豪華クルーズ船対応批判2

クルーズ船対応の批判論を公開して(批判を受けて?)削除してしまった人物が、翌月「クルーズ船での対応は失敗した」の表題でのメデイア記事発表に協力した以上は、一旦撤回削除した主張のどこが正しくどこが誤りだったかの釈明をしたものと読者が期待します。
ところが読み進んでもクルーズ船対応の何が失敗だったかの説明がないままです。
まともな批判論がないと書く場合、逐一引用しないと「ない」証明ができない不便さがありますが、全部引用は煩雑ですので、記事中のクルーズ船に関する小見出し部分だけ引用しておきます。
全文が気になる方はご自分で記事内容に入っていただくようにお願いします。https://toyokeizai.net/articles/-/335971?page=7

――岩田教授は2月18日、クルーズ船内部の状況についての動画をYouTubeで公開しました。ウイルスのない「グリーン・ゾーン」とウイルスが存在して感染の危険がある「レッド・ゾーン」が「ぐちゃぐちゃになっていた」と。改めて、課題は何だったのでしょうか。
クルーズ船というのは閉鎖的な空間にたくさんの人がいて、おまけに高齢者が多い。非常に感染しやすく、リスクも高い。感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れキャパシティーがなければ、ただ下船させるというわけにはいかない。そこが最初のジレンマになる。
そのジレンマの中で、感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。
しかし、感染症の専門家がしっかり入ってオペレーション(運営)をするのではなく、感染対策のプランは官僚主体でつくったものになっていた。専門家は結局、少し入っただけだった。日本環境感染学会の専門家も入ったが、結局はすぐ撤退してしまった。
入れ替わり立ち替わり専門家が入っているが、専門家がリーダーシップをとった対策づくりができていなかった。
――下船した乗客の感染が後になって判明したり、作業に当たっていた厚生労働省の職員や検疫官に感染者が出たりしました。

「下船した乗客の感染が後になって判明した」点については、検査の正確度が低いことが知られている通りです。
https://www.asahi.com/articles/ASN3M7G1XN3MULBJ01C.html

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味

酒井健司 2020年3月23日 9時00分
日本プライマリ・ケア連合学会の診療の手引きによれば、「PCR検査はウイルスゲノムを検出するという原理から、一般論として感度は低く、特異度が高いと考えられます。初期のPCR検査で陰性だが後日陽性となった患者等の検討により、感度は30~70%程度、特異度は99%以上と推定されています」とあります。ほかの専門家のコメントでもだいたい同じぐらいです。

わずか30〜70%ですから、陽性判定された人の陽性率は99%ですが陽性判定されなかった人も7〜3割が再検査すれば陽性になる可能性があるのです。
この比率は現在も変わっていないようです。
陰性2回の退院ルール下でも退院後陽性になることもあると言われ、(1回の検査で最大7割が漏れるとすれば、2回検査後でも35%が漏れている計算です)もう一度感染したのか(免疫にならないのか?)検査の正確度が低い問題なのかすらわかっていないのが現状です。
下船後の陽性反応が出た人が数名?程度出たとしても、感染防御体制不備の主張とどう関係するか不明の主張です。
現在と違いまだ大量の検査治療経験のない試行錯誤的段階の検査能力レベル批判とクルーズ船受け入れ体制不備批判とは次元の異なる議論です。
以下対応に当たった人員に二次感染が起きた等の結果責任に議論がすり替わって行き受け入れ体制批判の具体的説明がありません。
岩田氏の基本主張は、キャパが足りないという(船内のほうが、検査環境が良い)理由で、下船させないで船での検査を選択したのであれば「船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」という立論のようです。
船内検査の場合、下船後検査よりも「完璧」であるべきかの前提事実が意味不明です。
そもそも完璧とは?
研究所の化学実験でも100%の成功に漕ぎつけるには膨大な反復実験が必須です。
実験がなく、いきなり3750人にのぼる乗員乗客のいるクルーズ船での感染問題が起き上がったのが現実でした。
一斉検査を密室状態のクルーズ船内でどうやって実施するか、検査機器や検査熟練者を全国から短期間に呼びあつめ、その船に乗ったこともない感染症専門家?が狭い船内配置図とにらめっこで、検査採取空間や事務部門の後方配置(記録化や、ネット空間の設営)とのレイアウト、動線確保・・検査機器や事務処理用機器の搬入、交代要員の人繰り等々を、全世界未経験対応で緊急出動が要請されてまず活動開始するしかない段階で「完璧」対応が可能だったかの説明こそが重要です。
岩田氏の主張は、下船させて検査するのを原則とし、原則的方法を取らない以上は上陸後の検査よりも「完璧でなければならない」という主義主張を前提にする思考法のように見えます。
ただし、彼は冒頭に重要論点を不明化する発言をしています。
その部分を再引用しておきます。

「感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れキャパシティーがなければ、ただ下船させるというわけにはいかない。そこが最初のジレンマになる。」として
「そのジレンマの中で・・・感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」

以上によれば「選択をしたのであれば」の単語には選択関係という前提があり、その選択判断のジレンマ?をキャパシティの問題に微妙に矮小化?しています。
キャパだけの問題であれば分散受け入れや、3700人全員一斉下船でなく3分の1〜半分だけ下船させ残りは船内待機またはその一部(一定の症状が出ている人優先に)を検査にするなど工夫の余地があるので両立可能・・二律背反の関係ではありません。
周到に「最初のジレンマ」と言っていて、本来のジレンマを伏せたまま議論が進んでいくようです。
本来のジレンマでないことを論争点に持ち出して、その議論は乗客のためにより良い医療サービスを目指すものだという前提を置く結果、
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と言いながら「そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」と言い切ってその後の論理を進めています。
「最初のジレンマ」と言いながら次のジレンマを説明しないまま最初のジレンマだけを前提にした対応批判するのは「そんなテーマの議論でなかった」虚偽説明という批判からの逃げ場を用意したものでしょうか?

暫定的隔離の必要性2(岩田氏の豪華クルーズ船対応批判1)

話がそれましたが、社会防衛の必要性から一定の合理的疑念があれば、検査に必要な期間の拘束(ゆるい隔離)も許されるという法律ができても憲法違反ではないでしょう。
隣で咳をすれば、嫌な顔をして席を移ったり避けるだけなら社会問題ですみますが、精神病や法定伝染病の場合強制隔離する点で国家強制になるのでその折り合いが難しいところです。
今回のクルーズ船対応でも、感染しているか不明の人(潜伏期間とされる2週間経過まで)を下船させない政府対応を非難していた専門家やメデイアが主流?・・批判論が具体的でなく外国で評判が悪いというだけだったようですが、すでに書いた様に日本は入国を認める前に検査をしていただけで、入国後法的根拠なく拘束していたのではありません。
何事も批判さえすれば解決できるものではありません。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-02-19/Q5XSCEDWLU6Q01

2020年2月19日 18:17 JST
「船内な悲惨な状態」と国内専門家
国内の専門家からも批判
船内の感染拡大防止に向けた政府の対応については、日本国内の感染症対策の専門家からも疑問の声が上がっている。
神戸大学の岩田健太郎教授(感染治療学)は医療従事者らへの二次感染を防ぐ管理が不十分だったと18日に公開した動画の中で批判。専門家の視点から見ると「超非常識なことを平気でやっている」と述べた。
厚生労働省は14日間の健康観察を終えたとして症状がなく、陰性が確認された乗客の下船を認め、19日は約500人が下船。共同通信によると、下船した乗客はバスで横浜駅など複数のターミナル駅に移動、帰宅の途に就いた。感染者と同室だった人などは、健康観察期間が継続する。

日本メデイアはNHK初め先ずは、政府批判・・いかにブザマな対応かの材料探し一色だったのかな?
日本では上記のような引用を見るだけでは、何が批判されているかの事実指摘がなく抽象的批判ばかりで、NHKやライブドアーを見ても以下のとおり何が後手なのかの具体的事実記載がなく誰それが批判しているという誹謗中傷に類する引用だけの記事です。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/31092.html

政府の対応が「後手」に回ったと、国内外から厳しい批判にさらされている。
クルーズ船で何が起きていたのか。政府関係者や専門家に取材した。

https://news.livedoor.com/article/detail/17832997/

海外の複数のメディアが日本政府のクルーズ船対応を痛烈に批判している
一連の報道からは、日本政府に対する不信感が伝わってくると筆者は綴った
危機管理能力のない政府の対応に乗客や乗務員も苦しんでいるという
今、アメリカのメディアは、こんな見出しで、ダイヤモンド・プリンセス号の感染の惨状を報じている。
日本政府にはいったい危機管理能力があるのだろうか? アメリカのメディアはそんな疑問を抱いているに違いない。彼らの報道からは、日本政府に対する不信感がありありと伝わってくる。

と、いかにも日本政府のブザマな対応といわんかのような政府批判を海外報道引用の形式で日本のメデイアは散々批判してきました。
しかし後講釈は誰でもできると言われますが、批判論を見る限り日本政府はどうすべきであったという後講釈さえ紹介がないまま、国外批判があるという根拠だけでメデイアは煽りに煽っている様子です。
こんな主張方式が許されるならば、メデイア界でタッグを組み、1社が根拠ない批判をすると他社が、X社でこう言う批判がしていると大々的に報道し、これをさらに他社が報じる連鎖で世界世論?なっていく仕組みになります。
これを狙ったのが韓国による慰安婦騒動の手口でした。
朝日新聞の検証委員会報告書は、朝日新聞を引用したメデイアの数は少ないという証拠に基づいて責任はそれほど重くないかのような結論だった記憶(正確な記憶ないので誤解のないように読者の方でご確認お願い)ですが、お互い順次引用して行けば良いので噂の大モトの直接引用数を問題にすること自体、当初から朝日の責任を小さく見せようとする調査方法であったとの批判がありうるでしょう。
批判論の大元として報道されている上記岩田氏が誰かの説得を受けてブログか?ツイッターを消してしまったので本当にどういう不手際があったのか不明でしたが、約1ヶ月後のインタビュー?記事が出ていることが分かりましたので「見出し」につられてクルーズ船の何が問題だったかを知りたくて読んで見ました。
読むとクルーズ船のことはお義理にちょっと(具体論がなく)触れるのみで?全般的に抑制されているというか、当たり障りのない意見中心で何が問題であり約1ヶ月経過して時点で彼の批判が正しかったと言えるかの論証が一切ありません。
メデイア界としては、「クルーズ船対応が失敗だった」と既成事実化したい意図が先走って以下の見出しになったのでしょうか。
https://toyokeizai.net/articles/-/335971?page=7

岩田健太郎「非科学的なコロナ対策が危ない」
クルーズ船の失敗を繰り返してはならない  2020/03/12 5:30
クルーズ船での対応は失敗した
――日本政府は3月9日から、中国と韓国からの入国者に対する入国制限を強化し、2週間の検疫を開始しました。
流行している国からの入国を拒むというのは現段階でも有効だ。ただ、流行していない地域や、流行が終わりつつある地域からの入国も拒むのは有効性としてどうかと思う。現段階では、対象の国や地域に合理的な整合性がとれているのか、それとも政治的な思惑で入国制限が決まっているかが不明確だ。

表題「クルーズ船の失敗を繰り返してはならない」は、クルーズ船対策失敗論の説明ではなく、自分のした批判がメデイア界で流布したので、それの立証をする必要がないと既成事実化した上で?さらにこういう不手際があるという上乗せ主張のようです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC