国民への説明責任3(逆は真ならずとは?)

人道主義的文化人の論文がネットに出ていましたので、これが代表的かどうかわかりませんがこのような意見をあちこちで読んだ記憶があるので多分代表的意見の一つでしょう。
ネットから消えてしまわないうちに紹介しておきます。
ただし引用の順序は前後します。
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110005050293.pdf?id=ART0008078537
Kobe College

NII-Electronic Library Service
日本軍性奴隷制(「従軍慰安婦」)問題と最近の動向
上野輝将
・・・・・『広辞苑』でみましたところ、「人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下に諸々の労務に服し、かつ売買・譲渡の目的とされる人」となっています、これで何が言いたいのかといいますと、暴力的な拉致があったか無かったか、それは奴隷の要件ではないということです。

ここで、論者はどういう根拠か「かつ売買・譲渡の目的とされる人」という必須要件を無視した議論を展開します。
前段の「人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下に諸々の労務に服し」という要件は、時代や社会状況によって、労働基準や人権概念自体が変わっていく要件ですから、これだけを基準にすると恣意的になりすぎます。
(武士が主君の命令に従うのは、今風にいえば人間としての権利がなかった・・し、戦前の労働は、今の労働基準で見れば奴隷労働になるか?)
「お金欲しさに労働条件のきつい企業に就職したりヤクザの下働きをする人もいるでしょうが、(あとで振り返ってあの時は「奴隷みたい」だった比喩的な言い方があるとしても)彼ら全てを「奴隷」とは言いません。
まして売春婦の多くはお金欲しさに自ら職業を選ぶことが多いから西欧の多くでは今でも売春を合法化しているし、日本でも管理売春だけが刑事処罰になっているのです。
奴隷か否かを分ける最重要要件は、牛馬のごとく「売買の対象」売買に関与できない「対象・商品」になっている状態こそがその本質です。
そこで広辞苑は「「かつ売買・譲渡の目的とされる人」という要件を「かつ」という単語を付加しているのです。
上野氏は、上記本質要件該当性チェックをすっ飛ばすどころかなんらの説明もなくいきなり

「暴力的な拉致があったか無かったか、それは奴隷の要件ではないということです。」

と言い切っています。
暴力的拉致と売買は時間差がある・.原因と結果の関係なので必ずしも一致しません・・拉致しなくとも人身売買の対象になってしまう場合もあるので(日本の高名な蔵相高橋是清が若い頃に何かの紹介でアメリカに渡ったら、奴隷に売られていたという有名な事例があります。
拉致が売買対象になる場合の原因の全てではないという意味では正しいのですが、広辞苑の要件は原因は何であれ現実に売買対象になっているかどうか・その人間に自由があるかどうかということです。
ですから、拉致→軍の強制不要というのは一応あっていますが、要は従軍慰安婦が(売り主が親かヤクザか別として)売春行為時に商品として売買対象であったかどうか・.女衒に騙されたにしても、その後日本軍相手の売春行為時にも監視監禁されて逃げられない状態が続いていたか?こそが重要でしょう。
これらを論証してから、慰安婦が性奴隷であったかどうかがきまることです。
拉致の必要がないことから軍が拉致していなくとも性奴隷だというのですが、そもそもど奴隷状態にある場合にその原因を問わないのはわかりますが、慰安婦が奴隷状態にあったか否かの前提事実を書いていないので分かりにくくなっています。
ただ広辞苑は一般の奴隷の定義ですから、慰安婦特有の政治問題・・諸外国での戦場で同じように行われていた売春婦(彼女らも多くは元はと言えば一定率で女衒に騙された女性もいるでしょうが)と違って、日本政府国民だけが何十年(パク前大統領によれば千年)たっても謝罪を続けねばならないほどの人道問題かは別問題です。
日本固有の問題にするには、諸外国とこの点が違うという・・「日本軍が直接売買拉致監禁に関係しているような事情が必要でしょう」という議論とゴッチャになっているように見えます。
泥棒をした者が悪いのはあたり前ですが、それを買ったものが悪いか?仮に悪い場合があるとしても泥棒以上に非難されるべきかは別問題です。
客の方は元どこかで何かの事情で売られた女性か、女衒に騙されたか、お金が欲しくて任意に売春している人かの区別はつきません。
性奴隷かどうかを見るには、拉致されて売春を強制されている人か、親に売られたか?女衒に騙されて途中で暴力団に売り飛ばれた人か等々によって色々なランクの人がいるのでそれ分類も必要です。
売春婦の中には逃げるに逃げられずに売春している女性が全くいないとは言い切れないでしょうが、売春婦の全部ではないことも公知の事実です。
西欧で合法化されている国で客は相手の氏素性を知らないのが普通ですから、「性奴隷の売春婦を相手にすれば処罰する」という法律は世界中にないはずです。
軍人が顧客だったということははっきりしていますが、それは世界中の戦場では古来から売春婦が付きものである事実からして、軍人が売春婦を相手にすれば日本だけ批判される理由にするのは無理があります。
日本だけ非難するには、特別事情の主張が必要でしょう。
ここで広辞苑の「奴隷」の定義に戻ります。
軍の強制がなくとも人身売買対象の場合がありますから、軍の強制が必須要件でないのは確かですが、広辞苑の定義では、「売買対象」であることが必須です。
軍の強制がないとしても慰安婦が任意に(金儲けのために)売春していたこととは必ずしも結びつかない(暴力団に拉致された場合もある)のと同様に、軍の強制不要ということから自発的売春婦まで性奴隷とはなりません。
要は売買対象(当事者の意思が尊重されない)の商品であったか否かです。
現在社会では、アメリカで知られるような公然たる奴隷制度がない・・人身売買は許されず、刑事処罰される現実があるので、「売買で物品のように取り引きされた」というためには、逃亡できない監視・・結果的に非合法な拉致監禁の仕組み=拉致被害の場合以外にはほぼ存在しえない現実があります。
逆からいえば、一定の自己資金を持ち自由に宿舎から出入りできる環境・.時には旅行できるような場合、奴隷とは言わないでしょう。
「逆は必ずしも真ならず」とはいうものの、「必ずしも」という意味は、「例外がありうる」→「逆が真であることが多い」という原則を表しています。
犯罪捜査も多くの状況証拠から犯人らしい人物を絞り込み(犯行現場付近にいた多くの人物から別の同種犯行現場にもいた人物を絞り込むなどしていますし、科学や化学・薬学の実験もこのやり方です。
一定の状況証拠があれば、それを覆すに足りる逆の状況証拠を出してこそ主張の合理性が担保されるのです。
自由に辞めることができるのに強制されていたということがあるの普通にはあり得ない状況です。
拉致された場合には自由意志によらない→奴隷状態ということですが、ごく例外的に拉致された場合以外でも奴隷になることもあるでしょうが、「拉致による以外の奴隷もありうる」ということから直ちに慰安婦が性奴隷と決まる仕組みが不明です。
慰安婦が拉致されたわけでもないのに「奴隷」状態というのは極めて少ない例外事例ですから、奴隷であった=自由意志がなかったことを事実をあげて積極的に証明する必要があるでしょう。
上野氏は、単に広辞苑では拉致を直接の要件にしていないというだけで、そこからなぜ慰安婦が性奴隷となるのかの説明がありません。

内務留保の重要性と流動資金の関係1

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。
その他発行済社債の満期決済用準備金や新規投資案件用の準備資金・・トヨタがEV化に乗り遅れないように数日前にもどこかの企業に何百億円出資したと最近報道されているように、近年では機動的出資資金の用意も必要ですし、急激な環境変化に対する予備資金も必須です。
任天堂やソニーが長期の赤字に耐えて見事に復活できたのは、豊富な蓄積があったからです。
利益を毎年残さず全部吐き出して蓄積ゼロでは、リーマンショックのようなことがあると国中の企業がほとんど全部倒産する事態になります。
トヨタでさえもショック前に比べて約3割売り上げ減のまま低迷していたことが分かりますが、一般に売り上げの5%前後しか純利益がないとすれば、3年以上も3割減のままであれば、巨大な赤字決算が続いてた可能性があります。
少し前年比プラスに回復を始めたところで、トドメを刺すように米国ではトヨタパッシングが起きてこれが12年のマイナスになったのでしょうか?
時期的にいつだったかを見ると以下の通りです。
http://uskeizai.com/article/156383418.html

2010年07月15日
2009年から今年のはじめまで、世間を騒がしたトヨタのリコール問題。覚えていますか?
2010年2月28日 トヨタリコール問題 アメリカの国策的日本いじめ
あれの騒ぎから半年が経とうとしていますが、自動車道路交通安全局(NHTSA)は、第三者機関によるトヨタ不具合の調査結果が報道されていました。ウォールストリートジャーナルによると、NHTSAがうけたトヨタ車の不具合報告は、3000件以上。このうち、93人が亡くなった死亡事故が75件ありました。
ここでクイズです。
このトヨタ車の不具合報告を受けた死亡事故のうち、トヨタ側の欠陥によって起きた死亡事故は、75件中何件だったのでしょうか?
答え 1件
2009年8月28日、サンディエゴのフリーウェイで3人を乗せたレクサス車は、アクセルがブレーキマットにはさまり車が加速して事故となりました。この1件です。
あとの74件は「運転ミス」だったとか。
トヨタ問題で火がついているときは、「ブレーキだけの問題なのか」「電気系統に不具合があったのではないか」などいろいろなことが政治家、メディアで騒がれました。
■ ラフォード運輸長官は、「トヨタ車を運転しないほうがいい」と発言。
メディアで騒がれていた後に、ブレーキが踏まれた形跡も電気系統が誤作動した痕跡もなく、結局ウソだということは分かった。この運転手は自己破産寸前で、訴訟を目的に騒ぎをおこしたのではないかともいわれています。
さんざん政治家から、メディア、そしてアメリカ人が騒ぎ立てた挙句、問題のほとんどが「運転ミス」だったとは。
トヨタは世界中の車で800万台のアクセルペダルとブレーキマットをリコールしました。
いったい、このトヨタリコール問題は、なんだったのでしょうか?」

やり方は違っても結果から見ると中国の反日暴動〜焼き討ちと同じです。
個別企業で見ると松下電器に対する中国での暴動などが起きると一定期間の損金計上に耐えられる予備資金がないとすぐに倒産危機で(株暴落)海外企業に安く買収されてしまいます。
あるいは地震による操業停止など大規模損害はいつ起きるかしれません。
個人の場合で言えば、物損被害背保険あG出ればなんとかなりますが、(勤務先が潰れない限り収入は以前同様ですから)企業の場合、工場が破壊される物損の保険では補填できない・・半年から1年以上操業できない(人件費等の固定経費はかかります)損失・・この間顧客が競合他社に逃げて顧客を失うなど)損害が巨大です。
今回の神戸製鋼に始まる日産等の検査不祥事でもすぐに経営危機にならないのは手厚い予備資金・・長年の利益蓄積があるからです。
危機対応能力を磨いておくべきだとか、不祥事を起こさない体質にすることこそが優先課題という反論があるでしょうが、それは次元の違ったすり替え議論です。
世界展開に合わせてあちこち網ののように広がったあちこちの出先で日々の支払いが必要ですので手元流動資金が増えて行くのは当然です。
個人でも同じで一定の年齢になれば、収入全部を毎年使いきっている人・病気したらすぐに生活保護申請という人は滅多にいないし賞賛される生き方ではありませんし、中小企業でも同じです。
メデイアが内部留保拡大を問題視して繰り替えし報道するならば、ここ約10年の企業規模の変化率及び、個々の企業にとっては近々満期のくる社債決済資金の積立や企業買収資金を準備するなどのいろんな事情を総合してもおおすぎるかどうかの個別判断を示すべきでしょう。
産業界全体で見れば一定額が溜まっていても、個々の企業別に見れば配当や納税予定資金や大型社債等決済時期の違いに合わせてそれぞれの企業が準備金を保有している違いがあります。
大口決済期が過ぎたり買収案件が一段落すれば、その企業では保有現預金が激減していても、産業界全体ではいつも大きな資金が滞留しているのは当然です。
結局産業界の規模拡大に合わせて資金が動くようになれば、1国の産業界全体の滞留(準備)資金が大きくなるのは当然です。
この種のデータの推移を見ながら、議論をしないと意味がありません。
日経新聞の大機少機に書いている200兆円という現預金の計算方法が書いていませんが、「16年度末」とだけあるので、仮に上場企業の決算期末残高を単純合計したとすれば、3月末決算企業だけの合計でしょうか?
全上場企業合計とすれば、それぞれ決算期が違うので3月末の基準日で(決算書もなしに)どうやって集計したのか不明です。
しかも、企業は決算確定後に納税や配当等を実施するのですから、決算直後の資金準備が必要でこの段階の数字の場合もあります。
企業によっては4半期ごとの速報をしていますが、4半期の開始時期が企業によって違うと時期的な食い違いがおきます。
参考までにトヨタの第2四半期の(売り上げとキャッシュフロー関係の)データを見ると以下の通りです。http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/library/negotiable/2017_9/business.pdf

