経常収支黒字の積み上げ→円高→実質賃金率引き上げになる関係ですが、黒字が続くということはその円相場でも黒字を稼げる企業の方が多いことになります。
生産性の高い企業が一定水準の円相場でもなお輸出を続けると貿易黒字が続きます。
その結果更に円高になりますので、これについて行けない・生産生の低い順に国内人件費の実質アップを回避するためには海外移転して国内高賃金雇用を避けるしかありません。
生産性の低い企業が海外工場移転した分、国内雇用の需要が減る→その結果国内労働市場では需給が緩み労働者の経済的立場が弱くなるのは当然の帰結であり、これはまさに経済原理・正義の実現と言うべきです。
労働者は自分の生産性を上げない限り(中国等の10倍の人件費を貰う以上は10倍の生産性が必要です)円高の恩恵だけ受けて痛みの部分を受入れないとしても、時間の経過でその修正が来るのは当然・正義です。
ところが人件費に関してはストレートに円相場の上下率に合わせた賃下げが出来ないので、その代わり経営者としては労働者を減らして行くしかありません。
既存労働者の解雇は容易ではないので、新規採用をその分抑制する・・あるいは新規工場を国内に設けずに海外に設ければ、現役労働者を解雇しなくとも新規労働需要が減少して行きます。
大手企業・・例えばスーパーやコンビニを見れば分るように大量店舗閉鎖と新規出店の組み合わせで活力を維持しているのですが、新規出店分を海外にシフトして行けば自然に国内店舗・従業員が減少して行きます。
大手生産企業も新規設備投資とライン廃止の繰り返しですが、新設分を海外にシフトして行くことで新規雇用を絞っています。
新規雇用に関してはこうして需要が減る一方ですから、現下の社会問題は、既得権となっている高賃金労働者の保護が新規参入者にしわ寄せして行くことになっていることとなります。
既得権保護・・これをそのままにすれば新規参入者が狭き門で争うことになります。
この結果正規雇用が減って行く・・中間層の縮小となりました。
解雇権の規制を厳しくして既存労働者の保護がきつくする(定年延長論もこの仲間です)ばかりで、他方で非正規雇用を禁圧あるいは白眼視・・何かと不利益扱いすると、却ってこれによって国内に踏み留まれる企業まで出て行かざるを得なくなるリスクがあります。
非正規雇用→一種のワークシェアーは、急激なグローバル化による賃下げ競争の緩和策になっていることを無視する議論は無責任です。
かと言って非正規雇用自体が良い訳ではない・・若者の未熟練労働力化を放置しているわけにはいかないので工夫が要ります。