ウオール街意識の高まりに危機感を抱いた結果、国際相場に合わせた低賃金化進行による生活水準の急低下を修正するために、フードタンプの配給になっていることになります。
食糧券の配給に深夜12時に並ばせられるのではあまりにも国民が惨めですし、それとなく給与水準を上げて行く日本の優しさに比べて政策的に拙劣です。
ところでフラット化の追求・・従来60の技術者しか出来なかった仕事をロボットの補助等で20点の人でも出来る時代・・結果平等を模索するのは良いことですが、他方で努力する楽しみを持てる社会が必要です。
フラット化・平等化達成に反対するよりは、達成されれば達成された平等化の中で少しでも周囲に差をつける努力や意欲の能力差(制服着用下でもアクセサリーなどちょっとした工夫でオシャレする能力)がその社会での格差反対論の強弱に比例します。
江戸時代に奢侈禁止令が出るとそれで美術・文化が衰退するのではなく、着物の裏地で勝負したり言論の自由がないと落首で挑戦したようにその範囲内での挑戦能力の有無によります。
命じられた以上の仕事をしたら損だと言う意識の民族では、50点の人が25点の努力でできる仕事を与えられると楽出来るのは良いが、収入が減るのが不満でしょうが、日本人の場合、5〜60点の人が25点の仕事を与えられると能力が余るので、余った時間で与えられた仕事の改良などに努力工夫する人が多く出てきます。
身分格差の激しかった古代に於いて、地下人から自己実現努力によって武士団が抜け出て来たし、その内武士自身が信長など見ても分るように高度な文化の担い手になって行く・・・・江戸時代には町人やムラの名主階層まで俳諧等の高度な文化をたしなむ・・江戸時代初期から市民が文化の担い手になっています。
生き方として仕事させられていると考えるか仕事をしたいからしているかの違いですが、捲まず撓まず努力するのがスキでない社会では格差反対論で騒ぐしかないのでしょうが、格差反対論が支持される社会かどうかは、時間が余って工夫する時間が取れて嬉しいと感じる社会か否かの違いです。
日本で欧米の流行を取り入れて「格差反対」と文化人(欧米の真似すれば良いと思っていて日本の実態を知らない人が多いように見えますが・・)が叫んでも同調する人が少ないのはこの違いです。
日本は古代から一握りのエリートの指示に従って盲目的に動く社会ではなく、一人一人の納得で動く社会ボトムアップ社会であることを繰り返し書いてきました。
その前提としてどの分野の人の仕事にも神が宿っている・・便所掃除でも皿洗いでも何でも自分の職分には誇りを持って行なう精神が強固です。
大量生産社会到来後も各分野の仕事をしている人は自分自分の持ち場に愛着を持っていて、流れ作業に身を任せていれば良いと言う怠け者は例外で、同じ流れ作業でもこれを如何に良い物にするかの工夫に精進している人が普通です。
その中から多能工が生まれていて、最近ではその方が効率がいいと言われています。
零細規模の現場系でも20年くらい前ではちょっとした機械(例えば自販機)を数十センチ動かすのに、これは電気工の免許がないと出来ないとか水道の許可業者でないと出来ないとかタイルはタイル工が来ないと出来ないとか、いろんな職人が来て頼んだ方はびっくりする・・巨額請求に対するもめ事がありました。
最近ではこんなことでは客が納得しないので、窓枠のちょっとした交換その他リフォーム工事では、多能工独りで大方こなすのが普通になっているようです。
幕末の外国使節の日記などでも、下働きの女性でも諸外国では一々指示しないと働かないが日本人は指示しないことまで気を利かせてやって来ると驚く記述があります。

イギリスEU離脱2(マスコミの中立性違反1)

EU首脳がイギリス国民投票の結果に責任を負わずにイギリス国民の要求が非常識だと開き直りに徹するとこの後の交渉がこじれてしまい、ドイツ30年戦争のように何十年にわたる紛争の幕開けになる・・妥協を知らないアラブ諸国のように次第に相手に対する非難をエスカレートさせて移民対反移民グループ間でテロの応酬に陥る懸念があります。
昨日まで書いて来たように遺産や海外収益を移民に分配する政策に怒っているのはイギリス国民に限りませんので、イギリスのわがままを許さないと言う対応ではことを誤ります。
移民に過去の遺産を食いつぶされそうになっている不満がイギリスで保守、労働党の党派・思想の垣根を越えた横断的不満になっているように、イギリス1国に留まらずEU全域の水平的問題ですので(移民の多寡と経済力によりますが・・)EUの内部分裂騒動に発展する可能性を書いています。
社会保障給付水準だけ差別(例えば医療費負担率を上げる?)を認めると言ってもゼロにしないし、移民はなお公園や図書館・教育を受ける権利などの各種インフラ整備や維持費を負担しないでただで使えます。
賃金面で見ても、海外からの送金による上乗せ賃金を地元民と同じように移民も貰えるので出身国で同じ工員として働く(汎用品製造工場の場合同一労働性が高く比較が簡単です)のに比べて何倍もの賃金になる(出身国だと高額所得者として税負担が大きいのに先進国だと最低階層として税負担が殆どないばかりか逆にいろんな補助金が貰えたり料金免除・割引対象になる)ので、キャメロンとEUの談合では移民流入圧力はなくなりません。
キャメロン氏は社会保障負担さえ少なくすれば国民投票しても勝算があると思ったのでしょうが、国民はその程度では納得しなかった・・いろんな分野での移民のただ乗り自体を許せない・・「この程度の制限だと移民圧力が下がらない」と言う冷静な認識が基礎にあるようです。
マスコミは残留派に肩入れするために移民排斥と言う感情論は良くないとか、白人底辺層の主張としてバカにする・・貶めるキャンペインを張るのに熱心ですが、昨日書いたように経済合理性のある主張をマスコミが敢えて無視して感情論にすり替えて来たように見えます。
もしかしてマスコミが肩入れしているのではなく、マスコミが必死に守るべき何かがあって、それに肩入れさせられているのが政治家であり、学者・評論家ではないでしょうか?
開票後の常軌を逸したり脱批判論・・世界経済が大変なことになると言う過剰反応には驚いている人が多いのではないでしょうか?
株の乱高下はマスコミが危機感を煽っている結果であって、その内にマスコミの空騒ぎの威力は収まると思います。
開票から一夜明けた25日日経新朝刊「春秋」では「世界史の中でナチスほど国民投票を多用した政権はなかった」と書き出していて、何でも自分の意見にあわないとナチスとごっちゃにする主張には驚きましたが、マスコミも中韓政府同様にいよいよヤキが回って来たのでしょうか?
日経新聞26日朝刊9p「日曜に考える」と言う論壇では、前財務官山崎氏の意見と言うか国民投票の是非に関する誘導的質問には、「憲法改正を超越するような重大な話を簡単にやってしまった」と批判させています。
マスコミは日頃民意重視と言いながら、マスコミの主張に都合の悪い結果が出ると「ポピュリズム」とすり替えるなどまるで魔法使いのようです。
健全な民意とポピュリズムの区別基準を聞いたことがありません。
日本の消費税増税先送り決定もマスコミでは、ポピュリズム批判を展開していましたが、今回のEU大混乱を見れば、世界経済危機可能性を見込んだ政治決断の方が正しかったように見えますが・・。
上記論壇で如何にも対立意見のように並んで書いているエコノミスト岸田氏の意見では、「世界が経済の時代から政治の時代になりかねない」「経済合理性が第一ではなく人々の不満が政治を動かし経済が引っ張り回される世界だ」
と書いていて、一見賛否両論の紹介のように見えながら実際には、いずれも離脱派は非合理感情的主張でしかないと言うトーンで一貫しています・・中立性=両論併記義務に反していませんか?
私に言わせれば、離脱派の方には学者の味方がないので論理的主張になっていないかも知れませんが、「生活を守りたい言う必死の訴え」=経済論理中心であって,人道的きれいごとを言って・移民排斥論と言う感情論にすり替えているのはマスコミや学者の方ではないでしょうか?
「金持ち喧嘩せず」と言いますが経済弱者は、余裕が無いので「難民が可哀相」などとキレイごとを言ってられない状態になったと見るべき・・むしろ離脱派こそが経済合理性中心主張です。
(赤ちゃんがむずかるのは非合理ではなくおむつが汚れているなど客観状態を表現出来ないだけ・これを察する母親の役割の必要性・移民反対論もこれを合理的に言い換えてやる専門家がいないだけです)
移民排斥は可哀相と訴えている残留派の方こそ感情論ですから、中韓がよく使う自分のあくどい行為を日本がやっているとすり替える得意のすり替え論理を離脱派に当てはめてマスコミが応用しているように見えます。
そもそも離脱派に対する非合理な感情論と言うイメージ広告や欧州で極右とマスコミにレッテル貼りされている勢力は、「これ以上の移民は困る」と言うのが当面の中心主張であって今いる移民を排斥しようと言う感情論ではない筈です。
マスコミが移民反対=ヘイトスピーチ論というレッテル貼りして行くと,自分の意志を曲解されることに対する不満で感情的になる人が増えて却ってこじれて行きテロの応酬になって行くとマスコミの期待するようなヘイトスピーチ・移民排斥などが盛んになるでしょうが・・。
移民排斥の感情論は困ったものだと言う中韓政府顔負けのすり替え報道がいつの間にか幅を利かせていますが、これは日本マスコミだけの現象なのか欧米でもそうなのか?