当第2四半期連結累計期間の業績については、次のとおりです。
・・・・売上高は7,688億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて2,360億円 (44.3%)
の増収となり、営業利益は364億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて92億円 (34.0%) の増益となりました。
2017年8月 マツダ(株)と業務資本提携
売上高 14兆1,912億円 ( 前年同期比増減 1兆1,206億円 ( 8.6%) )
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は2兆8,143億円と、前連結会計年度末に比べて1,807億円 (6.0%) の減少となりました。・・・・

トヨタの第二4半期速報によると同社のキャッシュフローはこれまで書いてきた通り、概ね月商の1〜2ヶ月以内でむしろ少なめで売り上げ相応の必要資金・2〜3兆円前後で推移していることがわかります。
特に過剰な(無駄な)キャッシュフローを有しているわけではなさそうです。
内部留保とは、納税後かつ配当後の残高の過去数十年以上の積算合計ですから、即応決済用(納税・配当時期直前には納税・配当資金を準備し大型工事竣工予定で支払いの直前など)のキャッシュフローとは基礎数字が違います。
内部留保とは言っても「工場などの資産になっているのが普通」という反論がある時に、内部留保中に現預金が200兆円もあるとは書いていないものの、なんら限定なしに企業に現預金が200兆円もあるから、「これを投資に回すべき」という意見を書くと、内部留保の一部か?と誤解する人が出るでしょう。
ロッキード事件で500万円もらった人について当時メデイアでは「庶民感覚では途方もない巨額」と報道し、街の声として「我々庶民には・という「怒りの」声を報道していました。
希望の党の結党に当たって数十億円単位の資金が必要なことが合流の資金的背景と書いてきましたが、個々人がレストラン等で消費するのとは違った規模の資金が政治家のボスには必要であり(個人の懐に入れるお金ではありません)、必要なので個人の金銭感覚と比較しても意味のないことです。
同様にメデイアは200兆円という巨大な数字を上げて鬼面人を驚かすような書き方ですが、日本の経済規模を土台にして200兆円が多すぎるかどうかを論じないと合理的でありません。
大機小機欄は、データ根拠まで書けない小欄ですが、誤解を招かないような書き方が必要です。
内部留保の一部とは書いていないのに誤解するとは思わなかったということでしょうが・・ちょっと立ち読み的に読んだ人は「なんだ現預金が200兆円もあるのか?」と驚き誤解しがちです。
内部留保と言ってもそれは「現金ではな工場等の資産になっている」と一般に反論されている時に、関係のない記事でそれとなく「現預金が200兆円以上もある(利用されないで眠っているかのような書き方)のは問題」という書き方をしていると国民を誤解させる効果が大きいでしょう。
日本全体で見れば決済用資金としてみれば200兆円規模が必要か否かは個別企業の決算内容を精査しないと不明なことですが、このチェックがなく一方的に手元流動資金が増え続けている(企業規模拡大すれば比例して増えるのはあたりまえです)という垂れ流しでは、企業が無駄に資金を溜め込んでいるかのようなイメージ刷り込みになります。

※ 11年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」には、「山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いていて、同じ日経新聞が「日本企業の現預金11月21日に200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円という約半分の数字を基礎に議論を進めていることがわかりました。
同一新聞でありながら大幅にに違う数字を上げている点については26日に追記・再論として掲載しましたのでこのコラムの続きとしてお読みください。

ゼロ金利下で企業が資金を有効運用しないで無駄に寝かしていると株主にまともな配当をできないし、多くの企業は銀行からの借り入れや社債発行等で有利子債務負担をしているので、(優良企業のトヨタでもしょっちゅう社債発行しています)使用目的もない資金を社内に寝かしておく余裕がないのが普通です。
企業性悪説のようなムード報道ばかりしないで企業が無駄に資金を持っているというならば、その根拠を企業別に具体的に示すべきでしょう。
ゼロ金利下で利用目的もなく資金が社内に本当に無駄に寝かしているのならば、そもそも株主利益に敏感なアナリストや機関投資家・株主が承知しないでしょう。
内部留保や手元流動性が多すぎるかどうかは、本来は個別帳簿を日々精査チェックしているアナリスト等の評価・・これを反映した市場の評価に委ねるべき分野であって、素人のメデイアがつまみ食い的に世論を煽るべき分野ではありません。
言論の自由・批判が必要とは言えその分野の専門家がいるのですから、専門家の市場意見・彼らの意見総合によって相場が動いている点ををまず尊重すべきでしょう。

