アジアのヘゲモニー1

「アジアを中国に任せてアメリカはアジアには何も口出ししない」と言う地域分割交渉・・同じことが、米中、米ロ,米トルコその他世界各地で決まりそうになって、プーチンや中国がトランプ氏当選を歓迎しているのはこの期待によります。
そうは言ってもアメリカはこれまで深くコミットして来た利害関係があるので,元々の顧客を直ぐ切れない・・簡単に手を引く訳に行かない・・イギリスのEU離脱交渉並みの複雑な経過が待っています。
この辺はオバマがアジア重視と言っても、これまでコミットして来た中東や西欧や中東から直ぐに手を引けないで(サウジなど旧与党国が怒っていますし)オタオタして来たのと同じです。
実は戦争と同じで縮小撤退作戦の方が攻める・・支配地拡大より何倍も難しいのですが,国民にはその難しさが理解出来ない面もあります。
23日書いたようにアメリカは世界の覇者の地位は堅苦しくてうまく行かない・・その地位を下りて、ロシア、中国レベルの地域大国程度の格式でお互いに域内で言いたい放題、やりたい放題やろうじゃないか!と言うレベルに戻りたい方向は変わらないと思われます。
中国もロシアも世界の覇者をやるのは「荷が重い」・・割に合わないことが分ってきて地域大国程度で満足する智恵として「域内で無茶苦茶やれる方が良い」それにはアメリカを含めてお互い相手地域のことには干渉しないと言う地域大国間の縄張り(秘密)合意が成り立つ可能性があります。
これが、習近平氏の言う太平洋2分論です。
日本にとって一番困るのはこれで,アジアは中国の勢力圏と勝手に世界分割されると,日本の行き場がなくなります。
韓国の場合にはこれを漏れ聞いていて急いで中国に尻尾を振ったように見えますし、フィリッピンその他の弱小国は誰が域内大国になっても強い方に尻尾を振れば言い・・山内一豊のように逸早く次に覇権を握りそうな陣営に馳せ参じる方に智恵を使えば足りる立場ですが、日本は簡単に中国になびくワケには行きません。
日本は古代聖徳太子の髄の煬帝に宛てた文書に明らかなように対等な「天子」を名乗りアジアで唯一一度も華夷秩序に入った歴史がありませんし、今でも中国よりも明白な文化的先進国です。
(日出処の天子、書を没する処の天子に致す。つつがなきや…)
煬帝は怒ったと言われますが,怒りながらも無視出来ず日本へ公式返礼使を送り出し正式国交が始まりました。
https://kotobank.jp/word/%E8%A3%B4%E4%B8%96%E6%B8%85-112880
裴世清
隋の煬帝の使者。推古 16 (608) 年6月第1回遣隋使小野妹子の帰国に伴われて来朝。日本の威信を示すために難波の鴻臚館に盛大に迎えられ,隋の国書,進物を朝廷に届けた。同年9月第2回遣隋使とともに帰国。
2回目以降の国書からは「天皇」と言う名称を使用するようになります。
 「東の天皇,敬(つつ)しみて,西の皇帝に白(もう)す」
対等どころか,モノ「白(もう)す」とは、上位者から目下に言うような表現ですし、東の天皇が西の皇帝に・・と言うのも地位の上下を表しています。
中国では古代から正規皇太子を「東宮(春宮)」と言い、約千数百年後の清朝末期にもこの習慣で「西太后」が有名ですが,本来東太后が正規皇后であり「西」は次順位を表しています。
日本の大相撲で見ても,東の横綱が正であり西は副の地位です。
随は高句麗との戦争のために当時日本を敵に回せなかった国際情勢があったので,この機微をついて国交開始の最初の国書冒頭に「日没する処の天子へ」と一発かました聖徳太子(実在かどうかの議論は別として日本政府レベル)の外交勝利です。
随はこれを受入れ正規に返礼使裴世清を送り国交開始したので,2回目以降は「天皇」の名称が公式に定着しました。
その後663年)日本は白村江の戦いで唐新羅連合軍に敗れて朝鮮半島での拠点を失いますが,このとき体制一新して防備を固めたので(唐は攻め寄せることが出来ず)唐は対等者としての日本の国使・遣唐使を受入れるしかなかったのです。
現在社会用語の大多数が明治以降に日本で考案した熟語をそのまま使っている状況になっていることから分るように、近代では日本上位期間にはいっています。
習近平氏は中華の栄華復興を言いますが,この地域にあった王朝が日本よりも上位に立ったことはなく元々対等関係だった日中関係が、近代以降日本がアジア諸国に対して樹立して来たヘゲモニーに対する挑戦者でしかないのですから,言わば「復活」とは歴史の改ざんをしていることになります。
日本と髄の文化的格差を比較すると以下のとおりです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A3%E9%9A%8B%E4%BD%BF
「開皇二十年 俀王姓阿毎 字多利思北孤 號阿輩雞彌 遣使詣闕 上令所司訪其風俗 使者言俀王以天爲兄 以日爲弟 天未明時出聽政 跏趺坐 日出便停理務 云委我弟 高祖曰 此太無義理 於是訓令改之」
開皇二十年、俀王、姓は阿毎、字は多利思北孤、阿輩雞弥と号(な)づく。使いを遣わして闕(けつ)に詣(いた)る。上、所司(しょし)をしてその風俗を問わしむ。使者言う、俀王は天を以て兄と為し、日を以て弟と為す。天未(いま)だ明けざる時、出でて政(まつりごと)を聴く。日出ずれば、すなわち理務を停(とど)めて云う、我が弟に委(ゆだ)ぬと。高祖曰く、此れ大いに義理なし。是に於て訓(おし)えて之を改めしむ。
・・・・・解釈
「倭王は、天を以て兄と為し、日を以て弟と為す。天未だ明けざる時、出でて政を聴く。日出ずれば、すなわち理務を停めて弟に委ぬ」
これは、これで一つの文章であり、倭国の大王による、隋の皇帝に対する謎かけなのである。
この答えは「明けの明星」である。天は常にあるから一番目の「兄」であり、夜明け前に輝く金星(明けの明星)は二番目であり、三番目の「弟」である太陽が昇ると、金星(明けの明星)は見えなくなって(=理務を停めて)しまう。
つまり倭国の大王は隋の皇帝に対し、「あなたが天子=天の子なら、私は明けの明星ですよ」と、隠喩で述べているのである。
結局、この謎かけは隋の皇帝には理解されず、第二回遣隋使での直接的表現へとつながるのである。[独自研究?]」
太田道灌が,雨にあって「みの傘」を借りたくて立ち寄った先で、若い娘がみの傘の代わりに山吹の枝を差し出したの対して,立腹した話が有名です。
 七重八重ハナは咲けども山吹の実のひとつだになきぞかなしき
と言う古歌をもじった娘の気持ちを理解出来なかったことを羞じて太田道灌が多いに反省したと言うお話です。
上記解釈(定説かどうか知りませんが)によれば聖徳太子の時代から直接的表現しない都会的洗練が発達していて、中華地域の民度レベルと我が国の文化度にこのような差があったのです。
幕末に来たペリー提督の文化度の低さに日本側が驚いたのと同じコトが西暦608年に既に起きていることが分ります。
平安時代に和風文化がイキナリ生まれたのではなく,(気持ちを表現するのにひらがな表記出来るようになったことが大きいだけ)その前に万葉集の時代(漢字を日本の発音に応用して漢字を(万葉仮名)利用出来るようになってから蒐集したに過ぎないのでどのクライ前からあったか不明・・から独特の深い人間理解の文化が生まれていたのです。

対外強行発言と損失1

アメリカの国際交渉が思うように行かないのは,第二次政界大戦後世界覇者になった地位に応じた政治をするべき能力・背景の民度が低い付いて行けないことによりますが、民度の低い国民を背景とする政府は地位相応の能力がついていない結果道理に基づく交渉ではいつも言い負かされる方に回るのが許せない・・オバマが無能だと批判して溜飲を下げている状態です。
民度が低くて正義の基準がはっきりしなくても圧倒的強者であるときには何とかなっていましたが・相対的強者の地位になってくるとうまく行きません。
実は今でも一対一であれば圧倒的強者ですが、中東、ロシア、中国、その他「全方位的に)全世界的紛争に関わると比喩的に言えば中露に対して3~5対1の比率であっても勢力分散によって大幅に交渉力が低下して行きますので、強引な主張が通り難くなります。
全方位・同時多発的対処は不利なので,オバマは成長地域であるアジアに集中して、ここの権益だけでも日本との協調で守ろうと決めたと思われます。
このように決めた以上は、アジア以外では思うようにいかなくとも捨てた場所だと割り切るしかありませんが、思い切れない非合理意識(・・中東その他地域では利害関係者も一杯出来ています)が国民不満になっているようです。
政府も企業同様にの選択集中判断が求められているのですが、トランプ氏が政権担当になった場合これを承継できるかヒステリーを起こして世界中から手を引くことになるかです。
最近のトランプ氏の発言は上記アジア重視政策の基本になるtpp反対を昨日あたりヘースブックで明示したことから見て、アジア全域でのヘゲモニー確保も諦めて個別交渉で自国有利に展開したいという戦略のように見えます。
多角交渉の場合,上記のとおり一対一ならば圧倒的発言力の筈が10カ国相手だと勢力分散されて無茶が言い難くなります。
そこで一対一の個別交渉を強国が望むのですが,多角交渉の場合自分勝手な主張は誰が指導者になっても紳士的対外交渉をするしかなくなる、自分勝手な主張がうまく行く訳がない・・そこでTPP構想は本来アメリカ主導で始めたものでありながら,トランプ氏は「俺ならうまくやる」とは言わずに、過去の経緯や合意〜約束事を一切認めない・・ちゃぶ台返しをやると言う宣言を始めたのです。
何沙諸島問題でも中国は個別交渉を要求していて「関係ない国は口を出すな」明白に主張しているように、強国が一対一で小国を圧迫する意図が露骨です。
強迫に屈しない手強い相手には・・一方的に課徴金をかけるなど・・ルールによる交渉でなく腕力背景の交渉をする態度・・言いたい放題です。
戦後70掛けて作り上げて来た世界秩序をちゃぶ台返し的に全部認めないとなれば,世界は大混乱ですからこんな無茶が貫徹出来る筈がないですが、当初は個別ルール無視・違反から始めるのでしょう。
ヤクザは一時的に無茶出来ますが、長期的には無理が出るのとおなじですが、民度の低いアメリカ人がこれに「格好いい!』喝采している構図に見えます。
ところで選挙でのスローガンは分り良く単純ですが、実務となれば仮に選挙で圧勝しても風景が違って来ます。
喩えば、排ガス規制や耐震基準を変えるにしても、新規製品から適用するのが普通で過去にさかのぼって適用するのは余程の違法行為以外には無理があります。
移民追い出し・・新参古参の区別もスロ−ガン的には簡単ですが、既得権擁護のための移民排斥?にも入国後数世代経過、20〜10〜5年経過、数年経過など、なだらかなグラヂュエーションがありますから、どこで切るかは難しい・・切り分ける年次によって支持基盤の離反が起きます。
トランプ氏支持者には,居住歴の長いヒスパニック系が結構多いと言う解説が選挙前にあったことを紹介しましたが,トランプ氏は最近「犯罪歴のある不法移民だけ」と言い出しました。
現実政治とはこう言うものですから、トランプ氏が仮に選挙で圧勝したとしても(総取り制度をうまく利用しただけで獲得票数はヒラリー氏より少ないと言われています)統治権を握ると国内でさえも無理は出来ません。
まして対外政策は、相手があって国際情勢を背景に・・比喩的に言えば100の諸要素の組み合わせによる損得を計算して・・ギリギリの交渉で決まって来た経過があるので、国内で圧倒的支持を受けた政策は,逆にそれに縛られる・・政策自由度が低いことになるマイナスでしかありません。
実行出来ないとそれを支持した数に比例して「国内支持率を失うので協力して欲しい」と言う対外泣き言の範疇であって、アメリカと言えども外国に対する強制力はありません。
有無を言わせぬ課徴金等で無理を通せばそのしっぺ返しが必ず起きて来ますので,(22日書いたように国内物価上昇によって国民不利益に直結する外,)どんな小さなクニでもそれなりの対応(報復)が必ずありますし,長期的にアメリカとの約束は信用出来ないと言う評価が出来あがる不利益が生じます。
中国が投資した国外企業に対する商業ルールに反するいろんな嫌がらせをすると,カントリーリスクの高さを嫌がる国外からの次の優良投資減少リスクにあっています。
焦点が変なものを売りつければ客が泣き寝入りしても,その代わりそのお店に行かなくなるのと同じです。
中期的影響が大きいので強国と言えどもそれほどの無茶は出来ないので,内々の泣き言を言って無理を通して貰うには、国民に見えないところで何かを譲るしかないのが原則です。
現実的でない対外スローガンを実現しようとする場合、対外交渉は軍事力に訴えない限り勇ましいことを行って来た手前妥協すると国内的に政権が持たないので表向き強行突破しかない・・裏で相手国に大幅譲歩するしかない・・あまり実益のない成果を求めるために実質的国益の大幅売り渡し外交に陥ります。
