輸出→現地進出→現地生産→利益還流2

(誰も支持しないかもしれませんが昨日書いた)私の考える独自の発展ステージ論によれば、貿易収支黒字に頼らなくなりつつある日本経済は発展ステージが上がっているので、めでたい事実ですが、これをいかにもマイナスイメージで報道するのが大手メデイアでした。
従来の報道では、まず貿易赤字になるとこれを大きなテーマで書いていて資金還流によって補填できる構造になっている事実を言い訳程度にちょこっと書いていることが多かったのですが、昨日引用記事ではいつの間にか、(私の20年来の意見同様に)主客逆転した書き方に変わってきました。
現地生産・消費地直近での生産は経済合理性がある上に、フードスタンプ配布のような貧困国援助よりも現地人も職につける・生活力向上メリットが大きいので、国内生産は国内消費に必要な限度に落ち着かせ、国内需要に必要な食料.資源等の輸入代金等は現地生産による収益で賄うのが国際正義上も合理的です。
その先に進むと、収益が外国に収奪される仕組みが不正義だという国際議論が起きてくるリスクを15年ほど前に国際平準化論シリーズで書いたことがありますが、ここでは省きます。
さらに海外生産が進むと日系企業の逆輸入が増えて、国内需要分も輸入に頼る・貿易赤字化進行となるのでしょう。
私の発展ステージ論によれば、輸出製品生産に必要なエルギーや完成品に組み込むための資源輸入が不要となり国内消費に必要な限度になって行きますから輸入額も減っていきます。
内需に必要な限度の国内生産になるので、GDPは輸出用国内生産が減るのでこの分だけGDPが縮小するし、労働力も生産用からサービス産業向けに変わっていきます。
女性の地位向上という理念や政治運動によるのではなく、業態変化が女性の地位向上に大きな影響を及ぼすでしょう。
個々人で見れば、衣食住の最低生活を満たすのに必死の時期には、まず空腹にならずに済む生活費を稼ぐのが最重要でこのお金を稼ぐ人の立場が強いでしょうが、一定水準を超えると室内のしつらえやおしゃれな生活を営む能力の必要性が高まります。
日本の場合、急激な国内生産縮小は国内雇用のミスマッチになるため輸出用生産を段階的に減らしていったので、所得収支と貿易黒字双方の巨額黒字蓄積・・年間約20兆円弱で約20年間推移してきました。
一方で上記の通り生活水準向上に向けて内需拡大にも努めてきた結果、GDPが減少するどころか、じわじわと上昇してきたのが現実です。
メデイアは日本のGDP前年比アップ率が諸外国より低率であることを大変なことのように喧伝し「失われた20年」とイメージ主張し、いかに中韓の成長力が高いか・・中国が日本を追い越したか韓国が追い上げているとかの報道に終始してきました。
私の発展ステージ論によれば、GDP競争の段階を日本は疾うに卒業しているのですから、こんな比較は意味がないことがわかるでしょう。
食事をするにも空腹を満たす目的9割と雰囲気を重視するのが9割では生産高では大きな違いがでてきます。
庭の草花の手入れに費やす時間は至福のときですが、GDP統計では大した貢献度がないのでしょう。
今でもガムシャラに働いて成功した人が成功者としてメデイアで賞賛されますが、国家全体としてはこういう人も必要ですが、その人の人生としての意味ではまた別でしょう。
カリスマ的経営者のいる会社では、創業者に畏敬の念を持ってみんな接するでしょうし、対面する人もすごいですね!と賞賛することはあっても「いい加減に家庭を大事にしたら!」と忠告する人はいなくなるのでしょう。
GE元会長が日経新聞に連載した「私の履歴書」ではGE会長としてカクカクたる成果をあげた彼が、その過程で成功にこだわる彼を見限って別れて行った元妻のことを切々と書いているくだりがあります。
原稿依頼した新聞社の方は、いかにして成功したかの履歴を書いて欲しくて執筆依頼しているのでこれを受けた以上、まさか仕事一筋で人生失敗したと書けないものの、老境に入った彼としては、暖かな家庭を失った悔悟の念・・自分の一生はなんであったのか?の気持ちが滲み出す文章です。
GE会長より小型ですが、家庭より仕事という考えで事業成功をした人が老境に入って孤独をかみしめるようになったのか?30年ほど前に別れた妻子に会いたいという人がいます。
妻子の方はそれぞれ現在落ち着いた生活をしているので、(昔流行した言葉ですが)プチブル的平和を楽しむ娘らにとっては、父親がどういう父親であったかが重要で現在事業で成功しているかどうかは関係ないようです。
父親の方は成功している姿を娘らに自慢したいし、娘らはそんなことに価値を置いていない・・このギャップをどうするかで悩むのが私の仕事です。