内部留保課税論(法人税軽減の逆張り2)

希望の党の公約では内部留保課税だけではなく法人税軽減も主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。
法人税の国際比較です。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm

 法人実効税率の国際比較

国・地方合わせた法人税率の国際比較

(注)
法人所得に対する税率(国税・地方税)。地方税は、日本は標準税率、アメリカはカリフォルニア州、ドイツは全国平均、カナダはオンタリオ州。なお、法人所得に対する税負担の一部が損金算入される場合は、その調整後の税率を表示。
OECD、各国政府資料等

しかも企業蓄積を吐き出させたとしてもその入金は一時的入金でしかないので、恒常的社会保障経費を賄うのは無理があります。
韓国の例を20日に見たように内部留保課税をやって見たものの大した効果がないと見ると、文政権は法人税増税を発表しているのは、内部留保が大きすぎる論の本籍・大企業性悪説の一環である本来的性格を示しています。
希望の党が法人税軽減と内部留保課税という矛盾する税制のセット主張するからには、よほど巧妙なカラクリが必要・例えば内部留保課税を骨抜きにするなど複雑な仕組みが必要、・・骨抜きにすると税収が上がらないので希望の党の消費費税不要の主張根拠と矛盾してしまうので言えなかった?・・これと一体の説明が伝わって来ないところを見るとメデイア受けする口あたりのいいことを主張しているだけだったように見えます。
矛盾することも知らないと思えないのですが国民には分からないから宣伝しまくれば良いと思ったのでしょうか?
内部留保課税をすればその結果日本がどうなるかではなく「テレビが言っているから良いのジャないか」と思ってメデイアの作り上げる風に乗ってくる・誘導通りになっている国民が多いと思った小池氏の選挙戦略だったのでしょう。
私の周りでも(来客等に)それとなく聞いてみるとメデイアによる長期的刷り込みが奏功していて、「内部留保=悪」でこれを庶民に分配すべきだが、(庶民が飢えてるのに悪徳業者・地主が土蔵にコメなどを隠しているという戦後はやった支配者=悪の図式的漫画のイメージ)これが実施されないのは「しがらみ」によるという刷り込みが成功しているらしく「しがらみをリセット」するという「小池さんの発信力はすごい」と陶酔気味の人が結構いました。
メデイアの宣伝にそのまま乗る人はそれが正しいと信じているからではなく、自分が社会での敗者(エリート層でもその中の敗者)意識が強く、成功者・金持ちに対するやっかみがあって心情的に受け容れられている・・偶然ブームになったのでこの機会に鬱憤を晴らしたいと便乗している印象です。
災害等で混乱が起きると日頃不満に思っているグループが、その機会に略奪等に参加する(略奪が「正しい」と思ってやっていることではなく、何かを持って帰ることにそれほどの意味がなく)のと似ています。
人種差別の潜在意識が底辺労働者層に多く何かあるとそれをきっかけに爆発するように見えるのと基礎が同じです。
21日の日経新聞朝刊「大機少機」には「16年度末で現預金等が200兆円」に達しているという意見が出ているなどイメージ連載が続いています。
上記は小欄ですので根拠を書かずに意見を端的に書くだけですが、200兆円もの大金がいかにも退蔵されて眠っているような書き方があちこちでチラチラと出てくると影響力が甚大です。
ところで、内部留保中の現預金の殆どは決済用資金であるとこれまで書いてきましたが、最近ではこの批判に対応するためにか?企業の現預金が膨らみ続けているという上記のような報道がチラチラ(具体的データなく)出てきました。
現預金200兆円の報道を見ると内部留保には現預金が多いのだと思うひとが多いでしょう。
ところで、決済用資金資金というものは企業規模に拡大に合わせて膨らんで行くのは当然です。

ロッキード事件の時に誰かが500万円もらった事件で「庶民には目も眩むような大金」という大げさな報道に驚いたことがあります。
今回の総選挙では希望の党の軍資金・何十億も必要な大金をどうするかが大きなポイントであったことを書いてきましたが、今になると立憲民主党立ち上げに枝野氏が1億円の資金をどこから工面したか騒がれているように、政治には巨額の資金がいるのであって個々人がレストラン等で消費するお金の基準とは意味が違います。
トヨタや日産.セブンイレブン等の売上規模が十年前に比べて企業規模が1、5倍になれば、これに比例して決済用資金の必要性も1、5倍になるし、その他企業も同様です。
日本の産業界総体で日々支払いに必要な資金は巨大ですから、これを庶民感情に誘導し煽ること自体不正報道です。
手元決済資金が概ね月商の最低でも1ヶ月必要、優良企業で2ヶ月分前後と言われている一般会計基準を当てはめると、トヨタの場合ここ数年年間売上高が27〜8兆円ですから、トヨタ1社だけで常時3〜4兆円前後の手元流動資金が必要になっています。
http://www.nippon-num.com/corporation/car/toyota.htmlによると以下の通りの推移です。(18年3月期は予想?)

※2003年まで日本会計基準。※2004年から米国会計基準。※売上の単位は億円
売上の単位は億円。 決算期売上高増減率

決算期 売上高 増減率
2018/03 285,000 +3.3%
2017/03 275,971 -2.8%
2016/03 284,031 +4.3%
2015/03 272,345 +6.0%
2014/03 256,919 +16.4%
2013/03 220,641 +18.7%
2012/03 185,836 -2.2%
2011/03 189,936 +0.2%
2010/03 189,509 -7.7%
2009/03 205,295 -21.9%
2008/03 262,892 +9.8%
2007/03 239,480 +13.8%
2006/03 210,369 +13.4%
2005/03 185,515 +7.3%
2003/03 160,542 +6.3%
2002/03 151,062 +12.5%
2001/03 134,244

※トヨタ自動車の有価証券報告書のデータを基に作成

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

希望の党の公約等4(法人税軽減の逆張り)

民間企業は経済変動や社会変化への対応・・構造転換コストなどに備えるための予備資金を持っているのであって、この決断は配当を受けるべき株主の承諾によるものです。
本来株主は(株主総会・株価変動を通じて)税引後利益全部を配当して貰う権利行使を我慢して一定額企業に保留してこの資金で再投資などするのを許容しているのであって、企業が予備資金を持っているからと政府がとりあげられる・どうせ取られるならばと結果的に利益100%社外に流出させるのでは、経済変動に耐える力が削がれてしまいます。
個々人が数万円前後多く配当してもらうよりは、これを企業が安定資金として持っているか、まとめて将来のための研究資金に使うとか、増産投資立ち上げや企業買収資金等に使うかを個々の株主が決めるのが資本主義経済の醍醐味ですから、その選択(配当を多くもらって友人との食事等に使うか、企業に使い道を委ねて大きく使ってもらうかは市場経済・個々の株主の判断に委ねるべきです。
政府が増税の脅迫で個人還元を強制するべきではありません。
ただし、資本家が大金を溜め込んでいるというやっかみ的批判・・感情論による制裁的内部留保吐き出し要求ではなく、株主の多くが本当に将来のために内部留保する意思があるのか?単なる擬制ではないか?という視点からの再チェックは必要です。
このためには・・投資意識確認と税金納付という意味で、税引き後利益は実際に配当しなくともこの時点で配当を 受けたものとみなして源泉徴収してしまう方法も検討の余地がありますし、株主意思の再確認のためには少なくとも税引き後利益のうち50〜80%(2〜30%は予備費)までを実際の配当を義務付け、企業買収や新規投資金が必要ならばその旨明示して市場から再募集する・増資で対応するのが合理的という政策選択肢は将来あり得るでしょう。
韓国文政権も日本の革新系政権も同じですが、口先では人権重視と言いますが個人の決めるべき領域に国家が踏み込みすぎる傾向があります。
内部留保課税は法人税の2重取りですが、小池氏は一方で法人税減税も求めているのですから(法人を痛めつける気持ちはないという意思表示でしょうが・・)おかしな主張です。
19日引用した続きです。
http://www.iza.ne.jp/kiji/economy/news/171112/ecn17111209150001-n2.html

企業に「ため過ぎ」批判 内部留保課税は有効か 論説委員・井伊重之
2017.11.12 09:15
小池氏は東京をアジアにおける国際金融都市とするため、政府に法人税減税を求めている。法人税を下げる一方で、内部留保に課税するのではアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。

内部留保課税は法人税重課政策ですが、法人税軽減化の流れをどう理解するかの問題でしょう。
以下は法人税率をめぐるアメリカの動きと国際比較です。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN28H04_Y7A920C1000000/
米大統領「歴史的な減税」 法人税下げ20%案を発表 2017/9/28 5:48
【ワシントン=河浪武史】「トランプ米大統領は27日、連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表した。」
これがようやくこの11月に下院通過したという報道です。
https://www.iforex.jpn.com/analysis

税制改革法案が米下院を通過-8537
(2017年1月現在)筆者 鳥羽賢 | 11/17/2017 – 09:40
「アメリカで16日に税制改革法案が下院を通過した。上院は別法案を提出トランプ政権の目玉政策である税制改革法案が、16日に米下院を227対205の賛成多数で可決した。この中には法人税減税の2018年実施が盛り込まれている。しかし上院の方は法人税減税を2019年にする別の法案を提出しており、今後は上院と下院で審議がもめることが予想される。この通過を受け、16日のNY株式市場は大幅高となった。」

アメリカで法人税減税法案が下院を通過しただけで株式相場が大幅アップしたことからみて、・・内部留保課税・実質的法人税アップの脅しがあると、この逆張りの効果・・2回税金を取られるよりは配当を増やそうとするので一時的に配当が増えて株主の懐が潤い、一見消費がふえますが・・企業の景気や社会構造変動に対する耐性が落ちることから株式相場で見れば大幅に下げてしまう方向に働くことが明らかです。
目先消費を増やせそうに見えますが、株式の値上がり益による消費拡大とどちらが健全か明らかでしょう。
小口株式保有の一般市民とって小銭が同じ額入るならば、税に取られる前に急いで分配してくれるよりも大幅減税を市場が好感して株式相場が大幅アップしたことによる方が合理的です。
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/によると11月18日現在の東証時価総額は以下の通りです。

東証1部     東証2部   ジャスダック

時価総額(普通株式ベース)   6,597,983億円   106,804億円   105,901億円

東証だけで約680兆円ですから、もしも1%値上がりで6、8兆円2%で13、6兆円の値上がり益・日銀が13、6兆円を市中に資金供給したのと同じだけのインパクトがあります。
外国人投資家の 保有分もありますので、全部が国内で循環する訳ではないとしても大きな経済効果です。
1日で1%の変動が滅多にないとしても1ヶ月単位だとその何倍もの変化があるとした場合、消費拡大・経済活性化に大きな影響があります。
内部留保課税によって企業を痛めつけるのとどちらの方が税収増加/国民の懐を温める効果プラス株価上昇による心理効果が大きいかが明らかです。
ちなみに我が国の最近株価変動のグラフは以下の通りです。
http://ecodb.net/stock/nikkei.html日経平均株価の推移(月次)

ところで、厳しい国際競争下にある現在、世界の法人税の趨勢を無視できません。
現在世界最高税率のアメリカが法人税大幅減税に成功すると、日本が世界最高税率の国になります。
このまま放置すると軍事力背景にトランプ氏のように吠えて回る方法のない日本から、大手世界企業が徐々に日本から逃げていくのをどうするかの大問題・・・トヨタなどの民族愛だけに頼っていつまで持つのか?の心配があります。
いきなり本社移転しないまでもシンガポールなどにアジア統括本社を設けるなどのかたちで徐々に動き始めている現実を無視できません。
この国際情勢下で日本が内部留保=二重課税・法人税増税にひた走るには、ムードだけではなく、かなりの突っ込んだ根拠が必要です。
希望の党の公約では内部留保課税だけではなく、法人税軽減を主張しているのですが、内部留保課税は結果的に法人に対する重課税路線ですから支離滅裂の印象です。

 

逆グローバル化時代(資本引き揚げに直面する韓国・中国)

通貨下落が一時的なものならナンピンを掛けるつもりでドル下落に乗じて更に追加投資出来ますが、今後も持続的に通貨がドンドン下落するとなれば新規投資を出来ませんし、逆に既存投資を引き上げる動きとなります。
株式相場で言えば下落が一時的か持続的かの見通しによって、投資家が売り急ぐか底値買いを入れるかの態度を決めるのと同じです。
これがアジア危機であり韓国通貨危機でもあって、今回の欧州危機で昨年秋に韓国の通貨危機が再燃しかけた原因です。
早く売り抜けて下がり切ったところで買い戻せば大もうけします。
アジア通貨危機のときに売り浴びせて大暴落した後で欧米金融資本が底値で買いあさって、大部分の韓国資本の買い占めをして主な企業を支配下に置いてしまいました。
その後韓国は欧米の非公式植民地化してしまい、通貨安で国民に犠牲を強いていくら儲けてもその儲けは海外に持って行かれる構図・・国民が悲惨な状態に陥ってしまいました。
韓国がもう一度通貨危機になるとそれこそ根こそぎ欧米資本に収奪されてしまうので、(今は外資占有率が約7割と言われますが、残り3割は財閥系個人が占有しているので一般国民に企業利益の恩恵が及びません)今度危機が来たら99%近くが欧米資本に買収されてしまいかねません。
韓国に泣きつかれて、昨年秋に日本がいつでも巨額融資しますというスワップ協定を締結し、さらに「韓国国債も買いますよ」と約束したことによって、韓国ウオンの底割れ懸念が薄らいで漸く韓国の通貨不安・・売り攻勢が収まったばかりです。
ロシアに併呑されそうになっても宗主国の中国が何も出来ないので、日本が助けてやったのに、今になって文句言われているのと似た構図です。
欧州危機小康化の原因について誰も書きませんが、マスコミは欧州中央銀行の誰それが何を言ったという意味のないニュースばかり流しますが、そんな口先の議論で(長期的には意味があっても)目の前の危機が小康化することはありません。
日本がIMFに巨額増資引き受けを決めたことによって、それ以降ぴたりと収まって小康状態になったものです。
巨額外貨準備を豪語している中国は、自分自身が外資引き上げに直面していて人の面倒を見るどころではないことから、結局IMF増資に1銭も出せませんでした。
ちなみに中国では資金流出が深刻になっていて尖閣諸島問題の大騒動のサナカにも中国への投資促進のミッションが日本国内を回っている状態です。
新規技術導入が停まっているだけはなく、内需拡大策を打ち出しているもののその資金がなくて困っている状態になっているのです。
前向きに応じれば尖閣諸島への圧力を弱めても良いというくらいの脅しと一体化した動きです。
今や世界の富みの何割かが日本に集中し、しかも余剰資金は日本にしかないので資金出し手は日本しかない現実があって、日本の挙動が世界経済を動かす時代です。
通貨安競争の継続は資本引き揚げリスクと裏表ですが、(昨日書いたように物事には副作用・マイナス面があります)韓国はウオン安で日本との貿易競争で有利になっている分のリスク・・資金引き上げリスクげ現実化していたのです。
このリスクを日本がファイナンスしてやっていることによって免れたので、恩を仇で返すために安心して日本を標的にした通貨安競争を仕掛けているのです。
今や韓国は危機を脱したので表向き怖いものなしというところで、「日本の力は落ちた」と宣言し「天皇を後ろ手に縛り上げてに謝りに来い」という非礼発言に繋がっています。
実際にはこれまで書いて来たように資金引き上げに直面して際限ないウオン安に見舞われている韓国経済まだ日本の買い支え協力宣言で小康を保っているに過ぎず、実態は破産の瀬戸際にあって苦しんでいるのですが、こういうときに空威張りしたくなるのが韓国流思考方式です。
空威張りの延長で日本をもっと困らせばもっと協力して貰えるだろう式の発想で最近特に問題もなかった竹島をイキナリ争点にして喧嘩を仕掛けて来たものと思われます。
日本歴代政権はこれまで韓国と中国に対しては理不尽なことを言ってくれば怒るのではなく、その都度何かを渡してうやむやにして来た歴史が彼らを増長させて(品性を卑しくして)しまったのです。
「日本の国力が落ちた」と韓国の李大統領に言わしめたのは、これまで何でも聞いてくれたのにこんなに怒るとは・・「大人の風格がなくなった」という李大統領の嘆きとも受け取れます。
今回は天皇にまで言及してしまったので、如何に大人しい日本でも、ここはケジメを付けさせば一歩も引かないところに来てしまいました。
「通貨安競争をやめる」「竹島は日本領土である」「慰安婦問題はでっち上げで申し訳なかった」とはっきり認めるまでは、すべての援助を打ち切るべきでしょう。
韓国がデフォルトになれば日本も困るから助けるというマスコミが多く、今回の争乱でも中国から観光客が減って困るという変な報道ばかりします。
僅かな痛みを強調することでいつも譲るばかりでは何も解決出来ないし、その是非については明日書きます。

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