金あまり時代と言うことは国民の平均的な能力のある人はおおむね預貯金その他資産が充分にあるし、企業でも一定レベル以上になると自己資金が豊富な時代になったことを意味しています。
大手企業で言えば海外投資する資金は各企業が貿易で儲けた資金の運用で間に合う傾向があり借金をそれほど必要としていません。
今では、生活費不足によるサラ金的顧客や企業では、借金借り換え・延命目的的な後ろ向き需要が比較的多くなってきます。
資金の安心した行き場が少なくなり、我が国ではここ10〜20年あまり安全な逃避先として国債や地方債で大枠を吸収している状態になっています。
現在欧州危機により避難先として日本やアメリカの国債へ資金集中が起きていますが、わが国では20年ほど前から経験済みのことです。
公共工事の投資効率に関する21日のコラムでも書きましたが、生活習慣だけではなくこうした分野でも世界最先端の実務が存在しているのが我が国ですから「外国ではこうしている・・・・」と学んで来て論文を書いている学者の意見は役に立たなくなっています。
国債の大量発行・・銀行その他金融機関に国債を売ってやるのは、集まった預金その他の資金の使途に困っている銀行の救済・・一種の失業対策事業みたいになっているので、財政赤字だけの問題ではなくなっています。(いわゆるコインの裏表の関係です)
マスコミは国債残高累増を心配していますが、国債残高の増加は金融機関の不健全性の裏返しになっていることこそが問題です。
国債を銀行が買うことによって、銀行は巨額利益を得ている・・銀行救済に関しては、09/13/08「金融機関の存在価値3(金融機関引き受けのからくり2)」のコラムで書きました。
今では国債残高が約1000兆円・・その内約95%が国内消化ですから、書類操作だけで(約1%の利ざやとすれば年間9、5兆円の巨利)膨大な金利差益が金融機関(銀行だけではありませんが・・)の収益になっています。
もしも現在の国債を政府が全部返還したら、銀行業界は大赤字に転落し、大量の預金の使い道がなくなって日本の金融機関はたちどころに倒産騒ぎになってしまうでしょう。
(政府に仕入商品・預貯金の3分の2を引き取って貰わないと、仕入れた商品の有効利用が出来ない・・バブル崩壊後約20年も経過しているのに、金融機関は今なお自分で仕入れ商品をさばくための顧客開拓出来ないほど脆弱ということです。
ある地域だけで見れば、特定産品が多過ぎて地元で売りさばけないことがありますが、その場合域外輸出して普通は特産地になって行くものです。
銚子漁港のイワシは地元では食べきれませんからホシかにしたりして販路を広げましたし、自動車産業だって最初は大変でしたが、海外輸出していますし今やや紙おむつですら国内だけで物足りないとなって輸出で稼いでいます。
すべて産業というものは、(ブラジルのコーヒー、産油国の原油その他すべて)古くからそう言う時代を経て来たものです。
金融業も国内では金あまりだから客が少ないと手を拱いていないで、資金の足りない国に進出して貸してやれば良い話です。
海外に出て行って貸すのは怖い、リスクが高いと言い出したら、建築屋でも何でもどんな商売でもみんな初めはそう言うものだったのですが、勇気を出して進出して行って何とかして来たのです。
銀行は今まで自分で商売せずに役所べったりで来たから、リスクをとりながら商売して行く訓練が出来ていないだけでしょう。
いわゆる日銀の買いオペを実施しても応札率が低く札割れになることが時々報道されますが、金融機関は政府のために保有しているのではなく、保有していることが自己に利益だから保有しているのですから当然です。
バブル崩壊=金融機関の危機でもあったことを想起しても良いでしょうが、国債累積の問題は、金融機関救済目的でそのころから急激に膨張した面を無視出来ません。