マイナス金利の限界(三菱の資格返上の波紋1)

三菱UFJ銀行のプライマリーデイーラー資格返上申請が大問題になっています。
http://jp.reuters.com/article/bk-mufg-bond-idJPKCN0YU0NN
2016年 06月 8日 18:15 JST
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焦点:三菱UFJの国債特別資格返上、決断の背後にマイナス金利
「[東京 8日 ロイター] – 国債市場を支えてきた三菱東京UFJ銀行の特別参加者(プライマリー・ディーラー)からの離脱は、日銀のマイナス金利政策によって市場構造が大きく変化している現状を浮き彫りにした。」
以下財務省「国債市場特別参加者制度」からの引用です。
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html
国債の大量発行が今後も続くと見込まれる中、我が国では平成16年10月以降、「国債市場特別参加者制度」を導入しています。これは、欧米主要国 において、国債の安定消化促進、国債市場の流動性維持・向上などを図る仕組みとして導入されている、いわゆる「プライマリー・ディーラー制度」を参考としています。
この制度は、国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が「国債市 場特別参加者」として特別な資格を付与することにより、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的としています。制度の 概要は以下のとおりです。
国債市場特別参加者制度 制度概要
特別参加者の責任・応札責任:
全ての国債の入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の相応の額を応札すること。
・落札責任: 直近2四半期中の入札で、短期・中期・長期・超長期の各ゾーンについて、発行予定額の一定割合(原則短期ゾーン0.5%、短期以外のゾーンは1%)以上の額の落札を行うこと。
以下省略
上記のとおり(最低これだけは引き受ける安定消化の保障)条件で仲間入りさせる仕組みです。
日本の最大大手銀行がこれを断る・・特別な買い受け資格などいらない・・国債の安定消化を断わらざるを得ない事態が起きていると言う意味で激震が走っています。
ところで金融機関は本来一般から資金を集めて一般人には分らない有望投資先を見つけてまとめて投資したり融資するのが本来(は決済機能でしたが、この1〜2世紀に限る)の業務です。 
言わば政府が税を集めて道路や橋を造る・警察力などの公的制度維持するのに対して、民間需要に対しては民間の銀行が市場での需要に応じて資金分配する仕組みでした。
19世紀型政府としては、夜警国家思想が知られていますが、日本の場合明治維新以降欧米に追いつき追い越すための近代化資金として、郵貯制度を創設して民間から資金を集めて(国営製紙工場や製鐵その他)財政投融資して成功して来たことを紹介しました。
(この功績が大きいのでもはや無用になったからと、特定郵便局をむげに扱うことは許されません)
第一次世界大戦以降ケインズ説によって、日本だけではなく世界中の政府にとって財政投資政策の巧拙が重要になってきました。
安倍政権も「三本の矢」が知られるように経済政策が主要テーマになっていることからも明らかです。
金利水準だけを中央銀行が決めるとしても市場の資金需要とその配分・セールスを市場に任せていると、海外受注あるいは企業誘致(工場用地造成や固定資産税減免など)出来ない時代・・インフラ輸出その他政府が海外でトップセールスするしかない時代です。  
