利害調整能力2

宗家の源為義自身ヘマの連続だったようなイメージでしたので小さくなっていて、公卿社会の嫌がらせの矢面に立った経験がないので、頼みの摂関家が力を失うとどこの国にもある宮廷内の複雑な争いに自分で関わるようになりましたが、うまく立ち回れなかったのでしょう。
こうした時間経過と、摂関家の弱体化目的で動いていた白河〜後白河の流れの中で源氏に対する当て馬として平家贔屓されてきたことに対する摂関家の冷ややかな目の中で台頭した伊勢平氏に比べれば、源氏一門は宮中での陰湿な嫌がらせの経験が少なかったでしょう。
平氏の方が宮廷工作では一日の長・有利に立ち回る能力が磨かれていたと思われます。
清盛が播磨守〜安芸の守など行政職を歴任していくのに対して義朝は左馬頭といういわば軍事部門に登用されたのも実は適材適所だったように見えます。
昨日紹介した通り、子供の頃の頼朝の官位も兵衛系です。
物語しか読んだことがなく史実か否か不明ですが、悪源太義平にしろ、為朝にしろなんとなく地方で粗野に?跋扈するにふさわしい猛者で、都人相手に虚々実々のな駆け引きになじまないイメージです。
木曽義仲が京都に出たときに都人の笑い者にされる場面・・人の良さが出ていますが、一方で「木曽殿最後」で見えるように主従の誓いの美しさ・・武士社会では心の通う善き人であったに違いないでしょう。
武士とはこういうものだ・貴族の真似をする必要がないと開き直り、(新しい時代到来の明らかにし、)官位を受けなかった上に武家の棟梁として鎌倉に本拠を構えた頼朝の偉大さです。
清盛に戻しますと、保元平治の乱の処し方の大成功によって都での揉め事の解決には清盛の武力に頼るしかない状態になった以降、ちょっとした政変のたびに「〇〇の守」等の官職を平氏一門がほぼ独占的に就任した上に、旧公卿勢力もなお侮れないので彼らにも(和歌を習うなど)気を使わねばならないので、貴族化する一方で地方武士にとっては裏切られた気持ちでナオのこと不満です。
この恨み節の代表的表現が地下人の代表ではなくなったという「平家の公達」という呼称でしょう。
韓国文在寅大統領の弱みは、労組支持にたよるためにその期待を裏切れない(労組の場合、次世代ホープではなくかげり行く勢力ですが・・)のと同じで贔屓の引き倒しになってきたのです。
不満武士層を支持勢力にして挙兵した頼朝は、政権を事実上掌握すると真っ先に?問注所を作ったのは、この塩梅がうまくいかないと政権がもたないことを知っていたからでしょう。
これまで何回も書いてきましたが、政治とは利害調整が本務です。
政権批判だけで政権を運よく奪いとっても、その後の利害調整能力がないと政権を維持出来ません。
日本野党や韓国の与野党は、あちら立てればこちら立たずの利害調整能力がないのが欠点です。
自社2大政党・55年体制のころには、水と油の二大政党では、いつまでたっても政権交代ができない・・英米並みの方向性が同じ与野党が必要という議論が一般的でした。理念が違うから政権交代できないのではなく、一方は批判だけで具体的な利害調整をしたことがないからいざ政権をとってもどうして良いか判らず右往左往するのが目に見えていたので、国民は怖くて任せられません。
民主主義を守れ、平和主義・国民を大事にする政党というお題目だけで具体的政治をできるはずがないのです。
韓国の場合、国民が成熟していないので大統領を選んでもすぐに不満で我慢ができなくなるのが難点です。
韓国歴代大統領は、任期満了近くになるとどうにもならない不人気穴埋めのために反日を煽るしかなくなるのが、任期満了直前の常套手段になっていました。
日本は困った国だと思いながらも仕方ないか!と相手にしないできたのですが、大統領が変わる都度前大統領より一歩ずつ過激化しないと国民への訴求力がないので、過激化の限界がきたので、李明博元大統領がついに竹島上陸の他に禁じ手の天皇攻撃まで始めたので、さすがに日本が騒然としました。
その大騒ぎを起こして任期満了になったあとを継いだ前朴大統領はさらに一歩進めて慰安婦騒動を国際問題に拡大・告げ口外交を繰り返したので、戦後初めて日本も反撃を開始したことにより国際世論動向では日本優勢になってきました。
米国が仲介に乗り出したので、(せっかく日本優勢になっていたのに・・不満な人が多かったので?)日本は「不可逆的」という修飾語付きであれば合意しても良いという条件を出して韓国も不名誉な条件をつけられても(完敗よりは良い?ということで)ようやく日韓合意となりました。