中韓両国の首脳は「大言壮語」するのが普通ですが、外交では相手の了解がいる・・相手のメンツを潰すマイナスを補ってあまりある実益提供を内々にするしかない・・売国的外交に陥っているのが普通です。
習近平の英国訪問では、強引・非礼の限りを尽くして子供染みた優越感に浸ったようですが、その裏で経済合理性のない各種投資約束があった・・このため英国は仕方なしに応じた?と思われていることは周知のとおりです。
尖閣諸島周辺示威行為や南沙諸島の埋め立て工事強行など見ても,国費浪費でしないのが明らかです。
鳩山内閣が「少なくとも県外へ」と言うスローガンで失敗したのは、アメリカが応じるようなメリット提案の根回しをしていなかったことと、そんな大規模な政策変更に見合うほどのメリットを裏でアメリカに与えるお土産提案が不可能だったからです。
佐藤内閣時の沖縄返還に際してもそれなりの密約があったと言われています。
成熟した民主国家においては、見返りにアメリカとの約束内容も公開して、それでも沖縄を返してもらった方が良いかを正々堂々と沖縄県民や国民合意を図るべきだったことになります。

移民排斥とピープル概念の分裂?1

トランプ氏のスローガンでは,「移民追い出し」と言うだけで,アメリカ国内工場をどうやって維持するかの展望がありません。
移民を入れない以上はその分国内賃金が高止まりしますので,企業は(国内人材能力引き上げる努力しないで低賃金移民に入れ替えれば良いという意識でやって来た経緯から欧米の場合既存住民のレベルアップは困難ですので)企業は海外展開加速・・国内失業も加速するしかないでしょう。
これまでアメリカでは,企業は儲ければ良いという発想で,工場を海外に出そうが国内に移民を入れようが結果は同じと考えて来ました。
そこで新興国の低賃金攻勢に対する対応策として工場の海外移転と移民受け入れの平行対応して来たのがアメリカ企業であり,アメリカほど露骨ではないにしてもドイツ、イギリスなどの欧米企業でした。
この2方向の内移民受け入れが無理ならば・・海外へとなるのが普通の展開です。
これを防ぐために海外からに輸入への課徴金恫喝・・メキシコに工場を造る予定のフォードを名指しした演説でしょう。
ガバメント・・これを構成する企業家は現にいる人民だけのためではなく今後はいって来る移民を含めたピープルのための統治を期待されて来ただけですから、いくら移民が入ってもその移民を含めたピープルのためになれば良いと考えて来たフシがあります。
移民寛大政策がアメリカの長年の国是でした
この延長で海外展開してどこで儲けようと企業のためになれば良いし,企業のためを考えれば儲けた金をどこの国にプールしておくかも・・企業家にとっての有利不利が判断基準であり,自国民のためになるかどうかなどの基準不要・・自由自在であると考えて来ました。
これに不満を言い出したのがゴローバリズム反対論です。
西欧でもアメリカでも漸く新参古参を問わない・・ガバナーが管理の都合で商品構成や組立てライン設備を入れ替え出来る商品としてのピープルではなく、「既存民衆・先住民・現役従業員のための政治・企業経営をしてくれ」と言う気持ちが起きて来たように見えます。
これがイギリスのEU離脱の国民意思表示ですし、仏独での移民反対運動の高まりであり、「アメリカ第一・・移民追い出し」宣言でしょう。
エンクロージャームーブメントの例で書いて来たように,欧米のpeople・ピープルが人間も元々商品の一種として入れ替え可能概念であったと言うのが私の素人的意見です。
移民排斥のトランプ氏のスローガンを実行して行くには,移民あるいは新参者もピープルに含める従来概念を変更して行くか、移住して来たばかりの者を区別する新しい「仲間」概念の創設が必要になり,建国以来の移民受入れ基本方針の大転換が必要です。
トランプ氏の移民追い出しスローガンは,入れ替わり自由な(移民歓迎社会)ピープルを前提にしたgovernment・・for the peopleから、移民排斥・既存民だけのためのgovernmentへの変更宣言である以上、ピープルに2種類が生じることになります。
二種類にするには概念の変更が必須でしょうが,区別するには,区別するにたる内容実質の違いがあることが正当性・大義名分として必要ですが,これがないまま居住期間だけで区切りをつけるのでしょうか?
11月16日に書いたように日本社会の構成員・・国の民(たみ)とは郷土を同じくする「はらから」であり、ピープル・日本語約=人民とはこう言うハラカラ性を持たないものとすれば、ピープル自身が成長してしっかりした集団に(言語は進化するものです)化けて行くか、新たな集団特性を表すグループ名・・日本の「国民」のような名称が必要になるでしょう。
私の理解する日本の国民概念は、郷土を同じくするものと言う基本です・・ダム工事で村が水没して良いか、墓地移転のテーマでは、何世代にわたって住み続けた郷土を同じくする人だけが決めるべきことで移民や新参者が口出しできるのはおかしいと言う立場です。
アメリかもトランプ氏のスローガンどおりに「古くからいる人と移民や新参者」と区別するには、日本のように功利打算で来たばかり・・いつでも逃げて行く人と古くからいる人で簡単に逃げて行かない「国民」か否かで分けるべきです。
ただアメリカの場合,建国以来郷土を愛する精神教育をして来なかった・・環境無視して環境悪化すればゴーストタウンにして逃げて行く・・ビルが古くなれ爆破してしまう・・東京駅や法隆寺のようにチマチマと修理して行く社会ではありません・・のが新しい生き方のような思想教育して来た結果、(今でも環境保全に対して中国と世界1〜2位を争う無頓着な民族性のように見えます)古くからいる人が新参者に比べて郷土愛が強いとは言えません。
移民反対論を期待しながら,住み難くなっても何が何でも地元に残ってその街の復興に協力するつもりがなく,自分自身は真っ先にその街から逃げ出すつもりの人民が大多数とすれば,矛盾した自分勝手な願望になります。
先住権を保障しろと言うからには・・来たばかりの人たちと差をつけるに足る相応の愛郷心に裏打ちされる必要がありますが,アメリカの愛国心とは「郷土愛ではなく「軍旗である星条旗の元に拳を突き上げて歓声を上げる」敵対的行動を煽るためのに支配層から植え付けられた程度の浅い観念ですから,相手に要求する以上は自分ら自身も変わって行き・・新参者との違いを示して行く必要があるでしょう。
好き勝手に環境や資源を食いつぶして来た結果、残り少なくなったから仲間に入って来るな!と言うだけでは,道義的にも無理があります。
何かを要求するときには、「自分達も◯◯して頑張るから・・」と言うのが、(何か誘致するときにはそれなりの措置を講じたり,地元負担もします)普通ですが,現存ピープル自身が変身努力もしないし,出来ないとすれば,移民排斥論は論理的に無理が出て来ます。
元々功利打算で集まったに過ぎない「ピープル」であるから、そんな程度と言ってしまえばおしまいですが・・。
アメりカのこれまでの歴史を見ると名分など全く問題にしない・正義の基準は「腕力のみ」と言うやり方で来たしずば抜けた資源・経済力・軍事力を背景に無茶がそのまま通って来ましたが,今回もその一事例をつけ加えるだけの積もりでしょうか?
確かに移民排斥は相手が国内弱者ですから一方的決定も可能でしょうが,こういうことを国内外でくり返して来た結果、国力がちょっと陰っただけで世界中が言うことを聞かなくなってたキたのです。
アメリカ第一のスローガンの連呼は・・習近平氏の言う中華の栄華復活と基本心情が同じですが,栄光の復活には正義に基づく行動をすることが先ず第一でしょう。
正義など問題にせずに栄光を復活したいという場合には,相手を暴力で威圧するヤクザのような一時的[栄光」の復活しか出来ませんが,正義観念未発達の人民を抱える習近平氏もプーチン氏もアメリカのトランプ氏も後者を選択したがっているような印象を受けます。
アメリカは世界支配を得た結果、道義に基づく支配の仮面をかぶるしかなかったのですが,この役割を演じるのが重荷になって来たのです。
正義の仮面をかぶった交渉ではいつも結果的にうまくやられているこコトに対する不満・・ストレス発散を腕力によって実現したい願望が国民に渦巻いているように見えます。
中国やロシアの自分勝手・強引なやり方が性に合っているし魅力を感じるようになったのです。
無茶を通すためにプーチンのような無茶をやりたいと言うのがトランプ氏であり,これを支持する国民の願望でしょうか?
無茶ゴリ押しが聞くのは,地域大国が限界・・天下を取るとルールによる支配が必要・・自分も自分の作ったルールに縛られるのは仕方のないことです。
ルール無視をしたいとなればアメリカにとって,世界支配の地位は荷が勝ち過ぎているからその地位を下りて,地域大国に格下げしたいと言うことでしょうか?

民主主義の基礎10(産業構造の変化1)

金持ちも無茶に我欲を張る・・金持ちを自慢するのが恥ずかしいと思う社会・・日本で知られている有名高額所得者は、孫正義氏や日産のカルロスゴーン氏など外人系中心に留まります。
日本では成功者がトランプ氏のように王宮のような住まいに住む・・安倍総理との会談場所としてこんな豪華な映像が流れるコト自体恥ずかしいと思うのが普通です。
「メザシの土光と」言われたように財界の大物も,自宅ではメザシを食べていると言う神話?が本当かどうかは別として流布される社会です。
伊勢神宮も建物が豪華だから尊崇されているのではありません・・堅実に働く中間層が社会の宝として大事にされる社会です。
中間層が尊敬される社会になったのは、地に着いた仕事を自分でしている武士の勃興以来の堅実な武士が尊敬されるようになったことと関係があるしょう。
この下地があって,「驕る平家は久しからず」と言う格言?が人口に膾炙されているのです。
武士の台頭が始まってからの約1000年近くもの間、武士層は質素倹約に努めて自己鍛錬に努めて庶民の鑑・尊敬の対象となっていました。
幕末騒乱の原因でも普通は政争に勝った方が前政権を悪く言うものですが,徳川幕府支配層が腐敗していたと言う話を一切聞きません。
武士の時代が続いて「地位のあるものは経済慾を持っては行けない」と言う日本独特の?モラルが強固に形成されて来たように思われます。
こうした堅実な中間層が多い結果、いまだ中間層が厚くて質素倹約・自己鍛錬になれている下地能力が・・中国の低賃金競争にもいろんな工夫をすることによって,堪え切れている面があります。
欧米の中間層は,日本の武士のように自己鍛錬によって中間層になっていたのではなく,本来は庶民層の能力・・新興国庶民と能力差がないのにタマタマ産業革命に成功した先行者利益で世界中を支配して植民地支配体制を作り上げて搾取による巨万の不労収入を得て来ました。
この利権分配・・本来10万しか働く能力のない人が3〜40万の収入を得られるような嵩上げをして来たこと・これが本来庶民層まで中間層的収入を得て来られた構造です。
アメリカの場合には,広大な領地と巨大資源によって,これを活かすために大量生産方式を工夫発明したことによって,世界経済モデルを提示して世界支配権を手に入れました。
資源力や植民地支配等による旨味・不当利益によっていた分、欧米労働者の地位は脆弱で、この利得構造がなくなると一挙に本来の能力相応の地位に戻るしかありません。
アメリカの粗放・大量生産方式はクルマのベルトコンベアー・・フォード方式が有名ですが,農業・牧畜も皆粗放・大量生産方式モデルで世界を席巻したのです。
確かに良いものを手作業で作る・・味のある工芸品は良いのですが,少ししか作れないので,限定頒布しか出来ません・・。
良い物だけですと多くの人がその恩恵を受けられませんが、出来映えが伝統工芸品の6がけでもそこそこ使い物になるならば、100人しか買えなかった商品が100万人でも200万人でも需要のある限り工業的に安く作れる(例えば本皮でなくとも人工皮革・化学染料でもある程度綺麗な色柄など)となれば,世界の生活水準を底上げした歴史的意義が大きかったことは確かです。
味が粗雑でも,米麦トウモロコシその他各種食糧を大量に作る粗放農業生産品も食うに困る貧しいときには有り難いものです。
大量生産方式は,作業者の熟練度が低くて良いことから低レベル労働者も高額収入を得られるメリットがありました。
この方式の弱点はドンドン合理化して行けば行くほど,先進国に限定されない・・新興国・・どころか今では,バングラデシュあるいは最貧国でさえも同じものが作れる時代に入ったことです。
先行者利益を元手に高額賃金を払って来た先進国工場は軒並みやって行けなくなります・・工場を維持するには極端に言えば、バングラデシュの人と自国民労働者を入れ替えるくらいしないとやって行けません。
100%移民に入れ替えてもこれまでの不当利得?を利用して?先進国は贅沢なインフラを作ってしまっているので、この維持経費負担で負けてしまいます。
これがいまアメリカでインフラ維持に困るようになった原因です。
1〜2割または半分を低賃金移民に入れ替えても100%低賃金労働者の新興国の工場と競争出来ません。
仮に半分入れ替えて半分の失業者を出している場合、生活保護受給に転落しているか、移民にまけないように低賃金でも仕方ないと思って移民同様の低賃金で就職している元々の国民は、何のために移民と共同生活しなければならないか?と言う不満になります。
企業としては,自国内に移民をいれるより海外展開してバングラデシュの工場で現地人百%雇う方が気楽です。
欧米諸国の元々の住民・ピープルが移民を嫌がる以上は、自国では普及品製造から撤退して特殊品を作る工夫するしかない時代ですから、民度で差を付けるしかありません。
アメリカはピープルのレベルアップに関心がなく「低賃金競争には低賃金で」と言う政策で長年移民導入に頼って来た結果、今更の政策変更は不可能マテャ遅過ぎたとすれば,トランプ氏のし移民に頼らない政策は普及品の製造コストをいまよりもっと上げることに成り、結果的に米国製造業は益々衰退してしまいます。
結果的に・・大量失業が待っているでしょうから、これを貫徹するには排外意識を煽って対外強硬政策・・例えば3〜40%の法外な輸入課徴金を掛けるんど、腕力に任せた政策しかありません。
米国への輸出国は困りますが,それ以上に米国自身国内物価上昇で庶民が困る=生活水準が3〜40%下がる結果になります。
実は・・庶民だけではなく各種産業も原材料全て諸外国より3〜40%高いものを買わされることになると,全体的に米国だけが世界水準に比べて割高な製品になり米国製品を買うクニがなくなります。
世界から孤立して自給自足社会になって行くしかないでしょう・その内世界の進歩変化から置いてけぼりを食い・・今の北朝鮮やアフリカのようになって行くしかありません。
実際にはそこまで行く前に海外との格差に不満を抱く国民の支持を失うか、先手を打って排外意識を煽る方向・・豊かな国に戦争を仕掛けて略奪するなどの山賊国家に変質するしかないでしょう。
ロシアも中国も経済がうまく行かない国民の不満をそらすために、今はその方向に向かっています。
アメリかも,日本などと仲良くしていると喧嘩出来ないので難癖つけて喧嘩に持ち込んで戦利品をぶんどる方向へ行く方が「得だし溜飲が下がる」と言う変な方向・・中国、ロシアなどの仲間入りを目指しているのがトランプ選出だったことになり兼ねません。
プーチンや中国は19世紀型・・周辺弱小国を問答無用で踏みつぶすナチス的国益主張ですし,ドウテルテも自己中心的主張であり、トランプ氏の場合現在版の経済面での傍若無人の自己主張→行く行くは武力に訴える展開になる可能性が高いと言う点で共通性があって、気が合う印象です。
無茶苦茶言わないとどうして良いか分らない不満と言う点では共通です。
話を戻しますと上記のとおり,欧米の中間層は植民地支配の利権構造によって豊かな生活をしていた・・元々相応の能力があって中間層になったものではないことから,特殊品製造に移行する能力がないことから,新興国から追い上げられると能力に応じて地位低下して行くしかありません。

民主主義の基礎5・信頼関係4(people1)

日本では政府は国民の渾然たる一体感によって負託された世話役(町内自治会であれ、我々弁護士会であれ、基本は世話役)でしかありませんから、基本的に党派的運用に馴染みません。
衆議で決める調整型能力に優れた人材が求められているので、党派的利害を舌鋒鋭く?主張する(人の意見を汲み取るのではなく自分の主張を実現したい)政党は幅広い支持が得られない原因です。
他国では政府は人民とは別に存在する・・逆に多民族国家では特定支配民族をバックにしているソ連や中国の場合や資本・労働者対立前提のアメリカの場合、支配権力を握った方が非支配階層を最大限搾取する構造が生まれ易くなります。
異民族支配の場合、被支配民族の反乱を警戒し、選挙制度の場合、次の選挙が怖いという抑制があるだけです。
アメリカ社会を実質的に見ると周知のように黒人差別やヒスパニックやアイルランド系差別その他諸々の人種間利害があるにもからわず、彼らの声を代表する政党が事実上認められていないし、人種横断的に見れば、労使の利害対立があるにも拘らず、労働者系政党さえ許されない状態ですから、事実上の一党(資本政党)独裁体制になっています。
the peopleは、投票出来ると言っても、資本家の推薦する民主・共和両党の候補から2者択一選択しか出来ない仕組みです。
ですから、アメリカでは牛馬にも死なない程度の餌をやり健康管理,機械でも油を注し修理する必要があるように功利的目的による一定の歯止め(フードスタンプ受給資格を上下し、死なない程度に医療を施す)しか関心がないし、異民族間競争を制した中共やロシアの場合には、(大量殺戮兵器を要する近代権力は異民族の反乱が怖くないのでやりたい放題になります・・これに対してテロが発達して来たのは必然です)仕返し・報復の心配さえなければ(モンゴル族や満州(女真)族。チベット、ウイグル族に対するように)どんな残虐なことでもしてしまえる社会になります。
民族的、党派的利益実現を目指して選挙戦や内戦を勝ち抜いた以上、ガバメントは党派的、民族的利益実現を目指すのは当然の結果と言うことで、相手が仕返し出来ないとなれば国際法違反の原爆をドンドン落とす・そう言う国が、民主主義・人権尊重の先進国家と自慢しているのです。
民意を汲み取る必要を認めないで、どの程度まで社会保障するか・・支配者の憐憫・・思いやりを人道主義と言ってきたように見えます
日本の村落共同体は、構成員そのものの渾然一体たる組織・・言わば法人よりも前の組織・組合のもっと前の渾然たる集合体意識が一番似合う感じですが、主観と客観・神と人間・自他峻別世界である西欧の目から見れば、こんな集団は原始集団とバカにするだけなのでしょう。
我が国の場合・・基礎的集団である村落共同体を見れば分るように共同体と個々人との利害が峻別されないアニミズム的集団を維持して来たのは、最先端技術国家でありながら、天皇制その他古い文物行事を大量に維持伝承しているのと同じで誇るべきことであっても恥ずかしいことではありません。
日本ではちょっとした偉人がすぐに神様になって神社に祀られます。
我々法律家(その他各分野の文化人)は 西欧的基準に合わないと前近代で恥ずかしいという意識が強く、西欧基準に合わないと恥ずかしいとか否定的に見る傾向があります。
法律論としては法人実在説と擬制説との争いがありますが、日本の場合村落共同体に始まり各種組織が今風に法人化しても、法人が社員や国民とは別に超然とあるいは対立する存在するものではなく、みんなの集合体・・(これを大きくした) 象徴天皇のように考えている人が多い(西洋法を学んで来た大多数の学者はそうは言いませんが・・)でしょう。
昨日、パーテイー券が政治資金規正法の寄付にあたるか否かの論文があったので読んでいると、その中に例示として出て来た政治献金の合法性に関するリーデイングケースである八幡製鐵事件の最高裁判例が出て来て、その論者(法学者)は、最高裁の前提では何だか法人の実在性についてアニミズム的社会・法人を前提としているかのようだと言う印象?(をついでにちょこっと)書いていました。
学者からすれば、そんな時代遅れの発想が基礎にあるのはおかしいと言う意味でしょうが、西欧法に従って多くの学者が構成員である個人を超越した法人が実在するとしていても素朴な国民意識(いくら子供の人権と言われても母子一体感がなくならないように)では受入れていない実態をいみじくも最高裁が言外に匂わせたものではないでしょうか?
魚などが自然に隊形を作って危機行動するように、日本社会では何かあると自然に役割分担して対応する・・今回の博多駅前の陥没事故でもあっという間にアリが群がるように集団で役割分担して治してしまいました。
これを原始的「アニミズム」とバカにするのは勝手ですが、何も恥ずかしいことではない・・他国ではこう言う能力を今後数千年かけても作り出せないのではないかと言うのが私の年来の意見です。
日本列島では組織・政府・宗教が組織構成員・国民と対立していて、国民を弾圧する、害悪を加えるなどの西洋的感覚は、古代から何千年も考えたことはありませんし、自分と所属集団は一体化しているので(お上を信頼しているから直訴はありますが)組織を敵視した打倒運動もありません。
佐倉宗吾郎その他の一揆は飽くまで「お上に声が届けば改善される期待」であって、声が届いた段階でお裁きはお上にお任せする・・その段階で引き下がる仕組みです。
忠臣蔵の討ち入りも後は御裁きを待つ・・同じ原理です。
お上はいつも民を如何にして良くするかを考えているものと言う信頼があり・・それがうまく行かないことがあるとしても・・直訴で修正してくれると信頼しています。
日本の神様は民に過ちがあっても、罰する神様ではなく許してくれる神ですし、外国から入って来た佛教でも慈愛に満ちた観音様が一番人気ですし薬師様その他優しい系が人気です。
中世以降は念仏を唱え阿弥陀さまや観音様ににすがりさえすれば救われると言う観音信仰や念仏系信仰が広がったのは、まさに助け合い社会・民族性をあらわしています。
神様も民族や地域集団から超然としている別の存在ではなく、氏神様・住民と渾然一体的存在です。
占領軍が日本から神道を排除しようとしてもうまく行かなかった所以です。
アメリカでは民族意識の強調すら出来ない関係で、民衆とは別の存在・・実在の支配機構が必須です。
政府と民衆とは主客対立関係にあるガバメント・統治機関を預かる・民主・共和両党の伝統的政治家は、民衆とは別の独立の超然たる統治機構(内部支配する企業・資本家)の発展に関心があって、国民は仕入れ原材料や工場設備的存在・・入れ替え可能な人的資源・商品であり、対象でしかありません。
民主共和両党(伝統的政治家)の本音は、企業利益・株主資本利益の最大化が目的ですから、本音・極端な話が、能力の割に高賃金の現在アメリカ人が全員出て行き、低賃金の中南米〜アジア〜アフリカ人に全部入れ替わっても、今の10〜20分の1の低賃金化実現の方が良いのでしょう。
イギリスが羊毛で儲かるとなれば羊を飼うために小作人を追い払ったエンクロ−ジャー(囲い込み?)を見ると農民が、貴族の農地経営方針転換のために簡単に追い出されてしまう弱さに驚くのが日本人です。
アメリカやEUではエンクロ−ジャーの現在版・労働現場では、(非効率な機械を最新機械に入れ替えるように)自国民と低賃金移民との入れ替えが進んでいます。
農民の弱さと言うよりも、企業や政府(お家・お城)が何のためにあるかの根本が違うからでしょう。
神社やお城が民衆威圧のためにあるのではなく、その地域の民の誇り・象徴になっている社会と被支配者を威圧・支配するための宗教施設や拒絶的な西欧各地の城がある社会とは違いがあります。
無宗教と言われる日本人が村の鎮守様や神社仏閣・・概ね質素な造りで威圧的はありません・・で思わず手を合わせるのが普通ですし、これと言った信仰心がなくともお伊勢様や出雲大社等に行く(参拝する?)人が多いのですが、西欧で古びた教会に「郷愁を感じ?)御参りする人が今どれだけいるかの違いです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC