西欧の長期的衰退2と中国接近4

EUを作り域内への日米企業の浸透を防いでも競争力が低下するばかり・・この後でアメリカ国内のクルマ販売シェアーを紹介しますが、西欧系はまとめて10%あるかないかまで縮小しています。
マスコミはプラザ合意直前の経済比を前提に未だに「日米欧」と表現していますが、EU全体で経済比率(19〜20世紀は粗鉱生産量や造船力でしたが今はクルマが指標指数でしょう)は1割しかなくなっています。
プラザ合意前には日本と欧州全体の生産力が拮抗していたので、日米欧の呼称が妥当でしたが、今や日米欧経済の1割に下がってしまった経済体が・・IMFその他主要国際システム・・伊勢志摩サミットで言えば首脳9人中6人を占めているのが象徴的ですが、実態とあまりにも乖離し過ぎています。
中国はこの乖離を利用して欧州諸国を各個懐柔して国際舞台で有利な地位を占めるべく努力しある程度(AIMFで日米の反対を押しきって昨秋SDR採用決定を勝ち取りました)成功していることになります。
西側諸国の主要決定会議はホンライ日米欧3者会談で良い筈ですが、何故6人も出て来るか?
欧州が実態以上に力があるかのようにみえますが、実際には、一人で出席してEU全体を代表する能力がない・首脳一人にまとめる能力がないから議長やら何やらぞろぞろ出て来る必要があるに過ぎない・・まとめる力さえないことの現れです。
日本では言えば沖縄知事が(勝手に?)アメリカに行って訴えたりしていますが、2人も代表を送れるほど国力があると言うよりは日本世論が統一出来ていない弱体化の表現になるのと同じです。
この後で書きますが日本の台頭・追い越しに焦った米欧結託による日本潰し・・プラザ合意による超円高誘導と日本の足を引っ張るための中韓優遇政策+輸入障壁構築→EU成立になったものですが、実力低下が進んでいる以上は、これを補修しないとこのような「画策」だけで防げるのでありません。
冒頭にクルマのシェアー低下で書いたように西欧全体の競争力低下が進むと・・旧植民地やアメリカへの輸出前提の19〜20世紀型企業規模・組織に無理が出る→規模縮小・施設廃棄・人員削減しないと赤字操業→資金不足の結果が現れます。
この解決のために先端技術を受け入れるのが(明治維新の日本のように)合理的ですが、沽券に関わる?とばかりに飽くまで拒み続けた挙げ句に、中国やインド、タイなど後進国からの資本受入れで凌いで来た様子が昨日紹介したネット記事からカイマ見えます。
資本不足は衰退・赤字継続の結果であって原因ではありません。
雇用や設備を守るために後進国から資本を受入れて日本との競争で負けている劣った技術・設備を維持していても、競争力が回復出来ず赤字が累積する一方になります。
後進国(比喩的に言えば技術5流)から見れば日本に負けていても(技術2〜3流の)西欧の技術はなお格段に優れているから、その技術入手のために資金投入するメリットがあり、当然虎の子の技術者に逃げられたら困るので解雇や設備廃棄どころではない・・大事にされる・・雇用が維持され遅れた機械を廃棄しないで済むのでお互いにウインウインの関係で一見合理的です。
しかし、後進国に買収してもらうのでは、競争に負けている赤字の原因を解決(最新技術導入)出来ず結果的に技術が流出し劣化して行きます。
ただ中国、インド資本等新興国企業の強みは低賃金ですから、買収資本の事業モデルを取り入れれた西欧ではこの数十年低賃金移民導入策が唯一の競争力維持政策になっていたように見えます。
シャープ買収もホンハイはシャープの技術入手目的で資本を出すのですから、買収後シャープの技術は劣化することはあってもアップすることはない・・4〜5〜8年もすれば、もっと状況が悪くなってタタ製鐵によって7〜8年前に買収されたイギリス製鉄所再売却同様の結果になるでしょう・・。
雇用を守ると言う意味は、技術者を一人一人引き抜かないでまとめて抱え込む意味・・まとめて技術流出と資金投入の引き換え取引を前提にしています。
今回中国によるイギリスの原発受注も同じで、中国はイギリスの原発製作技術が欲しくて資金を出すのであって中国が進んだ技術を提供する目的ではあり得ませんから、イギリス人技術者が中国企業の原発製造に関わっても何か学べることはありません。
資金援助を餌に受注した中国の方が一緒に仕事をすることによって技術修得するチャンスを得る目的ですから、研修生引き受け料を出してもらうような関係です。
イギリス原発製造技術に国際競争力がないならば、競争力のある上位企業・・日立や東芝・ウエスチングハウスなどに発注すれば下請けに入る現地従業員のレベルが上がり国際競争について行けますが、きちんと代金を払えないので、安値受注する中国になびくしかなかったのです。
資金援助を餌に受注した中国の方が一緒に仕事をすることによって技術修得するチャンスを得る目的ですから、研修生引き受け料を出すつもりでその分安く受注してもペイする関係ですから当然先進国よりも安く受注出来ます。
安く発注すれば、その代わり技術流出するばかりで学ぶものがなくレベルが下がる一方の関係ですから、トータルでイギリスが安く発注出来たか(安物買いの銭失いになるか)分りません。
EUの経営不振企業が後進国から資本注入してきたやり方は、「安物買いの銭失い」の傾向があるように見えます。
明治維新で日本は安く仕入れて競争せずに逆に西洋から高級技術を高く購入して競争力強化に努めたことと比較しても良いでしょう。

西欧の長期的衰退1と中国接近3

EU離脱に関するマスコミ論評を見るとイギリスが西欧の金融センターとしての機能を失うマイナス中心報道が多いのですが、イギリスが金融に生き残りをかけても、金融では多くの国民を養えませんので、(マスコミ支配しているユダヤ系には関心があるでしょうが・・)EU離脱で雇用に直結する製造業がどうなるかの方が、国民の関心事でしょう。
南欧の競争力のなさ・・貿易赤字ばかりにマスコミの焦点が当たっていますが、EUの大国である英国もフランスも各種の製造業の衰退化現象は大変な状態です。
日本で言えば新日鉄のようなイギリスの象徴的製鉄会社コーラスをインドのタタ製鉄が2007年買収していたのですが、赤字が拡大するばかりで維持出来なくなって売却に入っているが買い手がつかずに困っている状態が大分前に日経新聞に報道されていました。
・・企業城下町にとっては大変な事態です。
大分前なのでいつ読んだかはっきりしませんし引用出来ませんが、ネット検索すると以下の記事が見つかりました。
象徴的産業であるクルマ製造や製鉄の場合大きな新聞記事になりますが、細かな産業の動きは出ません。
以下を見ると西欧諸国では大手基幹産業だけではなく関連産業が徐々に衰退している・・しょっ中後進国から資本を入れて生きながらえて来たことが分ります。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/eu-17.php
インドの鉄鋼大手タタ・スティールがイギリスからの全面撤退を検討していることが明らかになり、衝撃が広がっている。何千人もの従業員の解雇が予想され、イギリスの鉄鋼業界全体が大打撃を受けかねない。
ポート・タルボットの再建断念は、ロザラム、コービー、ショットンなどイギリス各地にあるタタのプラントにも影響を及ぼすだろう。タタが全面撤退すれば、 ざっと1万5000人分の雇用が失われ、工場のあった町の景気も冷え込みかねない。昨秋にはタイの鉄鋼大手サハウィリアがイギリス北東部ティーズサイドの プラントを閉鎖、2200人分の雇用が失われたばかりだ。
フランス製造業の動向はあまり報道されませんが、昨年ルノーの危機?雇用を守るための政府出資に絡んで日産の投資計画にも政府が介入出来るのか?と日本でも大騒ぎになったので記憶している方が多いでしょう・・私もその一人でしたので、「いつだったかな?」と検索してみました。
(元々ルノー危機・・工場閉鎖の動き・雇用を守るために政府資金投入になったと記憶していますが・・今になるとおぼろげな記憶でしかありません)
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9581
2015.05.04
フランス政府の持つ、仏自動車大手ルノーの議決権が2倍になった。これにより、ルノーへの仏政府の関与が強化される可能性が高まった。2日付各紙が報じた。
フランスは昨年、「2年以上保有する株主の議決権を2倍にする」法案を通し、株主が拒否しない限り、原則適用されることに決まった。今回、ルノーCEOのカルロス・ゴーン氏は同法に反対する動きを取ったが、仏政府が株を買い増しし、その動きを阻止した。
仏政府はこの議決権を利用して、ルノーがフランスでリストラを行いにくくなるよう、圧力をかけると見られている。
きっかけは、インド企業が買収したフランスの鉄鋼所を2012年に操業停止した際、失業者が仏政府に対策を講じるよう訴えたことだった。
フランスでは2009年から2013年に、1000人以上の従業員を擁する事業所が700カ所以上閉鎖され、新しく作られる事業所の数を越えた。プジョー と中国企業の提携や、ボルドーの葡萄園の購入など、フランスへの中国資本の流入も急激に増える中で、仏政府の警戒心は当然のものとも言える。」

上記のように、西欧は南欧諸国に限らず(ドイツを除けば)どこもいろんな製造業の長期衰退に直面していて雇用を守るのに四苦八苦の状態です。
タマタマ世界企業ルノー関連・・(ルノーが大株主なので)日産の経営にフランス政府の口出しあるのか?と言う点で影響があるから日本に知られるようになっただけです。
ルノー騒ぎがなければこんな細かいニュースは日本に来なかったでしょう。
上記を見るとインドやタイ中国などの西欧への資本進出が盛んなのに驚きます。
元々Euは市場共通化目的=域外との差別=競争から守るために発展したもので、主目的が当時勃興して来た日本からの防衛・ブロック化政策でした。
これが影響していると思われます。

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