私も後期高齢者になったので、80歳前後で人生の整理・終活?をしたい人がこの数年私の周辺で増えてきました。
ある家庭で消費する量や品質がその家庭の豊かさであり、飲食店経営者が、飲食店で消費する食材の量を含めた消費量が近隣の一般家庭より多くとも自慢にならないでしょう。
25日に書いたステージ④ランクになった国は、輸出産業が大量仕入れ(輸入)大量輸出しているので見た目にはGDPが上昇しているのですが、外形的に大きく商品が動くだけで自家消費量は少ない・内実が乏しい状態です。
脱サラ.創業直後は睡眠を削り家庭をそっちのけで頑張る時期があってもいいでしょうが、ある程度成功すれば、家庭や文化面に時間をさくように物事にはライフサイクルがあります。
前年度比売り上げ増での競争・・GDP比でランク付けするのは同じステージ④にある国同士の将来性のランク付けとして機能するでしょうが、この段階を卒業して次のステージに移行している国と比較する指標ではありません。
大規模輸入して大量加工して大規模輸出する国は一見活気がありますが、物流センターのように物流がぐるぐる回っているだけで内実が貧しいステージにある・・中韓等の経済段階というべきでしょうか?
あるいはレストランに顧客用の立派なテーブルがいっぱいあって一般家庭のダイニングルームより立派でも、店主一家が裏手の薄くらい汚い部屋で食事している場合、どちらが豊かか?ということです。
生産業で言えば、工場兼自宅で千〜数千坪の大きな敷地内で生活している場合、一見大きな塀に囲まれた中の主人一家ですが、実際の居住空間が狭い上に工場内なので騒音振動臭気など環境が劣悪です。
工場の国外移転は、工場と自宅分離の国際版です。
ちょっと東京の地名を冠した企業名を思い出すだけでも、石川島播磨、東京電力、東芝、カネボウ(鐘ヶ淵紡績)など企業名でも分かるように東京都内に多くの工場が混在していました。
中央大学や教育大学その他大手大学の多くも学部別に郊外へ移転しましたが、いまでは逆に都心回帰を目指す方向になっています。
これらの工場や大学が各地に出て行くことによって、東京が衰退するどころか逆に発展する一方です。
東京と地方を比べて、東京には生産工場がほとんどない・もう東京はダメだと思う人は滅多にいないでしょう。
1000万の都市人口を養うにしても、国外収益等の送金で生活する先進国都会・特に東京は清潔です。
いわば、室内で石油等を燃やす暖房の代わりに、遠隔地の火力発電で都会はクリーンエネルギーによる冷暖房を満喫する関係です。
企業オーナーも主力工場を地方に移転させても、首脳部の自宅は高級住宅街のある東京や(元は船場・道修町発のオーナーの場合)芦屋等に移転するのが一般的歴史です。
本社の集中する丸の内などは工場騒音等もなく従業員もおしゃれな街で働けるので昔から人気エリアです。
英国は19世紀に世界の工場を引き受けて煙の都ロンドンになり、日本も一時高度成長期世界の工場化して公害に悩まされましたが、この数十年では輸出するよりは需要地・現地生産化して、先進国は内需分中心に国内生産するだけになりつつあります。
・・日本は資源を輸入に頼るしかないので、まだ自国内の必要物資を買うための代金捻出のために輸出していますが、(この数年では貿易収支はまだ原則的に黒字・たまに赤字になる程度)将来的には自国にない資源や食料等の国内消費に必要な資金は海外生産による利益配当や知財・技術料収入等で賄っていく方にシフトして行くのでしょう。
こういう時代に進んでいるのに国内生産量の増加率・GDP増減率で自慢しあっているのは、数十年遅れの価値基準で売り上げ自慢しているようなものです。
成金がいかに儲けたかを自慢し、下品な調度品を自慢し合っているような世界を、メデイアがいつまでも重視するのか不思議です。
企業は自国政府の保護(産業育成)を背景にして大きくなっている内弁慶ではなく、自国政府の後押しのない海外生産で利益を上げられてこそ世界でやっていける企業というべきです。
海外進出してうまくいかない企業しかない・・輸出で黒字を稼ぐしかない国って、実質競争力が弱くないですか?
韓国現代自動車は長年の自動車輸入規制によって、国内独占を利用して法外な?高価格で国民に売りその儲けを原資にして国外で安値販売しているパターンでした。
これは4〜5年前だったか?に米韓FTA協定によって米国製あれば高関税をかけられなくなったので、日系その他が米国生産車の投入が可能になりました。
米韓FTAによって現代自動車の国内利益が減少し、国外ダンピング輸出や現地進出原資がなくなるので、今後輸出や国外展開は苦しくなるだろうと当時言われていました。
ここ数年顕在化してきた現代自動車や韓国企業の苦境は、実はこの時に始まっているかもしれません。

輸出→現地進出→現地生産→利益還流

韓国の貿易依存率が高すぎると一般に言われる問題点は、韓国の産業構造が現地生産化に適していない・自前技術率が低いので海外進出すると国内空洞化が進みすぎる弱点を言うと見るべきかも知れません。
これが韓国や中国の失業率の異常な高さ(あるいは大卒就職率の低さ)になっているのでしょう。
韓国の貿易額の減少が国内生産高の減少を一定程度意味するとしても、上記の通り現地生産化進行による面もあるので、輸出減少の代わりに所得収支黒字等が増えたかどうか・・総合的に見るには貿易量縮小と所得収支等の黒字化=経常収支黒字化の関係を見ないと現地生産化の母国へ影響度を計れません。
現地生産化進めば輸出用国内生産が(輸出企業向け部品等納入する下請工場生産も)減少するのが当たり前ですから、輸出減少以上に知財や所得収支黒字が貿易縮小の穴埋めになっている国は、現地生産化が成功していると見るべきでしょう。
こう言う国は従来の輸出品は原則現地生産になるので内需率が高くなり輸出入の貿易総量が内需に必要な量に近くなるまで縮小します。
日本の例です
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41096450Y9A200C1EA4000/

海外投資、日本の稼ぎ頭に 経常収支の構図変化 2019/2/8 23:19
財務省が8日発表した18年の国際収支統計(速報)では、海外とのモノやサービスの取引を表す経常収支は19兆932億円の黒字だった。
黒字の額は2つの柱でほぼ説明できる。1つは海外子会社のもうけにあたる直投収益の10兆308億円。もう1つは外国債券の利子などにあたる証券投資収益の9兆8529億円だ。貿易黒字は1兆1877億円にすぎない。
企業が海外志向を強めていることが背景にある。かつての日本の製造業は日本で車や家電を作り、海外に輸出するのがモデルだった。だが現地のニーズに合わせ、生産効率を重視するために現地生産を増やした。家電では韓国や中国の台頭で、日本製品の競争力が弱まった面もある。
海外への直接投資の残高は9月末時点で185兆円。北米やアジアを中心にこの10年間で3倍近くに増えた。工場建設やM&A(合併・買収)に加え、小売りなど非製造業の拠点も増えている。ここ数年は海外景気も好調で、稼ぎも右肩上がりで上がってきた。
海外証券投資の残高も9月末時点で473兆円と増加が続く。

韓国の場合どうでしょうか?
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44509730Y9A500C1EAF000/

韓国の1~3月の経常収支、7年ぶり低水準 2019/5/8 10:15
ソウル=鈴木壮太郎】韓国銀行(中央銀行)が8日発表した1~3月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引を表す経常収支は112億5000万ドル(1兆2400億円)の黒字だった。黒字は前年同期より3%減った。半導体の不振や中国景気の減速で輸出が振るわず、2012年4~6月期(109億4000万ドル)以来、ほぼ7年ぶりの低水準となった。
貿易収支は196億1000万ドルの黒字。黒字は同13%減った。輸出は1375億ドルで同8%の減少。半導体や石油化学など、主力製品の輸出が振るわなかった。輸入は同8%減の1178億9000万ドルだった。
3月の経常収支は48億2000万ドルの黒字だった。83カ月連続の黒字だが、前年同月比では6%減った。貿易収支は84億7000万ドルの黒字で、前年同月比10%減った。

上記によると韓国の1〜3月の貿易収支黒字が13%減り、経常収支黒字も3%減りました。
3月だけで見ると貿易収支黒字が10%減っているが、経常収支黒字も6%減っている
・・貿易黒字が減った分の穴埋めに国外収益が増えていないこと・現地生産増による貿易収支黒字減少でないことが分かります。
日本のように生産工場の海外展開による健全な!貿易収支黒字減ではないのかな?
産業構造の発展形態を見ると、①国産技術+海外技術導入→②国産化成功→③輸入減→④輸出産業化→⑤国外現地生産→⑥本国への技術指導料や知財や所得、利益(配当収入)等の形式での資金還流となるパターンが考えられます。
韓国中国は、民族資本育成のために生産品の100%あるいは何割以上を輸出する条件付きで外国企業の工場を丸ごと導入して現地進出を認めるなどして上記②を飛ばし一足飛びに輸出産業として貿易黒字化を進めました。
中韓にとっては外資系工場が黒字で外貨を稼いでくれるし国内インフラ資金に使える他、外資が工場用地等の取得資金等の資本が大量に入るメリットがあり、他方で外資企業で働く国民が身につけた技術等が国内民族企業レベルアップに良い影響を与えるだろうという目論見です。
日本企業が中国進出したサービス業等で現地人に店舗マナー等を教え込むとマナーを身につけたが中国人がすぐに中国系企業に引き抜かれる現象が常識化していました。
工場の生産技術も同じです。
これをメデイアは日本企業は現地人に権限を与えないからだという批判していましたが、相手は技術を盗む目的ですから問題のすり替えでした。
上記⑤の現地生産が軌道にのるまでは、内需を賄う資源等の輸入代金を賄うための輸出用国内生産が残りますが、⑤段階で成功してその成功益の還流で賄えるようになれば、輸出目的の国内生産をする必要がなくなる論理です。
いわば内需率100%内外が、原理的理想形です。
先進国で内需率が重視される所以です。
もちろん海外現地生産の場合、国内にないカントリーリスクがあるので、(11年に中国でいきなり反日暴動〜工場店舗等の焼き討ち〜不買運動が燃え熾りました)収支トントンではいざという時のリスクが大きいので、国内工場の国際競争力維持のために一定率輸出できる程度の実力維持・・貿易黒字が必要でしょう。
日本は2000年に入った頃からリーマンショック頃まで海外収益等の資金還流が年間約10兆円弱で推移して、貿易黒字も約10兆円内外合計約20兆円弱)で推移して来ました。
(この辺は、失われた20年論に対する批判として何回も書きその都度?データを紹介してきました・・ここで20年分以上のデータを引用すると大きくなりすぎるので気になる方は財務省統計に入ってみて下さい)
リーマンショック後貿易黒字が減少してきて最近では貿易収支トントンまたは赤字の年度も出てきていますが、これを輸出力低下=国力衰退と考えるレベルに対しては、いかにも日本の国力衰退イメージ拡散に役立つので単月でも赤字になる都度マスメデイアは大々的報道してきました。
今回のシリーズで引用してきた小塩氏の論説は従来型の貿易収支だけを見て韓国の対日依存度低下論もその軌道上にあるようです。

政争と粛清5(飢餓輸出・平均寿命低下)

政争と粛清5(飢餓輸出・平均寿命低下)

国民を飢え死にさせてまで穀物を輸出するようなことが、何故起きるのでしょうか?
飢餓輸出に関する本日現在のウィキペデアの記事からです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/

発生原因
国家財政が破綻するなど経済情勢が極端に追いつめられた局面で発生する。
宗主国が植民地(国)に対して行う強要。
外貨獲得のための単一作物の一辺倒な作付けによる、主食となる食糧生産量の減少。
20世紀、一部の計画経済の国では、国力の限界を超過した重工業化が行われ、その為の手段として、外貨獲得の為にその国の食料需要を無視した食料輸出が頻繁に行われ、発生した。
実例など
ロシアでは、ロマノフ朝末期から西欧諸国(特にフランス)への債務返済の目的で、小麦の飢餓輸出をおこなっていた。飢餓輸出はソ連時代になっても、外貨獲得の手段として続行された。ウラジーミル・レーニンは市場経済廃絶も兼ね、根こそぎ強制搾取で500万以上の死者を出し、ヨシフ・スターリンによる強引な農業集団化政策の影響で、1932年‐33年にウクライナで大飢饉が発生した際も、スターリンの命令により、引き続きウクライナから大量の小麦が輸出目的で搬出されたことで、飢饉の影響はより深刻かつ凄惨なものとなった。
近年で有名なところではルーマニア社会主義共和国の元首、ニコラエ・チャウシェスクの行ったものである。西側諸国からの累積債務返済のため、飢餓的な輸出を強行し、生活用品や食料品も不足したとされ、ルーマニア革命の遠因ともなった。
日本の1993年米騒動では、日本国内で米が不足したため海外から米を輸入することとなった。そのため米を輸出したタイ国内では逆に米が不足、高騰を招く事態となった。海外では、当時の日本国内には米以外の十分な食料があったことを皮肉って、ある種の飢餓輸出と呼ぶこともあった。
北朝鮮では国内各地で食糧不足が深刻化しているにもかかわらず、外貨を獲得するために飢餓輸出を続けているとされる。主な輸出品目はマツタケや魚介類である(ただし、正確な情報の不足から完全な把握は困難)。
中国の大躍進政策で多数の餓死者を出す原因となったのは、ソ連からの借款の返済に農作物を充てていたことが一因となったという指摘もある。

上記を見ると表向きは出てきませんが、中国大躍進政策による餓死者について18日に見たようにチベットなど少数民族の餓死率が極めて高いなど国内に抱える被支配民族に対するジェノサイド目的が背後にあったと見ればソ連との共通項が見えてきます。
大躍進政策失敗責任で一旦公職を退いた毛沢東が失地回復のために打ったのが文化大革命という名の大規模粛清でしたが、この気狂いじみた大粛清の大嵐がスターリンに比べて短期間で終わったのは、毛沢東が死去したことにより側近として猛威を振るった4人組が失脚したことによります。
粛清政治が一旦始まるとガン細胞のように巨大化する一方でスターリンやクロムウエル同様に権力者の病死、あるいはナポレンやヒットラーのように外征の失敗以外に終わらないのが特徴です。
粛清政治の連鎖による民生圧迫・疲弊の螺旋状強化に歯止めをかけるべくスターリン死亡後登場したフルシチョフのスターリン批判〜ゴルバチョフのペレストロイカ→ソ連崩壊後のエリツイン政治へと粛清政治をリセットしてみると社会が大混乱に陥りました。
これを収拾するにはプーチンの強権的政治にもどるしかなかったようです。
民主化に端を発した大混乱の総合結果であるロシアの平均寿命の急落を見れば、いかに民主化による混乱がひどかったかがわかります。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/8985.htmlからの引用です。
これによると単に生産が減って食料等不足になっただけではなく、恐怖時代に社会のあらゆる場面に病根が広がっていた結果によることを具体的に見ることができます。

年齢別の死亡率から計算される平均寿命はその国の健康状態、経済発展、社会病理の状況を集約して示す指標である。
2015年の平均寿命は、男は66歳、女は77歳である。男の平均寿命が60歳代半ば、すなわち定年年齢程度である点はやはり目を引く。ロシアでは年金問題は生じないとも言われる位である。男性の平均寿命が短い点とともに男女差が世界一大きい点がロシアの特徴であるとされる(図録1670参照)。
ゴルバチョフが企業の独立採算制と自主管理制を導入する経済改革などペレストロイカ政策を本格実施しはじめた87年から、いったん低下したアルコール消費量の再拡大と平行して、平均寿命は再度低下しはじめた。1991年のソ連邦崩壊後、1994年にかけては、一層急激な平均寿命の低下をみており、この時期の社会混乱の大きさをうかがわせている。
労働市場の改革、1990年代の深刻かつ長期にわたった景気後退、そして社会保障の崩壊が人々の心理的ストレスを増やす結果となったと考えられる。これは、アルコール消費量とアルコールが原因の病気に表れている。同時に、法、秩序および治安を扱う国の制度が崩壊したことに伴い、暴力的な犯罪が増加している。インフォーマルな経済活動や、暴力にものを言わせた取り立ても、平均寿命低下の原因となっている。1990年代前半だけで男性の殺人被害者は2倍に増えた。
裕福な世帯の多くは新たな民間の医療サービスに頼るようになっており、多くの貧困世帯にとっては、あらゆるところで賄賂その他の正規外の支払いを求められるために、「無料」の公的医療サービスは手の届かないものになってしまった。」

独の国家補助金による電力輸出と独禁法の不公正競争政策1

ドイツの高額買取で生産された製品が合理的生産コスト以下で国際市場に出回り、いくら下がっても怖くない・成り行きで売れる値段までコスト無視で何年でも価格を下げ続けられる仕組み(高額買取制度というのはもともとコスト無視・市場価格との差額補填制度です)・・政府補助している点では中国の出血輸出とどこが違うのか?という疑問です。
国際相場よりドイツの電力料金が高いと言う意見を1昨日紹介しましたが、それなのにドイツが電力の輸出大国に何故なっているかと言えば、高額買取した再生エネルギーを国内電力会社に引き取らせずに国際送電網にそのまま放出させて成り行き相場でタレ流しているからです。
簡単に言えば、国内価格ではなく国際価格以下(「成り行きで売る」と言うことは、価格がいくら下がっても売り注文を下げない売り方ですから、国際市場では相場下落圧力になります・・)で売っていることになります。
日本や韓国のように一国閉鎖送電システムの中でいくらで高額買取しても概ね国内問題ですからいわば勝手です。
・・韓国も国際競争力維持のために国内電気料金を政策的に低く抑えていますが、その分どこかで歪みが出てトータル競争力では結果的に大差ないかも知れませんので、国際的には直接的問題が少なかったのです。
水道料金、道路港湾鉄道その他何でも、国民生活の基礎的コストを市場相場に委ねるかどうかは国内政治の問題で直接国際貿易に関係しません。
しかし鉄鋼製品その他国際取引商品まで国費投入で補助するとなると不公正貿易のパターンになってきます。
欧州のように送電網が共同化していて国際市況に連動している場合に、一国が桁違いの高額買取制度を実施して国際市場に市場価格で放出するようになると補助金の多い国がいくらでも値下げしていけますので結果的に市場独占してしまえます。
昨日見た論文では。おかげで周辺国が安い電力を享受できていると喜ばしいことのように書いていますが、ノーテンキで無責任な意見です。
アフリカが見るも無残な貧困状態に陥ったのは、欧米の偽善的無償食料援助が原因で地元の第一次産業が業が壊滅させられたことが原因です。
安ければ安いほどいい・無償ならばなお良いというものではありません。
生活保護に一度ハマると抜けられなくなるというのも同じです。
国家規模で大規模な無償食料援助されると無償に勝てる産業はないので、たちまち前近代的な焼畑的農業や狩猟その他の伝統的・古代型現地産業が壊滅してしまいます。
日本の敗戦時にどんなに食料に困っていても、アメリカの過剰農産物の捨て場にされ農業が壊滅しなかったのは美味しい産物に恵まれ国民の舌が肥えていたからです。
戦後直後に育った我々世代でさえも輸入米は「外米」とか「黄変米」とか言われて危険・不味いものの代名詞のイメージし残っていません・・。
豊葦原瑞穂の国に生れたありがたさで、アメリカが余剰農産物の捨て場に日本を利用し、日本の非効率な農業を壊滅させようとしてもうまくいきませんでした。
今や、日本のお米や果物に限らず牛肉さえもうまいので高級品として輸出されてますが、狭い国土で非効率だ(農業保護批判がメデイアの基本姿勢でした)関税撤廃解放して早く農業をやめた方がいいと言う宣伝・アメリカ式農業がいかに素晴らしいかばかり聞かされて育ちました。
現在のTPP交渉でも敗戦直後と変わらず、「農業保護のために近代産業が被害を受けている」という大合唱です。
洋画がいかに素晴らしいかを学校で教えても、自分のお金を出して買うのは日本画ばかり・公的美術館しか洋画をめったに買わないのに似ています。
話題が飛びましたが、ドイツ周辺国がドイツの財政負担によって安い電力を利用できるのは良いこと・メリットだというイメージの24日紹介の論文「オランダなど価格水準が高い国や供給力が弱い国は有利な価格で調達することができる。」という一見有り難そうな表現はまちがっています。
安い電力流入のためにフランスでは原発の出力を落とさねばらなくなっているというのですから、すでに弊害が出ているのです。
国家が資金補填した製品を国際市場に出すこと自体が民間の競争で言えば、自由市場制度破り政策・独禁法で言う公正競争違反政策です。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
(定義)第二条
(1)〜(8)省略
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一〜二省略
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」
昨日紹介した通りドイツが高額買取=市場価格以上で買取した再生エネルギーが市場にコスト無視で安く入ってくるフランスなどでは、既存原子力発電所などが出力を落として操業するしかないというのですから大変です。
特定エネルギーだけ補助金漬けになると正常なコスト負担するその他電力業界は価格競争でやっていけません。
ドイツは国内市場で再生エネルギーを市場相場で大量に放出すれば、国内電力料金が下落して褐炭等によるに電力生産が成り立たなくなるのでこれをしないで、国内相場は高いままで国際送電網の市場にだけに「なり行きで」放出しているとすれば・・外国だけが超安値電力が入ってきて参ってしまう・・ずるいやり方です。
フランスも負けずに原発電力を高額買取して国外には安く売ればいいのですが、この競争が始まると体力勝負になります。
こういう不公正な競争を野放しにすると、技術力がなくとも強いものが市場を席巻してしまう・技術革新で安く売って競争に勝つなら社会の進歩を期待できますが、体力に任せてコスト以下で販売を仕掛けるのではより多く国の援助を受けた企業が勝ち残る結果、効率の良い企業が負けてしまいます。
ですからこれを「不公正取り引き」として日本だけはなく国際的に同様の国内法が世界中で制定されてきたのです。
国内での不公正競争ならば、独禁法の取り締まり対象ですし、一旦この処罰を受けると諸々の社会的不利益を受けますが、国家間になるとWTOでも、これのルールを定めていますがこれがうまくいきません。
フランスは悔しくとも補助金競争を仕掛けるには国力差がありすぎるのと「原発は危ない」というメデイアのイメージ操作で負けているので、WTO違反でも全く反撃できていないというところでしょう。
ドイツは国内電力会社に再生エネルギーを高く買わせるのではなく、国際送電線網を通じてリアルタイムの市場相場で売却してしまう・・高額買取組織は差額を負担するのではやっていけないはずですから、その差額を国家負担にしているのでしょう。
このやり方は、中国国有企業の鉄鋼ダンピング輸出とどういう違いがあるか?ということですが、周辺国はドイツのご威光に逆らえず黙ったままのようです。
ドイツの再生エネルギー買取制度は、風力・太陽光発電等需要無視で生産させてこれを周辺国の犠牲にして自国でまず発展させようとする事実上の国策ダンピングです。
こんな身勝手な行動に周辺国がいつまでも我慢出るのでしょうか?
自分だけ良ければ・・という政策はいつかは反動がおきます。
蓮舫氏が国会で質問に使ったデータが実質フェイク的なものだったのと同様に、メデイアがドイツを賞賛するについては、欧州の電力市場制度の存在や隣国フランスがどうなっているかや各国の置かれた資源や電力供給構成などの背景事情を同時に報道しないと片手落ちです。
メルケル氏が日本訪問時に(ドイツは隣国とうまく修復できているのに)「日本が隣国ととうまく行かないのは、日本の真摯な謝罪が足りないからだ」と言わんばかりの韓国よりメデイアの質問に対して「良き隣人に恵まれたので・・・」と答えたことが知られていますが、何事も周辺状況・環境条件を総合してから意見を言うべきです。

資金枯渇8(出血輸出とその原資2)