先日川崎で行なわれた日韓断交を訴えるデモがヘイトスピーチ扱いされていたようですが、どこの国と仲良くすべきかは政治論ですが、マスコミの気に入った国と断交しようと主張するとヘイトになると言う論理根拠が不明です。
マスコミの気に入らない主張を全てヘイトとか、極右扱いして行き、そのデモや表現を妨害することが許されると言う風潮が広がると、マスコミって言論弾圧目的の組織なの?と言う疑問が起きてきます。
移民問題に戻りますと、マスコミの期待する方向へ誘導するために滅多にいない赤ちゃんの写真を大々的報道して感情に訴えて世論を動かそうとして来た難民報道のいかがわしさに欧州の人たちも気が付いてしまった状況です。
難民問題の本質はすぐれて経済問題である事は、難民がアフリカ等の貧困国へ向かわない・・EUに入ってもEU内の高賃金国へ向かう実態が証明しています。
難民や移民自体が経済動機で移動している現実があれば、受け入れる方も人道面の配慮をしながらも経済側面重視の議論であるべきです。
これを赤ちゃんや幼児の犠牲を大々的に報道するマスコミの姿勢は本質から目を逸らす狡いやり方です。
イギリス国民投票結果については、事前世論調査の結果の大外れと言い、その後数日の報道姿勢だけ見ても報道の偏り方が顕著ですから報道信用のがた落ち進行中ではないでしょうか?

フラット化対応1(差額補填1)

元々技術革新の目標は、誰でも労働に参加出来る社会化を目標とするものですから弱者補助道具・・社会のバリアーフリー化拡大→(ジョブズ氏など特別成功するのを否定しないで)結果平等社会化の動きを認めるとした場合、・・格差反対論は大成功者の果実をある程度みんなに分配して20点の仕事している人も60〜80点の仕事をしている人と同じ賃金にせよと言うに等しいことになります。
大成功者の果実収取割合が大き過ぎると言う批判かも知れません。
(例えばジョブズ氏の大成功による莫大な収益を税で強制徴収するかどうかは別としてその成功の果実が対外収益入金によってアメリカに莫大な還流があった場合、税収入として予算化されてから流通しようが、税率が低い結果、大部分が民間に出回った場合、預貯金や株式購入資金あるいはホテル宿泊費・レジャーであれ、国内還流していれば経済の回転資金になる点は同じです。
この考え方を利用して貿易赤字を気にしないで中国や日本の儲けであれ何であれ、アメリカに還流する限り誰の資金でも同じと言うのが、アメリカの貿易赤字のファイナンス思想です。
2016-6-21「過大消費と消費者破綻(資金還流策)」にパナマ文書関連で書きましたが、仮に中国の利にさとい国民の逃避資金として人民元とドルへの両替が増加していてこれに応じるために人民銀行がアメリカに積んだ外貨準備を取り崩していると紹介しましたが、中国政府が公的資金をアメリカから引き上げてもそれと同額の裏金・・裸官等の逃避資金がアメリカに入って来ればアメリカ国内で回転する資金量は同じです。
上記のとおりぼろ儲けの九割を税でとろうが3割しかとらなかろうが、裏金で入って来ようがその国に儲けた金が入ってさえ来れば(ジョブズ氏がタンス預金していない限り国内で回る資金になる点に変わりないので、税率は本当は関係がないことです。
国家として重要なのは国内消費持続能力・・国際収支の内容実質の問題です。
日本の場合税で取れていないので国家財政上は赤字ですが、国家全体では世界ダントツの純債権国である所得収支黒字として巨額資金が入って来ていますので、国内で資金がダブついている結果金利を払ってまで借りる必要がない・・超低金利になっている・・だからこそ「有事の円」になっているのです・・。
支払原資が、税収か国際売却収入によるかは別として払い能力・・日本の支払持続性を世界が認めているので「有事の円買い」になるのです。
国際経済では税収によるかどうかよりは国際収支の中身が重要です。
日本の国際収支を見ると資本収支は海外投資が多くて赤字になっていますが、これが時間経過で海外からの(投資した金の配当が始まり)収益送金原資になるのですから前向きの支出・この赤字は価値のある赤字です。