資金分配に関する政府の役割が大きくなる一方で市場の資金分配機能を見ると、株式市場に一般人が直截アクセスするようになった上に、各種ファンドが発達している結果、銀行の資金分配能力がなくなる一方ですから、銀行は資金を集めても何を出来るか(残っているのは祖業である決済機能だけか?)が問われねばなりません。
金融機関の使命低下・・喪失については、このコラム開始直後・例えば05/02/07「銀行の機能変化と銀行救済策12」以前から繰り返し書いてきましたが、リーマンショック以降の金融緩和・金利低下=紙幣のだぶつきが,唯一残っていた貸し出し機能についても致命的ダメージを与えたように見えます。
機能低下・・業務能力(資金分配機能や貸し出し)低下の結果、預かった資金をマトモニ運用出来ずに日銀に預けたり国債に滞留させて,確実な利ざやで儲ける無作為収入にあぐらをかいていること自体が産業としての存在意義がなくなって来た結果・・最後の足掻きだったのです。
本来の銀行業務をさせるためにも、日銀預金金利を下げて国債を日銀が買い上げて銀行には銀行の仕事させる発想は当然のことですが、国債金利もマイナス化して来ると全部日銀が買い上げてくれないと銀行が一部でも引き受けし切れなくなったのが特別資格の返上問題です。
これは、本当の市場需要がない・・マイナス金利は市場原理から見て無理があることを表しています。
無理に金融機関に引き受けさせるために一定の特典を与えるグループ化が、上記プライマリーディーラーシステムですが、一定率まで日銀が買い戻してくれる密約の恩典程度では・・100%買い戻してくれればリスクがないですが・例えば7〜8割しか買い戻さない場合,銀行は残り2〜3割を自力で売りさばく能力がない→エンドユーザーがいない・・国民がマイナス金利の国債を欲しがらないのは当たり前です。
私の場合、マイナス金利で敢えて買う気持ちがしない・・タンス預金にしておくか少しリスクがあっても、外債その他いくらでも投資先があるよ!と言うのが普通です。
三菱としては売り損ねて自己保有していると、将来の金利アップのリスクに耐えられない「損だ」となって来たのが(株仲間・ギルド資格)返上問題です。
末端の買い手がつかないと言うことは相場が高過ぎると言うことですから値引きして売れば良いのですが、それが何故出来ないかと言う問題です。
三菱銀行はリスクがあると思えば市場金利をつけて損切りすれば良いのです・・・・例えばゼロ金利で売れないが1%つければ(割引価格で)売れると思えば、その金利で売り出して損切りすれば良いことですが、それを1社でもやると日本国債の暴落・・日銀の無理なマイナス金利設定の崩壊が始まってしまいます。
三菱UFJ銀行の態度表明は「王様は裸だ」と子供ではなく大臣にあたる最大手銀行が「プラス金利でないと売れない」と言い出したことになります。
日本の代表的大企業がゼロ金利では、社債発行出来ないよと言い出したのと同じです。
ところで、何年も前からトヨタなど大手日本企業発行の社債が、南アランドやトルコリラなど何%の高利回り外貨建てで売られていて、これの営業を受けることが多くなっています。
買う立ち場になれば為替リスクのない円建て買いたいのですが、国内でゼロ%近辺の金利で発行したらいくらトヨタでも買い手がつかないので、金利の高い国の通貨でワザワザ発行しているようです。
外国の金融業者を儲けさせないで国内で売れる金利で発行すれば良い筈ですが、日銀の金利政策をコケに出来ない・・遠慮があるからでしょうか?
市場原理無視の金利政策は発行企業に、ワザワザ海外金融機関に頼んだり当地の機関に届けでるなどの手間をかけさせ、日本の社債発行機関の仕事を奪い海外為替の動きにうとい国民にリスク負担をかけるなど、みんなに損をさせている印象です。
三菱の資格返上問題は、日本の代表的大企業がゼロ金利では、社債発行出来ないよと言い出したのと同じです。

消費力アップと消費税増税論の矛盾1

金融緩和(金融調政策)によって直接的経済成長を期待する役割が先進国・純債権国・豊かな社会では終わっていることをここでは書いています。
億単位の預貯金を持っている人は、銀行金利が下がっても消費を増やしたりすることはありません。
世界の工場としての役割が終わって需要地・現地生産に切り替わりつつある現在、国内生産量は自国消費プラスαに規定されるのが原則です。
国力の源泉が今では消費力にあるとする意見をMay 7, 2016「資源+生産力から消費力アップへ1」以下で書いてきました。
成長戦略とは内需拡大化またはプラスα部分(マザー工場機能)を増やすしかないのですが、プラスα分は画期的製品で成功しても国内限定でなく現地生産に移行して行きますので、先行者利益期間が過ぎれば元に戻るしかありません。
千か万に1つの大成功を期待するよりは、庶民の消費底上げ政策の方が規模が大きく安定的です。
国民の方も、ある程度のものは手に入っているので、政府の号令一下・・金利をちょっと下げれば設備投資が増え、住宅や各種ローン購入者が増える・・国民が政府の思うように消費を増やしたり減らしたりする単純反応する人が減って来た・・直ぐ反応する時代は終わっています。
純債権国・紙幣あまりの社会では、供給過剰・・消費不足社会ですから、消費を増やす政策(明日以降書いて行きますが量は足りているので生活レベルの向上・・トイレがあるだけはなくウオッシュレットが普及するように、文化発進力の充実)が必須ですし、レベルアップ消費が増えて生活が充実することは国民福利増進にも叶っています。
絶対消費量を増やすには人口拡大と一人当たりの消費を増やす2方法がありますが、人口を増やす方法は、生活水準がそのままの前提ですから国民には、夢がありません。
一人当たり消費を増やすと量の欲求が限界に近づくので、商人はイキオイ全ての分野でレベルアップ競争になり、より上質・・豊かな生活が出来るようになります。
既存商品が行き渡っている豊かな国では、今後国内消費拡大・レベルアップにはどう言う政策が必要かコソが必要な議論ですが、少なくとも、消費抑制に働く消費税増税論は時代錯誤の印象を受けます・・。
学者官僚は「木を見て森を見ない」と言うか、時代の大きな流れがどうあるべきか・・質素倹約論はギリシャ等の債務国には合理的ですが、世界一の純債権国日本の政治としては非合理である点に気が付かないようです。
豊かな社会、純債権国では、貯蓄ばかりしないで逆に消費=需要を増やした方が良いのです。
満腹だからもう要らないと言うのではない・・・量を消費するのではなく上質化する工夫が政策に求められます。
土建的財政支出の時代が終わったのは確かですが、それと内需拡大の必要性が終わったのとは質・レベルが違います。
世帯数より建物の数が多くなれば、家の需要がなくなったのではない・・もっと広い家に住みたい・快適な家(上質な家具調度に囲まれた生活をしたい)・交通便利な場所に住みたい需要などが無限にあるのと同じです。
美術品でもより良い物を解体見たい欲求に答える・この種のレベルアップで国際競争して行くべきですが、この種のものは従来型GDPにはあまり影響がありません。
田舎に行くと料理の味や盛りつけの芸術性よりは量で勝負する傾向が目立ちましたが、国全体でえば、田舎者のスキなGDP競争から脱却すべきです。
今後は量を充足する時代から、上質な料理・農産物・・トマトでも良いものを作ったり味を楽しんで行く時代です。
実用品ばかりではなく、絵画・各種文化を向上させて行く(江戸時代に俳諧や川柳落語は歌、小唄、義太夫・・歌舞伎や各地のお祭り文化等々が発達したように)政策に注力すべきです。
・・・・我が国はその意味でも上質なものを愛する点では遣唐使の昔から世界に冠たる上質品愛好国家ですから消費の上質化競争では、更に世界をリード出来るでしょう。
そうすれば、名実共に世界の尊敬を集められるようになります。
ドイツの批判みたいで恥ずかしいですが、内需の貧弱なドイツの問題点は内需拡大と言っても基礎文化が貧弱だからレベルアップ出来ない(おいしい物を作ったり楽しむ能力が弱い)から・・量で止まってしまうからではないかと言うのが個人的意見です。
質素倹約論に戻りますと、痩せた人は栄養を取った方が良いですが、肥満の人は栄養を取り過ぎないようにするなど国によって、処方が違うべきです。
特定分野、例えば自動車税・ガソリン税や住宅取得税アップは自動車や住宅販売抑制になることは明らかです。
増税分野=その分野の消費抑制の視点で言えば、消費税増税アップ論は特定消費抑制ではなく消費全般を抑制するための政策になることは間違いがないでしょう。
財政健全化論と増税とは必ずしも一致するものではありません。
赤字原因を縮小したり、成長による増収もあり得るしどの税目を挙げるか(どの分野を非課税にするか)も必ずしも一致しない・そこには多様な論理があり得ます。
(喩えば高齢化問題と言えば、65歳以上の人口比ばかりマスコミが書きますが、保険赤字の原因も高齢化ばかりではなく医薬品や医療機器の高騰にも原因があることを「ダイジェスト報道5と正確(中立)性担保4」February 14, 2016前後で連載しました・・これからは65歳以上で働く人が増えて来るなど社会保障負担も変わってきますのでもっときめ細かい年齢別分野別議論が必須です)
政府のえり好みによる・・特定産業に下駄を履かせる・・政府官僚が市場選別よりも優れている前提)個別産業優遇の財政政策は限界があるので、全体の足場・・水平面の上下変動を通じて公平に影響を及ぼし、対等条件下で伸びる産業と伸びない産業が市場で決まって行く金融政策の方が自由競争にも適している・・合理的政策であることをこのシリーズでは書いてきました。

