家計債務膨張3(韓国15)

韓国で不動産バブルが繰り返された実績を5月4日紹介の第一生命https://diamond.jp/articles/-/190478?page=5
のグラフ引用の続きで見ていきます。

ソウルの不動産価格

足下のインフレ率は低水準で推移しており、中銀は今後も緩和的な政策スタンスを維持する方針を掲げる一方で、先行きの政策決定の判断材料に、同国の景気と物価に加えて家計債務の動向、主要国の貿易政策及び金融政策、新興国の金融・経済動向などを挙げるなど、家計債務の動きに敏感になっている。
足下の景気が力強さを欠く展開となっているにも拘らず、利上げに踏み切らざるを得ない状況は、中銀も別の意味で『板ばさみ』状態に見舞われていると言えるだろう。

上記不動産価格のグラフを見ると、アジア通貨危機以降01年から02年にかけて約20%の急騰〜05年にかけて20%急落し、05年から7年にかけて約25%弱の急騰を演じ、07年のピークから09年にかけてまた約25%以上も下がり10年に5%ほど盛り返したもののまた低下に転じ、以後低迷したままでしたが15年から上昇に転じ現在も上がり続けていることがわかります。
これが実態経済に連動していれば健全ですが、実態経済不調を隠すために不景気が来る都度不動産価格の上昇を誘導している・・・庶民から資金吸い上げをしているとすれば庶民は貧しくなるばかりでその咎めが蓄積していきます。
韓国国際収支のデータを見ておきましょう。
世界ネタ帳からです。
https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WEO&d=BCA&c1=KR

上記によると第一回不動産急騰期の01〜02年は、国際収支黒字がゼロ%近辺に落ち込んだ時期です。次の05年〜07年にかけての不動産急騰期は同時期の国際収支低下始まりと連動しています。
16年からの不動産持ち直し・・・18年からの急騰も、16年からの国際収支低下開始および19年1〜3月期のマイナス成長と連動しています。
マイナス成長になっているのに、19年1月の第一生命論文で「足下のソウルの不動産価格が前年比で二桁%の高い伸びとなる」というのですから異常事態です。
この連動関係を見ると日本のバブルと違い、資金が潤沢すぎてバブルになっているのではなく、苦しいときの逆張り・・庶民の資金吸い上げに頼っている状態が窺えます。
政府はマイナス成長を緩和するために「必死になってエンジンをふかしている」・・・資金不足分を国民から吸い上げるのに躍起と見るべきでしょう。
国民の方は乾いた雑巾を絞るように絞られるだけ絞られて借金を増やしてGDP成長に協力してきたが、それでも実体経済の落ち込みを補えなくなって、ついにマイナス成長に落ち込んだとすればたいへんです。
日本は戦時中、軍事用の鉄不足のためにお寺の鐘まで供出していたことが知られていますが、韓国では国民からの搾り取りが限界に来たと言うことでしょう。

原油相場上昇と再稼働の必要性?(代替エネルギーの現状)1

15年以降の国際収支・・14年4兆円弱の経常収支黒字から15年にはひと桁違いの16兆5000億円の黒字復活は、この危急存亡の直前に14年夏ころからの原油相場下落を起爆剤にして急速に救われたことになります。
福島原発事故も、首都を巻き込んでもおかしくないほどの大事故に発展する事故でしたが、(これを見込んでドイツは大使館の臨時移転をしました)吉田所長らの決死の奮闘により首の皮一枚で大惨事を免れ、経済面で見れば日本も恒常的赤字国転落か?瀬戸際で助かった天佑でした。
(個々人は一人残らず、電力節約に努めましたし、供給側では省エネ技術革新に取り組み、被災工場やプライチエーンの必死の復旧努力により一日も早い生産再開・これが一方で輸出激減を抑え、石炭火力の復旧による原油輸入を一滴でも減らす努力・文字通り不眠不休で日夜励みました)
単に天佑を祈っていたのではなく、国民一丸となって頑張ったことに対する神の恩寵です。
https://eneken.ieej.or.jp/data/5474.pdfによると発電電力→消費量は以下の通りです。
震災以後3カ年の火力発電投入燃料推移
計量分析ユニット需給分析・予測グループ 研究員吉岡 孝之

電気事業者の発電電力量2は2010年度比で震災直後の2011年度に7%減、2012
年度に10%減、2013年度も10%減となった。
・・・・節電努力等の継続もありさらに大幅に増加することはなかった。

二度にわたる蒙古襲来時と同じで、天佑を待っていて天佑があったのではなく、供給側も消費側も国民一人残らず持ち場持ち場で国のために必死になって持ち応えているうちに
「神の嘉するところとなって」
原油情勢が好転したものです。
14年の原油相場下落によって日本は一息つけましたが、1昨年から原油相場の反騰により風向きが変わってきました。
http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h18/h4a0606j5.pdf
【我が国の原油輸入と対中東貿易】

世界的な需要の拡大を背景として、ここ数年間、原油価格は高騰を続けている。
昨年後半、米国で発生した大型ハリケーンの影響もあり、さらなる上昇となった原油価格は、今年に入って一時的に落ち着きをみせたものの、産油国の政情不安などから再び上昇の兆しを強めている。
15年末には約 32 ドル/バレルであったWTI原油先物価格(期近物)は、16年末には約 43 ドル/バレル、17年末には約 59 ドル/バレルに達し、18年4月には 70ドル/バレルを超える値を付けるにいたった(第II-3-8図)。
消費する原油のほとんど全てを輸入に頼る我が国にとって、原油価格の高騰は看過できない問題であり、今後もその動向には引き続き注視が必要である。
原油の輸入金額が増加している最大の要因は輸入単価が上昇しているためである。
国際市場での価格の高騰を受けて、日本への輸入単価も15年末の約 30 ドル/バレル
から17年末には 60 ドル/バレル近くにまで上昇している(第II-3-10図)。実際、原油の輸入金額の伸びを要因分解すると、16年半ば以降、前年同月比で二桁以上の伸びを示しているが、輸入数量の寄与分は小さく、ほとんどが輸入単価上昇による寄与であることがわかる(第II-3-11図)。原油の輸入金額は、我が国の貿易収支に匹敵する水準まで増加しており、黒字額を大きく押し下げる要因となっている(第II-3-12図)。
中東からの輸入金額の総計をみると、17年には約9兆7,000億円と10年間で3倍程度にまで拡大している。輸入金額の8割以上は原油で占められており、原油以外の鉱物資源の輸入金額も増加しているものの、原油の輸入金額の伸び幅が大きく、輸入金額に占める割合は上昇傾向にある(第II-3-15図)。

以上文中引用の各図省略

上記の通り、原油相場の持ち直しにより、昨年では、原油輸入額だけで日本の貿易収支黒字に匹敵する数字に戻っている・原発事故直後と似た関係に戻っています。
脱原発に踏み切るための代替電力の研究開発進捗を総合的に見るには、原油相場が重要です。
代替エネルギー予定増加が予定の半分しか進んでいなくとも、原油が半値になれば、原油依存度が2割上がっても痛みをある程度吸収できますが、逆に相場が2倍になると原油依存度を半分に減らさないとやっていけない計算です。
たまたま、14年からの原油相場半値前後への下落と石炭火力増加によって、日本経済は首の皮一枚でつながっていたに過ぎませんから、原油相場が持ち直してきた以上代替エネルギーがどうなったかは重要です。
海渡氏が今まで何とかなったというだけの根拠で即時全面停止を求めているとすれば、(そんな無責任主張とは思われませんが・・)困ります。
ちなみにコスト関係は21日に紹介した通りですが、再生エネルギーの場合、立地環境が限定される上に安定供給ができないのでその面でも難があります。
もしもこれまで綱渡り運営で何とかなってきたからそのツナ渡りを今後もやれば良いと言うならば、おかしなな意見ですが、余裕電力がなくて大きな事故が起きたらどうするか?一定の安全保障のためには一定の余裕がいるのではないか?国家運営として許されることなのかの詰めた議論が見当たりません。
事故直後の原発事故による電力不足の急場を凌げたのはもともと安定供給用に余剰電力を確保していた石油火力発電があったから休止中の(余剰・最大ピーク用の温存設備)石油火力を一斉稼働できた・・だから直後には原油輸入が106%も伸びたことによります。
ただ、フル稼働状態でいつまでも続くわけがありません・・急場は不眠不休で働けますが、いつかまとまった休憩が必要なように発電設備も交代用の設備を使い切って何年も(小刻み回収・・騙しだまし使い続けるわけにはいきません。
石炭火力は機動的運用になじまないのでもともとほぼ100%稼働状態で、しかも被災した石炭火力があったので、すぐには石炭輸入増にはなりませんでしたが、被災後2〜3年で石油火力よりもコストの安い石炭火力の復旧が終わり新増設も進んでいるようです。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/karyoku/pdf/h29_01_04_00.pdf

我が国の電源構成の推移
総発電電力量

 
2030年度

出典:資源エネルギー庁 総合エネルギー統計等 11

ぜかグラフ画像の転写がうまくいきませんので、総発電量の数字だけ転記すると以下の通りで、石油ショック時に「ほぼ100輸入に頼る日本経済はおしまいか」と大騒ぎになった石油ショック時と同様に国を挙げて省エネに邁進している実態が見えます。

10年→11408億kwh

13年→10584億kwh

15年→10181億kwh

電源構成比の変化は以下の通りです。

      電源種別    原子力        石油     石炭     LNG    再生

10年      → 25%            10%    26%    29%   10%

13年         → 0                17%    31%    41%   11%

15年(足元)     → 0                12%    22%    40%   15%

 

 

格差社会3(株式相場と国内経済)

「大機小機」の連載を印象で読むのではなく検討して見ましょう。
論旨は昨日紹介した通り第一段落で「株式相場の好況は国内実体経済と乖離している」とした上で、第二段落で「総生産が変わらない以上人件費のカットか海外活動による収益か円安の計算上の収益しかない」と一応実体経済と乖離する場合もあることを認めるものの「そうでなければ実体経済とかけ離れたバブルだ」と断定します。
数日前に紹介した「大機小機」に労働分配率の低下を書いたのはその伏線だったのでしょうか?
上記の通り論旨はせっかく海外収益や円安要因による場合にも国内経済と関係なく上下する場合があることを義理で?触れているにも関わらず、この要因該当性の有無を検証または論じることなく、「そうでなければ・・」と仮定の論旨に入って行き、直ちに日銀等による株式購入等の官製相場の弊害論に入っていきます。
これを読んでいると「国内」実体経済と株式相場の乖離は官製相場によって出来ているかのような誤った印象を持ってしまいそうです。
きちんと円安や海外収益増加でも国内実体経済に関係なく株式が上がるとも書いているのですから、私の読み方が悪いからそうなったのかも知れませんが・・.不思議な論理だなあと思って読み返してみると、せっかく「円安や海外収益でも乖離する」と(義理で?)書いておきながら、何故かそのあとでこれに該当するかどうかの検討をすっ飛ばして(如何にも海外収益増加も円安もなかったかのように)いきなり官製相場の弊害に入っているからそそっかしい私の場合「官製相場によって実体経済と乖離してしまっている」かのように印象付けられたのだと分かりました。
上記国内経済と関係なく株式が上がる・・乖離する場合の条件の内、円安について見ると安倍政権誕生直前から急激な為替変動があって、円が80円付近から120円近くまで急落したことは周知の通りです。
(昨年から少し円高傾向ですが、それでも今年6月28日夕刊では112円あまりです)
こうした場合、国内生産活動のアップに関係なく瞬時に海外投資(ドル表示)残高(日本は世界最大の純債権国です)の円評価や売り上げ代金の本国送金の円換算率が円の下落率に比例してアップするので、決算上対外設備投資等や株式・ドル評価の円換算評価益が急上昇します。
これを評価して株価が急上昇したのは、合理的な市場評価だったと言うべきでしょう。
他方で外国人投資家から見れば、ドル表示で120ポイントの株がいきなり80ポイント近辺に下がったのですから、(外資・ドル表示では大損ですが、企業業績が悪くて下がったのではないからナンピン買いをして損はないのでこれを含めて)日本株の割安感から買いを入れるのが普通でありこれが市場原理です。
この場合ドル表示で元の水準まで買っても良いとすれば、円が1ドル80円から120円への下落率と同じ相場・・8000円の株を12000円まで買い進めてもドル表示では同じです。
国内投資家にとっても上記の通り自動的に評価益が生じることによる株価アップ要因がある外、トヨタ等が円安による分を値下げすれば売り上げ増になるし値下げしないまま従来通り価格維持すれば(日本からの輸入部品等のコストが120円から80円に下がっている差額がそのままマージン率アップになります。
実際には120円から80円に下がったコストを100%値下げしないというだけで、企業によっては5〜6%〜8〜10%値下げする場合など色々あるでしょうが、いずれにせよ国際展開企業にとっては評価益だけではない将来的//持続的な5割前後の増益要因です。
内外投資家としては利益率アップが想定されるのでこの種の買い相場が始まると相場が相場を呼んで値上り益も見込めます。
株価は実態経済を反映すべきという論理が正しいとしても、東証上場株価は外資(約3割)も参加している国際商品ですから、基盤とすべき実態は国内だけではありませんので、国内実体だけを見て、株価が決まるものではありません。
経済的基礎がグローバル化している場合は国際的視野で検討すべきです。
国内経済との比較論は比喩的に言えば、千葉県発祥企業が県内シェアーが高くなりすぎて成長限界になり、他県に進出して成功・全国的に売り上げが倍々ゲームで伸びている場合、全国売り上げ増を見ないで「千葉県内での売り上げが現状維持なのに株式だけが何故上がっているのだ」と議論しているようなものです。
トヨタや日産〜コマツ、ダイキンなど国際企業は、国内売り上げ増がもはや限界ですから、米中その他市場での前年比売り上げ増加率が毎月ニュースになっているのです。
特に今回の円安の場合、日本企業の多くは(また円高に振れると困るので)現地価格を円安に比例して価格値下げ→売り上げ増に走らず、円下落効果を僅かしか価格に反映せずに利益率アップに動いた企業がほとんどですから、(円安にも関わらずホンダなどは輸出を増やさずに海外生産比率をあげると当時宣言していました)円安による輸出増・国内生産増GDPアップはほとんど起きていません。
海外資産評価アップと収益増のダブル効果があればその分株価が上がるのは当然ですが、国内付加価値増加・国内総生産増加に結びつきません。
今回の株式相場とGDP・国内総生産アップとは関係がなかったのは当然であり、これを国内実体経済との乖離だけを理由にいきなり官製相場の弊害に論旨を進めるのは(私のような粗忽者をひっかける)不当誘導っぽい書き方です。
海外投資残の大きい企業ほど海外取引比率も高いので円安に比例して株価が上がるのは当然であって、これを市場の歪みと非難する論旨は対象とすべき経済基盤とすべき実態の範囲を意図的に国内に絞っている疑いがあります。
ところで論旨は人件費安も原因のひとつに上げていますが、この数日書いてきたように海外収益増や評価増に寄与していない上に、人手不足下で機械化すればするほどコストに占める労賃比率が下がるのは当然です。
ところで・・現在の株式相場が(国内だけなく国際的視野で)実体経済と乖離しているかどうか及び、乖離しているとした場合その原因かどうかは別として、公的資金が相場を歪めていると言われると(そういうことがあるとすれば困ると思う人が多いでしょう)もっともな感じを受けますが、これも問題があります。
それを論じるのであればそれ自体を独立に論じるべきであり、現在の株式相場が高いこととと(ある程度関係があるとしても)直結する論旨は飛躍があります。
高齢化=年金の時代ですから、公的資金が巨大化している点は先進国ではどこの国でも同じです・・。
カナダ等先進国の年金運用機関の巨額資金が債権や株式相場に与える影響が大きいことは数十年前から指摘されていましたから、問題は我が国の公的資金運用がどうあるべきかの議論の必要性であって、市場における公的資金の比重が高まっていること=悪であるかのような印象づけ批判も問題です。
サウジなどのオイルマネー、中国の国有企業その他いろんな国の巨大な公的資金が日本や世界中の債券や株式相場に影響を与えているのは普通の状態です。
この現状を見ないで、(その分析の一環としての公的資金運用のあり方論であれば合理的ですが)日本の公的資金が安全=国債偏重をやめて株式を買い始めたことだけをテーマにする必要はありません。
中国の人権侵害や公害には黙っている人権集団と同じ印象です。

韓国マンション相場(最低賃金比較)

韓国の場合、周知のとおり財閥とその他との格差が圧倒的ですから、金融資産を単純に人口で割る平均値では、一般大衆の平均値を表していません。
このようにしてみると、韓国マンション平均価格が6000万円になったと言うニュースの重み・・平均値と言うことは普通の人が買える価格であるべきですが、日本的感覚・・金融慣行を前提にすれば、普通の人が買える訳がない価格になっている状態です。
この機会に日韓の最低賃金も比較しておきましょう。
日本の平成28年の最低賃金はhttp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
によると東京圏で約900円台近辺で全国平均823円です。http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0723/shiryo_03.pdf
内閣府によれば、
○ 最低賃金程度の時給で働く労働者は300~500万人程度(*)
。最低賃金を引き上げる場合、最低賃金程度の時給で働く労働者の所得を引き上げるとともに、働者全体の賃金の底上げにも効果 。
(*)最低賃金+20円以下の時給で働く労働者は340万人程度、最低賃金+40円以下の時給で働く労働者は510万人程度(2014年度推計)
他方、韓国では、http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2016/11/korea_01.htm独立行政法人労働政策研究・研修機構l2015年のデータによれば、
「最低賃金(時間当たり5580ウォン)未満で働く労働者は222万人に上り、全労働者の11.5%を占める」
公式最低賃金比で言えば日本900弱対558です。
最低賃金未満で働く人が11、5%もあると言うのでは、最低賃金比で最底辺労働者の平均水準の比較をすることが出来ませんが、最低賃金比で見ても900対558の比率になります。
違法行為の摘発は難しいにも関わらず11、5%も違法賃金があると言うことは、実際にはその何倍もあると見て良いでしょう・・。
韓国では実際には最低賃金を守っていないし、日本の300〜500マンの数字は、最低賃金+40円以下で働く人の数字ですから、日韓の実質的最底辺労働者の収入格差はもっとあると見るべきです。
咲いて賃金以下で働いている数字が11、5%もあると言うことは、外資や大手は最低賃金を守るしかないが、中小はお目こぼしの社会・・中国が汚職処罰や環境規制は先進国並みと威張っても厳しく取り締まって外資を不利にしているだけですから、北京の空を見れば結果が違うのと同じです。
どこの国でも現場裁量による幅があるのですが・明白な2重3重基準になる社会は法治国家とは言えない・・後進国と言うことでしょうか?
あるいは後進国は、民度レベル上無理な基準なのに形だけ先進国基準を導入するものの、現場では民度レベルで無理があるので、先ずは大手や外資だけ厳しくして中小零細はついて行けない実態に合わせてお目こぼしするしかないと言うことでしょう。
日本は古代に中国の都城概念を導入しながら、(商業都市国家が起源の中国と日本社会の成り立ちと違う面もあって)羅城「門」だけ作って城壁を作らずお茶を濁したのと同じです。
韓国では、最低賃金未満の雇用が11、5%もあると言うことは、同国の最低賃金制度は(日本との比較のために?)対外的格好付けのために、経済実態に合わない程高くした結果、経済実態がついて行けていないことを表しています。
法で決めた最低賃金以下でも働くしかない・・要は職場がないこと・・就職難に原因があります。
市場原理で決まって行くしかない賃金相場を法で決めるのは無理がある・・当たり前の結果です。
最低賃金以下ならば職場があると言うことは、市場原理をいじるのではなく、経済システムに問題があることを表しています。
安倍政権のように雇用を増やして需給バランスを改善して行き、結果的に賃金水準を上げて行くのが王道でしょう。
市場原理無視で大統領の命令一下「非正規を減らし賃金格差を縮小しろ」と言っても出来る訳がありません。
韓国の場合、大手財閥が利益を全部取ってしまい、下請けが食うや食わずの経済構造とすれば・・構造を改造をしないで末端の値決めだけ強制しても無理があるでしょう。
韓国経済が対外的に貿易収支黒字で成り立っているのに、国民には最低賃金を払えない・払うと中小企業が成り立たないと言うことは、いわゆる出血輸出の構造です。
サムスンや現代自動車等の財閥系大手も利益がなくて、下請けにこれ以上高い代金を払うと赤字になると言うならば分りますが・・。
下請け従業員が生活出来るようなマトモな賃金を払えないような原価割れ発注を繰り返しているのは、大手自身が下請けにきちんと生活出来るようにすると国際競争に負けると言うならば、国を挙げての出血輸出・ダンピング輸出の問題ですし、大手の利益取り分が大き過ぎて下請けに払う分が減っているならば、優越的地位利用の不公正取引の問題です。
日本と韓国では法制度が違うでしょうが、独禁政策は先進国では概ね共通・・似たような条文がある筈ですが、この活用がされていない・・回避されていることになります。
日本の独禁法を見ておきましょう。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)(定義)第二条
(1)〜(8)省略
(9)この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一〜四省略
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 省略
ロ 不当な対価をもつて取引すること。
韓国歴代政権が財閥の横暴に切り込めない・・独禁法適用を回避して政府がやっているフリ・・パフォーマンスをするために?最低賃金だけ上げても末端では守る体力がない・・これが韓国民の悲惨な状況を拡大させている原因です。
今回当選した文大統領は下請けイジメをやめさせないで(そのままで)、非正規雇用をなくすと言う末端から強制して行く構えのようです。
しかし今でも中小零細企業は大企業による不採算発注の圧力で息も絶え絶えで経営者や家族労働の手取りを削り人件費を削るしかないのに、この構造を無視して「非正規を正規にしろ」と強制して解決出来るのでしょうか?
ある新機軸の商売が始まる多くの場合、既存規制が邪魔していることが多いので、政府がこの解禁で後押しする場合には、やりたい人が一杯いる場合に(民泊のように)その分野の新産業の活気が出ますが、産業界がやる気がないのに政府が特定新産業を推進しようとしてもうまく行きません。
「馬を水飲み場に連れて行けるが水をのませることは出来ない」と言われる所以です。

官製相場の限界1(金利)

目標とすべき先進国の産業モデルのある新興国と違って産業振興も政府が主導すれば成功出来る保障はありません・・。
日本は模倣すべき国のない先端産業国であり民間資金余剰国ですし、仮に資金不足国でも本当に脈のある事業ならば、世界の投資家が放っておきません・・M&Aも盛んです・・どこの投資家も見向きもしない投資を政府がやればどうなるものでない・・結果的に失敗する可能性の方が高いでしょう。
※宇宙探査その他政府がやれるべき分野,社会保障のようにやるべき分野が一杯あることはこれまでも書いています・・何もかもやめるべきと言うのはなく、「産業振興は民間に委ねてこの分野の財政支出をなくして行くべき・・税収削減すべき」と言う意見です。
政府が資金を吸い上げるのは良くない→消費税増税反対論の続きです。
とりわけ消費増が目標になって来ると供給側が計画し宣伝さえすれば売れる訳でない・・必需品供給時代は供給者の意向、政府の計画が有効な場合が多いですが、面白そうだから手に取る時代になるとそうは行きません。
日本は室町〜江戸時代から消費者向けに面白いものを工夫しては(朝顔の花1つとってもこれが「朝顔か?」とびっくりするほど変わった変化を楽しんで来ました)消費を盛り上げる文化が進んで来た社会です。
着物の柄であれ役者の似顔絵や村のお祭りであれ、俳諧や都々逸などお上が進めた結果ではなく庶民の工夫が花開いているのです。
石油ショックのように供給側の事件でも、一時的に政府が下支えする必要だった事は確かですが、これは一時の出血手当でしかなく、原油相場の急上昇に対応・・脱却するには、民間の省エネで努力に待つしかなかったのです。
消費増が期待されている以上は、政府が出来ることはホンの僅か・・むしろ庶民からし金を奪いの活力を妨害しない方が有効でしょう。
戦後の赤字国債に関するウイキペデイアの記事からです。
「1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている」
赤字国債発行には戦後だけでも、上記のとおり・・75年は石油ショックであり、93年以降はバブル崩壊ですが、93年以降政府が資金不足に陥った経過を私なりに以下のとおり整理しました。
    記
(1)中国の市場参加による20年以上にわたるデフレ圧力(石油ショックによる石油値上がりと低賃金中国の市場参加による商品値下がりは、交易条件悪化ショックでは同じです)・・に対して、衝撃緩和のために長年財政投入をして来た結果財政赤字が巨額になってしまった。
この必要性は中国との格差がなくなるまでですから、人件費その他生活水準格差がある限りこの衝撃緩和の必要性が続きます。
※ 最近対中ショックが薄らいでいるのは中国の人件費アップによります。
(2)衝撃緩和目的の資金投入は、賃金で言えば中国人件費との差額補填(直截的施策で言えば、社内失業を実施する企業への雇用調整助成金・・その他間接的政策は一杯あります)・・言わば後ろ向き支出ですから財政支出に対応する資産が何も形成されていない・・国債の種類で言えば建設国債ではなく赤字国債になるしかありません。
(3)ショック緩和の資金ファイナンスするために増税出来ないので(これまで書いているように増税すると国内消費抑制になってしまうので)低金利(郵貯や国債の低金利)で資金を国民から吸収する政治を続けて来たが、臨時的な筈の衝撃緩和策が20年にも及んで来ると(個人で言えば臨時出費のために月給では間に合わずサラ金に借りるような事態が20年も続く?)債務総額が増えて来たので低金利でも支払リスクが無視出来なくなって来た。
(4)金利が徐々に下がるに連れて国民の国債・郵貯離れが生じて来たので、穴埋めのために日銀や年金資金による買い受けが常態化・・拡大して来た。
(5)それでも不安があったのでプライマリーディーラー制度を設けて一定量の買い受け強制をして来たが、禁じ手とも言うべきマイナス金利まで来るとさすがに国債や郵貯を通じた庶民からの資金吸収能力がなくなってしまった→エンドユーザー不在のままでは日銀買い戻しをしない残り一定枠を小売り・再販するのは無理が出て来た・・売れないまま自己保有継続しているリスクが大き過ぎるようになってきた。(三菱の特別資格返上)
(6)(マイナス金利採用時には、予めこうなることは予想されていたでしょうが)ここまでくると三菱を脅す・・嫌がらせで引き止めるのは無理があるし、かと言って、今更実勢相場・・投資家が自腹で買ってくれそうな相場まで戻すと日本経済は大混乱です。
金利も市場需給に委ねるべきなのに、金利の官製相場造り(中央銀行による基準金利操縦)はドンキホーテのように滑稽ですが、誰もその滑稽さを書いていませんが遂に無理が明からさまになって来たのです。
「毒を食らわば皿まで」と言いますが、ここまで来ると新規発行国債を100%日銀が買い戻す運用・・直接引き受けをするしかなくなってきました。
国債の場合、既発行国債を日銀が100%保有しても、結果的に紙幣発行の歯止めがなくなったというだけであって、それがどう言うことになるのか実はよく分っていません。

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