内務留保の重要性と流動資金の関係2

内務留保の重要性と流動資金の関係2

11月22日に日経新聞21日大機小機掲載の「現預金200兆円あまり」の記事についてその数字が正しい前提で「200兆円もあるからいかにも無駄に保有しているかのように・・ひいては内部留保課税が正しいかのようなイメージを振りまくのは不合理な意見であるという意見を22〜23日に連載して一旦終わりにしていました。
ところが驚いたことに、17年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」欄には、「投資抑制で山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いています。
24日から日本の雇用形態がどうなっていくべきかのテーマで連載中ですが、ここで大きな数字の違いが昨日の新聞で出てきたので内部留保→流動性資金について改めて見直す必要を感じたので本日は流動性資金等について急遽再論・追記の割り込みをすることにしました。
25日の記事も21日の記事同様で、企業がせっかくの好業績によって得た資金を再投資しないで死蔵しているのでもっと投資させるべき・・そのためには内部留保課税で事実上投資を誘導する方向性を議論すべきだというイメージ植え付け方向では同じですが、日経新聞が11月21日に「日本企業の現預金200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円と、約半分あまりの数字に引き下げて議論を進めていることの違和感です。
大きな数字変化の意味はなんでしょうか?
手元資金と現預金の表現差にどのような違いがあるのでしょうか?
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc210.htmlによると以下の通りです。

金融経済用語
手元資金は、貸借対照表の現預金(現金、預金)と短期保有の有価証券を合わせたものをいいます。これは、企業が比較的自由に使える資産と位置づけられ、その額が有利子負債を上回っている場合を「実質無借金」と言い、そのような状況の企業を「実質無借金企業」と言います。
・・・・・・
※2008年-2009年の金融危機では、日本の企業は資金調達が難しくなった経験から、手元資金の重要性を認識させられ、その後、自己防衛として手元資金を積み上げるようになった。

上記によると11月21日の大機小機記載の「現預金」の単語と25日記載の「手元資金」との違いは企業保有の短期有価証券等を含めるかどうかの違いらしいです。
そうとすると、もしもこの間の基礎数字の激変がない限り・・あるいは同時期であれば手元資金の方が、現預金合計よりも大きいはずです。
16年度末(3月末?)からわずか(直近とは10月末?)6〜7ヶ月経過で現預金だけではなく、好業績発表の続いている経済状況下で有価証券保有を含めても4割も減ったとは想定できません。
しかも同記事には「過去最高」とも書いていますので、その間に減ったとは考えられないのでどちらかが間違っていることになりそうです。
21〜23日に書いていた時には新聞記事の事実記載についてはこれを信用して200兆円が正しい前提で「意見」相違を書いていたのですが、同一新聞社の記事にこれほど矛盾がある?大幅に違っていると議論の前提である200兆円の数字が誤りなのか、それとも「現預金」の熟語表記があやまりなのかを明らかにする必要があります。
そこで前提数字自体を見てみる必要を感じて検索してみると以下の資料が出てきました。http://www.murc.jp/thinktank/economy/overall/japan_reg/watch_1703.pdfによると以下の通りです。
三菱UFJリサーチ&コンサルテイング2017年3月17日

上記は出所も計算方法も明記していて信用性の高そうなものですが、これによると16年度末200兆円という数字自体は大方あっていてこれを現預金ではなく手元流動資金と分類していますが、21日新聞記事では、この数字を「現預金」と表記したことが間違っていた可能性があります。
不思議なことに25日記事では手元資金が117兆円という表示ですが、これは逆に現預金のこととすれば上記グラフと辻褄が合いますが、25日の記事で用語訂正のつもりであれば、25日記事で「現預金117兆円」とすべきだったように思えます。
そうすれば「あゝ21日の現預金の表示が間違っていたと気づいたのかな?」と素直に理解可能ですが、25日表記が逆に「手元資金117兆円」(双方の用語利用が正しいものとして理解するには、「手元資金の方が現預金より少ない」と読まないと混乱します)と書いているのが不思議です。
上記金融経済用語の解説が間違っているのでしょうか?
念のために別の用語解説ものぞいて見ました。
https://kotobank.jp/word/%E6%89%8B%E5%85%83%E8%B3%87%E9%87%91-668563

デジタル大辞泉の解説
てもと‐しきん【手元資金】
代金の支払いなどにいつでも使用できる、流動性の高い資金の総称。現金や普通預金が代表的だが、満期が3か月以内の有価証券・定期預金等を加える場合もある。手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かないため、必要以上の確保は資金効率の面で望ましくないとされる。

上記によっても手元資金の方が現預金よりよりも大きいことが明らかで、日経新聞が独自の用語利用していることがわかります。

内務留保の重要性と流動資金の関係1

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。
その他発行済社債の満期決済用準備金や新規投資案件用の準備資金・・トヨタがEV化に乗り遅れないように数日前にもどこかの企業に何百億円出資したと最近報道されているように、近年では機動的出資資金の用意も必要ですし、急激な環境変化に対する予備資金も必須です。
任天堂やソニーが長期の赤字に耐えて見事に復活できたのは、豊富な蓄積があったからです。
利益を毎年残さず全部吐き出して蓄積ゼロでは、リーマンショックのようなことがあると国中の企業がほとんど全部倒産する事態になります。
トヨタでさえもショック前に比べて約3割売り上げ減のまま低迷していたことが分かりますが、一般に売り上げの5%前後しか純利益がないとすれば、3年以上も3割減のままであれば、巨大な赤字決算が続いてた可能性があります。
少し前年比プラスに回復を始めたところで、トドメを刺すように米国ではトヨタパッシングが起きてこれが12年のマイナスになったのでしょうか?
時期的にいつだったかを見ると以下の通りです。
http://uskeizai.com/article/156383418.html

2010年07月15日
2009年から今年のはじめまで、世間を騒がしたトヨタのリコール問題。覚えていますか?
2010年2月28日 トヨタリコール問題 アメリカの国策的日本いじめ
あれの騒ぎから半年が経とうとしていますが、自動車道路交通安全局(NHTSA)は、第三者機関によるトヨタ不具合の調査結果が報道されていました。ウォールストリートジャーナルによると、NHTSAがうけたトヨタ車の不具合報告は、3000件以上。このうち、93人が亡くなった死亡事故が75件ありました。
ここでクイズです。
このトヨタ車の不具合報告を受けた死亡事故のうち、トヨタ側の欠陥によって起きた死亡事故は、75件中何件だったのでしょうか?
答え 1件
2009年8月28日、サンディエゴのフリーウェイで3人を乗せたレクサス車は、アクセルがブレーキマットにはさまり車が加速して事故となりました。この1件です。
あとの74件は「運転ミス」だったとか。
トヨタ問題で火がついているときは、「ブレーキだけの問題なのか」「電気系統に不具合があったのではないか」などいろいろなことが政治家、メディアで騒がれました。
■ ラフォード運輸長官は、「トヨタ車を運転しないほうがいい」と発言。
メディアで騒がれていた後に、ブレーキが踏まれた形跡も電気系統が誤作動した痕跡もなく、結局ウソだということは分かった。この運転手は自己破産寸前で、訴訟を目的に騒ぎをおこしたのではないかともいわれています。
さんざん政治家から、メディア、そしてアメリカ人が騒ぎ立てた挙句、問題のほとんどが「運転ミス」だったとは。
トヨタは世界中の車で800万台のアクセルペダルとブレーキマットをリコールしました。
いったい、このトヨタリコール問題は、なんだったのでしょうか?」

やり方は違っても結果から見ると中国の反日暴動〜焼き討ちと同じです。
個別企業で見ると松下電器に対する中国での暴動などが起きると一定期間の損金計上に耐えられる予備資金がないとすぐに倒産危機で(株暴落)海外企業に安く買収されてしまいます。
あるいは地震による操業停止など大規模損害はいつ起きるかしれません。
個人の場合で言えば、物損被害背保険あG出ればなんとかなりますが、(勤務先が潰れない限り収入は以前同様ですから)企業の場合、工場が破壊される物損の保険では補填できない・・半年から1年以上操業できない(人件費等の固定経費はかかります)損失・・この間顧客が競合他社に逃げて顧客を失うなど)損害が巨大です。
今回の神戸製鋼に始まる日産等の検査不祥事でもすぐに経営危機にならないのは手厚い予備資金・・長年の利益蓄積があるからです。
危機対応能力を磨いておくべきだとか、不祥事を起こさない体質にすることこそが優先課題という反論があるでしょうが、それは次元の違ったすり替え議論です。
世界展開に合わせてあちこち網ののように広がったあちこちの出先で日々の支払いが必要ですので手元流動資金が増えて行くのは当然です。
個人でも同じで一定の年齢になれば、収入全部を毎年使いきっている人・病気したらすぐに生活保護申請という人は滅多にいないし賞賛される生き方ではありませんし、中小企業でも同じです。
メデイアが内部留保拡大を問題視して繰り替えし報道するならば、ここ約10年の企業規模の変化率及び、個々の企業にとっては近々満期のくる社債決済資金の積立や企業買収資金を準備するなどのいろんな事情を総合してもおおすぎるかどうかの個別判断を示すべきでしょう。
産業界全体で見れば一定額が溜まっていても、個々の企業別に見れば配当や納税予定資金や大型社債等決済時期の違いに合わせてそれぞれの企業が準備金を保有している違いがあります。
大口決済期が過ぎたり買収案件が一段落すれば、その企業では保有現預金が激減していても、産業界全体ではいつも大きな資金が滞留しているのは当然です。
結局産業界の規模拡大に合わせて資金が動くようになれば、1国の産業界全体の滞留(準備)資金が大きくなるのは当然です。
この種のデータの推移を見ながら、議論をしないと意味がありません。
日経新聞の大機少機に書いている200兆円という現預金の計算方法が書いていませんが、「16年度末」とだけあるので、仮に上場企業の決算期末残高を単純合計したとすれば、3月末決算企業だけの合計でしょうか?
全上場企業合計とすれば、それぞれ決算期が違うので3月末の基準日で(決算書もなしに)どうやって集計したのか不明です。
しかも、企業は決算確定後に納税や配当等を実施するのですから、決算直後の資金準備が必要でこの段階の数字の場合もあります。
企業によっては4半期ごとの速報をしていますが、4半期の開始時期が企業によって違うと時期的な食い違いがおきます。
参考までにトヨタの第2四半期の(売り上げとキャッシュフロー関係の)データを見ると以下の通りです。http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/library/negotiable/2017_9/business.pdf

当第2四半期連結累計期間の業績については、次のとおりです。
・・・・売上高は7,688億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて2,360億円 (44.3%)
の増収となり、営業利益は364億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて92億円 (34.0%) の増益となりました。
2017年8月 マツダ(株)と業務資本提携
売上高 14兆1,912億円 ( 前年同期比増減 1兆1,206億円 ( 8.6%) )
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は2兆8,143億円と、前連結会計年度末に比べて1,807億円 (6.0%) の減少となりました。・・・・

トヨタの第二4半期速報によると同社のキャッシュフローはこれまで書いてきた通り、概ね月商の1〜2ヶ月以内でむしろ少なめで売り上げ相応の必要資金・2〜3兆円前後で推移していることがわかります。
特に過剰な(無駄な)キャッシュフローを有しているわけではなさそうです。
内部留保とは、納税後かつ配当後の残高の過去数十年以上の積算合計ですから、即応決済用(納税・配当時期直前には納税・配当資金を準備し大型工事竣工予定で支払いの直前など)のキャッシュフローとは基礎数字が違います。
内部留保とは言っても「工場などの資産になっているのが普通」という反論がある時に、内部留保中に現預金が200兆円もあるとは書いていないものの、なんら限定なしに企業に現預金が200兆円もあるから、「これを投資に回すべき」という意見を書くと、内部留保の一部か?と誤解する人が出るでしょう。
ロッキード事件で500万円もらった人について当時メデイアでは「庶民感覚では途方もない巨額」と報道し、街の声として「我々庶民には・という「怒りの」声を報道していました。
希望の党の結党に当たって数十億円単位の資金が必要なことが合流の資金的背景と書いてきましたが、個々人がレストラン等で消費するのとは違った規模の資金が政治家のボスには必要であり(個人の懐に入れるお金ではありません)、必要なので個人の金銭感覚と比較しても意味のないことです。
同様にメデイアは200兆円という巨大な数字を上げて鬼面人を驚かすような書き方ですが、日本の経済規模を土台にして200兆円が多すぎるかどうかを論じないと合理的でありません。
大機小機欄は、データ根拠まで書けない小欄ですが、誤解を招かないような書き方が必要です。
内部留保の一部とは書いていないのに誤解するとは思わなかったということでしょうが・・ちょっと立ち読み的に読んだ人は「なんだ現預金が200兆円もあるのか?」と驚き誤解しがちです。
内部留保と言ってもそれは「現金ではな工場等の資産になっている」と一般に反論されている時に、関係のない記事でそれとなく「現預金が200兆円以上もある(利用されないで眠っているかのような書き方)のは問題」という書き方をしていると国民を誤解させる効果が大きいでしょう。
日本全体で見れば決済用資金としてみれば200兆円規模が必要か否かは個別企業の決算内容を精査しないと不明なことですが、このチェックがなく一方的に手元流動資金が増え続けている(企業規模拡大すれば比例して増えるのはあたりまえです)という垂れ流しでは、企業が無駄に資金を溜め込んでいるかのようなイメージ刷り込みになります。

※ 11年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」には、「山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いていて、同じ日経新聞が「日本企業の現預金11月21日に200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円という約半分の数字を基礎に議論を進めていることがわかりました。
同一新聞でありながら大幅にに違う数字を上げている点については26日に追記・再論として掲載しましたのでこのコラムの続きとしてお読みください。

ゼロ金利下で企業が資金を有効運用しないで無駄に寝かしていると株主にまともな配当をできないし、多くの企業は銀行からの借り入れや社債発行等で有利子債務負担をしているので、(優良企業のトヨタでもしょっちゅう社債発行しています)使用目的もない資金を社内に寝かしておく余裕がないのが普通です。
企業性悪説のようなムード報道ばかりしないで企業が無駄に資金を持っているというならば、その根拠を企業別に具体的に示すべきでしょう。
ゼロ金利下で利用目的もなく資金が社内に本当に無駄に寝かしているのならば、そもそも株主利益に敏感なアナリストや機関投資家・株主が承知しないでしょう。
内部留保や手元流動性が多すぎるかどうかは、本来は個別帳簿を日々精査チェックしているアナリスト等の評価・・これを反映した市場の評価に委ねるべき分野であって、素人のメデイアがつまみ食い的に世論を煽るべき分野ではありません。
言論の自由・批判が必要とは言えその分野の専門家がいるのですから、専門家の市場意見・彼らの意見総合によって相場が動いている点ををまず尊重すべきでしょう。

異次元緩和→公的資金運用と市場

中央銀行による有価証券類の購入例についてアメリカの場合を見ておきましょう。
 アメリカの量的緩和に関する本日現在のウイキペデイアの記事からの引用です。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「FRBは、買い入れ対象としていなかった証券の買い入れ、それを担保する資金貸し出しについて「信用緩和(credit easing)」と称した[98]。「信用緩和」と称したのは、日本銀行の「量的緩和」と区別するためである[99]。
2008年のリーマンショック時にアメリカは、一時的なデフレ寸前の状態にまで陥り、その後QE1(量的緩和第1弾)・QE2(量的緩和第2弾)と呼ばれる大規模な金融緩和政策によってデフレ懸念から脱し、その後のインフレ率はまたデフレに陥ってしまうのではないかと危惧されるほど、低位のインフレの状態で安定した[67]。
2010年11月から2011年6月までの8カ月間にわたって1カ月あたり750億ドルのペースで6000億ドル分の米国債の追加購入を行ったQE2は、株式市場をはじめとする資産市場や実体経済に一定の効果をもたらしたが、雇用創出に大きな影響を持ち得なかった[25]。
2013年現在、リーマンショックが起きた直後FRBは、マネタリーベースを危機前の3倍以上に増やしている[100]。
 EUの量的緩和については以下の通りです。
日経新聞の報道です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08HA4_Y6A201C1MM8000/
欧州中銀、量的緩和を縮小 期限は17年12月まで延長 2016/12/9 0:55
・・ECBは15年1月に量的緩和の導入を決定。期間を延長し、規模を拡大してきた。いまはユーロ圏各国の国債や欧州系の国際機関が発行する債券のほか、社債などを買い取っている。銀行や企業にマネーを流し込んで経済を活性化させ、物価を上向かせる狙いだ。
 今回の理事会では、民間銀行がECBに資金を預ける際に手数料を課すマイナス金利の幅を0.4%で維持するなど主要な政策金利を据え置いた。「17年3月末まで」としていた量的緩和を17年末まで続ける一方、毎月の購入額は800億ユーロから600億ユーロに減らすことで合意した。ECBが量的緩和の規模縮小に踏み切るのは初めて。
29日現在の円ドル・ユーロ相場は以下の通りです。
http://www.nikkei.com/markets/kawase/
2017/6/29 22:33現在(単位:円)
112.89 – 112.90
ユーロ(円) 128.60 - 128.64 ▲+1.00(円安) 29日 21:06
128✖️800=1兆2400億円です。
以上の通り総額には相違がありますが、米欧共に中央銀行が国債等の買い入れをしている点は同じです。
諸外国の公的資金運用は以下の通りです。http://www.world401.com/401k/world_401k.html
世界の年金融機関      国内債券 外国債券   国内株  外国株  その他
国民年金&厚生年金【114兆円】
(GPIF)           67%    8%     11%   9%  REITゼロ
現金預金5% 国民年金基金【2.3兆円】
(国民年金基金連合会)   25%   22 (12%) 28%   25% ( )内は円ヘッジ外債運用額は05年度
厚生年金基金 【25.7兆円】(企業年金連合会)
            20.7%    11.5%    31%  20% ヘッジファンド4.6% REITゼロ 
(06年度数値) OECD諸国の公的年金運用の平均(日本除く)
            50%       36%  不動産3%その他11%
カルパース 【25兆円】(アメリカ最大の年金基金)
           26%     40%  20%  REIT8% ヘッジファンド系6%
ABP オランダ【20兆円】
(ヨーロッパ最大の年金基金) 44%   34%  REIT10%ヘッジファンド系7.5% 他
ブリティッシュテレコム 【6兆円】
(イギリス最大の年金基金)  24.3%   36.9% 31.6% REIT15.5%
(9%分借り入れ運用) アメリカの大学財団の平均 
【資産規模1000億円以上の財団】 14.2% 44.9% REIT4%ヘッジファンド系31%
以上によればOECD平均では債券運用が50%で株式が36%になっています。
この組み合わせをどうすべきかは安全性と利回りの組み合わせで考えるべきことですが、これを株式相場維持の道具として運用するのは(政府の相場介入で)邪道といえば邪道ですが、そうとしても「大機小機」が論じるにはそのような目的で運用していることについて、もうちょっと精密な実証的議論をして欲しかったところです。
公的資金運用のあり方は正面から堂々と議論すべきことで、株式運用率を上げた場合や、政権支持者の特定株式の値下がり防止や上昇を狙ったり、政権の都合による全体の相場維持などのゆがんだ運用をしない・独立性が重要と一般的に言われて来ました。
ECBの国債買い入れ枠についても、各国の出資比率によると購入枠が決められ恣意的運用されないようにされています。
ただこの枠組みの結果、弱小国の国債購入が必要で始まった制度なのに、最大出資国ドイツの国債購入が最大になっていて肝心の南欧諸国の国債購入率が低い皮肉な結果になっているように推測(私個人の推測)されます。
物事から裁量をなくすとこういう結果になります。
世上日銀の中立・独自性維持の合理性が言われますが、政策総動員の中で本当に政府方針と違った方向へ勝手な振る舞い(例えば、リーマンショックのような事態で金利をあげてもいいのか?)が許されるかは別問題です。
軍事専門家の独立性といっても軍事戦略については専門家の意見を重視すべきというだけのことで、政府がA国を敵として戦う方針を決めているのに政府が友好関係をもつB 国を攻撃するのは許されません。
日銀の独立性と言っても国家の一員である限り金融専門領域の尊重というだけであって、国策の基本方針に真っ向から反対するような金融政策をとり、反対方向で動くことが許されないのが普通です。
現在「財政金融政策」と一体的に言われているように財政と金融政策は一体的運用が必須です。
もともと異次元という前から、不景気に際して政府は減税や公共工事を増やして需要喚起し日銀は金融緩和して借入増を通じた投資を誘導してきました。
経済総崩れの場合に緊急事態として旧来理論にない「異次元」債権等の買い支えに公的資金を総動員して動いているのがリーマンショック以降の世界傾向です。

資金環流2とルール変更リスク1

今後日本の対米直接投資が進み他方でアメリカの対外直接投資が日本より少なくなって来ると、多分資本自由化に関するルール変更を仕掛けて来るでしょう。
そこまで行かなくとも・全世界ではアメリカの投資残の方がまだ大きくても、日米だけの所得収支・・日本の対米投資の方が大きくなって日本への収益送金の方が大きくなった場合に直ぐに問題化するでしょう。
トヨタなどが儲けてもその儲けを日本へ送金しないで更に新工場建設など再投資している限り問題化しませんが・・日本も苦しくなって本国送金が増えた場合の話です。
大分前に日本は今後物造り→貿易黒字で稼ぐのではなく、貿易赤字を所得収支で穴埋めする国になって行くとその頃にはルール変更リスクがあることを少し書いたことがあります。
今のところ、日本は貿易収支も黒字ですから、所得収支黒字分は再投資=資本収支が赤字になる仕組みですから、資本還流の方が多ければアメリカは不満がないでしょう。
この何年か国際的テーマになっているタクスヘブン騒動や、法人税減税競争はこのリスクの始まりを表しています。
進出されている国が現地企業利益の本社吸い上げを権力的に妨害をしていませんが、(中国が外貨準備減少に直面して日本企業への送金妨害していると言われていますが・・)アメリカが送金する側に回るとどうなるか分りません。
現在進出されている多くの国は新興国でもと被植民地国が多い・・ナセル中佐によるスエズ運河接収のような力を持っていないのですが、税制その他のソフト面の理由で結果的に現地進出先での儲けが現地滞留している・・本国送金障壁になっている点は同じです。
今後地産地消と言うかけ声・・「地元での儲けは地元で使おう・・還元しましょう」と言う声が高まりこそすれ、縮小することはないでしょう。
アメリカが折角海外で儲けた資金が進出先に滞留したままになっている点を、アメリカで問題にしていることが時おりニュースに出ています。
昨日アメリカの対外投資残が突出して大きいことを紹介しましたが、投資しっぱなしで儲けが送金されないままでは、絵に描いた餅です。
本国送金時に法人税がかかる・・結果、アメリカの世界企業が、儲けの本国送金を先送りする・・儲けを出先現地国で再投資を繰り返す運用になっているらしい報道です。
日本の租税条約や税制を見ても(私の能力では)そう言う条文を探し切れないので引用出来ませんが、(日本ではやっていないアメリカだけの税制かも知れません)もしも条約ではなくアメリカ国内法の問題であれば、不都合ならば勝手に法律改正すれば良いので国際問題化する必要がありません。
これをしないでアメリカが困っている理由が分りません。
ブッシュ政権のときだったかに、期間限定で(例えば200X年までに)国内送金すれば、この期間だけ免税または減税すると言う法律で還流を図って一時的にかなりの資金環流があったと言われています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/eu-39.php
米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。この問題の副次的影響の1つとして、米企業が海外に滞留させている利益を本国に戻す動きが促進されるならば、ドルにとっては一方的なプラス材料になるだろう。
米企業の海外留保利益は、推定で2兆1000億ドルに上る。そして大統領選を争う共和党候補ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏はいずれも、こうした利益の還流を促す措置を打ち出すと公約している。
2005年には当時のジョージ・ブッシュ政権が制定した本国投資法で資金還流への適用税率が大きく引き下げられたため、約3000億ドルの海外留保利益が米国に戻った。この間、資金還流がどの程度為替レートに影響したかについて議論はあるものの、ドルはユーロで10%程度、対円で15%それぞれ上昇した。」
アメリカの税制については、以下の解説が見つかりました。
アメリカの条文に直截当たる能力が私にはありませんので、一応名の知られたプロの解説ですから、正しいものとしてお読み下さい。
https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190
日付:2017/01/24
森信茂樹 東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長
「米国は、全世界所得課税方式をとっており、海外での税引き後利益を配当として米国に還流させると、米国税率との差額を追加的に米国で課税される。このため企業は、米国に還流せず海外の低税率国・タックスヘイブンに利益を留保するという行動に出る。
具体例を見てみよう。昨年末に大きな問題となったのは、アイルランドがアップルに対してほとんど税金を払わなくてよいスキームを用意していたことである。アップルの実質的な法人税税負担率は、2003年に1%、2014年には0.005%に低下しているという。
これに対しわが国を含む多くの先進国は、「国外所得免除方式」をとっており、子会社が海外で稼ぎその国で税を支払えば、配当としてわが国に還流させても非課税としている。 – See more at: https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190#sthash.Y1qfGmMd.dpuf」
以上によれば、アメリカだけが現地よりアメリカの法人税率が高い場合に、アメリカではその差額を払わせる仕組みになっていることが分ります。
抗すれば、法人税の安い国に逃がしても何にもならないだろう・・と言う小手先の智恵ですが、そうすると資本家は本国へ儲けを持ち帰れらなくなってしまったジレンマです。
この法制度のために資金環流が進まない・・1つには、法人税を下げればそう言う懸念がなくなるので、法人税減税論が解決すべき政治テーマになります。
ブッシュ政権のときの例によれば、法人税の差額を取るのをやめれば解決する・あるいは法人税を新興国同様に低くする競争に参加すれば済むことですが、それをしたくないから相手国への滞留を問題視していることが分ります。
資本や技術のない国は土地を安く提供したり固定資産税を一定期間免除するなど税制面で優遇することによって資本や技術を導入するのが普通ですが、進出企業が儲けた金を権力で没収出来ない代わりに同じく法人税下げで対抗する・・そうすれば先進国資本家は儲けを本国へ持ち帰らずその国での再投資資金に使ってくれます。
腕力で技術者を拉致したり武力で接収する必要のないソフトなやり方です。
法人税下げ競争は、アップル本社誘致のためにアイルランドが無茶安くしていた上記の例を見れば、貿易に関する為替引き下げ競争を資本争奪競争に応用したような・・変形版になります。
タクスヘイブンが何故成り立つかと言えば、どうせ何も来ない寒村よりは設立登記手続その他複雑な帳簿作成事務作業が増える(アップル本社の文書作成コストは半端ではない筈)だけでも、その土地では大きな収入になると言われています。
別にダンピングではない・・ただ見たいな田舎の土地でただみたいなコストであれば・・不当な競争とも言えません。
資金や技術はコストの少ない方に集まる原理をアメリカや先進国が腕力で変えようとするのは無理があります。
国際的法人税減税競争をここで書くつもりがありませんのでこの程度にします。

過大消費と消費者破綻(資金環流策)

ちょっと軍事費負担能力から話題がズレますが、軍事費も含めたアメリカの過大(収入以上の)消費について書いて行きます。
ニクソンショック以降のアメリカの消費力維持は国際収支黒字国に付け回す・・いわゆる資金環流によっていたことを連載したことがあります。
資金環流とは何か・・言い換えれば、借金で収入以上の生活を国家ぐるみでして来たことになります。
現在の世界経済における巨大不安の根源は、アメリカが自己資金・対応する労働収入以上の消費を何十年も続けて来た無理に対する不安です。
収入以上の消費をして来た結果,20世紀に入ってから長年の蓄積を食いつぶしてしまった結果の第一次破綻がリーマンショックであり、その余震が南欧諸国の経済危機ですが、アメリカ社会が過大消費を改めるどころか、異次元緩和によって消費の下支えをして来ました。
この点は中国がバブル崩壊ショックを緩めるために国内再投資拡大しているようなもの・・誰も中国に対するような批判していませんが、中国の破綻先送りと本質は同じです。 
アメリカはリーマンショックの教訓を忘れて?過大消費復活モードに入っている=貿易赤字拡大する→資金環流促進が必要だが、このまま低金利が続くと逆にアメリカへの資金環流が縮小するリスクがあるのでFRBは必死になって一刻も早い金利引き上げ時期・・消費抑制+資金環流促進を探っている状態です。
この利上げのタイミングがうまく行かないので、さしあたり対米貿易黒字国に対する円高要求等・・相手国為替が切り上がると輸入物価が上がる→消費抑制になるし赤字も減ると言う目論見・・金利上げと結果は同じ目論みに繋がって来た原因です。
そこが堅実消費社会・・金利の上下はそれほど消費に影響しない日本との違いです。
最近の根源的不安はアメリカの第二次破綻が迫って来ていて、その帳尻合わせに苦しみ出したことに根源があって、それのキッ掛けになろうとしているのが中国の破綻現実化局面です。
中国がリーマンショックによる消費減退の穴埋め役を担当して、環境も何も無視した無茶な消費をアメリカにおだてられるままにやってしまった・・約50兆円投入して無茶な内需拡大・・いわゆる中国の爆買いをした結果、今そのツケ・帳尻合わせが出来ずに苦しんでいる状態です。
例えば個人の懐ならば、1000万円の蓄積があるときに海外旅行などで贅沢して500万円使ってもまだ500万円残っているときに、今年から旅行をやめればどうってことない筈ですが、国家経済はそうは行きません。
個人の場合でも旅行や観劇消費と違って環境健康無視の「ドカ食い」の場合、健康被害や公害が残る・・後始末の費用が必要であるように消費の仕方にもよります。
中国の場合、50兆円消費するために新幹線や高速道路やビルを建てまくったので、製鐵、セメント会社などが設備投資して労働者を雇っているので、来年からゼロです・・これ以上作りませんと言う訳には行きません。
長野オリンピックの後で地元企業が苦しんだ大型判です。
中国は企業をバタバタと潰す訳に行かないので、需要がなくとも無駄な工事をイキナリゼロにしてやめる訳に行かない・・苦しいところです。
個人商店でも商売を辞めようとすれば、相応の後始末資金を残しておく必要・・大企業で言えば工場閉鎖やリストラなどをするには損失計上体力が必要です。
上記例で言えば、中国が50兆円使ってもまだ50兆円残っている段階で縮小に転じても、大混乱回避・・ゾンビ企業延命のために残りの資金供給が必要ですが、残りの金で足りるかどうか・・途中で足りなくなって破産するかどうかが注目の的になっている状態です。
個人の場合計算さえあっていれば良いのですが、国家の場合、市場の信用次第・・本来足りる筈なのに、(政府の信用度が低いと)信用不安でドンドン資金流出して行き、折角の外貨準備を崩して買い支える必要があるので、十分足りる予定だった資金が半分〜3分の1も使えないうちにデフォルトになる危険があります。
今中国はこの過程・・国際金融資本家〜小金持の資本の海外逃避とのせめぎ合いで、外貨準備が日々流出している状態です。
ちなみに5月の外貨準備減少額は以下のとおりです。
[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。
ロイター調査による予想は3兆2000億ドル、4月末時点は3兆2200億ドルだった。
5月の減少幅は279億ドルで、月間の減少としては2月以来の高水準。

人民元流出の主役はソロスなどのプロと言うよりは、中国を見限ったかその先が危ないと思う裸官その他の中国国内の小口資金保有者の国外資金逃避のために合法取引を装って両替申請する・・人民銀行はドル不足になって外貨を取り崩す繰り返しです。
中国2000年間専制王朝を崩壊させて来た農民の流民化と同じ現象が、資金逃避と言う形で始まっています。
ただ、中国の外貨準備が急減するとアメリカの過大消費をファイナンスしていた資金が流出→消滅する危険があります。
これをアメリカががどうやって穴埋め・ファイナンスするかの悩みです。
その穴埋めにパナマ文書等に始まる・・タックスヘイブン摘発がイキナリマスコミを賑わすようになった原因のように見えます。
アメリカ国内のデラウエア州にタックスヘイブンがあって、そこにはアメリカは手を入れない・・特殊扱いが知られています。
要はアメリカ国内に資金を持ち込むならば、目をつむると言うアナウンス・摘発方式です。
結果的に中国を筆頭にした逃避資金はドンドンアメリカ国内に非合法に集まって行きます。
アメリカは中国政府を資金流出で追い込みながら、自身は非合法資金を集めてでファイナンスされているので、当面金利を上げる必要がない・・消費抑制には上記のとおり円高などを要求すれば良い状態です。
非合法資金の摘発と称して世界中の非合法資金を脅して、非合法資金の摘発を受けない「安全地帯」アメリカ国内に集める政策をとっているのです・・もちろん根拠のない穿った見方です。

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