欧米離れとトルコ危機?3

トルコに関する昨日引用グラフの続きです。
https://diamond.jp/articles/-/1843022018.11.6

2018.11.6

西濵 徹:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

トルコ、消費者物価上昇率の推移

アルバイラク財務相は年末までを期限に、民間企業に対して10%の値引きを要請する事実上の強制値引きキャンペーンを発表したが、この効果については未知数なところが多い。
なお、これら以上に懸念されるのが、9月の発表直後に消費者物価上昇率が予想外に上振れしたことを理由に責任者の国家統計機構(TUIK)の副局長が突如更迭され、アルバイラク財務相の腹心とされる人物が後任に当たったとされることである。
仮にこの動きによって物価統計が操作される事態となれば、アルゼンチンのクリスティーナ前政権下で行われたことと同じであり、足下のアルゼンチン経済が置かれている状況をみれば、同じ道を辿るリスクも高まる。

10月の消費者上昇率は以下の通りです。
“https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-05/PHPOQB6TTDS201”

2018年11月5日 17:48 JST

10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比25.2%上昇。9月の上昇率は24.5%だった

約25%の物価上昇では、国民はまともな生活を送れません。
企業も投資意欲が減退します。

参考までにアルゼンチンの物価上昇率は以下の通りです。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38927770U8A211C1000000/

アルゼンチン、11月のインフレ率年48% ペースは鈍化 中南米
2018/12/14 5:49
サンパウロ=外山尚之】アルゼンチン政府は13日、11月の消費者物価上昇率が前年同月比48.5%だったと発表した。前月比では3.2%で、単月の上昇率は10月から2ポイント以上下落した。足元の通貨ペソは下落が一段落し小康状態にあり、物価上昇のペースは落ち着きつつある。

結局は自国通貨の大幅下落が原因です。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-30/PEA49R6TTDSM01

ペソが最安値更新、アルゼンチン中銀は政策金利を60%に引き上げ
Carolina Millan、Patrick Gillespie、Ignacio Olivera Doll
2018年8月31日 0:24 JST 更新日時 2018年8月31日 7:34 JST
利上げ後もペソの下げ続く-下落率は一時20%に近づく
マクリ大統領は29日にIMFに融資実行の前倒しを要請していた

アルゼンチン中銀が主要政策金利を45%から世界最高水準の60%に引き上げた後も、通貨ペソの下げは続いた。利上げは今月に入り2回目で、通貨下落に歯止めをかけるのが狙いだった。ペソは年初来で50%余り下げている。
Rout Deepens

Argentine peso worst performer versus dollar this year among emerging-market peers
によると対ドル下落率の大きい国の順位は以下の通りです。

アルゼンチン →  53、9%
トルコ    →  43、5%
ブラジル   →  20、2%
南ア     →  16、1
ロシア    →  15、6%
インド    →   9、7%
チリ     →   9、3%

以下省略

通貨下落率53、9%のアルゼンチンが金利を60%にしないと通貨下落を止められないという実態を見るとトルコもロシアも大変です。

消費者信用の拡大6(金利の重要性)

ローン金利を「変動金利ではなく固定金利にしていれば大丈夫」という意見もあるでしょうが、個々人ではそうでしょうが、仮に100%のローンが固定金利で銀行だけが逆ざやで損をするようなうまい話が実際に成り立つでしょうか。
3〜4日あるいは逆ざやになるのが融資量の1%くらいならば銀行もヤリクリできますが、融資量の100%が逆ざやになれば金利収入がなくなるのですからたちまち倒産です。
固定金利客が2〜3割しかないなくても(この場合7〜8割の債務者の人が変動金利約定→相場通り金利が上がることになります)逆ざやで1年も2年も続く見込みでは2〜3割もの逆ざやを抱えていると業績不振で大変なことになりますし、他方で債務者の7〜8割の人にとって金利急上昇し、その何割かの債務者が払えなくなると不良債権が増えてこの面でも大変です。
もちろん住宅ローンの7〜8割が変動金利契約の場合、金利上昇すると余裕で払っていた人もギリギリになり(一般消費縮小で不景気になります)ギリギリで払っていた人などが払えない事態が起きたら大社会問題になります。
政府がローン債権を金融機関から全額買い上げて、ローン債務者に全額免除してやれば全てなかったことになります。
その資金は国際金利相場無視でゼロ金利国債を発行し日銀に引き受けさせてそれに当てれば財源は無制限に出来ます。
ただし財源を金融機関救済や特定債務者のために使うのか・・不公平だと大騒ぎになるでしょう。
文句を言う人の債務も救済してやれば文句が出ないので、結果的に国民全部が無借金・無債務になるまで全部救済したらどうなるでしょうか?
中小企業の賃金支払い債務も病院へ医寮費・病院従業員や業者への支払いも全部政府が代わって払ってやる・・スーパーでの買い物代金もスーパーの仕入れ代金も・・従業員の給料も何もかも全部払ってくれれば公平ですが・・公平というか(悪)平等になるとどうなるかです。
もしも何もかもみんな政府が肩代わりしてくれるようになると・・モノやサービスの代金が何のためにあるのか?紙幣って何のためにあるのか訳がわからなくなります。
自分の義務・・電車賃もコーヒー代も全てネット決済については政府が肩代わりしてくれるようになると、何のために頑張るのか?「価値とは何か?」と言う根源に打ち当たります。
「こんなバカなことが起きたら・・」という想像自体、私のようなバカな人間しか思いつかないでしょうが・・。
全て政府が払ってくれる社会・債務帳消しが増えるとモラルハザードになると言われますが、国民全員の債務をすベて政府が肩がわりする理想的な?社会が実現すると努力の元になる貨幣価値取得動機がなくなってしまうことは明らかでしょう。
現実にこれの小規模実験しているのが生活保護受給者です。
一応最低生活なので肩身が狭くここからの脱出願望があるだけまだマシですが、それでも何をするにも無償なので乱診乱療等のモラルハザードが起きる他に生活保護脱出意欲を失ってしまうなどモラルハザードが心配になっています。
生活保護受給権は法で認められた権利である・・したがって何の遠慮もいらないので堂々と権利主張すべきという主張が多いですが、法で認められている以上は「権利」に違いないでしょうが、自分が働いた対価を得る権利と違い、社会保障政策として受給権が認められたに過ぎない権利は、本来の意味から見れば亜流の権利です。
権利行使とは言っても亜流の権利であることを自覚してある程度の遠慮があってこそ、脱出努力も生まれるのではないでしょうか?
全国民の受給権としてすべての国民が全ての債務から免除されるようになる・・国民全部に行き渡ると肩身が狭い心配もなくなり、全員が働く意欲を喪失しかねない・・国内総生産がどうなるかの問題です。
文字通り お金に換えられないものだけ(実際どう言う言うものが残るのか?)が「価値のある」社会になっていくのでしょう。
食料品に限らずすべての分野で国に肩がわり支払いしてもらうシステムになると、古来からの交換経済システム自体が消滅しますし、(ひいては供給システムで働く・・自己の労働や努力の対価は意味がなくなるので、みんながまともに努力し働かなくなってしまうと、社会がどうなるかに直面します。
ほとんど全部の国民が働かなくなる→生産低下→供給システム崩壊→国際収支が大赤字になって輸入ができなくなる→生活水準大幅低下が待っているでしょう。