(中国や新興国の場合日本等からの投資資金の流入超の結果増えた外貨準備が多いことを自慢していると書いてきましたが、これは毎年収益送金しなければならない一種の債務ですし、送金利益が出なくなればいつでも逃げられます・・新興国通貨が有事・・景況感悪化に弱いのはこのせいです)
所得収支は文字どおり現時点での海外での儲けの国内送金の数字ですが、日本の場合これが何十年も大幅黒字が続いています。
この所得収支黒字を使って、国内社会保障やインフラ投資が潤沢に行なえているので実質格差解消になっているのですから税で賄っているか国債で賄っているかは大した違いがありません。
日本では、潤沢な資金を利用して資源収入や知財・金融収入等も税収に反映し、その資金が高度なインフラ新設や維持資金になって殆ど税金を払わない階層もその利用を出来て恩恵を受けていますが、(これも消費面でのフラット化の1面です)格差是正論はそれに留まらない・直接底辺層に対する現金給付を増やせと言う要求になります。
国費補助によって無償あるいは市場価格以下で施設などを利用出来るだけでは落ち着かないから直截現金給付・・市場価格よりも賃金を上げろと言う意見は妥当でしょうか?
同一労働同一賃金・・同じ仕事をしていても日本人であると言う理由だけで20ポイントの仕事で60〜80ポイント貰う権利があると言うのは背理ですし、働き以上の賃金では国際競争から脱落し結果的に日本経済が破綻してしまいます。
世界的賃金水準平準化・同一労働同一賃金の原理に近づくのは人類平等の精神から見て正しいことですし、日本人だけ高給化を要求することに正義はありません。
市場原理に反した高賃金を強制すれば企業は海外に逃げてしまいます。
正義の形あるいは国際競争の観点から言えば、「20の仕事には20の賃金しか払えないが、資本収入(海外からの送金)があるからこの資金で別途国民に40〜60ポイント配給(一種の生活保護)せよ」と言うことになるのでしょうか?
これは賃金ではなく社会保障の分野ですから、現在既に結果的に似た状況・・社会保障費が国家予算の半分近くになっている現実がこれを表しています。
イギリスは戦後【揺り籠から墓場まで」と言われる高福祉政策をとりましたが、これは新興のアメリカに負けて行く産業界・・労働者の賃金低下に対する穴埋め政策であったと理解出来ます。
この穴埋め資金に苦しみいわゆる「イギリス病」に悩まされていましたが、北海油田収入によって息を吹き返したものの油田が枯渇して来て又苦しくなったことを大分前に書きました。
中国の開放政策以来、先進国はおしなべて新興国の生産活動参入によりどこも賃金下落に悩まされその補填に苦しんでいますが、補填するべき企業利益を上げるのに成功している国(多分日本だけでしょう・・アメリカはいわゆる資金環流策によってファイナンスして来ただけと言うのが私の意見です)では・・海外からの収益送金やアップルやユニクロや孫正義などの巨額収入者が生じるので格差問題となり、格差補填出来ない国→海外展開事業成功の少ない国→もしかして海外送金の方が多い国)では、補填もしてくれないので自暴自棄的いらつきの対象に弱い移民反対論・・スケープゴート探しが盛り上がる状況になっています。
アメリカは基軸通貨国の地位を利用して資金環流でファイナンスし、イギリスは金融市場・シテイの場所貸しで何とか凌ぐ構図でしたが、場所貸しでは大した資金が入りません。
ホテルやレストラン林立する街よりは、高級ホテル・レストラン利用者の住む街の方が一人当たり税収が多く入ります。
いつも書いていますが観光で成り立っている街はホテルなどの経営者以外ベッドメイキングや掃除など(スターバックスが大繁盛していても従業員の大多数は最低生活者になるでしょう)の末端底辺労働者の街になってしまいます。
いわゆるウインブルドン現象の本質です。
アップルの成功と言っても99%?は中国の工場や日本台湾などの部品業者が潤っているのであってアメリカの恩恵は株式配当益でしかない点が、国内部品産業等で健闘している日本との大きな違いです。
米英共に結果的に金融資本的利益に頼る点は同じですから、反ウオール街騒動やとランプ現象・・EU離脱論の昂揚になったようです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC