15年以降の国際収支・・14年4兆円弱の経常収支黒字から15年にはひと桁違いの16兆5000億円の黒字復活は、この危急存亡の直前に14年夏ころからの原油相場下落を起爆剤にして急速に救われたことになります。
福島原発事故も、首都を巻き込んでもおかしくないほどの大事故に発展する事故でしたが、(これを見込んでドイツは大使館の臨時移転をしました)吉田所長らの決死の奮闘により首の皮一枚で大惨事を免れ、経済面で見れば日本も恒常的赤字国転落か?瀬戸際で助かった天佑でした。
(個々人は一人残らず、電力節約に努めましたし、供給側では省エネ技術革新に取り組み、被災工場やプライチエーンの必死の復旧努力により一日も早い生産再開・これが一方で輸出激減を抑え、石炭火力の復旧による原油輸入を一滴でも減らす努力・文字通り不眠不休で日夜励みました)
単に天佑を祈っていたのではなく、国民一丸となって頑張ったことに対する神の恩寵です。
https://eneken.ieej.or.jp/data/5474.pdfによると発電電力→消費量は以下の通りです。
震災以後3カ年の火力発電投入燃料推移
計量分析ユニット需給分析・予測グループ 研究員吉岡 孝之
電気事業者の発電電力量2は2010年度比で震災直後の2011年度に7%減、2012
年度に10%減、2013年度も10%減となった。
・・・・節電努力等の継続もありさらに大幅に増加することはなかった。
二度にわたる蒙古襲来時と同じで、天佑を待っていて天佑があったのではなく、供給側も消費側も国民一人残らず持ち場持ち場で国のために必死になって持ち応えているうちに
「神の嘉するところとなって」
原油情勢が好転したものです。
14年の原油相場下落によって日本は一息つけましたが、1昨年から原油相場の反騰により風向きが変わってきました。
http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h18/h4a0606j5.pdf
【我が国の原油輸入と対中東貿易】
世界的な需要の拡大を背景として、ここ数年間、原油価格は高騰を続けている。
昨年後半、米国で発生した大型ハリケーンの影響もあり、さらなる上昇となった原油価格は、今年に入って一時的に落ち着きをみせたものの、産油国の政情不安などから再び上昇の兆しを強めている。
15年末には約 32 ドル/バレルであったWTI原油先物価格(期近物)は、16年末には約 43 ドル/バレル、17年末には約 59 ドル/バレルに達し、18年4月には 70ドル/バレルを超える値を付けるにいたった(第II-3-8図)。
消費する原油のほとんど全てを輸入に頼る我が国にとって、原油価格の高騰は看過できない問題であり、今後もその動向には引き続き注視が必要である。
原油の輸入金額が増加している最大の要因は輸入単価が上昇しているためである。
国際市場での価格の高騰を受けて、日本への輸入単価も15年末の約 30 ドル/バレル
から17年末には 60 ドル/バレル近くにまで上昇している(第II-3-10図)。実際、原油の輸入金額の伸びを要因分解すると、16年半ば以降、前年同月比で二桁以上の伸びを示しているが、輸入数量の寄与分は小さく、ほとんどが輸入単価上昇による寄与であることがわかる(第II-3-11図)。原油の輸入金額は、我が国の貿易収支に匹敵する水準まで増加しており、黒字額を大きく押し下げる要因となっている(第II-3-12図)。
中東からの輸入金額の総計をみると、17年には約9兆7,000億円と10年間で3倍程度にまで拡大している。輸入金額の8割以上は原油で占められており、原油以外の鉱物資源の輸入金額も増加しているものの、原油の輸入金額の伸び幅が大きく、輸入金額に占める割合は上昇傾向にある(第II-3-15図)。
以上文中引用の各図省略
上記の通り、原油相場の持ち直しにより、昨年では、原油輸入額だけで日本の貿易収支黒字に匹敵する数字に戻っている・原発事故直後と似た関係に戻っています。
脱原発に踏み切るための代替電力の研究開発進捗を総合的に見るには、原油相場が重要です。
代替エネルギー予定増加が予定の半分しか進んでいなくとも、原油が半値になれば、原油依存度が2割上がっても痛みをある程度吸収できますが、逆に相場が2倍になると原油依存度を半分に減らさないとやっていけない計算です。
たまたま、14年からの原油相場半値前後への下落と石炭火力増加によって、日本経済は首の皮一枚でつながっていたに過ぎませんから、原油相場が持ち直してきた以上代替エネルギーがどうなったかは重要です。
海渡氏が今まで何とかなったというだけの根拠で即時全面停止を求めているとすれば、(そんな無責任主張とは思われませんが・・)困ります。
ちなみにコスト関係は21日に紹介した通りですが、再生エネルギーの場合、立地環境が限定される上に安定供給ができないのでその面でも難があります。
もしもこれまで綱渡り運営で何とかなってきたからそのツナ渡りを今後もやれば良いと言うならば、おかしなな意見ですが、余裕電力がなくて大きな事故が起きたらどうするか?一定の安全保障のためには一定の余裕がいるのではないか?国家運営として許されることなのかの詰めた議論が見当たりません。
事故直後の原発事故による電力不足の急場を凌げたのはもともと安定供給用に余剰電力を確保していた石油火力発電があったから休止中の(余剰・最大ピーク用の温存設備)石油火力を一斉稼働できた・・だから直後には原油輸入が106%も伸びたことによります。
ただ、フル稼働状態でいつまでも続くわけがありません・・急場は不眠不休で働けますが、いつかまとまった休憩が必要なように発電設備も交代用の設備を使い切って何年も(小刻み回収・・騙しだまし使い続けるわけにはいきません。
石炭火力は機動的運用になじまないのでもともとほぼ100%稼働状態で、しかも被災した石炭火力があったので、すぐには石炭輸入増にはなりませんでしたが、被災後2〜3年で石油火力よりもコストの安い石炭火力の復旧が終わり新増設も進んでいるようです。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/karyoku/pdf/h29_01_04_00.pdf
我が国の電源構成の推移
総発電電力量
出典:資源エネルギー庁 総合エネルギー統計等 11
ぜかグラフ画像の転写がうまくいきませんので、総発電量の数字だけ転記すると以下の通りで、石油ショック時に「ほぼ100輸入に頼る日本経済はおしまいか」と大騒ぎになった石油ショック時と同様に国を挙げて省エネに邁進している実態が見えます。
10年→11408億kwh
13年→10584億kwh
15年→10181億kwh
電源構成比の変化は以下の通りです。
電源種別 原子力 石油 石炭 LNG 再生
10年 → 25% 10% 26% 29% 10%
13年 → 0 17% 31% 41% 11%
15年(足元) → 0 12% 22% 40% 15%