住宅ローンやクレジット残高拡大は個人の問題ですが、これを国家規模にしたのが日銀の国債大量購入・市場性のある債権等の大規模購入問題です。
国債大量購入の場合、発光体はいくらでも買ってくれるので支払いの心配がない上に、保有国債の金利が市場で上がりそうになれば(債権相場下落)日銀自身が金利を決める権利があるので「上げなきゃいいんだ・大丈夫」と思っているでしょうが、エコノミスト・国民はそれを際限なくできるのかを心配しています。
世界中の国債金利が上がり始めても最後の最後まで日銀がゼロ金利維持のために日本国債を買い支え続けるのが可能か?でしょう・・海外保有者から売り浴びせを受ければ日銀はいくらでも円を刷れるので発行済国債全部を買い占めることも可能です。
日銀が市場から国債を買うと同額分の紙幣が市場に出回りますが、例えば100億円で国債を売った企業は現金百億を持っている訳に行かないのですぐに何かに投資するか当面の置き場所として換金性の高い預金・証券その他何かに換金するので他の債権等の相場が上がります。
日銀が直接証券市場で買い支えて相場に介入しなくとも間接効果があります。
マンションやビルを買う資金に使うにしても、金融機関経由で代金で支払った紙幣が日銀に還流して行くので、言われるほど紙幣が市場に溢れることはありません。
国民の債務肩代わり同様に日銀券を大量発行して証券市場で新株発行を直接引き受けたり既存株式を買い占めたらどうなるでしょうか?
株式相場が成り立たなくなるというか、高値安定して民間企業の実力を反映しなくなります。
悪平等が個人おモラルハザードを起こすように企業価値の採点表・温度計である株式市場や債権市場評価が機能しなくなります。
個々人の債務を政府が全て払うようになると個々人が何に価値目標を置いていいのかわからなくなり生きる目標をなくすように、企業人も市場評価がなくなると、指標をなくして困るでしょう。
※追記7月16日日経新聞5pには、この点の主張のはしりが出てきましたので追加記載しておきます。
日銀買い支えの結果国債相場が動かず、権利変動がないと銀行間の短期先物取引もなくなりディーラー失業の危機を書いています。
平和なときにも軍の訓練がいるように、イザとなったときに相場を読む取引のプロ・・戦士がいなくなるリスクを書いています
政府が国債発行によって全て肩代わり支払いしていくと将来的には上記の通り社会が停滞縮小していくしかないでしょうが、そんなことが出来るのは、国際収支黒字の範囲が限界でしょう。
日本だけがゼロ金利でなり立つのかは日本の長期的な国際収支次第(・・金あまりか不足国かの基準)であることを何回も書いて来ました。
この限界が来たときに長年指標無関係で生きて来た日本人が普通の経済活動に移行出来るかの疑問です。
資源・リン鉱石に頼っていたナウール共和国が、これがなくなってどうにもならない状態に陥った例を何回か紹介してきました。
日本で個人破産が今後社会問題になるほど増えるかどうかは今後の様子次第としても、いずれにせよリーマンショック以降の経済では消費の動向が重要化していることから債務データ全体だけでは分からない、その一部である個人負債比率の指標性が高まっているように見えます。
従来経済対策としての金融緩和が、企業投資資金を潤沢にして投資活発化を狙ったものでしたが、平成に入った頃から消費の下支えや拡大効果を期待するようになっています。
この結果、金融緩和→消費信用拡大の流れが出来ているので、消費信用拡大自体を政府の失策であるかのように批判材料にしたり、消費信用利用者を白眼視するよりはそのコントロールが重要になってきました。
この失敗がサブプライムローンに端を発したリーマンショックだったというべきであり、消費信用拡大が一過性の「悪いもの」と見るのは間違いです。
お金持ちからゼロ金利で消費信用にお金を回すのは、いわば一種の所得再分配機能を果たしている面もあります。
総融資額の1割が仮にデフォルとするとすれば、全体として資産家層の回収が減る・その分の所得再配分が行われたのと同じです。
高齢者から孫や子供に贈与を進めて消費を促す贈与税軽減政策に比べれば、本当に困っている弱者の消費を助けたのですから公平性が優っています。

