賄賂社会と道徳意識(中国5)

地位維持に汲々とする党幹部や高官だけでなく人民の方も競争相手がルールを守っていないのに自分だけ守っていたら競争に負けるが、真似して違法操業すると摘発されるのが怖いので日頃から党幹部や摘発機関への付け届けを怠れません。
また、環境規制等日常全般に違反状態で許認可を通して貰い、摘発を免れるには賄賂が必要になる関係になっています。
競合相手より上位の人間に・・課長クラス一人に渡すだけより幅広く且つ部長クラス〜局長クラスにも渡しておいた方がより効果がありますが、そのためにはより大きな賄賂を出せる人に限られる・結果的に学校の成績評価も何もかも全て金次第の社会となっています。
中国では付け届けを渡すのは古来からの慣習で違法(モラル違反)というよりは、税金の自発的上乗せ納税(もともと徴税能力不足が原因?)かのように考えている節があります。
ただ公式納税の場合には納税の多寡によって電車に優先的に乗れるわけではないし、一流大学に優先的に入れるわけでもなく公平ですが、賄賂の場合この秩序が乱される点が大違いです。
日本の場合公平性が徹底していて金持ちも貧乏人も・・生命維持の基礎である医療現場で端的に現れていますが、生活保護による無料医療を受ける人も金持ちも申し込み時間順の順番待ちし、3分医療も同じですし貧乏人か金持ちかによって薬のレベルや品質が変わることもないし、受ける治療・レベルの高い手技の医師に手術を受けられるどうかもすべて機械的決定です。
(いつも書くようここは大方の社会の仕組みを書いているのであって総理その他の場合特別な割り込みの仕組みがあるのですが、ごく少数の例外を書いていません)
アメリカの場合、公的サービス提供に賄賂で割込めない点では日本同様に公平ですが、その代わり公的サービスレベルが公教育であれ医療その他何であれ日本に比べて低すぎる点(その分私立が発達している)に問題があります。
それが生命に関わる分野で端的に知られているのが、オバマケアで知られる医療場面です。
アメリカの自治体結成動機をこのあとで再開・書いていきますが、州政府の提供するサービスレベルが低すぎるので自分たちでお金を出し合って道路や学校を作りたいとか水道、警察を持ちたいという時にそれぞれの目的限定の自治体を結成します。
自治体にまでいかなくとも、昔から一定のお持ちのクラブ(飲み屋やレストランやゴルフクラブホテルなどいろんな分野でフリーの客を入れない閉鎖社会を作っていくのがアメリカ式社会・・地中海式都市国家の流れの残滓というべきものかもしれません。
閉鎖的都市国家形態を取らない社会は日本と東南アジア諸国だけですから、いろんな価値観で現在主流の世界の異端「変わってる!」になるのです。
大型マンション内部にプライベート公園を作ったり、プライベートビーチなどすべて同様の流れによります。
税金の代わりに払えるものが自発的に払うという点で賄賂はアメリカで発達している寄付文化に似ていますが、寄付者は寄付金の使途に色付けできるだけでルールを曲げようとするものではない点で、似て非なる方向性です。
日本でも一定のお金持ちしかグリーン車やファーストクラスに乗れないお金がないとお芝居も見られないという程度の差がありますが、賄賂と違って一定のお金を払えば(チケット買うのに身分さがなく、裏金が要りません)、公平に同様のサービスを受けられる点が違います。
中国社会のように賄賂を道徳違反の問題ではなく自発的納税または必要経費として考えれば、規制クリアーのために公害防除設備をつけたままにして生産するコストよりも、要路への賄賂提供の方が安ければ日本から輸入時にくっついてくる公害防除設備を取り外す方になびく・国民の健康がどうなるかの視点が全くない国民性・・中国の場合「人民」がいるが国民がいないと言われている所以です。
まして、規制にあうように技術アップに努力するコストを考える(金をかけてもうまく行くとは限らない)と賄賂や剽窃でクリアーした方が確実(100人のスパイを放ってその内一人でも持ち帰りに成功すればコスト的に計算可能)で安上がりですし、海外企業との競争のためには成功するかどうか不明の技術アップの努力・・例えば巨額投資の必要な医薬品開発よりは盗むほうに金をかける方が合理的となるのでしょう。
いくら企業秘密を盗んでも国内にいる限り処罰されないのでは、関係者は道徳の痛みを全く感じない・・コスト計算の問題でしかありません。
http://gigazine.net/news/20170608-high-school-exam-cheating-devices/によれば以下の実態がでています。

2017年06月08日 21時00分00秒
中国の試験で発見されたカンニング用ガジェットの数々が公開される
中国では2017年6月7日から9日にかけて全国大学統一入試「高考(gao kao)」が行われています。「世界で最も難しい試験」と言われる高考ではカンニングが多発しており、カンニングを防ぐために念入りなボディチェックが行われたり、受験生に「ワイヤレス端末が仕込まれている可能性があるためワイヤー入りのブラジャーをしないように」という指示が出されたこともあったとのこと。では実際にどのような方法でカンニングが行われているのか?ということで、中国・山西省の太原市が、ここ数年で実際に使われたカンニングデバイスを公開しました。

High-tech devices used to cheat China’s exams | Reuters.com
http://www.reuters.com/news/picture/high-tech-devices-used-to-cheat-chinas-e?articleId=USRTX39AF6
例えば以下の写真に写っているのは一見すると何の変哲もないベルトですが、実はワイヤレス通信を行うデバイス。太原市ではここ数年の高考で使われたカンニング道具がメディアに向けて公表されたとのこと。(以下写真部分引用省略)
以下も消しゴムに偽造したワイヤレス端末。受信した答えをディスプレイに表示するのでしょうか。
時計のように見えるワイヤレス端末に……
耳につけて外部との通信を図るイヤーピースと端末。
イヤーピースはこんな感じです。(以上写真部分引用省略)
上記のようなデバイスを用いたカンニングが増えているため、試験の最中は監視員がワイヤレス端末の活動を調べているそうです。」

中国以外の国々では、自分が努力しないで他人の努力の成果を盗むのは古代から確立したとてつもない犯罪行為というモラル意識ですが、中国ではいろんな受験時に電子機器を使って外部交信によってカンニングする方法が流行っていたのを見れば、カンニングすること自体が能力次第であるし、商取引の一態様という意識のように見えます。
裏切ることも騙すことも、騙されたり盗まれたりする方が弱いだけ・騙し陥れる方が、能力が高いと評価される社会です。
モラルの問題ではなさそうな社会です。
中国ではモラルよりは全て金次第、金の亡者のように外部から見えるのは、すべての分野で賄賂金額を基準に動く社会になっている結果によります。
今回の党大会で宣言された習近平の「世界強国」が実現する世界では、新たな中国式価値観がルールとして強制され、これが道徳として教育されるのでしょう。
「付け届けをしない」方がモラル意識が低いと批判される社会でしょうか?
忠臣蔵の原因ですが、当時何かを教えてもらうには授業料を払うルールが未発達であったのでその代わりにお世話になりますという付け届けが必須であったことが背景にあります。
粛清政治→恐怖の弊害は直接的には権力闘争の結果・・権力周辺の問題でしかありませんが、政府高官がしょっちゅう粛清されるようになると、次の地位(局長クラス)の高官も間接的に粛清政治の対象になり、どんどん下位公務員に及んで行き、最後は公務員でない民間人も反党分子という名目でどんどん処罰されるようになっていたのがソ連の「収容所列島」の実態でした。
これを免れるためには、じっこんにする相手を特定高官に限定するとその高官(例えば薄熙来)が失脚すると却って危ないので、できるだけ賄賂の網を幅広くしておく必要に迫られるようになります。
賄賂がないと何もしてくれない社会になっていても景気が良くて末端まで一定の資金が回っていれば問題がありません。

騙しあい社会3(賄賂の基礎2)

唐朝の皇帝(則天武后)側近として高名な祖父(杜審言)がいても、孫の杜甫の時代になると零落してしまう例を書いたことがありますが、給与制の無理があったことによります。
日本のような領地世襲制(これを君主が冊封する西欧的枠組みの封建制と言うのは当たらないと思いますが・・日本の場合一種の連邦制でしょう)ならば代々没落しませんが、中央集権・官僚制は経済制度的に無理があるから、高官に限らず各級の官僚は自活するために中間搾取するしかなくなる・・今で言う賄賂の始まりだったと見るべきです。
現在中国では各階級ごとに◯◯に昇進するには、あるいは◯◯の許可を得るには、上官には何元と相場が決まっているようですから手数料の一種と言えます。
欧米ではウエーター等の低賃金を補うためにチップが発達して来たのと結果が似ていますが、中国の場合権力構造の各段階に広がるのが大違いです。
チップの場合に払わなくともコーヒーそのものを飲めますし食事も出来ます。
賄賂の場合に払わないと前に進まない点が大違いですし、その手数料が高過ぎる・・しかも相場と言う曖昧な基準でこれを払えばどうなると言う結果も見えないうえに、権限を有する個人の懐に入る点が諸外国の公式手数料と違っています。
はっきりした基準がない・不明瞭・恣意的基準こそが、専制支配の特徴ですからこれに対応した経済システムだったことになります。
日本は律令制を導入しましたが、地方豪族の寄り合いである日本の国情では完全官僚制では無理があるので、班田収授・律令制は直ぐに崩壊し、荘園制度に戻っていることも律令制のシリーズで連載しました。
中国では、薄給ですから地方高官になったらこのときとばかりに最大限収奪して蓄えておかないとすぐに無収入になってしまう恐怖が収奪政治の習慣を生み、収奪される人民も上を信頼しない・・どうせ直ぐにいなくなる相手ですから信頼関係が育ちません・・その場限りの刹那的価値観が身に付いて行った原因です。
我が国ではいつ始まったか分らないほど古くから先祖代々の領地・共同体を有し、(律令制導入で国司制度が出来ても地方豪族は「郡司」として実質勢力・経済力を維持していました)その領地の収入に応じて(戦国末期の基準で言えば)軍事招集があれば何石から何石までは騎馬武者何騎と言うような基準で公的義務を果たすようにするのが合理的でした。
公務に従事すれば公的なお金を懐に入れるどころか、自腹・・持ち出しが原則の関係でずっとやってきました。
我々弁護士会でいろんな役をこなすのは全部無償・・最近若手が増えた結果として日弁連委員会出席交通費実費(以下)が出るようになって来ましたが、元は無償が原則です。
日本社会では公務を果たすのは自腹持ち出しだからこそ、源氏が前9年、後三年の役で動員した東国の豪族に対して恩を売って強力な地盤を形成出来たのです。
吉宗の足し高の制は、町奉行その他一定の公務につくと負担が大きいために家禄の少ない小身の旗本が有能であっても重要な役職に就けない弊害をなくすために始めたものですが、これは自腹負担原則を前提にしています。
(足し高の制については、02/26/04「与力 (寄り騎)8と足高の制の功罪1」以下のコラムで連載しました。)
この場合も職務給として不足家禄分を在職中「役知」として補給されるだけで、その追加「役知」の使い道は自由・・汚職する余地がありません。
現在で言えば下請け企業みたいな役割です。
親方の取り分が大き過ぎて従業員への還元が少な過ぎると、良い職人が居着かないし手抜きをすると・競合他社に負けるので相応の自制が働く仕組みです。
足し高制に戻りますと今の貨幣経済を前提に「役料」と言われていますが、当時でも現金支給もありましたが原則として「知行地」を追加するので「役知」と言われていましたがこの役料だけでは、実際の必要経費に不足するのが原則で自腹を切る分が減る程度ですから懐に入れるどころではなく、自腹を持ち出して「恩に報いる」充分な人材配置・・良い仕事・武勲を挙げられなければ、評価に反映します。
以下に紹介する会津藩の例で言うと、もの凄い自己負担で藩の財政が火の車になって行きます。
臨時加増(役知)されても領地引き渡し作業が遅れたり、最も重要な米で言えば収穫が半年後でそれからの換金ですから(以下に紹介するお茶の水大学の論文では収穫時期が限られているので加増時を基準に月割り分配する詳しいデータが出ています)、目先の京都赴任に必要な現金支出に間に合わないので、御金蔵から拝借などとの合併になっています。
明治維新後は薩長政権ですから島津家の負担による長良川堤防工事の経費負担が有名ですが、幕末会津藩の京都駐留も大変な「国難!」でした。
幕府から一定額補助金が出ていたにしても、その使い道は会津藩の裁量ですから汚職する余地がありません。
ここでは会津藩の国難を紹介するのが目的ではありませんが、会津藩が守護職就任後の加増・役知・馬喰町貸し付け・拝借金などに関する
「京都守護職に対する幕府の財政援助(研究)」新田, 美香http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/bitstream/10083/900/1/KJ00004471010.pdfによると、松平容保の守護職就任による会津藩財政が火のクルマ・惨憺たる状態が紹介されています。
会津藩はその前の蝦夷地防衛のための軍役負担で元々財政赤字になっていたところへの新規出費なので、家臣への知行借り上げ(未払い)や年貢増徴など内政は収拾がつかないほどの状態になったらしいです。
以下は独自論文かどうか分りませんが、上記論文が詳し過ぎるので?これを下敷きにしたらしい要約っぽい?(失礼かも?)その分煩雑なデータがなくてこのコラムの論旨に副う内容が要約されていて分りよいので紹介しておきます。
http://www4.plala.or.jp/bakumatsu/oboe/oboe6-aidu-zaisei.html
■ 年間収支
「京都守護職の年間収支は実際、どのくらいだったのだろうか。
池田屋事件直前の元治元年5月29日付西郷文吾書簡(『会津藩庁記録』四)によれば、守護職の年間費用はおよそ216,000両だと見積もられている。これに対して役知・役料から見込まれる収入はわずか96,709両とその半分にも満たない(49%)。年間赤字は約11万9,300両(1ヶ月あたりの赤字は約9,940両)にものぼる。なんらかの対策が講じられない限り、守護職必要経費の5割強にあたる巨額の赤字を会津藩が独自に補填せねばならないことになる。財政難の会津藩にとって、とんでもない緊急事態である。」
上記によると必要経費の半分しか幕府が補填してくれなかったことが分ります。
上記のとおり、日本の場合中国の地方大守・高官に該当する地元領主・大小名は政府(将軍家)から貰ったお金をくすねるどころの話ではありません。
領地経営者・豪族は源氏の配下になろうと平家の配下になろうと地方豪族の自由裁量ですから、その結果、小豪族をつかねる地方盟主は人望が必須ですから民意把握訓練が出来ています。
中世〜戦国時代も同様で日頃の信頼がないとイザと言うとき配下小豪族やその部下が命がけで働いてくれません。
いつの時代も優秀な人材確保こそが組織・集団維持の命綱と言う意識が古代か連綿と続いています。
優秀な人材確保のためには、信頼関係構築こそが最重要と言う意識が今も強いのはこの結果です。
先祖代々の紐帯を大切にし身を捨てても(城明け渡しに際して自分が腹を切っても城兵の命を守るのがその1例です)領民(一族郎党・・血族集団意識が基本)を大事にします。
日本では公的業務は、自己犠牲が原則であって上から支給されたモノを自分の懐に入れることなど、出来るものではありません。

二項対立と騙し合い社会2(賄賂の基礎1)

政府と国民の関係は長い異民族支配の歴史もあって、中国の場合「上に政策あれば下に対策あり」と言われる社会で政府支配力が弱い・・弱いから専制支配・・強そうなこけ脅しが必要・悪循環ですが歴代王朝の強権政治の裏に徴税率が低いことが知られています。
中国国民はしぶとい・・政府が適当に国民を騙す以上は国民も裏の動きを嗅ぎ取る能力に長けて来ます。
海外旅行熱が衰えないのを見ると政府の苦境とは別に意外に国民の資産保有が高い実態があるように見えますが・・この種の統計は勿論ありませんが、国外へ出掛けて旺盛に消費する姿こそが本当の姿でしょう。
厚い個人資産保有があるからこそ政府がこれを狙って政府主導の投機熱煽り・・株式投機やマンンション投機を誘導して国民の個人保有(ヤミ?)資産吸い上げに躍起になっているように見えます。
このシリーズで書いているように日本以外の国々は政府と国民は二項対立の関係で、互いに騙しあいの社会です。
特に中国地域では異民族支配の方が長かった(不幸な?)関係で?支配者には異民族懐柔の必要性もあったでしょうから、歴代王朝は歴史的に国民からの徴税がうまく行っていません。
この辺中世以降、ローマのお膝元であった関係でイタリア半島では、民族国家形成が遅れていた・・ハップスブルク家、ブルボン家スペイン〜ナポレオンの侵攻など言わば異民族支配が入り乱れていた結果、今でも表向きGDPは低いものの、個々人は豊かに暮らしていると言われるのと似ています。
日本では京都の町衆がその時々に入れ替わるトキの権力としたたかに付き合って来たのと同じです。
清朝が広大な版図を有していたと言っても名目的服従させただけで、マトモニ徴税出来ていなかったと言われています。
二項対立社会ではない・・日本人は政府・マスメデイアが音頭をとらなくとも黙って一定方向へ一致団結シテ行動する社会が出来上がっています。
反日運動が中韓で始まると、メデイアが中韓製品不買運動を煽らなくとも黙って中韓製品と分るだけでスーパーで手に取らない徹底ぶりです。
二年ほど前の町内会のお花見で焼き鳥用串さし肉の段ボールに中国製と書いていたのが目に止まり、「安ければ良いと言うものではない」となって昨年のお花見会からは国産鶏肉に切り替わりました。
現代自動車は日本では年間何十台しか売れない・・スマホでは日本販売のサムスン製品はサムスンの名称さえ表に出すと売れない徹底ぶりです。http://news.livedoor.com/article/detail/10253286/2015年6月20日 9時49分
世界で800万台販売される現代車 昨年の日本での販売台数は73台https://ja.wikipedia.org/wiki/Samsung_Galaxy
端末上のロゴ
2015年3月に発表して日本国内において販売されている Galaxy S6 edgeに『サムスン』のロゴがない。サムスン側は日本でサムスンブランドの露出を控え『Galaxy』のみでの訴求をしている[2]。」
ところが、中韓では政府と人民は「騙しあい抑圧し、抑圧される関係」で信頼関係がありません。
このシリーズで書いている支配・被支配の二項代立構造で古代からやって来た基礎にあるからです。
だからこそ外資導入・・文字どおり外資から資金を吸い取る関係が続いている限り政府と国民はウインウインの関係でしたが、外資が逃げる展開になるとそれをどちらが吐き出すかの対立構造に戻ります。
国外資金が入らなくなるどころか引き上げの方が多くなると政府は国民が「対策」によって溜め込んだお金・・徴税が伝統的に機能していない結果ですが、これを何とかして吸い上げようと必死・・その一環として手始めに汚職の摘発名目で始めたことになります。
ところで、中国では秦始皇帝皇帝が完成した専制支配体制=官僚制は、徴税技術が伴わなかったこともあって、(徴税対象が貨幣ばかりならいくらでも運搬・保管が可能ですが、現物徴収・租庸調では無理があったのは日本古代王朝と同じです)官吏が自給自足?するために収賄で動くのは社会制度に基礎から組み込まれていた不文律の制度です。
政敵でもないの一般公務員・中立的・中間管理職まで「袖の下」収入を摘発すると社会制度の屋台骨が揺らいでしまいます。
何かするには、手数料が必要であり賄賂も公的に必要な手数料の一種といえるとしても、公式手数料の場合、いくら払えば何をして貰えると払う方も予測可能ですし、政府財政の透明性が増します。
すなわち近代合理主義・民主主義社会に於いては、公的手数料がいるならばきちんと公示して公平にとるべきですしその効果も(コピー代いくら払えば紙何枚のコピーが貰える)明示すべきですが、賄賂の場合内容不明・・相場らしいモノがあっても不透明な上に効果も不透明・・相手によって違うなど・・命令の基準が不明な専制支配と一対なった経済版と言えます。
近代貨幣経済社会になると収賄に頼るよりは徴税技術を上げてきちんと給与を払う方が合理的ですが、社会意識がそこまで行かない中国の場合、国際社会の基準にどうやって適応するか産みの苦しみと言うところでしょうか?
賄賂が発達してしまった原因を見ると元々専制支配・中央集権制と関係があります。
古代から中世〜近世までの経済状況では、巨大な官僚組織に給与支給出来るほど貨幣経済が行き渡っていないのですから、無理がありました。
中国地域・・漢民族は交易する市の周辺・中原・・洛陽周辺で発達した古代都市国家から始まったことを何回か書いて来ました。
秦の始皇帝以来の支配者はこの関係・・狭い城内だけで通用する貨幣経済を支配領域全般に及ぼせると誤解していたことになります。
今でもそもそも中国人はシンガポールや香港、上海などの都市国家支配が元々得意な民族ですが、広大な中国全土を支配するのは無理があるのではないかと思われます・・・。
始皇帝の業績と言われる度量衡の統一がありますが、度量衡を統一すれば便利とは言え、生産物がまだ食糧中心の時代・しかも保存期間も限定される時代にこれで膨大な軍人や官僚を養うのは無理があります。
食糧が最重要な時代に富みを如何にためても保存期間の縛りで1〜2年でパーになりますから、長期間の安定した地位を維持出来ません。
日本の領地制だとこれを一所懸命守っている限り金の卵を生む鶏のように何百年も収入が安定します。
一所懸命・・領地を守ることが一族繁栄・永続の基礎ですから、一族の紐帯が大事にされてきた所以です。

騙しあい社会1(データの信用性)

大手企業で言えば内部の節約奨励に留まらず一部下請けに支払い延期要請した場合、その噂だけでも他の取引企業が納品を渋るようになり・取り引き条件が悪化し、最悪事態では取り付け騒ぎが起きます。
日経新聞が3月18日に紹介していた不払いの事例は氷山の一角・・一斉のデフォルトではないものの外資のうち特定企業だけ好きに選んで払わないとなれば事実上デフォルトの先触れとなります。
3月14日「政治と信頼1(意思表示の責任)」以下で、トランプ政権の取引外交の問題点として、新たな取引条件次第でいつでも過去の友人を裏切るようでは基準不明・・それが世界を揺るがしている原因であると書いて来ました。
政治は信頼で成り立っているのですが、中国の政策は元々賄賂による歪みがある外に、折角決まった政策実施自体が不透明な基準・人治主義によっていることが大きなリスクです。
中国の汚職摘発も政敵だけ潰しに使っているだけ、何でも暗黙の基準ははっきりしている・・外貨準備が不足になって来たので当面外資への支払先送りしただけであって、国民に影響がないと言うことで国民の支持はあるでしょうが、こう言う二重基準ばかりでは外資は余計寄り付かなくなります。
現在の韓国企業への嫌がらせと同じで、韓国企業かどうかの基準さえはっきりしてれば良いと言うものではありません。
ヤクザに絡まれているの見ると、自分に刃向かって来ないからその場は知らぬ顔をしていれば良いのかも知れませんが、いつ自分に向かって来るか分らない怖さ・・ヤクザと知れば今後付き合いたくないものです。
権力が気に入らなければ直ぐ嫌がらせする「分りよい?」基準では、ルールの「恣意性」が分るだけであって「ルールがないのがルール」と開き直っているのと同じです。
しかも全面的対外支払トップならばまだ透明性がありますが、政府の選んだ相手だけ不払いや嫌がらせするのではなお不透明です。
3月初め頃からマンション相場の公表を中止したと言う報道が出ています。
(近日中に?)値下がりが始まったときに備えてパニック売りを押さえるためと言われてます。
次から次へとデータ開示をやめて行く・・公開するときには加工して公開する・・それで国民が合理的経済活動が出来るのでしょうか?
電力統計に始まってデータ収集はするが、国民に本当の数字は教えない・・権力中枢に近い者だけが本当の数字を知ることが出来る・・計画経済であるから計画立案関係者だけが知れば良いと言えば論理一貫していますが・・。
このような場合、どうせ虚偽発表する予定ならばと下部組織もソンタクして・・地方政府報告段階から水増しが起きて来て政府中枢も本当のところが分らなくなります。
これがソ連崩壊直前にゴルバチョフを悩ました何も分らない状態でした。
「事実に反した政府発表でも従うしかない」社会では、価値の基準が事実に合っているか・正しいことかどうか、噓か本当かの基準ではなく、強者の言うとおりにすることだけが正しい基準社会であることを表しています。
中国2000年の専制支配・・正義によらず好き勝手にやれる政治と言う意味・・支配はまさにこの基準社会でしたが、・・政府発表のデータ信用性のない社会とは「民をシテ知らしむべからず」の専制支配と根底が同じ・・今もこれを続けると言う政府の意思表示です。
中国や朝鮮社会・あるいはやロシアでは正義の基準が権力者がどれだけ強いか弱いかだけの古代基準・・弱みを見せたら言うことを聞かなくなる・・それ以外の基準がまだ育っていません。
だから自分が強くなったと思えば、他国領海侵犯するのは当然の正義と言う意識になるのでしょうし、如何に自分が強いかの誇示するしかないのです。
プーチン氏がグルジョア〜ウクライナ〜シリアその他対外勢力誇示に明け暮れているのも同じです。
国内宣伝・・南京虐殺であれ、慰安婦であれ、自分たちが世界最強アメリカの支持を受けているか否か、日本より強い立場かどうかだけが、基準であって事実に反しているか・虚偽かどうかは何の基準にもなっていません。
日本が事実は違うといくら抗弁して書生論として中韓からバカにされている所以です。
中国に戻ると権力者はデータを好きにいじれる意識の社会ですから、今の中国社会の実相を知るには、天安門広場前ひな壇などに並ぶ序列・出席の有無などで誰が失脚したか、出世しそうか・・権力抗争がどうなっているかを昔から憶測するしかなかったのと同じ状態が続いていることになります。
不透明過ぎる点が、世界の価値観と肌が合わない原因でもあるし、結果でもあるでしょう。
中国では何でも政府の都合次第で直ぐに実態が不明になる仕組みですから中国との付き合いはリスクが大きいと言えば言えますが、商売・起業自体が儲けられるか損するかやってみないと分らないリスキー性が本質です。
中国市場の大きさに眩惑されて「それでも良いから、政府に狙われない程度に稼げるだけ稼ごう」と達観して進出したい企業だけが進出する・・こう言う冒険する人材の有無もクニの活力度です。
シルクロードや大航海時代新たな発見も皆こうした冒険心が切り開いて来た成果です。
ですから中国開拓の冒険心でやる人を批判する必要はありません。
ただリスクに比例してハイリターンが要求されるので、取引に際して好条件を提示せざるを得ない損失があります。
折角モノを売っても払ってくれないリスクの高い相手には、マージンを高くするしかありません。
信用があればより良い物が割安で入手出来るので、商人に取って信用第一になるのです。
中国が外貨準備を重視するのは国威発揚と外資に不安を抱かせないため(の見せ金)でしょうが、肝腎の外資を国内でいやがらせしていたのでは本末転倒です。
領海侵犯その他で威張っていますがその分信用を損なっているマイナスに気がつかないレベルです。
外資に逃げられても良い・・もう一度改革開放前の民族資本だけの経済・・鎖国状態に戻れるかと言うと今更そうは行かない・・今の中国経済は国際経済に絡み合っているので経済活動が窒息してしまうと大暴動になるでしょう。
最終的には外資から奪い取って?内需に向けている資金を、国内から吸い上げてでも対外債務を払うしかないトキが来るでしょう。
そうなると国民が資金を海外に逃がそうとしますし、政府は逃がさないと頑張ります・近代までの農民流亡を厳しく取り締まっていたのと同じ展開です。
資本規制を厳しくした結果1月末には、中国の外貨準備が少し持ち直したと報道されていることを昨日紹介しました。
資金を海外へ逃がさないように囲い込んでおいて国民から資金を吸い上げようとする分りよい論理ですがそうなると、内需の急激縮小→バブル大崩壊ですからこれまた国内経済は大変なことになります。
今のところ資金供給緩和・・新供給潤沢政策を少し減らす程度で一方で人民元安を防止するために金利だけイキナリ上げると言う変則的政策・奇策をとっているように見えます。
それでも、海外資金流出規制(個々人や企業の外貨持ち出し制限・個人で言えば家計引き締めに留まらず・他人(日本企業への支払を待ってくれと言い出した状態)ですからここまで追いつめられている状況です。
一方で国民の海外旅行熱は衰えません。

腐敗政治と最低賃金引き上げ1 

中国深圳あたりの労働者の平均賃金が月額2〜3万円で(こうした大企業に勤められるのは恵まれた方です)他方で共産党幹部の蓄財が数千億から兆単位というのでは、国民が怒り出すのは当然です。
格差拡大の酷さ・・裸官の実態がネットで暴露されるようになって、政権の正当性を揺るがす事態になって来たので、ここ数年共産党政府は労働者手取りの底上げのために強制的な最低賃金引き上げに動き出しています。
そうなると低賃金を当てにして成り立っている産業(外資に限らず国内資本も)はやって行けないのでベトナム等に逃げて行きます。
日本マスコミでは、低賃金では人が集まり難くなっていると如何にも自然現象のごとく最低賃金の強制引き揚げ政策を擁護していますが、膨大な失業者がいるし農村部にはその何分の1の収入もない人が億単位でいる・・・もっと低賃金でも働きたい予備軍が無限にいるのですから、そんな経済現象はまだまだ先の話し筈です。
元々最低賃金制は市場原理に委ねると最低生活も出来ない人が出て来るから、制度上最低賃金を強制する制度ですから市場の需給で決まるものではありません。
実際深圳周辺のどこかの市では中央で決められた最低賃金の方針を実施しない市(地方政府)もあるようですから、経済原理に反した強制は地域経済に深刻なダメージを与えているようです。
日本でも解雇規制が強過ぎたり、非正規雇用を法で規制すると却って失業者が増えるのと同じで、経済を権力で規制すると無理が出ます。
中国では失業率等の統計自体あてにならないですが、幹部の汚職に対する不満解消のために最低低賃金引き上げに動いた結果、国外移転の加速→工場閉鎖の頻発→大量失業発生によって、大変な事態に陥り始めている筈です。
深圳等で閉鎖された大規模工場の報道が以前には結構ありましたが、尖閣諸島問題で日中紛争が始まると、その後日本のマスコミでは中国に都合の悪いこの種の現場報道が何故か全くなくなりました。
大卒の就職率・失業率(ネズミ族等)その他、中韓の不利な情報・・社会の暗部に関するテーマの情報でも、(データが当てにならないまでも)以前一杯あったのに、最近では何故か大手マスコミから全く姿を消しています。
中国の暗部をテーマ化して報道しないまでも単発的報道・・例えばシャープへの出資交渉で有名になった受託製造大手の台湾の鴻海グループが中国で経営する受託製造工場を縮小・閉鎖する方向になっているなど、同社や個別企業動向として結果的にマスコミにパラパラと出て来ています。
中国の場合、人海戦術の国ですから1つの受託製造工場に5〜6000人もいるのはざらですから、これが1〜2つ閉鎖するだけでも日本では想像のつかないほどの大規模失業が発生します。
賃上げが経済現象として起きるならば、それだけの生産性が挙がっている証拠ですから無理がないのですが、生産性の上昇がないのに賄賂・腐敗政治に対する不満解消のために最低賃金を権力的に引き上げて誤摩化そうとすると、却って職場が減るなど経済的に無理が出るし国民の納得性も低いでしょう。
格差社会になっている点はアメリカと似ていますが、プレスリーやジョブスなどは、自力で稼いだものですが・・、激しい腐敗による超格差社会になっている中国とはその成り立ちが違います。
共産党幹部の腐敗に対する国内不満をなくすには、日本が近郊農民を土地成金として豊かにし、過疎地に何十年も国費を投入して来たように、地方政府や幹部の収賄・・・これこそ共産主義者の好きな「搾取」そのものです・・をやめて、外資が入れば地元民に恩恵がそのまま行き渡るようにするのが先ず第一の王道です。
外資が入って来て地元のただみたいな土地が高額で売れた場合、タマタマ地元で原油が沸いて採掘料金を取れるようになったのと同じで、外資による資金取得は一種の不労所得です。
中国の最低賃金引き上げ命令は、原油利権料をアラブ王族が独り占めしていることによって民衆の不満がたまってきたからと言う理由で、(石油掘削会社に勤める現地人は国民の一部でしかないのに)国際石油資本の現場労働者の賃金引き揚げを求めているようなものです。
共産党幹部の得ている利権料収入・・中国への外資流入は年間1000億ドル=約10兆円・・を国民に分配することこそが国民不満解消の王道です。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC