結婚離れ2

母親は何かと夫をおだてて子育てに参加させようとして来たのですが、まだ父親の責任感は当てにならないので母親としては、母子一体感をおいそれとは捨てられません。
他方で男性の方は、コンビニや中食(ケータリング)の発達あるいは電子レンジを始めとする家庭調理機器のめざましい発達で、自炊生活が苦にならなくなって来たので、あえてリスキーな結婚して苦労する気にならなくなって来ています。
とりわけ最近出現している草食系男子は、この傾向が顕著でしょう。
家庭のない心細さ・孤独感をどうするかは別問題ですが、婚姻制度を重たくしすぎると婚姻を回避しようとする男性が増え独り立ち出来るように進化して行くでしょうし、女性も一人で生きて行けるように回避する方向(中性化傾向)に変化し始めています。
セックス需要が直ぐにはなくならないとしても男女関係は婚姻しなくとも成り立つし、経済面や食事の準備等で相棒が要らなくなれば生涯独身(で必要な限度で付き合うパターン)を選択するのを非合理とは言えません。
子を産むための男女・雌雄関係から発生した筈の異性関係ですが、種の継承に関係ない関係(セックスだけ・あるいは寂しいから心が通え合えるだけ)に転化して行くことになりそうです。
種の保存維持・子を産むための関係で始まった異性関係を前提にしたカトリックでは伝統的に避妊や中絶に否定的ですが、子育ての長期化の結果子孫をもうけるためのセックスから、子供は充分に生まれた後も子を育てるためのセックスとなり、中高年からはセックススレスも珍しくなくなくなり、老後の助け合い期間になれば100%セックスレスです。
子供の成長後も大学院を出てしっかりするまでの夫婦関係は、子を産み育てる一連の行為としてなお理解可能です。
子供が一人前になって出て行った後の定年後の夫婦関係(更には75〜80代になってお互い介護が必要)になると、古代から連綿と続いて来た「子孫」を造るためのカップルとは最早言えません。
高齢者夫婦関係が社会の大きな部分を占めるようになって来ると、子を産むことを予定しない男女関係を若者も真似して形成するようになっても違和感がなくなって行きます。
(異性の若者が子を産む気もなく一緒になっていいのならば、同性愛者・あるいは女性同士のグループホームもこの範疇に入るでしょう)
社会のあり方として子を産む予定のない男女関係・・共同生活を受け入れて行くとすれば、それでも女性は(女性が自分で一生食って行ける時代が来れば・・)男性を必要とする時代が続くのでしょうか?
男子の変化・・・いわゆる草食系化と女性自身も職業意識の高まりで子供さえ生まなければ自分で生きて行ける経済力を付け、更に治安その他のシステムの進化(特にマンション暮らしの場合)で、女性一人あるいは女性同士だけで生活するのにさして困らない社会になって来ました。
男女双方から結婚への意欲が弱まって来たのが最近の風潮で、これがここ10〜20年以上の結婚率や出産率の低下に大きな影響を与えている筈です。
給与が安いから子を産めないと言う俗論が支配的ですが、厚労省の賃金統計(好不況の波)と出生率比較によると実際には給与所得の向上と出生率は反比例関係にあるのは厳然たる事実です。
韓国台湾その他のアジア諸国でも、豊かになる(高学歴化の影響もありますが・・)と出生率が下がる傾向があるのはどこの国でも同じです。
(フランスなど西洋先進国で出生率持ち直しに成功しているように見えるのは、低賃金外国人労働者の大量流入にあることは明らかですし、アメリカも平均寿命が低いことや肥満など後進国性があるのは絶えざる底辺労働者の流入によるものです)
我が国の統計(どこの国でも同じでしょうが・・)では不景気で給与所得が落ち込むと出生率が上がる傾向ですから、出生率を上げるには国民の多くを貧困層にしてしまい、その上で子供手当の増額をすれば、最低賃金層の子沢山を下支えする意味があります。
我が国では貧富の格差が少なく殆が中流意識ですから、結果的に出生率が下がっているのは当然の結果で、目出たい・・国家運営が長期間成功している証(あかし)です。

結婚離れ1

アジアは後進国が多いからこの条約加盟をみんな渋っていると言うのが一般的理解ですが、親子のあり方に関する深層的な意識の差が大きい面があるからではないでしょうか?
西欧人でも、男女比で考えれば当然女性の方が子供に対する愛情が深いでしょうが、アジアと違って西洋の上流・有産階級では子供の頃から子供を手元で可愛がって育てる習慣がないなど、(我が国でも乳母の制度がありますが、ちょっとした金持ちがするものではなくこれはよほど高貴な家柄に限られます)大分違う印象です。
この伝統の上に寄宿舎制度が発達したものでしょう。
この母子一体感の意識が薄い御陰で西洋の女性は早くから子育てから解放されますので、母親が自分で育てるアジアに比べて女性の自由時間が増える・・男女平等への動きが速くなったような印象です。
オーストラリアからスイス人母が子供を連れ出して、この条約で強制返還になったのですが、オーストラリアの夫が子育てをする気がなくて、子供が児童施設に保護される事態が起きて、(母親がいるのに無理に引きはがして孤児扱いです)どういう手段か知りませんが、もう一度スイスに連れ戻せた事例があるそうです。
先進国同士であるスイス&オーストラリアの事例を見ると、先進国と後進国の争いと言うよりは、欧米では母子関係の意識がアジアとはかなり違う可能性があります。
昔から、アジアでは「この子はあなたの子です」と生まれたばかりの子を父親に抱かせるのは、母子一体を前提とした上で、その外側にいる夫に対して嫡子として確認させる・・父親の権力・地位世襲の権利確保のために必要な儀式でしかなかったのです。
この時代には、父親は生みっぱなしでも親の威光にすがりたい子供の方から天一坊のように「御落胤です」とすり寄ってくるものでした。
天一坊事件の場合、親子の対面にまで進みませんでしたが、仮に御対面まで行った場合、嬉し涙を流しても、長年打ち捨てられていたこと対する恨み言を一切言わないルールです。
子がすり寄ってくる程の資産を残せない時代には、こんなうまい具合には行きませんので離婚後せっかく苦労して仕送りしていても、年老いてから子に逢っても子から母親の仇のような目を向けられるのが落ちのようです。
(資産の大小と言うよりは、農業時代の農地や領地の継承は大は大なり、小は小なりに農地を継承すれば耕作して食って行けるメリットがあったのですが、今のように使えば減って行くばかりの資産と違います・・この辺は、2010-9-12「(1)・・能力社会の遺産価値、(2)・・農業社会の遺産価値」で書きました。)
そもそも子が親の遺産を当てにしてすり寄って来るのは普通のこととして、父親・オスの方は子にすり寄って来てもらうことにこれと言った必要性を感じません。
仮に老後を子供に頼りたいと言う気持ちのある男がいたとしても、離婚後無理な仕送りをして病気になったり無資産で老後を迎えるよりは、無理して仕送りした貧しい親よりはある程度資産を残している親の方が子から大事にされる・・あるいは一定の資金を残してヘルパーなどに頼んだ方が良いと考える男が増えてくるかも知れません。
養育料不払いに対する歯止めとしては、November 10, 2010「養育料3と民事執行法11」で強制執行制度の改正強化を紹介しましたが、この方面で対応して行くと男は自衛のために子供の出産自体に反対する傾向が強まってきます。
昨年春先に解決した離婚事件では、女性にはいろいろ不満がありましたが、何よりも「夫が子供を生むのに反対している」ことが離婚決断の大きな理由でしたから、静かにオスの反撃が始まっている様子が分かります。
雄にとって、子供を持つことは雌のサービスが悪くなるだけだった(精神面でも妻の関心が子に集中して行く)のに加えて、今では離婚後も長期に及ぶ子育てコスト負担のリスクまで負うようになると、結婚・同居生活に左程メリットを感じなくなる傾向が強まるのは否定出来ません。
母子一体感は子育てを命がけで行うために遺伝子に仕組まれた智恵でしょうが、親族共同体が崩壊し、近隣の助け合いもない一方で、まだ社会資本の充実がイマイチの現在では、母子一体感だけでは子育てを完成させられません。
そこで身近な資源である夫の協力が最後のよりどころになりますが、母子一体感が強すぎて男親がその枠組みから阻害されるままにして置いて、子育てに協力だけさせようとしても無理があります。

高齢結婚の意味

 

