地位の逆転

中国の場合外貨準備・蓄積が進んでいて1昨年だったか日本の外貨準備高を追い越したことに明らかなように、資本収益回収による先進国への還元よりは貿易黒字による蓄積の方が圧倒的に多くなっています。
と言うことは、日本やドイツのようにまだ黒字を続けている国は別として先進国全体で見れば、すでに資本・知財収益等では貿易赤字を埋めきれなくなっていることになるでしょう。
この実態をごまかすために、ここ10年近く世界中で金融立国が標榜されてアイルランド等これに乗っていた国がリーマンショックの引き金を引いたのですが、貿易赤字が累積して行く中でいくらどうあがいても稼ぎ以上の消費生活を続ける矛盾・・サブプライムローンと言う複雑化による誤摩化しがついに破綻したのが、リーマンショックだったと言えます。
ギリシャが先進国だったかと言えば疑問がありますが、今年のギリシャ危機は、この赤字に耐えきれなくなった結果・・環の弱い中進国に出たと見ることが可能です。
この点はアジアで1900年代末〜2000年代初頭に続いたタイ・韓国の通貨危機(資本の急激な回収によるもの)とは意味が違います。
ところで資本収益は永続出来るかの問題ですが、日本に進出したアメリカ企業の株式が徐々に日本企業に買収されてしまったように、中国でも力をつけた現地企業が合弁している日本や欧米の株式の取得あるいは増資の度に民族資本比率を上げて行くのでしょう。
こうなると貿易赤字分を資本収支等(知財や所得収支を含みます)で均衡させる方法は、それほど長くは続かないで短期間で終わってしまうように思われます。
それどころか新興国で現地生産を続けるうちに、現地従業員が技術を吸収して自前の技術が過去の先進国を追い越す分野も少しづつ出てくる筈です。
実際日本の技術と資金協力で低賃金を武器に成長を遂げた韓国では、日本の技術を凌駕する分野があちこちに出て来ています。
これが中国その他の新興国で同じ結果になって行かない理由がないのです。
あるいは日本や欧米企業が中国の現地資本との競争に敗れて資本を売却して撤退して行く・・ベトナム等転出して行く・・・ことも考えられます。
ダイエーの衰退に関して書いたことがありますが、企業は本体が苦しくなると苦しい分野を切り捨てないで、儲かっている分野を切り売りして延命を計って最後は売るものがなくなって破綻するのが普通です。
同じように本国の経営が苦しくなると、せっかく海外進出して儲けている事業をどんどん切り売りして失って行くのが普通です。

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