脅威増大と軍事同盟の必要性2

米国の尻込み傾向が顕著になったので、中国としては実力行使してしまえば大丈夫という安心感を持ち、・・傲慢な態度が顕著になって南シナ海を自国領海と言い張って実力での囲い込みを始めた原因のように見えます。
中国の脅威が目前に迫ると少なくとも最大限の応援をしてもらえるようにしておく必要がある・日本も憲法の範囲内で少しは米国に協力する姿勢を示す必要があるとなって、周辺事態限定協力の誠意を示そうとなって今回の安保関連法議論がおきたものです。
圧倒的兵力差があるときには、米国が小指を動かす程度の負担で周辺国を制圧できたので、片務的・睨みを利かせてくれるだけでも良かったのですが、現在中国の侵攻に米国がまともに参戦すると米本国への核攻撃さえ招き兼ねません。
相互核攻撃までエスカレートしなくとも中国が米空母撃沈能力を持つようになると、米軍本格参戦に対するハードルが中国軍能力向上に比例して日々高くなって行くのは当然です。
このハードルを下げるには日頃協力度アップとの比例関係にあるし、高度兵器供給関係構築も重要です。
いわゆる安保法案の議論は、日本の国防をどうすべきかについて国民が一番心配しているのですから、そのことについて近い将来を見据えて、日本はどうあるべきかの与野党の議論こそが必要だった思われます。
「平和を守れ」というお題目を唱えるばかりでは議論になりません。
国会は参考人に国民世論が反対しているかを聞くための場ではありません。
どの程度米国に協力すべきかの議論の場に意見陳述のために出てきた人が、平和を守れとか、反対理由として国民過半数反対とか国民に対する説明が足りないとかヒトのせいにしているのでは議論になりません。
与野党対決していることを前提により良い意見があるかを聞くのが参考人意見陳述です。
野党の反対意見をおうむ返し的に主張するだけでは、与野党双方の気づかなかった着眼点を教えてもらうことになりません。
奥田氏意見は野党論の新たな論拠提示でなく、すでに知られた野党の主張根拠の繰り返しでしかないので、こうなったら採決で結論を決めるしかないでしょう。
安保法案はどうやって国防すべきかの方法論ですが、左翼系野党は方法論段階でまだ自衛権否定を基礎に置いた理念論(中国と仲良くすれば済むことだ)を繰り返すだけです。
民主国家とは言え目的が違う組織集団といくら話し合っても目指す方向が違うのでは、時間をかけて説明しても反対したい目的が変わる訳がないので一定の議論を尽くせば国民の意思→選挙結果→多数決で決めるべきです。
合理的議論を受けつけない野党の姿勢が60年安保以来続いているので、国会審議は内容ではなく何時間の審議時間を確保したか、野党推薦者の意見を聞くという形式基準重視になってしまい、審議終了後は強行採決反対というおきまりの主張と不信任決議連発の時間稼ぎが常態化していました。
ただし国民大多数反対無視という虚勢が通じなくなったこの4〜5年では、不信任決議を出すと、じゃ国民の信を問いましょう→選挙になるのが怖くて?不信任決議を出せない状態が続いています。
奥田氏は

「今、これだけ不安や反対の声が広がり、説明不足が叫ばれる中での採決は・・・」

と言うのですが、国民過半数が本当に反対しているならば、与党に(選挙で負けていいんですか!と温情をかけずに、ズバリ選挙に持ち込めば良いことです。
こういう主張自体が、国民には賛成の方が多いと自白しているようなものでしょう。
「私、私たちこそがこの国の当事者、つまり主権者であること」という自己紹介から始まった意見陳述ですが、政治家は主権者の意見を聞くべきということと、主権者一人あるいは少数者のいうとおりすべきこととは同じではありません。
主権者の一人だから・というのは、当然すぎて意見がその意見が正当である根拠理由になっていませんので、ここで、自分、自分らは主権者であることの強調は、自分らの意見の具体的理由の合理性の有無を横に置いて、「まず尊重すべき」と印象付けたいように読めます。
もともと反対論の根拠を説明する気持ちがないことを予告するような陳述の始まりです。
結果的に一定の時間論議を尽くしても奥田氏のように過去「70年間の平和の誓い」を守れ式の意見に固執しているグループと、過去70年間とは違った新たな環境でどうするかの対応を決めたいグループとは議論の前提がかみ合っていないママでは議論をするのは不毛です。
奥田氏発言全文という記事を読み返しても安保法案に反対してその代わりどうやって平和を守るかの意見が見当たりません。
せいぜい過去70年間平和の誓いを守れと言う程度です。
ただし7月27日紹介した産経記事では

《対話と協調に基づく平和的な外交・安全保障政策を求めます》《北東アジアの協調的安全保障体制の構築へ向けてイニシアティブを発揮するべき》《中国は政治体制こそ日本と大きく異なるものの、重要な経済的パートナーであり、いたずらに緊張関係を煽るべきではありません》」

産経記事ではどこで発言したのか?(出典を書いてあったはずですが記憶がはっきりしません)不明ですが「中国と仲良くすれば良い」と言うような主張と日本が「いたずらに緊張関係を煽るべきではありません》」という言い方は日本に責任があるという主張です。
日本になぜ責任があるか根拠不明のまま結論が出てくる感じです。

脅威増大と軍事同盟の必要性1

本来日本が経済大国になった頃からは、普通の能力相応(7対3の国力ならば7対3の分担)の相互的な同盟関係になるべきだったでしょう。
このため日米はパートナーシップで・・という表現がその頃から増えてきたようになった記憶でしたが、当時は日本にとって中ソの脅威は実感のない脅威論でした。
むしろ国際的人気のないベトナム戦争の出撃基地(トンキン湾空爆は沖縄からの発着機で実施?補修等の兵站拠点は当然)になっているという面で、日本が貸しを作っている関係が続いていてたので国内の迷惑施設論も一応の実質がありました。
当時は中国の脅威が迫っていなかったし、ソ連の表向きの発表と違い国力レベルの低さが知られていた上に、何と言ってもソ連の正面は欧州であって日本は裏側(いわゆる搦め手)である上に、間に広大なシベリアがあるので、日本にとって危機感が乏しかったことによります。
明治以降のロシアの脅威論は、満州〜朝鮮半島にロシアが触手を伸ばしつつあり、(日清戦争で保護者であった清朝との関係が断ち切られ、李氏朝鮮が独立して大韓民国宣言後、初代皇帝がロシア公館へ逃げ込んだ例を見てもロシアの影響力の浸透ぶりは分かるでしょう)勢力圏にした場合日本にとって直接競り合う関係になるからでした。
戦後は、日露戦争の敗北でせっかく付き上げてきた満州の権益を日本に奪われた遺恨を晴らすために、日本敗戦のどさくさにつけ込んで日ソ不可侵条約を突如破棄するとともに、大挙して満州になだれ込み領土野心を満足させました。
(日本はロシアとの平和条約締結の障害としていつも北方領土返還が解決しないと無理と言いますが、本音はロシアが満州で行った暴虐行為プラスシベリヤ抑留を許せない気持ちが強いのが真の原因です。)
火事場泥棒的に満州地域をせっかく支配下に置いたのに、中国が満州地域を勢力下に置いて国家樹立してしまったので、日本はロシア南下の脅威が軽減されることになりました。
さらに中ソ対立が起きるといよいよ、日本の中ソに対する危機感がいよいよ薄らいだことになります。
しかも中国はロシアの脅威に取って代わるほどの国力がなかったので余計安心仕切っていた状態が続きました。
米国もその安心感で中国を支援してきたものです。
ところが米国の支援を受けた中国が急速に経済力をつけてくると中国は自信を持って米国への挑戦者に名乗りを上げることになったのがこの約10年間と言えます。
今や自国保守に汲々とするどころか周辺に打って出る勢になってきました。
中国が領土野心を持つようになったので、日本にとってはロシアが満州や朝鮮半島支配する場合より危険性が増したことになります。
戦後米国の核の傘の下でぬくぬくと安保ただ乗りしてきた日本が初めて自国防衛の必要性に迫られるようになったのです。
一方で米国にとっては死命を制する決着は核弾頭時代に入っているので、自国防衛のためには、情報収集基地はあった方が良いとしても戦闘力としての前線基地不要の時代に入っています。
むしろ敵基地に近接した前線基地は人的リスクが大きく、マイナスの方が多くなるので、自国兵の駐屯をできるだけ減らして行きたい関係です。
韓国駐留兵をどんどん減らしているのはこの一環ですし、将来的にはグアムの線まで引いてしまう戦略・・日本列島内基地すら維持する必要性がなくなって行くでしょう。
こうなると日本にとり、自国安全を図るために自前の兵力で一定程度まで守る必要性の増大と、応援してくれる同盟が必要な状態となったので、いつまでも安保タダ乗りは許されなくなっています。
普通に考えれば、タダ乗りしている限り米国にリスクが殆どない程度の応援しかしてくれないのでないか・・タダ乗りでなくとも中露相手の時には、米国自身核攻撃受けるリスクあるので、協力できる限度も限られるでしょう。
米国が日本の応援で米国軍自体が尖閣諸島攻防戦に直接出撃した場合、中国が米国からの核の反撃を受けるリスクを覚悟してでも米国を核攻撃すると脅せるか?という心配です。
中国も米国の核反撃が怖いので米国の投入してくる兵器レベルに合わせた反撃で我慢するしかない・・結局は通常兵器・通常戦の優劣で勝負がつくと思われますが、それにしても他国の戦争で瀬戸際状態に米国が引きずり込まれるリスク・・覚悟までしてくれるかは予断を許しません。
何回も紹介していますが、スエズ運河の国有化宣言に頭にきた英仏連合軍がスエズ進駐した時にソ連に大陸間弾道弾をお見舞いすると脅迫されたことがありました。
この時同盟国の米国が「こちらはソ連に核弾頭をお見舞いする」と言い返してくれず、英仏は涙をのんで・大恥掻いて撤退した歴史があります。
米ソのこれまでの介入事例では、米ソがいずれか先に戦力投入現場には米ソいずれも直接軍事投入しない不文律が守られてきました。
直接戦闘に発展するの防ぐ知恵でした。
核弾頭保有の超大国同士では、直接戦闘に参加しないという不文律(核抑止力)があるとした場合、中国の日本攻撃が始まると米国は背後で情報提供、武器供給や作戦指導程度の応援しか出来ないことになるのでしょうか?
最近では、ロシアが数年前にウクライナに侵攻してクリミヤ半島を切り取り、さらにウクライナ本土東部に侵攻作戦を実行し実効支配しても、欧米諸国は経済制裁や停戦斡旋する程度です。
中国が、香港での一国二制度の約束違反があっても外野で騒ぐ程度しかできないのと同じでしょうか?

中朝・修正装置なしの体制3(北方民族の脅威)

山岳民族は守りには強いですが平原地帯に進出して直線長距離距離の大移動能力が低いのが普通です。
いかに中国地域王朝の支配力が落ちて最悪内乱状態にあっても一応大兵力を擁しているので、周辺山岳系少数民族はその一部勢力の応援する程度のことはあっても険阻な山地を越えて広大な中国地域に攻め込むに足る大兵力を移動し、その後長期支配権維持するのは不可能でした。
ベトナムは対米ベトナム戦争後中国による膺懲と称する侵略攻撃を受けて、見事に撃退・勝利していますが、逆に中国に攻め込む力まではありません。
この点は東側の沿海地域の外側も同じです。
唯一一定の規模を持つ日本がありましたが、せいぜい没交渉程度で、世界大帝国を形成したモンゴルでさえ海を渡っての大軍団による遠征が無理だった・・逆からいえば日本からの侵略軍は、帆船利用の豊臣秀吉の時代にはまだ無理・近代動力の出現までは無理だったのです。
西の方は大規模な砂漠によって隔てられているので、この砂漠の彼方に中国を凌ぐ大国(例えばササン朝ペルシャなど)が仮に誕生しても、広大な砂漠を越えて中国の大地を一挙に占領できるほどの大軍移動するのは不可能でした。
北方だけ自然の要害がない上に平原状態のために長距離移動向けの騎馬戦力中心で、一時的に攻め込み広範囲に蹂躙するには適性のあるな民族でした。
これを防ぐために万里の長城という人工物に頼りましたが、これでは守りきれずしょっちゅう北方民族に蹂躙され支配され・王昭君に限らずいつの時代にも美女を送ってご機嫌を取り結ぶなどいつもビクビクしていた関係でした。
モンゴルは西洋まで出かけていったので西の方のイメージですが、元は中国北方民族です。
北方民族は武力の精悍さで侵略してくるだけで、文化レベルや政治巧拙の比較で中原地域人民の支持を受けて支配権力を奪取したものではありません。
中国では異民族支配が繰り替えされましたが、次々とやってくる征服王朝は結局北方種族ですから、文化政治レベルででもは中国地域のレベルに及びません。
彼らは野蛮人扱いされないように、中国古来の支配体制・漢承秦制の原則を漢民族同様に・イヤ、異民族であり少数派である弱みから、漢民族以上に真面目に守って来ました。
中国の王朝で善政を布いたのは原則異民族王朝であり、漢民族時代には人民がいつも酷い目にあっています。
周辺部に成立した李氏朝鮮も異民族王朝の精神で必死に専制体制を真似してきましたが、日本が古代からの独自政治体制を維持し独自文化を発展させていたので朝鮮民族としては負け惜しみ的に?日本を野蛮人としてばかにしていた原因の一つです。
要するに中国人にとって怖いのは少数でも中原の地に侵攻できる武力を持つ勢力・・古くは匈奴・モンゴル→金や清朝、新しくはソ連〜ロシアの剥き出しの武力行使に対する恐怖があっても、正義や文化レベルなどの価値観競争が問題になったことがないのです。
現在アメリカでも中国を文化で圧倒できても、広大な中国地域と巨大人口を擁する中国を直接占領支配する目的の戦争を起こすなどは到底考えられない状態です。
このように中国は文化力で負けても武力さえ保持してれば、どんなヘマな政治をしようと心配がないという体制である点は今も同じです。
唯一例外時代は19世紀中葉からの西欧列強による香港割譲に始まる虫食い的侵略開始だったでしょう。
虫食い的領土侵蝕・・割譲(香港マカオ)上海青島等の租借地〜北方からロシアによる満州進出が始まると一挙全土占領をするには人口その他巨大すぎて外国が手を出せないという安全弁がなくなったことになります。
虎やであれライオン人間であれ、ちょっと小さいものとの喧嘩には勝てますが、もっと小さい細菌には体の大きさや腕力の強さでは戦えません。
これに危機感を抱いたのが昨日紹介した康有為らの変法自強運動→戊戌の変法でした。
武力侵攻以外は怖いもの無しの点は、朝鮮族も同じ価値観でやってきました。
この価値基準によれば怖いのは隣接する中国歴代王朝のみであったのが、19世紀末に至って、清朝に加えて北辺から国境に迫ったロシア帝国でしたし、(当時海を隔てた日本が強国になっていることを理解できなかったでしょう)ソ連崩壊後ロシアへの恐怖はだいぶ背景に退き、中共政権の武力侵攻と米国だけ怖いのであって人民が飢える程度では政権維持に問題がない社会です。
北朝鮮政権では、人民が飢えようが世界最貧国になろうが、武力侵攻さえ防げれば政権安泰ですから、核兵器開発〜保持さえ成功すれば全方位(中国やロシアからも自由)で安全ですから最優先事項になっているのです。
北はすでに経済制裁を受けているので、当面アメリカによる直接の武力侵攻さえ防げればあとは何の心配もない立場です。
核兵器の(実効的運用能力)保持に成功すれば、米国の直接攻撃はできなくなるのでそれまでの時間稼ぎが当面の戦略でしょう。
中国の場合、すでに核兵器の運用能力もあるので米国の武力侵攻がない点で従来(2000年来の)価値基準では米国が何を喚こうと無視していても安泰です。
この絶対安全の地位を北朝鮮も確保しようと必死になっているのでしょう。
ただし、中国の場合には改革開放後国民が豊かさを経験してしまったし国際経済活動に組み込まれてしまったので、国際経済活動から締め出されることに対する耐性が北朝鮮よりも弱くなっています。
今回の香港騒動では米国が香港に対する貿易上の特別待遇廃止を匂わせると、中国が慌てて妥協に動き始めるしかなくなったのとの違いです。
中国国民にとっては米国という強大な相手がいるので、権力の行き過ぎに対する外圧による修正の余地が出てきたのが国民にとっては全く新規なありがたいことです。
この約1週間の香港の騒乱は、国際社会の圧力がなければ中国政府とその意を受けた香港政府が強権突破予定だったでしょうが、騒ぎが大きくなったので流石に一旦棚上げにするしかなくなりました。
パリで燃え盛った黄色いベスト運動やろうそく集会は政権が時期を選んで仕掛けたものではないですが、ここ1週間ほど国際ニュースになっている香港の条例制定騒動は、政権が時期を選んで仕掛けたものですから、中国歴史によるとはいえ政府の国際動向無視の姿勢・オンチぶりには驚くばかりです。
国際動向に対する音痴ぶりは歴代どんな悪政・失政が続こうとも国内的には政権を倒す方法がなかった・外圧など気にした経験がない上に絶対に攻撃されない魔法の兵器・・核兵器を持つ国になったので、外から攻撃を受ける心配が無くなりました。
北方民族・匈奴やモンゴル金〜清〜ソ連などにビクビクしていた時代よりも今の方が安泰です・変な自信を取りもどしたことになります。

中国の脅威6(影響力の膨張)

中国の国内外に対する脅迫・威嚇政治の広がりに戻ります。
中国国内でいくら恐怖政治をしようとも外国に関係なければいいのですが、そうはいかないのが不気味です。
日本や西欧にまで巨大市場の吸引力を背景にして諸外国に中国に都合の悪いことを自由に発言させないことによって、いかに中国が偉大であるかと中国人民の自尊心をくすぐり国内言論弾圧の補償作用に使っています。
一方で統計数字をごまかして実態の数倍以上の赫赫タル成長=国力を宣伝する・・国威発揚で自己満足している姿は、実際に自慢するほどの経済力がないのにあるかのように振る舞う結果、国内経済に無理が来る・・・・裸の王様のようでいつか風邪を引き肺炎になる事態も想定されます。
風邪を引かないための風邪薬?・・軍事や国内監視要員・治安警察費に入れ込んで近隣威嚇や日米等での細胞浸透や工作資金を使う・国内では治安警察で国民監視ばかりしていると長期的には、人材.資源の無駄使いの結果国力が低下する一方でソ連崩壊の二の舞になる事態が想定されます。
国民不満を空母や戦闘機で抑えることはできません。
ただし、中国は人民を無理に抱え込まない・・「政府に不満なら過酷な弾圧をする・・国外に逃げて行くのは構わない」(国内にいなくなれば、刑務所に入れる手間が省けるし反対勢力がいなくなる効果はシベリア流刑ど同じということでしょうか)というのがこれまでの政策であったと書いてきましたが、それでは優秀な順に国外移住していき全般的民度が下がる一方になるでしょう。
ただし、国外移住者のうち経済活動や学問その他で成功した(かつ反政府活動しない)人材だけを破格の金額で呼び戻す方が経済的という政策です。
ちょうど数百回数千回の実験失敗の結果ようやく開発成功した新薬その他を成功後にサイバーテロで剽窃したり合法的に買収するのと同じ発想です。
一流大学でも生徒みんなを大科学者に育てられるのではなく、そのうち一粒の人材だけが大きく育つのですが、中国は育てる苦労をしない・無駄玉を打たないでうまく育った人材だけ引き抜けば良いという発想です。
クズの人材は中国で責任を取らずにそのまま移住先のアメリカ等先進国で刑務所に入れられたり、生活保護などを引き受けてもらえば良いのです。
この点がソ連・スターリンの収容所列島政策と違います。
習近平氏が、今は権力確立期の非常時なので自分に「楯突くとどんな目にあう分からないぞ!」という勢力誇示のためにやっているだけであれば、権力が確立すれば国家長期発展のために粛清を緩めて行くことを期待できますが・・。
歴史を見ればどこの国でも政権樹立当初は武力が必須ですが、落ち着けば文治政治に移っていくのが普通です。
中国の場合そのような変化ができるかです。
猜疑心の強い個人資質による粛清の場合には、スターリンのように絶対支配を確立したのちも、権力の基礎が粛清にある以上余計猜疑心の塊になって行く・・この種のことをやりだすと報復が怖くてやめられないのが普通です。
そうなるとソ連型の国家社会の崩壊まで突っ走るしかないでしょうが、フルシチョフやゴルバチョフのような勇気のある人材がでないと簡単に百年単位で専制・恐怖支配が続くだけではなく、北朝鮮と違って国が大きい分周辺諸国まで巻き添えを食う可能性があります。
現在すでに中国市場に参加したいならば、「知財や技術移転しろ」と中国市場参加者限定ですが強要が始まっています。
北朝鮮のような小国でさえ核兵器を持っているとどうにもならないのですから、中国がもっと強くなって、中国市場に参加したくない企業や国に対しても「お前のものは俺のもの式」の強要を始めるようになると世界は大変です。
中国に行った人がスパイ容疑で検挙され始めましたが、この程度の脅しでは収まらず、日本国内にいる日本人にまで中国国内法違反の犯罪容疑をでっち上げて、日本に来た中国軍人や治安要員が我が物顔に闊歩し、白昼公然拉致していく社会の出現になると大変です。
実際に今の香港では、これが公然と行われています。
香港の中国支配のあり方を批判する本を出版していた書店主が次々と失踪した事件です。
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/hongkong_b_10607462.html
2016年06月23日 00時58分 JST | 更新 2017年06月22日 18時12分 JST 新潮社フォーサイト
香港でまた「1国2制度」に対する香港人の「信頼」を揺るがす問題が起きている。香港の書店「銅鑼灣書店」の関係者5人が失踪し、中国国内で長期拘束されていることが明らかになった問題で、釈放されて香港に戻った同店店主の林栄基さん(61)が6月14日、公の場に姿を現して記者会見に応じ、赤裸々に拘束をめぐる実態を語った。
拘束された5人のうち、出版社オーナーの桂敏海さんを除く3人は林さんより先に香港に戻っているが、彼らは口を閉ざして実情を明らかにすることを拒んできたので、当事者の証言は初めてとなる。拘束中に中国のテレビで流された「告白」のビデオの内容は、「脚本があり、監督もいた」として、事実ではなく、強制された演技だったとも語った。」
中国は属国と見なせば、遠慮会釈なく実力行使に入る歴史があります
李氏朝鮮末期には、政治の黒幕であった大院君が清朝の軍閥に拉致されたことを紹介したことがあります。
壬午事変(じんごじへん)1882年7月23日明治15年に関する以下の記事からの引用です。
http://hinode.8718.jp/korea_chronology.html
「興宣大院君らの煽動を受けて、朝鮮の漢城(ソウル)で大規模な兵士の反乱が起こり、政権を担当していた閔妃一族の政府高官や、日本人軍事顧問、日本公使館員らが殺害され、日本公使館が襲撃を受けている。
反乱軍の標的は閔妃に向けられていたが、閔妃は官女に変装し官女に紛れて逃げきり山奥に隠れた。
閔妃は高宗に、国王の名を以て宗主国である清国に軍乱の鎮圧を目的として清国軍の派兵を要請させた。閔妃は権力奪還・大院君にたいする復讐の為に他国の軍隊を国内に招き入れてしまうという、大きな間違いを犯してします。亡国へと導く悪女と言われても仕方がない行為である。
清国の李鴻章により袁世凱が援軍として派遣され、反乱軍は鎮圧された。大院君は清に連行され李鴻章による査問会の後、天津に幽閉され、反乱が失敗に終わる。」
李氏朝鮮の場合にはみづから清朝の介入を求めたからですが、元々属国として身長の事実上にの支配下にあったからこういうことになるのです。
事実上支配下に入ると国内に中国の息のかかった細胞がいっぱい入り組んでいるのが普通ですから、李氏朝鮮の閔妃のように中国軍を導入しようとする勢力が育っているのが普通です。
以下対中関係を背景にした・・工作浸透原発稼働停止運動と地域エゴに戻ります。
9月5日「地域エゴと民族一体感の相反性1」〜9月10日「先住民権運動の背景3(ロシアの領土欲1)」等の続きです。
原発誘致に際しての反対運動もこの種の地域エゴが含まれていましたが(原発事故の頃に連載しました)一応被害を負担してもらう意味で一定の国民理解がありました。
各種交付金はそのための前金でもあったわけですが、福島と違い新潟ではまだ事故も起きていないのに、相手が巨額投資してしまっている段階で「不安だから」と稼働停止を求めるならば、不安を理由に前もってもらっている前金を返すべきではないかという意見も出てきます。
不安料とすれば今も不安がある・福島事故によって安全神話が崩れた・・不安がより一層強まったという論理とすれば、返す必要がないとも言えます。
それならば、・「不安解消策を講じろ・不安料金をもっと上げろ」それまで稼働に反対するのはルール違反ではないという論理でしょう。
そうはいっても、ある程度の危険承知で一旦巨額資金をもらっている以上はある程度の不安はもともと予定していたことじゃないのか?ある程度我慢すべきでないかと思いたい人も多いでしょう。
政府や東電完全安全」と言っていたしそれを信じていたのに・・と言うならば、そもそも不安料の支払い不要だったことになります。

中国の脅威5(恐怖政治と世襲化)

中国としては、「中国はこわいぞ!」という強面の側面は日本でいくら宣伝してくれても良いが、時間をかけて日本にメデイア等に浸透して国内分断作戦を継続・・コミンテルン政策の継続にこだわっている国であることまでは知られたくないのでしょう。
中ソ対立に戻りますと、政敵を粛清するかどうかは国内治安問題であってソ連がやめても中国の国内運営に関係のないことです。
ソ連の国内治安維持のあり方に過ぎないことに関して、中国が戦争の危機を冒してまで批判し対立する必要がありません。
本当の対立は、国際共産主義運動方針・世界革命路線に関する根本的対立にあった・この場合ソ連の新方針に従うか無視するか2択しかないので深刻な対立になります。
ソ連の国際戦略変更に従わないとなれば、共産主義国家は一枚岩という世界宣伝に大きな亀裂が入りますので、ソ連は解散したとはいうものの事実上コミンテルン/コミンフォルムを通じた世界共産主義運動の総本山であり、指導者・ヘゲモニーを失うので黙認できません。
中ソ対立は、共産圏内限定とは言えかなり力をつけた中国が、ソ連の威信に真っ向から挑戦する・・今で言えばさらに力をつけた中国が世界覇権を握るアメリカの「鼎の軽重」を南シナ海で問おうとしていることの走りだったことになります。
中国の粗暴な挑戦に世界の警察官を自任してきたアメリカがどこまで格好を付けられるかでしたが、時々埋立地近くを航行するくらいしかできない・・強盗被害者が110番しても警官が時々巡回するだけで強盗を排除してくれないのでは強盗のいうとおりに従うしかない・・フィリッピン始め周辺国は中国のいいなりになるしかないでしょう。
南シナ海問題でアメリカはこの程度しかできない・・中国はアメリカが怖くないことを世界にアッピールする・・この辺の意図は北朝鮮の今回の挑戦にアメリカが何もできないのと同じです。
スターリンは表向き世界革命戦略を放棄していましたが、内実は違っていました。
中ソ対立までの世界の共産主義活動家は、モスクワの指導/指令に従っていました。
ベトナム戦争を指導したホー・チミンの逸話は以下のとおりです。
以下はスターリンに関するウィキペデアの記述からです。
「猜疑心の強いスターリンはホー・チ・ミンと初めて出会ったとき、スパイと疑っていた。ホー・チ・ミンはスターリンに会えた感激の余り、スターリンにサインを求めた。スターリンはこれに不承不承に応じた。
しかし、部下に命じてホー・チ・ミンの留守中にサインを強奪して取り戻し、ホー・チ・ミンが、サインがないことに気付いて慌てていた様子を聞いて喜んでいたという。」
日本のメデイアは中国贔屓が強いので、中ソ対立の本質・・スターリン批判後も中国に限っては従来のコミンテルン・・資本主義国に細胞を根付かせて撹乱して行く・国際展開思想を捨てていないことを一般に知られたくないので粛清政治の決別に反対したことだけを紹介しているのでしょうか?
実際にはルーズベルト政権中枢に食い込んでいた事実を見れば、コミンテルンの世界革命達成(という名のソ連による世界制覇)の野望を捨てていなかったこと・・西欧諸国へ浸透するタメに表向き解散して安心させる方便性は明らかでしょう。
浸透作戦は憶測の域を出ないので、証拠・裏付けの必要なニュース世界ではデモ等の弾圧や粛清しか出ませんが、この動きだけ見てもスターリン主義固執→文化大革命という吊るし上げ政治・気に入らない者を吊るし上げて失脚させる政治に発展した流れが中国で続きます。
毛沢東崇拝復活を目ざし汚職退治という名目で粛清に次ぐ粛清をして政敵を抹殺して来た習近平氏の路線は、まさに粛清の鬼スターリン政治再来を目指すものでしょうか。
スターリンは反党分子という名目で何十万という人材を処刑してきましたし、富農という烙印で何百万もの農民をシベリア流刑し称す民族の強制移住をしてきましたが、今のところ習近平氏の党内粛清の方法は汚職・共産党規律違反という名目の政敵処刑限定ですが、ほぼスターリンと同様です。
スターリンの処刑の酷さはスターリンに関するウィキペデアによれば以下の通りです。
「キーロフが暗殺されると、スターリンは、トロツキー、カーメネフ、ジノヴィエフを含めた自身の反対勢力者たちを、陰謀に巻き込むための構想を抱いた[38]。調査と裁判は拡大していった[39]。1934年1月の第17回党議会においては過半数の代議員が彼の言いなりであった[35]。見せしめの裁判あるいはトロツキーやレニングラードの政治局員セルゲイ・キーロフの暗殺のあとに法律を改定する[35]。この党大会で選出された党中央委員会の委員および中央委員候補139人のうち、98人が逮捕・銃殺された。党大会の党員1,956人のうちの1,108人が、「人民の敵」(ロシア語враг народа, “vrag narodaヴラグ ナロ-ダ”)(en:Enemy of the people) という烙印を貼られ、秘密裁判で死刑判決を受けると直ちに処刑された。スターリンは、裁判所に対して「人民の敵」と判断した者には死刑判決を下すこと、そして直ちに死刑を執行するよう命令していた。取り調べの際には「肉体的圧迫」、すなわち拷問を用いることを認め、罪を認めない者には拷問によって力ずくで「罪」を認めさせた。
公開されたソビエトの公文書と公式のデータによれば1937年には353,074人、1938年には328,612人(歴史家はほぼ700,000人と見積もっている)[51]もの「普通の」ソビエト国民…労働者、農民、教師、司祭、音楽家、軍人、年金受給者、バレリーナ、乞食が処刑された[52][53]。一部の専門家は、公開されたソビエトの公文書は、数字が控えめか、不完全か、頼りにならないと考えている[54][55][56][57]。例えば、ロバート・コンクエストは大粛清で処刑された人数は681,692人ではなく、その約2.5倍であったと示している。」
粛清の実行者である秘密警察職員ですら例外ではなく、ゲンリフ・ヤゴーダからニコライ・エジョフ、ラヴレンチー・ベリヤへと長官が変わるなかでNKVD職員たちも何万人と粛清された。例えばエジョフの場合、NKVDを掌握した時点で前任者であるヤゴーダやメンジンスキーの息がかかった職員を大勢粛清して組織内での自分の立場を強化している。ほどなくヤゴーダ自身も粛清されることとなるが、エジョフも最終的にはヤゴーダと同じようにベリヤに取って代わられ、粛清されている[63]。ベリヤも権力を握った時点でエジョフと同じようにNKVD内のエジョフ派幹部らを粛清しているが、ベリヤ自身もスターリン死後の権力闘争で敗れて粛清されている。当然のように、この時もNKVD内の親ベリヤ派と目されていた側近達が新体制によってベリヤと共に粛清されている。」
スターリン治世下では、高官が代わるととその部下の粛清へと際限ない殺戮の連鎖になってしまいました。
中国でも習近平政権になると、江沢民の側近・あるいはその人脈と目された政府・党幹部あるいは軍高官が党規律違反という名目で次々と失脚しています。
この小型版が、民主主義国家であるはずの韓国大統交代の都度行われる前大統領の追及騒動です・民主政体か否かによるのではなくまだ民度が大人の知恵にまで成熟していないということでしょう。
スターリン恐怖政治の再来のように見えますが、中国に場合には毛沢東時代の粛清を反省して粛清連鎖を断つために中国共産党中央政治局常務委員などの高官に対してはどんな追及もしないという不文律がおこなわれてきましたが、習近平氏がこれを破ってどしどしと粛清を始めました。
政治局常務委員に関するウィキペデアの記事からです。
「党内の権力闘争の激化を避けるために最高指導部である政治局常務委員経験者の刑事責任は追及しない党内の不文律「刑不上常委」があり、文化大革命終了以降は政治局常務委員経験者が刑事訴追された例はなかったが[6]、2015年4月に周永康の刑事訴追されたことが中国国営メディアによって報じられ、「刑不上常委」は破られた。」
以後軍のトップその他次々です。
習近平氏は、元どんな功績のある人でも粛清できる権力を行使し始めたことになります。
一旦歯止めのない粛清を始めると任期満了後の仕返しが怖いので終身化するしか無くなる・その内その周辺人物にとっては、終身権力者死亡後次期権力者による報復が怖いので、取り巻きが先代からの権力を維持できる無能な2代目を担ぐ世襲制を望むようになります。
こうして出来上がったのが北朝鮮の将軍様世襲制です。
もしかすると中国は北朝鮮にいろんなことをやらせて世界の反応を実験しているのかもしれません。

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