中華(光復)思想3(目的と手段の違い1)

ここで孫文と中華思想の関係を見ておきましょう。
孫文の事績・・http://www.jacar.go.jp/modernjapan/p06.htmlからの一部引用です。
「1905年には、これまで革命活動を行ってきた興中会・華興会・光復会が結集して、東京にて中国同盟会が結成され、孫文は総理となり、革命運動をさらに推進することとなります。」
清朝打倒運動団体には、以上のとおりの3名称の団体がありこれが合体して(町村合併に多いあんちょこな言い方をすれば3団体の文字合わせ?)「中華」+復興思想に結実して行った経過が分ります。
上記共通の復興名称は国名にふさわしくないから消えていったものと推測されますが、復興を願う心情は自明のこととして掲げなくなった可能性もあります。
今でも韓国.台湾(中華民国政府)では「光復節」が大々的に行なわれていますので、中韓民族にとっては今でも「光復」が最大テーマであることがわかります。
https://ja.wikipedia.org/wiki
「光復節(こうふくせつ)は、大韓民国および台湾の祝日。
8月15日。大韓民国の祝日で、朝鮮半島が日本による統治から解放されたとされる日。光復節 (韓国)を参照。」
日韓併合前の日清露3国のヘゲモニー争いの間でどちらに付くかで右往左往していて殆ど自立性のなかった朝鮮の状態をとりもどすのが何故「光復」なのかという突っ込みを入れたくなる人が多いでしょう。
2013/09/08/韓国民の行動様式19(恩を仇で返す国1)のコラム以下で、高宗政府に対するクーデター未遂事件の黒幕として当時政界の大物(王族重鎮です)「大院君」でさえ駐留していた清朝の軍閥・・袁世凱に拘束され中国に連行されてしまう状態・・文字どおり清朝の直接軍事支配下にあったことを紹介したことがあります・・文字どおり清朝による直接の軍事支配下にあったのが李氏朝鮮です。
今のチベットやウイグル自治区の少数民族弾圧の厳しさが世界ニュースになっていますが、自治区と言っても警察から軍事に至るまで、直接支配を受けている今の状態よりももっと厳しい状態を(当時は国際批判など全くありませんので・・)想像すれば、当時の清朝による朝鮮族支配の苛酷さがわかるでしょう。
清朝による過酷支配があったからか?李氏朝鮮による人民支配も過酷を極めていました。
日本支配前に戻る=一般人(ヤンパン支配下の人口は約95%)にとって、文字もまともに読めない奴隷のようなヤンパン支配下の状態に戻るのが何故「光復」か?となります。
1説には、日本によってヤンパン制度が廃止されて平等に教育されてしまったことを恨む旧支配層が元に戻るのを歓迎しているだけともわれますが・・。
パク大統領・・ひいてはこれを支持する韓国人の心情が中国・・元〜明〜清朝と続く従属時代の復活を望むのをいぶかしく思う日本人が多かったのですが、彼らの心情はヤンパン支配復活への郷愁と日本の風下に立つよりも清朝やモンゴル支配下で、日本よりも席次が上だった(勝手に思っているだけですが・・)と言う序列復活の方が嬉しいのです。
上記のとおりとすれば、今後中国の時代が来ると読んで逸早く馳せ参じて、より良い席次を獲得期待に傾いた気持ちが分ります。
中国革命運動家の心情に戻りますと、冒頭紹介の団体名から見ると、孫文ら革命運動家の希望は現在の不名誉・屈辱的な現状打破を求めるスローガンとして過去の(あったかどうか不明の)栄華の復活を主張していた諸団体が革命運動の母体であったことが分ります。
フランス革命などでは過去(アンシャンレジーム)を断罪し、新しい時代の到来を主張する組織を革新系と言うものですが、中国の場合、清朝打倒を言うもののめざすべき心情は「栄華の復活」だったことになります。
中国古代からの王朝崩壊・「易姓革命」が流砂のような民衆の無目的暴動によって起きて来たのに比べれば、「王朝打倒」の目的意識のある運動である点では一歩進んでいましたが、政権打倒するのが目的であって、「光復」が主目的では、新たな近代社会作り出すと言う・・西欧的意味での革新運動家ではありません。
清朝はモンゴルのような世界帝国になったことはない・・大英帝国やアメリカ合衆国を支配下に置いたことがない・・地球規模で言えば、単なる地域大国でしかなかったのですから、欧米諸国相手に取り返すべき栄華はありません・・。
復興すべき栄光・栄華があるとすれば、普通の民族にあるべき主権回復と地域大国の復活しか論理上あり得ないでしょう。
これの表現が、(清朝の版図を少し広げたアジア支配を任せて欲しいと言う)習近平の「太平洋2分論」ではないでしょうか?
栄華の復活がテーマの運動体では、後ろ向き・・新しい国づくりにはなりません。
栄華復活のためには国内政治・産業発展が必要ですが、主目的が生活水準アップにあるのと栄華復活が主目的でその手段として生活水準も引き上げた方が良いと言う程度の意識では格段にちがいが出ます。
しかも栄華の復興運動とは、実は「格下と見なしていた日本」に負けたコトに対する鬱憤が真のモチベーション・エネルギーであったとすれば、元々前向きに始めた運動ではありません。
国民のための政府よりは、日本のハナをアカしたいと言う思い(心情は文字上・あるいは公式にはでません)で運動を始めたのであれば、出来上がった政府も近代的要請である・・国民重視のマトモな政権になる訳がありません。
孫文はいわゆる(農地の分配を含む)三民主義を提唱していてこれを継承した蒋介石が北伐を開始すると当初はこれを歓迎する庶民の支持を受けて破竹の勢いで成功させましたが、一定の支配権樹立後すぐに腐敗してしまう点は歴代中国王朝と同じです。
戦後米軍から膨大な物資や武器援助を受けながら中共に負けてしまったのは主として」「政権腐敗」にあったと言われています。
孫文が世界の制度を勉強してきれいごとの三民主義を発表するのは良いですが、イザ具体的実施となると政治・実務能力が必要です。
専制支配下で来た結果、近代官僚機構も何もないところで、軍事支配してから実際にどうやって農民から土地を取り上げて分配するか分らなかった可能性があります。
この種の仕事を始めると余程清廉な行為をする社会訓練がないと、手心を加える袖の下が横行し勝ちですから大変です。
ましてや中国地域は、古代から有名な賄賂社会ですからすぐに賄賂まみれになってしまいます。
9月19日に王昭君の故事で紹介した漢詩にも、賄賂次第の習慣が描写されていますので、もう一度引用しておきましょう。
 「生乏黃金枉圖畫,死留青冢使人嗟。」
(生ずれば黄金に乏しく枉げて図画せられ、死しては青冢をトドメて人をして嘆かしむ」私流の読み見下し文です)
ちなみに「枉・まげて」とは日本の刑法で言うところの「枉法収賄罪」の「枉法」の「枉・おう」と同じ用法です。
刑法が平成7年に口語に改正されて「加重収賄」罪に変更されましたが、それまでの文語体のときには「枉法収賄」罪と言う熟語になっていたのは、この用例の1つでした。
文語体のときには刑の重さを基準にするのではなく、「法をまげて」運用したから刑が重くなると言う内容による違いを表していました。
賄賂をもらうだけでも単純賄賂罪ですが、その結果実際に不正なことしたときには「枉法」収賄になり結果的に刑が重くなります。
上記漢詩には画工が賄賂をもらわないから実物よりキレイに書かなかっただけではなく、積極的に汚く書いた意味が込められています。
刑法
加重収賄及び事後収賄)
第百九十七条の三  公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2  公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3  公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

