ロシアの脅威13(道義無用2)

昨日紹介した通りロシア経済の原油依存度は半分ですが、残り半分もその他資源輸出と兵器輸出が主力ですから、資源相場が下がると経済は大変です。
同じく日経の記事からです。
ロシア株、戻り鈍く 伸び悩む原油価格 重荷 世界株番付
2017/8/21付
ロシア株の戻りが鈍い。ロシア経済の稼ぎ頭である原油の価格が停滞し、先行きに不透明感が強いためだ。ウクライナ問題を巡り米国でロシアへの経済制裁強化法が成立したのも株価の上値を重くしている。
ロシアの主要株価指数であるRTSは6月21日に年初来安値を付けた。その後も反発力は弱い。原油価格の伸び悩みが重荷だ。原油価格は経済への影響が大きく、株価との連動性が高い。北海ブレントの先物価格は6月に1バレル45ドル前後まで下落した。
その後は反発したものの、現在でも50ドル前後と昨年末を1割程度下回っている。石油輸出国機構(OPEC)による協調減産が思うように進まず、需給が引き締まらないとの懸念がくすぶっている。」
ロシアとって資源しか売りがない?→資源が下がれば軍事力の誇示しかない?
http://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=TS&d=OILE&c1=RU
ロシアの貿易
1995   1996   1997    1998   1999   2000   2001   2002    2003    2004
19.85   22.51   22.70    13.67  18.90   34.52  32.87   38.95   50.97    74.39 
2005    2006   2007    2008   2009   2010   2011    2012    2013    2014
113.60   141.13  166.39  230.61  140.82  197.71  263.79  285.32  283.98   270.56   
2015
157.86
単位: 10億USドル
上記の通りロシアは、1900年代に比べてこの10年間ほどは、約10倍以上の輸出代金を得ていたことがわかります。
世界ネタ帳によれば以下の通り輸出品奥のうちエネルギーと金属で約80%を占めています。
http://ecodb.net/country/RU/trade/
基本情報
輸出品目
燃料・エネルギー製品 70.6%、金属および同製品 7.7%、化学品 5.8%
輸出相手国
オランダ 13.3%、イタリア 7.5%、ドイツ 7.0%
輸入品目
機械・設備・輸送機器 48.5%、化学品 15.9%、食料品・農産品 13.7%
輸入相手国
中国 16.9%、ドイツ 12.0%、アメリカ 5.2%
出典: JETRO (%)は金額の構成比を表す。
上記の通りロシア経済は原油その他資源にたよっているので、原油価格が100ドル以下では苦しいと言われていました。
今年春頃漸く成立した産油国協調減産によっても50ドル台を回復・維持するのがやっとですから、ロシア経済の深刻さは推して知るべき状態です。
ここ数年ロシアのコワモテ行動が派手になってきた原因は、経済不振の裏返しと見るべきでしょう。
ロシアが北朝鮮核開発開発に秘密裏に協力し国際制裁に反対し裏から石油など供給する姿勢を見せる意図が露骨ですが、ロシアが原油等の資源価格値下がりで困りきっている弱みが対外強硬路線・逆張りになっている点では北朝鮮と同じです。
ウクライナ侵攻で経済制裁されて余計イキリ立っている点も北朝鮮と状況が似ています。
ロシアや中国〜朝鮮系は困れば困るほどと居丈高になるので、豊かにしてやれば少しは紳士的になるかと期待して応援してやって経済が良くなると、自信過剰?傲慢になって権利以上のものを要求する・・どちらになっても手のつけようのない困った民族です。
ロシアは困窮状態では相手の要求・北方領土返還に応じるどころではないし、豊かになればなお日本の主張を聞く必要がないということで、どちらに転んでも平和裡の交渉解決不能な相手です。
韓国の慰安婦その他の要求も同じで困っている政権は引き下がることができないし、国が好調にならば自身過剰になって自分の方が強い以上は、弱い相手をいたぶればいいのであって、妥協する必要がないとなるので、この種のメンタリティの国と100年〜1000年たっても交渉解決は不能です。
ロシアのウクライナ侵攻に戻します。
鉄面皮な覆面部隊の侵攻はもともと朝鮮戦争での中国義勇軍参加も同様の手法でしたし、もっと遡ればルーズベルトの日中戦争介入行為もアメリカ国籍を塗り消した飛行機を供与し操縦もアメリカ軍人が行っていたものでした。
尖閣諸島への連日の公船と称する武装船舶や漁船と称する実力行使もこの一環です。
18〜9日に書いた北海道防備力不足については、明治以降の北海道への開拓団入植政策による和人定着と牧畜やじゃがいもその他の農業系の定着によって、(最近では地球温暖化のせいか?稲作地帯になっています)安定的な領土に変貌しました。
明治以降も国土防衛の第一目標は城で言えば「もっとも防御力の弱い搦め手から攻めてくるソ連」であることは変わっていませんでした。
これが日露戦争の主原因であり、幕末にロシアが対馬に上陸して居座ったときに英米等西欧諸国が日本を応援したのと同じ構図でした。

ロシアの脅威12(道義無用1)

ところで19世紀の西欧列強の外交を砲艦外交とは言うものの、ロシアのように裸の武力行使による侵略ではありませんでした。
ペリー来航時の交渉も砲艦は背後にあっとしても、現在のアメリカ軍背景の威力による国際交渉同様に一応西欧の作った価値観による法原理・道理による交渉が可能な相手でした。
※ただし、一方的情報しか知りませんが、これまで日本で教育・報道されている限りでは、アヘン戦争は密輸禁圧に対する攻撃によるものですから、文字どおり仁義なき戦いと言う教育を受けてきました。
密輸であったとすれば、密輸を取り締まるのは、清朝の専権事項ですから・・。
林則徐は密輸入した中国人を処罰するだけではなく、イギリス商人の保管するアヘンを没収処分したことが戦争のきっかけです。
当時の条約では国内取り締まり権の範囲をどう定めていたのかが重要です・・外国人保有資産まで没収する権利があったかどうか不明です。
国内でせっかくアヘンを禁止してもイギリス人が中国国内で持っているものを処罰没収できないのでは国内流通を防げません。
それを決めるのが、いわゆる治外法権制度の問題ですが、イギリスと中国がどのような条約をしていたかによって結論が変わってきます。
日本の江戸時代では、薩長の家臣が違法行為をしても町奉行が捜査検挙する権利はありませんでした。
この不満が嵩じて幕末庄内藩の薩摩屋敷の焼き討ちに発展したのです
坂本龍馬が薩摩屋敷に逃げ込む話があるのは、この権利によります。
米軍基地内の拳銃や武器類が横流しされると国内治安に大きな影響が出るのと同じですし、軍人の犯罪捜査権や裁判権がないのが不都合となっています。
でもそういう場合、外交ルートで解決していくのが国際政治の筋であって、(地位協定の見直しが進んで一定の犯罪について早期に捜査権や裁判権を日本に移すなど・・)国民が納得しないからといっていきなり実力で米軍基地に警察・軍事力行使で踏み込むのは、戦争開始と同じ扱いを受けます。
当時の英中間の条約・ルール関係がどうなっていたかについては、日本では教えられていません。
欧米の法治主義と言っても西欧が勝手に作ったものであっても(今も各種ルールは欧米が事実上主導しています)・・ロシアを除けば一応道義・ルールに基づく交渉可能な相手でした。
世界の覇者であった西欧の都合で国際間ルールをつくって来たとはいえ、作った以上は強者もそれを守らねばなりません・・支配者は支配貫徹のためにはルールが必須ですが今度は自分がそのルールを率先してままらないと示しがつきません。
平和が続き多角交渉時代に入ると、道理の通る割合が増えるので強国の割に思うように振る舞えないことにアメリカのトランプ氏は業を煮やしている・・1対1の取引外交に戻りたいのでしょう。
だいぶ前に書きましたが、アメリカも格好つけていられなくなって、ロシアや中国のように無茶をやりたいという地金が出て来たのです。
これに対して中国やロシアの文化(まだ文化までいかない未開社会?)・・支配のルールは、自分の方が強いか否かの基準しかありません。
強ければ賄賂でも非人道行為でも何をしても良いという実力剥きだしの社会です。
サイバーテロでも知財剽窃でも実際にやれるかどうかが基準で正義の基準・やっていいことかどうかの基準はありません。
サイバーテロが現実化していることについては、某国によるウクライナ攻撃が常態化していて電力施設まで麻痺する事態が起きていることを24日日経新聞朝刊第1面大きな紙面で出ています。
日本で言えば、原発施設その他がサイバーテロによって電源喪失になると大事故に発展します。
自分の方が強いとなれば問答無用で強盗同様の侵略・強奪をためらわないし、知財で言えば今や強い立場を利用してコソコソと剽窃する必要がないと開き直りになってきました。
情報統制に関しては、10年ほど前に情報協力だったかを要求されてグーグルは中国か潔く撤退しましたが、今度はフェイスブックが中国の言いなりの規制情報遮断に協力することで中国に進出したことがだいぶ前から問題になっています。
つい最近ではケンブリッジ大学の出版局が中国に都合の悪い出版しない・検閲協力をしていることが話題になっています。
この辺はケンブリッジ大学やフェイスブックが表現の自由侵害に手を貸しても中国内で協力するだけで世界中の表現を検閲するわけではないのであれば、中国人民が事実を知ることができず損をするだけのことですが、技術移転や知財提供の強制になると意味が違ってきます。
この10年程度では、技術移転・知財提供しないと中国市場参入させないという公然たる国家強制が始まっています。
自分が相手に強要できる力があるかどうかだけ?が基準ですから、違法かどうかどころか、侵略成功すればどんな暴虐行為を平然と行う歴史になっています。
もともと行動基準に道理・人道の基準がないのでどんな非道な行為・「非道」かどうかの基準概念さえも発達していないのでしょう。
ソ連の場合には、スターリン批判後はさすがに恥ずかしい?国際道義を気にするようになったのか?ロシアになってからの2014年のウクライナ侵攻では覆面した兵士の展開が報道されていました。
クリミア併合はウクライナ政府軍を追い出した後での住民投票によるものでしたが、その白々しさに驚きます。
ウクライナ東部侵攻も公式にはロシア軍ではないという鉄面皮な主張ですし、ウクライナに対する大規模なサイバーテロについてもロシアは知らんぷりです。
ロシアがどうしてそんなにまでして国際孤立を恐れずに領土拡張に熱意を燃やしているかの疑問ですが、ここ数年の原油価格下落に象徴される資源価格の全般的下落が、ロシア経済のボディにじわじわと効いてきたことによると思われます。
一般的には体力が弱ればおとなしくなるものですが、ロシアの場合には国力不相応の軍事力維持に執心しています。
北朝鮮や中国、ロシア(韓国も含めて)の場合には国力が劣ると大人しくなるのではなく、体面を保ち国民に対する締め付け強化(地位保全)のために対外要求がより一層激しくなる傾向があります。
こういう国相手では経済制裁は逆効果でしょう。
プーチン政権になってから、ロシア経済が好調になったので勢いが良かったのですが、その内実は生産性が上がったからではなく、資源価格高騰によるところが大きかったに過ぎません。
原油その他資源価格が下がるとロシア経済にとっては強力なダメージでプーチン政権にとっては必死でしょう。
日経新聞によるとロシアの原油依存度は以下のとおりです。
4〜5年前までは1バレル百ドル以上もしていたのですが、この数年で20ドル台に下がってしまいました。
ロシアの原油依存度は以下の通りです。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO08485840Y6A011C1ENK001/
ロシアルーブル、下落傾向が一服 原油価格上昇を反映
2016/10/18 14:03
「ロシアは石油に輸出や歳入の半分程度を依存しており、油価は為替や株式相場に大きな影響を与えている。原油価格の国際指標である北海ブレント先物相場は年初に一時、1バレル20ドル台後半に下落したが、4月には同40ドル台に上昇。10月に入って50ドル台に戻した。」

憲法学の有用性?2

名誉革命や清教徒革命や産業革命で社会変化が先行していたイギリスでは、先頭走者として実践しながら考えて行くしなかったので法制度も実践によって不都合が起きる都度修正して行くしかないので、判例法の国と言われていました。
(現在のイギリス社会は、世界先端社会ではなく諸外国の事例を取り入れる方に回っているので、今や成文法中心になっています)
大陸諸国は最先頭のフランスでもイギリスより遅れて革命を起こし、産業革命も遅れて導入したことから分るように、思想家の観念構築が先行しての革命でしたので、「自由平等博愛」など華々しい標語等が歴史に残って有名ですが、要は遅れていたからに過ぎません。
ドイツにあってはフランスよりももっと遅れて参加した分、観念的思惟が更に深まった状態であった・・更に遅れて勉強を始めた日本人にとって、立派な観念体系の完成したドイツの観念論はもの凄く立派に見えたに過ぎません。
これを評してイギリス人は歩いてから考える、フランスは考えながら走る、ドイツ人は考えてから走る」と比喩的に言われていました。
哲学的基準では、「イギリスの経験論・判例法主義」に対して「大陸の観念論・(体系的)成文法主義」先行社会と未経験行為に一足飛びに挑戦する遅れた社会との対比で考えても分ります。
観念論や立派な観念体系の輸入が、役立つのは後進国社会であることが分ります。
佛教でもキリスト教でも、草創期には未完成で始まったに決まっていますし、遅れた社会が受け入れるときには、既に立派に教典になっているに過ぎません。
実際、観念論のドイツが今回の難民殺到に対して、無制限受け入れの原理原則(人道主義?)をメルケル首相が表明して、数日も持たないで、難民殺到に恐れをなして前言撤回するはめに陥っています。
良いことばかりではなく難民殺到と言うマイナス極面においても、最先端社会になれば観念論・原理原則論ではどうにもならないことが、今、正に証明されています。
日本社会は、江戸時代から庶民文化が花開いていたことから分るように、庶民レベルのもの凄く高い世界先進社会・ボトムアップ社会ですから、西欧にもアフリカにも良いところがあれば、部分的に摂取する程度が合理的であって、観念や制度の丸ごと導入・・「モンク言わずに従えば良い」と言うやり方は無理があります。
後進国が先進国の先端工場を丸ごと一足飛びに導入するだけではなく、最近では新幹線、原子力発電などその後の運営まで請け負うやり方と同じではありません。
日本が、古来から和魂洋才・・古代中国からでも良い部分だけ取り入れる・・律令制を丸ごと採用しなかったことを既に紹介してきました・・妥当であった根拠です。
幕末以来洋画の遠近法を取り入れても、日本画はなくなりません。
アメリカでは、ビル解体方法として大規模爆破するのが普通に見られますが、日本の場合時間がかかっても東京駅改造のように一日も運行を休まずに少しずつやって行く社会の違いです。
上海や香港・シンガポールのように高層ビルが良いとなれば、すぐに林立する社会とは、全く違います。
法制度も日本社会に適合する限度で徐々に良いところを日本社会に馴染むように変容させてから、採用して行けば良いのであって未消化状態でそのママ「ゴロッと」取り入れるとぎくしゃくして社会軋轢が生じるばかりです。
憲法解釈論に戻りますと、戦後アメリカによる憲法強制を例外(自主憲法を原則)としてみれば、憲法や社是等の基本精神は本来その社会の到達点の解釈であるべきです。
社是・社訓・憲法は各種分野・法律・実務到達点を制定当時に抽象化したものであるべきですから、法律の勉強で言えば憲法はスベテの法律(国民総意に基づく少しずつ修正の集大成))のまとめ・・法学概論にあたるもので、概論の専門家って必要なのか?ということになります。
フランス革命のように、「自由・平等・博愛」その他一人二人の思想家が何か言って、国民が反応する・・知識・技術を輸入に頼る後進国では、輸入思想の解釈論・・実務を知らない学者の出番ですが先進国社会には対応しません。
わが国の場合では、哲学者や宗教家の発言力の変遷を見ると、江戸時代初期の天海僧正などの宗教家から荻生徂徠や新井白石などの儒学者に移り、吉宗以降実務家に移って行った「御定書・先例集の編纂)経緯を紹介したことがあります。
我が国では、高名な思想家が立派な意見を発開陳して、大衆がこれに反応するような社会はフランス革命のずっと前に卒業しているのです・・。

原発コスト17(問答無用3)

原発は怖いがだからと言って感情的に全面的にやめるとまでは言えない・・・フグは食いたし命は惜しし・・と同じ心境です。
全面禁止か資格のある調理師の調理によるフグを食べるのかと似ていて、どのくらい高くなるのかの程度問題を先ず知りたい・その上でどうするかを考えたいのが、普通の国民の心理でしょう。
この関心は正当なものだと思いますが、これには正面から応えないまま、事故直後に(頼みもしないのに・・)東京電力の試算で、原発をやめると1家庭平均で月1000円上がるという発表が逸早く(こういうことには素早いのもおかしな会社です)ありました。
その前提になる元の原発コストは事故処理コスト等を計上していないときのコストですから、これと比較するかのような土俵設定をする事自体、論理法則違反です。
こんな論理法則・ルール違反の子供騙しのテーマ設定は・・当面の値上がりに庶民は間違って反応するだろう式の発想によるものでしょうが、国民をバカにしているし論点をすり替えようとする意図がアリアリです。
まして、投資済みの原発施設の投資回収をしないまま・中断してここで新たに火力発電所の新設をして行けば、二重の設備で半分しか稼働しないので、コストが従来よりも上がるのは、あたり前です。
(これでは原発の方が安いか火力の方が安いかの比較にはなりません)
原発から火力に切り替えるのではなく出来上がって数年の火力発電所の事故があって、新たに火力発電所を新設する場合だって、減価償却しない内に廃棄するコスト負担や事故処理と並行して新設火力となれば、料金を上げないとやって行けないのは同じです。
伝統的支配勢力は、稼働期間約40年しかないとすれば、後1年でも2年でも多く稼働させて1年分でも2年分でもよけい回収したいということで頑張りたい気持ちもあるでしょう。
しかしこんな議論をして廃炉を引き延ばしている間にも何時次の大地震がないとも限らないのですから、一日も早く廃炉準備をして行くべきでしょう。
同一業種でA企業は火災保険や交通事故保険料を火災事故による避難訓練などをコストに加えていて、B企業は避難訓練もせずに火災保険・事故賠償保険にも加入していない・・事故が起きたら倒産処理する無責任形式とすれば、何の備えもないB社の方が事故がない限りコストが安いのは当たり前であってコスト比較になりません。
今後これら費用をコストに加えるとどうなるかの議論がいま必要なのに、これに答えることなく先ず値上げから入って行こうとするのは、国民に対する威嚇戦法でしかありません。
マトモなコスト計算を公開しないまま、問答無用式に値上がりした結果だけを示して「こんなに高くなるんだぞ!」と脅して行く現在の方式は、如何に原発のときの方が安かったかの印象だけを刷り込んで行く作戦のように見えます。

原発のコスト16(問答無用2)

日本人は愛国心・公徳心が強いので、日本経済がどうなっても良いと思ってる人は滅多になく、コストが本当はどうなるのかを知りたがっているのですが、伝統的支配勢力はコスト計算を公開したオープンな議論をしないまま、「早く再開しないと電気料金が上がって国際競争力がなくなる」と意味不明の主張が充満しているのは不思議です。
本当にコストアップ社会になって大変だと自信を持って言えるなら、気前良く各種データを公開し・・あるいはいろんな人に資金を出してデータ収集させたりして、コストに関する活発な議論をさせれば良い筈です。
元々今回の事故前から、我が国の電力料金が諸外国よりも高いと言われていますが、そこからメスを入れて行く必要があるでしょう。
以前からバカ高いのに、これ以上値上がりすると企業が海外に逃げざるを得ないという論理ですが、その前提として何故我が国はそんなに他国よりも高いのかの議論が必要です。
常識的に考えて我が国は、人口密集地が多いので送電距離も短くて済み、本来有利な筈ですが・・・。
現在のマスコミ論調を見ていると、コスト関連のデータを公開しないまま時間が経過して値上げだけして行けば、結果としてみんな困るから原発再開の方へ傾くだろう式のやり方です。
イキナリ計画停電で脅かしたのを手始めに、原発反対しているとこんな目に遭うぞとばかりにパンチを食らわしてきましたが、あまりにも見え透いていたので、却って東電が怨嗟の的になってこのやり方は直ぐに引っ込めました。
批判が強すぎてその後は節電に切り替えましたが、東電の供給源の1つである福島第一原発が停まっているので電力不足になったという構図で計画停電の後は節電要請でした。
これでうまく行きかけてところで、福島原発の停止に関係のない東北電力の方が先に(豪雨の影響で)電力不足になって東電から大規模な電力融通が行われる結果になりました。
実は発電能力は余っていることは業界内では常識だったの(でしょう)で、「足りないとキャンペインしている最中なので融通する訳に行かない」とも言い切れなかったのでしょう。
この結果、東電の電力不足のキャンペインは何だったのかまるで根拠不明となっていますが、これに関してマスコミでは何の説明もなくうやむやです。
原発停止で供給電力が足りなくなるというキャンペインで東北電力や中部電力から、融通を受ける計画が出ていた筈の東京電力が、最大ピーク時である筈の真夏に逆に大規模に東北電力に融通出来たのですから、「何のために(需要ピーク時でもない)事故直後に計画停電したの?」「話が違うんじゃない?」「な〜んだ余ってたの?」と言う素朴な疑問が起きているのですが、これらに対して、マスコミは全く応えようとも検証しようともしないままです。
また、コスト・データを開示しないままでも、今直ぐに火力発電に切り替えるとコストが上がるので、従来の電気料金の引き上げは不可避でしょうから、その事実・・先ず値上げをして国民を威嚇しようとしているとも見えます。
この戦法は、悪質なすり替えです。
いま火力に切り替えるとさしあたり従来よりもコストが上がることは当然ですが、だからと言って原発よりも火力発電コストが高いことの証明にはなりません。
今までの原発による電気料金は、損害賠償や事故処理コスト・廃炉費用をコスト計算に加えていなかったのですから、安かったのは当たり前です。
今後これらのコストを加えて行った場合の原発コストと火力発電のコストを比べるべきだ・・その結果どちらがどれだけ安いのかを知りたい国民の関心に応えず、先ず値上げから入って行こうとする現下の動きは、国民の正当な疑問・関心から意図的に目をそらそうとするものです。

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