金融駆け引きと為替相場

資本規制を厳しくする一方では、結果的に人民元の外為市場が成り立たなくなる・・自分で仲間外れにして貰っているよう・・国際取引が出来なくなって行きます。
日経新聞は大手メデイアらしく・・「代金の送金を禁止していない」と言う中国政府の言い分を乗せていますが、このニュースですぐにアサヒホールデングスに払ったかも知れませんが・・。
アメリカ金利上げ発表が今年の3月15日ですからまだ二週間あまりしかたっていませんが、米利上げは昨年末から織り込み済みとは言え、中国がこの金利差にどの程度持ちこたえられるかが世界の大関心事でしょう。
中国は景気下支えのために14〜15〜16年と金利を徐々に下げて来たことをこのあとで紹介しますが、米利上げがあると金利差が縮まり過ぎる→人民元下落圧力が増すので、これ以上下げるどころか上げるしかなくなります。
人民元下落を防止するには負けずに金利を上げるしかありませんが、そうなると政府主導の不動産バブルその他に急ブレーキがかかってしまいます。
とは言え仕方がないので昨年末から、年明け予定の米利上げ影響緩和のために年末から国内金利に直接関係のない香港オフショア市場で短期金利操作をして人民元投機売りを防ぎながら、国内景気対策上過剰なマネーサプライを少ししか減らさない政策を採用している様子です。
 http://seisakukinri.nekokuro.jp/543の引用です
中国の政策金利の推移(2010年~2019年)です。(10月分までしかデータがありません)
 1月  2月  3月  4月   5月   6月  7月   8月   9月   10月  11月  12月
2016年
4.35  4.35  4.35  4.35  4.35  4.35  4.35  4.35  4.35  4.35
2015年
5.6  5.6  5.35  5.35  5.1  4.85  4.85  4.6 4  4.6 4 4.35  4.35  4.35
2014年  6   6   6   6   6    6     6    6    6    6   5.6
上記のとおり14年には原則6%の金利でしたが、不景気進行に応じて15年からは5%台に下げ16年には4%台に下げていました。
ところが今年に入って様変わりです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HPT_W6A211C1000000/
中国にも「利上げ」の予感 進む人民元安、短期金利は急上昇           2016/12/17 0:05 日本経済新聞 電子版
NQN香港=大谷篤】米国が1年ぶりに利上げを決めたが、もう一方の経済大国、中国でも「利上げ」の雰囲気が漂い始めている。物価は上昇し、国債利回りはうなぎ登り。短期金融市場では資金逼迫の心配さえ出てきた。
 中国の金融市場では人民元安と債券安が続き、短期金利の上昇が止まらない。オンショア(中国本土)の人民元の対ドル相場は1ドル=6.94元台と8年7カ月ぶりの水準に下落。秋ごろまで過去最低の2.6%台に…」
今年1月のニュースでは以下のとおりです。
http://jp.wsj.com/articles/SB108523985882373536098045825828313247289662017 年 1 月 27 日 10:48 JST 更新
 中国人民銀行(中央銀行)が24日に金融機関に対する主要貸出金利を引き上げたことを受け、中国の国債利回りが急伸している。
 指標となる10年物国債利回りは25日、前日の3.296%から3.336%に上昇し、12月半ばにつけた直近の高水準である3.387%に近づいた。」
上記のとおり昨年末から1月に掛けて中国の金利が上昇局面に入っている様子が出ています。
それどころか以下のとおり香港オフショア市場では当局の意図的操作?によって短期金利が急騰しました。