高齢化しても妻の方が若いのが(・・最近同年齢婚又は姉様女房も増えて来ましたが・・・今の所)普通なので夫の方は最後まで面倒見てくれそうですし、万一自分が残っても最後は施設に入れば良いし、子育てに大金を使わなくて済む分、老後の貯蓄・・備えも万全になります。
このように男にとっては高齢結婚は(途中で離婚にさえならなければ)良いこと尽くめですが、子を産む予定もないとすれば40歳前後以降の女性は何故(男の世話をするために?)結婚するのでしょうか?
江戸時代の跡継ぎ目的の婚姻の時代には、「石女は去れ」と言うひどい時代だったと聞かされて来ましたが、女性の本来は子を生み育てるためにこそ結婚するのだとすれば、女性の方からこそ子を産まないのに男に尽くすためにだけ一緒にいる意味がない・・男を追い出して良い筈です。
無職あるいは経済力のない女性の場合、昔ながらの生きて行くための就職をせざるを得ないからであると位置づけられますが、裁判官や弁護士あるいはその他各種産業界で(学者・教師・薬剤師等の資格業の外に作家・芸能人等々自活能力のある人がいくらもいます)相応の経済力があっても、高齢になって結婚している人が結構います。
昔で言えば髪結いの亭主と言う所ですが、この場合には子供を生み育てることを前提にしていました。
08/30/10「(1)婚姻外性行為とヒモ」前後で子供を産まない前提のヒモと何故女性は(身の回りの世話をするだけ?の為に)結婚しているのだろうか?と書いたことがありますが、実は堅気の中高年初婚同士あるいは再婚同士夫婦にも似たような結果になっています。
子育て期間が長引いてきた結果、単なる発情期の延長では夫の長期協力を確保しきれなくなって、家庭サービス・・こまめな世話・・結局は文化の香りが夫婦関係を長く持たせるために必要になってきたと、07/14/10(1)婚姻制度の始まり」以下で書いてきましたが、この関係の重要性が意識されてから長い間たってきたので、今になるとこうした関係自体が人間らしく生きて行くために自己目的化してきたと言えるでしょうか?
文化がなければヒトではない・・・?
高級レストランで男一人で食事していても形(サマ)にならない社会になっていると言えば良いでしょうか?
男だけの集まりでは、文化の香りが低そうですが、女性の場合、女性だけの観劇会・食事会・お茶席その他文化の香りのする生き方にこと欠きません。
あるいは女性は、男と一緒でないと世の中でバカにされる・・女性だけでは一人で生きて行くのが大変だと言う社会全体に残っている古い意識がそうさせているだけかもしれません。
子育ての長期化・長寿化が進むと生殖能力だけで関係を維持するのは無理がでてきたので、サービス・文化重視傾向になったのは人類の智恵でもあるでしょう。
ただ、この場合には、女性の方が男性に対して昔のように一方的に尽くす関係(子育てに協力してもらうために昔から仕方がなかったのですが、)子育てが終わり、あるいは始めっから子を産めない年齢の場合には、いくら何でもこの一方的な関係では夫婦関係が持たなくなって来ます。
男性も女性に負けずに細やかな双方向型サービスが必要な時代には、従来型の粗暴な(ガードマン的役割)能力があるだけでは上手く行きません。
草食系と言われる優しい傾向の男性が増えて来たのは、こうした需要に適応して来た結果でしょう。

中高年の結婚

 

これからの男性は、どんなイヤなことがあっても養育料負担のリスクを考えて離婚を我慢するとしても、女性にとッての離婚リスクが低くなってくると、(男性から見れば)ちょっとしたことでも性格の不一致で訴えられるとどうにもならないのが、現在の離婚法制(判例)です。
女性の方から見れば、これまでは別れるとマトモな生活が出来なくなるので我慢している人が多かったのですが、今では養育料の負担はしてもらえるし、財産分与・あるいは年金分割その他(母子手当等の社会保障も)至れり尽くせりになって来たので、逆に離婚決意へのハードルが低くなって来ました。
このように結婚してしまえば、男性の方が(男から見れば理不尽にも見えても)何が何でも我慢しなければ大変なことになることが分ってくれば、その前段階の結婚・出産を敬遠する方へ男が進むのが自然です。
現在の行動を決定する基準は、一般的に将来の結果予測に基づくものですから、ある程度安定した職に就いている人は現在離婚率が高まっていることと離婚になった場合、巨額の養育料負担やローン負担が予測されることが一般的に知られてくれば、余程相手の魅力に惹かれて狂わない限り普通に適齢期が来た程度では、あえて結婚したいと思わなく(慎重に)なるのは当然です。
男性側では、この結果晩婚化が進み、結婚しても将来リスクを避けるために出産をいやがる傾向が進みます。
まして最近では都市住民2世以上になって来て、親と同居しているので(母親が炊事洗濯みんなやってくれるし)結婚しないと困る事情が少ないこと、性格的にも草食系化が進みつつあって、男の方もそれほど性欲でのぼせることがなくなってきたらしく、つきあっていても結婚に消極的な男性が増え、その上漸く結婚しても子供をほしがらない夫が増えてきていて、これを理由の一つにして離婚に踏み切った女性もいました。
男性の方は子供さえいなければ、結婚した結果離婚になったとしても(離婚に伴う財産分与等そのときの解決は必要ですが)それ以上に何の将来負担もしなくても済むのでリスク回避になりますが、これに対し、女性の方は子供を産めないのなら何のために一緒にいるのか?となってきます。
その意味では男40代女性30代後半の組み合わせで結婚して、(当然のことながら)子供の生まれないパターンが最近増えていますが、これが現在の男にとって最高の結婚形態かもしれません。
子供さえ生まれなければ、妻は夫の世話だけしてくれるしこんな良いことはない上に、何時別れることになっても養育料負担を押し付けられる心配もありません。

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