出血輸出・原価割れ販売は、倒産・廃業直前に「店じまいセール」として手元資金獲得に利用するのが原則であって、これを国家が利用する場合は、短期間の過剰産業の整理集約するまで臨時対策に過ぎず、その産業をその間に適正規模に縮小しない限り終わりがありません。
中国の場合、国威発揚企業の過剰生産ですから、生産規模の縮小が容易ではない・・期間限定ではなく無限に輸血を続けるしかない貧困の輸出で、ボートピープルが押し寄せて周辺国が迷惑を受けているような状況になっています。
中国は、出血輸出の資金として国内的にはリスクを対外借入増と国民負担に分散した分、国民不満と借入金の蓄積・・限界期間到来が2倍に延び(先送りでき)ましたが、その代わり不満等の限界が来たときには、苦しみがダブルで襲いかかってきます。
このリスクの内、国民負担を財政支出から庶民に対する株式投機参加推奨策など3〜4分散すればさらに先送り出来ますが、その代わり直接国民の懐を直撃するので、限界が来ると3〜4倍の不満暴発となります。
現在では借入金の重圧と経済不振による国民不満双方で限界近くなっているのではないでしょうか?
上記のとおり基本的解決には、過大な製鉄業(あるいは各種産業構造)を適正規模に縮小するしかないのですが、軍事費同様に国家のメンツでやっているので、思うように縮小も出来ずにあり地獄にはまったような状況です。
中国の軍事費の増額ばかり注意が払われていますが、実は軍事費とほぼ同額以上の公安予算が組まれていることも大分前から指摘されています。
不満抑圧のために公安予算を更に増やす・・言わば権力に対峙する国民敵視政策ですから、不満が飽和点に達したときには、国民が一丸となって国難に対処しようとする意欲もわかず、納得出来ないでしょう。
借入金の重圧に付いては、5月31日からドイツ財務相の発言を書いてきましたが、勝又氏による引用数字(単位の取り方)が仮に誤りであるとしても、財務相が公式の場でよその国のことをこのように発言する以上は、中国の債務返済リスクは国際的関心の的になっていることは間違いないでしょう。
他方国民不満の充満については、この後で韓国や中国の労働分配率の低下・・国民の両極化の進展・庶民へのしわ寄せの弊害を紹介して行きますが、両国民(の負け組?)は悲惨な状況に追いやられています。
無理な黒字稼ぎのために共産圏で行なわれて来た出血輸出とは、形を変えた政府援助によるダンピング・・国際ルール破りであると2015-5-28「中国のバブル処理5(過大投資の調整4)」で書いて来ましたが、タマタマ日経新聞5月31日朝刊には、「社説」(公式意見)として中国の(政府補助による)鉄鋼製品ダンピング輸出の弊害について大きく出ました。(この原稿はこの頃に書いてあったものです)
中国の国際ルール破りは、サイバーテロ・知財剽窃、統計の改ざん、環境・領土問題・・金利規制・・レアアースの禁輸措置もその一種です・・その他多方面で噴出中です。
民主国家か否かとは関係なく、国家に限らず(ヤクザでも)組織はルールがないと維持出来ません。(法家の思想として紹介してきました)
中国の国際ルール違反・・国内的にはルールより派閥・・コネ次第でいくらでも歪められる違反行為が政府自身によって日常的に率先しているのですから、国民の道徳意識は推して知るべきです。
政府がルール違反を推奨していて国民にルールを守れと言うのは背理ですから無理があり・・法理を抜きにして(コネによって?)上が決めたから四の五の言わずに結果を認めろと言う・・強権的支配しか出来ません。
法理よりは実力次第・・国内的には公安警察・武装警察が睨みを利かし、国際的にも武力・漁船などの実力行使を前面に押し出して来る基礎でしょう。
一言で言えば、自由主義経済に参入してその恩恵を受けながら、自分の義務に関しては弱い国には武力を正面に出して抑圧し、強い国にはサイバーテロや、漁船を装って領海侵犯を繰り返す・・国内的には国家が背後で組織して反日暴動を展開する・・すべて国家組織として行ない、最先端技術・データの不正取得をしたり、自国データ改ざんや世界標準に反した規制をしてあらゆる分野でルール破りをしている状態です。
スポーツで言えば自分だけルール違反していても審判にコネがあるので、退場を命じられない前提で違反ばかりしているようなものです。

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