社内人材育成と雇用流動化

組織内で能力開発して行く社会と組織に入る前に資格を取得しておく社会との違いは、国民が役に立つように民度向上に努力して行く社会と,国や社会にとって利用出来る技術・資格をピープルが持っていなければ企業から追い出して自分で職業訓練を自費で受けて身につけない限り企業は相手にしない・・国単位で言えば,人民を入れ替えて行く社会・・人を利用するべきコマとしか見ていない社会に対応しています。
関ヶ原後に領地が大幅に減っても家臣を抱え続けた毛利家や上杉家同様に,社内失業を抱える社会では、新規事業に転換しても従来職種の人材を何とか役立てようと社内訓練に必死になります。
人民を商品同様に扱かって来た社会では人民の既存能力を分り易くする・画一商品・・トヨタ車と言うブランドで一定の評価が出来る・・これを商品としての人間に応用したのが資格制です。
日本では底辺労働に一般化しているクルマ修理の一級整備士2級整備士、溶接工、玉掛け,各種◯◯工,運転手などであり,これらの古典的?最高クラスが医師、弁護士と言うところでしょうか?
これら資格制の特徴は,各分野でピラミッド型になっていて近代以前の身分同様の固定化が事実上図られていることが特徴です。
医療関連で言えば白い巨塔で知られるように教授~医師を頂点に各種検査技師や薬剤師、理学療法士、看護師(これも細かい階級があります)歯科の場合,衛生士などピラミッド型で,資格さえ取れば看護師から医師になれるとは言え,資格変更実例が皆無に近いでしょう。
現場系の資格は単純画一的職務が多いので転職しても直ぐ使い物になる・・転職が簡単ですが,その代わり雇用主にとっても簡単に代替可能=社内訓練期間が短くて済むので長期雇用のメリットが少なく非正規化になりやすい・・・バス運転士の過労が問題になっているように、元々医師弁護士などの高給労務を除いては人件費が安いのが特徴・・裁量性の高い中高所得向けの職業ではありません。
弁護士でさえこの約20年前からの大量合格制度開始の結果、もしかしたら,私が知らないだけでパート的雇用の弁護士になっている人が生まれている可能性があります。
医師の世界では早くからアチコチの病院を時間で掛け持ちのアルバイト・非正規医師がいくらでもいます。
昨年事務所で経験した例では,一級建築士でも非正規・・特定現場終了まで数ヶ月間の期間限定雇用に応募して働いていました。
資格のない総合職・中間管理職の場合,企業文化の違いや裁量の範囲の広さに比例して企業別個性が強いので、同業種間の転職さえ難しいのが普通です。
ピープルの既存能力・有資格利用対象とする欧米型社会の真似をした雇用流動化論は、新卒採用→社内訓練で一人前にして行く日本社会では,企業個性に応じたスキルになっているので,中間層のままでの転職は非常に困難・・結果的に中間層の底辺層への転落誘導政策になり兼ねません。
1〜2週間ほど前に書きましたが,新たな機械装置の導入があっても社内講習の場合,従来機種との変更箇所だけ学べば良いので修得するのは容易ですし実務をやりながら実践的に身に付き易いものです。
いま社会的に必要とされているのは,最先端技術について行けないで振り落とされた人に対する再教育の必要性ですが,一番慣れた職場でちょっとした部分変更について行けない人が職場に関係ない職業訓練校「学校」で習った程度で身につけられる筈がありません。
ダメなものはダメだと言うのではなく,社外に簡単に弾き出さずに先ずは企業内で部分変更の講習会・練習会を開いて・・実際にやっているでしょうが・・新システムや方式について行けるような暖かみのあるやり方が重要です。
我々弁護士会で言えば,しょっ中法令の改廃や運用が変わりますので,この種の講習会がしょっ中ありますが,変化する「講習会について行けない」からと,他の分野・・税理士その他の職業に挑戦すれば良いと言うのは無茶です。
社内講習・変化について行けないで社外にはじき出された人は,同業他社への就職を狙っても少しずつ使っている機械も違って,なお慣れるのが大変ですから,余程ランクを落とすしかないでしょうから、(クルマ組立工でもトヨタ系から日産系に行けば勝手が違います)転職社会・人材流動化を目指すのはアメリカ型・・企業努力をあまりしないで,弾き飛ばし易い社会を作ろうと言うに等しいことになります。
欧米では身分制度がなくなっても、その代わりに企業別ではなく職能別組合が発達するなど,今でも職能・階層別・資格社会ですから転職が簡単な代わりに、階層固定・レベルアップの困難な社会構造です。
資格・与えられた職分・分業にこだわる傾向から職場から資格外に広がる新たな工夫が生まれ難い社会構造になっています。
November 16, 2016「民主主義の基礎4・信頼関係3(governmentとは?1)」以来,ガバメントとピープルとの関係・・支配、被支配の対抗関係を書いて来ましたが,両者が対抗的関係で相互に隔絶して来た・・ひいてはピープルの方は自己防衛のために・・「自分の職分はここまで、それ以上の仕事をする義務はない」という権利強調に走るようになります。
同僚が残業していても,自分の仕事が終わっていれば気にしないでさっさと変えると言う「ドライな」関係がマスコミでもてはやされますが,別に立派なことではなく黙って働けばいくらでも働かされて来た被害の歴史に対する自己防衛意識が強いからでしょう。
日本人が仲間を置いて帰れないのは、「同胞意識・みんなで頑張ろう」と言う意識がある・・日本の場合,集団・組織は元々「家の子郎党」の(血族)集団で成り立っているのでトップと末端とは運命共同体であって,支配と被支配の対抗意識ではないからです。
欧米では,governmentを構成する支配階層とピープルの間には対抗・・緊張関係であって、同胞意識・一体感がありません。
中国や朝鮮で言えば、士大夫・ヤンパン層と庶民との文化・意識の隔絶が普通であったのと同じです。
ピープルのレベルを引き上げて自分たちに近づける工夫をすれば,自分らの支配的地位を危うくするので避けたい意識があります。
これがアジア、アフリカに対する接し方・・日本の場合には現地人が自分でやれるように懇切丁寧に教え込むので喜ばれますが、欧米や中国は「お前らに出来る訳がない」と差を強調する目的で現地インフラ整備してやる?方式との違いです。
日本企業がプラザ合意その他で何やかやとイチャモンをつけられては,欧米市場から閉め出され始めた結果、生産基地として東南アジア展開(迂回輸出)するようになると、パンドラの箱があいたように世界中の新興国の産業勃興が始まりました。
日本が行くまで欧米は何百年も支配していながら現地人には格差の大きさを強調して絶望感を与える努力ばかりで、(この辺はシンガポール元首相が日経新聞連載の「私の履歴書に書いてるとおりです)何らの技術移転もしていなかった・・日本の台湾や朝鮮半島統治との根本的違いです。
欧米では古代から選良とその他(ピープル)とを差別する長年の潜在意識があって)ピープル・中間層のレベルアップさせる努力をするよりはレベルの低い労働者のままでより効率よく働ける方式を考案した・・これがベルトコンベアー方式で始まるアメリカの改革です。

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