アメリカは植民地収奪による世界支配が終わりを告げそうになると排日を計画して来たように、近い将来・・アメリカの資本収益が減少して日本へ払う方が大きくなって来たときに資金環流に関する紛争になると言うのが私の大分前からの予想であり、日本はその備えが必要です。
直接投資残高で日本がアメリカに肉薄〜追い越すまでには今後数十年以上かかるとしても、その間にアメリカが自国・本拠地に逆進出されて面白かろう筈がないので、アメリカは何かと難癖を付けて来ることについて相応の覚悟をしておく必要があるでしょう。
4〜5日前の新聞にダイキンがアメリカで大規模工場建設の記事が出ていましたが、世界最大手と言っても空調の本場であるアメリカでシェアーを上げないとどうにもならないと言う意気込みが出ていました。
工場建設→雇用増に対してトランプ氏は選挙公約どおりの展開ですから、感謝するしかない・・文句の付けようがありませんが、自国が日系企業に支配されるのは堪え難いところがある筈です。
当面考えられるのは、知財料金や収益の本国送金の規制・・移転税制規制でしょう。
アメリカ子会社から日本本社への技術料支払いに不正がある・・高過ぎるなどと言う税務調査などが、割に簡単な嫌がらせです。
アメリカの気持ちは、ルールさえ同じならば自分より相手が強ければ、負けても良いのではなく「負けるのはイヤ」と言うだけが行動原理です。
自分が勝てるルールだけが守るべき正義であり、自分が負けるルールは正義ではない・・相手が何か狡いことをしてると言う主張です。
アメリカはルールを守るベシと言いますが、結果として競争相手に負けて欲しい・・結果重視ですから、自分の作って来た貿易ルールはどうであれ、結果としての「アメリカの大幅赤字が許せない」と宣言すれば日本も中国も青くなるしかないのが現実です。
ところで中国の方が日本よりも対米黒字が大きいから、中国が先ず矢面に立つので日本はそれほど心配しなくても良いと思う方が多いと思いますが、内実を見れば違って来ます。
中国の対米輸出の中身には米系企業の子会社が中国で生産・逆輸入している場合(子会社かどうかは別としてアップル)が多いのですが、日本の対米黒字の場合、100%日本企業による輸出ばかりで、日本進出の米系企業が日本で生産して逆輸出している事例など想像すら出来ないでしょう。
それどころか中国の輸出には、中国進出日系企業の輸出が多くを占めている・・日本製部品組み込み率あるいは東南アジア諸国の対米輸出にも実は日系企業の輸出が多くを占めているなど、実質的対米輸出依存度は中国よりも大きい可能性があります。
民族系企業の黒字額比較で言えば、日本の黒字の方が中国よりも多い可能性があるので輸出規制によるダメージ度では日本の方が中国よりも大きい可能性があります。
「中国の経済力は他国を利用して膨らませたに過ぎない張り子の虎である」と言う点が実質的ダメージ度を低下させる強みになります。
米中の基本的な親和性に対する警戒心の重要性をこのコラムではあちこちで書いて来ましたが、対米黒字の解決でも昨日書いたように経済関係の内実では日米よりも米中の方が一枚岩的関係になっている可能性がありますが、推測の域を出ません。
アメリカにとって対中投資は対外投資残高の3%前後しかないと言うことらしいですが、何故か12年頃の古いデータしか出て来ません。
この後の5年間で日本の投資が減って行き,アメリカが増えているのかも知れません。
http://www.japan-world-trends.com/ja/cat-1/post_1098.php012年10月11日
1.本年5月にジェトロが「米国企業のアジア展開事例とアジア企業の米国展開事例」という資料を発表した。これには、次の面白い数字がのっている(米国商務省統計等をもとにしている)。
(1) 米国の対中直接投資残高は2010年末で604億5200万ドル。2000年に比べて5.4倍(この期間、全海外に対しては3.0倍)に増えているも、全海外に対する直接投資残高の僅か1.5%(日本に対しては2.9%)に過ぎない(但し増加分の中での比重はもっと大きい)。欧州での残高は全体の55.9%(首位のオランダだけで13.3%を占める。持ち株会社設置に優遇措置を与えているからである)、中南米が18.5%、アジア全体で9.0%である。
(2) 米国企業の中国での売上高は2009年で2437億7200万ドルで、全海外の4.3%、純利益は287億4200万ドルで全海外の3.2%である。同年最大の売り上げは欧州におけるもので全海外の50.7%、アジア太平洋(中国を含む)は全海外の24.7%、中南米が11.8%を占める。
全海外での純利益で最大の比重を占めるのは欧州で58.1%、中南米が18.6%、アジア太平洋が13.7%である。
ここからうかがえるのは、米国企業はアジアでは薄利多売になっており、投資効率は欧州の方が上、ただし最近では新規投資先として中国が大いに伸びてきた、ということである。
2.日本の場合はどうか?
ジェトロのホームページに出ている数字から計算すると、2011年末で日本の対外直接投資残高のうち、中国は8.6%を占めているのに対して、米国は28.6%、EUは22.3%、ASEANは11.5%になっている。
中国の場合貿易黒字が大きいと言っても、実は中国へ進出した外国企業の本国逆輸出が多い、中国自身それほど儲かっていない・場所貸し・名義貸し的立場に過ぎない面があります。
巨額黒字と言っても先進国から送付された部品を組み立てているだけではないか?とバカにされている分に比例して実質的意味・深刻な貿易摩擦の当事者にはならないメリットもあります。
対米輸出が出来なくなると中国で生産して対米輸出している日本企業・米系企業の方が、巨大投資してしまったダメージが大きくなります。
高関税をかけられるとなれば、具体的には品目別になるでしょうからそうなれば、米系企業も必死にトランプ政権にアプローチするでしょうが、日系企業よりも品目選別作業では有利です。
アメリカの対中赤字が巨額としても米系企業が中国で生産して逆輸入している輸出黒字の場合、国民にとっても自国企業の逆輸入による赤字には大目に見る・・日系企業の場合遠慮がいらない傾向があります。
米系企業・中国進出・逆輸入企業にとっては、米本国での政権アプローチが有効ですから、黒字パッシングに対する対応では日系企業とでは政治力で雲泥の差が出てきます。
中国が日本よりも対米黒字が大幅に多くても、その内実が米系企業や日系企業が多くを占めているとすれば、貿易摩擦の面でも米中結託になり易い・・日本は安閑としていられない弱点を持っています。
日米戦争は、中国でのアメリカの対中進出願望との対立・・米国に「門戸開放」を要求されていたことに原因があり、裏で蒋介石軍や中共軍応援があったことを日本は忘れることが出来ません。
戦後はニクソンの電撃的訪中などの経験もあり、トランプ政権で一見華々しい米中対立があっても、「日本の頭越しに米中裏取引が成立するのではないか?」と日本中が疑心暗鬼にならざるを得ないのは、過去の歴史を水に流すことは出来ても将来の教訓とする智恵を棄てることは出来ないからです。