フラストレーション度2と中華の栄光復活1

話題を北方領土回復に戻しますと、日本は軍事力で押しきるのは国是としてありえないので交渉しかあり得ません。
戻ってくるとすれば日本がロシアを追いつめたからではなく欧米が追いつめたので中国に頼ったものの大した協力をしてくれないので困っているロシアに日本が手を差し伸べる関係が必要です。
友好・信頼関係を安倍政権が時間を掛けて形成しておいたこと・・その方向になったので解決しそうになって来たことになります。
力づくの解決が正しくないと言う道義基準の社会では、長期的視点での友好関係樹立・・要は外交能力が重要です。
中国はまだそこのところが分らない・・直截要求するしかない・・・幼児ギャング世代レベルの社会と言うところでしょうか?
このあとでEUや韓国などの関係を書いて行きますが、中国はちょっとでも不利なことがあるとすぐ目に見える仕返しをする(・・フィリッピンに対するバナナ輸入妨害・・税関でサボタージュされてみな腐って返品されるなどいくらでもあります)即物的対応が目立ちます。
王者の栄華とはそう言うことをしなくとも、周辺から尊敬されることを言うものです。
何回も書いてきましたが,日本のように順次社会構造が変わって来た社会と違い、中国2000年(最近4000年の歴史と約2倍ガケで言い始めましたが、秦の始皇帝以来で言えば約2000年が正しいところです)の歴史と言っても、その間全く発展性がなく、同じ制度の繰り返しでやって来たので古代意識のままに留まっているから、幼児的発想しか出来ない原因です。
習近平は古代?の「中華の栄光・栄華を戻りたい」と主張していますから、古代意識がこの地域人民の社会レベルに合っているのでしょう。
ちなみに中華の栄光・栄華とは何かの定義すら分っていません。
やっていることから逆算すると「栄光」「栄華」とは、道義による名誉ある地位を目指すことではなさそうです。
日本領海での違法漁船操業・・言わば泥棒行為や、武力による支配地域拡張=強盗・海賊行為?をすることが「栄光・栄華の復活」であるかのような振る舞いです。
次に「中華の」意味ですが、そもそも過去の最大版図は清王朝が獲得したものであって、満州(女真)族・異民族支配の「栄光」「栄華」であって漢民族の栄光・栄華ではありません。
清朝が南沙諸島海域を武力支配したこともない・・元々大陸国家であって海洋国家ではないのですが・・この点を措くとしても、「中華」の定義自体が何を意味しているのか分りません。
世界帝国を樹立したモンゴル王朝・元もモンゴル族に漢民族が服従していた歴史です。
異民族に支配された成果?を自分の成果に出来るならば「日本の栄光・栄華復活」と言えば、アメリカ合衆国も俺のものとなります。
仮に漢民族限定の栄光・栄華の復活と言うならば、漢民族の語源?の漢王朝で言えば、次々と王族女性を匈奴に貢ぎ物に差し出していた惨めな「栄光・栄華?」のことではないでしょうか?
蘇武・李陵の故事・・有名な漢詩もあります・・に明らかなように英雄視される武帝のときでさえ、有能な将軍李陵や蘇武が何十年も捕虜生活していたことが知られています。
如何に歴史を捏造しようとも、王昭君の故事にも明らかなとおりです・・支配している方が何故王族女性を差し出す義務があったのでしょうか?
中国贔屓の文化人は朝貢の歴史を強調しますが、それは外交儀礼の一方法でしかなく、しかもこれまで漢民族が異民族に支配されたときの方がうまく行っているのです。
朝貢貿易が支配を表すならば、物産を持って行くのとは本質・レベルの違う女性を差し出さざるを得なくなっていた漢民族と匈奴の関係はどうなるの?と言うべきです。
神に仕える皇族未婚女性の斎宮制度、日本古代に地方豪族から朝廷に差し出される「采女」制度〜戦国時代では、武田信玄と諏訪御前の関係でも分るように、女性を差し出すのは戦に負けた方がすることです。
漢民族が王族女性を差し出すこと・屈辱的協定によって、漸く匈奴との和解で来たのが歴史事実です。
王照君は李白の詩によって我が国でも有名です。

    漢家秦地月,流影照明妃。
    一上玉關道,天涯去不歸。
    漢月還從東海出,明妃西嫁無來日。
    燕支長寒雪作花,蛾眉憔悴沒胡沙。
    生乏黃金枉圖畫,死留青冢使人嗟。

話題が飛びますが、上記の書き出しを見ると、阿倍仲麻呂の「あまの原、フリサケミレバ春日なる三笠のヤマにイデシ月かも・・」(百人一首に採用されているので多くの人が知っているとおりです)と同じ着想です。
李白と阿倍仲麻呂はほぼ同時代人ですし、親交があったので(日本へ帰る船が難破したときいて李白の阿倍仲麻呂に対する追悼の詩が残されています)どちらがこの着想を先に書いたものか分りません。
阿倍仲麻呂の上記和歌は日本へ帰る送別の宴で王維らの前で日本語で歌ったと言うのが通説らしいです。
王昭君に戻ると、女性を代々差し出サザルを得なかった事実が、真実の歴史は漢族の方が懐柔のためあるいは実質的に服従していたことを表している・・安全を図るために要求されれば、女性を差し出すしかない・・体面を繕うために人民を犠牲にする今の中共政権の原型を見ることが出来ます。
その後の2000年間も万里の長城を築き続けたことから分るように、防衛の歴史です。
漢民族が北方騎馬民族に勝ち進んだ例がないのです。
現在の東北地方(満州)や内モンゴル自治区は、漢族が異民族に支配された結果一体領土になっているに過ぎません。
北方民族には文字歴史がないのを良いことにして漢民族が勝手な歴史を作って来た可能性があります。
文字のある日本でさえ、今やなかった慰安婦や南京虐殺が真実の歴史であるかのように大宣伝されています。

秩序崩壊と騒乱3(フラストレーション度1)

新興国の粗暴競争・・わがままの噴出を見ると、そこには正義の観念がない・・地道な経済政策等の王道で勝負する能力がないので、国内支持を得るためのパフォーマンス中心でマトモな議論にならない時代が目の前に迫っていることが分ります。
この辺はトランプ氏の主張も同じです。
マスコミはこう言う政治家が出ると「偏狭な愛国主義者・民族主義者・排外主義者・オポチュニスト」と言うレッテル張りで満足していますが、レッテル張りで解決出来る問題ではありません。
内政能力に自信のない者が政権を握ると対外パフォーマンスや国内弱者圧迫のパフォーマンスに頼りがちになります。
内政能力のない代わりに対外的に勇ましいことを主張するモノが選挙あるいは各種内部工作で勝ち抜いて選出されること自体、国民のフラストレーションの大きさを現しています。
フラストレーションを放置しておいて、ヘイトスピーチや排外主義が行けないとマスコミが宣伝しても、フラストレーションの溜まった多くの国民は聞く耳を持たないでしょう。
プーチンは当初資源価格急上昇によるボーナスで地位を盤石にしましたが、中国経済の勢いが止まった結果国際的資源下落が始まると経済低迷・政治的苦境が始まりました。
この辺はブラジル、ベネズエラ、みな資源高騰によって大きな顔をしていた新興国の指導者が追いつめられて、次々と政権崩壊が進んでいますが、彼らは地域軍事大国ではないので海外挑発によるパフォーマンスによる延命を図れないからです。
「アラブの春は、アラブ諸国による原油独占が揺るぎ始めたことが原因だ」と言う意見を数年前に書いたことがあります。
原油輸出国でなかった国の混乱も産油国からの潤沢な援助に頼っていた国が混乱に陥っている関係です。
ロシアは地域大国兼世界軍事大国ですから、資源下落による自滅を待つよりは・・と言うことで、目くらましのためにクリミヤ併合を行なった結果、国内的にはものすごく支持率が上がっています。
政治困難の本質が経済苦境にあるのですから、経済が回復しない限り本来の解決にはならない・・ウクライナに軍事侵攻し、クリミヤ併合しても経済が良くなる訳がない・・併合に伴う軍事費や占領地の治安対策比・現地迎合的出費や治安経費が却って増える一方です。
その上、世界中から経済制裁を受けてさらに国内経済が苦しくなる一方ですから、今度はシリア空爆(戦闘機・爆撃機1機あたり日々ものすごい出費です)を始め、国内の目を外にそらすのに余念がありません。
http://masteru.seesaa.net/article/428247380.html
シリア介入のコストは400万ドル/日

 こちらに よると、ロシアのシリア空爆コストは400万ドル/日である。IHS Jane’sの試算によると、空爆、供給、インフラと整備要員、巡航ミサイル発射のコストは、9月30日の空爆開始以来、8000万-1億1500万ドル に達している。ロシアの国防予算500億ドルと比べると、微々たる額であるが、コストとロシアの関与の度合いは膨れ上がるとクレムリンはみている。シリア 紛争は数年続き、兵士が死ねば、ロシアの関与は劇的にエスカレートすると専門家は警告している。
 36攻撃機、20攻撃ヘリがシリア内の基地から 一日あり40回出撃しており、これが三週間続いている。地上要員は1500-2000人と伝えられており、黒海やイラン、イラク領空経由で送り込まれた。 攻撃機は飛行時間あたり12000ドル、攻撃ヘリは3000ドル要する。攻撃機の平均飛行時間を一日あり90分、ヘリ1時間とすと、24時間あたり71万 ドル。毎日、75万ドル相当の弾頭を投下している。要員のコストは一日あたり44万ドル、地中海に艦艇を張り付けるにはプラス20万ドルを要する。また、 ロジスティック、情報収集等のコストも25万ドル/日かかる。すなわち、最小で一日あたり240万ドルかかるが、実際のコストは2倍に達すると見積もられ ている。巡航ミサイルは一発120万ドルであり、26発発射分で3600万ドルとなる。

確かに中東でのロシアの存在感をアップし,アメリカの凋落を印象づけましたが、それがロシア経済・・すなわち国民にとってどの程度のメリットがあるのか分りません・・出費が増えているだけでしょう。
介入が成功した場合、政権には貸しを作れますが、荒廃しているシリアの復興援助のてをカ空かない・・却って出費が膨らむのが目に見えています。
これをいやがって日本等に押し付けると戦後復興需要が日本等に奪われてしまいます。
イメージアップや業界団体での名誉や地位確保は自分の商売がうまく行っている場合の余技であるべきですから順序が逆です。
業界団体の会長等では出身企業の運営で失敗すると、自発的に身を引くものですが、政治の世界では内政がうまく行かないと外部での名誉を得ようと逆に頑張るのが現状です・・業界組織と違って政治構成員は非合理基準(フラストレーションで)で行動する人の方が多いコトが分ります。
シリア介入後ロシア軍機がトルコ軍に撃墜されるトルコへの制裁と称してトルコからの野菜輸入禁止を決めました。
実はクリミヤ併合に対するEUからの制裁で野菜類の輸出が禁止されて野菜不足で困っているのは、ロシアの方でした。
国民が困るかどうかより対外パフォーマンス・・自己保身の方が優先ですが、それでも国民が喝采し、支持率が上がるのですから排外主義がどうなるかは民度次第とも言えます。
冒頭に書いたように排外主義等の感情に訴える政策効果度がフラストレーション度に比例するとすれば、既に資源下落に追い討ち的に経済制裁されているロシアの方がフラストレーション度が上がっている・・比例してナショナリズムに訴える効果が高くなっています。
北朝鮮で言えば、経済制裁等で追いつめると却ってナショナリズムが高まる→対外挑発行為成功?が支持率アップになる関係ですから、国際政治家は逆効果を狙っていることになります。
その裏の意図は別の機会に書きたいと思っています。

        

欧米覇権終焉の開始5(騒乱開始1)

何回も書いていますが欧米によるアジア植民地支配の残虐非道ぶり半端ではありませんが、これをみんな日本軍の所為にすり替えて来たのです。
戦後秩序=虚偽歴史強制に従わないビルマだけが孤立させられてきましたが、その他アジア諸国は不満でも独立後社会経済基盤の弱さからアメリカ・マスコミ支配に抵抗出来ず従うしかなかったのですが、これが崩れ始めました。
アメリカはずっと長い間目先の競争相手を潰すために汚いに手を使ってその時々の3〜4番手を利用してきました。
日本を叩くために中華民国政府と中共双方を唆して日本を泥沼の戦争・支那事変に引きずり込み、戦後は最大の競争相手ソ連を叩くために再び中国を利用してソ連崩壊に成功しました。
ソ連崩壊後次の挑戦者になった日本を叩くために韓国と中国を利用するにあたって、中国に対して協力する見返りに、太平洋2分論をほのめかしたと想像されます。
言わば、山賊同士の略奪品の山分け謀議・・ヤルタ~ポツダム宣言の米中版です。
中国に正義があるからプーチンあるいは北朝鮮、トルコ、フィリッピンに影響力が大きいのではなく、アメリカが手先として使うのに便利なだけの理由でこれまで大事にし過ぎた結果、アフガンゲリラやIS同様に巨悪が育ち過ぎたことによります。
IS同様に・・中国の正義なき反抗(鉄鋼製品だけではなくありとあらゆる分野で需給無視の巨額投資→出血輸出・公害輸出に始まり全ての分野で秩序破壊が始まっています)を機に、中東ではトルコ、ロシアなど、アメリカに不満ながら従って来た国々の内で元気印から順にルール違反の便乗が始まりました。
アメリカにはそれぞれに対する弱みがあって、思い切った制裁出来ない状態です。
(オバマの弱気と言われていますが、誰がなっても国際政治上簡単にトルコの人権侵害程度で制裁など出来っこありません・・満座で恥をかかされたからと言って、ここでフィリッピンを制裁して中国に追いやることも出来ません)
フィリッピンやトルコなどの強気の態度は、このような目先の読みだけで、大国アメリカ大統領に恥をかかせてやったと、国内で喝采を受ける・・新興国民は良い気になっている・・国内的には英雄視されて支持率が上がると言う読みです。
中国の海外版図膨張行動も国内受けを狙ったものですし、G20で習近平がオバマに嫌がらせしたことも子供じみていますが、国内的には「大したものだ」と言う受け止め方をねらっているのでしょう。
相手に失礼なことすれば自分の核か上がると言う意識・・国民レベルがそんなものと言えばそれまでですが、現実にその程度のレベルの国が多いのです。
そこには、本来の正義ヤあるべき礼儀の観念がない・・底が浅いのですが、だからと言ってバカに出来ません。
古くは北朝鮮、近くはクリミア問題で孤立したロシアに始まり、秩序違反で咎められたらブラックホールの中国に身を寄せればなんとか持ちこたえられる関係が続いています。
昨年9月5日の抗日戦勝記念パレードでは、プーチンが中国を頼っていたので、習近平が彼を従えるかのような形で閲兵式をやりました。
今年に入ってトルコのエルドアンの人権侵害に対する欧米の懸念表明が相次ぐと、突如数世紀にわたる宿敵ロシア・プーチンと肩を組むようになって人権侵害を批判する欧米を威嚇?し,更にはIS掃討よりはアメリカが支援するクルド族掃討に戦力投入を始めました。
アメリカはトルコに空軍基地を置かしてもらっていて、そこからシリアに出撃していることとロシアとの関係でトルコとコトを構える訳に行かない・勿論EUも、難民問題で入口にあたるトルコの協力がないとどうにもなりませんし、ドイツに至ってはもの凄い数のトルコ人が働いているのでトルコと揉めると国内治安悪化を抱える弱点があります。
トルコ人とドイツの関係は以下のとおりです。
 http://www.sankei.com/photo/daily/news/160801/dly1608010014-n1.html
「ドイツのメディアによると、西部ケルンで7月31日、トルコ系移民ら約4万人がトルコのクーデター未遂事件を受け、同国のエルドアン大統領を支持する集会を開いた。ケルンでは同日、反大統領派や極右勢力もデモを行ったが、大きな衝突は伝えられていない。
 ドイツはトルコ系移民が約300万人に上るとされ、トルコ国内の大統領派と反大統領派の対立が飛び火することが懸念されている。ケルンの警察はこの日、放水車や警官約2700人を配置して厳戒態勢を敷いた。
  集会ではエルドアン氏のメッセージを大画面で放映する計画だったが、裁判所が禁止。ドイツのシュタインマイヤー外相は集会に先立ち、南ドイツ新聞に「トル コの内政問題を持ち込み、意見の違う人々を脅すことは認められない」と述べ、クーデター未遂事件を機に粛清を進めるエルドアン政権をけん制した。エルドア ン氏側は放映禁止に対し「容認できない」と反発している。」
上記のとおり300万以上ですが、移民は概ね働き盛り・・現役中心ですから、乳幼児や高齢者を含めた人口が、約8000万人ですから、比率が仮に4%しかいなくとも、実際の存在感がもっと大きくなります。
上記ドイツ国内での騒動を見ても、トルコ系住民の意向を全く無視出来ない状態に陥っていることが分ります。
ドイツだけが難民受入れに積極的なのは、国内にいる外国人(トルコ系だけはなくもっと外にもいます)の意向を無視出来なくなっているからかも知れません。

http://www.newsdigest.de/newsde/news/featured/7775-1025.html
 ドイツの移民の取り込みの将来
ドイツは第二次世界大戦を経て南欧やトルコからの移民を労働者として積極的に受け入れてきた。その結果、現在ドイツ国内に は1640万人以上の移民をルーツとする人々が暮らしている。
2014年には、134万人がドイツに移住しており、その数は2015年には中東からの難民も加わって200万人にまで増大。一方、2014年には 76万6000人、2015年では推計で110万人がドイツから他国へ移住した。ドイツへの移住の数とドイツからの移住の数の差から純粋な増加をみると 2014年は57万4000人、続く2015年は90万人と約1.5倍の定住率となっている。

以上のとおり今や移民系人口数は1640万人以上で昨年だけで200万人と言うのですからもはや、政治家はうっかり移民規制発言を出来ない・・歯止めがかからない・・制禦不能状態が始まっていると言うべきです。
この反動で、逆に「民族のアイデンテテイを守れ」と言う強硬な主張が出て来る土壌・・ドイツでももうすぐ冷静な議論が出来ないトランプ氏やエルドアンのような人が出て来る・・大混乱時代が待っているかも知れません。
トランプ氏が既に選挙権を持つヒスパニック系を無視出来ないのと同じです。
日本でも最近民主党首選に絡んで、蓮舫氏が最近まで台湾国籍?を保有していたことが大騒ぎになっていますが、いつの間にか身近にいろんな国籍の人が政治の分野で活躍している時代が来ていることに驚いているとが多いでしょう。
私が普段から移民問題は多角的考慮が必要・・慎重にすべきと言う根拠です。

欧米覇権終焉の開始1

ロシアや中国がアメリカのヘゲモニーを堂々と争う状態になってきたのに対して、アメリカは、どうすることも出来ない状態が続いています。
アメリカの威信ががた落ちになって来ると最近では近代以降長年欧米に忠実だった地域大国トルコまでもがアメリカのヘゲモニーに挑戦するかのようにロシアに急速接近し、シリア内戦ではアメリカの言うとおりしない・更には国内人権弾圧批判に対しても欧米の批判を受け付けなくなっています。
元凶は中国の人権侵害や国際ルール無視を欧米が(巨大市場に目がくらむ一方で対日牽制もあって)大目に見て来た(裏からみればすり寄って来た)ことで北朝鮮が図に乗るし、その他中小国も便乗・・図に乗って来たと言うべきでしょうか?
ロシアのクリミヤ併合も中国と組めば(原油等の資源も買って貰える→その分中国のロシアに対する貸しが出来て中国の立場が大きくなる)それほどの孤立はないと言う読みがあってのことです。
フィリッピンの新大統領の傍若無人ぶりもイザとなれば中国と組む選択肢があってのことと思われます・・フィリッピン完勝の国際司法裁判所判決が出たばかりで日米が判決を守れとASEAN首脳会議で力説しているのに被害国の同大統領は中国に対して何の要求発言もしませんでした。
日米の主張・・国際秩序尊重の主張は穴の空いている風船を膨らませるような結果になってしまいました。
アジアではフィリッピンのような小国大統領でさえ、欧米の国内人権批判に開き直るどころか、ASEAN首脳会談時でのオバマ大統領と会談予定直前にオバマ氏に対する侮辱発言までする始末です。
この発言に対し、オバマ氏が「溜まらず?」首脳会談予定を取り消す異例の事態になりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160906-00000024-jij_afp-int
AFP=時事 9月6日(火)14時31分配信
「ドゥテルテ大統領は5日、タガログ語で「売春婦の息子」を意味する言葉を用いてオバマ大統領を罵倒していた。
両大統領は6日午後に米比首脳会談を予定していたが、5日のドゥテルテ大統領の発言後、米国側が会談を取りやめている。」

アメリカの権威失墜状態は大国中国+北朝鮮→ロシア→トルコ→フィリッピンへと、螺旋状に進み始めています。
さしあたりごろつき集団化に打つ手がない状態が始まっているとも言えますが、アメリカの権威低下傾向に嫌気をさしてトランプ氏のように「世界秩序など関係ない」と言い出せば18〜19世紀の弱肉強食時代が再開されます。
腕力はあるが総合力の劣る中国とロシアは、「腕力優先→道義や民の福利はその範囲で守れば良い」と言う前近代的国際秩序が居心地が良いのでしょう。
「俺には俺のルールがある」とローマ法王と絶縁してイギリス国教会を作ったイギリスのヘンリイ8世の支配程度が似合っている国の方が多いような気がします。
フィリッピンでは麻薬撲滅などの分野では、欧米的民主的手続など言ってられない状態にあることも分ります。
綺麗な本社ビル・宮廷内では、背広や礼装が似合うでしょうが、作業現場で背広が似合わないのと同じで,ルールもTPOが求められます。
中小国が何故腕力基準が第一で道義は二の次の国になびくかについて、国益よりは自己保身・・目先利益誘導(賄賂攻勢)に弱い指導者が多いと言う意見もありますが、それよりは、上記のとおり国情に合わない基準を押しつけられる問題点の方が大きいように見えます。
田沼清治の後を継いだ松平定信の政治を批判した
 「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁れる 田沼恋しき」
で知られるように、物事には場面ごとのルールが必要でしょう。
アメリカで銃の所持規制出来ないのは,国民底辺層のレベルがまだその段階にあるコトを表しています。
またデュープロセス重視の連邦最高裁判所判例の結果、法的手続に乗れば、完全な人権が保障される代わりに、現場射殺が横行している現実をこれまで何回も書いてきました。
これの二重基準をフィッリピン大統領が公式に奨励し,今まで2000人殺したとか自慢していることをアメリカやフランンスでは、実際に現場で(こっそり)行なっていることです。
こっそりとやっている結果、黒人中心に射殺対象になっていることが黒人の不満・・この数年黒人射殺事件の度に暴動発生に繋がり、問題点として浮かび上がっています。
フィリッピンの場合目の前で漁場を武力で中国にとられている状態で中国には何も言わない・・そんなことよりも人権侵害批判を言うオバマに悪態をつく指導者が生まれています。
トルコはEUに加盟したいがために欧米基準に合わせて死刑廃止していましたが、欧米のヘゲモニーが揺らいだこの機会にエルドアン政権が死刑復活を言い出しました。
欧米は国際ルールの主導権だけが守れれば良かったのに内政にまで口出しし過ぎて命取りになった印象です。
領土の一部をとられてもその部分だけですが、内政全部に口出しされる害・・イラクのフセイン大統領あるいはリビヤのカダフイ大統領殺害・によるその後の大混乱・シリアへの内政干渉による収拾のつかない混迷はその代表例です・・の方が大きいと言うのが今の方向性でしょう。
国民は独裁でも前の安定していた統治の方が何倍も良かったと言うのが普通の考えでしょうう。
独裁で良いかどの程度までの独裁権限まで許容するかはその国民が考えることであって、アメリカや西欧が口出しすべきことではありません。

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