中国の国際協調能力4(不公正貿易国認定2)

年数の経過でペッグを組んでいる国同士で格差が生じて来るのは必然ですから、赤字国に連動する国にとっては無茶においしい話になりますし、赤字国はいくら通貨を下げても一緒に相手が下がるのでは赤字解消が難しくなります。
EUであれドルと連動する国があると、その関係国間で生産性上昇率の低い国や地域が参ってしまう関係です。
我が国の場合地方交付金や政府補助金が(補助金は特定業種向けですがその業種がどこの地方に立地しても同じ補助金が交付されます)国内均等に行き渡りますが、それでも地域差が生じて来て僻地はいよいよ僻地・過疎地化する一方となります。
国内的には農村社会から商業社会へ・・都市集中現象で済みますが、国際的にはそうも行かないでしょう。
デフォルト寸前の危機にならない限り修正の余地がないとなれば、現在のキプロス危機のように最後には債権者債務者双方に大きな痛みが伴います。
日々の為替変動制を利用すれば能力差が日々反映されて、ポジションのちがいを軟着陸・ソフトランデイング出来る便利さがあります。
貿易黒字あるいは所得収支黒字の結果、円高や元高が進み過ぎるのを防ぐために、それぞれの政府による為替介入が繰り返されますが、これは市場のドル売りに対してドル買いで対抗することですから、必然的にドル保有額が増えて行くことになります。
上記のパターンは、金利下げによって自国通貨安を演出する場合(何回も紹介している円キャリー取引による円安)も同じです。
為替介入によって得たドルをユーロやポンドに替えるために売りに出せば結果的にドルが対ユーロ等で下がってしまい、ひいては円高・元高になるので為替介入した意味がなくなるので、ドルを保有したままにならざるを得ません。
中国は元の相場上昇阻止のために為替介入を繰り返して来た結果、貿易黒字の累積以上(長期的には結果は同じでしょう)に外貨準備が積み上がることになって中国の外貨準備が急激に積み上がって数年前に日本の外貨準備を追い越してしまいました。
割安な為替相場を無理に維持して対ドルの貿易黒字が蓄積すればするほど、ドル外貨準備が大きくならざるを得ず、準備額が大きくなればなるほどドルの暴落は困るので、その買い支えに動かないと外貨準備=国富が毀損してしまうので、「毒を食らわば皿まで」の一蓮托生的関係になって行きます。
大口債権者が融資先の企業の倒産先送りに・・独仏等の債権国がギリシャや南欧諸国の危機にコミットせざるを得ないのと同じです。
債権者と債務者は、実は同じ船に乗っているようなものです。
後で考えれば債務国の為替の下落でどうせ同じことになるなら、中国人民元を実力相応に切り上げて、国民の生活水準向上に役立てた方が良かったことになるでしょう。
同じことは日本円にも言えて、無理に為替安で貿易黒字を稼いで、ドル預金を増やしても、結果的に同じことにされてしまうならば、黒字に比例した円高を受け入れて、(赤字になるまで円高になるのは困りますが、)それ以上の大幅黒字を積み上げないで国民生活を豊かにしていた方が、実質があります。
円高になれば海外製品が割安になって輸入が増えるし、物価が下がるので国民はより豊かな生活を送れます。
日本の場合、バブル崩壊後一時円高になったもののその後リーマンショックまでずっと円安のままでしたが、それでも中国から食糧品を含めて超安値の製品流入が続いた結果、物価下落が続いたので国民は円安による被害・物価上昇がなく仕合せでした。
この辺は、企業にとってはデフレ経済で大変でしたが、国民にとっては楽だったという意味です。

中国の国際協調能力3(不公正貿易国認定1)

不公正貿易国の認定による正常取引社会からの閉め出し(強行策)が打てないとすれば、中国に好きなように黒字を溜めさせるのも一手です。
私の交渉術の基本ですが、相手の主張にそのまま乗っていつの間にか自分の主張を通す・・柔道のようなやり方です。
・・・長期にわたる貿易黒字で貯めたドルを強制的に減価させる・・中国の外貨準備のドル通貨を時々3割くらい下落させることによって、その間の貿易黒字累積をパーにしてしまう強行策を取るのも面白いでしょう。
中国や日本は、値下がり傾向のあるドルのポジション(外貨準備比率)を減らしたいのに、貿易黒字が続けば逆にドル外貨準備が増える仕組みになっています。
たとえば、一定期間の貿易黒字蓄積の結果、ある国の外貨準備が7000億ドルになったときに、黒字国は市場に委ねれば本来切り上がるべき自国通貨の切り上げを介入等で阻止するとドルを外為市場で買い上げる分貿易黒字額以上にドルが貯まってしまいます。
自国通貨安を維持して貿易黒字を続けた結果、外貨準備が更に増えて1兆ドルになった場合を想定しましょう。
アメリカが今度はドル安政策だと宣言して3割切り下げれば1兆ドルの外貨準備の額面は同じですが、対円やユーロでは、3割減になってしまうことになって、その間に溜め込んだ1兆ドルが7000億の価値に減ってしまうので、3000億ドルの評価損になります。
それでもほぼドル連動するように為替管理している中国はアメリカドルと一緒に3割下がるので、その後も対アメリカ貿易競争力が変わるどころかUSドルに対して為替相場の上がった諸外国よりも競争上有利になります。
これがリーマンショック以降、ドルが全世界に対して一律減価しているのに中国元だけがほぼ連動する結果、中国が世界に大きな存在感を示せるようになった原因です。
自国通貨安政策は貿易上有利ですが、事故通貨安=低賃金・国民窮乏化政策ですから、中国人民の不満が沸点に達して暴動が頻発している現状に陥っています。
同一通貨圏内・あるいはドル連動制の国に対しては、域内の発展不均等・あるいは貿易収支偏り是正のために通貨相場の上下で交易の偏りを調整出来ないので、黒字国は債権が膨らみ過ぎる=赤字国は同額の債務が膨らみ続けることになります。
ペッグ制によってどこまでも為替相場が米中一緒になると、債権が膨らみ過ぎるのを放置する=最終的には債務者の支払能力がなくなる・・貿易赤字国の通貨や国債・債権相場の下落・デフォルトの結果・・どちらも破綻するまで待つしかありません。
一蓮托生と言えば、それまですが、歴史経験を無視し過ぎ・・能がなさ過ぎます。
ナチスのように民主的手続きを践めば民主主義の息の根を止めることも許されるのでは困るので、戦後は民主主義を否定する思想は民主主義国で許容される思想の自由の範囲外である・・許されないと定義し直されて戦後教育で習いました。
自由主義経済と言っても、自分だけ相手に参入するのが自由で、自国経済は資本取引や為替その他いくら閉鎖していても良いというのでは身勝手過ぎます。
自由貿易の基礎ルールを守らないならば、自由主義国の恩恵を受けられない・・WTOその他の貿易システムから除外するくらいの制裁が必要でしょう。
せっかく世界に根付いた人類の智恵である変動相場制を台無しする装置が、EUの共通通貨制でしたから、今のギリシャ・キプロス等で支払能力不足・・南欧危機が生じているのです。
国内の貨幣共通化制度・・・東京等大都市と青森等東北諸県や九州・四国等の僻地との格差については、地方交付金等による所得再分配等の修正装置がることを以前から書いています。
EUのように外国との間で通貨だけ共通にすると、こうしたフォロー制度がないままで通貨共通・・固定制にするから危機が起きてしまうのは理の当然であることについてイタリア等の危機が生じた頃に書きました。
最近、EUもこのままではまずいことになってしまった・・離脱が生じるのでは困るので、一生懸命に金融制度の補完制度を考えるようになっているようですが・・。

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