オーナーと管理者の分配4(利害調整能力1)

平治の乱以降の政治は、清盛の意向によるしかない・・武士の力なしに何も決められなくなった事実が明らかにされました。
こうなれば従来貴族層有利な裁定が多かったと思って不満に思っていた武士団の期待が高まります。
ところが清盛はいきなりの政権奪取だったのでこの辺の準備がなかったか?気が付かなかった結果か不明ですが、先ずは平家一門の官位昇進中心で「平家にあらずんば人にあらず」とまで揶揄されるほど身贔屓が露骨すぎたようです。
信西が身内の栄達に邁進した結果、院政派と天皇派の争いを超越した公卿社会共通の怨嗟の的になった教訓を活かさなかったのでしょう。
その上に、平家以外にも少しは気配りしたとしても官位斡旋くらいしかなかったので、官位昇進など関係ない地方武士団の失望を買ったでしょう。
頼朝はこの点を教訓にした結果か?天下を掌握してからも自分の官位昇進を全く受け付けない・・官位返上まではしないまでも朝廷の権威無視?のまま・のちに鎌倉殿と言われるまで左(すけ)殿と言われています。
ちなみに、三条殿とか鳥羽殿とかいうのは外部からの呼称であり、鎌倉殿と言うのは、鎌倉以外から見た表現・・朝廷周辺の外部からの文章表記のことで、鎌倉幕府内・・特に政子が鎌倉殿と言うはずがないので、一般には死亡まで「すけ」殿が普通であったでしょう。
ちなみに佐殿とは頼朝が子供の(11〜2歳)頃平治の乱で義朝が賊軍になるまでのホンのわずかの間に任じられていた官名・・右兵衛権佐のままということです。
清盛に戻しますと、官位斡旋に関しては源頼政の不満を吸収するために四位から三位(殿上人)に引き上げたことが知られていますので、源三位頼政に関するウイキペデイアによると以下の通りです。

のぼるべきたよりなき身は木の下に 椎(四位)をひろひて世をわたるかな
『平家物語』 巻第四 「鵺」
という和歌を詠んだところ、清盛は初めて頼政が正四位に留まっていたことを知り、従三位に昇進させたという。
史実でもこの頼政の従三位昇進は相当破格の扱いで、九条兼実が日記『玉葉』に「第一之珍事也」と記しているほどである。清盛が頼政を信頼し、永年の忠実に報いたことになる。この時74歳であった。
翌治承3年(1179年)11月、出家して家督を嫡男の仲綱に譲った。

もともと平氏は源氏に比べて、地元密着性が低かったのかな?
(平将門の乱は平氏同士の調整能力不足で起きたものでしたし、頼朝挙兵に馳せ参じたた千葉氏も平氏でしたが、相馬御厨の管理権争いで平家が当てにならなかった)
その代わり宮廷多数派工作に慣れていたので天皇家同士、藤原氏同士の争いにうまく適応できた面もあったでしょう。
保元平治の争いは、上皇と天皇の二大勢力の他に旧来勢力というか、公卿旧勢力不満の三つ巴でした。
平家物語を読むと源氏はいかにも坂東武者そのままで垢抜けないイメージですが、源氏は摂関家の下で武士の分際を弁えて忠実に振る舞ってきた・・各地荘園で地方の揉め事を処理する経験を積み実務能力に長ける→その分京での公卿相手の複雑交渉不慣れだったでしょう。
(伊勢)平氏の場合、忠盛の時からジワジワと貴族社会に足を踏み入れていた・その分叩かれ嫌がらせされましたが、複雑な争いが始まると過去に公卿社会に揉まれた経験が生きてきます。
源氏は摂関家の良き忠犬としての役割に特化してきたし、たまたま当時不祥事が続き小さくなっている状態で波乱の時期に遭遇しました。
ウイキペデイアの記事引用です

源為義(みなもと の ためよし)は、平安時代末期の武将。祖父は源義家、父は源義親。叔父の源義忠暗殺後に河内源氏の棟梁と称す。なお父は源義家で、源義親と義忠は兄にあたるという説もある。通称は六条判官、陸奥四郎。源頼朝・源義経らの祖父。
当初は白河法皇・鳥羽上皇に伺候するが度重なる不祥事で信任を失い、検非違使を辞任する。その後、摂関家の藤原忠実・頼長父子に接近することで勢力の回復を図り、従五位下左衛門大尉となって検非違使への復帰を果たすが、八男の源為朝の乱行により解官となる。保元の乱において崇徳上皇方の主力として戦うが敗北し、後白河天皇方についた長男の源義朝の手で処刑された。

メデイアの事実理解能力3

事務所にきた人に事実関係を聞くときに「意見ではなく事実を教えて欲しい」と言っても、なかなか事実を説明できないので、こちらから一問一答的な質問をすることがあります。
質問に事実ではなく意見・・自分なりに理解した熟語を言いたがるので、生の事実がさっぱり出てこないので別の角度から聞きなおすことがよくあります。
この数日間でも給与差押え→債務整理事件の相談で、事件の推移からして債権者の同意が無理そうな話のために「給与再生手続き」しかできないかも?と(相談者もその希望できたので)方向が決まった結果、職種(今何をしているのか?」)を聞いたところを「正社員です」というので支給総額年収の説明を基準に大雑把な手取りを推定して給与再生の場合の支払い総額(可処分所得の2年分基準)について大まかな想定を説明していたところ、翌日紹介者からの説明では保険外交員で別に確定申告しているという情報を得て驚いたばかりです。
それならば、源泉徴収票基準でなく、確定申告の収入(経費を引いた課税対象額)が基準になるので可処分所得が大幅に減ることになってまるで違ってくるし、収入の変動率が重要になるなど検討課題・出してもらう資料がまるで違ってきます。
例えば、いろんな事件で何をしているのかを聞くと会社員、役員、自営などと言い切ってしまう人が結構います。
具体的事件では、統計上の区分は意味がない・・会社員や公務員でも現場系もあれば、大手のホワイトカラーもあるし、役員といっても5〜6人の従業員の不動産屋や蕎麦屋も、数人の土木会社、蕎麦屋もあるなど・・これでは離婚事件等で必要な具体的な仕事や生活状況がさっぱり不明ですが、その単語が今相談しようとしている事件状況説明に意味のある単語かどうかの区分けが出来ないというよりは、(実態を知られたくない?)格好つけたい心理の方が強い印象です。
メデイアが平均賃金と言わずに「実質賃金」と言ったり、労働分配率が下がったと言って誤ったイメージを刷り込もうとしているのと同じ傾向です。
メデイアの場合イメージだけ振り撒けばその方向に刷り込み可能なレベルの人だけでも信じ込んでくれれば、(低レベル裾野の方が人口が多いので)政治的影響力としてはそれで成功です。
個々人でもちょっとした挨拶ならば「当たり障りのない」自己紹介で良いのですが、特定事件の弁護士相談の場合に、当たり障りのない=意味のない事実?「会社員です」と説明されても時間の無駄です。
要するにTPOが分からないということでしょう。
債務整理の場合には、全部関連資料を持って来てもらい、こちらで資料・事実記載を直接見て質問した方が効率が良いのですが、これを持ってこないで半端に格好つけて説明しようとする人は、間違いのまま途中まで進んでしまって途中で修正するなどのリスクが高まります。
医療でいえば、医師の直接診断や検査を受けないで自分の知っている知識で状況説明して、どういう手術が必要かどうかの診断を求める患者のようです。
統計レベルの大雑把なくくりでは正規か非正規かの区別で良いのですが、給与再生相談であれば、収入の安定性と支払額を決める基準として可処分所得が重要なのでその関係の分類が重要になります。
相談者としては、給与所得者再生手続きのために「正社員扱い」だという点を強調したかったのでしょうが、一方で可処分所得計算上会社からの支給額で計算すると債務全額払う結果になるのと、どうしてそんな巨額の可処分所得のある人が「いま一文無し」というのか不自然なので事件をやるには債務発生原因をじっくり聞く必要があるとは思っていました。
相談者は「全額払ってもいい」と言うのですが何か裏がありそうで、もうちょっと資料を見ないと「分からない」個人再生、給与再生どちらをやるにしても「その方向の準備はほぼ共通です」ということでその日は終わったら、翌日の電話で保険外交員とわかったので、たちまち表向きの年収とは違い苦しい実態が理解できたのです。
そうなると源泉徴収票も必要としてもまずは確定申告控えの方が先決的に必須です。
同じ単語でも使う場面によって違います/事案解決に必要な概念は「正社員」=「会社から払われる名目の金額」ではなく、経費自分持ちの「保険外交員」という具体的職種であり税務申告上の所得だったのです。
債務整理に必須の家計収支の具体的記載を出してもらえば、自ずから経費自分持ちの実態も見えてくる・医師ならば、患者のいう独自病名より検査すればすぐにわかるのですが、こうした資料を見てもらう段階に入る前に結論を知りたいというせっかちな意識がこうさせるのでしょうか。
事件によって、何が必要な事実か不明のまま、自己判断の定義(上記例で「正社員で源泉徴収票もあります。」で質問されると、(熟語には内容に幅があるので話す人によって使う意味が違います)処理が却って複雑になります。
今でもこういう例がなくなったわけではありませんが、平成に入ってからは国民のレベルが上がったらしく、言語能力の低い人がグッと減ってきました。
特に40台以下(私の子供世代)では人種が変わったかのように優秀というか、論理説明できるし理解能力もよくなってきました。
朝日新聞と日経の比較については、昭和61年に購読を切り替えた頃の感想を6月20日に書きましたが・・それから30年以上経過で今では日経新聞も一般人のレベルアップについていけない・・事実分析能力あるいは語彙の定義ではイマイチになってきたようです。
日経のレベルが下がったというよりは、国民の経済情報に求めるレベルが上がっているのに、いまだに半端な熟語(を知ったかぶり)で煽れば読者をごまかせると思い込んでいる点が不信感を煽るようになった原因です。
報道は事実報道に徹して国民を誤魔化そうとしなければ良いことですが、悪意で曲げて報道しているのではなく、もしかしたら昭和年代の生き残り?の事実把握能力の低い人たちが、メデイア界の主流になっているのではないか?の疑問で書いています。
理解力レベルの低い人たちがメデイア界に就職する時代が続き社会のレベルアップについて行けていない印象です。
ただし文化欄は専門家が直接執筆しているらしく、レベルが高く、家族みんなで気に入っています・念のため・・。
(ただし、今のところ、私のレベルが低くてちょうど日経の編集者のレベルにマッチして満足しているだけのことですから・・数年すれば同じレベルの繰り返しでは満足しなくなるでしょう)
袴田再審事件に関してメデイア報道と6月17日引用した郷原氏のhttp://agora-web.jp/archives/2033195.htmlの紹介との比較に戻ります。
筆者は自己紹介によると権力寄りというよりは、これまで数々の冤罪事件を手がけてきた反権力?弁護士による解説らしいです。
※ただし、ウイキペデイアで見ると元検察官で弁護士になってからも政府の委員などになっているらしいですので念のため・・。
こういう人権派?弁護士からまで、無茶なこじつけ?結論と批判を受けるようになったのでは、朝日新聞も終わりに近くなった印象です。
こういう無理なこじつけに酔っている人は、社会の中で(社民党支持層プラス立憲民主支持層レベル?)10%あるかないかでしょうから、これでは全国紙としての役を果たせなくなる日が近いでしょう。

メデイアの事実報道能力4(労働分配率)

好景気なってからいきなりこういう意味のない統計を毎月のように大規模報道するようになったのは、好景気というが庶民に恩恵がないとか、庶民は実感しないという政権批判意図としか見えません。
合理的根拠のある政権批判は必要ですが、意味のない指標を持ち出すのは、国家をより良くするための批判報道ではなく、批判のための批判・なんでも反対の業界になってしまっているように見えます。
私だけでなくいろんな人がこの種の反論をしているうちに、日経は流石に恥ずかしくなったのか大規模主張・・この種の意見記事はなくなりましたが、ネットで見るとまだ実質賃金が下がったことが、いかにも重要指標であるかのような報道が続いているようです。
例えば今でも以下の通り毎月のように報道しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30261420Z00C18A5EE8000/

実質賃金4カ月ぶりプラス 3月、人手不足で一時金増
経済2018/5/9 20:00

https://www.asahi.com/articles/ASL6562PCL65ULFA02Q.html

4月の名目賃金、0、8%上昇 実質賃金は横ばい
2018年6月6日10時27分

以下は
上記の通り、未だに続く実質賃金低下報道に対する批判意見です。

いまだに「実質賃金ガー」って言っている人いるんですね

いまだに「実質賃金ガー」って言っている人いるんですね
厚生労働省が発表した2017年の実質賃金の統計が、前年比でマイナス0.2%となり、案の定「アベノミクス失敗」というつぶやきがいたる所で見られます。
ですが、実質賃金とはどのような性質を持っているのか。それをきちんと理解していれば↓の様な批判は無くなるんじゃないかなと思います。
実際には国民の所得は増えていますからね。
”実質賃金が2年ぶり下落 「アベノミクスっていつ結果出るの?」という声が相次ぐ
2018/2/8 キャリコネニュース

https://news.careerconnection.jp/?p=49834

『厚生労働省が2月7日に発表した毎月勤労統計調査によると、2017年の実質賃金は16年に比べて0.2%減少し、2年ぶりのマイナスになった。名目賃金にあたる現金給与総額は0.4%増加したものの、物価の伸びに賃金の伸びが追い付いていない状況だ。
この報道を受け、「アベノミクス失敗」「私が死ぬまでにアベノミクスって結果出るの?」と経済政策の見直しを求める声が相次いでいる。(後略)』
実質賃金が低下=国民が貧しくなっている”
実質賃金を強調する人はそう主張しているわけなのですが、これらの方々には実質賃金が平均賃金であるという認識がゴッソリと抜け落ちている感じがします。
例えば、この場合 (月収です)
Aさん、Bさんがそれぞれ月収40万円、30万円で働いていました。この時の平均の賃金は35万円です。
そこに翌年、新たにCさんが月収20万円で雇用された場合、この三人の平均賃金は30万円と、Cさんが新規に雇用される以前に比べて5万円も減ってしまいました。
さてこの場合、Aさん、Bさん、Cさんは平均賃金が下がったことにより、貧しくなったのでしょうか?」

上記意見は4〜5年前から私が書いてきた主張と同意見というか事例の上げ方までほぼ同じです。
景気が良くなって失業者や無職待機中の主婦や学生が15〜20万前後の非正規に就職すると、全労働者の平均賃金(平均年収400万前後とすれば)が下がるのはあたりまえのことです。
家庭でいえば、夫一人の月収50万の所帯で無職専業主婦が月20万でも働くようになれば、夫婦2人の平均月収は35万に下がりますが、家庭の合計収入は50万から70万に増えるのでその家計としては格段に豊かになります。
まして非正規で夫の月収30万前後しかない子育て中家庭にとっては、保育所に預けて妻が1日の半分でも働いて月収10〜15万円前後を稼げれば生活水準アップの恩恵は桁違いです。
こいう簡単な仕組みを無視して「実質賃金」と意味深そうな語彙を利用して「 専門家が研究した統計だろう」と国民を思考停止に追い込み・「実質的賃金が下がっているのか?」と国民不満を煽ろうとしているように見えます。
完全雇用になっても更にに好景気が続くと非正規等の賃金相場があがるが(生産性があがったのではないどころか、半人前でも採用するしかない企業が出てくる結果)運賃や居酒屋等物価も上がるので、実質購買力はプラマイゼロが理論数値でしょう。
例えば、半人前の人が失業状態でゼロ収入から月収10数万円になれば彼にとっては、物価が1割上がっても実質賃金は前年比大幅増ですから、人や職種によって短期的には若干の凸凹が起きます。
雇用者増が止まる→人件費アップ→コストアップ→物価上昇=ここ1年〜半年前後の単価アップでも、超短期非正規雇用に頼る業種・例えば居酒屋やコンビニ等と、工場の期間工のような中期的業種とは効果の出る時期が違いますが、いつかは物価に追いつかれます。
1年半後に物価が追いついた時にその年も賃金アップしていれば別ですが、その時には賃上げが終わっていると、同時期の賃金と比較すると賃金は昨年からアップしておらず、物価だけ何%アップですから物価調整後の実質賃金下落と表現されます。
こうして「好景気なのに庶民には実感がない」(「市民感覚があ〜」とメデイアの一方的断定報道の潜在的した支えをしているのです。
街角景気・・千葉の繁華街を歩くと多くの現場系若者が街に出て元気に楽しんでいます。
実質賃金低下論が私のようなネット批判によって(メデイアの言論市場独占支配が破れた結果)化けの皮が剥がれてくると、労働分配率が下がりつづけていると主張が始まりました。
実質賃金低下論は、好景気の恩恵が庶民に行き渡っていない根拠として?始まったのですが、化けの皮が剥がれてきたので次に始まったのが労働分配率低下論です。
労働分配率は資本収益回収額と人件費の比率のような語感ですが、これも実質賃金論同様に実は違うのです。
労働分配率とは付加価値に占める人件費比率ですから、省力化投資あるいは補助器具等で弱者も働けるようなロボット等の装備が増えると付加価値に占める人件費率が下がります。
設備投資をすればするほど労働分配率が下がる(就労率アップが限界になってきた→人件比率アップ→価格転嫁を避けたい企業努力としての「工程短縮」等の投資ですから)のは当たり前すぎることです。
この辺の説明はJune 26, 2017「労働分配率の指標性低下2(省力化投資と海外収益増加)」で書いています。
このように朝日よりマシとはいえ、日経新聞も経済統計の意味を誤解しているのか、意図的に国民に不満を持たそうとしているのか不明ですが、(国民が貧しくて苦しんでいるという主張をさすがにしなくなりましたが、)厚労省の毎月の発表という形の大規模報道を続けて変な方向への誘導が目立ちます。

メデイアの事実報道能力5(実質賃金低下論のマヤかし3)

ついでに、物価変動について書きますと、高額ブランド品の価格変動は景気動向の末端現象としては意味があるでしょうが、中間層以下の生活感指数としてごっちゃに報道する意味がないでしょう。
庶民には・・・という視点で報道するならば、そんな論説の垂れ流しよりは、コンビニ単価やコンビニバイト時給単価の変動率、保育士や介護士の時給・・業種別推移などを具体的に報道した方が合理的です。
低賃金者の新規参入が止まり平均賃金が下げ止まり、生産性向上以上の賃上げ後→その分物価上昇の場合には、論理的にはプラマイゼロですが、賃上げが前年で終わったのに、物価上昇が翌年以降になるとそのタイムラグで次年度以降は賃上げなき物価上昇になり実質賃金マイナスになります。
タイムラグ・業種間で景気変動の影響を受ける時期がずれるのと同様に、個人でも生産性以上の賃金をもらえるようになる時期が違います。
好景気初期には8〜6〜4割しか役立たない人でも1人前の人と同じ時給で雇用されるのは(一人前の能力者にとっては逆差別ですらからその是正圧力が賃上げ圧力へ)、それ自体論理的には商品サービス単価の値上がり要因(レストラン等の客にとっては、サービスレベル低下で同じ料金)ですが、非効率による損害は初期には企業負担→値上げやサービス縮小に走る順序も企業体力差によります。
賃上げ分だけの物価上昇の場合には論理的には双方のアップ率は同率ですが、好景気敏感反応業種=非正規雇用の多い職種と公務員やホワイトカラー層では影響の速度が違います。
同じ飲食関連でも、高級料亭では非正規人件費の比重が低いので、パート人件費相場が1割上がっても数万円以上の単価への(食材等の値上がりなど間接的)その影響が遅れます。
非正規の時給が2割上がって、その影響を受けやすい居酒屋牛丼店等日用品分野で1割単価が上がった場合、その階層レベルでは実質賃金低下がありませんが、年収数千万のサラリーマンや公務員の人件費が簡単に2割も上がらないので日本総平均賃上げ率としては微々たるものとなり、総平均ではマイナス化し易いように思われます。
高額所得者にとっては、コンビニ等の単価が1割あがっても生活費が1割上がるわけでありません。
このように職種業種によるばらつきが大きいのですから、コンピューターの発達した現在、手書きそろばん方式時代の日本中の総平均で平均賃金を出す大雑把な発表方式を改めるべきです。
業種職種別統計を政府がだしているかもしれませんが、メデイアが新聞等に印刷しきれないとすれば、ネット等で業種別データへのアクセス方法を紹介すべきでしょう。
物価上昇の結果、実質賃金が低下した場合には、黒田日銀総裁の物価上昇を目指す金融政策が徐々に効果が出始めたという意味であり、政策効果がない・・(私はインフレ期待論には組みしていませんが)無能だと批判すべき記事にはなりません。
しかも実質賃金変化による購買力影響力は、高額所得者よりは、中底辺層に大きな影響力があるので、実質賃金と言う大括りの概念比率では意味不明になります。
例えば夫月収40万の家庭で月収ゼロの専業主婦が働きに出て月収20万家計収入が増えると家計収入では5割増ですが、(ただし、昨日書いたように月収2000万クラスと合算平均すると家計収入平均アップ率も大きく低下しますのでどの階層と合算平均するかは重要です)平均賃金となるとこの家計だけでも平均賃金=実質賃金では月収30万→25%低下します。
好景気1〜2年経過で時給単価や年収2000万の夫の収入が1割上がって、2〜3年後にコンビニ商品単価等が1割上がっても高額収入者はびくともしません。
高額所得者は不景気でも給与削減がない代わりに好景気でもすぐには給与が上がりませんし、重役の奥さまが居酒屋のバイトに出ることもなく物価上昇の圧力だけ受けますが、その代わり投資収益アップで賄う人が多いでしょう。
メデイは政府におもねるばかりは困りますが、政府に落ち度のないことまで落ち度のように批判するのも困ります。
政権に中立で社会の実態を報道する心がけならば、非正規や高齢就労が増えて平均賃金が下がったと言えば良いのですが、それでは当たり前すぎてニュース価値がない上に、「なんでも政府批判」の特定立場を活かせないから実質賃金が下がっていると言い出したような印象を受けます。
「実質賃金が下がり続けているとか横ばい」などの批判的イメージ報道であれば事実であり、虚偽報道にはならないのでギリギリセーフ!・・これは便利だと飛びついたように見えます。
ギリギリセーフの報道ばかり続くと信用をなくします。
単純に平均賃金が下がっているといえばスッキリするものを、如何にも専門用語らしく「実質賃金」という言い換えて、愚昧な国民を誤魔化せば良いという思い上がりもあったでしょうか。
学術・難解用語→「立憲主義違反」「近代法の法理を守れ」「平和憲法を守れ」とかのスローガンを掲げて読者・・私レベルの思考停止を誘う傾向と根が同じです。
あたりまえのことをそのまま報道しないで難しい言葉に置き換えてあたかも意味ありそうにメデイアは連載していたのです。
メデイアが実質賃金の定義を虚偽解説したことはないし、厚労省の発表も事実ですが、前後の文脈で誤解するようなイメージを流布していたのが問題です。
これについては4〜5年前に書いた記憶ですがどこに書いたか忘れましたが、最近では2017/12/14/にも、数年前のこととして再論したことがあります。
好景気になれば企業はまず非正規や新人採用から雇用をふやすのが普通です(人手不足で失業者や主婦、高齢者雇用すれば平均賃金が下がる)から、労働人口をトータルして指数化すれば実質賃金(平均賃金)が下がるのは好景気の証です。
逆に不景気になれば期間工や非正規からへらし、新人採用を絞るので社員の年齢構成が上がる→高給取りの比率が上がり平均賃金が上がる仕組みです。
不景気になれば腕の悪い職人から仕事がなくなり、役立つ人材が企業に残ります。
好景気の最初は残業手当が増えるがその次には収入ゼロだった人が1日4〜5時間の仕事に付けるようになり、フルタイム非正規などの労働チャンスが広がり最後は正規雇用採用が増える順序です。
今は、まさに新卒採用を最大化(新卒の就職率99%?報道されています)、非正規の正規雇用化が進み始め単価上昇がはじまった段階でしょう。
この段階で正規雇用者だけの平均賃金を持ち出すと(中高年中心だった企業に給与の低い新卒が一人でも入ると)正規雇用の平均賃金が5年前に比べて大幅低下となります。
高級官僚や部課長クラスは景気が悪くても給与は減りもしないし好景気で(残業手当がない)もそれほど上がらないので平均賃金に影響がありません。
好景気の影響は庶民が真っ先に恩恵を受ける関係ですから、(ゼロ収入が15〜20万に増えるのは生活に与える比率が大きい)庶民に実感がないというのは、根拠なく「市民感覚が〜」というのと同じ決めつけです。
実質賃金は名目平均賃金をインフレ率で調整するものですから、インフレ昂進時に給与所得者の購買力の変動率を見る必要があってできた指標ですが、いまのように物価が上がらずに困っている・日銀がインフレ率2%の目標を掲げねならないほどの時代には、社会の現状を見るのに有用な概念ではありません。
社会の変化に合わせて、旧来の指標を廃止し新たな指標開発が必須であるとこのコラムで書き始めていたのですが、途中話題が横道にそれて先送りになっていますが、時代に合わせた指標廃止・開発が必要な一例です。

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