異次元金融緩和とハイパーインフレ1

国際相場で必需品等を輸入する資金が枯渇するかどうかがハイパーインフレになるかどうかの基準であり、円相場の基準です。
日銀がいくら無制限に円を刷っても外国人投資家がこれを日本で借りて海外に持ち出して「円キャリー取引」をしている限り、同額の債権を日本の銀行等が保有しているのであって日本の負債ではありません。
トヨタなど事業系や資源開発企業等国内企業がマイナス金利の円を多めに銀行から借りて(あるいは社債発行して)海外投資しても同じく対外債権が増えるだけで円が暴落する心配がありません。
国内投資されない余剰発行分が海外に出て行くとその時点で流出した分だけ(国際収支の基調的黒字による基調的円高趨勢を押し戻す)円安効果が出ているのであって、大震災のときのように日本の危機発生時には円が戻ってくることが想定されている結果危機が起きるとその効果を想定した投機筋の円買いが起きて円高になるのが原則です。
対外負債(資本流入)を膨らませて一見景気の良い国(アジア危機前の東南アジア諸国など)の場合,世界経済危機が来ると資本引き上げによって大暴落しますが、日本は逆に危機が来たときに円引き揚げ・・還流予想によって逆に上がる・・ここ数十年続く危機時の円高はこの原理によります。
リーマンショックであれ、東北大震災であれ,昨年来の中国発の経済危機の恐れ→イギリスEU離脱ショックなどによる円高はすべてこう言う動きでした。
しかし、震災当時のコラムに書いたように日本の場合背伸びして海外投資していない・・国内資金滞留も多いので、大震災にあったくらいで、海外投資引き上げに追い込まれるほど困りはしません。
東北震災や熊本震災で見れば分りますが立地企業は甚大被害を受けますが、その復旧費用捻出のために海外工場を売却して資金を引き上げる必要がないと言えば分るしょう。
ただ復興用に国内余裕資金を使って海外進出を予定していた資金が乏しくなることは確かです。
日本は大震災で貿易赤字になっても総合収支では毎年巨額の黒字を計上しているので、何もしない(同額分海外投資して行かないと)と黒字分だけ毎年円が上がる基調(比喩的に言えばGDP比1%経常収支黒字があると何もしないと1%ずつ円が上がる)にありますので、震災復興等で海外進出用資金・・流出が減ると、この限度で海外資金流出が一時的に減る・・国際収支上の黒字分の蓄積による円高が進みます。

“http://www.asahi.com/articles/ASJ2556FSJ25ULFA01J.htmlからの引用です。

財務省が8日発表した2015年の国際収支(速報)によると、貿易や投資による日本と海外のお金の出入りを示す「経常収支」の黒字は前年の6・3倍の16兆6413億円だった。原油安による貿易赤字の縮小に加え、訪日外国人による日本での消費が増え、旅行収支が53年ぶりの黒字となったことなどが経常写真・図版

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上記の第一次所得収支は海外利益送金収入ですが、この送金が大きい結果日本経済は恒常的に総合収支では黒字が続いている・・放置しておくと黒字分だけ円高が進むので、恒常的に海外還流して行く必要がある状態です。
大地震等の資金需要が出たと言ってもその程度は微々たるもの(上記例で言えば海外投資が皆無になるのではなく何%か減るだけでしょう)東北大震災の2011年以後数年間で見ても貿易収支が赤字になっても海外収益で穴埋め出来ていて、総合収支が黒字のママであったことが分ります。
ただ、世界の金融業者は他人のお金をキチキチ運用して投資する立場しか知らないので、「経済変調があると日本が資金を引き上げるだろう」と言う間違った読みで円が上がるので、日本は迷惑します。
間違いであろうとなかろうと・・実際に円上がる以上はこれを阻止する必要・・世界危機時に日本が損をしていなくとも円の大量発行を仕掛けて円の独歩高を阻止する必要があったのですが、これを怠っていたためにリーマンショック後日本経済が低迷してしまったのです。
危機時の通貨騰落率によって、そのときの国際的経済力のランキングが分る仕組みです。
従来はUS$1強でしたが、今や何かあると(アメリカの金融緩和の打ち止め→中国等から資金引き上げリスクの予想、あるいはEU離脱ショック予想だけでも)日本円の上がる率が高くUSドルが少し上がる程度・これが世界の実力評価と言うところです。

韓国のミニバブル3(家計負債の増加1)

企業の場合、儲かると更に儲けるため・・成長のための再投資・借入があり得ます・・企業規模が大きくなると負債も大きくなるのが普通ですが、家計負債は投資用の借金ではありません・・。
日々の買い物や電話水道料金も翌月払うまでは負債には違いないですがこうした1〜2ヶ月で回転して行く決済用負債は別として、サラ金やカードローンの多くは、生活費不足に原因があります。
個人金融資産の増加率と成長率を比べても意味がない・経済成長している場合、国・社会が豊かになっている筈なのに個人・家計負債が何故増え続けているのかと言う疑問です。
オーナーが経営で成功し勤労者が勤務先で出世し給与や手取り収入が2倍〜3倍になれば家計が潤沢になり・苦しいときに借りていた借金を返すことはあっても、成功している人が家計補助のためにサラ金から借りる額を増やすのは希有の事例でしょう。
GDPが仮に2倍になればこれに比例して家計負債が増えるのではなく家計負債が減って行くのが正常な姿です・・この辺が企業規模に比例して負債が増えるのとは次元が違います・・昨日紹介した韓国銀行による「経済規模が大きくなっているから家計負債が増えても心配がない」と言う主張は、仮に借金の伸び率が成長率と同率で増えているに過ぎないとしてもすり替え論理になります。
国単位で見れば、日本でも高度成長の結果・・それまでの外貨不足国から対外純債権国になって行きましたし、(個人金融資産も増加の一途です)韓国も今では外貨準備が潤沢になっている(借金や外資流入で増えているに過ぎない・・真水の外貨準備は少ないのかも知れませんが)と言われています。
これが個人単位になるとGDP伸び率以上に家計負債が伸びているのは異常と言うか、GDP統計に無理(噓?)があるのかあるいは、経済成長の果実が均等に行き渡っていない・・偏っている結果を表しています。
新興国では不均等には目をつぶってでも先ず儲ける企業や人を増やすしかないと言うのが一般的ですから、(アメリカも元は新興国でしたから、アメリカンドリームを宣伝してきました)これが長引くと不均等のひずみが大きくなります。
経済成長すると新製品・サービスが町中に溢れる→成長の果実を得られない人も似たような消費に走るしかない・・裸足だったのがみんな靴を履くようになると成長に関係しない人もクツを履くしかない・・みんな高校に行くようになると自分の子供も高校にやりたいので結果的に家計赤字が増える・・需要に応じて消費者金融業者が増えます。
社会全体の成長による平均的生活水準アップに着いて行けない人が増えると消費者金融・・サラ金系が発達するのはこうした関係です。
日本も成長のひずみの結果サラ金系が一時大盛況でしたが、この弊害除去のために貸金業法の大改正で総額規制等が出来たときに「需要がある以上はかえってヤミ金がはびこるのではないか?」と言う心配が大きかったのですが、そちらに行かずに現在収束しているのは、格差是正・・富みの再分配が静かに!成功している・・借りなくとも一応の生活が出来る社会になっているからでしょう。
別の視点か見て、家計の負債残高が、GDPに迫る(92、9%)のは容易ならざる事態です。
GDPが全部家計に入る訳ではない・・家計収入=個人収入はGDPの一部でしかないのです(労働分配率が100%では企業が成り立ちません)から、国民全員が平均年収の何倍も借金している事態です。
実際には全員が借金している訳ではないので、借りている人はその又何倍も借りている計算になります。
韓国の家計負債の実質(再分配が貧弱)は家計負債の統計以上にもっと深刻らしいです。
韓国では事業負債は実質個人負債であることが多い(隠れ個人負債?)と言う意見が紹介されています。
http://www.data-max.co.jp/280218_ry02/では以下のとおりです。
日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「 ・・・もう1つは、韓国の自営業者の負債である。参考までに述べておくと、韓国の自営業者の比率は、他の国に比べて非常に高い。というのは韓国では会社を辞めると、日本のように嘱託社員として働くとか、今までの経験を活かす場がとても限られている。そのため、韓国ではリタイア後の収益が急激に減少する特徴が統計にも表れているし、他に選択肢がなくて自営業を始めるケースが多い。
money2 ところが、個人でお金を借りると家計負債になるが、自営業者がお金を借りると、事業資金扱いになり、それも家計負債には含まれず、企業負債になっていることも多い。自分がこれまでやって来た経験を活かしてやる事業ならいいが、まったく違う分野に入って事業をしながら習得していく方法では、なかなか成功は難しい。会社の退職金などでスタートした事業がうまく行かず、廃業しようにも周囲の目があるから、借金しながら頑張っているケースが多い。
その結果、事業に失敗し、中産階層から下流階層に転落することになる。とくに自営業は競争が激しく、今の時代のようにモバイル時代になってくると、自営業が成功する確立は低くなる。
 その自営業の現実が、家計負債にはそのまま反映されていないという指摘である。」
上記によると韓国では個人事業による個人負債が多いので、これが実際には個人家計負債と同視すべき場合が多い・・ラーメン屋など個人経営の負債の場合家計負債以上に額が大きく(個人事業の借金方が、非合法系からの借り入れ率も高く深刻なのが普通です・・これが海外売春に繋がっているように見えます)・・統計上の家計負債よりも実際にもっと大きいと言う指摘です。
韓国では起業が多く活発な社会と言う報道の仕方もありますが、合理的見通しもないのに追い込まれ起業が圧倒的に多いのでは悲惨です。
日本では中小企業が減るばかりで困ったものだとマスコミが言いますが、韓国のように破れかぶれの起業(イキナリキリスト教会をアパートの1室で開設するなども知られています)が多くなるのでは考えものです。

金融政策の限界5(韓国のミニバブル1)

まだ中国韓国人には、近代的モラル・ルールが国民の心の芯に定着し切れていないことを7月28日に書きましたが、人民の価値観にとっては金利が安いならば今のうちに借りられるだけ借りてしまおう・・最後に払い切れなくなれば、踏み倒せば良いと言う魂胆でしょうか。
7月28日に書いたように中国や韓国では、借りたら返す必要があると言う近代法意識が未成熟(・・韓国では何回も借金棒引き令が行なわれて来たと言われています)だから1昨日紹介したような野放図な金融緩和政策が大手を振っていられると思われます。
現在中国の野放図な借金拡大傾向については、ちょっと日付が遡りますが勝又氏経済時評5月9日からの引用です。
「「フィナンシャル・タイムズ』(4月28日付)は、社説で「経済改革に苦闘」と題して、次のように論じた。・・・
(2)「巨額の債務がもたらすリスクは明らかだ。負債総額は国内総生産(GDP)の約240%に相当し、大半の新興国の比率をはるかに上回る。赤字の国有企業がかなりの債務を抱えているため、この数字が長期的に持続可能であるはずがない。さらに懸念されるのは債務増加の速度である。もっとも、現在では深刻な金融危機のリスクは限定的だろう。閉ざされた資本市場、高い家計貯蓄率、潜在的経済成長力を考えると、中国の全体的な負債水準は警戒レベルを下回るだろう。また、政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある。政府の財務内容は依然、巨額の公的準備に裏付けられ、健全である」。
以下は勝又氏の意見です。
「中国の抱える債務総額は、この記事では対GDP比で240%としている。だが、マッキンゼー国際研究所の調べでは、282%(昨年4~6月現在)である。その後の債務増加を勘案すれば、300%超えも間近であろう。決して、安心できる水準ではない。「政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある」と指摘しているが本当だろうか。」
(3)「不良債権処理の包括計画をまとめないうちは、問題の先送りにすぎない。国際通貨基金(IMF)が警告したように、政治的に微妙な分野を含めて産業の再編に取り組まなければ、(債務の株式化や証券化を通じて処理する)現政府案は逆効果ともなりかねない。中国経済のリバランス(消費主導型への再均衡化)は極めて難題で、当局は予見しうる将来、刺激策を続けなければなるまい。これまではゾンビ企業にあまりにも肩入れしてきた。重要なことは保健、教育、都市の住宅、輸送、大規模な環境浄化など、より社会的に有益な分野に支出することだ。最も衝撃の小さいシナリオでも、債務負担の軽減にまだ10年近くはかかるだろう。その間、世界各国は中国の改革の遅れのあおりを覚悟することになる」。
この勝又氏の引用するリポートによって債務の合理的再編に取り組んでも(先送りをしていればもっとかかります・・)今では、中国の病人状態脱出には、10年以上かかると言うのが常識になっているようです。
まして中国の場合、統計さえ正確な発表が出来ない・・不正確な状態ですから文字どおり合理的対応出来る筈がない・・その場しのぎになるのは目に見えています。
今年2月26日のG20で鉄鋼石炭などの過剰生産を整理すると発言したのに、その直ぐに金融緩和した結果、休止したばかりの設備が再稼働始めたりマンションバブルが再発生している状態です。
上記記事では、「債務の株式化を図る」となっていますが、要は(株式化すれば返済義務がないから)返済を免れようとする方向へすり替えて行く魂胆であることが明らかです。
その後の経過はを見れば合理的再編・起業淘汰を計るどころか1昨日紹介したとおり、ゾンビ企業延命のために社会融資総量の激増になっているのですから大変です。
韓国も、ここ数年の成長率鈍化打開のための金融緩和が模索され少しずつ実行されていますが、金融緩和すると国民の反応が良過ぎて?債務が増え過ぎる・将来へのリスク拡大が心配される状態・・日本の国民のように金融緩和しても返す当てもないのにお金を借りない自律性が低い点が懸念されています・・中国同様に借りられるなら借りておこうとする点では同じ体質でしょう。
以下は、http://www.data-max.co.jp/280218_ry02からの引用です。
  日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「日本のようにローンを組むことによって金融機関の審査を通るのではなく、契約金だけを用意できれば、まず住宅購入ができるようになっているため、これが後で負債として負担になるケースも多い。現代は、昔のように一斉に不動産が上がるような時代ではなくなったので、値上がりを見込んで無理して購入した住宅が値下がりし、融資残額にも満たないことでハウスプアになったりしている。
 とくに現在の朴謹恵大統領時代になって、不動産を活性化させて、内需活性化の呼び水にしようという狙いで金利を下げ、不動産の規制を緩和したところ、政府の予想を上回る急激な不動産過熱が発生し、その期間中に家計負債は急増してしまった。政府では「お金を借りてでも住宅を買いなさい」と奨励した覚えはないと否定しているが、いずれにせよ、家計負債が膨大に膨らんだことは紛れもない事実である。」
政府が煽ったかどうかは別として国民が簡単に借金に飛びつく体質である点では日本との大違いです。
国民をたぶらかして大儲けする中韓の企業や政府と国民の方がしたたかな日本社会との違いでしょうか?
日本のバブル崩壊を大騒ぎしていますが、急上昇した高値で売り抜けた農民や旧地主が不動産屋等が大幅値下がりで損をしたのと同額を儲けている・・国内での資金移動に過ぎないとう意見を連載したことがあります。
中国の場合企業家(日本からの投資家を含めて)から地方政府(共産党幹部)に所得移転したことになります。

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