一定以上保有株主は帳簿閲覧だけではなく、会社側に臨時総会の開催を要求出来、会社が一定期間内に応じない場合、裁判所の許可を得て臨時株主総会を開催出来ます。
しかし、臨時総会開催を要求して総会で要求出来ることは前向きな経営提案ではなく過去の不正等の追及以外にありません。
政治の場合、次年度予算審議→議決によって次年度の政府行為を縛れますが、企業には予算制度がありませんので,定時株主総会には次年度の企業活動を規制したり方向付ける機能・役割がありません。
せいぜい執行部が総会で次年度あるいは中期計画を報告するくらいであって、その計画自体を決議事項・議題に上げていないのが普通です。
総会で議決出来るのは前年度決算発表とその説明を受けるだけで、決議するのは・・人事と配当決定が中心にならざるを得ませんので、「指導者を選任するだけでその後は一切お任せ」という大統領制の亜流となっています。
大統領制の場合、毎年の予算を議会を通す必要がありますが、企業にはこれがないのでもっと一任性が高度です。
しかも、定時総会ではなく少数株主が臨時総会までを要求するには、具体的不正行為等余程の追及材料がないとせっかく要求して臨時株主総会を開催しても、数〜5%の保有比率ではあっさり否決されるだけで相手にされません。
こうした要求は具体的な不正の証拠をつかんでからのことになりますし、手続きが大掛かり過ぎます・・工場新設や海外進出の是非等の今後の行動計画に対する妥当性に関する意見となると、なおさら何らの意見を述べるチャンスもありません。
一定数以上の株主しか行使出来ないのですが、今の世界的大手企業では数〜5%も保有していれば最大株主〜2〜3位に食い込めるような状態ですから、今ではこの条文・・救済システムは(個人的企業を除けば)空文化しています。
上場企業では会社法で保護されている筈の少数株主権を行使出来るのは大株主(年金等の機関投資家)でさえやっと言うパラドックスになっているので、もっと少ない一般少数株主権の保護の問題を再構築する必要があるでしょう。
会社法
(会計帳簿の閲覧等の請求)
第433条 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
(株主による招集の請求)
第二百九十七条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合