年1回の外貨両替枠更新が1月にあるので、昨年末の外貨準備減少を見て「年間両替枠を年初に使い切ってしまおう」としてドル買いが殺到する懸念があったので、その出ばなをくじく奇襲作戦のように見えます。
以下は http://blogos.com/article/204865の意見です
 久保田博幸  2017年01月07日 11:28
中国の短期金利が一時100%となった原因
介入を行うと外貨準備が減少するが、外貨準備の減少は元安要因ともなりかねない。このため、中国政府は年が変わってから介入ではない手段を講じてきたようである。それは短期金利の操作で、いわゆる短期金利の高め誘導を行ってきた。
 比較的、元を自由売買できる香港短期金融市場で、オフショア人民元の流動性をひっ迫させ、香港銀行間取引金利(HIBOR)の翌日物が前日の16.9%から38.3%へと約1年ぶりの水準に上昇し、午後には100%を超える取引も成立したようである。ちなみに昨年1月にも香港市場で中国国有銀行を通じて、ドル売り元買いの市場介入を行ったことでHIBORが急騰し、翌日物HIBORは12日には60%台に急上昇するという場面もあった。
今回は外国為替市場での大規模な元買いドル売り介入は見送られているようで、中国の国有銀行などが短期市場への資金供給を絞ったための短期金利の急騰とされる(日経電子版の記事より一部引用)。年が変わると年間外貨両替枠が更新されて、中国からの資金流出が加速される恐れも懸念されていたことへの対処でもあったとみられる。 HIBORの上昇をみて、ヘッジファンドなど元を売っていた投機筋などが、コストの増加を嫌気して外為市場では元の買い戻しの動きを強めることとなった。人民元が急反発し、その余波で上昇し続けていたBitcoinが急落するなどした。
 ただし、インターバンク市場の流動性ひっ迫は、銀行に深刻な影響を与えかねない。企業や市場などにも影響を与えることで、昨年のような景気減速そのものへの警戒が強まることもありうる。さすがに昨年の二の舞はないと思われるものの、当面の中国人民元の行方も注意する必要がありそうである。」
上記のように(国内市場に直結しない)オフショア市場の資金供給をイキナリ絞ることで、短期金利急上昇(100%?)を演出して外国人短期投資家に金利負担をさせて売りポジション解消に成功した様子で・・一種の綱渡りです。
その他政府・人民銀行自身がデリバテイヴ取引に参加して人民元を高値誘導している様子もあるようですが、先物は安くなっているからこの先どうなるか?と言う意見もあります。
中国はアメリカ留学経験者を動員して高度技術駆使しているようですが、サイバーテロ等は技術だけアレバ出来る・社会経験や政治能力不要でしょうが、市場対策は金融工学どおりに行くわけがない・・市場との対話能力不足が1昨年夏の株暴落や昨年1月初めのサーキットブレーカー作動による大失敗等々です。
ゾンビ企業への追い貸しの結果中国の民間債務が巨額にのぼっている・GDPの伸び率を大幅に超える貸付金の増加が追い貸し分に当たると言う・・ことが従来論じられていましたが、国際批判を気にしたのか?今朝の日経新聞6pではこの多くを株式化したので4代銀行の不良債権比率が急激に縮小していると書いています。
ゾンビ企業に対する不良債権を株式に書き換えてもそんな企業の株式は価値がない筈ですから本来意味がないのですが、この裏には中国の特殊性があります。
1昨年の株式暴落以降株式市場は大口売買が禁止されたままと思われます・・その後報道がないのでどうなったかな?貸し付け債権の増減はデータ次第ですので国際的に注目されて来たのですが、株式相場ならばいくらでもサジ加減出来ると言う社会主義市場経済の妙味?を発揮出来るからでしょう。
実体経済と乖離した小手先の技術で誤摩化せるのは一時的ですから、次々といじるしかないでしょう。
留学帰りの秀才が活躍出来ることは間違いないですが・・。

騙しあい社会4(金利の駆け引き)

大名が自腹持ち出しだけではなくその家臣団も主君の命令があれば家の子郎党引き連れて自腹で軍役に参加するものであって、この生き方は末端まで行き渡っています。
日本では公的業務は、自己犠牲が原則であって上から支給されたモノを自分の懐に入れることなど出来るものではありません。
日本と社会の仕組みが根本から違う中国の歴史によれば、習近平氏による汚職摘発は元々民族・社会のトータル正義にあっていませんが、「政敵倒し目的」と「見えすいた名分」と分っている範囲が限界で、それ以上一般官僚にまでに進めると国民全部が対象ですから無理があってそれ以上進めません。
そこで、大物・即ち政敵粛清が終わった昨年半ば頃からは、汚職摘発が収束して来ました。
国民もこの辺で終わると想定して自分には及ばないと達観していたでしょう。
「習近平を批判した」かどうかが本来の基準・間違って検挙されても、表向きは賄賂をもらっていた以上は、言い開き出来ない基準なき社会・・これが専制支配の特徴です。
賄賂罪そのものは何十年も前からあるので、政権が変わった途端に(政敵支持を理由にする)処罰は形式上罪刑法定主義に反しませんが、本来の処罰基準が政敵かどうかにあるとすれば、ある政権のとき実質上非処罰だったのが政権が変わると前政権に協力していたことを実質的理由に「賄賂」罪で検挙されるのでは、一種の事後法処罰です。
要するに法・・ルールがないのと同じで国民・企業は安心出来ません。
結局旧政権近づいていても政権が変われば・恥も外聞もなく強い方に直ぐにすり寄る・旧勢力には手のひら返し・・保身のためには旧政権の秘密を売るしかないと言う程度の処世術が発達します。
権力者も権力を失えば最側近からいつ裏切られるかしれないので、権力を手放せなくなるし猜疑心ばかりでお互い心が休まる暇がない社会です。
汚職構造に戻しますと汚職をなくすには徐々に徴税率を上げて行き、その分給与をしっかり払って汚職を減らして行くべきでしょうが、これは相互性があって一方だけイキナリ出来ることではありません。
日本マスコミは賄賂の巨額さを騒ぎますが、実は国家財政的には大した資金ではありません。
曹操が兵糧不足を兵糧長官の不正の所為にして処刑した故事がありますが、個人のちょっとした汚職くらいで、曹軍百万と言われる大軍の兵糧がどうなるものではありませんから、言わば不満な兵の目くらましに使っただけです。
賄賂摘発は政敵粛清目的であって、その程度の国庫収入増ではどうにもならないので外需・・外資導入が減る+資本流出穴埋めのために何とか人民の金を吸い上げる必要に迫られています。
中国国内のバブルがガン細胞のように株式→マンションバブル→商品相場へと次々と転移して行くのは、政府と国民の騙し合いの戦場がドンドン移動して行くと見れば分りよい思います。
この一環として15年夏の株暴落直前まで政府系報道機関が率先して株式が儲かると煽っていましたし、これが15年夏に終わると株の売り逃げで儲けた人相手にマンション投機を煽ったりあの手この手の策を巡らしますし、人民はこれに乗せられたフリをしてうまく儲けて売り逃げしようと策を巡らします。
中国バブルは政府主導ですから、政府の動きを早く知る限り安心・幹部のコネさえあれば潮目がはっきり分ることです。
売り逃げ出来る自信のある情報にアクセス出来る層が厚い・・これを裏切ると大問題ですが・・のが特徴でしょう。
裸官と言って海外に逃げている層はそれほどでもない・・むしろバブルの波にのってうまく逃げられるグループの方が優秀・したたかです。
失業者が妻子を不安にさせないように貯金を取り崩して見た目の宴を派手に繰り広げているような状態ですが、その資金がいつまで続くかの心配を他人(外国人)がしている状態です。
日本的感覚で言えば、国民に対して実態を説明して質素倹約・海外旅行に行って不要不急のお金を使わないように要請するべきですが、それを頼めない・・弱みを見せると権力がおしまいになる・・政権の弱さでもあります。
弱さの原因は普段から政府が国民との信頼関係構築を怠って来た結果であり、日本流に言えば身から出た錆です。
3月18日の日経新聞記事を紹介していたように、国民の海外投資抑制を通り越して外国企業との企業間取引代金支払いまで待ったを掛けるようになると・国外企業は怖くて中国企業と取引出来なくなります。
尖閣諸島や南沙諸島のように腕力に任せて乱暴なことをすると廻りが怖がるし、韓国やフィリッピンや台湾等を威嚇するために観光客を絞ったりして、バナナなどの輸入妨害すればフィリッピン等がたちまち降参する・・勝ち誇っているつもりでしょう。
気に入らない企業には代金を払わせない・どうだこの強さは!と言うつもりでしょう。
この結果、自分自身が世界中から乱暴なことをするクニだと言うマイナス評価・効果を受けます・・。
北朝鮮のように国際取引禁止の制裁を自分で申告しているようなものですが、中国政府はその意味が分かっていないようです。
専制君主が「自分がどんな無茶でも出来る」と自慢しているようなものです。
ネット報道レベルでは中国危機説がしょっ中出ていましたが、ネットに留まらず大手の日経新聞が3月18日に日本企業への不払いが起きていると言う大ニュースを流す重みですが、取り付け騒ぎの風聞に類することを大手マスメデイアが公式に言い出したことになります。
政府が権力に任せてこんなことをしていると、いよいよ海外からの投資(回収出来ない投資をしません)が減る一方になるでしょうから、資金不足が加速します・分ってはいてもそうするしかないほど資金的に追いつめられているのでしょう。
これらの強制措置が功を奏したらしく17年2月末の外貨準備が久しぶりにプラスに転じたとの報道です。
国民が自由に資金を動かせないままで国民が黙っているとは思えません・・「下に対策あり」と言われる国民性ですから、時間経過で規制をくぐり抜ける裏技が出来上がって来るでしょうからイタチごっこになります。
2月末の外貨準備持ち直しの3月7日発表は、3月5日から始まったばかりの全人代向けお化粧の疑いもあり、この先どの程度続くか分りません。
もしかするとこんな無茶な規制は長く続かない・・続いても「下には対策」がありますので4〜5月末にはまた減少に転じるかもしれません。
3月27日に紹介した3月18日付日経新聞記事には、日本企業の決算による利益送金が集中する6月頃に大量送金不能がもしも起きると・・正念場が来るとも書かれています。
大手メデイアですから、まさか「デフォルト直前」とは書けません・・あっさりと書いているものの、ここまで来ると殆どデフォルト直前の様相をそれとなく報道していることになります。
この報道を見れば余程ノーテンキな企業でも、今後中国への進出あるいは受注活動を一旦中止して様子見に転じる筈です。
6月頃には「対策」が進んでまた外貨流出が始まっている可能性があり、別の規制が始まっているのかな?

官製相場の限界1(金利)

目標とすべき先進国の産業モデルのある新興国と違って産業振興も政府が主導すれば成功出来る保障はありません・・。
日本は模倣すべき国のない先端産業国であり民間資金余剰国ですし、仮に資金不足国でも本当に脈のある事業ならば、世界の投資家が放っておきません・・M&Aも盛んです・・どこの投資家も見向きもしない投資を政府がやればどうなるものでない・・結果的に失敗する可能性の方が高いでしょう。
※宇宙探査その他政府がやれるべき分野,社会保障のようにやるべき分野が一杯あることはこれまでも書いています・・何もかもやめるべきと言うのはなく、「産業振興は民間に委ねてこの分野の財政支出をなくして行くべき・・税収削減すべき」と言う意見です。
政府が資金を吸い上げるのは良くない→消費税増税反対論の続きです。
とりわけ消費増が目標になって来ると供給側が計画し宣伝さえすれば売れる訳でない・・必需品供給時代は供給者の意向、政府の計画が有効な場合が多いですが、面白そうだから手に取る時代になるとそうは行きません。
日本は室町〜江戸時代から消費者向けに面白いものを工夫しては(朝顔の花1つとってもこれが「朝顔か?」とびっくりするほど変わった変化を楽しんで来ました)消費を盛り上げる文化が進んで来た社会です。
着物の柄であれ役者の似顔絵や村のお祭りであれ、俳諧や都々逸などお上が進めた結果ではなく庶民の工夫が花開いているのです。
石油ショックのように供給側の事件でも、一時的に政府が下支えする必要だった事は確かですが、これは一時の出血手当でしかなく、原油相場の急上昇に対応・・脱却するには、民間の省エネで努力に待つしかなかったのです。
消費増が期待されている以上は、政府が出来ることはホンの僅か・・むしろ庶民からし金を奪いの活力を妨害しない方が有効でしょう。
戦後の赤字国債に関するウイキペデイアの記事からです。
「1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている」
赤字国債発行には戦後だけでも、上記のとおり・・75年は石油ショックであり、93年以降はバブル崩壊ですが、93年以降政府が資金不足に陥った経過を私なりに以下のとおり整理しました。
    記
(1)中国の市場参加による20年以上にわたるデフレ圧力(石油ショックによる石油値上がりと低賃金中国の市場参加による商品値下がりは、交易条件悪化ショックでは同じです)・・に対して、衝撃緩和のために長年財政投入をして来た結果財政赤字が巨額になってしまった。
この必要性は中国との格差がなくなるまでですから、人件費その他生活水準格差がある限りこの衝撃緩和の必要性が続きます。
※ 最近対中ショックが薄らいでいるのは中国の人件費アップによります。
(2)衝撃緩和目的の資金投入は、賃金で言えば中国人件費との差額補填(直截的施策で言えば、社内失業を実施する企業への雇用調整助成金・・その他間接的政策は一杯あります)・・言わば後ろ向き支出ですから財政支出に対応する資産が何も形成されていない・・国債の種類で言えば建設国債ではなく赤字国債になるしかありません。
(3)ショック緩和の資金ファイナンスするために増税出来ないので(これまで書いているように増税すると国内消費抑制になってしまうので)低金利(郵貯や国債の低金利)で資金を国民から吸収する政治を続けて来たが、臨時的な筈の衝撃緩和策が20年にも及んで来ると(個人で言えば臨時出費のために月給では間に合わずサラ金に借りるような事態が20年も続く?)債務総額が増えて来たので低金利でも支払リスクが無視出来なくなって来た。
(4)金利が徐々に下がるに連れて国民の国債・郵貯離れが生じて来たので、穴埋めのために日銀や年金資金による買い受けが常態化・・拡大して来た。
(5)それでも不安があったのでプライマリーディーラー制度を設けて一定量の買い受け強制をして来たが、禁じ手とも言うべきマイナス金利まで来るとさすがに国債や郵貯を通じた庶民からの資金吸収能力がなくなってしまった→エンドユーザー不在のままでは日銀買い戻しをしない残り一定枠を小売り・再販するのは無理が出て来た・・売れないまま自己保有継続しているリスクが大き過ぎるようになってきた。(三菱の特別資格返上)
(6)(マイナス金利採用時には、予めこうなることは予想されていたでしょうが)ここまでくると三菱を脅す・・嫌がらせで引き止めるのは無理があるし、かと言って、今更実勢相場・・投資家が自腹で買ってくれそうな相場まで戻すと日本経済は大混乱です。
金利も市場需給に委ねるべきなのに、金利の官製相場造り(中央銀行による基準金利操縦)はドンキホーテのように滑稽ですが、誰もその滑稽さを書いていませんが遂に無理が明からさまになって来たのです。
「毒を食らわば皿まで」と言いますが、ここまで来ると新規発行国債を100%日銀が買い戻す運用・・直接引き受けをするしかなくなってきました。
国債の場合、既発行国債を日銀が100%保有しても、結果的に紙幣発行の歯止めがなくなったというだけであって、それがどう言うことになるのか実はよく分っていません。

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