オバマ政権の移民政策(DACA制度論争)2

2019年11月14日「オバマ政権の移民政策」の続きです。
米国はメキシコ(ひいては中米諸国)から安い労働力を輸入しながらその対価・日本の地方交付金みたいな分配をしない・・この無理押しを見ぬふりをしているので移民政策に関する米国世論の混迷につながっていると思います。
中米移民に頼る米国経済の現状です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/maeshimakazuhiro/20170918-00075900/

(3)不法移民をめぐる意見の対立
ピュー・リサーチセンターによると、2014年現在、アメリカにいる不法移民の数は1100万人程度と推計されている。アメリカの人口が約3億人強であるため、人口の3.5%を超える。だが、不法移民の数は1990年には350万人程度だった。その後、ヒスパニック系を中心に合法移民だけでなく、不法移民も急増して今に至る(リーマンショック前の2007年が不法移民の数は1200万人程度とピークだったが、ここ数年、微減ではある)
・・・・・不法移民はアメリカ経済の急伸に伴い、低賃金労働者として経済を支えてきた。
不法移民はメキシコ国境の各州に集中する。同じくピュー・リサーチセンターによると、カリフォルニア州の労働人口の9%、ネバダ州は10.4%、テキサス州8.5%と特定の州の場合には産業構造上、不法移民なしで動けないような状況になっている。
・・・不法移民は低賃金労働者として必要だったため、農業やサービス業などの一部の産業界からは規制に反対する声も強かった。さらに、人権的な配慮から全米各地の群や市の自治体約200は「聖域都市(サンクチュアリ・シティ)」として、若者に限らず、不法移民そのもの摘発を行わない寛容政策を取り続けてきた。
不法移民の強制送還は連邦政府の役割だが、連邦政府機関の取締りに「聖域都市」では地元警察は協力しないことを宣言してきた。また、「聖域都市」に限らず、不法入国した若者についても、高校までの公教育は無償で提供されてきた。

このように膨大な移民労働力にたよる・人材の一体化がどんどん進行すれば、なくてはならない労働力ではあるが、どこか気に入らない面がじわっと広がってきた状態をトランプ氏が支持者獲得のために機敏に煽ったのだと思われます。
https://www.bbc.com/japanese/41170136

トランプ米政権、若い移民救済制度を撤廃へ オバマ氏が批判
2017年09月6日
子供の時に親に連れられて米国で不法移民となり、そのまま米国で暮らす若者をただちに強制退去させないオバマ前米政権による救済制度について、ジェフ・セッションズ米司法長官は5日、撤廃する方針を発表した。米国で生活する約80万人が影響を受ける恐れがあり、バラク・オバマ前大統領はこの決定を「残酷」で「間違っている」と批判した。

オバマの主張は人道論一色のようですが、(日本ではそういう議論ばかり紹介されているのかもしれませんが・・)地についた議論としては、国内産業維持のために必要な外国人労働力をどう位置付けるかの議論であるべきです。
人種差別意識の低層心理があって、黒人奴隷の焼き直し的地位を想定して議論しているのではないでしょうか?
EUの場合、中世以来別々の王国に別れていたとはいえ、キリスト教徒としての民度レベル文化歴史もほぼ共通の土台の再構成なのに対して、米国とメキシコとの関係は人種由来的にEU中核・独仏と西欧周辺国との関係に似ています。
EU拡大に伴い最西端に位置する英国が東欧からの自由な国境移動(イギリスにはポーランド人労働者が多く流れ込んでいると言われます)に我慢できなくなり、ドイツや東欧諸国のトルコ・南欧を通じる中東・アフリカ系移民に対する不満)その他でEU域外からの移民増大に不満が出てきたのと、アメリカの対メキシコ(中南米からメキシコ経由で米国入国を目指す人々への)感情とは根底の感情が同じでしょう。
西欧でもドイツの場合、世界企業が多いのですが、工場労働者といっても一定の熟練の技を重視する傾向の強いので、アメリカがメキシコへ移転したような南欧諸国等への工場移転の動きはありません。
ドイツの場合自国にきた個々の移民を訓練する社会ですから、米国のように直ちに製造業空洞化による国内雇用喪失の不満は起きません。
EUの移民に対する不満は移民に職を奪われるとか異文化人が身近にゴロゴロ住み着くことに対する社会の軋轢増大を底辺層の身近な不満として取り上げるメデイアの解説が当たっています。
米国の場合、基本的に熟練技術を求めない・自国民自身労働の質が高くないことから、制度上の規制・・現地生産のハンディ・・進出に対する後進国の法障害さえなくなると、企業・製造工場の方が北米地域内で気軽に移動してしまう傾向があります。
関税や法規制による進出障害に対する内政干渉まがいの攻撃(今回の対中攻撃も中国による外資に対する規制に対する攻撃が基本です)が多い所以です。
米国ではもともと異文化人が隣近所にいること自体には慣れていることと、地元工場の募集数が同じで個々人が職場を奪い合う不満以前に、職場自体がメキシコに移動して行くので、米国内製造業の国外流出による製造業空洞化恐怖の方が大きいのではないでしょうか?
ですからメデイアが西欧に妥当する移民排撃機運を米国に当てはめて、米国底辺層が職を奪われることに対する不満に過ぎないと・トランプ氏支持層は底辺層白人というキャンペインもこの一種・・バカにするのは間違いです。
日本が米国への工場進出に応じたのはこの心理に応じた正攻法で、現在の日米蜜月の基礎を導いた基本構造です。
トヨタがトランプ氏に名指し批判を受けた時に日系企業は、米国雇用に多大の貢献をしていると応じたのは、相手の直球をまともに打ち返した見事な説明であり、トランプ氏は黙ってしまった様子です。
トヨタ進出で潤っている地元政界の援護が厚かったとも言われます。

