違法収集証拠の証拠能力(違法性の程度)2

具体的な違法行為をしていないのに、憲法文言を類推して拡張解釈し、令状なしの捜査をしただけで違法収集と認定し、しかも証拠能力まで結果的に否定したことになります。
一般的に法制定が必要とか憲法改正が必要と言う論法は、何でも反対・・思考停止を求める勢力が多用する方法です。
たとえば、集団・共同防衛が本当に必要と言うならば民意で決めるべき・・必要ならば、憲法を変えてからにすべきだと言うのにも似ています。
現状維持勢力の基本的主張です。
しかし自衛の範囲に同行者・相互防衛関係にあるものが襲われた場合にそのときに反撃に加わるのが共同防衛・・自衛の範囲に含まれるかの緻密な議論を先ずすべきですが、敢えてこの議論を飛ばして短絡的に憲法問題にしているマスコミの姿勢と似ています。
国会や民意に委ねろと言うのは一見正論ですが、物事には法制定に馴染まない分野も一杯あります
たとえば、・・違法収集証拠の排除問題は違法態様にもいろんなバリエーションがあるので、事例集積を図ってどの程度の法違反があれば証拠作用されないかの基準が形成されて行くべき分野・・事前の画一的法制定には向いていません。
最高裁自体も令状なし捜査が許されないとしながらも、どのような令状捜査が可能かは非常に難しいことを書いています・・日進月歩の先端技術開発が進んでいる現在予め具体的に決めて行くのは無理がありそうです。
ソモソモ令状主義が出来た時代には、容疑者が令状を示されたときには取り囲まれていて逃げられない・・あるいは逮捕されてから身体検査令状を示されて逃げられない・家宅捜索や身体検査の場合、証拠隠滅しきれないのが原則だったことを前提に成り立っています。
GPS装着前に令状を示すなどしていたら捜査の実効性がないことは明らかですから、最判が令状なしの捜査が違法と言うのは不可能な要求している・・ 結局GPS捜査禁止と同じ効果があります。
あとは立法の問題として司法権が立法に丸投げすると立法作業期間中捜査の空白が生じてしまいます。
その程度のことはプライバシイ侵害可能性と比較して、仕方がないという価値判断でしょうか?
犯人の受けるプライバシー被害があるとしても(最高裁は「あり得る」と言うだけでどう言うプライバシイ侵害があったかを認定していません・・・可能性だけです)この程度の被害は許容されるかどうかをもっと緻密に掘り下げて議論すべきだったように思われます。
防犯カメラもプライバシイ侵害可能性がありますが・公道に限らずトイレなど・・それでも必要性との兼ね合いで(九州弁連で反対のシンポジュームらしいものを開いていたことを以前紹介しましたが・・)社会的認知を受けています。
防犯カメラは民間が行なう点で捜査とは違うし、不特定多数相手で特定事件があってからチェックするだけで事件がなければ自動消去してく仕組み・特定者を継続的監視する仕組みではないのに対して、GPSは特定のクルマを継続監視する点が違います。
そのうえ利用者は承知の上でトイレ利用するから隠密裏に行なうGPS捜査と大きな違いがあると言うのでしょうが、急にトイレに駆け込みたい場合選択の余地がない点・・一般のスーパー等でも防犯カメラのないトイレを選べないように思いますが・・をどう評価するのでしょうか?
ところで捜査か民間かあるいは事前承諾の有無の判断と侵害の程度判断とは次元が違います。
被害の程度判断過程に承諾の有無や捜査か否かを持ち込むのは議論を混乱させることになります。
先ずそれぞれの次元・・プライバシー侵害程度についてはその次元で判断すべきでしょう。
最判判旨の一部をもう一度引用しますと「個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るもの・・」となっています。
しかし、GPSクルマ装着の場合個人の洋服につけるのとは違い、実際に誰が乗っていたかも直接的には不明、(・・本件では犯罪集団の内偵でしたが、犯罪集団が利用している場合所有名義人が乗っていることの方が少ない)クルマの移動経路時間帯が分るだけですから、「個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴う」と言う最判は事実認定が甘過ぎる印象です。
他の情報と合わせると偶然分ることがあるかも知れませんが、GPSから「必然的」に分るものではないでしょう。
4〜50km走った場合、途中の幹線道路設置したところだけで切れ切れに写っている防犯カメラの映像の組み合わせで(窃盗現場が住宅街が普通とすればかなり距離があります)運転する個人が特定出来ることがあると言うならば、その他の情報(傷害犯行現場写真のシャツの端っこの映像で)も「偶然」手に入れたいろんな情報の組み合わせで分る点は同じです。
しかも判決書きによれば私的領域に幅広く侵入・・と言うのですが、私の知っている限りでは(捜査の場合もっと精度が高いかも知れませんが・・)、GPSは50メートル前後しか特定できないことになっているので、ただちに私的領域・誰とデートしているか何をしているかが分るものではありません。
顔写真には周辺景色も写るので1メートル単位の一特定が可能ですが、プライバシー性の濃密さで言えば、プライバシー侵害の深刻度は防犯カメラに比べて低いと言う見方も成り立つでしょう。
防犯カメラには通行人の暗黙の同意があると言っても、防犯カメラは公道や広場等では全て設置されているわけではない・設置されていない場所の方が多いので・・(私の事務所近くの道路などを考えても)具体的にどこにあるかも知らないし、防犯カメラに自分が写っているかを知っている人の方が少ないと思われます。
警察が知りたいのは主に停止時間帯と近隣窃盗被害との関連性程度・・犯行を直接証明出来るわけがないので捜査の端緒にしたい程度ですが、この程度の関連性があるだけ証拠価値ゼロにしなければならないほどのプライバシー侵害になるかについてはもっと掘り下げた議論が必要です。
これをしていないままアンチョコ(最高裁大法廷の認定を一介の市井の弁護士がこのように言うのはおこがましいですが・・)に令状の必要性を認定している印象です。
ところで令状必要性に関する判断も今後の実務を拘束する点で重大な判断であるにも関わらずアンチョコすぎる印象です。
この部分をもう一度引用します。
「(2)憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。」
「そうすると・・令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。」
憲法35条二項が判文に出ていないのでついでに35条全部を紹介します。
第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」
35条に該当すれば、令状がなければ出来ないことになります。
冒頭に書いたとおり、「令状主義」は当時の捜査対象との関係で決まって来た歴史がありますから、令状を要する保護対象をどこまで広げる必要があるかの重要な論点を「侵害しうる」と言う粗雑な認定であっさり決めてしまった判旨はこれを無視しているか気づいていないように見えます。
何回も書くように私は憲法のプロではないので憲法のプロの間では幾多の議論の経緯があって、それを踏まえた判決かも知れませんが・・。

違法収集証拠の証拠能力(違法性の程度)1

違法手段で収集した証拠を排除すべき基準は、違法によって生じた損害の大きさとの利益衡量関係ではないでしょうか?
この辺は刑事訴訟法学者の研究論文が一杯あるのでしょうが、このコラムを書くまで気にしていなかったのでその方向から読んだことがありません。
ですから繰り返しお断りしているとおり素人の思いつき意見です。
GPS装着によって想定される実質的被害があるとしても、拷問禁止のように何が何でも禁止しなければならないような普遍原理と言うべき権利を侵害しているとは言えないように思えます・・。
以下最高裁判決文の一部です。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600
平成28(あ)442
事件名 窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
裁判年月日 平成29年3月15日法廷名 最高裁判所大法廷
「・・このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものであり,また,そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。
(2)憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。」
「そうすると,前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。」
(3)・・GPS捜査は・・・,裁判官による令状請求の審査を要することとされている趣旨を満たすことができないおそれがある。さらに,GPS捜査は,被疑者らに知られず秘かに行うのでなければ意味がなく,事前の令状呈示を行うことは想定できない。刑訴法上の各種強制の処分については,手続の公正の担保の趣旨から原則として事前の令状呈示が求められており(同法222条1項,110条),他の手段で同趣旨が図られ得るのであれば事前の令状呈示が絶対的な要請であるとは解されないとしても,これに代わる公正の担保の手段が仕組みとして確保されていないのでは,適正手続の保障という観点から問題が残る。・・・・」
「・・一般的には,実施可能期間の限定第三者の立会い,事後の通知等様々なものが考えられるところ,捜査の実効性にも配慮しつつどのような手段を選択するかは,刑訴法197条1項ただし書の趣旨に照らし,第一次的には立法府に委ねられていると解される。」
最高裁の判断は令状なしの装着が違法・・手続不備と言うだけのことですが、これによれば、手続さえ践めばあるいは立法さえ出来ればGPS利用の捜査自体が許されている・・拷問のように何が何でも禁止しなければならない捜査手法ではないことを前提にしています。
手続不備の違法を理由に無罪にして来た判例・・違法収集証拠排除の法理も元はと言えば、政策目的・拷問根絶と言う高度な人権保護思想が背景にあるのですから、どんな軽い違法でもあれば無罪にすると言う法理として形式的適用をするのは(私見によれば)間違いです。
国家が違法行為をして良いのかと言う理論付けも有りますが、矢張り程度問題でしょう。
最高裁はこの点具体的な侵害の有無に触れずに「個人のプライバシーを侵害し得るものであり・・」と侵害可能性を認定するだけで続いて憲法35条の令状主義の精神に反しているので違法=証拠採用出来ないと結論を出しています。
この点では原審・・高裁判断の方が、違法性の程度も検討している点で合理的な感じがします。
(最高裁は高裁が余計な利益衡量をしていると言う立場ですが・・)
最判は法律実務家らしい具体的議論をすべきなのに、これをしないであちこちで粗雑な論理を展開して(憲法論に疎い素人の意見ですのでご容赦下さい)立法論に放り投げてしまった印象です。
(憲法論に素人の私のレベルでは)ワケの分らないプライバシー保護の理念の強調から折角証拠のそろっている犯罪者を無罪にしなければならないほど優先する人権か・・違法性がそんなに高いかの丁寧な議論が必須と思われます。
「立法的措置・・が望ましい」と書いていてそれなりに行き届いた判決のように見えますが・・。
しかし、上記判決文のとおり「侵害しうる」と言うだけで具体的侵害の認定もしないままで、憲法に明文のない「プライバシー侵害があり得る」d家得35条該当・令状主義を持ち出して・令状がないから違法な捜査であると言うだけで違法の程度を詰めないで証拠不採用にしてしまう・もしかして無罪になるのか?の疑問です。
遠くのビルから望遠カメラで室内の様子を探っていたら偶然殺人行為や違法行為を撮影した場合、遠くの高層ビルからの無断撮影はプライバシー侵害の可能性があるが、望遠鏡で覗いても良いとする法がないから違法・無罪にすべきだとなるのでしょうか。
民間人が趣味で覗いていたならば証拠になるが、捜査目的=35条違反・ダメと言う論理が分り難いのです。
内密にやるのと権力による強制的住居への押し入りその他の侵害とは本質的に違う・・違法性が緩い・・その点について緻密な議論が必要だったように思われます。
こっそり盗むのと強制的に金をとるのと犯情が明らかに違うでしょう。
憲法で令状を要求されているの文言カラ明らかなように実力で制圧して行なう「強制」捜査です・・これをはっきり言えば断るに決まっているから強制だと言うのは言葉のすり替えです。
刑法レベルで見れば(住居侵入を伴わない)入浴中の浴室などを覗き見るなどは、軽犯罪法違反程度ですが・・これもはっきり見せろと言えば断る決まっているから強制して女性の裸体を見たのと犯情が同じと言うのでしょうか?
最判は「そのような捜査手法を許容する法がない以上証拠に出来ない」と言う趣旨ですから、GPSによる捜査を認める必要があるならば民意に基づいて立法すれば良い筈・「立法化していない以上は、その間はGPS装着によってえた証拠は証拠として採用出来なくても仕方がない」と言うと一見罪刑法定主義の応用みたいな印象を与えます。
処罰するには予め法で開示しておく・・罪刑法定主義ですが、捜査方法は社会の進歩に従った日進月歩の必要性があるものですから予め捜査方法を法で決めた方法による捜査しか許さない・決めていない方法による捜査は違法となる性質のものではありません。
従ってそもそも前もって法で許可する方法に捜査を限定する性質のものではありません。
罪刑法定主義とは根本が違う・手続を犯罪行為前に決めておかねばならないものではありません。
特に本件では何かの法に反することを積極的にしたのかと言うと最高裁の事件は「プライバシーを侵害しうる」と言うだけですから、多分住居侵入のような具体的違法行為を認定出来なかったように推定されます。

日中の制裁合戦6(バブル崩壊7)

カエルが腹一杯膨らませて身体を大きく見せかける寓話がありますが、これが破裂して身の丈に戻る過程が始まったのを世界中がバブル破裂近しと見ているのです。
(破裂すれば本来の能力以下に体力消耗します・・中国で言えば経済が希望観測で膨らみ過ぎていた期待による過剰投資・在庫調整期間はマイナス成長になるだけではなく、実体以上の評価を維持するために国土・国民の健康等安全面に過度の負担をかけていた公害・・土壌汚染等のマイナス効果が出て来ます)
中国経済の現状は国土を食い物にして国土の持続可能性を維持するに必要なコスト負担を先送りして来た結果、公害が表面化して来てにっちもさっちもいかなくなり、他方で適正コスト負担を先送りして破格に安く生産していたにも拘らず、東南アジア等との競争に曝されて貿易で稼げなくなって来ました。
昨日の夕刊で政府による7,45%成長発表にもかかわらず同期間の卸売物価が下がり続けている・・3%下がっている様子が報じられています。
企業は在庫の山で呻吟しているのですから、卸売物価(企業間取引価格)は下がるしかない・・この状態で7%以上もプラス成長って本当?とだれもが疑うでしょう。
公害の測定結果をアメリカ大使館が発表しているのを中国政府が内政干渉だと問題にしていましたが、今や測定しなくとも大気の汚れがあまり酷くなったので隠せなくなりました。
言論統制の結果誰も正面から反対できないとしても、政府統計があまり実態からはなれ過ぎると誰もが信じなくなってきます。
先行きの見込みがないとして外資が引き上げ始めると、当然国内資金が足りなくなってきます。
資金連鎖の最も弱いところ・・シャドーバンキングにこの兆候が現れ始めたということでしょう。
2014-5-4「日中の制裁合戦5(バブル崩壊2)」以来バブル崩壊に話がそれましたが、経済制裁の話題に戻ります。
中国の尖閣諸島周辺への領海侵犯行為の繰り返しと対日暴動以来、経済交流の相互縮小・・最大投資国であった日本による新規投資の急減により事実上の経済制裁が始まっていたことになります。
経済制裁とは大規模な連合体で行なう場合を言うのでしょうが、個々の国同士で言えば「制裁」しなくとも個人が喧嘩してお互いに交際をやめたり縮小して行くと、限定された二国間で同じような結果が生じます。
お互い交流を縮小して行く状態になっているのが、現在の日中関係です。
昨日あたりから国際大問題になっている中越の衝突事件でも、(例によって中国の海艦によるベトナム巡視艇への衝突行為)ベトナム政府は怒って中国との交易縮小・停止を主張し始めています。
中国はこうした行為の繰り返しによって周辺国から嫌われ者なって行くしかないですが、このマイナスを気づかない・・暴力団同様の精神構造で「どうだ、俺に逆らうとこんな痛い目にあうぞ!」と粋がっている様子です。
喧嘩ばかりしていて周辺と交流が縮小して行く結果を見ると、片や日本企業は史上最高益更新の決算企業続出の景気状態ですが、中国の方は経済規模が縮小し始めていろんなひずみが吹き出しつつある状態に陥っていることが分ります。
中国が今年の春先の成長率が7、4%成長と発表していますが、資源国が中国の資源需要の急減で困ってる・・資源輸入量を現状維持さえ出来ない・・減少しているローエンド生産国の中国が、何故プラス成長しているかとなりますので、正確には資源輸入量の減少率にほぼ比例して何%減であるのが正しいでしょう。
5月2〜3日のブログで書いた求人の減少・大卒の就職難もこうした実態経済の苦難の何の一端・現れを表しています。
この数年前まで大量に資源輸入してくれる中国になびいていたオーストラリアが、中国の輸入急減に愛想を尽かして親日国に豹変し、1〜2ヶ月前に日豪の貿易協定が成立していることから見ても実態が明らかです。
鉄鉱石その他資源輸入が何割も減少しているのですが、マイナス幅を誤摩化すならばまだ可愛いものですが、マイナスをプラス成長と逆に発表する中国政府の神経は尋常ではありません。
こんな子供でも分るようなまやかしを続けるしかないのが、中国政府の苦しさを表しています。
このやり方を何十年も続けていたので、(年に1割ずつ水まししていると?)本当のGDPは実質的には、公式発表の半分以下の可能性があります。

中国バブル崩壊6と公害・違法物の拡散2

日本の消費者が危険でも安ければ良いと選んでいるのではなく、国民に分り難い形であれば、業者が「少しでも安いものを」と大量に輸入するので中国から野菜に限らず毒餃子等食料品の輸入が増え続けています。
業者にとっては毒餃子事件のように直ぐに被害が生じれば企業リスクがありますが、(水質汚染や土壌汚染の場合は水俣病のように直ぐには分らないので)10年続けて食べれば危険という程度ならば、どこのファーストフード店で食べたのが原因か、どこの企業の仕入れた食材かも不明になるしホーレンソーが悪かったのか大根・人参が悪かったのか誰にも分りませんので、企業リスクがないから(違法食品の疑いがあろうがなかろうが、)1円でも安い食品輸入を続ける姿勢になるのでしょう。
外食を続ける怖さはココにあります。
ココで違法の疑い・違法食品という意味は、(高官に対する賄賂・コネ等で形式的には法規制をクリアーしているとしても)実質的違法(潜脱)状態を意味して書いています。
中国にも一応知財保護規制や公害規制があるし、土壌汚染規制や食品衛生基準があるでしょうが、これを守らない・・守らなくとも政府にコネがあれば取締を受けなかったり合格してしまう社会であるから、実質違法コピー製品・食品が溢れる社会なっている実態を書いています。
違法コピーが法で公認されているのではなく、規制法があるものの事実上野放し状態が世界中で問題になっているのです。
公害も規模が巨大になって、海を隔てた日本にさえもPM2、5が飛来する時代ですし、重金属汚染下で生育した野菜を食べた豚肉等が日本に知らぬ間に大量に輸入される時代ですから、「汚染された食品でも労働環境無視や環境破壊下での製造も、中国人民が健康被害を受けるだけだから良いか」と言う時代ではなくなっています。
今後は世界基準あるいは最低日本基準の公害規制適応認証や労働環境等認証等を受けたもの以外は、盗品同様に買わない・買っては行けないという運動や規制が広がれば、人権侵害や公害の広がりも防げるしデフレ脱却の道筋が着くでしょう。
中国の経済成長は国民生活水準引き上げのための経済成長ではなく、国民・環境を犠牲にして国威発揚・自慢するためのハリポテ成長ですから本末転倒ですし、(裸の王様がいつかは風邪を引くように)いつかは無理が出て来ます。
消費税増税のための駆け込み需要や補助金政策はこの間に将来の需要を先食いする弊害が知られていますが、中国の場合、目先の利益のために国民の健康や・国土汚染による健康被害発生等の損害発生を先送りして来た政策です。
目先の金銭欲にくらんだ先送りの付けが回り始めたのです。
中国に将来性があるどころか、国土や人民を食いものにした先食い政策でしたから、今後その付け(公害の蓄積が限界)が回って来て大変な事態が待っています。
既に中国ではガン村という地域があちこちに発生していますし、(水俣病等で明らかなように)重金属汚染効果が出るには長期間かかるので、まだ現実化していない予備軍的地域がその他一杯あることになります。
低賃金による輸出攻勢が出来なくなり、公害対策コストを惜しんで国土を極限まで痛めつけて来た結果国土が荒廃してしまった現在・・中国政府にはどのような打つ手があるのでしょうか?
大気汚染は時間の経過で他国へ拡散して行きますが(日本は大迷惑)、何のためらいもなく汚染し続けた結果の土壌汚染は簡単に隣国に拡散して行きませんので、自国内で責任を取るしかありません。
重金属汚染土壌は短期間ではどうにもなりませんから、何を作っても恐ろしくて食べられません。
日本の場合重金属類の工場廃液が(工場は原則海岸線に立地しています)海に放出されて重金属類を蓄積した魚介類を食べた人(最下流域と水俣湾)に発生したのですから、基本的に土壌汚染の影響は軽微でした。
中国の場合内陸での希土類の採掘や内陸部の工場廃液の垂れ流しその他による土壌汚染ですから、これが徐々に大陸内を下流域に浸透して行く(・・まだ上海等沿海部大都市に効果が出ていないので政府対応が鈍い)のですから大変です。
もしかして国を棄てて日本へ移り住もうという計画があって、日本攻撃の準備しているとすれば迷惑な話です。

中国バブル崩壊5と公害・違法物の拡散1

中国は欧米の要求に従って知財保護など法規制を作るものの、過去30年間にわたって実際に法規制無視の操業を黙認して来たことが道徳意識を退廃させる一方で、水質や土壌汚染ひいては大気汚染等マイナスをもの言わぬ国土に負担させてきた咎めが表面化し始めて来たことになります。
技術革新の結果中国が従来の相場である100を60に下げるならば世界にとってプラスですが、公害垂れ流し、安全無視、あるいは設計・知財の剽窃や人権侵害の結果による低価格実現では世界が迷惑です。
違法操業等による適正コスト無視の無茶苦茶な低価格輸出によって、世界はデフレ経済に落ち込んでいて世界中がどうやってデフレ脱却するかの処方箋に悩んでいます。
日本の長期デフレの元凶は中国からの破格に安い価格製品の流入によることは明らかであって、これは金融政策の失敗によるものではありません。
金融政策で一時的にデフレマインドを変えるなどの対処が必要であったかどうかは別ですが、原因ではありません。
紙幣大量供給や公共工事で需要喚起すれば太陽光発電設備の大量輸入になるように、適正コスト負担しない中国から破格に安い製品が流入するのでは、尻抜け状態でいつかは金融政策の原資が枯渇します。
世界のデフレを止めるには中国が適正なコスト負担して物を作るようにならない限り無理があります。
比喩的に言えば、法令基準に違反し盗品を10分の1の値段で横流ししている企業と適正コスト負担している企業とが価格競争しているのでは正常な競争になりません。
日本の伝企業カイがサムスンに負けたのはサムスンが日本企業から技術者を引き抜いて技術の剽窃をしているからだと言われていますが、(真偽は分りません)長年かけて研究して製品化した成果を日本人技術者にちょっと高給を払って盗み取れれば、こんなぼろい商売はありません。
サムスンは日本の最先端技術を盗み切った結果、(競合分野から日本企業が撤退した結果)サムスンはもはやこれ以上盗めないので今後の発展性がないと言われていますが・・。
劣悪環境で働いて中国人だけが苦しむだけならば、まだしも中国人の勝手だと言えますが、公害垂れ流しの規模が巨大になって西風に乗って日本列島にまで押し寄せて来るほどの規模になって来ると日本も被害を受けます。
汚染水を垂れ流し悪臭を放ち、有害空気を拡散する・騒音振動を気にしない工場経営では、働く人さえ我慢すれば良い・・労働環境が悪いだけではなく、近隣に住む人も迷惑を受けるような関係です。
現在では違法操業によるデフレ輸出(食品の場合健康被害)と公害の迷惑がダブルで日本に中国から押し寄せて来る状態になっていますが、日本人自身が中国人が劣悪な環境で生産している結果安く出来たものを喜んで買っているから、その効果を受けているとすれば、自業自得と言えるのかも知れません。
この後で書きますが、大気汚染は目につき易いし短期滞在の外国人も直ぐに(目にしみるとか喉がイガイガするなど)影響を受けるので大騒ぎになりますが、水質汚濁や土壌汚染は深く静かに進行していても居住者でさえ水俣病のような被害が出るまで分らないことが多いものです。
土壌汚染で育った食材で飼育した豚肉や中国野菜等を誰も食べたくないでしょうが、国民個々人は買い物では中国産は怖いと選別できますが、弁当や外食・出来上がった総菜では中国製が入っていても、その表示もないので消費者は選べません。
5月6日の日経朝刊21ペーには、TPPで焦点になっているアメリカからの豚肉輸入が多い理由が書かれています。
これによると和牛などは食べれば直ぐに違いが分るので、消費者に知られずに輸入品を売るのが難しいので牛肉輸入が限られているとのことです。
それでも牛丼店では狂牛病問題でアメリカ牛の輸入禁止で大打撃を受けたことが知られているように、国民がいやがっても輸入品は業者加工に多く使われる傾向があることが明らかです。
豚肉はハム等への加工に限らず直接食べても消費者には違いが分り難いことから、牛肉とは違い業者が大量に輸入している実態が紹介されています。

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