国債無制限発行とデフォルトリスク1

日銀の国債引き受け・・極論すれば紙幣の無制限発行に進んだ場合日本経済はどうなるのか心配している方が多いと思います。
今のところ日本は世界一の対外純債権国・・資金のある国ですから外国から資金を導入する必要がない・・儲けが溜まり過ぎているので金あまり・・しかも商品は供給過剰と来ているので銀行からお金を借りたい人が少ない・・・その結果世界最低の金利水準になっています。
バブル崩壊以降(供給過剰社会でありながら)借りたい人がいるとしたら、サラ金の顧客等リスキーな人・儲けるための投資資金ではなく借金返済用の後ろ向き需要が多くなっています。
これでは消費者金融以外の前向き金融の分野では、借りたい人・企業が少なすぎて世界最低の金利にならざるを得ません。
ところで商品は同じ性能であればコストの安い方が競争力があります。
貨幣も交換すべき商品の一種売り買いの対象とすれば、仕入れコストの安い方が競争力・需要があります。
世界での低金利競争では世界最大の純債権国である日本は自然に低金利になりますので金利競争では最強です。
低金利国で資金を入手して高金利国で運用した方が有利です。
もしも日本より資金力のない国が日本よりも金利を安くした場合、その国から資金が日本に逃げ込んでしまいその国にとっては資金不足で大変なことになります。
世界金利秩序は資金の足りない国・経済弱小国を最高金利国として、順次国力に応じて順次金利が下がって行くようになっていて最強経済国の金利が最低金利国になるのが原則です。
ただし、物事には例外があってアメリカの場合貿易赤字国で対外純債務国に80年代ころから転落していますから、本来金利を中国よりも高くしなければないのですが、リーマンショック以降低金利政策を取っているので中国よりかなり低くなってます。
もしかしたら日本の次・世界2番目の低さかも知れません。
巨額貿易赤字国で純債務国に早くから転落しているアメリカが、日本に次ぐ低金利国であるのは上記論理から言えば異例ですが、長期的には無理が来ることについてはこの後に「基軸通貨」のテーマで4月10日以降に書きます。
中国にとっては貿易黒字で稼いだ資金をアメリカ国債ないしアメリカの公的資金で運用するのでは、逆ざやになってしまっています。
この点は中国が経済実態以上に人民元の為替相場を低く抑えようとして経済原理に反した介入を続けていることによる損失ですから、覚悟の上のことと言えるでしょう。
金利運用の逆ざや問題はこの後に書いて行きます。
金利を高くしても客のつかないほど信用のない国では、自国通貨建てでは客がつかないのでドル建てや円建てで債券を発行しています。
これがサムライ債など他国通貨建て債権の存在意義です。
日本の場合、余剰資金国ですから海外でドル建てで起債する必要がないばかりか資金がだぶついているので世界最低金利での国債発行が可能になっています。
世界最低金利の発行でもそれ以下の金利での預金が豊富にあり、あるいはロンバート型で日銀から公定歩合・政策金利で低利融資を受けた資金で買う限り、確実な利ざやを稼げるので国内金融機関は国債を買い続けるので海外から買ってもらう必要すらありません。
純債権国の地位を維持している限り、銀行であろうと日銀引き受けであろうと海外から資金を導入する必要がないので問題がないということでしょう。

紙幣大量発行(成熟国)

金融資産膨張原因の第二は、発行紙幣量だけではなく、株式相場を例にすると、お互いにつり上げを繰り返せば、会社の実物価値の何倍でもつり上がって行くことから、実物価値以上に金融資本が膨らんでいます。
たとえば、時価総額100億円の株式の場合、その株式全部が毎日取引されている訳ではなく、たとえば仮に僅か1%=1億円の株式しか売買取引されていない場合を考えてみましょう。
この取引価格が5倍に跳ね上がって5億円で買う人がいた場合、(5億円の紙幣を払う人と受け取る人がいて)市場に出回る紙幣額は同じですが、取引に参加しなかった株式全体の相場を5倍に引き上げるので、僅かに4億円の投入で金融資産は400億円増える勘定です。
こうした仕組みから発行済紙幣量に関係なく取引が活況を呈すると株式時価総額が膨張する傾向があり、ひいては金融資産が実物価値を大幅に越えて来る傾向があります。
貸金の場合も、高利の場合、当初の借金1000万円が瞬く間に何倍もの名目上の借金になって行くのもよく知られている通りです。
このように紙幣発行量の膨張だけが原因ではなく、金融資産の性質からも膨らみ続けて来た金融資産は、いつかは経済実力・実態に合わせた調整をするしかありません。
紙幣発行量を倍増しても国内の富みが2倍になる訳ではなく、従来の経済理論では単に物価が2倍のインフレになるので、(その分対外的評価は為替相場の下落によって調整されるし)結果的に総紙幣の価値と国内総資産評価量は一致していました。
ところが、日本のような金融資産が1400兆円もある成熟社会での不景気は、紙幣不足で物が買えないのではありません。
大量に輸入品が入って来たことによる供給過剰の不景気ですから、紙幣を大量供給しても購買力にはあまり影響がないので物価が上がることはありません。
供給過剰による需要不足が問題ですから、紙幣を大量印刷したうえで金利を下げても消費がちょっと上向くだけ・・・比喩的に言えば政府が道路補修頻度を引き上げるなど無駄遣いすることによって100の需要不足の内3〜40の需要を補充する・・経済の底割れを防ぐ程度でしかなく、インフレになるどころではありません。
いくら紙幣を大量発行してもゼロ金利にしても、インフレどころかデフレ圧力が続いているのが、我が国のバブル崩壊以降約20年の経済です。
我が国のような成熟国では紙幣需要(財貨の購入意欲)があって発行するのではないので、紙幣を大量発行しても金利を下げても、それがインフレに繋がることはありません。
前回・11月27日に書いたように仮に2倍量の紙幣を発行して物価も2倍になれば発行された紙幣での購買力は結果として同じですが、2倍量の紙幣を発行しても物価が上がるどころかデフレで下がっていると、紙幣の価値が下がらずにその国民は名目上2倍の購買力を持つことになります。
でも国内の富みがかりに同じままとすれば、(高度成長でこの間に国富が2倍になっていれば均衡しますが、日本のように低成長で殆ど増えなかった場合)2倍に増えた購買力をみんなが行使すれば、物が足りなくて結果的に物価が2倍に上がります。
今の日本は、みんなが金融資産にして持っていて、紙幣による購買権を行使していない状態ですが、もしも使えば直ぐに2分の1になってしまう架空の権利と言えます。
上昇した株価も同じでみんなが権利行使・・売却して換金を図れば、直ぐに大暴落してしまう権利でしかありません。
このように、(サブプライムローンも同じことだったでしょうが)金融資産は実態経済から見ればその中間経路を複雑にして膨張し過ぎている部分が多いので、時々これの是正をして行かないとその乖離が大きくなり過ぎる・・一種のバブル崩壊まで待つのは却って危険です。
今回のギリシャ危機も独仏等の黒字国が、南欧諸国への貸付金を支払能力を超えて名目上膨らましていた咎めが出たに過ぎません。
我が国で過剰に発行された紙幣はタンス預金になって退蔵されたり、直ぐに銀行等に還流してしまい、銀行も民間資金需要がないので国債等へ還流していました。
余ってしまった紙幣の行き先は、(国債で得た資金を政府が税で財政投入資金として不足需要の穴埋めとして無理矢理に利用する以外は、)円キャリー取引としての外国人投資家への貸し付けが中心でした。

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