不自由展論争→憲法学は学問か?(地域エゴ競争2)

トランプ旋風以来、〇〇ファーストが大流行りですが、沖縄でも静岡でも首長は、中央に楯突くパフォーマンスの方が票を得やすいムードです。
中央と楯突く必要のない静岡のような気風温暖な地域で、しかも川勝氏はリニアー関連の審議会委員か何かを務めていた政府寄りの人物らしいですが、知事になると豹変・・合理的理由不明な妨害行動に走り始めました。
(我田引水・公共工事が減ると)地元首長にとっては中央直結よりは、なにかと対立点を探して対決する方が、票になる時代が来ているようです。
しかし中央・・日本全体の利益を人質にしたゴリ押しがすぎると、国全体から浮き上がり、目先政府は何もできないとしても結果的に地域経済にマイナス影響がないかの視点も必要です。
沖縄の基地反対運動は先の大戦でひどい目に遭っているのに、また沖縄だけ日本列島全体の犠牲になるのか!の論建てで左翼と組んで一見うまくやっているようですが、これも行き過ぎると国民の鼻について来る時期が来るでしょう。
個人の人間関係同様で困った時に相手の足元を見た強欲な主張をすると、長期的信用を傷つけるというのが日本的価値観です。
戦国時代でいえば、地元盟主の危急存亡の時に一も二もなく応援に駆けつけるのではなく(協力を惜しみ)自分を高値で売り込むような小豪族は信用されないというのが日本の伝統的価値観です。
日本人はすぐに白黒をはっきりせる民族ではないので、これをキッカケにどう動くか数十年の経過を見るしかないのでしょう。
数十年後に大村知事や津田監督が日本全体で高評価を受けるかどうかでしょう。
大村知事のとんがったパフォーマンス戦略が、従来あやふやにきた芸術系に対する公的補助がどうあるべきかの全国的問題提起になった意義は認めるべきでしょう。
(自信がありませんが)民族国家が続く限り芸術の中でも民族伝統芸術の保護と現代アートの保護とは次元が違っても良いのでないか?と思いますが、それにしても補助金の程度問題・・国民総意・政治判断によるべきでしょう。
大阪府の文楽に対する補助金問題が憲法訴訟になっていないように、将来東博等国立博物館等で、国内芸術家優先がおかしいとか、西洋美術館や東洋美術館等への予算配分比変更問題が起きたとしても、表現の自由侵害の憲法問題ではありません。
東大等の国公立大が中国の軍事技術、ハイテク技術発展のための研究協力するのに国費補助すべきかも政治で決めるべき分野であって、憲法・・学問自由の問題ではないでしょう。
こう言う補助金交付規制論が起きると、学問の自由侵害の憲法違反だと言うのでしょうか?
平和論〜国防問題でいつも問題になりますが、無防備で良いかどうかではなく、憲法9条がある限り再軍備は憲法違反だから軍備必要性の議論自体許さないかのような主張・・「悪法でも法は守るべし?」論が圧倒的です。
「憲法とか近代法精神を守れ」などのスローガンで終始して、具体論を避けるのが、文化人や学者の基本姿勢です。
芸術文化保護予算はどうあるべきの議論で「表現の自由に介入するな」という憲法論に終始して議論をさせないのが憲法学者の仕事のような振る舞いです。
どのように日本を守るかではなく、「憲法がある以上仕方ないでしょう」というならば、・・憲法改正の必要性はどうなのか?となりますが、こういう論者の100%と言っても過言でないですが、憲法改正議論すら拒否するのが普通です。
曰く「安倍政権の改憲を許さない」論ですが、憲法というのは長期に国民の守るべき規範ですので、平均数年で交代する・・国会発議に必要な与党議員数確保したのは、前回衆議院選挙であり、まだ約3年で辞任表明です・・政権好き嫌いと憲法条文をどうするかの議論は関係ないことです。
https://www.jcp.or.jp/web_info/9no.html

安倍改憲ノー!新署名広く

「草の根」の力で必ず阻止  総がかり行動実行委員会共同代表
(「しんぶん赤旗」2020.2.6)

上記のようなビラが溢れていました。
ところで、安倍総理辞任表明後、安倍政権を毛嫌いしている朝日新聞の世論調査でも以下の通りの結果が出ています。
https://www.asahi.com/articles/ASN937F3RN92UZPS005.html

安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査
会員記事 自民党総裁選2020
2020年9月3日 22時30分

自民党政権毛嫌いの朝日新聞の調査でさえも71%も支持されている安倍政権だから改憲反対という主張は、支離滅裂としか言いようのない主張ではないでしょうか。
「ごく少数支持政権の改憲発議なら賛成する」とでも言うのでしょうか?
民主主義を守れ!と言うリベラル政党各派の看板が泣きませんか??
こういう議論方式が大手メデイアや憲法学会や弁護士会で主流?(声が大きい)になっているのは、おかしいのではないでしょうか?
彼らにとって憲法って何のためにあるか?
まともな議論拒否、「なんでも反対の護符」になっているように見えます。
日本の憲法学界や思想家人権グループは、我々素人から見ればオカルト集団のようで科学としての学問に基づく主張をしていると言えるのでしょうか?
真面目に学問として研究している人もいるのでしょうが、政治運動と区別のつかないような声明を出す学者が多いので、外野から見ると全部そのように見えるだけかもしれませんが・・。
集団で声明を出す学者もその道ではまともな論文を書いて認められている研究者なのでしょうが、政治運動になると素人も驚くような無理筋の主張が多くなるようです。
政治学者と政治運動のプロとは違うように、憲法学者も憲法の運用がどうあるべきかの政治論は素人に近いのですから、専門外のことに専門家の肩書きで口を出すのが間違いと言えるでしょうか?
個人意見開陳は自由ですが、専門家集団の威力を用いるのがおかしいというだけです。
今回のコロナウイルス騒動でも分かるように専門家の知見必要ですが、それを応用するの政治家の役割です。

オバマ政権の移民政策(DACA制度論争)1

アメリカは、安い労働者を使いたい・移民あるいは出稼ぎは欲しいが、定着は困るという身勝手な制度の矛盾を解決するしかなくなっています。
その解消に乗り出したオバマ政権時の移民対策(表向きは人道解決)について見ておきます。
https://www.bbc.com/japanese/41170136
・・DACA制度に登録した若者は「ドリーマー」と呼ばれ、就労や通学が認められた。その大多数が、ラティーノ(中南米系)とされる。
不法移民と言っても主としてメキシコまたはメキシコ経由で入ってくる中米からの低賃金移民が政治問題になっていることが分かります。
カナダの方は米国より自分たちの方が良いと自負しているので、経済自由化に伴い人的移動自由化があってもそれほど一方的な移動が起きなかったのでしょう。
オバマ政権のいわゆるDACA制度については以下に詳細紹介があります。
項目だけ引用ですの詳細は下記に入ってご覧ください。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8896325_po_02620101.pdf?contentNo=1

【アメリカ】 オバマ政権による新たな移民制度改革 海外立法情報課長 岩澤 聡
国立国会図書館調査及び立法考査局

*オバマ大統領は、2014 年 11 月 20 日に行った演説において、約 400 万人の不法移民の国外 退去処分の延期等を含む新たな移民制度改革を大統領権限により開始すると発表した。
1 背景と経緯
1 背景と経緯 アメリカ全土で 1100 万人を超える不法移民への対応はオバマ政権の最重要課題で あり・・・以下省略、
2 移民制度改革の概要
(1) 国境警備の強化
(2) 国外退去の優先順位の見直し
(3) DACA(Deferred Action for Childhood Arrival)プログラムの拡大
(4) アメリカ市民および合法的永住者の親に対する延期措置の適用
(5) 高度な技能を要する業種及び労働者の支援

上記は、下院議決できたが、上院多数を占める共和党の反対で法案は葬られたので、大統領令署名での運用緩和だったらしいのですが、賛否両論があったとしてもこのように事実上の合法化で不法移民(といっても違法レベルによる分類がありますが)平穏・普通の生活をしている限り多くの「不法」移民が陽の目を見るようになった変化が起きたのは事実だったでしょう。
移民反対のそれぞれの立場があるでしょうが、親に連れられて不法入国?オーバーステになった子供が一生涯日陰者で暮らす気の毒な境涯(日本の旧幕時代の穢多非人のような扱い?)から脱却できて普通に暮らせることほど人道的に心温まる政策ではないでしょうか。
文字どおりドリーマーだったのです。
とはいえこれまでビクビクしていた青少年や移民が自信ある様子になるのに不快感を持つ人が一定率いるのでしょうか?
彼らの主張は親に連れてこられただけで罪がないか否ではなく、異民族が近くにいるのが不愉快だから出て行って欲しい基本姿勢があるが合法移民には文句言わない、少なくともきちんと手続きしないで入った人に限定してちゃんと法を執行して追い出してくれというようですから、それなりに筋が通っていますので人道論一本槍の民主党と議論がかみ合っていないのです。
しかし経済面からいえば、便利に使いながら国から出て行ってくれという主張自体自己矛盾である点が日本では一般化されず、大手メデイアは人道的に・・というオバマ大統領の主張する土俵の議論ばかり紹介する傾向があります。
シンガポールでは、人件費の安いマレー人を雇用して利益を上げ、マレー人は夜マレーに帰る通勤外国人に頼っています。
東京都は周辺の比較的人件費の低い人材雇用で儲けています。
例外はありますが、都心から周辺へ距離が伸びるのに比例して、地価やマンション相場が低下しているしホテル等の料金もほぼ同傾向です。
日本で多くの市町村では、住民税や市町村固有税収だけでは足りず不足分は国から地方交付金で賄ってる状態です。
地方税収取得割合を高めた場合、貧乏県と富裕都府県との格差が広がりすぎるので、大方の地方自治体の税収を例えば平均2割不足する程に設定して2割分を国税収入にする代わりに、その2割を地方交付税として人口比?平均より税収の少ない自治体に手厚く交付し、黒字団体には交付しない(不交付団体)のでその分他の自治体に回る資金が増えるのかな?
上記例の場合2割の赤字は本来の制度設計ですから、2割を超える赤字団体と2割以下の赤字に努力成功した赤字団体・東京都のように本社機能のある大都会ではもともと超黒字団体もありますので、努力差に応じて成績に報いるシステムになっているのでしょう。
このようにして東京、大阪、名古屋、福岡等の大都市を抱える地域ばかりが税収を独占しないように、日本の場合地域格差是正に努力してきました。
固有の地方税収額と国税から配布される地方交付金の占める比率を明日見ておきます。

英国EU離脱2

製造業の雄である日系企業は米国に無理難題を言われても、報復関税や農産物輸入規制の報復能力がない・この点は第二次世界前の大恐慌の時に報復関税を掛け合うのは米欧であって日本は一歩引いていましたし、繊維〜電気〜鉄鋼交渉等の挙句のプラザ合意以降貿易黒字拡大はまずいとなって相手の懐に飛び込む戦略に徹してきました。
この戦略のよって米国への工場進出で地盤を築いてきましたが、海洋民族そのものである日本人にとって大陸系移民中心の気質の合わない北部へは進出しないで、南部から中部程度しか行かない点が南北戦争時との違いでしょうか?
表向き労組が強すぎるなど合理化して説明されますが、実態は気質が合わないからです・・この辺は欧州進出の足がかりの工場として大陸へ直接進出しないで英国を選んでいるのも同じです。
この点でトランプ政策によって農業が大きな犠牲になっていても今回は南部諸州が日系工場進出で潤っているのでもう一度反乱(南北戦争)を起こす必要がないようです。
「夢よもう一度」といっても北部製造業の復活可能性がないのではないでしょうか?
トランプ政策にラストベルト地帯が反応してトランプ氏当選原動力になったようですが、約2年余り経過して(国内に製造業誘致しても中南部に行くので)期待外れに終わりラストベルト地帯では民主党の勢いが増しているような報道も散見されます。
異民族移住の簡略化の功罪に戻します。
友人に「今度お立ち寄り下さい」と日を決めて招待した友人が遊びにくるのは良いとしても、招待しないのに勝手にしょっちゅう遊びに来られると困ります。
シェンゲン協定だったかで、EU加盟国間で国境を超えて自由に移動できるし就業制限もないようですが、ポーランド等からイギリス国民の意向にお構い無しにどんどん労働者が入ってくるのが気に入らないようです。
観光客でも多すぎると観光公害と言われる時代ですが、自由に入ってきて自由に国内就業までできるのでは、個人間交際で言えば自由に他人の家にズカズカと入って勝手に寝ているようなイメージです。
英国民のEU離脱決定は劇的変化の多いフランスと違い、着実な前進を好むと言われてきたイギリス国民性からすれば思い切りすぎた点で世界を驚かせましたが、それほど異民族との共存に対する不満を我慢してきたということでしょうか?
漸進的改革か撃発的改革の違いは、国民の不満が爆発するまで我慢を強いるか否かで決まることで民族性によるものではないでしょう。
フランス革命もロシア革命も暴発的であった分に比例してその後の混乱は大きいものがありました。
EU離脱の国民投票後ブレグジットが一向に進まないのは、旧来型価値観の教養人集団である議会が、手順を決めない乱暴な離脱方向決定後どういう手順で離脱するかの議論に入っている・・手順が逆になっている咎めによるとも言えそうです。
結婚式場も決めないで結婚式の日程を発表したあとでドタバタしているようなものです。
離脱手順を決めるのに四苦八苦したメイ首相が辞任せざるを得なくなり、従来からの(手順などどうでもいい?)強硬離脱論者の代表的人物であるジョンソン氏が首相に就任しました。
軟着陸目指す・・詳細取り決めにこだわる議会の抵抗を封じ、ジョンソン首相はなんらの譲歩もせずに=無協定期限切れを狙う・ともかくまず離婚してからその後のことは考えるという乱暴な離脱?実現を目指しているように見えます。
そのために対EU交渉期間と重複する期間中の大幅な議会閉会を決定したのは、議会に縛られる度合いの少ないアメリカ大統領のような権限を行使するための奇策だったでしょうが、この奇策はうまくかわされて、議会閉会前に交渉期限延期要求を義務付ける法案が可決されてしまいました。
ジョンソン首相はこれにも屈せずに、彼は交渉期限が来るまで事実上なんの提案もせずに交渉期限が過ぎるのを待つ・・無秩序離脱強行戦略のようでしたが、ついに提案したようです。
報道によると関税同盟を残さない離脱と言うらしいですが、公表されたばかりで私には内容不明ですが、焦点の北アイルランド問題解決の具体論が見えない主張に留まるようです。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-49917979

解説】 ジョンソン英首相の新提案、バックストップとどう違う? ブレグジット情勢
2019年10月3日
イギリス政府は2日夜、欧州連合(EU)離脱に向けた新しい協定案を発表した。メイ前政権による協定で懸念材料となっていた、アイルランドと北アイルランドの国境に関わる「バックストップ条項」に代わる案も盛り込まれている。

離脱実現後の混乱を防ぐためにどういう戦略がジョンソン首相にあるのか不明ですが、いずれせよ激動の予兆があちこちで噴出してきました。
19世紀型政治原理を完成したのが20世紀とすれば、これを激変させる予兆があちこちで見られます。
これらを極右政党の台頭とか、異端行為の頻発などと否定的評価さえしてれば、済むものではありません。
こうした変化にどう対応していくべきかを個人もいつも考えておくべきことでしょうし、これに対する発言も自由ですが政治論は政治の場で、文化論は文化の場で決めるべきであって民意によって選ばれていないシステム・訴訟のテーマにすべきではありません。
司法機関は政治論争の結果政治の場で決まったことをきちっと守っているかの判定機関すぎません。
訴訟の場で政治、文化論を戦わせようとするのは場違いでしょう。
職人は黙々と自分が満足できるまで精魂詰めてモノを作る・.絵描きは描いた絵で勝負し、音楽家は音楽で、料理人は作った料理で勝負すべきです。
作品を社会あるいは後世評価されたら良いのであって、所属社会が認めてくれないからと所属社会と喧嘩し、これを世間に広げる運動を自分でする必要はありません。

政党の存在意義(政策論争=対案の重要性)4

蓮舫執行部の「30年まで原発ゼロ政策」発表に待ったをかけた連合が労組のエゴを通したというよりは、「正規職員だけ労使交渉で配置転換や一時金上乗せなど・・守ればいい」というのではなく、連合の反対は地域波及効果・世論を見た上でのまともな意見・・これこそが世論でしょう・・であったことになります。
連合は本来政治団体ではないので労組の利益さえ守れば良く、総合判断すべき政党の方が、「いや地域経済を総合考慮するとその主張は無理がある」と、ブレーキをかけるべき立場です。
蓮舫氏の場合、田中角栄氏のように記者会見等で思いつきでデータを引用したのと違い、国会質問は事前に質問書を提出した上で行うものです。
野党第1党の党首が国会でデータに基づいて政府を追及する質問書をあらかじめ発行する以上は、質問で主張したい前提たる基礎データぐらいは党内で緻密な検証を済ませておくべきでしょう。
検証した結果都合が悪いのが分かったので、総発電量のデータを出さずに大手電力会社の発電量だけの合計を出したとすればミスではなく悪質です。
自己主張に都合良いように加工したパネルを故意に偽装した「党首」質問という重要な場で主張したことになり、民進党の政策提案レベルの低さ+虚偽主張になれた体質を自ら露呈したことになります。
そもそも30年まで原発ゼロ政策の党方針採用問題で党内で賛同が得られずに撤回に追い込まれているのに、その後にその政策実現するための質問を国会で党を代表して展開することと、党の方針との関係がどうなっているの?という疑問を抱いた人が多かったでしょう。
国会質問は「30年までと期間を区切った質問ではないから矛盾しない」のだということでしょうが、気の抜けたビールのような質問です。
集団自衛権〜共謀罪法案〜今国会までの民進党の国会討論・質問は、せっかく野党第一党として多くの質問時間を獲得していながら、本来のテーマである予算案の討論・その前提としての特定予算項目に関する国政のあり方に関する討論をする能力がなかったのか?
与えられたせっかくの質問時間を消化するのに汲々としていたように見えます。
今朝の日経朝刊掲載の私の履歴書で高村自民等副総裁が集団自衛権問題では公明党がじっくりと協議に応じたが、民進党は1992年のPKO法の時に3国会かけてやったから今回も3国会でやるべきだという形式論や憲法違反というばかりで具体的議論に入ってこなかった点を淡々と書いています。
・・国家全体の基本政策を論じるべき予算委員会で国家政策の基本を論じないで、森友や加計学園の質問ばかり・その質問で戦略特区制度をどうしたいのか?を主張するならまだわかるのですが、それを全くしないまま終わりました。
戦略特区のうちの特定の特区指定のあり方は国家全体から見れば小さな問題と言えば言えますが、野党第1党である以上は国家の基本政策を論じるべきでしょう。
・・国際的大問題になっている北朝鮮の長距離砲問題をどうするべきか、トランプ政権への対応など日本にとって火急のテーマが一杯あるのに、これら日本にとって重要テーマを国会で全く議論させない・・時間稼ぎばかりが目立ちました。
これでは、週刊誌の旗振り役程度の役割しか果たしていないのではないか?と感じた国民が多かったでしょう。
集団自衛権問題の国会でも十分な持ち時間をそのテーマで論争せずに、粗探しばかり・・いわば議論妨害ばかりだった上に(自分が議論を妨害していたのに十分な国会の議論がなかったとメデイアで煽っていますが、国民は実態をよく見ています)今国会でもこの体たらくです。
この経過を見ていると、国会論争をする能力さえないために細かな粗探しで持ち時間を消化するしかないのかな?との印象を国民が受けてしまったので、せっかくメデイアの応援で安倍政権支持率引き下げに成功しても国民の支持が離れる一方になったのです。
朝日を筆頭にメデイアは民進党の支持率引き上げは期待可能性がないので当面期待しないが、政権党の内部分裂・混乱を惹き起こせばそれで目的を達するようですから、民進党を国会での追及・混乱させるための鉄砲玉に使った・・民進党はうまく使われただけです。
森友・加計学園問題が顕在化する直前頃にはメデイアは何かと言うと記事テーマに関係なく?党内1強の弊害(と言っても具体論ではなく「党内で自由にものを言えなくなっている(はず」)とかのイメージをしきりに強調していました。
日本の政権が「2年交代では長期的安定政策遂行能力がない」とか「国際政治で信用されない」と長年日本政治を批判するキャンペインを張っていたのと整合しないメデイアのイメージ戦略です。
「日本が安定政権になって国力が増大し国際的発言力が上がるのが困る」と言わんかのように受け止めた国民が多いのではないでしょうか?
党内異論ばかりで何も決められない・・民進党的運営を理想とするようなキャンペインですから不思議です。
前国会は森友・加計学園「疑惑?追及」ばかりで国政審議をさせない・国政停滞を目指すかのようなメデイア戦略が目立ちました。
AI革命に象徴されるように日々新たな方向へ向けての決定事項が山積していますが、政権党内2分・3分裂の党内ゴタゴタを誘導し政策遂行能力が衰退すれば・・これら多くの重要決定が数日〜1週間でも先送りになれば、あらゆる分野で熾烈な国際競争下にある現在日本の各種事業展開が不利になります。
森友加計学園問題の国会質問対応に忙殺されて国内外の需要課題に目を配る暇がないと、毎日のようにある重要国際問題に対する発言時に国内利害を踏まえた多角的目配りがおろそかになり発言力が低下します。
党内分裂を煽り国政停滞を煽るばかりのキャンペインでは、「どこの国のためのメデイアか?」という批判が出てくるのはある程度仕方がないかな?と思う人が増えて来たでしょう。
政権弱体化のためにメデイアが自民内の反安倍勢力を養成して結集させる・・この思惑で仕掛けるのには、派閥横断的に幅広く勢力を張っている(戦略特区指定で岩盤に穴を開けられたことで現政権に不満をもっている)勢力を煽っていくのが目先合理的です。
(8月9〜10日頃に連載したように福岡補選では政権中枢の麻生副総理でさえ獣医師会側有力者の子供応援でした)
そこで獣医師界の岩盤に穴を開けたチャンスを逃さずに獣医師会既得権益層を煽ったと見ることが可能です。
安倍政権支持率を引き下げる方向では、森友・加計学園騒動で日本の国政混乱さえ引き起こせば良い点では、メデイアと民進党との思惑が共通しても、民進党支持率を引き上げたい民進党とは目標着地点は違っています。
もともと共闘や相乗りというのは途中まで方向が同じでその先が違うのが普通です。
これがメデイアの大攻勢が成功しているにも関わらず民進党支持率が逆に下がってしまった理由です。
メデイアと違い民進党は政権を狙うべき政党である以上は、国政混乱目的が露骨に出ているのでは国民の支持を逆に失います。
その頃の報道を見ていないので正確にわかりませんが、これまでのメデイアの報道姿勢から見ると政府に反論されている点を報道せずに「蓮舫氏がこういう主張をした」という部分だけ報道していたのではないでしょうか?
仮にその部分だけ見た視聴者はデータが修正加工されたデータであることをその場で指摘されていることを知らないので、「すぐにも原発ゼロにできるのじゃないか?」という印象・イメージを刷り込まれてしまいます。
左翼系文化人や人権団体は何かと言うと国連その他の援用が多いのですが、国際状況を引用するならば都合の良い部分だけ抜きだして主張するのではなく総合的客観的データを前提に意見をいうべきです。

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